(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】通信装置、通信装置の制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/18 20090101AFI20240610BHJP
H04W 48/16 20090101ALI20240610BHJP
H04W 28/06 20090101ALI20240610BHJP
【FI】
H04W48/18
H04W48/16 131
H04W48/16 132
H04W28/06 130
(21)【出願番号】P 2020058308
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛城 哲也
【審査官】横田 有光
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-290445(JP,A)
【文献】特開2018-098637(JP,A)
【文献】国際公開第2018/017840(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0276946(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
TDD(時分割複信)方式で通信を行うことが可能な複数の基地局のそれぞれから受信された報知情報から、前記複数の基地局の各基地局の通信特性として、前記各基地局におけるUL(アップリンク)通信時間とDL(ダウンリンク)通信時間との比率であるTDD構成比率
と、前記各基地局の遅延特性とを取得する取得手段と、
前記各基地局の通信特性に基づいて、前記複数の基地局の中から接続する基地局を決定する決定手段と、
前記決定された基地局との接続処理を行う接続処理手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記複数の基地局のうち、前記通信装置が実行しようとする機能で要求される通信要件に合致する前記TDD構成比率及び前記遅延特性を有する基地局を、前記接続する基地局として決定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記複数の基地局は、OFDM(直交周波数分割多重)方式で通信を行うことが可能であり、
前記取得手段は、前記報知情報から取得される、前記各基地局におけるOFDM方式での通信におけるサブキャリア間隔に基づいて、前記各基地局の遅延特性を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記各基地局におけるOFDM方式での通信におけるサブキャリア間隔に基づいて、前記各基地局の遅延特性を、超低遅延、低遅延、又は通常遅延の遅延特性と判定することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記通信装置が実行しようとする機能で要求される通信要件に、優先すべき通信方向がULであることが含まれる場合、UL通信時間がDL通信時間より多い前記TDD構成比率を有する基地局を、接続する基地局として決定し、前記通信要件に、優先すべき通信方向がDLであることが含まれる場合、DL通信時間がUL通信時間より多い前記TDD構成比率を有する基地局を、接続する基地局として決定することを特徴とする請求項1
から4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記各基地局の通信特性と、
前記通信装置が実行しようとする機能で要求される通信要件に基づいて、前記複数の基地局に対して、接続する基地局の優先順位を示す優先順位表を作成する作成手段を更に有し、
前記決定手段は、前記優先順位表において最上位にリストされた基地局を、前記接続する基地局として決定し、
前記接続処理手段は、前記決定された基地局との接続処理を行うことを特徴とする請求項
1から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記接続処理手段により、前記決定された基地局との接続が成功しなかった場合、前記決定手段は、前記優先順位表において、前記接続が成功しなかった基地局の次にリストされている基地局を、前記接続する基地局として決定し、
前記接続処理手段は、前記決定された基地局との接続処理を行うことを特徴とする請求項
6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記作成手段は、前記通信要件により合致する前記通信特性を有する基地局から順に、前記優先順位表にリストすることを特徴とする請求項
6または
7に記載の通信装置。
【請求項9】
通信装置の制御方法であって、
TDD(時分割複信)方式で通信を行うことが可能な複数の基地局のそれぞれから受信された報知情報から、前記複数の基地局の各基地局の通信特性として、前記各基地局におけるUL(アップリンク)通信時間とDL(ダウンリンク)通信時間との比率であるTDD構成比率
と、前記各基地局の遅延特性とを取得する取得工程と、
前記各基地局の通信特性に基づいて、前記複数の基地局の中から接続する基地局を決定する決定工程と、
