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  • 特許-液体収容ボトル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】液体収容ボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/02 20060101AFI20240610BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B65D77/02 B
B41J2/175 133
B41J2/175 153
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020026484
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130488
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】手島 隆行
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0170108(US,A1)
【文献】特開2018-144281(JP,A)
【文献】特開2009-154416(JP,A)
【文献】特開2006-218839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/02
B41J 2/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体タンクに補充される液体を収容する液体収容ボトルであって、
ボトル本体と、
前記ボトル本体に収容された液体を注出する注出口と、前記注出口に連通し、前記注出口を通じて前記液体タンクの液体注入管が挿入可能な注出流路とを有する注出ノズルと、
前記注出口に設けられ、前記注出口に挿入される前記液体注入管との間をシールする環状の固定シール部材と、
前記注出流路内で前記注出ノズルの軸方向に移動可能に設けられ、前記固定シール部材に接触することで前記注出口を閉鎖し、前記注出口に挿入される前記液体注入管に押されて前記固定シール部材から離間することで前記注出口を開放する移動シール部材と、
前記移動シール部材を前記固定シール部材に接触するように付勢するバネ部材と、を有し、
前記固定シール部材が、前記軸方向に互いに離れて配置され、前記注出口に挿入される前記液体注入管に個別に接触して前記注出流路と前記液体注入管との間を個別にシールする複数の環状のシール部を有し、
前記複数のシール部が、第1のシール部と、前記移動シール部材の最も近くに位置し、前記液体注入管が挿入される方向において前記第1のシール部との間に空間を形成する第2のシール部とを含み、
前記移動シール部材は、前記第2のシール部にのみ接触する、液体収容ボトル。
【請求項2】
前記複数のシール部は一体に形成されている、請求項1に記載の液体収容ボトル。
【請求項3】
前記複数のシール部の間に周方向に延びる溝状の凹部が形成されている、請求項2に記載の液体収容ボトル。
【請求項4】
前記複数のシール部は別体に形成されている、請求項1に記載の液体収容ボトル。
【請求項5】
前記第2のシール部は、他のシール部よりも硬い材料からなる、請求項4に記載の液体収容ボトル。
【請求項6】
前記第1のシール部は、前記複数のシール部のうち前記注出ノズルの最も先端側に位置し、前記第2のシール部を除いた他のシール部よりも硬い材料からなる、請求項5に記載の液体収容ボトル。
【請求項7】
前記第2のシール部は、他のシール部よりも大きい厚みを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の液体収容ボトル。
【請求項8】
前記第1のシール部は、前記複数のシール部のうち前記注出ノズルの最も先端側に位置し、前記第2のシール部を除いた他のシール部よりも大きい厚みを有する、請求項7に記載の液体収容ボトル。
【請求項9】
前記液体としてインクが収容される、請求項1に記載の液体収容ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置などの液体吐出装置で使用される液体タンクには、別途用意された液体収容ボトルから液体を補充できるものがある。このような液体補充用の液体収容ボトルには、補充される液体が外部に漏れ出すことを抑制するために、液体補充時に液体タンクとの間でシール性が確保されることが要求される。特許文献1には、液体収容ボトルの注出口に設けられた環状のシール部材により、液体補充時に注出口に挿入される液体タンクの液体注入管との間をシールする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-144281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ゴミ等の異物が巻き込まれることでシール部材にわずか1箇所でも傷が生じてしまうと、そこから液体漏れが発生することが懸念される。
