(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240610BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G03G21/00 384
G03G15/16 103
(21)【出願番号】P 2020031082
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】坂口 亮
(72)【発明者】
【氏名】大田 雄也
(72)【発明者】
【氏名】西方 彰信
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0199089(US,A1)
【文献】特開2019-184812(JP,A)
【文献】特開2012-027062(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0020686(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0148302(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によりトナー像が形成される回転可能な中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記中間転写ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記中間転写ベルトの外周面に当接して、前記内ローラとの間で前記中間転写ベルトを挟持することによって、前記中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する転写ニップを形成する外ローラと、
前記内ローラの回転軸線方向と直交する断面において、前記中間転写ベルトが掛け回される側の前記内ローラと前記上流ローラとの共通の接線を基準線L1、前記内ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を内ローラ中心線L2、前記外ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を外ローラ中心線L3、前記内ローラ中心線L2と前記外ローラ中心線L3との間の距離をオフセット量X(ただし、前記外ローラ中心線L3が前記内ローラ中心線L2よりも前記中間転写ベルトの回転方向に関して上流側にあるとき正の値)としたとき、前記内ローラの位置を、前記オフセット量Xが第1のオフセット量X1である第1の位置と、前記オフセット量が前記第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2である第2の位置と、に移動させることが可能な移動機構と、
前記移動機構を制御する制御部と、を有し、
第1の記録材と前記第1の記録材の
次にトナー像の転写を受ける第2の記録材とを含む複数の記録材にトナー像を転写する連続画像形成のジョブが実行される際に、
前記第1の記録材が
、前記内ローラが前記第2の位置に配置された状態でトナー像の転写を受
け、前記第2の記録材が、
所定の坪量を有
する場合、トナー像が前記第2の記録材に転写される際に前記内ローラの位置は前記第2の位
置であり、
前記第1の記録材が
、前記内ローラが前記第1の位置に配置された状態でトナー像の転写を受
け、前記第2の記録材が、前記
所定の坪量を有
する場合、トナー像が前記第2の記録材に転写される際に前記内ローラの位置は前記第1の位
置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定の坪量は第1所定坪量であり、前記第2の記録材が、第1所定坪量よりも大きい第2所定坪量である場合、前記第1の記録材にトナー像が転写される際の前記内ローラの位置に関わらず、トナー像が前記第2の記録材に転写される際に前記内ローラの位置は前記第1の位置であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
トナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によりトナー像が形成される回転可能な中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記中間転写ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記中間転写ベルトの外周面に当接して、前記内ローラとの間で前記中間転写ベルトを挟持することによって、前記中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する転写ニップを形成する外ローラと、
前記内ローラの回転軸線方向と直交する断面において、前記中間転写ベルトが掛け回される側の前記内ローラと前記上流ローラとの共通の接線を基準線L1、前記内ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を内ローラ中心線L2、前記外ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を外ローラ中心線L3、前記内ローラ中心線L2と前記外ローラ中心線L3との間の距離をオフセット量X(ただし、前記外ローラ中心線L3が前記内ローラ中心線L2よりも前記中間転写ベルトの回転方向に関して上流側にあるとき正の値)としたとき、前記内ローラの位置を、前記オフセット量Xが第1のオフセット量X1である第1の位置と、前記オフセット量が前記第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2である第2の位置と、に移動させることが可能な移動機構と、
前記移動機構を制御する制御部と、を有し、
第1の記録材と前記第1の記録材の
次にトナー像の転写を受ける第2の記録材とを含む複数の記録材にトナー像を転写する連続画像形成のジョブが実行される際に、
前記第1の記録材が、第1の坪量を有し、前記内ローラが前記第2の位置に配置された状態でトナー像の転写を受けるものであり、前記第2の記録材が、前記第1の坪量よりも大きい第2の坪量を有
する場合、トナー像
が前記第2の記録材に転写される際に前記内ローラの位置は前記第2の位
置であり、
前記第1の記録材が、前記第2の坪量よりも大きい第3の坪量を有し、前記内ローラが前記第1の位置に配置された状態でトナー像の転写を受けるものであり、前記第2の記録材が、前記第2の坪量を有
する場合、トナー像
が前記第2の記録材に転写される際に前記内ローラの位置は前記第1の位
置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、記録材に関する情報に基づいて第1のモードの動作及び第2のモードの動作を実行することが可能であり、
前記第1のモードにおいて、前記第2の記録材の坪量に関する指標値が第1の指標値である場合は前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、前記指標値が前記第1の指標値よりも大きい第2の指標値である場合は前記内ローラの位置は前記第1の記録材に対する位置と同じ位置であり、前記指標値が前記第2の指標値よりも大きい第3の指標値である場合は前記内ローラの位置は前記第1の位置であり、
前記第2のモードにおいて、前記指標値が前記第1の指標値である場合は前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、前記指標値が前記第2の指標値である場合は前記内ローラの位置は前記第1の位置であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記内ローラの位置を検知するセンサを更に有し、
前記制御部は、前記センサの検知結果に基づいて前記移動機構を制御することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
トナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によりトナー像が形成される回転可能な中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記中間転写ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記中間転写ベルトの外周面に当接して、前記内ローラとの間で前記中間転写ベルトを挟持することによって、前記中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する転写ニップを形成する外ローラと、
前記内ローラの回転軸線方向と直交する断面において、前記中間転写ベルトが掛け回される側の前記内ローラと前記上流ローラとの共通の接線を基準線L1、前記内ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を内ローラ中心線L2、前記外ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を外ローラ中心線L3、前記内ローラ中心線L2と前記外ローラ中心線L3との間の距離をオフセット量X(ただし、前記外ローラ中心線L3が前記内ローラ中心線L2よりも前記中間転写ベルトの回転方向に関して上流側にあるとき正の値)としたとき、前記内ローラの位置を、前記オフセット量Xが第1のオフセット量X1である第1の位置と、前記オフセット量が前記第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2である第2の位置と、に移動させることが可能な移動機構と、
前記移動機構を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、第1の記録材と前記第1の記録材の
次にトナー像の転写を受ける第2の記録材とを含む複数の記録材にトナー像を転写する連続画像形成のジョブが実行される、第1のモードの動作及び第2のモードの動作を実行することが可能であり、
前記第1のモードにおいて、第1の坪量を有する前記第1の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第1の位置であり、前記第1の坪量よりも小さい第2の坪量を有する前記第2の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第1の位置であり、
前記第2のモードにおいて、前記第1の坪量を有する前記第1の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第1の位置であり、前記第1の坪量よりも小さい前記第2の坪量を有する前記第2の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第2の位置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記第1のモードにおいて、前記第2の坪量よりも小さい第3の坪量を有する前記第2の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第2の位置であることを特徴とする請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1のモードにおいて、前記第2の坪量よりも小さい第3の坪量を有する前記第1の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第2の位置であることを特徴とする請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
トナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によりトナー像が形成される回転可能な中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記中間転写ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、
前記中間転写ベルトの外周面に当接して、前記内ローラとの間で前記中間転写ベルトを挟持することによって、前記中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する転写ニップを形成する外ローラと、
前記内ローラの回転軸線方向と直交する断面において、前記中間転写ベルトが掛け回される側の前記内ローラと前記上流ローラとの共通の接線を基準線L1、前記内ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を内ローラ中心線L2、前記外ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を外ローラ中心線L3、前記内ローラ中心線L2と前記外ローラ中心線L3との間の距離をオフセット量X(ただし、前記外ローラ中心線L3が前記内ローラ中心線L2よりも前記中間転写ベルトの回転方向に関して上流側にあるとき正の値)としたとき、前記内ローラの位置を、前記オフセット量Xが第1のオフセット量X1である第1の位置と、前記オフセット量が前記第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2である第2の位置と、に移動させることが可能な移動機構と、
前記移動機構を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、第1の記録材と前記第1の記録材の
次にトナー像の転写を受ける第2の記録材とを含む複数の記録材にトナー像を転写する連続画像形成のジョブが実行される、第1のモードの動作及び第2のモードの動作を実行することが可能であり、
前記第1のモードにおいて、第2の坪量を有する前記第1の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、前記第2の坪量よりも大きい第1の坪量を有する前記第2の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、
前記第2のモードにおいて、前記第2の坪量を有する前記第1の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、前記第2の坪量よりも大きい前記第1の坪量を有する前記第2の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第1の位置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記第1のモードにおいて、前記第1の坪量よりも大きい第3の坪量を有する前記第2の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第1の位置であることを特徴とする請求項
9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第1のモードにおいて、前記第1の坪量よりも大きい第3の坪量を有する前記第1の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第1の位置であることを特徴とする請求項
9に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、記録材に関する情報に基づいて前記移動機構を制御することを特徴とする請求項
6乃至
11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
記録材の搬送方向に関して前記転写ニップよりも上流に設けられた、前記転写ニップに記録材を案内するガイド部材を更に有することを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置には、トナー像を担持する像担持体としての無端状のベルト(以下、単に「ベルト」ともいう。)を有するものがある。このようなベルトとしては、例えば、第1の像担持体としての感光体などから1次転写されたトナー像を紙などのシート状の記録材に2次転写するために搬送する、第2の像担持体としての中間転写ベルトがある。以下、主に、中間転写ベルトを有する中間転写方式を採用した画像形成装置を例に説明する。
【0003】