前記決定された基地局との接続処理を行う接続処理工程と、
を有することを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1から
8のいずれか1項に記載の通信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信装置の制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信装置において、接続して通信を行う基地局を決定するための様々な方法が提案されている。例えば、通信装置が、当該通信装置の位置に関する履歴情報に基づいて、接続する基地局を決定する技術が提案されている(特許文献1)。また、通信装置が、複数の通信事業者による基地局へ接続して通信品質を取得し、通信品質の高い基地局へ接続を切り替える技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-011326号公報
【文献】特開2016-140081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献のような従来技術では、通信装置は、異なる通信サービスを提供する複数のネットワークにおける基地局と接続できる場合に、全ての基地局へ接続してから、意図する通信サービスを提供する基地局を決定する必要があった。結果として、適切な基地局を決定するまでに手間と時間がかかり、通信リソースが無駄に消費されていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、接続する基地局を効率的に決定するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための一手段として、本発明の一態様による通信装置は以下の構成を有する。すなわち、通信装置であって、TDD(時分割複信)方式で通信を行うことが可能な複数の基地局のそれぞれから受信された報知情報から、前記複数の基地局の各基地局の通信特性として、前記各基地局におけるUL(アップリンク)通信時間とDL(ダウンリンク)通信時間との比率であるTDD構成比率と、前記各基地局の遅延特性とを取得する取得手段と、前記各基地局の通信特性に基づいて、前記複数の基地局の中から接続する基地局を決定する決定手段と、前記決定された基地局との接続処理を行う接続処理手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接続する基地局を効率的に決定するための技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】通信装置により実行される処理のフローチャートである。
【
図2】実施形態におけるネットワーク構成例を示す。
【
図5】(a)は通信装置のハードウェア構成例を示し、(b)は通信装置の機能構成例を示す。
【
図6】通信方向特性の判定処理のフローチャートである。
【
図7】UL/DLの値と通信方向特性との関係の一例を示す。
【
図8】遅延特性の判定処理のフローチャートである。
【
図9】サブキャリア間隔と遅延特性との関係の一例を示す。
【
図10】通信装置と各基地局との通信シーケンスを示す。
【
図13】接続優先順位表の例を示す(映像閲覧機能)。
【
図14】接続優先順位表の例を示す(ライブ撮影同時配信機能)
【
図15】接続優先順位表の例を示す(リモート撮影(カメラ)機能)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<ネットワーク構成>
図2は、本実施形態におけるネットワーク構成例であるネットワーク構成200を示す図である。ネットワーク構成200は、通信装置201と、4つ通信システム202~205、映像サーバ211、配信サーバ212から構成される。通信システム202は、基地局A1 206、基地局A2 207を有し、通信サービスAを提供する。通信システム203は、基地局B1 208を有し、通信サービスBを提供する。通信システム204は、基地局C1 209を有し、通信サービスCを提供する。通信システム205は、基地局D1 210を有し、通信サービスDを提供する。また、通信システム202~205(通信サービスA~D)を提供する事業者は、それぞれ事業者A社、B社、C社、D社とする。映像サーバ211は、通信装置201が閲覧する画像(静止画・動画)データを送信する送信元のサーバであり、インターネットを介して、通信システム202~205と接続される。配信サーバ212は、通信装置201によりアップロードされたデータを他の機器に提供(例えば同時配信)が可能なサーバであり、インターネットを介して、通信システム202~205と接続される。
【0011】
通信装置201は、基地局A1 206、基地局B1 208、基地局C1 209、および基地局D1 210と通信可能に配置されている。通信装置201は、通信システム202~205のいずれかにおける基地局と接続することで、映像サーバ211や配信サーバ212と通信を行うことができる。通信装置201の例は、スマートフォン、ラップトップ、携帯電話、モバイルタブレット等である。
【0012】
