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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】信号発生装置及び信号発生方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20240610BHJP
   H03H 17/02 20060101ALI20240610BHJP
   H03H 17/06 20060101ALI20240610BHJP
   H04B 3/46 20150101ALI20240610BHJP
【FI】
G01R31/28 Q
H03H17/02 671C
H03H17/06 633J
H04B3/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020000415
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2021110553
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-01-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】岩井 達也
(72)【発明者】
【氏名】大沼 弘季
【合議体】
【審判長】中塚 直樹
【審判官】田邉 英治
【審判官】佐藤 久則
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216390(JP,A)
【文献】特開2019-4421(JP,A)
【文献】特許第6625169(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性を、前記伝送規格で求められるタップ数よりも少ないタップ数で模擬した信号を発生する信号発生装置(1)であって、
前記伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの各タップのタップ値を設定するタップ値設定手段(2)と、
前記タップ値設定手段にて設定された各タップのタップ値を含む配列数から逆フーリエ変換を行って前記伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性を算出する逆フーリエ変換手段(3)と、
前記逆フーリエ変換手段にて得られるFIRフィルタの周波数特性のロス値を、前記信号発生装置が備えるFIRフィルタ(11)の周波数特性における設定ロス値と該設定ロス値を模擬するために必要なロス値との差分値から得られるロス値補正曲線を用いて補正するロス値補正手段(4)と、
前記逆フーリエ変換手段にて得られるFIRフィルタの周波数特性のDCレベルとナイキスト周波数におけるロス値の2点間を直線で結んだ周波数特性ファイルを作成する周波数特性ファイル作成手段(5)と、
前記周波数特性ファイル作成手段にて作成された周波数特性ファイルをフーリエ変換して得られるインパルス応答から前記信号発生装置が備えるFIRフィルタのタップ数だけ切り出すインパルス応答切出手段(7)と、
前記インパルス応答切出手段にて切り出した各タップのタップ値を、当該切り出した前記各タップのタップ値の合計値と前記伝送規格で求められるFIRフィルタの各タップのタップ値の合計値との比に基づいて補正するタップ値補正手段(8)と、
前記タップ値補正手段にて補正された各タップのタップ値を前記信号発生装置が備えるFIRフィルタの各タップに設定して前記伝送規格に応じたエンファシス波形の信号を発生する信号発生手段(10)とを備えたことを特徴とする信号発生装置。
【請求項2】
伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性を、前記伝送規格で求められるタップ数よりも少ないタップ数で模擬した信号を発生する信号発生方法であって、
前記伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの各タップのタップ値を設定するステップと、
前記設定された各タップのタップ値を含む配列数から逆フーリエ変換を行って前記伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性を算出するステップと、
前記逆フーリエ変換にて得られるFIRフィルタの周波数特性のロス値を、信号発生装置(1)が備えるFIRフィルタ(11)の周波数特性における設定ロス値と該設定ロス値を模擬するために必要なロス値との差分値から得られるロス値補正曲線を用いて補正するステップと、