中間転写方式の画像形成装置では、画像形成部において感光体などに形成されたトナー像が、1次転写部において中間転写ベルトに1次転写される。また、中間転写ベルトに1次転写されたトナー像は、2次転写部で記録材に2次転写される。中間転写ベルトの内周面側に設けられた内部材(2次転写内部材)と、中間転写ベルトの外周面側に設けられた外部材(2次転写外部材)とによって、中間転写ベルトと外部材との接触部である、2次転写部としての2次転写ニップが形成される。内部材としては、中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラのうちの1つである内ローラが用いられる。外部材としては、中間転写ベルトを挟んで内ローラと対向する位置に配置され、内ローラに向けて押圧される外ローラが用いられることが多い。そして、例えば、外ローラにトナーの帯電極性とは逆極性の2次転写電圧が印加されることで、2次転写ニップにおいて中間転写ベルト上のトナー像が記録材上に2次転写される。一般に、記録材の搬送方向に関して2次転写ニップよりも上流には、2次転写ニップに記録材を案内する搬送ガイドが設けられている。
【0004】
ここで、2次転写ニップの形状によって、記録材の搬送方向に関して2次転写ニップの上流近傍や下流近傍での記録材の挙動が変わる。また、記録材の剛度によっても、記録材の搬送方向に関して2次転写ニップの上流近傍や下流近傍での記録材の挙動が変わる。例えば、記録材が、剛度の小さい記録材の一例である「薄紙」の場合に、記録材の搬送方向に関して2次転写ニップの下流近傍で中間転写ベルトと記録材とが貼り付いて、中間転写ベルトからの記録材の分離不良によりジャム(紙詰まり)が発生することがある。
【0005】
一方、例えば、記録材が、剛度の大きい記録材の一例である「厚紙」の場合に、記録材の搬送方向の後端が搬送ガイドを抜けた際に、記録材の搬送方向の後端部が中間転写ベルトに衝突することがある。そして、記録材の搬送方向に関して2次転写ニップの上流近傍の中間転写ベルトの姿勢が乱れ、記録材の搬送方向の後端部に画像不良(記録材の搬送方向と略直交する方向に伸びるスジ状の画像乱れなど)が発生することがある。
【0006】
このような課題に対して、記録材の種類に応じて2次転写ニップの形状(2次転写ニップの位置)を変更する構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、記録材の中間転写ベルトからの分離性の向上と、記録材の搬送方向の後端部の画像不良の抑制と、を図るためには、記録材の種類に応じて2次転写ニップの形状(2次転写ニップの位置)を変更することが有効である。2次転写ニップの形状(2次転写ニップの位置)の変更は、内ローラ又は外ローラを2次転写ニップの押圧方向と交差する方向に移動させて、内ローラの周方向に関する内ローラと外ローラとの相対位置を変更することで行うことができる。例えば、記録材の剛度と関連する記録材の種類に関する情報としての記録材の坪量が、所定の閾値以上であるか否かに基づいて、上記相対位置を決定することが考えられる。
【0009】
ここで、電子写真方式などを用いた画像形成装置では、例えば製本印刷などのために、複数の種類の記録材に画像を形成するジョブ(ここでは、「混載ジョブ」と呼ぶ。)が実行されることがある。この場合、上述のように上記相対位置を変更する構成では、例えば「薄紙」と「普通紙」といった坪量の異なる複数の種類の記録材を用いる混載ジョブを実行する場合に、記録材の種類が変更されるたびに頻繁に上記相対位置が変更される場合がある。
【0010】
上記相対位置を変更する動作を行っている際には画像形成を行うことができない。また、中間転写ベルトの表面に傷がつくことなどを抑制するために、上記相対位置を変更する動作は、帯電電圧、現像電圧、1次転写電圧、2次転写電圧などの全ての作像高圧を停止し、中間転写ベルトの回転を停止してから行うことが望ましい。この場合、上記相対位置の変更を行った後に、中間転写ベルトの回転を再開し、再度作像高圧を立ち上げてから、画像形成動作を行うことになる。そのため、上記相対位置の変更を過度に頻繁に行うと、上記相対位置の変更にかかる時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
【0011】
なお、以上では中間転写ベルトから記録材へのトナー像の転写部である2次転写部を例として従来の課題について説明したが、感光体などの他のベルト状の像担持体から記録材へのトナー像の転写部に関しても同様の課題がある。
【0012】
したがって、本発明の目的は、混載ジョブにおける記録材に対する転写性の向上を図りつつ、生産性の低下を抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によりトナー像が形成される回転可能な中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記中間転写ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、前記中間転写ベルトの外周面に当接して、前記内ローラとの間で前記中間転写ベルトを挟持することによって、前記中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する転写ニップを形成する外ローラと、前記内ローラの回転軸線方向と直交する断面において、前記中間転写ベルトが掛け回される側の前記内ローラと前記上流ローラとの共通の接線を基準線L1、前記内ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を内ローラ中心線L2、前記外ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を外ローラ中心線L3、前記内ローラ中心線L2と前記外ローラ中心線L3との間の距離をオフセット量X(ただし、前記外ローラ中心線L3が前記内ローラ中心線L2よりも前記中間転写ベルトの回転方向に関して上流側にあるとき正の値)としたとき、前記内ローラの位置を、前記オフセット量Xが第1のオフセット量X1である第1の位置と、前記オフセット量が前記第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2である第2の位置と、に移動させることが可能な移動機構と、前記移動機構を制御する制御部と、を有し、第1の記録材と前記第1の記録材の次にトナー像の転写を受ける第2の記録材とを含む複数の記録材にトナー像を転写する連続画像形成のジョブが実行される際に、前記第1の記録材が、前記内ローラが前記第2の位置に配置された状態でトナー像の転写を受け、前記第2の記録材が、所定の坪量を有する場合、トナー像が前記第2の記録材に転写される際に前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、前記第1の記録材が、前記内ローラが前記第1の位置に配置された状態でトナー像の転写を受け、前記第2の記録材が、前記所定の坪量を有する場合、トナー像が前記第2の記録材に転写される際に前記内ローラの位置は前記第1の位置であることを特徴とする画像形成装置である。
【0015】
本発明の他の態様によると、トナー像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によりトナー像が形成される回転可能な中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記中間転写ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、前記中間転写ベルトの外周面に当接して、前記内ローラとの間で前記中間転写ベルトを挟持することによって、前記中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する転写ニップを形成する外ローラと、前記内ローラの回転軸線方向と直交する断面において、前記中間転写ベルトが掛け回される側の前記内ローラと前記上流ローラとの共通の接線を基準線L1、前記内ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を内ローラ中心線L2、前記外ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を外ローラ中心線L3、前記内ローラ中心線L2と前記外ローラ中心線L3との間の距離をオフセット量X(ただし、前記外ローラ中心線L3が前記内ローラ中心線L2よりも前記中間転写ベルトの回転方向に関して上流側にあるとき正の値)としたとき、前記内ローラの位置を、前記オフセット量Xが第1のオフセット量X1である第1の位置と、前記オフセット量が前記第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2である第2の位置と、に移動させることが可能な移動機構と、前記移動機構を制御する制御部と、を有し、第1の記録材と前記第1の記録材の次にトナー像の転写を受ける第2の記録材とを含む複数の記録材にトナー像を転写する連続画像形成のジョブが実行される際に、前記第1の記録材が、第1の坪量を有し、前記内ローラが前記第2の位置に配置された状態でトナー像の転写を受けるものであり、前記第2の記録材が、前記第1の坪量よりも大きい第2の坪量を有する場合、トナー像が前記第2の記録材に転写される際に前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、前記第1の記録材が、前記第2の坪量よりも大きい第3の坪量を有し、前記内ローラが前記第1の位置に配置された状態でトナー像の転写を受けるものであり、前記第2の記録材が、前記第2の坪量を有する場合、トナー像が前記第2の記録材に転写される際に前記内ローラの位置は前記第1の位置であることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0016】
本発明の他の態様によると、トナー像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によりトナー像が形成される回転可能な中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記中間転写ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、前記中間転写ベルトの外周面に当接して、前記内ローラとの間で前記中間転写ベルトを挟持することによって、前記中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する転写ニップを形成する外ローラと、前記内ローラの回転軸線方向と直交する断面において、前記中間転写ベルトが掛け回される側の前記内ローラと前記上流ローラとの共通の接線を基準線L1、前記内ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を内ローラ中心線L2、前記外ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を外ローラ中心線L3、前記内ローラ中心線L2と前記外ローラ中心線L3との間の距離をオフセット量X(ただし、前記外ローラ中心線L3が前記内ローラ中心線L2よりも前記中間転写ベルトの回転方向に関して上流側にあるとき正の値)としたとき、前記内ローラの位置を、前記オフセット量Xが第1のオフセット量X1である第1の位置と、前記オフセット量が前記第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2である第2の位置と、に移動させることが可能な移動機構と、前記移動機構を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、第1の記録材と前記第1の記録材の次にトナー像の転写を受ける第2の記録材とを含む複数の記録材にトナー像を転写する連続画像形成のジョブが実行される、第1のモードの動作及び第2のモードの動作を実行することが可能であり、前記第1のモードにおいて、第1の坪量を有する前記第1の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第1の位置であり、前記第1の坪量よりも小さい第2の坪量を有する前記第2の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第1の位置であり、前記第2のモードにおいて、前記第1の坪量を有する前記第1の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第1の位置であり、前記第1の坪量よりも小さい前記第2の坪量を有する前記第2の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第2の位置であることを特徴とする画像形成装置が提供される。
本発明の他の態様によると、トナー像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によりトナー像が形成される回転可能な中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラと、前記中間転写ベルトの回転方向に関して前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラと、を含む複数の張架ローラと、前記中間転写ベルトの外周面に当接して、前記内ローラとの間で前記中間転写ベルトを挟持することによって、前記中間転写ベルトから記録材へトナー像を転写する転写ニップを形成する外ローラと、前記内ローラの回転軸線方向と直交する断面において、前記中間転写ベルトが掛け回される側の前記内ローラと前記上流ローラとの共通の接線を基準線L1、前記内ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を内ローラ中心線L2、前記外ローラの回転中心を通り前記基準線L1と直交する直線を外ローラ中心線L3、前記内ローラ中心線L2と前記外ローラ中心線L3との間の距離をオフセット量X(ただし、前記外ローラ中心線L3が前記内ローラ中心線L2よりも前記中間転写ベルトの回転方向に関して上流側にあるとき正の値)としたとき、前記内ローラの位置を、前記オフセット量Xが第1のオフセット量X1である第1の位置と、前記オフセット量が前記第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2である第2の位置と、に移動させることが可能な移動機構と、前記移動機構を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、第1の記録材と前記第1の記録材の次にトナー像の転写を受ける第2の記録材とを含む複数の記録材にトナー像を転写する連続画像形成のジョブが実行される、第1のモードの動作及び第2のモードの動作を実行することが可能であり、前記第1のモードにおいて、第2の坪量を有する前記第1の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、前記第2の坪量よりも大きい第1の坪量を有する前記第2の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、前記第2のモードにおいて、前記第2の坪量を有する前記第1の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第2の位置であり、前記第2の坪量よりも大きい前記第1の坪量を有する前記第2の記録材にトナー像が転写される際に、前記内ローラの位置は前記第1の位置であることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、混載ジョブにおける記録材に対する転写性の向上を図りつつ、生産性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】2次転写ニップ近傍での記録材の挙動を説明するための模式的な断面図である。
【
図4】オフセット機構の一部を示す概略側面図である。
【
図6】実施例1におけるオフセット量の変更条件を示す模式図である。
【
図7】画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
【
図8】生産性優先モードの設定画面を説明するための模式図である。
【
図9】オフセット量の変更動作のフローチャート図である。
【
