(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】少ない揮発分を有するポリ(エーテルケトンケトン)ポリマー粉末
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20240610BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20240610BHJP
B33Y 40/10 20200101ALI20240610BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240610BHJP
【FI】
B29C64/153
B29C64/264
B33Y40/10
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2019571459
(86)(22)【出願日】2018-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018067807
(87)【国際公開番号】W WO2019002620
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-23
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング, スコット エー.
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】宮澤 浩
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-6057(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1974631(CN,A)
【文献】特開2013-64153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B29C64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー焼結系付加製造システムにおける使用のための、少なくとも1つのポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーを含むポリマー粉末であって、前記PEKKポリマーは、少なくとも
95モル%の式(M’)及び(P’):
の繰り返し単位を含み、前記モル%は、前記ポリマー中の合計モル数に基づいており、
繰り返し単位(P’)の繰り返し単位(M’)に対するモル比は、1:1~5.7:1であり、
前記PEKKポリマーは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下にて30℃から800℃に加熱する、ASTM D3850に従って熱重量分析で測定される、少なくとも
505℃のTd(1%)を有し、
前記粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、150μm未満のd
0.9値を有する、少なくとも1つのポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーを含むポリマー粉末。
【請求項2】
前記PEKKポリマーが少なくとも510℃のTd(1%)を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
0.01~10重量%の流動剤を更に含む、請求項1
又は2に記載の粉末。
【請求項4】
0.05~5重量%の流動剤を更に含む、請求項1
又は2に記載の粉末。
【請求項5】
25℃の浸漬温度で、ISO 9277で測定される、0.1~5m
2/gの範囲のBET表面積を有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
25℃の浸漬温度で、ISO 9277で測定される、0.2~4m
2/gの範囲のBET表面積を有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項7】
ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定される、270~360℃の範囲のTmを有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項8】
ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定される、280~310℃の範囲のTmを有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項9】
ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定される、145~170℃の範囲のTgを有する、請求項1~
8のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項10】
ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定される、145~160℃の範囲のTgを有する、請求項1~
8のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項11】
少なくとも0.40のかさ密度ρBを有する、請求項1~
10のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項12】
少なくとも0.41のかさ密度ρBを有する、請求項1~
10のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項13】
少なくとも0.42のかさ密度ρBを有する、請求項1~
10のいずれか1項に記載の粉末。
【請求項14】
前記PEKKポリマーが、濃H
2SO
4(最小96重量%)における0.5重量/体積%溶液において、30℃でASTM D2857に従って測定される、少なくとも0.50dL/gの固有粘度を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項15】
前記PEKKポリマーが、濃H
2SO
4(最小96重量%)における0.5重量/体積%溶液において、30℃でASTM D2857に従って測定される、少なくとも0.60dL/gの固有粘度を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項16】
前記PEKKポリマーが、濃H
2SO
4(最小96重量%)における0.5重量/体積%溶液において、30℃でASTM D2857に従って測定される、少なくとも0.65dL/gの固有粘度を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項17】
前記PEKKポリマーが、濃H
2SO
4(最小96重量%)における0.5重量/体積%溶液において、30℃でASTM D2857に従って測定される、多くとも1.50dL/gの固有粘度を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項18】
前記PEKKポリマーが、濃H
2SO
4(最小96重量%)における0.5重量/体積%溶液において、30℃でASTM D2857に従って測定される、多くとも1.40dL/gの固有粘度を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項19】
前記PEKKポリマーが、濃H
2SO
4(最小96重量%)における0.5重量/体積%溶液において、30℃でASTM D2857に従って測定される、多くとも1.30dL/gの固有粘度を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項20】
120μm未満のd
0.9値を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項21】
100μm未満のd
0.9値を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項22】
90μm未満のd
0.9値を有する、請求項1に記載の粉末。
【請求項23】
3次元(3D)物体を付加製造システムを用いて製造する方法であって、
-請求項1~
22のいずれか1項に記載の粉末を含む部品材料を準備する工程と、
-前記部品材料から前記3次元物体の層を印刷する工程と、
を含む、3次元(3D)物体を付加製造システムを用いて製造する方法。
【請求項24】
層を印刷する工程は、前記粉末の電磁放射による選択的焼結を含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