前記逆フーリエ変換にて得られるFIRフィルタの周波数特性のDCレベルとナイキスト周波数におけるロス値の2点間を直線で結んだ周波数特性ファイルを作成するステップと、
前記作成された周波数特性ファイルをフーリエ変換して得られるインパルス応答から前記信号発生装置が備えるFIRフィルタのタップ数だけ切り出すステップと、
前記切り出した各タップのタップ値を、当該切り出した前記各タップのタップ値の合計値と前記伝送規格で求められるFIRフィルタの各タップのタップ値の合計値との比に基づいて補正するステップと、
前記補正された各タップのタップ値を前記信号発生装置が備えるFIRフィルタの各タップに設定して前記伝送規格に応じたエンファシス波形の信号を発生するステップとを含むことを特徴とする信号発生方法。
【請求項3】
前記配列数が2のべき乗の配列数からなり、
前記逆フーリエ変換手段は、前記タップ値設定手段にて設定された各タップのタップ値を含む2のべき乗の配列数において、前記設定された各タップ以外の箇所を0埋めした後に逆フーリエ変換することを特徴とする請求項1に記載の信号発生装置。
【請求項4】
前記配列数が2のべき乗の配列数からなり、
前記設定された各タップのタップ値を含む2のべき乗の配列数において、前記設定されたタップ以外の箇所を0埋めした後に逆フーリエ変換するステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の信号発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号の伝送規格である例えばPCIeやUSBなどに対応したデバイス(DUT:被測定物)を試験するために、所望のロス値を与えた信号を発生させる信号発生装置及び信号発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1に開示されるように、誤り率測定装置は、光電変換部品等の被測定物に固定データを含むテスト信号を送信し、被測定物を介して入力される被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較してビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定する装置として従来から知られている。
【0003】
ところで、この種の誤り率測定装置の被測定物として、例えばPCIe Gen4.0などのデジタル信号の伝送規格に対応したデバイスにおいては、伝送規格毎のテストボード(Test Board)の特性を評価するため、テストボードへの入力に規定の伝送線路損失を模擬したテストフィクスチャであるISIキャリブレーションチャネル(Calibration Channel:校正チャネル)を導入する必要がある。そして、校正チャネルを通過することにより信号品質は劣化するため、それを補償するにはエンファシスを用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-274474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の信号発生装置は、FIRフィルタを用いてエンファシスを形成するが、そのタップ数は物理デバイスのため変更することができない。しかし、求められるタップ数は規格によって異なっており、例えば4タップでロスを補償する場合もあれば5タップでロスを補償する場合もある。
【0006】
ここで、信号発生装置のFIRフィルタが備えるタップ数が十分多ければどの規格の要求にも応えることができる。しかし、近年のビットレートの高速化に伴って補償しなければならないロスも大きくなっており、FIRフィルタが十分なタップ数を備えていない場合には、欠けたタップ以外のタップに対してそのままタップ値を設定しただけでは十分にロスを補償することができないという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、伝送規格で求められるタップ数よりも少ないタップ数で周波数特性を模擬した信号を発生することができる信号発生装置及び信号発生方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された信号発生装置は、伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性を、前記伝送規格で求められるタップ数よりも少ないタップ数で模擬した信号を発生する信号発生装置1であって、
前記伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの各タップのタップ値を設定するタップ値設定手段2と、