図10】実施例1におけるジョブの動作のフローチャート図である。
【
図11】実施例1の制御の効果を説明するためのチャート図である。
【
図12】実施例2におけるオフセット量の変更条件を示す模式図である。
【
図13】薄紙優先モードの設定画面を説明するための模式図である。
【
図14】実施例2におけるジョブの動作のフローチャート図である。
【
図15】実施例3におけるジョブの動作のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0020】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、中間転写方式を採用したタンデム型の複合機(複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の機能を有する。)である。画像形成装置100は、例えば、外部装置から送信された画像信号に応じて、電子写真方式を用いて紙などのシート状の記録材(転写材、シート材、記録媒体、メディア)Sにフルカラー画像を形成することができる。
【0021】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する4つの画像形成部10Y、10M、10C、10Kを有する。これらの画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、後述する中間転写ベルト31の略水平に配置される画像転写面の移動方向に沿って直列状に配置されている。各画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部10は、後述する感光ドラム11(11Y、11M、11C、11K)、帯電器12(12Y、12M、12C、12K)、露光装置13(13Y、13M、13C、13K)、現像器14(14Y、14M、14C、14K)、1次転写ローラ35(35Y、35M、35C、35K)、クリーニング装置15(15Y、15M、15C、15K)などを有して構成される。
【0022】
トナー像を担持する第1の像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム11は、駆動源としてのドラム駆動モータ(図示せず)から駆動力が伝達されて、図中矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される。回転する感光ドラム11の表面は、帯電手段としての帯電器12によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理時に、帯電器12には、帯電電源(図示せず)により所定の帯電電圧が印加される。帯電処理された感光ドラム11の表面は、露光手段(静電像形成手段)としての露光装置13によって画像信号に応じて走査露光され、感光ドラム11上に静電像(静電潜像)が形成される。本実施例では、露光装置13は、画像信号に応じて変調されたレーザ光を感光ドラム11上に照射するレーザスキャナー装置で構成されている。感光ドラム11上に形成された静電像は、現像手段としての現像器14によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム11上にトナー像(現像剤像)が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム11上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム11の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。現像器14は、現像剤を担持して感光ドラム11との対向部である現像位置に搬送する、回転可能な現像剤担持体である現像ローラを有している。現像ローラは、例えば感光ドラム1の駆動系から駆動力が伝達されることによって回転駆動される。また、現像時に、現像ローラには、現像電源(図示せず)により所定の現像電圧が印加される。
【0023】
4つの感光ドラム11Y、11M、11C、11Kと対向するように、トナー像を担持する第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された回転可能な中間転写体である中間転写ベルト31が配置されている。中間転写ベルト31は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての駆動ローラ33、テンションローラ34、2次転写前ローラ37、及び内ローラ32に掛け回されて、所定の張力で張架されている。駆動ローラ33は、中間転写ベルト31に駆動力を伝達する。テンションローラ34は、中間転写ベルト31に所定の張力(テンション)を付与する。2次転写前ローラ37は、中間転写ベルト31の回転方向(走行方向、移動方向)に関して2次転写ニップN2(後述)の上流近傍の中間転写ベルト31の面を形成する。内ローラ(2次転写対向ローラ、内部材)32は、外ローラ41(後述)の対向部材(対向電極)として機能する。中間転写ベルト31は、駆動源としてのベルト駆動モータ(図示せず)から駆動力が伝達されることによって駆動ローラ33が回転駆動されることで、図中矢印R2方向(時計回り)に回転(周回移動)する。本実施例では、中間転写ベルト31は、一例として、周速度が400mm/secとなるように回転駆動される。複数の張架ローラのうち駆動ローラ33以外の張架ローラは、中間転写ベルト31の回転に伴って従動して回転する。中間転写ベルト31の内周面側には、各感光ドラム11Y、11M、11C、11Kに対応して、1次転写手段としてのローラ状の1次転写部材である1次転写ローラ35Y、35M、35C、35Kが配置されている。1次転写ローラ35は、中間転写ベルト31を感光ドラム11に向けて押圧して、感光ドラム11と中間転写ベルト31との接触部である1次転写部としての1次転写ニップN1を形成する。
【0024】
上述のように感光ドラム11上に形成されたトナー像は、1次転写ニップN1において、1次転写ローラ35の作用によって、回転している中間転写ベルト31上に1次転写される。1次転写時に、1次転写ローラ35には、1次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性(現像時のトナーの帯電極性)とは逆極性の直流電圧である1次転写電圧が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム11上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト31上の同一画像形成領域に重ね合わされるようにして順次1次転写される。本実施例では、1次転写ニップN1が、中間転写ベルト31にトナー像を形成する画像形成位置である。そして、中間転写ベルト31は、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトの一例である。
【0025】
中間転写ベルト31の外周面側において、内ローラ32と対向する位置には、2次転写手段としてのローラ状の2次転写部材(転写回転体)である外ローラ(2次転写ローラ、外部材)41が配置されている。外ローラ41は、中間転写ベルト31を介して内ローラ32に向けて押圧され、中間転写ベルト31と外ローラ41との接触部である2次転写部としての2次転写ニップN2を形成する。上述のように中間転写ベルト31上に形成されたトナー像は、2次転写ニップN2において、外ローラ41の作用によって、中間転写ベルト31と外ローラ41とに挟持されて搬送されている記録材S上に2次転写される。本実施例では、2次転写時に、外ローラ41には、2次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である2次転写電圧が印加される。本実施例では、内ローラ32は、電気的に接地(グランドに接続)されている。なお、内ローラ32を2次転写部材として用いてこれにトナーの正規の帯電極性と同極性の2次転写電圧を印加し、外ローラ41を対向電極として用いてこれを電気的に接地してもよい。
【0026】
記録材Sは、中間転写ベルト31上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写ニップN2へと搬送されてくる。つまり、記録材カセット61、62、63に格納された記録材Sは、給送装置を構成する給送ローラ71、72、73のいずれかが回転することで送り出される。この記録材Sは、給送搬送路81を通って、搬送手段としての搬送部材であるレジストローラ(レジストローラ対)74まで搬送され、一旦停止させられる。そして、この記録材Sは、2次転写ニップN2において中間転写ベルト31上のトナー像と記録材S上の所望の画像形成領域とが一致するようにレジストローラ74が回転駆動されることで、2次転写ニップN2に送り込まれる。
【0027】
記録材Sの搬送方向に関して、レジストローラ74よりも下流かつ2次転写ニップN2よりも上流には、2次転写ニップN2に記録材Sを案内する搬送ガイド83が設けられている。搬送ガイド83は、記録材Sのオモテ面(搬送ガイド83を通過した直後にトナー像が転写される面)に接触可能な第1のガイド部材83aと、記録材Sのウラ面(オモテ面とは反対側の面)に接触可能な第2のガイド部材83bと、を有して構成される。第1のガイド部材83aと第2のガイド部材83bとは対向して配置され、これら両部材の間を記録材Sが通過する。第1のガイド部材83aは、記録材Sの中間転写ベルト31に近づく方向への移動を規制する。第2のガイド部材83bは、記録材Sの中間転写ベルト31から遠ざかる方向への移動を規制する。
【0028】
トナー像が転写された記録材Sは、搬送ベルト42により定着手段としての定着装置50へと搬送される。定着装置50は、未定着のトナー像を担持した記録材Sを加熱及び加圧することでトナー像を記録材Sの表面に定着(溶融、固着)させる。その後、トナー像が定着された記録材Sは、排出搬送経路82を通って、画像形成装置100の装置本体100aの外部に設けられた排出トレイ64へと排出(出力)される。
【0029】
一方、1次転写後に感光ドラム11上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、クリーニング手段としてのクリーニング装置15によって感光ドラム11上から除去されて回収される。また、2次転写後に中間転写ベルト31上に残留したトナー(2次転写残トナー)や記録材Sから付着した紙粉などの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置36によって中間転写ベルト31上から除去されて回収される。
【0030】
なお、本実施例では、複数の張架ローラに張架された中間転写ベルト31、各1次転写ローラ35、ベルトクリーニング装置36、これらを支持するフレームなどを有して、ベルト搬送装置としての中間転写ベルトユニット30が構成されている。中間転写ベルトユニット30は、メンテナンス又は交換のために装置本体100aに対して着脱可能とされている。
【0031】
ここで、中間転写ベルト31としては、単層又は多層構造の樹脂系材料で構成されたもの、弾性材料で構成された弾性層を備えた多層構造のものなどを用いることができる。また、中間転写ベルト31としては、例えば、厚さが40μm以上、ヤング率が1.0GPa以上、表面抵抗率が1.0×109~5.0×1013Ω/□であるものを好ましく用いることができる。
【0032】
また、本実施例では、内ローラ32は、金属製の芯金(基材)の外周に、弾性材料としてのゴム材料で形成された弾性層(ゴム層)が設けられて構成されている。この弾性層は、例えば、EPDMゴム(導電剤を含有していてよい。)などで形成することができる。本実施例では、内ローラ32は、その外径が20mm、弾性層の厚さが0.5mmとなるように形成されている。また、本実施例では、内ローラ32の弾性層の硬度は、例えば70°(JIS-A)に設定されている。なお、内ローラ32は、SUMあるいはSUSなどの金属材料で形成された金属ローラで構成されていてもよい。なお、2次転写前ローラ37は、例えば、内ローラ32と同様の構成とすることができる。
【0033】
また、本実施例では、外ローラ41は、金属製の芯金(基材)の外周に、導電性の弾性材料としての導電性のゴム材料で形成された導電性の弾性層(ソリッドゴム層あるいはスポンジ層(発泡弾性体層)であってよい。)が設けられて構成されている。この弾性層は、例えば、金属錯体、カーボンなどの導電剤を含有したNBRゴムやEPDMゴムなどで形成することができる。本実施例では、外ローラ41は、芯金の外径が12mm、弾性層の厚さが6mmとされ、外ローラ41の外径が24mmとなるように形成されている。また、本実施例では、外ローラ41の弾性層の硬度は、例えば28°(アスカーC)に設定されている。また、本実施例では、外ローラ41は、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である押圧ばね44(
図3)によって、中間転写ベルト31を挟んで内ローラ32に対して所定の圧力で当接するように付勢されている。
【0034】
なお、本実施例では、内ローラ32を含む中間転写ベルト31の張架ローラ、外ローラ41のそれぞれの回転軸線方向は互いに略平行である。
【0035】
2.オフセット
図2は、2次転写ニップN2の近傍での記録材Sの挙動を説明するための模式的な断面図(内ローラ32の回転軸線方向と略直交する断面)である。
【0036】
前述のように、2次転写ニップN2の形状(2次転写ニップN2の位置)や記録材Sの剛度によって、記録材Sの搬送方向に関して2次転写ニップN2の上流近傍や下流近傍での記録材Sの挙動が変わる。そして、例えば、記録材Sが、剛度の小さい記録材Sの一例である「薄紙」の場合に、中間転写ベルト31からの記録材Sの分離不良によりジャム(紙詰まり)が発生することがある。この現象は、記録材Sのコシが弱いことによって記録材Sが中間転写ベルト31に貼り付きやすくなるため、記録材Sの剛度が小さい場合に顕著となる。
【0037】
つまり、
図2に示す断面において、内ローラ32と2次転写前ローラ37とで張架されて形成される中間転写ベルト31の張架面を示す線をニップ前張架線Tとする。なお、2次転写前ローラ37は、複数の張架ローラのうち内ローラ32よりも中間転写ベルト31の回転方向に関して上流で内ローラ32に隣接して配置された上流ローラの一例である。また、同断面において、内ローラ32の回転中心と外ローラ41の回転中心とを通る直線をニップ中心線Lcとする。また、同断面において、ニップ中心線Lcと略直交する線をニップ線Lnとする。なお、
図2は、ニップ前張架線Tに沿う方向に関して内ローラ32の回転中心よりも外ローラ41の回転中心の方が中間転写ベルト31の回転方向の上流側にオフセットされて配置された状態を示している。
【0038】
このとき、記録材Sは、2次転写ニップN2で内ローラ32と外ローラ41との間に挟持された状態では、ほぼニップ線Lnに沿って姿勢を保とうとする傾向がある。そのため、概して、ニップ前張架線Tに沿う方向に関して内ローラ32の回転中心と外ローラ41の回転中心とが近い場合には、
図2中の破線Aで示すように、記録材Sの排出角度θが小さくなる。つまり、記録材Sの搬送方向の先端は、2次転写ニップN2から排出される際に、中間転写ベルト31の近くに排出されるような姿勢となる。これにより、記録材Sが中間転写ベルト31に貼り付きやすくなる。これに対して、概して、ニップ前張架線Tに沿う方向に関して内ローラ32の回転中心よりも外ローラ41の回転中心の方が中間転写ベルト31の回転方向の上流側に配置されるほど、
図2中の実線で示すように、記録材Sの排出角度θが大きくなる。つまり、記録材Sの搬送方向の先端は、2次転写ニップN2から排出される際に、中間転写ベルト31から離れる方向に排出されるような姿勢となる。これにより、記録材Sは中間転写ベルト31に貼り付きにくくなる。
【0039】
一方、前述のように、例えば、記録材Sが、剛度の大きい記録材Sの一例である「厚紙」の場合には、記録材Sの搬送方向の後端が搬送ガイド83を抜けた際に、記録材Sの搬送方向の後端部が中間転写ベルト31に衝突することがある。これにより、記録材Sの搬送方向の後端部に画像不良が発生することがある。この現象は、記録材Sのコシが強いことによって記録材Sの搬送方向の後端部が強い勢いで中間転写ベルト31に衝突しやすくなるため、記録材Sの剛度が大きい場合に顕著となる。