そこで、本発明の目的は、液体タンクへの液体補充時のシール性を十分に確保することができる液体収容ボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の液体収容ボトルは、液体タンクに補充される液体を収容する液体収容ボトルであって、ボトル本体と、ボトル本体に収容された液体を注出する注出口と、注出口に連通し、注出口を通じて液体タンクの液体注入管が挿入可能な注出流路とを有する注出ノズルと、注出口に設けられ、注出口に挿入される液体注入管との間をシールする環状の固定シール部材と、注出流路内で注出ノズルの軸方向に移動可能に設けられ、固定シール部材に接触することで注出口を閉鎖し、注出口に挿入される液体注入管に押されて固定シール部材から離間することで注出口を開放する移動シール部材と、移動シール部材を固定シール部材に接触するように付勢するバネ部材と、を有し、固定シール部材が、軸方向に互いに離れて配置され、注出口に挿入される液体注入管に個別に接触して注出流路と液体注入管との間を個別にシールする複数の環状のシール部を有し、複数のシール部が、第1のシール部と、移動シール部材の最も近くに位置し、液体注入管が挿入される方向において第1のシール部との間に空間を形成する第2のシール部とを含み、移動シール部材は、第2のシール部にのみ接触する
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液体タンクへの液体補充時のシール性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の液体収容ボトルが使用される記録装置の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る液体収容ボトルの断面図である。
図3】単一のシール部を有する固定シール部材の断面図である。
図4】2つのシール部を有する固定シール部材の断面図である。
図5】本実施形態の固定シール部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本明細書では、本発明の液体収容ボトルとして、インクジェット記録装置(液体吐出装置)にインク(液体)を補充するために用いられる場合を例に挙げて説明するが、液体収容ボトルの用途はこれに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一の機能を有する構成には図面中に同一の符号を付与し、その説明を省略する場合がある。
【0009】
図1は、本発明の液体収容ボトルが使用されるインクジェット記録装置の斜視図であり、液体補充時の様子を示す図である。
インクジェット記録装置2は、主走査方向に往復移動可能なキャリッジ(図示せず)と、キャリッジに搭載され、液体としてのインクを吐出する記録ヘッド(図示せず)と、吐出される液体を収容する大容量の液体タンク3とを有している。キャリッジの往復走査中に記録ヘッドに設けられた吐出口から液体が吐出されることで、主走査方向と交差する副走査方向に搬送される記録媒体に画像が記録される。液体タンク3に収容された液体は、供給チューブ(図示せず)からキャリッジに設けられた小容量のサブタンク(図示せず)を通じて、記録ヘッドに供給される。液体タンク3内の液体の残量が低下すると、ユーザは、補充すべき液体が収容された液体収容ボトル1を用いて、液体タンク3の上方に突出する液体注入管4を通じて液体タンク3に液体を補充する。
【0010】
図2(a)は、本発明の一実施形態に係る液体収容ボトルの断面図であり、液体補充のために液体タンクの液体注入管に接続された様子を示す図である。図2(b)は、図2(a)の破線で囲まれた領域の拡大図である。
液体収容ボトル1は、液体を収容する円筒状のボトル本体5と、ボトル本体5の開口部に装着された注出ノズル6とを有している。注出ノズル6には、ボトル本体5に収容された液体を注出する注出口7と、注出口7に連通する注出流路8とが形成され、注出口7を通じて液体タンク3の液体注入管4が挿入可能である。また、液体収容ボトル1は、注出ノズル6の注出口7を開閉する開閉弁ユニット10を有している。開閉弁ユニット10は、注出口7に設けられた環状の固定シール部材11と、注出流路8内で注出ノズル6の軸方向に移動可能に設けられた円柱状の移動シール部材12と、バネ部材13とを有している。バネ部材13は、移動シール部材12を固定シール部材11に向けて付勢するように注出流路内に収容されている。これにより、液体収容ボトル1の未使用時、移動シール部材12は固定シール部材11に接触して注出口7を閉鎖する。その結果、例えば、液体収容ボトル1が転倒しても中身が漏れない密閉性が確保される。
【0011】
一方、液体収容ボトル1の使用時(液体補充時)には、図示したように、液体タンク3の液体注入管4が注出口7に挿入される。移動シール部材12は、注出口7に挿入された液体注入管4に押し上げられて固定シール部材11から離間して注出口7を開放する。これにより、注出ノズル6の注出流路8と液体注入管4の注入流路9とが連通し、図中の2本の破線矢印で示すように、液体収容ボトル1から液体タンク3に液体が補充される。このとき、固定シール部材11が液体注入管4と接触しているため、注出口7と液体注入管4との間がシールされ、液体収容ボトル1内の液体が外部に漏れ出すことが抑制される。なお、液体タンク3と液体収容ボトル1との気液交換が液体注入管4により実現されるのであれば、2本の破線矢印のうち一方が液体の流れを示し、他方は逆向きとなって空気の流れを示すことになる。
【0012】
固定シール部材11は、注出ノズル6の軸方向に互いに離れて配置され、図2に示すように注出口7に挿入される液体注入管4に個別に接触する複数(本実施形態では2つ)の環状のシール部14,15を有している。以下、このような2つのシール部14,15による効果について、図3および図4を参照して説明する。図3(a)および図3(b)は、単一のシール部を有する比較例の固定シール部材を用いた液体補充動作を示す断面図である。図4(a)および図4(b)は、2つのシール部を有する本実施形態の固定シール部材を用いた液体補充動作を示す断面図である。
