IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図1
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図2
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図3
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図4
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図5
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図6
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図7
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図8
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図9
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図10
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図11
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図12
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図13
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図14
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図15
  • 特許-操作ユニット及び電子機器 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】操作ユニット及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/10 20210101AFI20240610BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20240610BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20240610BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240610BHJP
   H01H 23/30 20060101ALI20240610BHJP
   H01H 23/16 20060101ALI20240610BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240610BHJP
【FI】
G02B7/10 C
G02B7/08 Z
G02B7/02 E
G03B17/02
H01H23/30
H01H23/16 Z
H04N23/50
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020025439
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021131419
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】入谷 裕子
(72)【発明者】
【氏名】柴山 義信
(72)【発明者】
【氏名】小島 安弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 繁治
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-077316(JP,A)
【文献】特開平06-151119(JP,A)
【文献】特開2002-271199(JP,A)
【文献】実開昭57-182707(JP,U)
【文献】特開2002-353010(JP,A)
【文献】米国特許第07667155(US,B1)
【文献】中国実用新案第210040029(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/10
G02B 7/08
G02B 7/02
G03B 17/02
H01H 23/30
H01H 23/16
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として所定の方向に揺動可能な揺動部材と、
前記揺動部材を中立位置に付勢する付勢部材と、
前記回転軸と同軸に配置されて前記揺動部材と一体となって回転する回転部を有し、前記回転部の回転量に応じた信号を出力する検出部と、
前記揺動部材とは別体で形成され、外部からの操作によって前記揺動部材を前記揺動可能な所定の方向に回転させる操作部材と、