レーザー焼結系付加製造システムを使用して
3次元物体を製造するための、請求項1~
22のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年6月30日出願の米国仮特許出願第62/527718号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、150μm未満のd0.9値を有するPEKKポリマー粉末に関し、この場合に、PEKKポリマーは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下にて30℃から800℃に加熱する、ASTM D3850に従って熱重量分析で測定される、少なくとも490℃、好ましくは495℃、より好ましくは500℃のTd(1%)を有する。又、本発明は、3次元(3D)物体を製造する方法に使用するためのPEKK粉末を作製する方法に関し、この場合に、
-PEKKは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下にて30℃から800℃まで加熱する、ASTM D3850に従って熱重量分析で測定される、少なくとも500℃、好ましくは505℃、より好ましくは510℃のTd(1%)を有し、
-粉末は、粗い粉末から摩砕することにより製造されており、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、150μm未満のd0.9値を有する。
【背景技術】
【0003】
付加製造システムは、コンピュータ支援設計(CAD)モデリングソフトウェアで作成されたデジタル設計図から3D物体を印刷或いは構築するために使用される。利用可能な付加製造技術の1つである選択的レーザー焼結(「SLS」)は、レーザーからの電磁放射を使用して、粉末材料を塊に融合させる。レーザーは、粉末床の表面の物体のデジタル設計図から生成された断面を走査することにより、粉末材料を選択的に融合させる。断面が走査された後、粉末床が1層の厚さ分下げられ、材料の新しい層が適用され、床が再走査される。その前の焼結層との接着性だけでなく、最上部の粉末層中でのポリマー粒子の局所的な完全合体が必要とされる。このプロセスは、物体が完成するまで繰り返される。
【0004】
SLSプリンターの粉末床では、粉末材料は、一般的に、樹脂の融点(Tm)に近い処理温度に予熱される。粉末の予熱により、レーザーは、未融合粉末の層の選択された領域の温度を融点まで上昇させやすくなる。レーザーは、入力によって指定された場所でのみ粉末の融合を引き起こす。レーザーエネルギー曝露は、典型的には、使用中のポリマーに基づきポリマーの劣化を回避するために選択される。
【0005】
SLSプロセスの可能性は、プロセスに最適化された制限された数の材料、特に、許容できる機械的特性を有する得られる3D部品をもたらすことができるポリマー材料の識別の欠如によって制限される。
【0006】
ポリ(エーテルケトンケトン)(「PEKK」)ポリマーは、比較的極限の状況での使用に好適である。一つには、PEKKポリマーの高い結晶化度及び高い溶融温度のために、それらは、優れた熱的、物理的及び機械的特性を有する。
【0007】
PEKKポリマーは、通常、0~120℃の範囲の温度で、ルイス酸の存在下でケトン形成反応により調製される。しかしながら、このプロセスから作製されたPEKKポリマーは、多い揮発分(例えば、塩素化残留溶媒)を含むという大きな欠点がある。これは、例えば、ポリマー粉末が粉末床で高温に長時間留まるレーザー焼結系付加製造システムを使用した3D物体の製造など、特定のいくつかの用途には望ましくない。実際、プロセス中のこれらの揮発物質のガス放出は、印刷部品における欠陥の形成につながる。
【0008】
多い揮発残留分の問題は、後処理工程を加えることで解決できるが、これにより、ポリマーの全体の生産コストが増加する。
【0009】
従って、付加製造システム、特にSLS印刷方法に使用されるPEKKポリマー材料が必要であり、これにより、プロセス中の揮発物質の放出を可能な限り少なくする3D物体の製造が可能になる。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、付加製造、及び高速プロトタイピング方法の他のタイプに使用できるが、圧縮成形及び粉末コーティング(即ち、静電又は溶媒系)にも使用できるポリマー粉末に関する。本発明の粉末は、少なくともポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーを含む。
【0011】
本発明によれば、PEKKポリマーは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下にて30℃から800℃まで加熱する、ASTM D3850に従って熱重量分析で測定される、少なくとも500℃、好ましくは505℃、より好ましくは510℃のTd(1%)を有する。
【0012】
本発明によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、150μm未満のd0.9値を有する。
【0013】
又、本発明は、例えば、選択的レーザー焼結(SLS)、マルチジェットフュージョン(Multi Jet Fusion)(MJP)、又は複合材系付加製造技術(CBAM)などの粉末系付加製造システムなどの付加製造システムを用いて、三次元(3D)物体を製造する方法に関する。
【0014】
本発明の3D物体の製造方法は、好ましくは電磁放射を用いた粉末の選択的焼結により、本明細書で定義されるPEKK粉末を含む部品材料から3次元(3D)物体の層を印刷する工程を含む。
【0015】
このような製造方法によって得ることができる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込式装置、医療装置、歯科補綴物、ブラケット及び宇宙産業における複雑な形状部品、並びに自動車工業におけるボンネットの下の部品を挙げることができる。
【0016】
ここで「部品材料」という表現は、3D物体又は物品、或いは3D物体/物品の少なくとも一部を形成することを目的とした材料を指す。部品材料は、本発明に従って、3D物体/物品又は3D物体/物品の一部を製造するために使用される供給原料として使用される。ここで部品材料は、本発明のPEKK粉末を含む。部品材料は、特に、本発明のPEKK粉末から本質的になることができ、又は以下に記載されるように、例えば、流動剤及び添加剤などの他の成分を含むことができる。
【0017】
本発明の3D物体を製造する方法は、実際、部品材料の主要要素としてPEKKポリマー粉末を使用する。粉末は、球形などの規則的な形状、或いはペレット又は粗い粉末の摩砕/粉砕によって得られる複雑な形状を有することができる。
【0018】
又、本発明は、少なくともポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーを含む粉末の作製方法に関し、前述の作製方法は、PEKKポリマーを得るために溶媒中でモノマーを重縮合する工程と、溶媒と塩を抽出する工程と、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、150μm未満のd0.9値を有する粉末を得るために摩砕する工程とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、付加製造におけるポリマー粉末に関する。粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、150μm未満のd0.9値を有し、少なくともポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーを含む。本発明の粉末は、揮発分が少ないため、粉末が長期間、粉末床で高温に留まらなければならないレーザー焼結系付加製造システムを使用した3D物体の製造などの用途に好適である。揮発分は、使用前の本発明の粉末に存在する揮発物質の量として定義される。この量は、オフゲージング(off-gazing)、即ち、粉末を使用するときにこれらの揮発物質が徐々に放出されることを制限するために、できるだけ少なくする必要がある。例えば、特に、粉末の焼結前に数時間かかる場合がある加熱などの、SLSプリンターの粉末床で粉末を加熱するときに、オフゲージングが発生する場合がある。
【0020】
本発明の粉末中の揮発分は、これによりASTM D3850法に従って熱重量分析(TGA)を使用して評価される。一定量の揮発性物質(例えば、1重量%又は2重量%)が試料を離れる温度Tdは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下にて試料を30℃から800℃まで徐々に加熱することにより決定される。温度Td(1%)は、1重量%での熱分解温度とも呼ばれる。本発明によれば、SLSプリンターの粉末床で粉末を加熱するときに発生する揮発物質の量を制限するために、Td(1%)は可能な限り高くある必要がある。
