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特許7500200撮像装置、ブレ補正方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】撮像装置、ブレ補正方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/68 20230101AFI20240610BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240610BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20240610BHJP
   G03B 7/00 20210101ALI20240610BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240610BHJP
【FI】
H04N23/68
G03B15/00 H
G03B5/00 J
G03B7/00
H04N23/60 500
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020004116
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021111923
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】内藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】鷲巣 晃一
【審査官】村山 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-225284(JP,A)
【文献】特開2017-037130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
H04N 5/222-5/257
G03B 15/00-15/16
G03B 5/00-5/08
G03B 7/00-7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光ごとに撮像素子を所定量移動させる第1の処理を行い複数の画像を取得し、前記複数の画像を合成して高解像度の画像を生成する撮像装置であって、
検出部が検出している前記撮像装置の振れに応じて、ブレ補正目標値を設定する目標値設定手段と、
前記ブレ補正目標値に応じて前記撮像素子を移動させ振れを補正する第2の処理を行う補正手段と、を備え、
前記目標値設定手段は、前記第1の処理が行われる際に前記ブレ補正目標値を所定の値に固定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記目標値設定手段は、前記第1の処理の終了時に前記ブレ補正目標値の固定を解除し、前記所定の値から連続する値を前記ブレ補正目標値として設定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記目標値設定手段は、前記第1の処理の終了時に前記検出部が検出した振れに基づく前記ブレ補正目標値を初期化し、前記所定の値に加算することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の処理の終了時は、前記第1の処理に伴う前記撮像素子に加わる衝撃が収束した時点であることを特徴とする請求項2または3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の処理の終了時は、前記第1の処理が開始されてから所定の時間経過した時点であることを特徴とする請求項2または3に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記目標値設定手段は、前記第1の処理が行われる際に該第1の処理により前記撮像素子を移動させる方向の前記ブレ補正目標値を前記所定の値に固定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記目標値設定手段は、前記第1の処理が行われる際に該第1の処理により前記撮像素子を移動させる方向および該方向に直交する方向の前記ブレ補正目標値をそれぞれ前記所定の値に固定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記所定の値は、前記第1の処理の開始時の値であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
露光ごとに撮像素子を所定量移動させる第1の処理を行い複数の画像を取得し、前記複数の画像を合成して高解像度の画像を生成する撮像装置のブレ補正方法であって、
検出部が検出している前記撮像装置の振れに応じて、ブレ補正目標値を設定する工程と、
前記ブレ補正目標値に応じて前記撮像素子を移動させ振れを補正する第2の処理を行う補正工程と、を有し、