前記揺動部材と前記操作部材とを回転可能にそれぞれ異なる位置で支持する支持部材と、を備え、
外部からの操作によって前記操作部材を前記所定の方向に回転させると、前記操作部材の両側に設けられた凸形状部の一方が前記揺動部材の端部を押して、前記操作部材と前記揺動部材と前記回転部とが一体となって回転することを特徴とする操作ユニット。
【請求項2】
前記検出部は、一方向に突出する配線リードを有し、
前記揺動部材は回転限界を有し、
前記検出部は、前記揺動部材の前記回転限界での角度と前記配線リードの向きとが略平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の操作ユニット。
【請求項3】
前記検出部から出力される信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部が増幅した信号をデジタル値に変換する変換部と、有し、
前記増幅部の出力電圧範囲は、前記変換部での入力電圧範囲よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の操作ユニット。
【請求項4】
前記増幅部は、前記検出部から出力される信号を増幅する際の中心電圧を調整する調整部を有することを特徴とする請求項に記載の操作ユニット。
【請求項5】
前記検出部を実装する基板と、
前記基板と前記支持部材との間に圧縮された状態で配置されて、前記基板のがたつきを抑制する弾性部材と、を備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項6】
前記検出部は、前記検出部の筐体を前記支持部材に嵌合させる嵌合部を有し、
前記揺動部材の前記回転軸と前記支持部材との軸嵌合量は前記筐体と前記支持部材との嵌合量よりも大きく、前記弾性部材の圧縮量は前記筐体と前記支持部材との嵌合量よりも小さいことを特徴とする請求項に記載の操作ユニット。
【請求項7】
前記揺動部材に設けられた接片を備え、
前記基板は、前記揺動部材が前記中立位置を含む所定の角度にある場合に前記検出部から出力される信号の電圧を前記接片を介して導通させることによって所定の値に変化させる信号パターン部を有することを特徴とする請求項又はに記載の操作ユニット。
【請求項8】
前記弾性部材は圧縮されて配置され、
前記揺動部材と前記支持部材との間の軸嵌合量は前記弾性部材の圧縮量よりも大きいことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項9】
前記検出部の筐体を保持する剛性付勢部と弾性付勢部とを備え、
前記筐体を前記弾性付勢部が前記回転部の一方の回転方向と同じ方向へ付勢すると共に前記筐体を前記剛性付勢部が前記一方の回転方向とは反対の回転方向へ付勢することにより、前記揺動部材が前記中立位置から所定の方向に回転した際に、前記筐体は前記揺動部材が前記中立位置にある状態と同等の状態で保たれることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項10】
前記揺動部材の前記回転軸は、複数の点受け部による点当たりによって前記支持部材に支持され、
前記複数の点受け部は、前記揺動部材が回転可能な範囲内で、前記複数の点受け部のうちの1つのみが最下点に位置しないように配置されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の操作ユニットと、
前記操作ユニットの前記検出部から出力される信号にしたがって所定の動作を行う駆動部と、を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ビデオカメラでのズーム操作等に用いられるシーソー式の操作ユニットと、この操作ユニットを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ビデオカメラには、ユーザが任意に撮影画角をテレ側又はワイド側へ変更することができるように、ズーム機能が搭載されている。電動式のズーム操作には、回転軸中心で揺動可能なシーソー式操作部材が広く用いられている。シーソー式操作部材は、ばねで付勢された中立位置を有し、時計まわり方向又は反時計まわり方向に、一定角度、傾けることが可能な操作部材である。ビデオカメラではシーソー式操作部材の一方の端部近傍をビデオカメラ本体側に押し込むことでワイド側へのズーム動作が実行され、他方の端部近傍をビデオカメラ本体側に押し込むことでテレ側へのズーム動作が実行される。
【0003】