【0021】
本発明によれば、PEKKポリマーは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下にて30℃から800℃まで加熱する、ASTM D3850に従って熱重量分析で測定される、少なくとも500℃、好ましくは505℃、より好ましくは510℃のTd(1%)を有する。これは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下にて30℃から800℃まで加熱する、ASTM D3850に従って測定した場合、490℃以上の温度に加熱した後、粉末が初期重量の99重量%以上を保持することを意味する。
【0022】
本発明の粉末のPEKKポリマー成分は、従来技術に記載されている、又は市場で入手可能なPEKKポリマーと比較して、有利なことに少ない揮発分を含む。この特徴により、PEKKポリマー粉末は、焼結前に粉末を加熱する必要がある3D印刷レーザー焼結法に好適である。PEKKポリマーの少ない揮発分は、重合反応全体を通してポリマーが溶液中に留まるような重合条件を使用することにより得られ、最終ポリマー粉末に不純物が封入されるのを回避する。又、ポリマーは、ポリマーとの副反応によって揮発物質が生成される可能性がある、アルミニウム及び鉄などの反応性金属カチオンの低下した濃度を含む。
【0023】
本発明は、粉末系付加製造(AM)システムなどの付加製造システムを用いて三次元(3D)物体(例えば、3Dモデル、3D物品又は3D部品)を製造する方法にも関する。選択的レーザー焼結は、AM印刷方法の一例である。
【0024】
マルチジェットフュージョン(「MJP」)は、AM印刷方法の別の例である。マルチジェットフュージョンの間、粉末材料の層全体が放射線に曝されるが、選択された領域のみが融合及び硬化して3D物体の層になる。MJP法は、粉末材料の選択された領域と接触して選択的に堆積された融剤を利用する。融剤は、粉末材料の層に浸透し、粉末材料の外表面に広がることができる。融剤は、放射線を吸収し、吸収された放射線を熱エネルギーに変換することができ、次いで、熱エネルギーは、融剤と接触している粉末材料を溶融又は焼結する。これにより、3D物体の層を形成するために、粉末材料が融合、結合、及び硬化する。
【0025】
複合材系付加製造技術(「CBAM」)は、熱可塑性マトリックス材料で結合されたカーボン、ケブラー、及びガラス繊維布地などの繊維強化複合材から部品を作製する別のAM印刷方法である。液体は繊維基材層に選択的に堆積され、次いで粉末材料で満たされる。粉末材料は液体に付着し、余分な粉末は除去される。これらの工程が繰り返され、繊維基材層が所定の順序で積み重ねられて、3D物体が作製される。圧力及び熱が融合されている基材の層に加えられ、粉末材料を溶融し層をともにプレスする。
【0026】
本発明の3D物体を製造する方法は、
-本明細書で定義されるPEKK粉末を含む部品材料を準備する工程と、
-好ましくは電磁放射を使用した粉末の選択的焼結による、部品材料から三次元(3D)物体の層を印刷する工程と、
を含む。
【0027】
本発明の方法は、ポリマーの外観(例えば、色)、合体能力及び離解能力により評価できるPEKK粉末/部品材料の熱老化が顕著に減少する温度で実施することが好ましい。言い換えれば、この実施形態によれば、PEKK粉末/部品材料は、熱老化の顕著な兆候を示さず、そのままで、又は純粋な粉末ポリマー材料と組み合わせて、レーザー焼結3D印刷によって新しい物品を調製するためにリサイクル及び使用することができる。
【0028】
このような製造方法によって得ることができる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込式装置、医療装置、歯科補綴物、ブラケット及び宇宙産業における複雑な形状部品、並びに自動車工業におけるボンネットの下の部品を挙げることができる。
【0029】
ここで「部品材料」という表現は、3D物体の少なくとも一部を形成することを目的とした材料を指す。部品材料は、本発明に従って、3D物体又は3D物体の部品の製造のために使用される供給原料として使用される。
【0030】
本発明の方法は、実際、部品材料の主要要素としてPEKKポリマー粉末を使用する。粉末は、規則的な形状(例えば、球形)、或いは例えばペレット又は粉末の摩砕/粉砕により得られる複雑な形状を有することができる。
【0031】
本出願において:
-いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、及びそれらと交換可能であり、
-要素又は成分が、列挙された要素又は成分の一覧に含まれ、及び/又はそれらから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に企図される関連実施形態においては、要素又は成分は又、個別の列挙された要素又は成分のいずれか1つでもあってもよく、或いは明示的に列挙された要素又は成分の任意の2つ以上からなる群から選択されてもよく、要素又は成分の一覧に列挙されたいずれかの要素又は成分は、こうした一覧から省略されることができることを理解されたく、
-本明細書での端点による数値範囲のいずれの列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数、並びに範囲の端点及び相当物を含む。
【0032】
SLS 3Dプリンターは、例えば、EOS Corporationから商標名EOSINT(登録商標)Pで入手できる。
【0033】
MJF 3Dプリンターは、例えば、Jet Fusionという商標名でHewlett-Packard Companyから入手できる。
【0034】
粉末を使用して、例えば、Impossible Objectsが開発したCBAMプロセスにおいて連続繊維複合材を作製することもできる。
【0035】
付加製造用粉末(AM)
本発明の粉末は、少なくともポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーを含み、この場合に、PEKKポリマーは、式(M)及び(P):
(式中、
-R
1及びR
2は、それぞれの場合に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
-i及びjは、それぞれの場合に、0~4の範囲の独立して選択される整数である)の繰り返し単位の少なくとも50モル%を含み、モル%は、ポリマー中の合計モル数に基づいている。
【0036】
一実施形態によれば、R1及びR2は、上記の式(P)及び(M)のそれぞれの位置で、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン及び四級アンモニウム基を任意選択的に含むC1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0037】
別の実施形態によれば、i及びjは、それぞれR
1及びR
2基において、ゼロである。この実施形態によれば、PEKKポリマーは、式(M’)及び(P’):
の繰り返し単位の少なくとも50モル%を含み、モル%は、ポリマー中の合計モル数に基づいている。
【0038】
本開示の一実施形態によれば、少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル、又は全てのPEKKの繰り返し単位は、式(M)及び(P)の繰り返し単位である。
【0039】
本開示の一実施形態によれば、PEKKポリマーにおいて、繰り返し単位(P)又は/及び(P’)の繰り返し単位(M)又は/及び(M’)に対するモル比は、少なくとも1:1~5.7:1、例えば、少なくとも1.2:1~4:1、少なくとも1.4:1~3:1、又は少なくとも1.4:1~1.86:1である。
【0040】
PEKKポリマーは、濃H2SO4(最小96重量%)における0.5重量/体積%溶液において、30℃でASTM D2857に従って測定される、少なくとも0.50dL/g、例えば、少なくとも0.60dL/g又は少なくとも0.65dL/g、例えば、多くとも1.50dL/g、多くとも1.40dL/g、又は多くとも1.30dL/gの固有粘度を好ましくは有する。
【0041】
本発明によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、150μm未満のd0.9値を有する。一実施形態によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱によって測定される、120μm未満、好ましくは100μm未満又は90μm未満のd0.9値を有する。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、粉末は、イソプロパノールでのレーザー散乱により測定される、30~90μm、好ましくは35~80μm、又は38~70μm、又は40~60μmに含まれるd0.5値を有する。