前記ブレ補正目標値を設定する工程において、前記第1の処理が行われる際に前記ブレ補正目標値を所定の値に固定することを特徴とするブレ補正方法。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、ブレ補正方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像面を所定のずらし量だけ移動させながら複数回にわたり撮像し、得られた複数の画像を合成して高解像度の画像を生成する技術がある。特許文献1は、複数回にわたり静止画露光を行って得られた画像を合成する高解像度撮影モードの場合には、ブレ補正を行わない技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-37130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように高解像度撮影時にブレ補正を行わない場合、複数枚にわたる静止画露光の各撮影秒時が長いような撮影シーンにおいて、手振れの影響により画像の解像度が低下する。
【0005】
本発明は、複数回にわたる静止画露光で得られた画像を合成する高解像度撮影モードにおいても高精度なブレ補正を行うことが可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の撮像装置は、露光ごとに撮像素子を所定量移動させる第1の処理を行い複数の画像を取得し、前記複数の画像を合成して高解像度の画像を生成する撮像装置であって、検出部が検出している撮像装置の振れに応じて、ブレ補正目標値を設定する目標値設定手段と、前記ブレ補正目標値に応じて前記撮像素子を移動させ振れを補正する第2の処理を行う補正手段と、を備え、前記目標値設定手段は、前記第1の処理が行われる際に前記ブレ補正目標値を所定の値に固定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数回にわたる静止画露光で得られた画像を合成する高解像度撮影モードにおいても高精度なブレ補正を行うことが可能な撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】撮像装置の構成を説明する図である。
図2】ブレ補正部を説明する図である。
図3】撮影動作を説明する図である。
図4】撮像面移動の例を説明する図である。
図5】画素ズラシ撮影における防振制御部の制御を説明する図である。
図6】従来の画素ズラシ撮影における防振制御部の制御を説明する図である。
図7】画素ズラシ撮影の処理を示すフローチャートである。
図8】ブレ補正目標値の設定について説明する図である。
図9】画素ズラシ撮影における防振制御部の制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1は、撮像装置の構成を説明する図である。本実施形態における撮像装置11は、ブレ補正部14を有し、撮像面を所定のずらし量移動させながら画素ズラシ撮影をして解像度の高い画像を生成することができるデジタルカメラである。以下では、画素ズラシ撮影を行い得られた複数枚の画像を合成して高解像度の画像を生成する所謂ハイレゾ撮影を行う撮影モードを「ハイレゾ撮影モード」という。なお、本実施形態では撮像装置の一例としてレンズ装置が本体部に着脱可能なレンズ交換式の撮像装置について説明するが、これに限られるものではなく、レンズ装置と本体部が一体となった撮像装置であってもよい。
【0010】
撮像装置11は、カメラボディ11aおよびカメラボディ11aに着脱可能な交換レンズ11bを備える。カメラボディ11aは、カメラCPU12a、撮像素子14a、駆動部14b、振動検出部15、信号処理部16、防振制御部17、静止画露光部18、画像処理部19を備える。交換レンズ11bは、レンズCPU12b、焦点調節部13を含む撮像光学系を備える。
【0011】
交換レンズ11bの撮像光学系は、被写体の光学像を撮像素子14a上に結像させる。撮像光学系は、撮影倍率を変更するズームレンズ、焦点調節に使用するフォーカスレンズ13、手振れ等による画像ブレを補正するシフトレンズを含む複数のレンズと絞りを備える。交換レンズ11bに設けられたレンズCPU12bはカメラボディ11aからの撮影指示などに応じて、レンズ動作を制御している。例えば、レンズCPU12bはカメラボディ11aからの焦点状態検出信号に応じてフォーカスレンズ13を駆動して焦点調整を行う。
【0012】
光軸10に沿った被写体光束が、交換レンズ11bの撮影光学系を介して撮像手段である撮像素子14aに入射する。撮像素子14aは、撮影光学系を介して撮像面に結像された被写体像を光電変換し、被写体像に係る画像信号を出力する。撮像素子14aは、例えばCCD(電荷結合素子)やCMOSセンサ(相補型金属酸化膜半導体)である。駆動部14bは、撮像素子14aを光軸10と直交する面内で駆動する。複数枚にわたる静止画露光を行うハイレゾ撮影モードにおいて、駆動部14bは、各静止画露光で撮像素子14aの撮像面を移動させる画素ズラシを行う。
【0013】
カメラボディ11aに設けられたカメラCPU12aは、撮像装置11が備える各ブロックの動作を制御する。例えば、カメラCPU12aは、撮影者からの撮影指示操作などに応じて撮影動作を制御したり、像ブレ補正システム動作を制御したりする。
【0014】