このようなシーソー式操作部材には、その内部にPETフィルム等をベースとしたフレキシブル基板に抵抗帯が印刷された部品が使われているものがある。この抵抗帯を可変抵抗として使用し、抵抗帯に接片が当接した際の抵抗値で、シーソー式操作部材においてユーザが実際に操作する部材であるレバーの回転位置を検出することができる。例えば、切片は、レバーと連動して揺動するようにレバーの内側に配置されたカムに設けられる。そして、レバーが操作された際の回転量(回転角)に応じて抵抗帯に当接する切片の位置が変わることで、レバーの回転量を検出することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-100005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レバーと連動して動く接点には、押圧力や摩擦力等の様々な力が作用するため、接点と抵抗帯との安定せずに出力異常が発生しやすい。この問題を回避する方法として、回転式ポテンショメータを用いた位相検出によってレバーの回転量を検出する方法がある。しかし、回転式ポテンショメータを用いた場合、回転式ポテンショメータ構造部や回転式ポテンショメータの半田実装部に、レバーを通じて作用する力によって損傷が生じるおそれがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、外力に対して損傷が生じ難い操作ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る操作ユニットは、回転軸を中心として所定の方向に揺動可能な揺動部材と、前記揺動部材を中立位置に付勢する付勢部材と、前記回転軸と同軸に配置されて前記揺動部材と一体となって回転する回転部を有し、前記回転部の回転量に応じた信号を出力する検出部と、前記揺動部材とは別体で形成され、外部からの操作によって前記揺動部材を前記揺動可能な所定の方向に回転させる操作部材と、前記揺動部材と前記操作部材とを回転可能にそれぞれ異なる位置で支持する支持部材と、を備え、外部からの操作によって前記操作部材を前記所定の方向に回転させると、前記操作部材の両側に設けられた凸形状部の一方が前記揺動部材の端部を押して、前記操作部材と前記揺動部材と前記回転部とが一体となって回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外力に対して損傷の生じ難い操作ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る操作ユニットの外観斜視図である。
図2図1の操作ユニットの分解斜視図である。
図3図1の操作ユニットの断面図である。
図4図1の操作ユニットでのレバーの回転量を検出する回転量検出部の構成を示す図である。
図5図4の回転量検出部の構成を示す回路図である。
図6】回転量検出部でのレバー回転量と出力電圧との関係を示す図である。
図7図1の操作ユニットを構成するホルダーの外観斜視図である。
図8図1の操作ユニットのレバーが中立位置にある状態を示す断面図である。
図9図1の操作ユニットの側面図及び断面図である。
図10】第1実施形態に係る操作ユニットの分解斜視図である。
図11図10の操作ユニットの断面図である。
図12図11の断面図の部分拡大図である。
図13図10の操作ユニットにおいて回路基板に回転式ポテンショメータが実装された状態を示す図である。
図14図10の操作ユニットの電気回路図である。
図15図10の操作ユニットでのレバー回転量と回転式ポテンショメータからの出力電圧との関係を示す図である。
図16図1の操作ユニットを備えるビデオカメラの側面図と断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るシーソー式操作ユニット10(以下「操作ユニット10」と記す)の外観斜視図である。図2(a),(b)はそれぞれ、操作ユニット10の分解斜視図であり、図2(a)と図2(b)とでは、図2(a),(b)に示す座標軸から明らかなように、操作ユニットを見る方向が異なっている。
【0012】
なお、説明の便宜上、図1及び図2に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を規定する。また、以下では、説明の便宜上、X軸正方向を「前面」、X軸負方向を「背面」、Y軸正方向を「右(側)」、Y軸負方向を「左(側)」、Z軸正方向を「上(側)」、Z軸負方向を「下(側)」と定義する。また、「CW方向(時計まわり方向)」及び「CCW方向(反時計まわり方向)」とは、前面(X軸正方向側)から見た回転方向であると定義する。
【0013】
操作ユニット10は、レバー101、カム板102、ホルダー103、カバー104、中立バネ105、回路基板106、回転式ポテンショメータ107及び弾性クッション108を備える。
【0014】
レバー101は、ユーザが実際に外部から触れて操作する操作部材であり、揺動の回転中心となる2箇所の穴部101a,101bを有する。カム板102は、平板状に形成されており、レバー101によって揺動動作する揺動部材である。カム板102の前面には前面側に突出する揺動回転軸102aが設けられており、カム板102の背面には背面側に突出する揺動回転軸102bが設けられている。
【0015】
ホルダー103とカバー104は、レバー101やカム板102を回転可能に支持する支持部材としての役割を担っている。より具体的には、ホルダー103はカム板102の前面側に配置されており、カバー104はカム板102の背面側に配置されている。そして、カム板102の揺動回転軸102a,102bは、ホルダー103の内側に設けられた軸受け穴103aとカバー104に設けられた軸受け穴104aによって、揺動自在に嵌合支持されると共に回転同軸を確保した状態で保持されている。なお、ホルダー103には、ストッパ緩衝材109(図3参照)が設けられている。