【0043】
本発明の粉末は、多くとも25℃の浸漬/排気温度を使用して、ISO9277により測定される、0.1~5m2/g、好ましくは0.2~4m2/gの範囲のBET表面積を有し得る。
【0044】
本開示の一実施形態によれば、粉末は、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定される、270~360℃、好ましくは280~315℃の範囲のTmを有する。
【0045】
本開示の別の実施形態によれば、粉末は、ASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)により測定される、140~170℃、好ましくは145~165℃の範囲のTgを有する。
【0046】
本開示の好ましい実施形態によれば、粉末は、少なくとも0.40、好ましくは少なくとも0.41、最も好ましくは少なくとも0.42のかさ密度ρBを有する。
【0047】
任意選択の成分
本発明の粉末又は粉末混合物は、流動剤(F)を更に含み得る。この流動剤(F)は、例えば親水性であり得る。親水性流動助剤の例は、シリカ、アルミナ及び酸化チタンからなる群から特に選択される無機顔料である。ヒュームドシリカを挙げることができる。
【0048】
ヒュームドシリカは、Aerosil(登録商標)(Evonik)及びCab-O-Sil(登録商標)(Cabot)の商標名で市販されている。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、粉末は、0.01~10重量%の流動剤(F)、例えば0.05~8重量%、0.1~6重量%、又は0.15~5重量%の少なくとも1つの流動剤(F)、例えば、少なくともヒュームドシリカを含む。
【0050】
これらのシリカは、ナノメートルの一次粒子で構成されている(ヒュームドシリカの場合、典型的には5~50nm)。これらの一次粒子は結合して凝集体を形成する。流動剤として使用する場合、シリカは様々な形態(基本粒子(elementary particles)と凝集体)で見出される。
【0051】
本発明の粉末又は粉末混合物は、少なくとも別のポリマー材料を更に含み得る。この更なるポリマー材料は、例えば、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー、例えば、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)ポリマー及び/又はポリスルホン(PSU)ポリマー、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマー、例えば、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)ポリマーからなる群から選択されることができる。
【0052】
本発明の粉末又は粉末混合物は、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、顔料、加工助剤、染料、充填剤、ナノ充填剤又は電磁気吸収剤などの1つ又はいくつかの添加剤(A)を更に含み得る。これらの任意選択の添加剤の例は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ又は硫化亜鉛、ガラス繊維、炭素繊維である。
【0053】
本発明の粉末又は粉末混合物は、ハロゲンなどの難燃剤及びノンハロゲン難燃剤を更に含み得る。
【0054】
一実施形態によれば、本発明の方法で使用される部品材料は、部品材料の総重量に基づいて、
-少なくとも50重量%の上記のPEKK粉末と、
-0.01重量%~10重量%、0.05~8重量%、0.1~6重量%、又は0.15~5重量%の少なくとも1つの流動剤(F)と、
-任意選択的に、例えば、充填剤(粉砕炭素繊維、シリカビーズ、タルク、炭酸カルシウムなど)、着色剤、染料、顔料、潤滑剤、可塑剤、難燃剤(ハロゲン及びノンハロゲン難燃剤など)、成核剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、加工助剤、融剤及び電磁気吸収剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤(A)と、
を含む。
【0055】
一実施形態によれば、本発明の方法で使用される部品材料は、少なくとも60重量%のPEKK粉末、例えば、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%の本明細書に記載のPEKK粉末を含む。
【0056】
別の実施形態によれば、本発明の方法で使用される部品材料は、本明細書に記載のPEKK粉末から本質的になる。
【0057】
3D物体を製造する方法
本発明は、本明細書に記載のPEKK粉末を含む部品材料から3D物体/物品/部品の層を印刷する工程を含む付加製造システムを用いて3次元(3D)物体を製造する方法にも関する。
【0058】
一実施形態によれば、プロセスは、少なくとも2つの工程:
-本明細書に記載の粉末を含む部品材料を準備する工程、及び
-部品材料から3次元(3D)物体の層を印刷することからなる工程を含む。
【0059】
一実施形態によれば、層を印刷する工程は、PEKK粉末の電磁放射、例えば、電磁ビーム源などの高出力レーザー源によるPEKK粉末の選択的焼結を含む。
【0060】
3D物体/物品/部品は、基板に、例えば、水平基板及び/又は平面基板に構築されることができる。基板は、例えば、水平又は垂直方向など、全ての方向に移動可能であり得る。3D印刷プロセスの間、例えば、未焼結ポリマー材料の連続層が焼結ポリマー材料の前の層の上部に焼結されるように、基板を下げることができる。
【0061】
一実施形態によれば、プロセスは、支持構造体を作製することからなる工程を更に含む。この実施形態によれば、3D物体/物品/部品は、支持構造体に構築され、支持構造体と3D物体/物品/部品の両方が、同じAM法を使用して作製される。支持構造体は、複数の状況で有用であり得る。例えば、3D物体/物品/部品の形状の歪みを回避するために、特にこの3D物体/物品/部品が平面でない場合、印刷された又は下刷りの(under-printing)3D物体/物品/部品に支持構造を与えるのに有用であり得る。これは、印刷された又は下刷りの3D物体/物品/部品を維持するために使用される温度がPEKK粉末の再凝固温度より低い場合に特に当てはまる。
【0062】
製造方法は、通常、プリンターを使用して行われる。プリンターは、焼結チャンバと粉末床を含み得、ともに特定の温度で維持され決定される。
【0063】
印刷される粉末は、粉末のガラス転移温度(Tg)より高い処理温度(Tp)に予熱することができる。粉末の予熱により、レーザーは、未融合粉末の層の選択された領域の温度を融点まで上昇させやすくなる。レーザーは、入力によって指定された場所でのみ粉末の融合を引き起こす。レーザーエネルギー曝露は、典型的には、使用中のポリマーに基づきポリマーの劣化を回避するために選択される。
【0064】
いくつかの実施形態では、印刷される粉末は、PEKK粉末の融点(Tm)又は結晶化点(Tc)より十分に低い温度Tp、例えば、Tg+80未満、例えば、Tg+70未満、Tg+60未満、Tg+50未満、又はTg+40未満である処理温度Tp(℃で表される)に予熱される。この実施形態によれば、処理温度は、温度焼結窓の間で正確に調整され、これにより、未焼結材料のリサイクルと、新しい3D物体/物品/部品の製造におけるその再利用が特に可能になる。これらの実施形態によれば、粉末は、処理温度への長期暴露により大きな影響を受けず、新しい未処理のポリマー材料に相当する一連の特性(即ち、粉末の外観及び色、離解及び合体能力)を示す。これにより、使用された粉末は、得られる印刷された物品の外観と機械的性能(特にポリマー材料の予想される性能)に影響を与えず、レーザー焼結3D印刷プロセスでの再利用に完全に適したものになる。
【0065】
PEKK粉末を作製する方法
本発明は、3D物体を製造する方法に使用するためのPEKK粉末を作製する方法に関し、この場合に、
-PEKKは、10℃/分の加熱速度を用いて窒素下にて30℃から800℃まで加熱する、ASTM D3850に従って熱重量分析で測定される、少なくとも500℃、好ましくは505℃、より好ましくは510℃のTd(1%)を有し、
-粉末は、粗い粉末から摩砕することにより製造されており、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、150μm未満のd0.9値を有する。
【0066】