振動検出部15は、撮像装置11の振動をブレ検出信号として検出する。振動検出部15は、例えば角速度計であり、撮像装置11に加わるブレ角速度を検出する。信号処理部16は、ブレ補正目標値を設定する目標値設定手段であり、振動検出部15が検出したブレ検出信号を処理し、像ブレを補正するために撮像素子14aを駆動する駆動信号であるブレ補正目標値に変換する。このように、振動検出部15が検出したブレ検出信号は、信号処理部16において像ブレ補正に適したブレ補正目標値に変換される。防振制御部17は、カメラCPU12aからの各露光タイミング情報に基づいて信号処理部16の動作を制御する。なお、信号処理部16および防振制御部17は、カメラCPU12aとして実現されてもよい。
【0015】
信号処理部16から出力されたブレ補正目標値は、撮像素子14aを駆動制御する駆動部14bに入力される。駆動部14bは、ブレ補正目標値に基づいて撮像素子14aを撮像面内で移動させることで、像ブレ補正を行う。これにより撮像面に沿う方向の像ブレが光学系に補正される。このように本実施形態においては、撮像素子14aと駆動部14bで、ブレ補正部14を構成する。
【0016】
静止画露光部18は、被写体の明るさに応じた露光時間、絞り値、ISO感度などを設定し、カメラCPU12aに送信する。カメラCPU12aは、静止画露光部18の情報に基づいて露光を制御する。ハイレゾ撮影モードにおいては、カメラCPU12aは、静止画露光部18の情報に基づいて複数枚にわたる静止画露光を行うと共に、各静止画露光で撮像素子14aの撮像面を移動する。
【0017】
画像処理部19は、撮像素子14aから出力された画像信号に対して、各種画像処理を実施する。例えば、画像処理部19は画像処理として、撮像素子14aから出力された画像信号のノイズ除去、デモザイキング、輝度信号変換、収差補正、ホワイトバランス調整、色補正などの処理を行う。また、ハイレゾ撮影モードにおいては、画像処理部19は、撮像素子14aが出力した各画像の撮像信号を合成して高解像度画像を作成する。
【0018】
撮像素子14aを駆動することによる像ブレ補正および画素ズラシ撮影について図2を参照して説明する。図2は、ブレ補正部14を説明する図である。図2は、撮像素子14aを被写体側から見た状態である。撮像素子14aは、保持枠14dに保持される。
【0019】
保持枠14dには、コイル14pおよびコイル14yが設けられている。コイルは、例えば、保持枠14dの長辺にコイル14pが2つ、保持枠14dの短辺にコイル14yが1つ設けられている。コイル14pおよびコイル14yは、不図示の永久磁石と対向している。そのため、信号処理部16からのブレ補正目標値に基づいて駆動部14bがコイル14pに通電すると保持枠14dは矢印21p方向に駆動され、コイル14yに通電すると保持枠14dは矢印21y方向に駆動される。
【0020】
撮像素子14aと保持枠14dの間には各辺に1つずつ計4つの積層圧電部材14e1~14e4が挟まれている。撮像素子14aは4つの積層圧電部材14e1~14e4に挟まれて支持されることで保持枠14dに保持される。積層圧電部材14e1~14e4は、画素ズラシ撮影のために撮像素子14aを駆動させるための圧電素子である。積層圧電部材14e1~14e4は、画素ズラシ撮影のための駆動信号に基づいて撮像素子14aを駆動する。なお、本実施形態では積層圧電部材14e1~14e4により撮像素子14aを駆動して画素ズラシを行う例について説明するが、これに限られるものではない。例えば、コイル14pおよびコイル14yにより撮像素子14aを駆動させて画素ズラシを行うようにしてもよい。
【0021】
積層圧電部材14e1~14e4への通電と撮像素子14aの駆動の関係について、図3および図4を参照して説明する。図3は、積層圧電部材への通電を説明する図である。図4は、撮像素子14aの駆動を説明する図である。図3において、縦が積層圧電部材14e1~14e4を示している。画素ズラシL1~L4は、画素ズラシにおける撮像素子14aの移動方向と移動量を示している。すなわち図3は、画素ズラシL1~L4の移動のためにそれぞれの積層圧電部材14e1~14e4に印加する電圧を表している。
【0022】
画素ズラシにはいくつかの手法がある。本実施形態では、基準画像を撮像する際の画素の位置である基準画素41aに対して画素を縦横半画素ずつずらす手法について説明する。すなわち、ハイレゾ撮影モードにおいては、基準画像と画素ズラシを行い撮像した4画像の計5画像を取得し、合成する。なお、画素ズラシの方法や取得する画像の数はこれに限られるものではない。
【0023】
画素ズラシL1により、基準画素41aから縦横半画素ずつずれた位置に撮像素子14aが移動する。画素ズラシL1のために、例えば、積層圧電部材14e1に印加電圧+V、積層圧電部材14e2に印加電圧+V、積層圧電部材14e3に印加電圧-V、積層圧電部材14e4に印加電圧-Vが印加される。画素ズラシL2~L4の各移動距離は1画素であり、基準画素41aから縦横半画素ずつずれた位置に撮像素子14aが移動する。画素ズラシL2では、矢印方向21pに撮像素子14aを駆動する。撮像素子14aを矢印方向21pに1画素分駆動させるために、例えば、積層圧電部材14e1に印加電圧-2V、積層圧電部材14e3に印加電圧+2Vが印加される。なお、矢印方向21yでの駆動はないため、積層圧電部材14e2および積層圧電部材14e3はへの印加電圧は変化せず、積層圧電部材14e2が印加電圧+V、積層圧電部材14e4が印加電圧-Vのままである。このように、積層圧電部材14e1~14e4への印加電圧を適切な値に設定すると、撮像素子14aを基準画素41aから縦横半画素ズラシして、画素ズラシ撮影を行うことができる。