比較例の固定シール部材111は、液体注入管4の挿入時に軸方向の1箇所で液体注入管4と接触する単一のシール部を有している。そのため、図3(a)に示すように、液体注入管4の挿入時にゴミ等の異物17が巻き込まれると、固定シール部材111にわずか1箇所でも傷18が生じただけで、図3(b)に示すように、そこから液体漏れ19が発生することがある。一方、本実施形態の固定シール部材11では、2つのシール部14,15の間に周方向に延びる溝状の凹部が形成され、これにより、挿入される液体注入管4との間に空間16が形成される。したがって、図4(a)に示すように、液体注入管4の挿入時にゴミ等の異物17が巻き込まれても、その異物17を、図4(b)に示すように上述の空間16に捕捉することができる。そのため、それ以上の異物17の侵入が抑制され、仮に2つのシール部14,15のうち第1のシール部14に傷18が生じても、第2のシール部15の損傷は抑制される。その結果、第2のシール部15により注出口7と液体注入管4との間のシール性が確保され、液体収容ボトル1内の液体が外部に漏れ出すことが抑制される。
【0013】
固定シール部材11が2つのシール部14,15を有する場合、移動シール部材12は、本実施形態のように、2つのシール部14,15のうち第2のシール部15にのみ接触するようになっていることが好ましい。これにより、2つのシール部14,15に異なる機能を分担させることができ、固定シール部材11によるシールの信頼性を向上させることができる。
例えば、図3に示す比較例の固定シール部材111では、未使用期間が長期間にわたると、移動シール部材12からの荷重を受け続けることによる変形が懸念される一方、使用時(液体補充時)には液体注入管4によりそれとは反対方向の荷重が加わる。その結果、液体補充時に所望のシール性を発揮できなくなるおそれがある。これに対し、本実施形態の固定シール部材11では、2つのシール部14,15のうち第2のシール部15にのみ移動シール部材12が接触するようになっている。そのため、仮に液体収容ボトル1の未使用期間が長期間にわたり、移動シール部材12からの荷重を受け続けることで第2のシール部15が変形しても、移動シール部材12とは接触しない第1のシール部14の変形は抑制される。その結果、液体補充時に第1のシール部14が液体注入管4からの荷重を受けても十分なシール性を確保することができる。
【0014】
固定シール部材11の2つのシール部14,15の形状や厚み(軸方向の長さ)は同じであっても異なっていてもよく、それらの間隔(空間16の大きさ)にも特に制限はない。ただし、本実施形態のように移動シール部材12が第2のシール部15にのみ接触する構成では、第2のシール部15の厚みをより厚くすることで、移動シール部材12からの荷重による変形をより抑制することができる。また、2つのシール部14,15の間隔を広くして空間16を大きくとることで、ゴミ等の異物17の捕捉効果を高めることもできる。
固定シール部材11を構成する材料としては、弾性材料を用いることができ、例えば、エラストマーを用いることができる。弾性材料としては、ウレタン、フッ素ゴム、シリコーンゴム等などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0015】
図5(a)から図5(c)は、本実施形態の固定シール部材の変形例を示す断面図である。
固定シール部材11の2つのシール部14,15は、部品点数の増加を抑制するという観点からは、上述した実施形態のように一体に形成されていることが好ましい。ただし、2つのシール部14,15は、図5(a)に示すように、ゴミ等の異物17を捕捉するための空間16を形成するように軸方向に互いに離れて配置される限り、別体に形成されていてもよい。この場合、2つのシール部14,15の材料や形状はそれぞれ同じであってもよい。ただし、上述したように移動シール部材12が第2のシール部15にのみ接触する構成では、第2のシール部15は、第1のシール部14よりも硬い材料からなることが好ましい。また、第2のシール部15は、図5(b)に示すように第1のシール部14よりも大きい厚みを有していることが好ましい。いずれの場合も、液体収容ボトル1の未使用期間が長期間にわたる場合に、移動シール部材12からの荷重による第2のシール部15の変形の抑制効果をより一層高めることができる。
【0016】
また、固定シール部材11を構成するシール部の数も2つに限定されず、例えば、図5(c)に示すように3つであってもよく、それ以上であってもよい。このように、固定シール部材11として3つ以上のシール部14,15,20を設けることで、液体補充時に液体注入管4との間でより良好なシール性を発揮させることができる。なお、この場合も、上述した理由から、3つのシール部14,15,20のうち移動シール部材12に最も近い第2のシール部15にのみ、移動シール部材12が接触するようになっていることが好ましい。したがって、このような構成では、上述した実施形態と同様に、第2のシール部15は、他のシール部14,20よりも硬い材料からなることが好ましく、他のシール部14,20よりも大きい厚みを有していることが好ましい。加えて、注出ノズル6の最も先端側に位置する第1のシール部14は、第3のシール部20と比べて、液体注入管4の挿入時に大きな荷重を受ける。そのため、第1のシール部14は、第3のシール部20よりも硬い材料からなることが好ましく、第3のシール部20よりも大きい厚みを有していることが好ましい。
【符号の説明】
【0017】
1 液体収容ボトル
5 ボトル本体
6 注出ノズル
7 注出口
11 固定シール部材
図1
図2
図3
図4
図5