本発明は、少なくとも1つのポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーを含む粉末の作製方法にも関し、前述の作製方法は、PEKKポリマーを得るために溶媒中でモノマーを重縮合する工程と、溶媒と塩を抽出する工程と、イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、150μm未満のd0.9値を有する粉末を得るために摩砕する工程とを含む。
【0067】
一実施形態によれば、モノマーの重縮合は、ルイス酸の存在下では起こらない、又は、モノマーの総重量に基づいて、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の量のルイス酸の存在下で起こる。
【0068】
本発明は、式(M)及び(P):
(式中、
-R
1及びR
2は、それぞれの場合に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
-i及びjは、それぞれの場合に、0~4の範囲の独立して選択される整数である)
の繰り返し単位の少なくとも50モル%を含む少なくともポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーを含む粉末の作製方法にも関し、モル%は、ポリマー中の合計モル数に基づいており、
前述の作製方法は、
-ルイス酸の非存在下、又は、モノマーの総重量に基づいて、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の量のルイス酸の存在下での溶媒中のPEKKポリマーの調製と、
-粉末を得るための塩と溶媒の抽出と、
-イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、150μm未満のd
0.9値を有する粉末を得るための粉末の摩砕と、
を含む。
【0069】
本発明の文脈において、ルイス酸は、BF3、AlCl3、FeCl3、CF3SO3H、及びCH3SO3Hからなる群から選択されるようにダイン(dine)されることができる。
【0070】
一実施形態によれば、少なくともポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマーを含む粉末の作製方法は、
工程a)溶媒中、モノマー(P-OH)、(M-OH)、(P-F)及び/又は(M-F):
(式中、
-R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれの場合に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
-p、q、r、及びsは、それぞれの場合に、0~4の範囲の独立して選択される整数である)
を重縮合する工程であって、
(P-OH)と(M-OH)のモルの(P-F)と(M-F)のモルに対するモル比は、
であるものである工程と、
工程b)粉末を得るために、溶媒と塩を抽出する工程と、
工程c)イソプロパノールでのレーザー散乱で測定される、150μm未満のd
0.9値を有する粉末を得るために、工程b)の粉末を摩砕する工程と、
を含む。
【0071】
本明細書に記載の方法は、圧縮成形、静電粉末コーティング又は溶媒系粉末コーティングにおける、レーザー焼結系付加製造又は他のタイプの高速プロトタイピング方法に好適な少ない揮発分と粒径分布(d0.9及びd0.5)を有するPEKK粉末を作製する。好ましい実施形態によれば、粉末は、少なくとも0.40、好ましくは少なくとも0.41、最も好ましくは少なくとも0.42のかさ密度ρBを有することを示している。
【0072】
一実施形態によれば、R3、R4、R5及びR6は、上記の式(P-OH)、(P-F)、(M-OH)及び(M-F)のそれぞれの位置で、1つ以上のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン及び四級アンモニウム基を任意選択的に含むC1~C12部位からなる群から独立して選択される。
【0073】
別の実施形態によれば、p、q、r、及びsは、それぞれR
3、R
4、R
5、及びR
6基において、ゼロである。この実施形態によれば、工程a)は、溶媒中、モノマー(P’-OH)、(M’-OH)、(P’-F)及び/又は(M’-F):
を重縮合する工程からなる。
【0074】
(P-OH)と(M-OH)のモルの(P-F)と(M-F)のモルに対するモル比は、
好ましくは
より好ましくは
更に好ましくは
であるものである。
【0075】
本発明の特定の実施形態によれば、工程a)は、
工程a1)反応混合物を180~320℃の第1の温度に加熱する工程と、
工程a2)モノマー(P-OH)及び(M-OH)、任意選択でモノマー(P-F)及び/又は(M-F)を溶媒中、接触させて配置する工程と、
工程a3)反応混合物を300~340℃の第2の温度に加熱する工程と、を含み、
この場合に、プロセスの間、例えば、工程a2)の間に少なくとも1つの塩基が添加される。
【0076】
本発明の特定の実施形態によれば、工程a)は、
工程a1)モノマー(P-OH)及び(M-OH)、任意選択でモノマー(P-F)及び/又は(M-F)を溶媒中、接触させて配置する工程と、
工程a2)反応混合物を180~320℃の第1の温度に加熱する工程と、
工程a3)反応混合物を300~340℃の第2の温度に加熱する工程と、を含み、
この場合に、少なくとも1つの塩基が、工程a1)に、及び/又は工程a2)とa3)の間に添加される。
【0077】
本発明の別の特定の実施形態によれば、この方法は、
工程a1)モノマー(P-OH)及び(M-OH)を、少なくとも1つの塩基とともに溶媒中、接触させて配置する工程と、
工程a2)反応混合物を180~320℃の第1の温度に加熱する工程と、
工程a2’)モノマー(P-F)及び/又は(M-F)を反応混合物に添加する工程と、
工程a3)反応混合物を300~340℃の第2の温度に加熱する工程と、
工程b)粉末を得るために、溶媒と塩を抽出する工程と、
工程c)工程b)の粉末を摩砕する工程と、を含む。
【0078】
本発明の別の実施形態によれば、この方法は、
工程a1)モノマー(P-OH)、(M-OH)及び(P-F)を溶媒中、接触させて配置する工程と、
工程a2)反応混合物を180~320℃の第1の温度に加熱する工程と、
工程a2’)少なくとも1つの塩基を反応混合物に添加する工程と、
工程a3)反応混合物を300~340℃の第2の温度に加熱する工程と、
工程b)粉末を得るために、溶媒と塩を抽出する工程と、
工程c)工程b)の粉末を摩砕する工程と、を含む。
【0079】
上記の全ての実施形態において、モノマーを配置する工程と、反応物を180~320℃の第1の温度に加熱する工程は、同時に行うことができる。
【0080】
本発明の別の実施形態によれば、この方法は、工程a)、a2)又はa3)の後にモノマー(P-F)及び/又は(M-F)が続いて添加されるものである。この任意選択の工程は、重縮合反応を停止することにより、PEKKポリマーの分子量を制御できる。この実施形態では、工程a)、a2)又はa3)の後に添加される(P-F)及び/又は(M-F)の量は、工程aで使用される(P-F)及び/又は(MF)の量の10モル%未満、好ましくは7モル%未満、より好ましくは5モル%未満である。
【0081】
本発明の別の実施形態によれば、この方法は、工程b)の後及び/又は工程c)の後、流動剤を粉末に添加することからなる工程を更に含む。
【0082】
本発明の別の実施形態によれば、この方法は、工程b)の粉末を、工程c)の前に25℃未満、例えば、0℃未満の温度に冷却することからなる工程を更に含む。
【0083】
工程a)-重縮合
重縮合反応は溶媒中で起こる。溶媒は、ジフェニルスルホン、ジベンゾチオフェンジオキシド、ベンゾフェノン又は1つ以上のこれらの任意の組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。好ましくは、溶媒は、ジフェニルスルホンを含む。より好ましくは、溶媒は、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%のジフェニルスルホンを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の合成方法で使用されるジフェニルスルホンは、2014年4月7日出願の参照により本明細書に援用される米国特許第9,133,111号明細書に詳述されている、限定された量の不純物を含む。
【0084】
工程a)で使用されるモノマーの溶媒に対する重量比は、
のものであり得、
式中、mはこの方法で使用されるそれぞれの成分の重量を示す。
【0085】