【0024】
次に、画素ズラシ撮影における防振制御部17の制御について図5および図6を用いて説明する。図5は、本実施形態の画素ズラシ撮影における防振制御部17の制御を説明する図である。一方、図6は、従来の画素ズラシ撮影における防振制御部17の制御を説明する図である。常にブレ補正を実施する従来例に対し、本実施形態はブレ補正の目標値固定期間53aを設けることで画素ズラシを行う際にブレ補正を一時的に停止する。
【0025】
以下では、一例として、画素ズラシL1の移動の後の露光期間を第1の露光期間51a、画素ズラシL2の移動の後の露光期間を第2の露光期間51bとして説明する。画素ズラシ目標値52は、画素ズラシ撮影における画素ズラシの目標値および積層圧電部材への電圧印加のタイミングを示している。画素ズラシ目標値52におけるステップ状の印加電圧52aは、第1の静止画露光期間51aと第2の静止画露光期間51bの間の画素ズラシL2を行うための電圧印加のタイミングを示している。ステップ状印加電圧52aのタイミングで、各積層圧電部材14e1~14e4へ画素ズラシ目標値としてそれぞれ所定の電圧が送られる。
【0026】
ブレ補正目標値53は、図2の矢印21p方向におけるブレ補正を行う為にブレ補正部14に与えられるブレ補正の目標値である。ブレ補正目標値53に応じた電流がコイル14pに流れ、コイル14pが撮像素子14aを駆動することでブレ補正を行う。本実施形態では、画素ズラシのためにステップ状の印加電圧52aが積層圧電部材に印加される期間およびその後の所定期間は目標値固定期間53aとして、ブレ補正目標値53を第1の値Aに固定する。第1の値Aは、例えば、各画素ズラシ撮影の為の駆動により衝撃が発生する前の値、すなわち、目標値固定期間53aの開始時の値である。
【0027】
目標値固定期間53aは、ステップ状の印加電圧52aに応じて撮像素子14aが駆動している期間である。ステップ状の印加電圧52aが印加される期間より長い所定期間を目標値固定期間53aとするのは、メカの応答遅れ等があるためである。このように本実施形態では、第1の露光期間51aおよび第2の露光期間51bではブレ補正目標値53に応じたブレ補正が行われるが、第1の露光期間51aおよび第2の露光期間51bの間の画素ズラシが行われている間はブレ補正目標値53を固定する。
【0028】
波形54は、撮像素子14aの撮像面の動きを示す波形である。撮像素子14aの撮像面は、画素ズラシ目標値52およびブレ補正目標値53に基づいて駆動される。画素ズラシ駆動期間54aは、第1の静止画露光期間51aと第2の静止画露光期間51bの間の画素ズラシL2を行う期間である。ズラシ幅54bは、画素ズラシL2による撮像素子14aの撮像面の移動量を示しており、本実施形態では1画素分の移動が行われる。
【0029】
目標値固定期間53aを設ける理由を説明する。図6は、目標値固定期間53aを設定しない従来の画素ズラシにおける各波形を示している。図6におけるブレ補正目標値53では目標値固定期間53aを設定しないため、ステップ状の印加電圧52aにより撮像素子14aが画素ズラシ駆動を行っている間も撮像素子14aに生じたブレを補正するためにブレ補正目標値53が設定され出力される。
【0030】
また、積層圧電素子14e1~14e4は極めて駆動応答性が高い。そのため、画素ズラシ撮影のために撮像素子14aの駆動を高速化すると、画素ズラシのための駆動の開始時および終了時には、撮像素子14aの駆動に伴う衝撃が発生する。振動検出部15は、画素ズラシ駆動の衝撃も撮像素子14aのブレとして検出する。そのため、ブレ補正目標値53には画素ズラシ駆動の衝撃に応じたエラー信号(ショックエラー)が発生する。エラー信号が発生している期間がエラー発生期間53bである。画素ズラシ駆動に伴うエラー信号に基づいて撮像素子14aが駆動されると、撮像面の移動量にエラー信号分のズラシ幅54cが加わり、適切な画素ズラシを行うことができなくなる。
【0031】
さらに、エラー信号に基づいてブレ補正部14が過応答を行うと、過応答期間654dに示される撮像素子14aの過応答の振動も振動検出部15に検出される。過応答の振動分が正帰還となり、ブレ補正目標値53に振動波形が繰り返される。
【0032】
このように、画素ズラシ撮影のための撮像素子14aの駆動を高速化すると、ショックエラーおよび過応答が発生し、適切な画素ズラシを行うことができなくなる。そのため本実施形態では、画素ズラシ撮影のための駆動による衝撃が発生する期間に目標値固定期間53aを設け、ショックエラーおよび過応答が抑制されるように制御する。目標値固定期間53aではブレ補正目標値を各画素ズラシ撮影の為の駆動により衝撃が発生する前の第1の値Aに固定し、衝撃が収束した後に第1の値Aに初期化したブレ補正目標値を加算してブレ補正を再開する。