図2における基地局はそれぞれ、所定の周波数帯域において、アップリンクとダウンリンク(各基地局から通信装置201への通信方向)通信を時間で切り替えるTDD(時分割複信)方式で通信することが可能である。アップリンクとは、通信装置201から各基地局への通信リンクであり、ダウンリンクとは、各基地局から通信装置201への通信リンクを指す。また、当該基地局は、通信装置201とOFDM(直交周波数分割多重)方式で通信することが可能である。当該基地局は、アップリンクとダウンリンクとの間の切り替えタイミングや切り替えパターンなどを含むTDD切替情報や、サブキャリア間隔(OFDMシンボル長に対応)の情報を、通信装置201に報知する。通信装置201は、TDD方式で通信することが可能であり、
図2における基地局から報知される、TDD切替情報やサブキャリア間隔の情報を受信することが可能である。
【0013】
図3に、通信サービスAを提供する通信システム202の構成例を示す。通信サービス制御部301は、通信サービスAのサービス全体を制御する。通信サービス記憶部302は、通信サービスAの制御情報や設定値や通信特性の情報を記憶する。ゲートウェイ303は、インターネットを介して通信システム202を映像サーバ211や配信サーバ212に接続するゲートウェイである。通信システム203~205は、基地局の数が異なることを除いて、
図3と同様の構成を有することができる。
【0014】
図4は、基地局A1 206のハードウェア構成例を示す。制御部401は例えば1つ以上のCPU(Central Processing Unit)で構成され、記憶部402に記憶されたプログラムを実行することにより基地局A1 206全体を制御する。なお、制御部401は、記憶部402に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働により基地局A1 206全体を制御するようにしてもよい。記憶部402は、ROM、RAMの両方、もしくは、いずれか一方により構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。なお、記憶部402として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。送受信部403は、アンテナ404を介して、無線による送受信処理を行う。インタフェース部405は、
図3における通信サービス制御部301やゲートウェイ303との通信を行う。基地局A2 207、基地局B1 208、基地局C1 209、基地局D1 210も、
図4と同様のハードウェア構成を有することができる。
【0015】
図5は、通信装置201の構成例を示す。
図5(a)は、通信装置201のハードウェア構成例を示す。
図5(a)において、制御部501は例えば1つ以上のCPUで構成され、記憶部502に記憶されたプログラムを実行することにより通信装置201全体を制御する。なお、制御部501は、記憶部502に記憶されたプログラムとOSとの協働により通信装置201全体を制御するようにしてもよい。記憶部502は、ROM、RAMの両方、もしくは、いずれか一方により構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、通信のための通信パラメータ、通信装置201の機能やアプリケーションの情報等の各種情報を記憶する。通信装置201の機能やアプリケーションの情報には、当該機能やアプリケーションの通信要件が含まれる。なお、記憶部502として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。送受信部503は、アンテナ504を介して、無線による送受信処理を行う。表示部505は各種表示を行う。表示部505は例えば、通信装置201の機能やアプリケーションの情報の表示や通信装置201の設定に関する表示を行う。入力部506は、ユーザによる、通信装置201の機能やアプリケーションの情報や通信装置201の設定の入力を受け付ける。なお、表示部505と入力部506は1つのモジュールとして構成されて、GUI(Graphic User Interface)として機能してもよい。
【0016】
図5(b)は、制御部501により実行される機能構成の例を示す。解析部511は、送受信部503により受信された信号を解析し、後続の処理に必要な情報を取得(抽出)する。作成部512は、解析部511による解析結果や記憶部502に記憶されている情報に基づいて、優先順位を付した接続対象の基地局のリスト(以下、接続優先順位表)を作成する。接続処理部513は、作成部512により作成された接続優先順位表から、接続する基地局を決定(選択)し、送受信部503による通信を介した接続処理を行う。通信特性確認部514は、基地局との接続処理が完了した後に、当該基地局が位置するシステムが提供する通信サービスの通信特性を確認する。位置・姿勢取得部515は、不図示のGPSセンサ(位置センサ)や地磁気センサ(方位センサ)などから得たデータに基づいて、通信装置201の位置・姿勢の情報を取得する。通信装置201の位置・姿勢の情報は、制御部501により、通信装置201が実行しようとする機能やアプリケーションの通信要件に反映されうる。機能実行部516は、機能やアプリケーションを実行し、送受信部503を介してデータの送受信を行う。なお、本実施形態において、機能とアプリケーションは通信装置201が実行する対象であり、同様な意味を持つ語として使用される。