前記タップ値設定手段にて設定された各タップのタップ値を含む配列数から逆フーリエ変換を行って前記伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性を算出する逆フーリエ変換手段3と、
前記逆フーリエ変換手段にて得られるFIRフィルタの周波数特性のロス値を、前記信号発生装置が備えるFIRフィルタ11の周波数特性における設定ロス値と該設定ロス値を模擬するために必要なロス値との差分値から得られるロス値補正曲線を用いて補正するロス値補正手段4と、
前記逆フーリエ変換手段にて得られるFIRフィルタの周波数特性のDCレベルとナイキスト周波数におけるロス値の2点間を直線で結んだ周波数特性ファイルを作成する周波数特性ファイル作成手段5と、
前記周波数特性ファイル作成手段にて作成された周波数特性ファイルをフーリエ変換して得られるインパルス応答から前記信号発生装置が備えるFIRフィルタのタップ数だけ切り出すインパルス応答切出手段7と、
前記インパルス応答切出手段にて切り出した各タップのタップ値を、当該切り出した前記各タップのタップ値の合計値と前記伝送規格で求められるFIRフィルタの各タップのタップ値の合計値との比に基づいて補正するタップ値補正手段8と、
前記タップ値補正手段にて補正された各タップのタップ値を前記信号発生装置が備えるFIRフィルタの各タップに設定して前記伝送規格に応じたエンファシス波形の信号を発生する信号発生手段10とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載された信号発生方法は、伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性を、前記伝送規格で求められるタップ数よりも少ないタップ数で模擬した信号を発生する信号発生方法であって、
前記伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの各タップのタップ値を設定するステップと、
前記設定された各タップのタップ値を含む配列数から逆フーリエ変換を行って前記伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性を算出するステップと、
前記逆フーリエ変換にて得られるFIRフィルタの周波数特性のロス値を、信号発生装置1が備えるFIRフィルタ11の周波数特性における設定ロス値と該設定ロス値を模擬するために必要なロス値との差分値から得られるロス値補正曲線を用いて補正するステップと、
前記逆フーリエ変換にて得られるFIRフィルタの周波数特性のDCレベルとナイキスト周波数におけるロス値の2点間を直線で結んだ周波数特性ファイルを作成するステップと、
前記作成された周波数特性ファイルをフーリエ変換して得られるインパルス応答から前記信号発生装置が備えるFIRフィルタのタップ数だけ切り出すステップと、
前記切り出した各タップのタップ値を、当該切り出した前記各タップのタップ値の合計値と前記伝送規格で求められるFIRフィルタの各タップのタップ値の合計値との比に基づいて補正するステップと、
前記補正された各タップのタップ値を前記信号発生装置が備えるFIRフィルタの各タップに設定して前記伝送規格に応じたエンファシス波形の信号を発生するステップとを含むことを特徴とする。
本発明の請求項3に記載された信号発生装置は、請求項1の信号発生装置において、
前記配列数が2のべき乗の配列数からなり、
前記逆フーリエ変換手段は、前記タップ値設定手段にて設定された各タップのタップ値を含む2のべき乗の配列数において、前記設定された各タップ以外の箇所を0埋めした後に逆フーリエ変換することを特徴とする。
本発明の請求項4に記載された信号発生方法は、請求項2の信号発生方法において、
前記配列数が2のべき乗の配列数からなり、
前記設定された各タップのタップ値を含む2のべき乗の配列数において、前記設定されたタップ以外の箇所を0埋めした後に逆フーリエ変換するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性を、伝送規格で求められるタップ数よりも少ないタップ数で模擬した信号を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る信号発生装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】(a)伝送規格で求められる5タップのFIRフィルタの各タップに設定されるタップ値を示す図、(b)変換後の4タップのFIRフィルタの各タップに設定されるタップ値を示す図である。