【0016】
中立バネ105は、カム板102とホルダー103の間に配置された付勢部材である。レバー101が操作されると、中立バネ105が変形することでカム板102をホルダー103に対してCW方向及びCCW方向に揺動させることができる。中立バネ105は、レバー101の非操作時には、カム板102(レバー101)を中立位置に戻すように操作ユニット10に組み込まれている。
【0017】
カム板102の揺動回転軸102bの根元は、回路基板106に実装された回転式ポテンショメータ107の回転部107aに軽圧入されている。よって、カム板102が揺動すると、その回転量(回転角)に応じて回転式ポテンショメータ107の回転部107aが回転する。回転式ポテンショメータ107の実装面(前面)には、スリーブ形状部107b(嵌合部)が設けられている。スリーブ形状部107bは、回路基板106に設けられた開口106aを貫通して、カバー104の軸受け穴104aの外周に設けられた嵌合凸部104bと係合している。
【0018】
このように、カム板102がホルダー103とカバー104に軸支され、回転式ポテンショメータ107がカバー104とスリーブ嵌合し、回転部107aがカム板102に軽圧入されているため、カム板102の揺動中心と回転部107aとに同軸ずれが生じない。こうして、操作ユニット10は、カム板102の揺動時に回転式ポテンショメータ107の回転負荷の変動が生じないように構成されている。
【0019】
弾性クッション108は、回路基板106とカバー104の間に圧縮された状態で挟み込まれた弾性部材であり、回路基板106が組み込まれた状態で回路基板106にがたつきが生じることを抑制している。レバー101の穴部101a,101bは、ホルダー103の外側に設けられた軸受け部103bとカバー104の外側に設けられたカバー回転軸104cと回転嵌合している。
【0020】
図3は、操作ユニット10の断面図である。図3(a)では、レバー101は非操作状態となっている。図3(b),(c)には、レバー101は同じ操作状態にあるときの異なる断面が示されている。
【0021】
レバー101の天面内側の左右両側には、凸形状部101c,101dが設けられている。中立バネ105の腕部105a,105bは、ホルダー103に設けられたばね受け部103cに当接した状態となっており、中立バネ105のコイル部105cは、回転軸近傍に配置されている。
【0022】
図3(b)のようにレバー101を回転させた場合、凸形状部101cがカム板102の端部を押してカム板102を回転させる。その際、カム板102に設けられたばね受け部102cが中立バネ105の腕部105aを押す。これにより、レバー101の操作時には常に、中立バネ105によりレバー101(カム板102)を中立位置に戻そうとする力が掛かる。また、図3(b)は、レバー101の天面に設けられたストッパ101eがホルダー103に設けられたストッパ受け部103dに対してストッパ緩衝材109を介して当接した状態であり、レバー101はCCW方向に回転限界まで回転している。
【0023】
以上の説明の通り、操作ユニット10では、レバー101はカム板102と一体で形成されておらず、レバー101を回転方向に押すことによってカム板102を回転方向に押す構成となっている。レバー101がねじられ、又は、長手方向の中央部若しくは全体がZ軸負方向に押され、或いは、XY面内で押される等した場合には、レバー101に回転方向以外の力が作用する。こうしてレバー101に回転方向以外の力が掛かっても、操作ユニット10では、その力をホルダー103やカバー104の軸受け部で受けることができるため、カム板102には回転方向以外の力は掛からない。これにより、カム板102の回転と連動する回転式ポテンショメータ107に無理な負荷が掛かることはなく、よって、回転式ポテンショメータ107の外的静圧による破損を防ぐことができる。
【0024】
図3(c)に示されるように、一般的に回転式ポテンショメータ107の一辺には、回路基板106にはんだ付けされる配線リード部107cが設けられている。そして、配線リード部107cは、回転式ポテンショメータ107において回転中心から最も離れた位置に配置されることが多い。操作ユニット10では、配線リード部107cは、回転軸から見た際の下方向に配置せずに、レバー101を回転限界まで回転させた状態でレバー101の傾きと略平行となるように配置されている。これにより、一方向に長く伸びた配線リード部107cの一部が図3(c)で示した面内でレバー101と重なることで、操作ユニット10の高さを低くして(Z軸方向長さを短くして)、小型化させることができる。
【0025】