【0040】
つまり、上述のように、
図2に示す断面において、記録材Sは、2次転写ニップN2で内ローラ32と外ローラ41との間に挟持された状態では、ほぼニップ線Lnに沿って姿勢を保とうとする傾向がある。そのため、概して、ニップ前張架線Tに沿う方向に関して内ローラ32の回転中心よりも外ローラ41の回転中心の方が中間転写ベルト31の回転方向の上流側に配置されるほど、ニップ線Lnはニップ前張架線Tに食い込むような形となる。その結果、記録材Sの搬送方向の後端が搬送ガイド83を抜けた際に、
図2中の破線Bで示すように、記録材Sの搬送方向の後端部が中間転写ベルト31に衝突するようになり、記録材Sの搬送方向の後端部に画像不良が発生しやすくなる。これに対して、概して、ニップ前張架線Tに沿う方向に関して内ローラ32の回転中心と外ローラ41の回転中心とを近くすれば、記録材Sの搬送方向の後端が搬送ガイド83から抜けた際に中間転写ベルト31に衝突することは抑制される。これにより、記録材Sの搬送方向の後端部の画像不良は発生しにくくなる。
【0041】
したがって、記録材Sの中間転写ベルト31からの分離性の向上と、記録材Sの搬送方向の後端部の画像不良の抑制と、を図るためには、次のようにすることが有効である。つまり、記録材Sの種類に応じて、内ローラ32の周方向(中間転写ベルト31の回転方向)に関する内ローラ32と外ローラ41との相対位置を変更して、2次転写ニップN2の形状(2次転写ニップN2の位置)を変更することである。
【0042】
図2を参照して、内ローラ32と外ローラ41との相対位置を示すオフセット量Xの定義について説明する。
図2に示す断面において、中間転写ベルト31が掛け回される側の内ローラ32と2次転写前ローラ37との共通の接線を基準線L1とする。基準線L1は、上記ニップ前張架線Tに対応する。また、同断面において、内ローラ32の回転中心を通り基準線L1と略直交する直線を内ローラ中心線L2とする。また、同断面において、外ローラ41の回転中心を通り基準線L1と略直交する直線を外ローラ中心線L3とする。このとき、内ローラ中心線L2と外ローラ中心線L3との間の距離(垂直距離)をオフセット量X(ただし、外ローラ中心線L3が内ローラ中心線L2よりも中間転写ベルト31の回転方向の上流側にあるとき正の値)と定義する。オフセット量Xは、負の値、0、正の値をとることができる。オフセット量Xを大きくすることで、中間転写ベルト31の回転方向に関する2次転写ニップN2の幅が中間転写ベルト31の回転方向の上流側に広がる。つまり、内ローラ32と中間転写ベルト31との接触領域の中間転写ベルト31の回転方向の上流側の端部よりも、外ローラ41と中間転写ベルト31との接触領域の中間転写ベルト31の回転方向の上流側の端部の方がより上流側に位置するようになる。このように、内ローラ32又は外ローラ41の少なくとも一方の位置を変更して、内ローラ32の周方向に関する内ローラ32と外ローラ41との相対位置を変更させて、2次転写ニップ(転写部)N2の位置を変更可能である。
【0043】
図2において、外ローラ41は仮想的に基準線L1(ニップ前張架線T)に対して変形せずに接するように表されている。しかし、外ローラ41の最外層の材質はゴムやスポンジなどの弾性体であり、実際には押圧ばね44によって内ローラ32に向かう方向に押圧されて変形している。外ローラ41が、内ローラ32に対して中間転写ベルト31の回転方向の上流側にオフセットされて配置され、内ローラ32との間で中間転写ベルト31を挟持するように押圧ばね44によって押圧されると、略S字形状の2次転写ニップN2が形成される。そして、搬送ガイド83にガイドされて送られてくる記録材Sの姿勢もその2次転写ニップN2の形状にならって決定される。オフセット量Xが大きくなるほど、記録材Sを屈曲させることになる。そのため、上述のように、例えば記録材Sが「薄紙」の場合には、オフセット量Xを大きくすることで、2次転写ニップN2を通過した後の記録材Sの中間転写ベルト31からの分離性を向上させることができる。しかし、オフセット量Xが大きいと、上述のように、例えば記録材Sが「厚紙」の場合には、記録材Sの搬送方向の後端が搬送ガイド83を抜けた際に記録材Sの搬送方向の後端部が中間転写ベルト31に衝突することになる。これにより、記録材Sの搬送方向の後端部の画質を低下させる要因となる。そのため、この場合にはオフセット量Xを小さくすればよい。
【0044】
本実施例では、画像形成装置100は、内ローラ32又は外ローラ41の少なくとも一方の位置を変更してオフセット量Xを変更可能な構成とされている。特に、本実施例では、画像形成装置100は、内ローラ32の位置を変更してオフセット量Xを変更する。また、本実施例では、画像形成装置100は、記録材Sの剛度と関連する記録材Sの種類に関する情報としての記録材(紙)Sの坪量の情報に基づいて、オフセット量Xを変更する。ここでは、剛度の小さい記録材Sの一例として「薄紙」(坪量<52gsm)、剛度の大きい記録材Sの一例として「普通紙」や「厚紙」(坪量≧52gsm)を用いるものとする。なお、gsmはg/m2を意味する。
【0045】
本実施例では、画像形成装置100は、詳しくは後述する「通常モード」では、記録材Sが「普通紙」や「厚紙」(坪量≧52gsm)の場合には、オフセット量Xが第1のオフセット量X1となる第1の内ローラ位置に内ローラ32を配置する。また、本実施例では、画像形成装置100は、該「通常モード」では、記録材Sが「薄紙」(坪量<52gsm)の場合には、オフセット量Xが第1のオフセット量X1よりも大きい第2のオフセット量X2となる第2の内ローラ位置に内ローラ32を配置する。第1のオフセット量X1は、正の値、0、負の値であってよく、第2のオフセット量X2は、典型的には正の値である。本実施例では、オフセット量Xが第1のオフセット量X1の場合の内ローラ32と外ローラ41との相対位置が第1の相対位置であり、オフセット量Xが第2のオフセット量X2の場合の内ローラ32と外ローラ41との相対位置が第2の相対位置である。換言すれば、本実施例では、オフセット量Xが第1のオフセット量X1の場合の2次転写ニップN2の位置が転写部の第1の位置であり、オフセット量Xが第2のオフセット量X2の場合の2次転写ニップN2の位置が転写部の第2の位置である。
【0046】
なお、オフセット量Xは、2次転写ニップN2を記録材Sが通過している際(2次転写中)に、所望のオフセット量Xとなっていればよい。
【0047】
3.2次転写に関する構成
本実施例における2次転写に関する構成について更に詳しく説明する。ここでは、詳しくは後述する「通常モード」での動作を例として説明する。
図3(a)、(b)は、本実施例における2次転写ニップN2の近傍を内ローラ32の回転軸線方向の一端部側(
図1の紙面手前側)から該回転軸線方向と略平行に見た要部の概略側面図である。
図3(a)は「普通紙」や「厚紙」(坪量≧52gsm)の場合、
図3(b)は「薄紙」(坪量<52gsm)の場合の状態を示している。なお、例えば、記録材Sが「薄紙」、「厚紙」の場合とは、より詳細には、それぞれ「薄紙」、「厚紙」が記録材Sとして用いられて2次転写ニップN2を通過する際のことをいう。
【0048】
3-1.オフセット機構
図3(a)、(b)に示すように、本実施例では、画像形成装置100は、外ローラ41に対する内ローラ32の相対位置を変更してオフセット量Xを変更する、位置変更機構
(移動機構)としてのオフセット機構(オフセット量変更手段)101を有する。
図3(a)、(b)には、内ローラ32の回転軸線方向の一端部の構成を示しているが、他端部の構成も同様(内ローラ32の回転軸線方向の中央に対して略対称)である。
【0049】
内ローラ32の回転軸線方向の両端部は、支持部材としての内ローラホルダ38によって回転可能に支持されている。内ローラホルダ38は、内ローラ回動軸38aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット30のフレームなどに支持されている。このように、内ローラホルダ38を内ローラ回動軸38aの周りに回動させ、内ローラ32を内ローラ回動軸38aの周りに回動させることで、外ローラ41に対する内ローラ32の相対位置を変更してオフセット量Xを変更することができるようになっている。
【0050】
内ローラホルダ38は、作動部材としてのオフセットカム39の作用により回動するように構成されている。オフセットカム39は、オフセットカム回動軸39aを中心に回動可能なように、中間転写ベルトユニット30のフレームなどに支持されている。オフセットカム39は、駆動源としての内ローラ駆動モータ250からの駆動を受けてオフセットカム回動軸39aを中心に回動可能である。また、オフセットカム39は、内ローラホルダ38に設けられたオフセットカムフォロワ(アーム部)38cと接触している。また、内ローラホルダ38は、オフセットカムフォロワ38cがオフセットカム39と係合する方向に回動するように、後述するように本実施例では中間転写ベルト31のテンションによって付勢されている。ただし、これに限定されるものではなく、内ローラホルダ38は、オフセットカムフォロワ38cがオフセットカム39と係合する方向に回動するように、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)であるばねなどで付勢されてもよい。
【0051】
図3(a)に示すように、「普通紙」や「厚紙」(坪量≧52gsm)の場合には、オフセットカム39が内ローラ駆動モータ250によって駆動されて例えば時計回りに回動する。これにより、内ローラ回動軸38aを中心に反時計回りに内ローラホルダ38が回動して、外ローラ41に対する内ローラ32の相対位置が決められる。これにより、オフセット量Xが相対的に小さい第1のオフセット量X1である第1の内ローラ位置に、内ローラ32が配置された状態となる。その結果、前述のように、「普通紙」や「厚紙」(坪量≧52gsm)の搬送方向の後端部の画質の低下を抑制することができる。
【0052】
また、
図3(b)に示すように、「薄紙」(坪量<52gsm)の場合には、オフセットカム39が内ローラ駆動モータ250によって駆動されて例えば反時計回りに回動する。これにより、内ローラ回動軸38aを中心に時計回りに内ローラホルダ38が回動して、外ローラ41に対する内ローラ32の相対位置が決められる。これにより、オフセット量Xが相対的に大きい第2のオフセット量X2である第2の内ローラ位置に、内ローラ32が配置された状態となる。その結果、前述のように2次転写ニップN2を通過した後の「薄紙」(坪量<52gsm)の中間転写ベルト31からの分離性が向上する。
【0053】
本実施例では、詳しくは後述する「通常モード」では、記録材Sの坪量M(gsm)に基づいて、オフセット量X(X1、X2)が、例えば次のような2パターンとなるように設定されている。
(a)M≧52gsm:X1=1.0mm
(b)M<52gsm:X2=2.5mm
【0054】
本実施例では、
図3(a)に示す上記設定(a)における内ローラ32の位置が内ローラ32のホームポジションである。ここで、ホームポジションとは、画像形成装置100がスリープ状態(後述)又は主電源がOFFされた状態のときの位置のことをいう。
【0055】
ここで、本実施例では、
図3に示す断面において、内ローラホルダ38は、中間転写ベルト31のテンションによって、内ローラ回動軸38aを中心に反時計周りのモーメントが常に加えられている。つまり、本実施例では、内ローラホルダ38は、中間転写ベルト31のテンションによって、オフセットカムフォロワ38cがオフセットカム39と係合するように回動する方向のモーメントが常に加えられている。また、本実施例では、
図3に示す断面において、内ローラ回動軸38aは、内ローラ32の回転中心と外ローラ41の回転中心とを結んだ直線(ニップ中心線)Lcに対して、記録材Sの搬送方向の下流側に配置されている。これにより、外ローラ41が中間転写ベルト31を介して内ローラ32に当接させられている場合、内ローラホルダ38が外ローラ41から受ける反力も、
図3中の反時計回りのモーメントとなる。このような構成により、別途ばねなどの付勢部材を用いることなく、カム機構を構成することができる。
【0056】
また、中間転写ベルト31の交換などのために、中間転写ベルトユニット30に対して中間転写ベルト31を装着する又は取り外す操作の作業性を阻害しないように、内ローラホルダ38は中間転写ベルト31の張架面の内側に配置することが望ましい。そのため、
図3に示す断面において、内ローラ回動軸38aは、上記直線(ニップ中心線)Lcと、ニップ後張架線Uとの間の領域Aに配置することが望ましい。ここで、ニップ後張架線Uは、
図3に示す断面において、内ローラ32と駆動ローラ33(
図1参照)とで張架されて形成される中間転写ベルト31の張架面を示す線である。なお、駆動ローラ33は、複数の張架ローラのうち内ローラ32よりも中間転写ベルト31の回転方向に関して下流で内ローラ32に隣接して配置された下流ローラの一例である。
【0057】
図4は、内ローラホルダ38の近傍を内ローラ32の回転軸線方向の一端部側(
図1の紙面手前側)から該回転軸線方向と略平行に見た概略側面図である。本実施例では、画像形成装置100には、内ローラ32と外ローラ41との相対位置(特に、本実施例では内ローラ32の位置)を検知するための位置検知手段として、内ローラ位置センサ251が設けられている。本実施例では、内ローラ位置センサ251は、透過型光学センサで構成されている。この内ローラ位置センサ251は、フラグとしての内ローラホルダ38の一部による光の透過又は遮断の状態を検知して、検知結果を示す出力信号を後述する制御部300に入力する。
【0058】
図4中の実線で示した状態が、「普通紙」や「厚紙」(坪量≧52gsm)に対応する内ローラ32のホームポジションの状態である。この状態では、上述のように、中間転写ベルト31テンションと外ローラ41から受ける反力により、内ローラホルダ38が内ローラ回動軸38aを中心に反時計回りのモーメントを受ける。そして、内ローラホルダ38に設けられた、内ローラ32と同軸円筒状の突き当て部38bが第1の位置決め部40aに突き当たる。そして、突き当て部38bが第1の位置決め部40aに突き当たると、内ローラホルダ38が内ローラ位置センサ251の光を遮蔽する。後述する制御部300のCPU301は、内ローラ駆動モータ250を駆動し、内ローラ位置センサ251の出力信号の論理がLowからHighに変化したことを検出すると、第1のオフセット量X1の位置に内ローラ32が到達したと判断する。そして、該CPU301は、内ローラ駆動モータ250を停止する。このようにして、第1のオフセット量X1(=1.0mm)の位置に内ローラ32が位置決めされる。一方、
図4中の二点鎖線で示した状態が、「薄紙」(坪量<52gsm)の場合の状態である。オフセットカム39が回転することで、オフセットカム39が内ローラホルダ38のアーム部38cに接触してこれを押圧することで、突き当て部38bが第2の位置決め部40bに突き当たる。これにより、第2のオフセット量X2(=2.5mm)の位置に内ローラ32が位置決めされる。この際に、後述する制御部300のCPU301は、内ローラ駆動モータ250を駆動し、内ローラ位置センサ251の出力信号の論理がHighからLowに変化したことを検出してから500msec経過した際に、内ローラ駆動モータ250を停止する。これにより、該CPU301は、内ローラ32がオフセット量X2(=2.5mm)の位置に内ローラ32が到達したと判断する。なお、第1、第2の位置決め部40a、40bは、中間転写ベルトユニット30のフレームなどに設けられている。
【0059】
本実施例では、上述の内ローラホルダ38、オフセットカム39、内ローラ駆動モータ250、内ローラ位置センサ251などを有してオフセット機構101が構成されている。
【0060】
3-2.離接機構
本実施例における外ローラ41の離接機構102について説明する。
図5は、離接機構102の概略構成を示す模式図である。
図5には、内ローラ32の回転軸線方向の一端部の構成を示しているが、他端部の構成も同様(内ローラ32の回転軸線方向の中央に対して略対称)である。
【0061】