工程a)で使用される塩基は、アルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属重炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム及び/又は重炭酸カリウムを含み得る。好ましくは、工程a)で使用される塩基は、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムである。最も好ましくは、炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの混合物が、工程a)で使用される。好ましくは、工程a)で使用される炭酸ナトリウムは、2009年10月23日出願の参照により本明細書に援用される米国特許第9,175,136号明細書に詳述されている粒径分布要件を満たす。
【0086】
重縮合工程は、反応混合物を、180~320℃、例えば、185~310℃又は190~305℃の第1の温度に加熱することからなる少なくとも1つの工程を含み得る。
【0087】
重縮合工程は、反応混合物を、300~340℃、例えば、305~335℃又は310~330℃の第2の温度に加熱することからなる第2の工程をも含み得る。
【0088】
工程b)-塩と溶媒の抽出
プロセスの工程b)によれば、PEKKポリマーは、塩の濾過、粉末の洗浄及び任意選択で粉末の乾燥により回収される。例えば、アセトン及び水を使用して、塩と溶媒を抽出することができる。
【0089】
工程c)-摩砕
工程c)によると、例えば、本明細書で「粗い粉末」と呼ばれる、500~4000μmのd0.9値、及び/又は200~2000μmのd0.5値を有する塩と溶媒の重縮合反応及び抽出から得られた粉末は、摩砕されて150μm未満のd0.9値を有する本発明の粉末を生成する。
【0090】
粗い粒子は、例えば、ピン付きディスクミル、分級機付きジェットミル/流動化ジェットミル、インパクトミルと分級機、ピン/ピン-ビーターミル又は湿式摩砕ミル、或いはこうした装置の組み合わせで摩砕することができる。
【0091】
粗い粉末は、工程c)の前に、材料が脆くなる温度より低い温度、例えば、摩砕する前に25℃より低い温度に冷却できる。
【0092】
摩砕の工程は、冷却を追加して行うこともできる。冷却は、液体窒素又はドライアイスを使用して行うことができる。
【0093】
摩砕された粉末は、好ましくは空気セパレーター又は分級機で分離され、所定の分画のスペクトルを得ることができる。
【0094】
任意選択の更なる工程
一実施形態によれば、この方法は、工程c)の後に、粉末をPEKKポリマーのガラス転移温度(Tg)及びPEKKポリマーの溶融温度(Tm)の範囲の温度(Ta)に曝すことからなる工程を更に含み、Tg及びTmの両方は、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定される。温度Taは、PEKKポリマーのTgより少なくとも20℃高く、例えば、PEKKポリマーのTgより少なくとも30、40又は50℃高くなるように選択されることができる。温度Taは、PEKKポリマーのTmより少なくとも5℃低く、例えば、PEKKポリマーのTmより少なくとも10、20又は30℃低くなるように選択されることができる。温度Taへの粉末の暴露は、例えば、熱処理によるものであり得、オーブン(静的、連続、バッチ、対流)、流動床ヒーターで起こり得る。或いは、温度Taへの粉末の曝露は、電磁放射線又は粒子放射線の放射によるものであり得る。熱処理は、空気下又は不活性雰囲気下で行うことができる。好ましくは、熱処理は不活性雰囲気下で、より好ましくは2%未満の酸素を含む雰囲気下で行われる。
【0095】
一実施形態によれば、この方法は、工程c)の後に、例えば、ミキサーを使用して粉末を機械的処理に曝すことからなる工程を更に含む。小規模では、家庭用のKruppsコーヒーミルを使用できる。
【0096】
本発明は、上記のプロセスにより得られる粉末にも関する。
【0097】
用途
本発明の粉末は、SLS 3D印刷又は他の高速プロトタイピング方法(例えば、Airbus(登録商標)ThermoMelt(登録商標)、MJF又はCBAM)、圧縮成形又は静電粉末コーティング又は溶媒系粉末コーティングに使用できる。
【0098】
従って、本発明は、レーザー焼結付加製造システムを使用して三次元(3D)物体/物品/部品を製造するための粉末の使用、又は言い換えれば、レーザー焼結付加製造システムを使用して3次元物体を製造するための粉末を使用する方法にも関する。
【0099】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0100】
実施例1
原材料
1,2-ジクロロベンゼン、塩化テレフタロイル、塩化イソフタロイル、3,5-ジクロロベンゾイルクロリド、塩化アルミニウム(AlCl3)、メタノールは、Sigma Aldrichから購入した。
【0101】
1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、IN特許193687(1999年6月21日に出願、参照により本明細書に組み込まれる)に従って調製した。
【0102】
1,4-ビス(4’-FB)B:1,4-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼンは、Gilbらに付与された米国特許第5,300,693号明細書(1992年11月25日に出願、参照により本明細書に援用される)の実施例1に従ってフルオロベンゼンのフリーデル-クラフツ(Friedel-Crafts)アシル化によって調製し、クロロベンゼンでの再結晶によって精製して99.9%のGC純度に達した。
【0103】
1,3-ビス(4’-FB)B:1,3-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼンは、3B Corp,USAから入手し、クロロベンゼンでの再結晶によって精製して99.9%のGC純度に達した。
【0104】
1,4-ビス(4’-HB)B及び1,4ビス(4’-HB)B:1,4-ビス(4’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン及び1,3-ビス(4’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンは、Hackenbruchらに付与された米国特許第5,250,738号明細書(1992年2月24日出願、参照により本明細書に援用される)の実施例1に記載される手順に従って、それぞれ、1,4-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼン及び1,3-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼンの加水分解によって生成し、DMF/エタノールでの再結晶によって精製して99.0%のGC純度に達した。
【0105】
DPS:ジフェニルスルホン(ポリマーグレード)(純度99.8%)は、Provironから市販として得た。
【0106】
Na2CO3:炭酸ナトリウム、商標名Soda Solvay(登録商標)Lで販売され、Solvay SAから市販されている軽質ソーダ灰。炭酸ナトリウムは、d0.9<150μmを有し、使用前に乾燥させた。
【0107】
K2CO3:Armand Products Company(USA)から市販されている炭酸カリウム(d0.9<45μm)。炭酸カリウムを使用前に乾燥させた。
【0108】
LiCl:Acros Organics(Geel、Belgium)から市販されている塩化リチウム(無水粉末)。
【0109】
PEKKの調製
比較PEKK#1(比較例)
この例は、ルイス酸の存在下での調製プロセスを使用するPEKKの合成及びこれからの微粉末の調製を実証する。
【0110】
重縮合
攪拌機、乾燥N2注入管、反応媒体中に差し込まれている熱電対、及び凝縮器を備えた200mLの4つ口反応フラスコに、1,2-ジクロロベンゼン1000gと1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン40.63gを導入した。次いで、乾燥窒素の掃引下で、3.375gの塩化テレフタロイル、13.880gの塩化イソフタロイル及び0.354gの3,5-ジクロロベンゾイル塩化物を反応混合物に加えた。次いで、反応器を-5℃に冷却し、温度を5℃未満に保ちながら、71.88gの塩化アルミニウム(AlCl3)をゆっくりと加えた。反応を5℃で10分間保持し、次いで混合物の温度を5℃/分で90℃に上げた。反応混合物を90℃で30分間保持し、次いで30℃まで冷却した。30℃で、250gのメタノールをゆっくりと添加して、温度を60℃未満に維持した。添加終了後、反応混合物を2時間攪拌し続け、次いで30℃まで冷却した。
【0111】
濾過及び洗浄