【0017】
<通信装置による処理の流れ>
次に、通信装置201による処理の流れについて説明する。
図1に、通信装置201により実行される処理のフローチャートを示す。当該フローチャートの処理は、通信装置201が、通信システム202~205において提供されるいずれかの通信サービスを利用して、機能やアプリケーションを実行しようとする際に実行されうる。
図1に示すフローチャートは、通信装置201の制御部501が記憶部502に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現されうる。
【0018】
S101では、送受信部503は、通信装置201が通信可能な基地局(基地局A1 206、基地局B1 208、基地局C1 209、および基地局D1 210のいずれか)から報知情報(報知信号)を受信する。報知情報には、上述したTDD切替情報(アップリンクとダウンリンクとの間の切り替えタイミングや切り替えパターン)やサブキャリア間隔(OFDMシンボル長に対応)の情報が含まれる。
【0019】
S102とS103は、基地局の通信特性を判定する処理である。S102では、解析部511は、受信した報知情報から切替情報を取得して、当該切替情報に基づいて、基地局の通信方向特性を判定する。S102の処理については、
図6と
図7を用いて後述する。S103では、解析部511は、受信した報知情報からサブキャリア間隔の情報を取得して、当該サブキャリア間隔の情報に基づいて、基地局の遅延特性を判定する。S103の処理については、
図8と
図9を用いて後述する。なお、S102とS103の処理の順は、逆であってもよいし、同時に行われてもよい。
【0020】
S104では、制御部501は、通信装置201が通信可能なすべての基地局から受信した報知情報に対する解析処理(S102、S103)が終了したか否かを判断する。すべての基地局から受信した報知情報に対する解析処理が終了した場合(S104でYes)、処理はS105へ進み、そうでない場合は(S104でNo)処理はS101へ戻る。
【0021】
S105では、解析部511は、S102とS103の処理により得られた基地局の通信特性と、通信装置201が実行しようとする機能やアプリケーションの通信要件とを比較する。続いて、S106では、作成部512は、S105における比較結果と、通信装置201が実行しようとする機能やアプリケーションの通信要件に基づいて、通信可能な複数の基地局に対する接続優先順位表を作成する。S107では、接続処理部513は、作成部512により作成された接続優先順位表の最上位の基地局を選択し、当該選択した基地局との接続の確立を試みる。当該接続確立の処理の詳細については、説明を省略する。当該接続の試行の後、S108では、接続処理部513は、選択した基地局との接続が成功したか(接続が確立したか)否かを判定する。
【0022】
選択した基地局との接続が成功した場合(S108でYes)、処理はS109へ進み、通信特性確認部514は、接続した基地局から、当該基地局が属する通信システムが提供する通信サービスの通信特性を取得する。例えば、通信特性確認部514は、送受信部503を介して接続した基地局に要求し、その応答として、通信サービスの通信特性を取得する。当該通信サービスの通信特性の情報は、当該基地局が属する通信システムにおける通信サービス記憶部302に記憶されており、基地局は通信サービス制御部301を介して通信特性の情報を取得し、通信装置201へ送信する。続いてS110では、通信特性確認部514は、取得した通信サービスの通信特性と、通信装置201が実行しようとする機能やアプリケーションの通信要件とが合致するかを判定する。当該通信特性と当該通信要件が合致する場合は(S110でYes)、
図1に示す接続処理は終了し、そうでない場合は(S110でNo)、処理はS107に戻る。接続処理の終了後は、機能実行部516により、送受信部503を介したデータの送受信が行われ得る。
【0023】
選択した基地局との接続が成功しなかった場合(S108でNo)、および、通信サービスの通信特性と、実行予定の機能やアプリケーションの通信要件とが合致しない場合(SS110でNo)、処理はS107へ戻る。この場合、接続処理部513は、作成部512により作成された接続優先順位表において次の基地局(接続が成功しなかった基地局の次にリストされている基地局)を選択し、当該選択した基地局との接続の確立を試みる。その後、S108~S110の処理が行われる。なお、S110において、接続優先順位表における最下位の基地局の通信特性が、実行予定の機能やアプリケーションの通信要件に合致しない場合、接続処理部513は、表の最上位の基地局に接続を行うように構成されてもよい。また、このような場合は、接続処理部513は、通信可能な基地局の中で、実行予定の機能やアプリケーションの通信要件に最も近い通信特性を有する基地局へ接続するように構成されてもよい。
【0024】