外ローラ41の回転軸線方向の両端部は、軸受43によって回転可能に支持されている。軸受43は、所定方向(例えば前述の基準線L1と略直交する方向)に沿って内ローラ32に向かう方向及びその反対方向にスライド移動可能なように、装置本体100aのフレームなどに支持されている。軸受43は、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である圧縮ばねで構成された押圧ばね44によって内ローラ32に向かって押圧される。これにより、外ローラ41は、中間転写ベルト31を挟んで内ローラ32に当接し、2次転写ニップN2を形成する。
【0062】
そして、本実施例では、画像形成装置100は、外ローラ41を中間転写ベルト31に対して離間及び当接させるための離接機構(離接手段)102を有する。
図5に示すように、離接機構102は、離接アーム122、離接カム121、離接モータ252などを有して構成される。離接アーム122は、離接回動軸122aを中心に回動可能なように、装置本体100aのフレームなどに支持されており、軸受43と係合している。また、離接アーム122は、作動部材としての離接カム121の作用により回動するように構成されている。離接カム121は、離接カム回動軸120を中心に回動可能なように、装置本体100aのフレームなどに支持されている。離接カム121は、駆動源としての離接モータ252からの駆動を受けて離接カム回動軸120を中心に回動可能である。また、離接カム121は、離接アーム122に設けられた離接カムフォロワ122bと接触している。また、離接アーム122は、押圧ばね44によって離接カムフォロワ122bが離接カム121と係合する方向に回動するように付勢されている。
【0063】
離接機構102は、外ローラ41を内ローラ32に対して遠ざかる方向及び近づく方向に移動させる。
図5中の実線で示すように、外ローラ41を中間転写ベルト31から離間させる際には、離接モータ252によって駆動されて離接カム121が例えば反時計回りに回動することで、離接アーム122が時計回りに回動する。これにより、離接アーム122が軸受43を内ローラ32から遠ざかる方向(下方)に押圧ばね44の付勢力に抗して移動させ、外ローラ41を中間転写ベルト31から離間させる。一方、
図5中の二点鎖線で示すように、外ローラ41を中間転写ベルト31に接触させる際には、離接モータ252によって駆動されて離接カム121が例えば時計回りに回動することで、離接アーム122が押圧ばね44の付勢力によって反時計回りに回動する。これにより、離接アーム122が軸受部材43を内ローラ32に近づく方向(上方)に移動させ、外ローラ41を中間転写ベルト31に当接させる。
【0064】
本実施例では、離接機構102は、中間転写ベルト上に形成された画像濃度補正用や色ずれ補正用の試験画像(パッチ)などの記録材Sへ転写しないトナーが外ローラ41の表面に付着するのを避けるために、外ローラ41を中間転写ベルト31から離間させる。また、ジャム(紙詰まり)の処理が行われる際にも、離接機構102は外ローラ41を中間転写ベルト31から離間させる。また、ジョブが終了した後に外ローラ41が内ローラ32に向けて押圧され続けると内ローラ32や外ローラ41が変形してしまう場合がある。そこで、本実施例では、離接機構102は、ジョブが終了して画像形成装置100が次のジョブを待機するスタンバイ状態となる際に、外ローラ41を中間転写ベルト31から離間させる。画像形成装置100がスリープ状態又は主電源がOFFされた状態のときも、外ローラ41は中間転写ベルト31から離間された状態に維持される。
【0065】
なお、オフセット機構101は、オフセット量Xを変更する動作を、外ローラ41が中間転写ベルト31に接触した状態、外ローラ41が中間転写ベルト31から離間された状態のいずれで行うこともできるようになっていてよい。また、オフセット機構101は、オフセット量Xを変更する動作を、中間転写ベルト31が停止している状態、中間転写ベルト31が回転している状態のいずれで行うこともできるようになっていてよい。中間転写ベルト31の表面に傷がつくことなどを抑制する観点からは、オフセット量Xを変更する動作は、中間転写ベルト31が停止している状態、更には外ローラ41が中間転写ベルト31から離間した状態で行われることが望ましい。
【0066】
4.オフセット量Xの変更の詳細
次に、本実施例における記録材Sの坪量に応じたオフセット量Xの変更について更に詳しく説明する。
【0067】
4-1.通常モード
表1は、本実施例の構成においてオフセット量Xを変更した場合の、記録材Sの坪量と、中間転写ベルト31からの記録材Sの分離不良(ここでは、単に「分離不良」ともいう。)及び記録材Sの搬送方向の後端部の画像不良(ここでは、単に「後端部画像不良」ともいう。)の発生状況と、の関係を示す。表1(a)はオフセット量Xを第1のオフセット量X1(=1.0mm)とした場合、表1(b)はオフセット量Xを第2のオフセット量X2(=2.5mm)とした場合の上記関係を示す。
【0068】
【0069】
表1(a)に示すように、オフセット量Xを第1のオフセット量X1(=1.0mm)に設定した場合、本実施例の画像形成装置100で用いることが可能な全ての坪量の記録材Sにおいて後端部画像不良は発生しない。しかし、この場合、坪量が52gsm未満(45gsm~51gsm)の「薄紙」において分離不良が発生する。一方、表1(b)に示すように、オフセット量Xを第2のオフセット量X2(=2.5mm)に設定した場合、本実施例の画像形成装置100で用いることが可能な全ての坪量の記録材Sにおいて分離不良は発生しない。しかし、この場合、坪量が350gsm以上(350gsm~400gsm)の「厚紙」において後端部画像不良が発生する。
【0070】
そのため、本実施例では、画像形成装置100は、「通常モード」では、坪量が52gsm未満の「薄紙」の場合は、オフセット量Xを第2のオフセット量X2(=2.5mm)に設定することで、分離不良の発生を抑制する。また、本実施例では、画像形成装置100は、「通常モード」では、坪量が52gsm以上の「普通紙」や「厚紙」の場合は、オフセット量Xを第1のオフセット量X1(=1.0mm)に設定することで、後端部画像不良の発生を抑制する。つまり、「通常モード」では、記録材Sの坪量が第1の閾値(=52gsm)以上の場合にはオフセット量Xを第1のオフセット量X1に設定し、該第1の閾値(=52gsm)未満の場合にはオフセット量Xを第2のオフセット量X2に設定する。
【0071】
4-2.生産性優先モード
電子写真方式などを用いた画像形成装置では、例えば製本印刷などのために、複数の種類の記録材Sに画像を形成するジョブ(「混載ジョブ」)が実行されることがある。例えば、記録材Sが「薄紙」(例えば坪量45gsm)と「普通紙」(例えば坪量80gsm)とに変更される場合などがある。このような混載ジョブを実行する場合、上述の「通常モード」のようにある1つの所定の閾値を用いてオフセット量Xを変更すると、ジョブの途中でオフセット量Xが頻繁に変更される場合がある。本実施例の構成では、ジョブの途中でオフセット量Xを変更する場合、内ローラ32の移動を行う前に、帯電電圧、現像電圧、1次転写電圧、2次転写電圧などの作像系の高圧(ここでは「作像高圧」ともいう。)の停止を行う。また、中間転写ベルト31の回転の停止、更には外ローラ41の中間転写ベルト31からの離間を行うことも考えられる。そのため、オフセット量Xの変更を過度に頻繁に行うと、生産性が低下するおそれがある。また、オフセット量Xの変更を過度に頻繁に行うと、中間転写ベルト31、あるいは内ローラ32や外ローラ41の摩耗、劣化が促進されてしまうおそれがある。
【0072】
ここで、表1(a)、(b)に示すように、坪量が52gsm以上、350gsm未満(52gsm~349gsm)の記録材Sは、オフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)、第2のオフセット量X2(=2.5mm)のいずれの場合でも、分離不良及び後端部画像不良は発生しない。より詳細には、坪量が52gsm以上、350gsm未満(52gsm~349gsm)の記録材Sの場合、オフセット量Xを第2のオフセット量X2(=2.5mm)とすると、まれに後端部画像不良が発生することがある。そのため、画質を優先すると、坪量が52gsm以上、350gsm未満(52gsm~349gsm)の記録材Sの場合は、オフセット量Xを第1のオフセット量X1(=1.0mm)とすることが好ましい。しかし、生産性を優先すると、坪量が52gsm以上、350gsm未満(52gsm~349gsm)の記録材Sの場合は、オフセット量Xは第1のオフセット量X1(=1.0mm)、第2のオフセット量X2(=2.5mm)のいずれでもよい。
【0073】
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、第1のモードとしての「通常モード(あるいは画質優先モード)」と、第2のモードとしての「生産性優先モード」と、でジョブを実行可能な構成とされている。「通常モード」では、オフセット量Xを変更する記録材Sの坪量の閾値として、上記第1の閾値(=52gsm)を用いる。「生産性優先モード」では、オフセット量Xを変更する記録材Sの坪量の閾値として、上記第1の閾値(=52gsm)と、上記第1の閾値(=52gsm)とは異なる第2の閾値(=350gsm)と、を用いる。また、「生産性優先モード」では、現在のオフセット量X(内ローラ32の位置)に応じて、上記第1の閾値又は上記第2の閾値を切り替えて用いる。具体的には、現在のオフセット量Xが「厚紙」(あるいは「普通紙」)に対応する第1のオフセット量X1(=1.0mm)である場合には、第1の閾値(=52gsm)を用いる。また、現在のオフセット量Xが「薄紙」(あるいは「普通紙」)に対応する第2のオフセット量X2(=2.5mm)である場合には、第1の閾値(=52gsm)よりも大きい第2の閾値(=350gsm)を用いる。これにより、「生産性優先モード」では、第1の閾値のみを用いる「通常モード」と比較して、オフセット量Xの変更の頻度を低減することができる。その結果、「生産性優先モード」では、「通常モード」と比較して、生産性の低下を抑制することが可能となる。
【0074】
このように、本実施例では、混載ジョブにおけるオフセット量Xの変更による生産性の低下を抑制するために、オフセット量Xを変更する記録材Sの坪量の閾値として複数の閾値を切り替えて用いる「生産性優先モード」を設ける。これにより、混載ジョブにおけるオフセット量Xの変更の頻度を低減することが可能となる。
【0075】
図6(a)は、「通常モード」におけるオフセット量Xの変更条件を示す模式図である。「通常モード」では、記録材Sの坪量が第1の閾値(=52gsm)以上か否かに応じてオフセット量Xを変更する。「通常モード」では、「薄紙」(例えば坪量45gsm)に印刷を行う場合はオフセット量Xを第2のオフセット量X2(=2.5mm)として印刷を行い、「普通紙」(例えば坪量80gsm)に印刷を行う場合はオフセット量Xを第1のオフセット量X1(=1.0mm)として印刷を行う。
【0076】
図6(b)は、「生産性優先モード」におけるオフセット量Xの変更条件を示す模式図である。「生産性優先モード」では、現在のオフセット量Xに応じて、オフセット量Xの変更条件が切り替えられる。現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)の場合、坪量が第2の閾値(=350gsm)以上の記録材Sに変更されない限り、オフセット量Xの変更は行われない。そのため、「薄紙」(例えば坪量45gsm)に印刷が行われた後に「普通紙」(例えば坪量80gsm)に印刷が行われる場合であっても、オフセット量Xの変更は行われない。これは、次のような理由による。つまり、表1(b)に示すように、第2のオフセット量X2(=2.5mm)の場合、記録材Sの坪量が350gsm以上になると後端部画像不良が発生する可能性がある。しかし、坪量が350gsm未満の記録材Sでは後端部画像不良が発生しないので、オフセット量Xの変更が不要なためである。
【0077】
また、
図6(b)に示すように、「生産性優先モード」では、現在のオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)の場合、坪量が第1の閾値(=52gsm)未満の記録材Sに変更されない限り、オフセット量Xの変更は行われない。そのため、「厚紙」(例えば坪量400gsm)に印刷が行われた後に「普通紙」(例えば坪量80gsm)に印刷が行われる場合であっても、オフセット量Xの変更は行われない。これは、次のような理由による。つまり、表1(a)に示すように、第1のオフセット量X1(=1.0mm)の場合、記録材Sの坪量が52gsm未満になると分離不良が発生する可能性がある。しかし、坪量が52gsm以上の記録材Sでは分離不良が発生しないので、オフセット量Xの変更が不要なためである。
【0078】
このように、本実施例では、画像形成装置100は、内ローラ32又は外ローラ41の少なくとも一方(本実施例では内ローラ32)の位置を変更して、内ローラ32の周方向に関する内ローラ32と外ローラ41との相対位置を、第1の相対位置と、第1の相対位置よりも内ローラ32が外ローラ41に対して中間転写ベルト31の回転方向の下流側に位置する第2の相対位置と、に変更可能なオフセット機構101を有する。そして、後述する制御部300は、連続画像形成のジョブを実行する際に、トナー像を転写する記録材Sの坪量と相関する指標値に関する情報と内ローラ位置センサ251の検知結果とに基づいて、次のようにオフセット機構101を制御可能である(生産性優先モード)。つまり、上記相対位置が第1の相対位置にあるときには、上記指標値が第1の閾値以上の記録材Sから上記指標値が第1の閾値未満の記録材Sにトナー像を転写する記録材Sが変更される場合に、上記相対位置を第1の相対位置から第2の相対位置に変更する。また、上記相対位置が第2の相対位置にあるときには、上記指標値が第1の閾値よりも大きい第2の閾値未満の記録材Sから上記指標値が第2の閾値以上の記録材Sにトナー像を転写する記録材Sが変更される場合に、上記相対位置を第2の相対位置から第1の相対位置に変更する。また、本実施例では、制御部300は、上記情報に基づいて、次のようにオフセット機構101を制御する別のモードで連続画像形成のジョブを実行可能である(通常モード)。つまり、上記指標値が第1の閾値以上の記録材Sから上記指標値が第1の閾値未満の記録材Sにトナー像を転写する記録材Sが変更される場合に、上記相対位置を第1の相対位置から第2の相対位置に変更する。また、上記指標値が第1の閾値未満の記録材Sから上記指標値が第1の閾値以上の記録材Sにトナー像を転写する記録材Sが変更される場合に、上記相対位置を第2の相対位置から第1の相対位置に変更する。
【0079】
換言すると、本実施例では、制御部300は、連続画像形成のジョブにおいて、次のようにオフセット機構101を制御可能である。つまり、上記指標値が第1の範囲内である第1の記録材(例えば「薄紙」)にトナー像を転写する際には上記相対位置を第2の相対位置とする。また、上記指標値が第1の範囲よりも大きい第2の範囲内である第2の記録材(例えば「厚紙」)にトナー像を転写する際には上記相対位置を第1の相対位置とする。そして、上記指標値が第1の範囲と第2の範囲との間の第3の範囲内である第3の記録材(例えば「普通紙」)にトナー像を転写する際には、直前にトナー像が転写された先行の記録材が第1の記録材(例えば「薄紙」)の場合は上記相対位置を第2の相対位置とし、該先行の記録材が第2の記録材(例えば「厚紙」)の場合は上記相対位置を第1の相対位置とする。
【0080】
なお、本実施例では、画像形成装置100は、ジョブの開始時に、印刷に用いる記録材Sの種類に基づいて、オフセット量Xを変更する。このオフセット量Xの変更の頻度を低減するために、本実施例では、オフセット量Xのデフォルト値(内ローラ32のホームポジション)を第1のオフセット量X1(=1.0mm)に設定している。そして、ジョブの終了時にオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)になるように内ローラ32を移動した後に画像形成装置100の動作を停止する。つまり、本実施例では、ジョブが終了して画像形成装置100が次のジョブを待機するスタンバイ状態となる際に、オフセット量Xが第1のオフセット量X1ではない場合は内ローラ32を移動してオフセット量Xを第1のオフセット量X1とする。画像形成装置100がスリープ状態又は主電源がOFFされた状態のときも、内ローラ32の位置はオフセット量Xが第1のオフセット量X1となる位置に維持される。これにより、一般に記録材Sとして使用頻度が高い「普通紙」や「厚紙」に次に印刷を行う際に、ジョブの開始時にオフセット量Xを変更する動作を行う必要がなくなるため、画像形成を開始するまでの時間を短くして、生産性を向上させることができる。ただし、本発明は、内ローラ32のホームポジションをオフセット量Xが第1のオフセット量X1となる位置に限定するものではなく、内ローラ32のホームポジションをオフセット量Xが第2のオフセット量X2となる位置としてもよい。