図4は、回転式ポテンショメータ107の回転部107aの回転量をデジタル値として検出するシステム(以下「回転量検出部」という)の構成を示す図である。回転式ポテンショメータ107の出力信号は、増幅部401によって電圧増幅される。電圧増幅での動作中心電圧は、動作中心電圧調整部402により決定される。増幅部401にて電圧増幅された信号は、ローパスフィルタ403を通してAD変換部404へ入力され、デジタル信号に変換される。こうして得られるデジタル信号を、CPU(マイコン)等で読み取ることで、回転式ポテンショメータ107の回転量を検出することができる。
【0026】
回転式ポテンショメータ107から出力される信号の電位は、回転式ポテンショメータ107の回転量に比例して変動する。回転式ポテンショメータ107の電気的回転角度は0度(°)から数百度の範囲であるのに対し、レバー101がCW方向の回転限界からCCW方向の回転限界まで回転しても、数十度程度の範囲である。よって、回転式ポテンショメータ107の出力電位は狭い範囲に限られるため、回転式ポテンショメータ107の出力信号をそのままAD変換しても分解能が低い。そこで、回転式ポテンショメータ107の出力信号の電圧増幅を増幅部401において行う。電圧増幅の動作中心電圧をレバー101が中立位置にある状態の出力電圧と等しくし、動作中心電圧をAD変換の入力電圧範囲の1/2に制御する。これにより、CW方向とCCW方向の分解能を等しくすることができる。電圧増幅された信号をローパスフィルタ403を通すことにより、レバー101の操作ノイズや外乱による電気的なノイズ等を軽減する。ローパスフィルタ403からの出力信号をAD変換部404でAD変換することにより、レバー101の回転量をデジタル値として検出することができる。
【0027】
図5は、図4に示した回転量検出部の回路構成を示す図である。回転式ポテンショメータ107は、可変抵抗器の一種である。回転式ポテンショメータ107では、回転部107aの回転量に応じてGNDと中間端子との間の抵抗値が変動し、これに伴って出力電位Viが変動する。動作中心電圧調整部402では、抵抗Rl1,Rl2の分圧により中心電圧が設定される。抵抗Rl1,Rl2の各抵抗値が等しい場合、中心電圧VcはVCC/2となる。なお、動作中心電圧の設定方法は、抵抗による分圧による方法に限られるものではなく、例えば、別電源を用意してその電圧を動作中心電圧としてもよい。
【0028】
増幅部401として、ここでは、OPアンプによる差動増幅回路を用いている。電圧増幅率は抵抗R,Rによって決定される。電圧増幅率は、レバー101がCW方向の回転限界からCCW方向の回転限界まで回転操作された際の出力電圧がAD変換での入力電圧範囲内となるように決定される。つまり、増幅部401の出力電圧範囲を、AD変換部404への入力電圧範囲よりも小さくする。これにより、出力信号がクリップせず、AD変換の分解能を確保することが可能になる。また、容量γと抵抗Rでローパスフィルタを構成し、ローパスフィルタのカットオフ周波数を数10Hz以下に設定する。これにより、操作ノイズおよび電気回路のノイズを軽減することができる。
【0029】
上記の通りに回転量検出部を構成することにより、AD変換の分解能を確保した出力信号Voを得ることができる。なお、出力電圧Viを増幅する構成はOPアンプによる増幅回路に限定されるものではなく、また、ローパスフィルタの回路構成も、容量γと抵抗Rによる構成に限られるものではない。もこの例に限定されるものではない。
【0030】
図6は、回転量検出部でのレバー回転量と回転式ポテンショメータ107の出力電圧との関係を示す図である。回転式ポテンショメータ107は、レバー101の回転量に応じた電圧信号を出力する。ここでは、回転式ポテンショメータ107の出力電圧値は、レバー101のCW方向、CCW方向それぞれへの回転量に合わせて直線的に変化する。
【0031】
レバー101が中立位置にある場合の回転式ポテンショメータ107からの出力電圧は、回転式ポテンショメータ107の個体差や組み付け状態のばらつき、周囲環境からの影響によるばらつき等の各種の要因によってばらつく。レバー101が実際には操作されていないにもかかわらず、このような出力電圧のばらつきが原因となってレバー101が奏されたと検出されることのないように、不感電圧領域(不感帯)が設けられる。不感電圧領域は、基準値±所定電圧の範囲に設けられ、不感電圧領域内の電圧が検出された場合には、操作ユニット10が設けられている機器でのレバー101の操作に対応する動作が実行されない。基準値には、レバー101が非操作状態にあるときの出力電圧が用いられる。不感電圧領域から外れた出力電圧が検知された場合に、レバー101が操作されたと判断されて、レバー101の回転量が求められ、操作ユニット10が設けられている機器では、レバー101の操作に対応する動作が回転量に応じて実行される。
【0032】
次に、ホルダー103に対する回路基板106及び回転式ポテンショメータ107の装着形態について説明する。回路基板106に回転式ポテンショメータ107を実装する際に、実装ずれが生じる、つまり、回路基板106に対して回転式ポテンショメータ107がCW方向又はCCW方向にのずれがある状態で実装されてしまうおそれがある。
【0033】