なお、S104では、通信装置201が通信可能なすべての基地局に対する解析終了判定に替えて、他の条件を満たす1以上の基地局に対する解析終了判定であってもよい。例えば、予め定められた数の基地局、受信信号強度が一定値以上の1以上の基地局、報知情報を受信可能な1以上の基地局に対する解析終了判定であってもよい。
【0025】
次に、
図6と
図7を参照して、
図1のS102の処理(通信方向特性の判定処理)について説明する。
図6は、通信方向特性の判定処理のフローチャートである。S601では、解析部511は、送受信部503により受信された報知情報から、TDD切替情報(アップリンクとダウンリンクとの間の切り替えタイミングや切り替えパターンを含む情報)を取得する。S602では、解析部511は、TDD切替情報から、アップリンク(UL)通信時間(アップリンクに使用される(サブ)フレーム数)とダウンリンク(DL)通信時間(ダウンリンクに使用される(サブ)フレーム数)の比率(TDD構成比率)を取得する。具体的には、解析部511は、DL通信時間に対するUL通信時間(「UL/DL」と称す)の値をTDD構成比率として演算して取得する。続いて、S603では、解析部511は、UL/DLの値が所定の第1の閾値以上か否かを判定する。本実施形態では、当該所定の第1の閾値を2とする。
【0026】
UL/DLの値が当該所定の第1の閾値以上(すなわち、2以上)の場合(S603でYes)、処理はS604へ進み、そうでない場合は(S603でNo)、処理はS605へ進む。S604では、解析部511は、アップロード向きの通信特性と判定し、当該判定の結果を記憶部502に記憶する。S605では、解析部511は、UL/DLの値が所定の第2の閾値以下か否かを判定する。本実施形態では、当該所定の第2の閾値を1/2とする。
【0027】
UL/DLの値が当該所定の第2の閾値以下(すなわち、1/2以下)の場合(S605でYes)、処理はS606へ進み、そうでない場合は(S605でNo)、処理はS607へ進む。S606では、解析部511は、ダウンロード向きの通信特性と判定し、当該判定の結果を記憶部502に記憶する。S607では、解析部511は、双方向(アップリンクとダウンリンク)向きの通信特性と判定し、当該判定の結果を記憶部502に記憶する。なお、
図6の例では通信特性の分類を、アップロード向き、ダウンロード向き、双方向の3つとしているが、必要に応じて分類数を増やしてもよい。
図7は、
図6に示した通信方向特性の判定における、UL/DLの値と通信方向特性との関係を示す表である。
【0028】
次に、
図8と
図9を参照して、
図1のS103の処理(遅延特性の判定処理)について説明する。
図8は、遅延特性の判定処理のフローチャートである。S801では、解析部511は、送受信部503により受信された報知情報から、OFDM方式のサブキャリア間隔の情報を取得する。サブキャリア間隔はOFDMシンボル長に対応し、サブキャリア間隔が広いほど、高速移動の追従性が確保でき、遅延低減に効果的である。S602では、解析部511は、サブキャリア間隔が所定の第1の間隔以上であるか否かを判定する。本実施形態では、当該所定の第1の間隔を240KHzとする。
【0029】
サブキャリア間隔が当該所定の第1の間隔以上(すなわち、240KHz以上)の場合(S802でYes)、処理はS803へ進み、そうでない場合は(S802でNo)、処理はS804へ進む。S803では、解析部511は、超低遅延の通信特性と判定し、当該判定の結果を記憶部502に記憶する。S804では、解析部511は、サブキャリア間隔が所定の第2の間隔以上か否かを判定する。本実施形態では、当該所定の第2の間隔を60KHzとする。
【0030】
サブキャリア間隔が当該所定の第2の間隔以上(すなわち、60KHz以上)の場合(S804でYes)、処理はS805へ進み、そうでない場合は(S804でNo)、処理はS806へ進む。S805では、解析部511は、低遅延の通信特性と判定し、当該判定の結果を記憶部502に記憶する。S806では、解析部511は、通常遅延(低遅延ではない)の通信と判定し、当該判定の結果を記憶部502に記憶する。なお、
図8の例では、遅延特性の分類を、超低遅延、低遅延、通常遅延の3つとしているが、必要に応じて分類数を増やしてもよい。
図9は、
図8に示した遅延特性の判定における、サブキャリア間隔と遅延特性との関係を示す表である。
【0031】
図10は、通信装置201が、通信可能な複数の基地局から報知情報を受信し、選択した基地局との接続を確立するための手順を示すシーケンス図である。通信装置201が通信可能な複数の基地局は、基地局A1 206、基地局B1 208、基地局C1 209、および基地局D1 210である。
【0032】
M1001では、通信装置201は、基地局A1 206から報知情報を受信し、当該報知情報を解析することにより、基地局A1 206の通信特性(通信方向特性、遅延特性)を取得する(
図1のS102とS103の処理に対応)。同様に、M1002~M1004では、通信装置201は、それぞれ基地局B1 208、基地局C1 209、基地局D1 210から報知情報を受信し、それぞれの基地局の通信特性を取得する。報知情報は、通信システム202~205(通信サービスA~D)提供する事業者である、A社、B社、C社、D社の情報を含むことができる。各基地局とM1001~M1004で取得した通信特性との関係の一例を