【0081】
5.制御態様
図7は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。制御部(プリンタ制御部、コントローラ)300は、演算制御手段としてのCPU301、記憶手段(記憶部)としてのROM302及びRAM303、制御部300に接続された機器との間の信号の入出力を制御する入出力回路などを有して構成される。制御部300は、CPU301がROM302に格納されている制御プログラムに従って処理を実行することにより、画像形成制御部230、搬送制御部240、操作表示装置制御部210、内ローラ駆動モータ250などの各種負荷を統括的に制御する。RAM303は、制御データの一時的な保持や、制御に伴う演算処理の作業領域として用いられる。また、制御部300には、オフセット機構101の内ローラ位置センサ251などの各種センサの検知結果を示す信号(出力値)が入力される。内ローラ位置センサ251の出力値(内ローラ32と外ローラ41との相対位置、あるいは2次転写ニップN2の位置に関する情報)は、RAM303に記憶される。
【0082】
画像形成制御部230は、制御部300からの信号に基づき、作像系を制御し、記録材Sに画像を形成して出力する画像形成動作などを行わせる。この作像系には、ドラム駆動モータ・ベルト駆動モータなどの画像形成部10や中間転写ベルト31の駆動装置、露光装置13、帯電電源・現像電源・1次転写電源・2次転写電源などの各種電源、定着装置50などが含まれる。搬送制御部240は、制御部300からの信号に基づき、レジストローラ74などの記録材Sの搬送に関する部材の駆動源であるモータなどを制御し、給送装置から排出トレイまで記録材Sを搬送する動作を行わせる。操作表示装置制御部210は、操作表示装置であるユーザインターフェース90(
図1)を制御し、ユーザインターフェース90と制御部300との間での情報(信号)のやり取りを行う。
【0083】
ユーザインターフェース90は、画像形成に関する各種機能を設定するための複数のキーなどを有して構成される操作部と、設定状態を示す情報などを表示するためのディスプレイなどを有して構成される表示部と、を有している。また、ユーザインターフェース90は操作部の各キーの操作に対応するキー信号を制御部300に出力すると共に、制御部300からの信号に基づき対応する情報を表示部に表示する。また、制御部300には、通信部としての外部I/F202を介してパーソナルコンピュータなどの外部装置201が接続されていてよい。また、制御部300には、画像形成装置100に設けられるか又は画像形成装置100に接続された画像読取装置(図示せず)が接続されていてよい。
【0084】
制御部300は、ジョブの情報に基づいて画像形成装置100の各部を制御して画像形成を行なわせる。ジョブの情報は、ユーザインターフェース90や外部装置201から入力される、開始指示(開始信号)や、記録材Sの種類などの印刷動作条件に関する情報(指令信号)を含む。また、ジョブの情報は、画像読取装置、外部装置201あるいはインターフェース部90から入力される画像情報(画像信号)を含む。なお、記録材の種類に関する情報(単に「記録材に関する情報」ともいう。)とは、普通紙、上質紙、光沢紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズ、剛度などの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)などの、記録材を区別可能な任意の情報を包含するものである。本実施例では、記録材Sの種類に関する情報は、記録材Sの剛度と関連する記録材Sの種類に関する情報として、特に、記録材Sの坪量の情報を含むものとする。ユーザインターフェース90から印刷動作条件に関する情報が入力される場合は、ユーザインターフェース90が、トナー像を転写する記録材Sの坪量と相関する指標値に関する情報を制御部300に入力する入力部として機能する。また、パーソナルコンピュータなどの外部装置201から印刷動作条件に関する情報が入力される場合は、外部I/F202が、トナー像を転写する記録材Sの坪量と相関する指標値に関する情報を制御部300に入力する入力部として機能する。
【0085】
ここで、画像形成装置100は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Sに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(印刷ジョブ、プリントジョブ)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程(印刷動作、プリント動作、画像形成動作)、前回転工程、複数の記録材Sに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Sに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時(画像形成期間)とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Sに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Sと記録材Sとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時(非画像形成期間)とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。なお、スリープ状態(休止状態)とは、例えば制御部300(又はその一部)以外の画像形成装置100の各部への電力の供給が停止され、スタンバイ状態よりも電力消費量が少なくされた状態である。本実施例では、非画像形成時に、オフセット機構101がオフセット量Xを変更する動作、すなわち、内ローラ32又は外ローラ41の少なくとも一方(特に、本実施例では内ローラ32)の位置を変更する動作を行う。
【0086】
6.生産性優先モードの設定方法
図8(a)は、本実施例におけるユーザインターフェース90を示す模式図である。ユーザインターフェース90には、ジョブを開始するためのスタートキー602、ジョブを中断するためのストップキー603、置数設定などを行うテンキー604~612及び614、IDキー613、クリアキー615、リセットキー616などが配置されている。また、ユーザインターフェース90の左部には、タッチパネルを有して構成された表示部620が配置されており、表示部620上にソフトキーを生成可能となっている。本実施例では、画像形成装置100は、ユーザが頻繁に使用する記録材Sの設定を用紙銘柄情報として予め登録できる用紙設定機能を有する。このような設定などは、ユーザインターフェース90からの入力操作により行われる。例えば、
図8(a)に示すような表示部620に表示された初期画面のソフトキーである「用紙設定」キーが選択されると、用紙銘柄情報の設定画面(メニュー選択画面)が表示部620に表示され、この画面が用いられて用紙設定が行われる。
【0087】
「生産性優先モード」の設定方法は、例えば次のようにすることができる。ユーザやサービス担当者などの操作者が、
図8(a)に示すような表示部620に表示された初期画面のソフトキーである「生産性優先」ボタンを押下する。制御部300のCPU301は、該ボタンが押下されたことを示す信号がユーザインターフェース90から入力されると、ユーザインターフェース90に対して、
図8(b)に示すような「生産性優先モード設定画面」を表示部620に表示するように指示する。このとき、CPU301は、ユーザインターフェース90に対して、RAM303に記憶されている現在の「生産性優先モード」の設定情報を「生産性優先モード設定画面」において表示するように指示する。操作者は、「生産性優先モード」をON(有効)にする場合は、「ON」ボタンを押下した後、「OK」ボタンを押下する。また、操作者は、「生産性優先モード」をOFF(無効)にする場合は、「OFF」ボタンを押下した後、「OK」ボタンを押下する。なお、
図8(b)では、「ON」ボタンが押下され、「生産性優先モード」がON(有効)とされた状態を示している。CPU301は、「ON」又は「OFF」ボタン及び「OK」ボタンが押下されたことを示す信号がユーザインターフェース90から入力され、「生産性優先モード」の設定が変更されたことを検出すると、変更内容をRAM303に記憶させる。また、操作者は、「生産性優先モード」の設定を現在の設定から変更しない場合は、「キャンセルボタン」を押下することで、「生産性優先モード設定画面」の表示を終了する。
【0088】
7.制御手順
7-1.オフセット量の変更動作
図9は、本実施例におけるオフセット量Xの変更動作の制御手順の概略を示すフローチャート図である。
図9は、画像形成装置100がジョブの実行中にオフセット量Xの変更動作を実行する場合の制御手順の概略を示している。ジョブの動作の制御手順の概略については、
図10を参照して後述する。
【0089】
制御部300のCPU301は、
図9の制御手順を開始すると、オフセット量Xの変更動作を行うか否かを判断するために、RAM303に記憶されている閾値Thの情報を取得する(S101)。この閾値Thの決定方法については、
図10を参照して行うジョブの動作の制御手順の説明において後述する。次に、CPU301は、RAM303に記憶されている記録材Sの坪量の情報を取得する(S102)。なお、CPU301は、操作者の操作によりユーザインターフェース90(又は外部装置)から直接的に入力(複数の選択肢から選択することも含む。)された記録材Sの種類に関する情報を取得することができる。また、CPU301は、操作者の操作によりユーザインターフェース90(又は外部装置)から入力された、当該ジョブで記録材Sを送出する記録材カセット61、62、63の情報に基づいて、記録材Sの種類に関する情報を取得することもできる。この場合、CPU301は、例えば複数設けられている記録材カセットのそれぞれと関係付けられて制御部300の記憶部に記憶されている記録材Sの種類に関する情報から、記録材Sの種類に関する情報を取得することができる。ここで、記録材Sの種類に関する情報を登録する際には、予め制御部300の記憶部やネットワークを通じて制御部300と接続された記憶装置に記憶されている記録材Sの種類のリストの中から該当するものを選択するようになっていてよい。次に、CPU301は、記録材Sの坪量が閾値Th未満か否かを判断する(S103)。
【0090】
CPU301は、S103において、記録材Sの坪量が閾値Th未満であると判断した場合は、RAM303に記憶されている内ローラ位置センサ251の出力値に基づいて現在のオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)であるか否かを判断する(S104)。そして、CPU301は、S104において、現在のオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)であると判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行うために画像形成制御部230に対して作像高圧の停止を指示する(S105)。次に、CPU301は、S105において作像高圧の停止が完了すると、内ローラ駆動モータ250を駆動するように指示して、内ローラ32をオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)となる位置に移動させて(S106)、当該制御手順を終了する。また、CPU301は、S104において、現在のオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)ではない、すなわち、第2のオフセット量X2(=2.5mm)であると判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行わず、当該制御手順を終了する。
【0091】
一方、CPU301は、S103において、記録材Sの坪量が閾値Th未満ではない、すなわち、閾値Th以上であると判断した場合は、RAM303に記憶されている内ローラ位置センサ251の出力値に基づいて現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であるか否か判断する(S107)。そして、CPU301は、S107において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であると判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行うために画像形成制御部230に対して作像高圧の停止を指示する(S108)。次に、CPU301は、S108において作像高圧が停止すると、内ローラ駆動モータ250を駆動するように指示して、内ローラ32をオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)となる位置に移動させて(S109)、当該制御手順を終了する。また、CPU301は、S107において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)ではない、すなわち、第1のオフセット量X1(=1.0mm)であると判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行わず、当該制御手順を終了する。
【0092】
このように、本実施例では、制御部300のCPU301は、記録材Sの坪量と現在のオフセット量X(内ローラ32の位置)に応じて、オフセット量Xの変更が必要か否かの判断を行う。
【0093】
7-2.ジョブの動作
図10は、本実施例におけるジョブの動作の制御手順の概略を示すフローチャート図である。
【0094】
制御部300のCPU301は、ジョブの情報を取得してジョブを開始すると、まず、最初の記録材Sの坪量に応じてオフセット量Xを変更する、ジョブの開始時におけるオフセット量Xの変更動作を行う。つまり、CPU301は、RAM303に記憶されている最初の記録材Sの坪量の情報を取得する(S201)。なお、CPU301は、ジョブの情報を取得すると、記録材Sの坪量の情報を含む印刷動作条件の情報をRAM303に記憶させる。次に、CPU301は、オフセット量Xの変更動作を行うか否かを判断するための閾値Thを初期値として第1の閾値(=52gsm)に設定して、RAM303に記憶させる(S202)。次に、CPU301は、設定した閾値Thを用いて、
図9を参照して説明したオフセット量Xの変更動作の制御を行う(S203)。
【0095】
CPU301は、ジョブの開始時におけるオフセット量Xの変更動作の制御が完了すると、記録材Sに対する画像形成動作を行うように制御を行う。つまり、S203におけるオフセット量Xの変更動作の制御においてオフセット量Xの変更動作を行った場合は、作像高圧が停止しているので、CPU301は、作像高圧が停止しているか否かを判断する(S204)。そして、CPU301は、S204において、作像高圧が停止していると判断した場合は、画像形成制御部230に対して作像高圧の起動を指示する(S205)。その後、CPU301は、所定のタイミングで記録材Sに対する画像形成動作を行うように制御を行う(S206)。また、CPU301は、S204において、作像高圧が停止していないと判断した場合は、所定のタイミングで記録材Sに対する画像形成動作を行うように制御を行う(S206)。
【0096】