図3】伝送規格で求められる5タップのFIRフィルタの周波数特性とC(-3)=0としたときのFIRフィルタの周波数特性を示す図である。
図4】本発明に用いられる4タップにおけるロス値補正曲線を示す図である。
図5】本発明に係る信号発生装置が備える4タップのFIRフィルタの構成例を示す図である。
図6】伝送規格で求められる5タップのFIRフィルタの周波数特性と変換後の4タップのFIRフィルタの周波数特性を示す図である。
図7】本発明に係る信号発生装置によるタップ値の変換方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本実施の形態の信号発生装置1は、テストボードへの入力波形を歪ませる所望の伝送規格(IEEE802.3ck)に応じたエンファシス波形の信号を発生するものであり、図1に示すように、タップ値設定手段2、逆フーリエ変換手段3、ロス値補正手段4、周波数特性ファイル作成手段5、フーリエ変換手段6、インパルス応答切出手段7、タップ値補正手段8、補正タップ値設定手段9、信号発生手段10を備えて構成される。
【0014】
なお、以下の説明では、信号発生装置1(信号発生手段10)が備える4タップのFIRフィルタ11により、伝送規格(IEEE802.3ck)で求められる5タップのFIRフィルタの周波数特性を模擬した信号を発生する場合を例にとって説明する。
【0015】
タップ値設定手段2は、伝送規格(IEEE802.3ck)で求められるFIRフィルタの各タップのタップ値を入力して設定する。伝送規格で定められている値の範囲から5タップのFIRフィルタの各タップのタップ値として、例えばC(-3)=-0.06、C(-2)=0.1、C(-1)=-0.15、C(0)=0.6、C(1)=-0.15を選択する場合には、図2(a)に示すように、C(-3)=-0.06、C(-2)=0.1、C(-1)=-0.15、C(0)=0.6、C(1)=-0.15をタップ値設定手段2にて入力して設定する。
【0016】
逆フーリエ変換手段3は、タップ値設定手段2にて入力設定されたタップ値から逆フーリエ変換を行い、伝送規格で求められるFIRフィルタの周波数特性を算出する。具体的には、伝送規格で定められている値の範囲から5タップのFIRフィルタの各タップのタップ値として、例えばC(-3)=-0.06、C(-2)=0.1、C(-1)=-0.15、C(0)=0.6、C(1)=-0.15がタップ値設定手段2にて入力設定されると、この入力設定された各タップのタップ値を含む配列数から逆フーリエ変換を行い、伝送規格で求められる5タップのFIRフィルタの周波数特性を算出する(図3の実線)。但し、実際に逆フーリエ変換を行う際には、2のべき乗の配列数(例えば、1024、2048、4096など)が必要となる。このため、5タップのタップ値を含む2のべき乗の配列数において、5タップ以外の箇所を0埋めした後に逆フーリエ変換する。なお、配列数を増やせばより正確な周波数特性を求めることができる。
【0017】
ここで、5タップのFIRフィルタの周波数特性を図3の実線で示し、C(-3)=0としたとき(4タップにした場合)の周波数特性を点線で示す。5タップのFIRフィルタの周波数特性では、DC成分のロス値が-9.37dB、ナイキスト周波数のロス値が0.51dBであり、その差分が-9.88dBとなる。図3の実線と点線で示す2つの周波数特性を比較すると、5タップのFIRフィルタの周波数特性(実線)では約10dBのロスを補償できているのに対し、C(-3)=0にしたときの周波数特性(点線)では約8dBしかロスを補償できていないことが分かる。
【0018】
ロス値補正手段4は、逆フーリエ変換手段3にて得られるFIRフィルタの周波数特性のロス値を図4に示すロス値補正曲線を用いて補正する。具体的には、逆フーリエ変換手段3にて5タップのFIRフィルタの周波数特性が得られると、図4の矢印で示すように、逆フーリエ変換手段3にて得られる周波数特性のDC成分のロス値(-9.37dB)とナイキスト周波数のロス値(0.51dB)との差分からなる設定ロス値(-9.88dB)を補正ロス値(-11.85dB)として、ロス値補正手段4にてロス値補正曲線を用いたロス値の補正を行う。
【0019】
ロス値補正曲線は、入力データの周波数特性(振幅特性)において設定したい目標のロス値(設定ロス値:図4の縦軸)と、設定ロス値を模擬するために必要なロス値(補正ロス値:図4の横軸)との差分値(設定ロス値に対する誤差)から公知の処理手段やソフトウェアなどを用いて作成される近似曲線からなる。ロス値補正曲線は、周波数には依存せず、タップ数によって曲線が変化するため、予めタップ数ごとにテーブル化されたデータとして記憶しておいたり、所望とするタップ数に応じて都度計算によって算出する。図4はタップ数が4タップの場合のロス値補正曲線を示している。