次いで、ブフナーでの濾過により固形物を除去した。湿潤したケーキをフィルターにおいて更なる188gのメタノールで濯いだ。次いで、湿潤したケーキをビーカーにおいて440gのメタノールで2時間再スラリー化した。ポリマー固形物をブフナー漏斗で再度濾過し、湿潤したケーキをフィトラー(fitler)において188gのメタノールで濯いだ。この固形物を、470gの塩酸水溶液(3.5重量%)で2時間スラリー化した。次いで、ブフナーでの濾過により固形物を除去した。湿潤したケーキを更なる280gの水でフィルターにおいて濯いだ。次いで、湿潤したケーキを、250gの0.5N水酸化ナトリウム水溶液でビーカーにおいて2時間再スラリー化した。次いで、湿潤したケーキを、475gの水を用いてビーカーにおいて再スラリー化し、ブフナー漏斗で濾過した。最後の水洗工程を更に3回繰り返した。ポリマー反応器の粉末を、180℃の真空オーブンで12時間乾燥させた。
【0112】
摩砕
PEKK#1(1部)と砕いたドライアイス(2部)のよく混合されたブレンドを、逆流位置に取り付けられた0.5mm開口のConidurスクリーンと10,000rpmの速度の標準6ブレードローターを備えたRetsch SR300ローターミルの供給ポートにゆっくりと供給した。
【0113】
材料を、樹脂1部とドライアイス2部での砕いたドライアイスとともに、又逆流位置での0.08mmスクリーンと10,000rpmの標準6ブレードローターを有するRetsch SR300に再ブレンドした。
【0114】
全ての材料が0.08mmの摩砕スクリーンで摩砕されたら、120℃で約16時間真空オーブンにて乾燥させた。
【0115】
粉末のd0.9値は121.9μm、及びd0.5値は63.85μmである。
【0116】
PEKK#2(本発明の実施例)
この実施例は、ルイス酸を使用しない調製プロセスを使用するPEKKの合成及びこれからの微粉末の調製を実証する。
【0117】
重縮合
攪拌機、N2注入管、反応媒体中に差し込まれている熱電対付きClaisenアダプター、並びに凝縮器及びドライアイストラップ付きDean-Starkトラップを備えた500mLの4つ口反応フラスコに、127.82gのDPS、31.829gの1,3-ビス(4’-HB)B、7.957gの1,4-ビス(4’-HB)B、14.110gのNa2CO3及び0.078gのK2CO3を導入した。
【0118】
フラスコ内容物を真空下で排気し、次いで(10ppm未満のO2を含む)高純度窒素で満たした。次いで、反応混合物を一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0119】
反応混合物を200℃までゆっくり加熱した。200℃で、40.606gの1,4-ビス(4’-FB)Bを、30分にわたって粉末ディスペンサーによって反応混合物に添加した。添加の終了時、反応混合物を1℃/分で320℃まで加熱した。320℃で170分後に、0.403gの1,4-ビス(4’-FB)Bを、反応器において窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。5分後に0.530gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に、別の0.101gの1,4-ビス(4’-FB)Bを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。
【0120】
抽出
次いで、反応器内容物を、反応器からSS受皿に注ぎ込み冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリッションミルにて摩砕した。DPS及び塩を、pH1~12のアセトンと水の混合物から抽出した。次いで、粉末を反応器から取り出し、真空下120℃で12時間乾燥させ、72gのオフホワイト/黄色の粉末を得た。最終ポリマーは、60/40のT/I比を有した。粉末のd0.9値は1605μm、及びd0.5値は710μmである。
【0121】
摩砕
PEKK#2(1部)と砕いたドライアイス(2部)のよく混合されたブレンドを、0.5mm開口のConidurスクリーンと10,000rpmの速度の標準6ブレードローターを備えたRetsch ZM200ローターミルの供給ポートにゆっくりと供給した。摩砕した材料を100℃で16時間真空オーブンにて乾燥させた。
【0122】
このプロセスを、以下の開口サイズ、0.25mm、0.12mm、最後に0.08mmのスクリーンを使用して継続した。
【0123】
粉末のd0.9値は105.7μm、及びd0.5値は60.1μmである。
【0124】
PEKK#3(本発明の実施例)
この実施例は、ルイス酸を使用しない調製プロセスを使用するPEKKの合成及びこれからの微粉末の調製を実証する。
【0125】
重縮合
攪拌機、N2注入管、反応媒体中に差し込まれている熱電対付きClaisenアダプター並びに凝縮器及びドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを備えた500mLの4つ口反応フラスコに、127.82gのDPS、36.129gの1,3-ビス(4’-HB)B、9.032gの1,4-ビス(4’-HB)B、及び46.365gの1,4-ビス(4’-FB)Bを導入した。
【0126】
フラスコ内容物を真空下で排気し、次いで(10ppm未満のO2を含む)高純度窒素で満たした。反応混合物を次いで一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0127】
反応混合物を200℃までゆっくり加熱した。200℃で、15.609gのNa2CO3及び0.098gのK2CO3を60分にわたって粉末ディスペンサーによって反応混合物に添加した。添加の終了時、反応混合物を1℃/分で320℃まで加熱した。320℃で163分後に、0.914gの1,4-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼンを、反応器において窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。5分後、0.601gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に、別の0.457gの1,4-bis(4’-FB)Bを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。
【0128】
抽出
次いで、反応器内容物を、反応器からSS受皿に注ぎ込み冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリッションミルにて摩砕した。ジフェニルスルホン及び塩を、pH1~12のアセトンと水の混合物から抽出した。粉末を次いで反応器から取り出し、真空下120℃で12時間乾燥させ、81gのオフホワイト/黄色の粉末を得た。ポリマーは、60/40のT/I比を有した。粉末のd0.9値は1425μm、d0.5値は650μmである。
【0129】
摩砕
PEKK#3(1部)と砕いたドライアイス(2部)のよく混合されたブレンドを、逆流位置に取り付けられた0.5mm開口のConidurスクリーンと10,000rpmの速度の標準6ブレードローターを備えたRetsch SR300ローターミルの供給ポートにゆっくりと供給した。
【0130】
材料を、樹脂1部とドライアイス2部での砕いたドライアイスとともに、又逆流位置での0.08mmスクリーンと10,000rpmの標準6ブレードローターを有するRetsch SR300に再ブレンドした。
【0131】
全ての材料が0.08mmの摩砕スクリーンで摩砕されたら、120℃で約16時間真空オーブンにて乾燥させた。
【0132】
粉末のd0.9値は112.9μm、及びd0.5値は64.46μmである。
【0133】
試験
熱分解温度(Td)
1重量%損失での熱分解温度、Td(1%)は、ASTM D3850に従って熱重量分析(「TGA」)によって測定した。TGAは、10℃/分の加熱速度で窒素下で(60mL/分)30℃~800℃までTA Instruments TGA Q500で行った。
【0134】
熱転移(Tg、Tm)
ポリマーのガラス転移温度及び溶融温度は、10℃/分の加熱及び冷却速度を用いてASTM D3418に従って示差走査熱量分析(DSC)を使用して測定した。3つの走査:360℃までの第1の加熱、続いて30℃への第1の冷却、続いて360℃までの第2の加熱をそれぞれのDSC試験について使用した。Tg及びTmは、第2の加熱から決定した。DSCは、窒素をキャリアガスとして使用して(純度99.998%、50mL/分)TA Instruments DSC Q20で実行した。
【0135】
メルトフローインデックス(MFI)
MFIは、ASTM D1238を用いて340℃で6分間の滞留時間にて8.4kgの重量で測定した。