また、回転式ポテンショメータ107が実装された回路基板106をホルダー103に取り付ける場合、従来であれば一般的に以下の方法で位置決めが行われる。すなわち、回路基板106に位置決め孔を、ホルダー103に位置決めボスをそれぞれ設け、これら位置決め孔と位置決めボスとを嵌合させる方法が用いられる。しかし、回路基板106での位置決め孔の加工精度は高いとは言えず、その結果、ホルダー103に対して回路基板106がCW方向又はCCW方向にずれて取り付けられてしまう。
【0034】
これらの結果としてホルダー103に対して回転式ポテンショメータ107がCW方向又はCCW方向にずれてしまうと、レバー101が中立位置にある状態でも回転式ポテンショメータ107はレバー101が揺動していると誤検知してしまう。このような誤検知を防止する方法としては、中立位置の状態の検知幅を広げることが有効であるが、検知幅を広げると不感電圧領域が広がってしまうという問題が生じる。
【0035】
そこで、本実施形態では、レバー101が中立位置にある状態での不感電圧領域を、以下に説明する手法によって狭くする。図7は、ホルダー103の外観斜視図である。ホルダー103は、回路基板106と回転式ポテンショメータ107の位置を規制するための、剛性付勢部701と弾性付勢部702を有する。剛性付勢部701は、剛性を有しており、よって、変形を起こし難い。一方、弾性付勢部702は、弾性を有するように、板バネ状の板バネ部703を有しており、押圧されると復元する方向に付勢力を与える。
【0036】
図8は、レバー101が中立位置にある状態の操作ユニット10の断面図である。説明の便宜上、剛性付勢部701及び弾性付勢部702それぞれが力を与える方向を、矢印8B及び矢印8Aで示している。
【0037】
前述の通り、ホルダー103に設けられた軸受け穴103aにカム板102の揺動回転軸102aが嵌合することで、ホルダー103に対するカム板102の回転軸が決まる。また、図8に示すように、カム板102の揺動回転軸102bに回転式ポテンショメータ107の回転部107aが嵌合することにより、カム板102に対する回転式ポテンショメータ107及び回路基板106の回転軸が決まる。このようにして、カム板102の位置を介して、ホルダー103に対する回転式ポテンショメータ107及び回路基板106の回転軸が決まる構成となっている。
【0038】
更に、図8に示されるように、ホルダー103に回転式ポテンショメータ107が取り付けられた状態では、弾性付勢部702により矢印8A方向に板バネ部703の復元力による付勢力が回転式ポテンショメータ107に加えられる。矢印8A方向の付勢力により回転式ポテンショメータ107には回転軸を中心に回転する力が加わる。この回転力を受け止めように剛性付勢部701が回転式ポテンショメータ107に当接して、回転式ポテンショメータ107に対して、矢印8A方向の反対方向となる矢印8B方向に力を与えている。
【0039】
弾性付勢部702は所定の弾性を有して変形するが、剛性付勢部701は変形を起こし難いため、回転式ポテンショメータ107の回転方向の位置は剛性付勢部701との当接位置で精度よく決まる。また、回転式ポテンショメータ107は、弾性付勢部702から付勢力によって常に剛性付勢部701に当接した状態で保持される。その結果、回転式ポテンショメータ107と剛性付勢部701の間に隙間が生じることはなく、回転式ポテンショメータ107の回転方向の位置は、剛性付勢部701に対して常に一定の位置に保持される。
【0040】
レバー101が中立位置にある図8の状態からレバー101が操作されると、揺動回転軸102bと回転部107aがレバー101の操作方向に追従して回転する。揺動回転軸102bと回転部107aが回転しても、回転式ポテンショメータ107の筐体(外装部材)は、弾性付勢部702と剛性付勢部701によって中立位置に保持される。そのため、レバー101が操作された際には、回転式ポテンショメータ107の筐体に対して回転部107aのみが回転するため、レバー101の中立位置からの回転量を正確に検出することができる。
【0041】
また、回転式ポテンショメータ107は、剛性付勢部701と弾性付勢部702から常に力を受けているが、その力は回転式ポテンショメータ107の筐体にのみ加わっており、配線リード部107cには加わらない。そのため、配線リード部107cのはんだ付け部に負荷が掛かることはなく、よって、はんだ付け部での破損等の発生は防止される。
【0042】
以上の説明の通り、操作ユニット10では、部品の実装ずれや部品の加工精度に起因する、中立位置にあるレバー101に対する回転式ポテンショメータ107の位置ずれ防止と不感帯幅の狭小化が可能となり、また、はんだ付け部の損傷を回避することができる。
【0043】
図9(a)は、操作ユニット10の側面図である。図9(b)は、図9(a)に示す矢視A-Aでの断面図である。操作ユニット10を組み立てる際には、中立バネ105を組み付けたカム板102、回転式ポテンショメータ107が実装された回路基板106、弾性クッション108、カバー104の順にこれらをホルダー103に組み付けていく。