次に、CPU301は、画像形成動作を完了すると、次の画像形成要求があるか否かを判断する(S207)。そして、CPU301は、S207において、次の画像形成要求があると判断した場合は、RAM303に記憶されている次の記録材Sの坪量の情報を取得する(S208)。その後、CPU301は、RAM303に記憶されている「生産性優先モード」の設定情報を取得し、「生産性優先モード」が有効か否かを判断する(S209)。CPU301は、S209において「生産性優先モード」が有効であると判断した場合は、現在のオフセット量に応じてオフセット量Xの変更動作を行うか否かを判断するための閾値Thを切り替える。つまり、CPU301は、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であるか否かを判断する(S210)。そして、CPU301は、S210において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であると判断した場合は、閾値Thを第2の閾値(=350gsm)に設定して、RAM303に記憶させる(S211)。また、CPU301は、S210において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)ではない、すなわち、第1のオフセット量X1(=1.0mm)であると判断した場合は、閾値Thを第1の閾値(=52gsm)に設定して、RAM303に記憶させる(S212)。そして、CPU301は、設定した閾値Thを用いて、
図9を参照して説明したオフセット量Xの変更動作の制御を行う(S203)。そして、CPU301は、次の画像形成要求がなくなるまで、S204からS212までの処理を繰り返す。また、CPU301は、S209において、「生産性優先モード」が有効ではないと判断した場合は、閾値Thを第1の閾値(=52gsm)に設定して、RAM303に記憶させ(S212)、オフセット量Xの変更動作の制御を行う(S203)。そして、CPU301は、次の画像形成要求がなくなるまで、S204からS212までの処理を繰り返す。また、CPU301は、S210において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)ではないと判断した場合は、閾値Thを第1の閾値(=52gsm)に設定して、RAM303に記憶させ(S212)、オフセット量Xの変更動作の制御を行う(S203)。そして、CPU301は、次の画像形成要求がなくなるまで、S204からS212までの処理を繰り返す。
【0097】
CPU301は、S207において、次の画像形成要求がないと判断した場合は、画像形成制御部230に対して画像形成動作の終了を指示する(S213)。CPU301は、画像形成動作が終了すると、オフセット量Xをデフォルト値(内ローラ32のホームポジション)である第1のオフセット量X1(=1.0mm)に戻すために、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であるか否かを判断する(S214)。そして、CPU301は、S214において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であると判断すると、内ローラ駆動モータ250を駆動するように指示して、内ローラ32をオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)となる位置に移動させて(S215)、ジョブを終了する。また、CPU301は、S214において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)ではない、すなわち、第1のオフセット量X1であると判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行わず、ジョブを終了する。
【0098】
8.効果
次に、本実施例の効果について更に説明する。「生産性優先モード」を有効にすると、1つのジョブで坪量の異なる複数の記録材Sに印刷を行う混載ジョブを実行する場合に、オフセット量Xの変更の頻度を低減することができる。
図11は、「薄紙」(坪量45gsm)と「普通紙」(坪量80gsm)とに印刷を行う混載ジョブを実行する場合における画像形成動作のタイミングを模式的に示すチャート図である。
【0099】
図11(a)は、「通常モード」で上記混載ジョブを実行する場合の画像形成動作のタイミングを示している。制御部300のCPU301は、時刻0で「薄紙」に対する画像形成を開始し、時刻t0で「薄紙」に対する画像形成動作を完了するように制御を行う。次に、CPU301は、次の記録材Sの坪量が52gsm以上の「普通紙」に変更されるので、オフセット量Xの変更動作を実行するように制御を行う。このとき、CPU301は、画像形成に用いる全ての高圧をOFFしたタイミング(時刻t1)以降に、オフセット量Xの変更動作を開始するように制御を行う。その後、CPU301は、オフセット量Xの変更動作を完了したタイミング(時刻t2)以降に、画像形成に用いる全ての高圧を再度立ち上げるように制御を行う。そして、CPU301は、高圧の立ち上げが完了したタイミング以降に、「普通紙」に対する画像形成動作を行うように制御を行う(時刻t3)。CPU301は、「普通紙」に対する画像形成動作が終了すると、画像形成装置100の動作を停止するように制御を行う(時刻t4)。
【0100】
図11(b)は、「生産性優先モード」で上記混載ジョブを実行する場合の画像形成動作のタイミングを示している。制御部300のCPU301は、時刻0で「薄紙」に対する画像形成を開始し、時刻t0で「薄紙」に対する画像形成動作を完了するように制御を行う。このとき、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であり、かつ、次の記録材Sの坪量が350gsm未満の「普通紙」である。そのため、CPU301は、オフセット量Xの変更動作を行う必要はないと判断し、「普通紙」に対する画像形成動作を開始するように制御を行う(時刻t5)。そして、CPU301は、「普通紙」に対する画像形成動作を完了すると、画像形成装置100の動作を停止するように制御を行う(時刻t6)。このように、「生産性優先モード」では、「通常モード」と比較して、オフセット量Xの変更の頻度を低減することができる。その結果、「生産性優先モード」では、「通常モード」と比較して、高圧の立下げ動作、オフセット量Xの変更動作、及び高圧の立ち上げ動作の分の時間が不要となり、時刻t4と時刻t6との差分(図中の時間T)だけ生産性を向上させることが可能となる。
【0101】
以上説明したように、本実施例では、画像形成装置100は、坪量の異なる複数の記録材Sに印刷を行う混載ジョブを「生産性優先モード」で実行可能である。「生産性優先モード」では、現在のオフセット量X(内ローラ32)に応じてオフセット量Xの変更動作を行うか否かを判断するための閾値(判断条件)を切り替える。これにより、混載ジョブの実行時に、「生産性優先モード」では、「通常モード」と比較して、オフセット量X(内ローラ32の位置)の変更の頻度を低減することができる。その結果、「生産性優先モード」では、「通常モード」と比較して、生産性を向上させることが可能となる。したがって、本実施例によれば、混載ジョブにおける記録材Sに対する転写性の向上を図りつつ、生産性の低下を抑制することができる。
【0102】
なお、本実施例では、画像形成装置100は、「通常モード」と「生産性優先モード」とを任意に選択して実行可能な構成とされていた。これに対して、画像形成装置100は、生産性を優先して、本実施例における「通常モード」と「生産性優先モード」とのうち「生産性優先モード」に対応する動作態様のみで連続画像形成のジョブを実行可能な構成とすることもできる。
【0103】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0104】
1.本実施例の概要
本実施例では、画像形成装置100は、例えば「薄紙」や「普通紙」を主に使用するようなユーザに対して生産性を向上させる「薄紙優先モード」でジョブを実行可能な構成とされている。つまり、第2のモードとしての「薄紙優先モード」は、「薄紙」や「普通紙」の使用頻度が「厚紙」の使用頻度よりも高い場合に、第1のモードとしての「通常モード」よりもオフセット量Xの変更の頻度を低減できるモードである。
【0105】
図12(a)は、「通常モード」におけるオフセット量Xの変更条件を示す模式図であり、
図6(a)に示したものと同じである。「通常モード」では、オフセット量Xの変更動作を行うか否かを判断するための閾値として第1の閾値(=52gsm)を用いる。
【0106】
図12(b)は、「薄紙優先モード」におけるオフセット量Xの変更条件を示す模式図である。「薄紙優先モード」では、「厚紙」の使用頻度は低いと考え、オフセット量Xの変更動作を行うか否かを判断するための閾値として、上記第1の閾値(=52gsm)よりも大きい第2の閾値(=350gsm)を用いる。これにより、「薄紙」や「普通紙」を優先的に使用するようなユーザにおいては、「通常モード」と比較してオフセット量Xの変更の頻度を低減することができる。
【0107】
2.薄紙優先モードの設定方法
図13(a)は、本実施例におけるユーザインターフェース90を示す模式図である。「薄紙優先モード」の設定方法は、例えば次のようにすることができる。ユーザやサービス担当者などの操作者が、
図13(a)に示すような表示部620に表示された初期画面のソフトキーである「薄紙優先」ボタンを押下する。制御部300のCPU301は、該ボタンが押下されたことを示す信号がユーザインターフェース90から入力されると、ユーザインターフェース90に対して、
図13(b)に示すような「薄紙優先モード設定画面」を表示部620に表示するように指示する。このとき、CPU301は、ユーザインターフェース90に対して、RAM303に記憶されている現在の「薄紙優先モード」の設定情報を「薄紙優先モード設定画面」において表示するように指示する。操作者は、「薄紙優先モード」をON(有効)にする場合は、「ON」ボタンを押下した後、「OK」ボタンを押下する。また、操作者は、「薄紙優先モード」をOFF(無効)にする場合は、「OFF」ボタンを押下した後、「OK」ボタンを押下する。なお、
図13(b)では、「ON」ボタンが押下され、「薄紙優先モード」がON(有効)とされた状態を示している。CPU301は、「ON」又は「OFF」ボタン及び「OK」ボタンが押下されたことを示す信号がユーザインターフェース90から入力され、「薄紙優先モード」の設定が変更されたことを検出すると、変更内容をRAM303に記憶させる。また、操作者は、「薄紙優先モード」の設定を現在の設定から変更しない場合は、「キャンセルボタン」を押下することで、「薄紙優先モード設定画面」の表示を終了する。
【0108】
3.ジョブの動作
図14は、本実施例におけるジョブの動作の制御手順の概略を示すフローチャート図である。
【0109】
制御部300のCPU301は、ジョブの情報を取得してジョブを開始すると、まず、RAM303に記憶されている最初の記録材Sの坪量の情報を取得する(S301)。次に、CPU301は、RAM303に記憶されている「薄紙優先モード」の設定情報を取得し、「薄紙優先モード」が有効か否かを判断する(S302)。そして、CPU301は、S302において、「薄紙優先モード」が有効であると判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行うか否かを判断するための閾値Thを第2の閾値(=350gsm)に設定して、RAM303に記憶させる(S303)。また、CPU301は、S302において、「薄紙優先モード」が有効ではないと判断した場合は、閾値Thを第1の閾値(=52gsm)に設定して、RAM303に記憶させる(S304)。その後、CPU301は、設定した閾値Thを用いて、
図9を参照して実施例1で説明したオフセット量Xの変更動作の制御を行う(S305)。S305におけるオフセット量Xの変更動作の制御においてオフセット量Xの変更を行った場合は、作像高圧が停止しているので、CPU301は、作像高圧が停止しているか否かを判断する(S306)。そして、CPU301は、S306において、作像高圧が停止していると判断した場合は、画像形成制御部230に対して作像高圧の起動を指示する(S307)。その後、CPU301は、所定のタイミングで記録材Sに対する画像形成動作を行うように制御を行う(S308)。また、CPU301は、S306において、作像高圧が停止していないと判断した場合は、所定のタイミングで記録材Sに対する画像形成動作を行うように制御を行う(S308)。
【0110】
次に、CPU301は、画像形成動作が完了すると、次の画像形成要求があるか否かを判断する(S309)。そして、CPU301は、S309において、次の画像形成要求があると判断した場合は、RAM303に記憶されている次の記録材Sの坪量の情報を取得する(S310)。その後、CPU301は、再度S305からS308の処理を実行して、記録材Sに対する画像形成動作を行うように制御する(S308)。そして、CPU301は、次の画像形成要求がなくなるまで、S305からS310の処理を繰り返す。
【0111】
CPU301は、S309において、次の画像形成要求がないと判断した場合は、画像形成制御部230に対して画像形成動作の終了を指示する(S311)。CPU301は、画像形成動作が終了すると、RAM303に記憶されている「薄紙優先モード」の設定情報を取得し、「薄紙優先モード」が有効か否かを判断する(S312)。そして、CPU301は、S312において、「薄紙優先モード」が有効であると判断した場合は、現在のオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)であるか否かを判断する(S313)。そして、CPU301は、現在のオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)であると判断した場合は、内ローラ駆動モータ250を駆動するように指示して、内ローラ32をオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)となる位置に移動させて(S314)、ジョブを終了する。また、CPU301は、S313において、現在のオフセット量Xが第1のオフセット量X=1.0mmではないと判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行わず、ジョブを終了する。また、CPU301は、S312において、「薄紙優先モード」が有効ではないと判断した場合は、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であるか否かを判断する(S315)。そして、CPU301は、S315において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であると判断した場合は、内ローラ駆動モータ250を駆動するように指示して、内ローラ32の位置をオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)となる位置に移動させて(S316)、ジョブを終了する。また、CPU301は、S315において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)ではないと判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行わず、ジョブを終了する。
【0112】
4.効果
以上説明したように、本実施例では、画像形成装置100は、坪量の異なる複数の記録材Sに印刷を行う混載ジョブを「薄紙優先モード」で実行可能である。「薄紙優先モード」では、オフセット量Xの変更動作を行うか否かを判断するための閾値(判断条件)として、「通常モード」で用いる第1の閾値とは異なる第2の閾値を用いる。つまり、本実施例では、「薄紙優先モード」では、オフセット量Xの変更動作を行うか否かを判断するための閾値(判断条件)を常に「通常モード」よりも大きくする。これにより、「薄紙」や「普通紙」の使用頻度が「厚紙」の使用頻度よりも高い場合に、「通常モード」と比較して、オフセット量X(内ローラ32の位置)の変更の頻度を低減することができる。その結果、「薄紙」や「普通紙」の使用頻度が「厚紙」の使用頻度よりも高い場合に、「薄紙優先モード」では、「通常モード」と比較して、生産性を向上させることが可能になる。したがって、本実施例によれば、混載ジョブにおける記録材Sに対する転写性の向上を図りつつ、生産性の低下を抑制することができる。
【0113】
また、本実施例では、