【0136】
固有粘度(IV)
IVは、ASTM D2857に従って、Cannon-Fenskeキャピラリー、サイズ200を使用して、30℃で濃H2SO4(最小96重量%)中の0.5重量/体積%の溶液で測定した。
【0137】
PSD(d0.9,d0.5)
PSD(体積分布)は、湿式モード(128チャネル、0.0215~1408μm)でレーザー散乱Microtrac S3500分析器を使用して、平均3回実行して決定した。溶媒は、屈折率1.38のイソプロパノールであり、粒子は1.59の屈折率を有すると想定された。超音波モードが有効になり(25W/60秒)、流量は55%に設定した。
【0138】
BET表面積
粉末の多孔度を、25℃の浸漬/排気温度を使用してISO9277に従って測定した。
【0139】
かさ密度(ρB)
かさ密度は、摩砕したポリマーを風袋引きした100mLメスシリンダーに約90~95mLまで加え、材料を自然に沈降させることにより決定した。体積を読み取り、シリンダーを再計量した。かさ密度を以下の式によって決定した。
ρB=質量/体積
【0140】
結果
【0141】
【0142】
PEKK粉末#2及び#3(本発明による)は、
・比較のPEKK#1粉末と比較して、Td(1%)が高いほど、残留揮発物質の濃度がはるかに低いこと、
・粉末の流動性と安定性を改善する、より低いBET表面積によって示されるより低い多孔度、及び
・例えば、SLS 3D印刷プロセスで使用される場合、粉末床の充填を改善するより高いかさ密度を示す。
【0143】
実施例2
原材料
実施例1のPEKK#1、PEKK#2及びPEKK#3
流動剤:Cabotから市販されているCab-O-Sil(登録商標)M-5。
流動剤との混合
250mLビーカーに100.0gのPEKK#1、PEKK#2又はPEKK#3、及び0.20gの流動剤を加えた。混合物を2分間撹拌し、次いでKrups Model F2034251 Coffee Millに注ぎ、30秒間ブレンドし、次いで再度更に30秒間ブレンドした。
【0144】
結果
【0145】
【0146】
0.2重量%の流動剤を更に含む本発明の粉末(PEKK#2及びPEKK#3)は、依然として、
・より低い濃度の残留揮発物質、
・より低い多孔度、及び
・より高いかさ密度を示す。
【0147】
実施例3
比較PEKK#4(比較例)
この例では、市販のKepstan(商標)6004PEKKペレットの試料からPEKK微粉末を調製する方法を実証する。
【0148】
Kepstan(商標)6004ペレットはArkemaから入手した。
【0149】
摩砕
PEKKペレットを、逆流位置に取り付けられた0.5mm開口のConidurスクリーンと10,000rpmの速度の標準6ブレードローターを備えたRetsch SR200ローターミルの供給ポートにゆっくりと供給した。
【0150】
次いで、材料を、又逆流位置での0.08mmスクリーンと10,000rpmの標準6ブレードローターを有するRetsch SR200に再供給した。
【0151】
全ての材料が0.08mmの摩砕スクリーンで摩砕されたら、120℃で約16時間真空オーブンにて乾燥させた。
【0152】
粉末のd0.9値は150μm、及びd0.5値は80μmである。
【0153】
Td(1%)について粉末をTGAにより分析した(上記の実施例1に記載されるように)。結果を以下の表3に示す。
【0154】
実施例4
比較PEKK#5(比較例)
この実施例は、特許出願米国特許出願公開第2015/183918号明細書の実施例5によるルイス酸の存在下での調製プロセスを使用するPEKKの合成及びこれからの微粉末の調製を実証する。
【0155】
重縮合
攪拌機、乾燥N2注入管、反応媒体中に差し込まれている熱電対、及び凝縮器を備えた2000mLの4つ口反応フラスコに、1,600gの1,2-ジクロロベンゼンと65.00gの1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを導入した。乾燥窒素の掃引下で、5.400gの塩化テレフタロイル、22.200gの塩化イソフタロイル及び0.38gの塩化ベンゾイルを反応混合物に加えた。次いで、反応器を-5℃に冷却し、温度を5℃未満に保ちながら、塩化アルミニウム(AlCl3)115.00gをゆっくりと加えた。反応を5℃で10分間保持し、次いで混合物の温度を1.5℃/分で90℃に上げた。反応混合物を90℃で30分間保持し、次いで30℃まで冷却した。30℃で、400gの3%塩酸水溶液をゆっくりと加えて、温度を60℃未満に維持した。添加終了後、反応混合物を2時間攪拌し続け、次いで30℃に冷却した。
【0156】
濾過及び洗浄
次いで、ブフナーでの濾過により固形物を除去した。次いで、攪拌機、乾燥N2注入管、反応媒体中に差し込まれている熱電対、及び凝縮器付きDean-Starkトラップを備えた2000Lの4つ口反応フラスコに、800gの脱イオン水とともに湿潤したケーキを導入した。スラリーを98℃まで加熱し、約600gの液体をDean-Stark受容器に回収した。混合物を室温まで冷却し、ブフナーで濾過した。湿潤したケーキを、ビーカーにおいて700gの3%塩酸水溶液で2時間再スラリー化した。ポリマー固形物をブフナー漏斗で再び濾過した。固形物を700gのDI水で2時間スラリー化した。次いで、ブフナーでの濾過により固形物を除去した。湿潤したケーキを更なる450gの水でフィルターにおいて濯いだ。次いで、湿潤したケーキをビーカーにおいて0.5N水酸化ナトリウム水溶液400gを用いて2時間再スラリー化した。次いで、湿潤したケーキを700gの水を用いてビーカーにおいて再スラリー化し、ブフナー漏斗で濾過した。最後の水洗工程を1回繰り返した。ポリマー反応器粉末を180℃の真空オーブンで12時間乾燥させ、IVが0.77dL/gの白色粉末79.4gを得た。
【0157】
摩砕
PEKKは、逆流位置に取り付けられた0.5mm開口のConidurスクリーンと10,000rpmの速度の標準6ブレードローターを備えたRetsch SR200ローターミルの供給ポートにゆっくりと供給した。
【0158】
材料を、又逆流位置での0.08mmスクリーンと10,000rpmの標準6ブレードローターを有するRetsch SR200に再供給した。
【0159】
全ての材料が0.08mmの摩砕スクリーンで摩砕されたら、120℃で約16時間真空オーブンにて乾燥させた。
【0160】
粉末(PEKK#4)のd0.9値は134μm、及びd0.5値は60μmである。
【0161】
Td(1%)結果を以下の表3に示す。
【0162】
実施例5
比較PEKK#6(比較例)
この実施例は、特許出願国際公開第2017/194855号パンフレットの実施例Cによるルイス酸の存在下での調製プロセスを使用するPEKKの合成及びこれからの微粉末の調製を実証する。
【0163】
重縮合
PEKK#5の場合と同じ手順に従った。
【0164】
濾過及び洗浄
固形物をブフナーでの濾過により除去した。次いで、攪拌機、乾燥N2注入管、反応媒体中に差し込まれている熱電対、及び凝縮器付きDean-Starkトラップを備えた2000Lの4つ口反応フラスコに、800gのメタノールとDI水の80/20の混合物とともに湿潤したケーキを導入した。スラリーを98℃まで加熱し、約600gの液体をDean-Stark受容器に回収した。混合物を室温まで冷却し、ブフナーで濾過した。湿潤したケーキを、ビーカーにおいて700gの3%塩酸水溶液で2時間再スラリー化した。ポリマー固形物をブフナー漏斗で再び濾過した。固形物を700gのDI水で2時間スラリー化した。次いで、ブフナーでの濾過により固形物を除去した。湿潤したケーキを更なる450gの水でフィルターにおいて濯いだ。次いで、湿潤したケーキをビーカーにおいて0.5N水酸化ナトリウム水溶液400gを用いて2時間再スラリー化した。次いで、湿潤したケーキを700gの水を用いてビーカーにおいて再スラリー化し、ブフナー漏斗で濾過した。最後の水洗工程を1回繰り返した。ポリマー反応器粉末を180℃の真空オーブンで12時間乾燥させ、IVが0.99dL/gの白色粉末65.1gを得た。
【0165】
摩砕
PEKKは、逆流位置に取り付けられた0.5mm開口のConidurスクリーンと10,000rpmの速度の標準6ブレードローターを備えたRetsch SR200ローターミルの供給ポートにゆっくりと供給した。
【0166】
材料を、又逆流位置での0.08mmスクリーンと10,000rpmの標準6ブレードローターを有するRetsch SR200に再供給した。
【0167】
全ての材料が0.08mmの摩砕スクリーンで摩砕されたら、120℃で約16時間真空オーブンにて乾燥させた。
【0168】
粉末のd0.9値は134μm、及びd0.5値は60μmである。
【0169】
Td(1%)結果を以下の表3に示す。
【0170】
結果
【0171】