【0033】
図7は、画素ズラシ撮影の為の駆動およびブレ補正駆動の制御動作を示すフローチャートである。本フローはカメラCPU12aにより制御され、画素ズラシ撮影およびブレ補正の開始とともにスタートする。ステップS701で、カメラCPU12aは、露光開始を指示する。ステップS702で、カメラCPU12aは、露光が終了したか否か判定する。露光が終了したと判定した場合はステップS703に進む。一方、露光が完了するまではステップS702を循環して待機する。
【0034】
ステップS703で、カメラCPU12aは、ブレ補正目標値を固定する。ステップS703の時点では画素ズラシ駆動は行われていないため画素ズラシ駆動に伴う衝撃は発生しておらず、ブレ補正目標値は衝撃発生直前の値に固定されることになる。ステップS704で、カメラCPU12aは、画素ズラシ駆動の指示を行う。すなわち、図5におけるステップ状の電圧印加52aが画素ズラシの目標値として出力される。
【0035】
ステップS705で、カメラCPU12aは、画素ズラシの駆動が終了したか否か判定する。画素ズラシの駆動が終了したと判定した場合は、カメラCPU12aは、ステップS706に進み、ブレ補正目標値の固定を解除する。一方、画素ズラシの駆動が終了していない場合は、画素ズラシ駆動が終了するまでステップS705を循環して待機する。ステップS705は画素ズラシ駆動に伴う衝撃発生中にブレ補正目標値が再出力されることを避けるためのステップである。そのため、ステップS704で画素ズラシ駆動を開始してから予め定めた所定の時間経過したことにより画素ズラシの駆動が終了したと判定する構成であってもよい。また、衝撃センサなどを用いて撮像素子14aに加わる衝撃収束を検出し、衝撃が収束した場合に画素ズラシの駆動が終了したと判定するようにしてもよい。
【0036】
ステップS706で、カメラCPU12aは、ブレ補正目標値を連続出力する。ここで「連続」とは、ステップS703で固定したブレ補正目標値から連続して出力することを示す。固定したブレ補正目標値から連続して出力する理由について、図8を用いて説明する。図8は、ブレ補正目標値の設定について説明する図である。
【0037】
目標値固定期間53aの間にもブレは発生しているため、目標値固定期間53aが設けられていない場合、ショックエラーを除く撮像素子14aのブレ補正目標値53は、振動検出部15の検出結果に応じて破線の波形81のように設定される。そのため、目標値固定期間53aが終了したときに、実線の波形82で示される固定されていたブレ補正目標値53と破線の波形81とは不連続になってしまい、段差83が発生してしまう。目標値固定期間53aの終了時に破線の波形81に基づくブレ補正を行うと、ブレ補正部14に段差83に応じた駆動振動が発生してしまう。
【0038】
そこで、本実施形態では、目標値固定期間53aの終了時点において、固定していた第1の値Aに信号処理部16により初期化されたブレ補正目標値82を加える。そして、所定の時間84(例えば0.2秒)かけて徐々に実際のブレ補正目標値と一致させる構成にする。なお、ブレ補正目標値の初期化とは例えば信号処理部16における公知のIIRフィルタの履歴をゼロにすることで対応する。目標値固定期間53aに固定したブレ補正目標値から連続してブレ補正目標値を出力することにより、ブレ補正部14はスムーズにブレ補正を再開することができる。
【0039】
なお本実施形態では、画素ズラシ駆動方向に関するブレ補正目標値について説明したが、これに限られるものではない。上述したショックエラーは衝撃のため、画素ズラシ駆動方向だけではなく、画素ズラシ駆動方向と直交する方向においても発生する可能性がある。そのため、画素ズラシ駆動方向とは直交する方向に関するブレ補正目標値についても、目標値固定期間を設けるのが好ましい。
【0040】
画素ズラシ駆動方向と直交する方向における目標値固定期間の設定について図9を用いて説明する。図9は、本実施形態の画素ズラシ撮影における防振制御部17の制御を説明する図である。図4の移動L2を行う時における図2の矢印21y方向のブレ補正を例に説明する。
【0041】
ブレ補正目標値91は、矢印21y方向にブレ補正を行う際にブレ補正部14に与えるブレ補正目標値であり、波形92はそのブレ補正目標値91に基づく撮像素子14aの撮像面の動きである。矢印21yの方向には画素ズラシ駆動は行われないが移動L2方向の画素ズラシによるブレ補正部14の衝撃は発生しているので目標値固定期間53aと同じタイミングで目標値固定期間92aを設けることでブレ補正部14の駆動をより安定化する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によると、複数回にわたる静止画露光で得られた画像を合成する高解像度撮影モードにおいても、高精度なブレ補正を行うことが可能となる。
【0043】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
14 ブレ補正部
14a 撮像素子
15 振動検出部
16 信号処理部
17 防振制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9