【0020】
なお、ロス値補正曲線を作成するにあたっては、デジタル信号の伝送規格の許容誤差範囲(例えば±0.5dB)に収まるように、特に変化点近傍のポイントを多く求めて精度を高めるのが好ましい。
【0021】
周波数特性ファイル作成手段5は、逆フーリエ変換手段3にて算出した周波数特性(伝送規格で求められるFIRフィルタの周波数特性)のDCレベルとナイキスト周波数におけるロス値の2点間を直線で結んだ周波数特性ファイルを作成する。
【0022】
フーリエ変換手段6は、周波数特性ファイル作成手段5にて作成された周波数特性ファイルをフーリエ変換してインパルス応答を算出する。
【0023】
インパルス応答切出手段7は、フーリエ変換手段6にて求めたインパルス応答のピークを基準として信号発生手段10が備える図5のFIRフィルタ11のタップ数分のポイントを切り出す。具体的には、信号発生手段10が図5の4タップのFIRフィルタ11を備える場合、フーリエ変換手段6にて求めたインパルス応答のピークを基準として4タップ分のポイントを切り出す。このとき切り出された4タップ分のポイントのタップ値は、C(-2):522.1、C(-1):-1021.3、C(0):3429.7、C(1):-1021.3であり、合計値:1909.2となる。
【0024】
タップ値補正手段8は、伝送規格で求められる5タップのFIRフィルタの周波数特性におけるDCレベルのロス値およびナイキスト周波数のロス値と一致するように、インパルス応答切出手段7にて切り出した4タップの各タップのタップ値を、インパルス応答切出手段7にて切り出した各タップのタップ値×(タップ値設定手段2で入力した各タップのタップ値の合計値/インパルス応答切出手段7にて切り出した各タップのタップ値の合計値)による計算式を用いて補正する。
【0025】
具体的に、インパルス応答切出手段7にて切り出した4タップ(C(-2)、C(-1)、C(0)、C(1))の補正後のタップ値は、5タップのタップ値の合計値=0.34、インパルス応答切出手段7にて切り出したタップ値の合計値=1909.2なので、図2(b)に示すように、C(-2)=522.1×(0.34/1909.2)=0.093、C(-1)=-1021.3×(0.34/1909.2)=-0.1819、C(0)=3429.7×(0.34/1909.2)=0.6108、C(1)=-1021.3×(0.34/1909.2)=-0.1819となる。
【0026】
補正タップ値設定手段9は、信号発生手段10が備える図5の4タップのFIRフィルタ11の各タップに対し、タップ値補正手段8にて補正された各タップのタップ値(補正タップ値)を自動入力設定する(図2(b)のC(-2)、C(-1)、C(0)、C(1))。
【0027】
信号発生手段10は、図5の4タップのFIRフィルタ11を含み、FIRフィルタ11に設定される図2(b)の各タップのタップ値(タップ係数)に基づいてテストボードへの入力波形を歪ませる所望の伝送規格に応じたエンファシス波形の信号を発生する。
【0028】
FIRフィルタ11は、図5に示すように、D型フリップフロップなどの4個の遅延回路11a-1,11a-2,11a-3,11a-4と、4個の乗算器11b-1,11b-2,11b-3,11b-4と、3個の加算器11c-1,11c-2,11c-3とを備え、入力端子12と出力端子13との間に4個の遅延回路11a-1,11a-2,11a-3,11a-4を直列に接続して4個のタップを形成する。各タップには設定されたタップ係数を乗算するための4個の乗算器11b-1,11b-2,11b-3,11b-4が接続される。また、4個の乗算器11b-1,11b-2,11b-3,11b-4の前後の段の出力は、3個の加算器11c-1,11c-2,11c-3の対応する段に接続される。そして、4個の乗算器11b-1,11b-2,11b-3,11b-4の乗算結果の総和を算出して出力端子13から出力する。
【0029】
次に、上記のように構成される信号発生装置1による信号発生方法について図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0030】
伝送規格(IEEE802.3ck)で定められている値の範囲から選択される5タップのFIRフィルタの各タップのタップ値として、例えば図2(a)のC(-3)=-0.06、C(-2)=0.1、C(-1)=-0.15、C(0)=0.6、C(1)=-0.15をタップ値設定手段2にて入力設定する(ST1)。