【0044】
こうして組み付けられた操作ユニット10において、カム板102の揺動回転軸102bとカバー104の軸受け穴104aの軸嵌合量をα’とする。また、回転式ポテンショメータ107のスリーブ形状部107bとカバー104の嵌合凸部104bとのスリーブ嵌合量を‘β’とし、弾性クッション108の圧縮量を‘γ’とする。すると、軸嵌合量α>スリーブ嵌合量β>圧縮量γ、の関係が成り立っている。
【0045】
このような寸法関係を有する操作ユニット10では、組み付けが、嵌合量の大きい軸嵌合量αから順に嵌合が行われ、最後に圧縮が行われるよう設定されている。つまり、カバー104をホルダー103に組み付ける際に、カム板102の揺動回転軸102bとカバー104の軸受け穴104aと軸嵌合が最初に行われる。続いて、回転式ポテンショメータ107のスリーブ形状部107bとカバー104の嵌合凸部104bのスリーブ嵌合が行われる。最後に、弾性クッション108が圧縮されることになる。
【0046】
つまり、カム板102の揺動回転軸102bとカバー104の軸受け穴104aとの軸嵌合と、回転式ポテンショメータ107のスリーブ形状部107bとカバー104の嵌合凸部104bとのスリーブ嵌合の2箇所の嵌合は、同時に開始されない。このように2箇所の嵌合開始をずらすことにより、2箇所の嵌合部が軸ずれしたまま同時当たりすることを防ぐことができる。また、1箇所目の嵌合でカム板102の軸ずれが規制されることにより、2箇所目の嵌合開始の際に生じるスリーブ形状部107bと嵌合凸部104bとのスリーブ嵌合の軸ずれでの軸ずれ量が小さくなり、軸中心を容易に微調整して嵌合させることが可能になる。
【0047】
更に、揺動回転軸102bと軸受け穴104aとの軸嵌合とスリーブ形状部107bと嵌合凸部104bとのスリーブ嵌合の2箇所の嵌合よりも後に、弾性クッション108が圧縮される。カム板102のがたつき等でこれら2箇所の嵌合が軸ずれしたまま、弾性クッション108によって押さえられてしまうと、嵌合軸と嵌合スリーブがカバー104の口元と衝突し、傷や打痕が生じるおそれがある。上記の通りの組み付け順とすることで、このような損傷の発生を防止することができる。
【0048】
このように、軸嵌合量α>スリーブ嵌合量β>圧縮量γ、の関係で組み付けることにより2箇所の嵌合が軸ずれしたままホルダー103へ組み込まれてしまうことを防止することができる。その結果、レバー101の回転動作時のカム板102とカバー104との摺動及び回転式ポテンショメータ107とカバー104との摺動が安定し、レバー101の回転量を正確に検出することが可能となる。
【0049】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る操作ユニット10Aの分解斜視図である。なお、操作ユニット10の構成要素のうち、前述した第1実施形態に係る操作ユニット10の構成要素と同等のものについては同じ符号を付しており、それらについての既説の内容についてはここでの説明を省略する。図11は、操作ユニット10Aの主要部品の断面図である。図11(a)は、レバー101が中立状態にある状態の断面図である。図11(b)はレバー101の右側が押下されてCW方向に回転限界まで回転した状態の断面図である。図11(c)はレバー101の左側が押下されてCCW方向に回転限界まで回転した状態の断面図である。図12(a)~(c)はそれぞれ、図11(a)~(c)での回転軸部の拡大図である。
【0050】
操作ユニット10Aを構成するカム板201の揺動回転軸201aの根元の径方向には、図12(a)で示されるように、ホルダー103の軸受け部103bの内径と回転嵌合する3点突起201c(点受け部)が設けられている。3点突起201cによって軸嵌合が点当たりとなるため、カム板201の揺動時における摺動摩擦を低減させることができる。3点突起201cの位相は、中立位置で1点を頂点とし、左右に略120°等分で配置されている。こうして、カム板201の中立位置からCW方向とCCW方向それぞれへの揺動可能範囲である15°において、3点突起201cの1つのみが最下点(Z軸負方向)に位置する構造とはならないようになっている。
【0051】
操作ユニット10Aが電子機器に組み込まれた状態でレバー101に規定内の静圧が掛かった場合やレバー101に下向きの落下衝撃が与えられ場合等に、レバー101は中立位置を含む回転範囲内の角度で静圧や衝撃を受ける。このときの静圧や衝撃を、3点突起201cの1点で集中して受けることはなく、2点で受けることになるため、3点突起201cは容易には変形しない。なお、不図示であるが、ホルダー103の軸受け部103bの内径側に3点突起201cのような突起部を複数箇所(3箇所以上)に設け、その代わりに揺動回転軸201aを単純な円筒形状にすることによっても、同様の効果が得られる。
【0052】