図14に示すように、「薄紙優先モード」が有効とされている場合には、ジョブの終了時にオフセット量Xを「薄紙」(あるいは「普通紙」)に対応する第2のオフセット量X2(=2.5mm)とする。これにより、「薄紙」や「普通紙」の使用頻度が高いユーザにおいて、ジョブの開始時にオフセット量X(内ローラ32の位置)の変更の頻度を低減し、FCOTを低減することが可能になる。ここで、FCOT(ファーストコピータイム)は、ジョブの開始指示を入力してから画像が形成された最初の記録材Sが出力されるまでの時間である。
【0114】
なお、本実施例では、「通常モード」を基準として「薄紙優先モード」を有する実施例について説明したが、本実施例の「薄紙優先モード」を基準(通常モードと見做す)に考えることもできる。この場合、本実施例の「通常モード」に相当するモードを「厚紙優先モード」と考えることができる。
【0115】
また、本実施例では、「薄紙優先モード」の動作について説明したが、「薄紙優先モード」が無効の場合に、実施例1で説明した「生産性優先モード」の動作を行ってもよい。これにより、「薄紙」や「普通紙」を優先的に使用するようなユーザではないユーザに対しても生産性を高める手段を提供することが可能になる。
【0116】
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1、2の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1、2の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0117】
1.本実施例の概要
本実施例では、「薄紙優先モード」の別の形態について説明する。本実施例では、画像形成装置100は、画像形成時のオフセット量Xを常に第2のオフセット量X2(=2.5mm)とする「薄紙優先モード」でジョブを実行可能な構成とされている。「薄紙優先モード」では、「薄紙」における分離不良を抑制することができる。そして、「薄紙優先モード」では、「薄紙」や「普通紙」を主に使用するようなユーザなどであって、「厚紙」において発生する可能性のある後端部画像不良を許容可能なユーザに対して、オフセット量Xの変更による生産性の低下を抑制することが可能である。本実施例における「薄紙優先モード」においても、「薄紙」における分離不良を抑制することができる。
【0118】
2.制御手順
図15は、本実施例におけるジョブの動作の制御手順の概略を示すフローチャート図である。
【0119】
制御部300のCPU301は、ジョブの情報を取得してジョブを開始すると、まず、RAM303に記憶されている最初の記録材Sの坪量の情報を取得する(S401)。次に、CPU301は、RAM303に記憶されている「薄紙優先モード」の設定情報を取得し、「薄紙優先モード」が有効か否かを判断する(S402)。本実施例では、後述するように、「薄紙優先モード」が有効である場合は、ジョブの開始時にオフセット量Xは「薄紙」(あるいは「普通紙」)に対応する第2のオフセット量X2(=2.5mm)となっている。そのため、この場合は、ジョブの開始時のオフセット量Xの変更動作は不要である。つまり、CPU301は、S402において、「薄紙優先モード」が有効であると判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行わず、作像高圧が停止しているか否かを判断する(S405)。また、CPU301は、S402において、「薄紙優先モード」が有効ではないと判断した場合は、オフセット量Xの変更を行うか否かを判断するための閾値Thを所定の閾値(=52gsm)に設定して、RAM303に記憶させる(S403)。その後、CPU301は、設定した閾値Thを用いて、
図9を参照して実施例1で説明したオフセット量Xの変更動作の制御を行う(S404)。S404におけるオフセット量Xの変更動作の制御においてオフセット量Xの変更を行った場合は、作像高圧が停止しているので、CPU301は、作像高圧が停止しているか否かを判断する(S305)。
【0120】
CPU301は、S405において、作像高圧が停止していると判断した場合は、画像形成制御部230に対して作像高圧の起動を指示する(S406)。その後、CPU301は、所定のタイミングで記録材Sに対する画像形成動作を行うように制御を行う(S407)。また、CPU301は、S405において、作像高圧が停止していないと判断した場合は、所定のタイミングで記録材Sに対する画像形成動作を行うように制御を行う(S407)。
【0121】
次に、CPU301は、画像形成動作が完了すると、次の画像形成要求があるか否かを判断する(S408)。そして、CPU301は、S408において、次の画像形成要求があると判断した場合は、RAM303に記憶されている次の記録材Sの坪量の情報を取得する(S409)。その後、CPU301は、再度S402からS407の処理を実行して、記録材Sに対する画像形成動作を行うように制御する(S407)。そして、CPU301は、次の画像形成要求がなくなるまで、S402からS409の処理を繰り返す。
【0122】
CPU301は、S408において、次の画像形成要求がないと判断した場合は、画像形成制御部230に対して画像形成動作の終了を指示する(S410)。CPU301は、画像形成動作が終了すると、RAM303に記憶されている「薄紙優先モード」の設定情報を取得し、「薄紙優先モード」が有効か否かを判断する(S411)。そして、CPU301は、S411において、「薄紙優先モード」が有効であると判断した場合は、現在のオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)であるか否かを判断する(S412)。そして、CPU301は、現在のオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)であると判断した場合は、内ローラ駆動モータ250を駆動するように指示して、内ローラ32をオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)となる位置に移動させて(S413)、ジョブを終了する。また、CPU301は、S412において、現在のオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)ではないと判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行わず、ジョブを終了する。また、CPU301は、S411において、「薄紙優先モード」が有効ではないと判断した場合は、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であるか否かを判断する(S414)。そして、CPU301は、S414において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)であると判断した場合は、内ローラ駆動モータ250を駆動するように指示して、内ローラ32をオフセット量Xが第1のオフセット量X1(=1.0mm)となる位置に移動させて(S415)、ジョブを終了する。また、CPU301は、S414において、現在のオフセット量Xが第2のオフセット量X2(=2.5mm)ではないと判断した場合は、オフセット量Xの変更動作を行わず、ジョブを終了する。
【0123】
3.効果
以上説明したように、本実施例では、画像形成装置100は、坪量の異なる複数の記録材Sに印刷を行う混載ジョブを「薄紙優先モード」で実行可能である。「薄紙優先モード」では、オフセット量Xを「薄紙」(あるいは「普通紙」)に対応する第2のオフセット量X2(=2.5mm)に固定する。これにより、「薄紙」や「普通紙」の使用頻度が「厚紙」の使用頻度よりも高い場合などにおいて、「厚紙」で発生し得る後端部画像不良を許容できる場合に、オフセット量X(内ローラ32の位置)の変更による生産性の低下を抑制することが可能になる。したがって、本実施例によれば、混載ジョブにおける記録材Sに対する転写性の向上を図りつつ、生産性の低下を抑制することができる。
【0124】
また、本実施例では、実施例2と同様に、「薄紙優先モード」が有効とされている場合に、ジョブの終了時にオフセット量Xを「薄紙」(あるいは「普通紙」)に対応する第2のオフセット量X2(=2.5mm)とする。これにより、実施例2と同様に、FCOTを低減することが可能になる。
【0125】
なお、本実施例では、「薄紙優先モード」の動作について説明したが、「薄紙優先モード」が無効の場合に、実施例1で説明した「生産性優先モード」の動作を行ってもよい。これにより、「薄紙」や「普通紙」を優先的に使用するようなユーザではないユーザに対しても生産性を高める手段を提供することが可能になる。また、実施例2と本実施例とでそれぞれ説明した「薄紙優先モード」を選択して実行できるようにしてもよい。
【0126】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0127】
オフセット量、及び各オフセット量に割り当てる記録材の種類(記録材の坪量)は、上述の本実施例で示した具体例に限定されるものではない。これらは、前述したような記録材の中間転写ベルトからの分離性の向上や記録材の搬送方向の後端部の画像不良の抑制の観点などから、実験などを通して適宜設定することができる。これに限定されるものではないが、オフセット量は、-3mm~+3mm程度が好適である。このような設定により、良好な転写性を得ることができる。また、オフセット量のパターンは2パターンであることに限定されるものではなく、3パターン以上が設定されていてもよい。この場合、例えば坪量が大きい側の2パターン間でのオフセット量の変更の頻度を低減するなどのために、実施例1と同様にして閾値を切り替えて用いる生産性優先モードを設けることができる。
【0128】
また、上述の実施例では、画像形成装置は、内ローラの位置を変更することでオフセット量を変更する構成とされていたが、外ローラの位置を変更することでオフセット量を変更する構成とされていてもよい。また、内ローラ又は外ローラのいずれかを移動させる構成に限らず、内ローラと外ローラとの両方を移動させてオフセット量を変更するようにしてもよい。
【0129】
また、上述の実施例では、内部材としての内ローラと共に2次転写ニップを形成する外部材として、中間転写ベルトの外周面に直接当接する外ローラが用いられていた。これに対して、外部材として外ローラ及び該外ローラと他のローラとに張架された2次転写ベルトが用いられる構成とされていてもよい。つまり、画像形成装置は、外部材として、張架ローラと、外ローラと、これらのローラ間に張架された2次転写ベルトと、を有していてよい。そして、外ローラが2次転写ベルトを介して中間転写ベルトの外周面に当接するようにすることができる。斯かる構成においては、中間転写ベルトの内周面に接触する内ローラと、2次転写ベルトの内周面に接触する外ローラとで、中間転写ベルト及び2次転写ベルトを挟持することによって2次転写ニップを形成する。この場合、中間転写ベルトと2次転写ベルトとの接触部が2次転写部としての2次転写ニップである。なお、この場合も、オフセット量Xは、前述と同様に、内ローラと外ローラとの相対位置によって定義される。
【0130】
また、記録材の剛度と関連する記録材の種類に関する情報は、記録材の坪量自体の情報に限定されるものではなく、坪量と相関する指標値であれば用いることができる。紙種カテゴリー(例えば、普通紙、コート紙などの表面性に基づく紙種カテゴリーなど)あるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)が同じである場合、記録材の坪量と記録材の厚さとは略比例関係にあることが多い(厚さが大きいほど坪量が大きい。)。また、紙種カテゴリーあるいは銘柄が同じである場合、記録材の剛度と、記録材の坪量あるいは厚さと、は略比例関係にあることが多い(坪量あるいは厚さが大きいほど剛度が大きい。)。したがって、例えば、紙種カテゴリーごと、銘柄ごと、あるいは紙種カテゴリーと銘柄との組み合わせごとに、記録材の坪量と相関する指標値(坪量、厚さ、剛度など)に基づく制御とすることができる。なお、記録材の剛度は、ガーレー剛度(MD/縦目)[mN]で代表することができ、市販のガーレー剛度試験機で測定することができる。例えば、上述の実施例における坪量の閾値52g/m2未満の記録材としての、「薄紙」の一例のガーレー剛度(MD)は0.3mN程度であることがある。また、上述の実施例における坪量の閾値52g/m2以上の記録材としての、「普通紙」(坪量80g/m2程度)の一例のガーレー剛度(MD)は2mN程度、「厚紙」(坪量200g/m2程度)の一例のガーレー剛度(MD)は20mN程度であることがある。
【0131】
また、上述の実施例では、制御部は、記録材の種類に関する情報を、操作者の操作による操作部や外部装置からの入力に基づいて取得するものとして説明したが、記録材の種類に関する情報を検知する検知手段の検知結果の入力に基づいて取得してもよい。例えば、記録材の坪量と相関する指標値を検知する坪量検知手段として坪量センサを用いることができる。坪量センサとしては、例えば、超音波の減衰を利用した坪量センサが知られている。この坪量センサは、記録材の搬送路を挟むように配置された、超音波発生部と、超音波受信部と、を有する。そして、坪量センサは、超音波発生部から発生され、記録材を透過することで減衰した超音波を超音波受信部で受信して、その超音波の減衰量に基づいて記録材の坪量と相関する指標値を検知する。なお、坪量検知手段は、記録材の坪量と相関する指標値を検知できるものであればよく、超音波を利用したものに限定されるものではなく、例えば光を利用したものであってもよい。また、記録材の坪量と相関する指標値は、坪量自体に限定されず、坪量に対応する厚さであってもよい。また、紙種カテゴリーの検知に利用できる記録材の表面の平滑性と相関する指標値を検知する平滑性検知手段としての表面性センサを用いることができる。表面性センサとしては、記録材に光を照射し、正反射光、乱反射光の強さを光量センサで読み取る正乱反射光センサが知られている。記録材の表面が平滑である場合、正反射光が強くなり、粗いと乱反射光が強くなる。そのため、表面性センサは、正反射光量と乱反射光量とを測定することで、記録材の表面の平滑性と相関する指標値を検知することができる。なお、平滑性検知手段は、記録材の表面の平滑性と相関する指標値を検知できるものであればよく、上記の光量センサを用いたものに限定されるものではなく、例えば撮像素子を用いたものであってもよい。記録材の表面の平滑性と相関する指標値は、ベック平滑度などの所定の規格に従う値に換算された値に限定されるものではなく、記録材の表面の平滑性と相関性を有する値であればよい。これらの検知手段は、例えば、記録材の搬送方向に関してレジストローラよりも上流の記録材の搬送路に隣接して配置することができる。また、例えば上記坪量センサ、表面性センサなどが1つのユニットとして構成されたもの(メディアセンサ)を用いてもよい。
【0132】
また、上述の実施例では、オフセット機構、離接機構として、カムにより可動部を作動させるアクチュエータを用いたが、これに限定されるものではない。オフセット機構、離接機構は、それぞれ上述の実施例に準じた動作を実現できるものであればよく、例えば、ソレノイドを用いて可動部を作動させるアクチュエータを用いてもよい。
【0133】
また、上述の実施例では、ベルト状の像担持体が中間転写ベルトである場合について説明したが、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する無端状のベルトで構成された像担持体であれば、本発明を適用することができる。このようなベルト状の像担持体としては、上述の実施例における中間転写ベルトの他、感光体ベルトや静電記録誘電体ベルトが例示できる。
【0134】
また、本発明は、上述の実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。したがって、ベルト状の像担持体を用いる画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、帯電方式、静電像形成方式、現像方式、転写方式、定着方式の区別無く実施できる。上述の実施例では、トナー像の形成/転写に係る主要部を中心に説明したが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途で実施できる。
【符号の説明】
【0135】
31 中間転写ベルト
32 内ローラ
41 外ローラ
90 ユーザインターフェース
100 画像形成装置
101 オフセット機構
300 制御部