【0031】
伝送規格で定められている値の範囲から5タップのFIRフィルタの各タップのタップ値として、例えばC(-3)=-0.06、C(-2)=0.1、C(-1)=-0.15、C(0)=0.6、C(1)=-0.15がタップ値設定手段2にて入力設定されると、この入力設定された各タップのタップ値を含む2のべき乗の配列数(5タップ以外の箇所を0埋め)から逆フーリエ変換を行い、図3の実線で示す5タップのFIRフィルタの周波数特性を算出する(ST2)。
【0032】
逆フーリエ変換手段3にて5タップのFIRフィルタの周波数特性が得られると、この周波数特性に対してロス値補正手段4にて図4の4タップにおけるロス値補正曲線を用いてロス値の補正を行い(ST3)、周波数特性ファイル作成手段5にて5タップのFIRフィルタの周波数特性のDCレベルとナイキスト周波数におけるロス値の2点間を直線で結んだ周波数特性ファイルを作成する(ST4)。
【0033】
そして、周波数特性ファイル作成手段5にて作成された周波数特性ファイルをフーリエ変換手段6にてフーリエ変換してインパルス応答を算出し(ST5)、フーリエ変換手段6にて求めたインパルス応答のピークを基準として4タップ分のポイントをインパルス応答切出手段7が切り出す(ST6)。
【0034】
続いて、伝送規格で求められる5タップのFIRフィルタの周波数特性におけるDCレベルのロス値およびナイキスト周波数のロス値と一致するように、インパルス応答切出手段7にて切り出した4タップ分のタップ値を、所定の計算式を用いてタップ値補正手段8にて補正する(ST7)。
【0035】
そして、タップ値補正手段8にて補正された4タップのタップ値(補正タップ値:図2(b)のC(-2)、C(-1)、C(0)、C(1))を、図5の4タップのFIRフィルタ11の各タップのタップ値として補正タップ値設定手段9が自動入力設定する(ST8)。これにより、5タップのFIRフィルタの周波数特性(図6の実線)におけるDCレベルのロス値およびナイキスト周波数のロス値と一致した4タップのFIRフィルタの周波数特性(図6の点線)を得ることができる。
【0036】
図5の4タップのFIRフィルタ11の各タップのタップ値が設定されると、設定された各タップのタップ値(タップ係数)に基づいて伝送規格に応じたエンファシス波形の信号を信号発生手段10が発生する(ST9)。
【0037】
ところで、上述した実施の形態では、信号発生装置1(信号発生手段10)が備えるFIRフィルタ11のタップ数よりも多いタップ数の周波数特性を模擬した信号を発生するにあたって、4タップのFIRフィルタ11のタップ値を変換して伝送規格で求められる5タップのFIRフィルタの周波数特性を模擬した信号を発生する場合を例にとって説明したが、これに限定されるものではない。例えば信号発生手段10が少なくとも3タップのFIRフィルタを備え、ロスを補償するタップ数が4タップ以上であってもよい。
【0038】
このように、本実施の形態によれば、信号発生装置が備えるFIRフィルタのタップ数よりも伝送規格で求められるタップ数が多い場合、伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性のDCレベルのロス値およびナイキスト周波数のロス値と一致するように信号発生装置が備えるFIRフィルタの各タップのタップ値を補正して設定することができる。これにより、伝送規格で求められるタップ数のFIRフィルタの周波数特性を、伝送規格で求められるタップ数よりも少ないタップ数で模擬した信号を発生することができる。すなわち、信号発生装置が備えるFIRフィルタのタップ数が少なくても、これよりもタップ数の多いFIRフィルタの周波数特性を模擬した信号を発生することができる。
【0039】
以上、本発明に係る信号発生装置及び信号発生方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1 信号発生装置
2 タップ値設定手段
3 逆フーリエ変換手段
4 ロス値補正手段
5 周波数特性ファイル作成手段
6 フーリエ変換手段
7 インパルス応答切出手段
8 タップ値補正手段
9 補正タップ値設定手段
10 信号発生手段
11 FIRフィルタ
11a-1,11a-2,11a-3,11a-4 遅延回路
11b-1,11b-2,11b-3,11b-4 乗算器
11c-1,11c-2,11c-3 加算器
12 入力端子
13 出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7