図13は、回路基板106に回転式ポテンショメータ107が実装された状態を示す図である。回路基板106の回転式ポテンショメータ107実装面には、表面に金メッキが施された、信号パターン部202とグランド信号パターン部203の2つの回路パターンが露出している。カム板102において回路基板106の実装面と対向する面には、2つの回路パターンと接触する接片ブラシ204が固定されている。図13はレバー101が中立位置での状態を示しており、この状態では接片ブラシ204によって信号パターン部202とグランド信号パターン部203とは導通している。接片ブラシ204は、カム板201と一体的に揺動し、所定の揺動量で信号パターン部202又はグランド信号パターン部203の範囲から抜け出し、揺動端まで移動することができる。
【0053】
図14は、操作ユニット10Aの電気回路図である。図15は、レバー101の回転量と回転式ポテンショメータ107からの出力電圧との関係を示す図である。レバー101の回転可能範囲において、回転式ポテンショメータ107は、レバー101の回転量に対して直線的に電圧が変化するように電圧信号を出力する。しかし、レバー101が中立位置を略中心とする一定の角度範囲にあるとき、図14に示されるように、接片ブラシ204が信号パターン部202とグランド信号パターン部203に接触し、これらは導通した状態となる。その結果、信号パターン部202及びグランド信号パターン部203とが導通する範囲では、図15に示されるように、回転式ポテンショメータ107からの出力として検出される電圧信号はGND電位まで低下する。こうして、GND電位に低下した範囲が不感電圧領域となる。
【0054】
つまり、第1実施形態でも説明したように、レバー101の非操作時における誤検知の発生を防止するために、レバー101の中立位置を含む所定の揺動範囲を不感電圧領域に設定する必要がある。そこで、操作ユニット10Aでは、レバー101の中立位置を含む一定範囲で回転式ポテンショメータ107から出力されている電位を故意にGND電位に落とし、GND電位が検出される範囲を不感電圧領域としている。
【0055】
第1実施形態の操作ユニット10では、回転式ポテンショメータ107からの出力電圧の一定範囲内の値に対して不感電圧領域を設定した。これに対して、操作ユニット10Aでの不感電圧領域は、回路基板106に設けた回路パターンによって設定されるため、動作環境下でのばらつき要因等がなく、GND電位となる範囲を狭めることが可能になる。そして、GND電位となる範囲を狭めることができることにより、不感電圧領域端から検出範囲端までの回転量検出範囲を広げることが可能になる。
【0056】
よって、ビデオカメラ等のズーム操作部に操作ユニット10Aを用いた場合、レバー101の回転量の検出範囲で、撮像光学系でのズーム動作速度を段階的に変化させるための分解能を細分化し、より多段階でズーム動作速度を可変に設定することが可能となる。一方、ズーム動作速度を段階的に変化させるための分解能を一定に設定した場合には、回転検出範囲が広いために分解能のステップ幅を広くすることができる。これにより、レバー101を操作した際の撮像光学系でのズーム動作速度を段階的に変化させる敏感度を下げことができる。
【0057】
<第3実施形態>
第3実施形態では、第1実施形態に係る操作ユニット10を実装したビデオカメラの構成について説明する。図16(a)は、操作ユニット10を実装したビデオカメラ1000の外観側面図である。図16(b)は、ビデオカメラ1000の断面図であり、操作ユニット10の実装状態を表している。
【0058】
操作ユニット10は、ビデオカメラ1000の上部において、ビデオカメラ1000の本体を把持した手の指で操作可能な位置に配置されている。また、操作ユニット10は、操作しやすいようにビデオカメラ1000本体に対して前傾させて配置される。操作ユニット10はZ軸方向の寸法が短く構成されているため、ビデオカメラ1000の本体内でのスペース1100を効率的に利用することが可能になり、ひいては、ビデオカメラ1000の本体の小型化を図ることが可能になる。
【0059】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0060】
例えば、本発明に係る操作ユニットは、ビデオカメラに搭載されている場合には、ズーム操作に限らず、フォーカス等の可変入力が必要な入力手段に用いることができる。また、本発明に係る操作ユニットは、可変入力が必要であり、入力値に応じた所定の動作を行う駆動部を備える電子機器全般に入力手段として用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
10,10A 操作ユニット
101 レバー
102,201 カム板
103 ホルダー
104 カバー
105 中立バネ
106 回路基板
107 回転式ポテンショメータ
107a 回転部
107b スリーブ形状部
107c 配線リード部
108 弾性クッション
202 信号パターン部
203 グランド信号パターン部
204 接片ブラシ
401 増幅部
402 動作中心電圧調整部
404 AD変換部
701 剛性付勢部
702 弾性付勢部
1000 ビデオカメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16