図11に示す。
【0033】
M1005では、通信装置201は、M1001~M1004の処理で得られた各基地局の通信特性と、通信装置201が実行しようとする機能やアプリケーションの通信要件から、基地局の接続優先順位を決定する。そして、通信装置201は、当該決定した順位に基づいて、接続優先順位表を作成する(
図1のS106の処理に対応)。通信装置201の記憶部502に記憶されている、通信装置201が実行しようとする機能やアプリケーションの通信要件の例を、
図12に示す。当該通信要件は、通信装置201の記憶部502に記憶され得る。また、当該通信要件は、通信装置201の動作状態や、機能やアプリケーションの動作状態に応じて、制御部501により変化されうる。また、当該通信要件は、位置・姿勢取得部515により取得された通信装置201の位置・姿勢の情報に応じて、制御部501により変化されうる。
【0034】
ここで、通信装置201により、
図11と
図12に示す情報に基づいて作成される接続優先順位表の例を
図13~
図15を参照して説明する。
図13に、通信装置201が実行しようする機能が映像閲覧(
図12の機能ID=1)である場合に作成される接続優先順位表を示す。
図12に示すように、映像閲覧の機能を実行するための通信要件は、通信方向特性=ダウンロード優先であり、遅延特性=通常、である。要求される通信要件は、遅延特性=通常であるが、
図11を参照すると、通信方向特性=ダウンロード向き、遅延特性=低遅延である、より高度な特性を有する基地局D1が存在するため、基地局D1が最上位の優先順位となる。基地局D1の後は、通信方向特性=ダウンロード向き、遅延特性=通常である基地局A1、通信方向特性=双方向通信向き、遅延特性=超低遅延である基地局C1が続く。最下位は、通信方向特性=アップロード向き、遅延特性=通常である基地局B1となる。
【0035】
図14に、通信装置201が実行しようする機能がライブ撮影同時配信(
図12の機能ID=2)である場合に作成される接続優先順位表を示す。
図12に示すように、ライブ撮影同時配信の機能を実行するための通信要件は、通信方向特性=アップロード優先であり、遅延特性=通常、である。
図11を参照すると、通信方向特性=アップロード向き、遅延特性=通常である基地局B1が存在するため、基地局B1が最上位の優先順位となる。基地局B1の後は、通信方向特性=双方向向き、遅延特性=超低遅延である基地局C1、通信方向特性=ダウンロード向き、遅延特性=低遅延である基地局D1が続く。最下位は、通信方向特性=ダウンロード向き、遅延特性=通常である基地局A1となる。
【0036】
図15に、通信装置201が実行しようする機能がリモート撮影(カメラ)(
図12の機能ID=3)である場合に作成される接続優先順位表を示す。なお、リモート撮影(カメラ)は、通信装置201がカメラとして機能し、撮影により得られた画像データを不図示のコントローラにアップロードする機能(アプリケーション)である。
図12に示すように、リモート撮影(カメラ)の機能を実行するための通信要件は、通信方向特性=アップロード優先であり、遅延特性=低遅延、である。
図11を参照すると、通信方向特性=アップロード向き、遅延特性=通常である基地局B1が存在するため、基地局B1が最上位の優先順位となる。基地局B1の後は、通信方向特性=双方向向き、遅延特性=超低遅延である基地局C1、通信方向特性=ダウンロード向き、遅延特性=低遅延である基地局D1が続く。最下位は、通信方向特性=ダウンロード向き、遅延特性=通常である基地局A1となる。
【0037】
図10の説明に戻り、M1005で通信装置201が、実行しようする機能が映像閲覧(
図12の機能ID=1)である場合に、
図13に示す接続優先順位表を作成したとする。M1006では、通信装置201は、
図13に示す接続優先順位表の最上位にある基地局D1 210を選択し、基地局D1 210へ接続要求メッセージを送信することにより、接続の確立を試みる(
図1のS107の処理に対応)。基地局D1 210は、通信装置201から接続要求メッセージを受信すると、M1007において、その応答として接続受理メッセージを送信する。通信装置201は、基地局D1 210から接続受理メッセージを受信すると、接続が成功したと判断することができる(
図1のS108の処理でYesの場合に対応)。
【0038】
続いて、M1008では、通信装置201は、基地局D1 210が属する通信システム205が提供する通信サービスDの通信特性情報要求メッセージを、基地局D1 210へ送信する。基地局D1 210は、通信装置201から通信サービスDの通信特性情報要求メッセージを受信すると、M1009において、その応答として、通信サービスDの通信特性の情報を返信する。具体的には、基地局D1 210は、通信システム205における通信サービス記憶部302に記憶されている通信サービスDの通信特性の情報を、通信サービス制御部301を介して取得し、通信装置201に送信する。通信装置201は、通信サービスDの通信特性の情報を受信すると(
図1のS109の処理に対応)、M1010において通信サービスDの通信特性が、映像閲覧に対する通信要件(
図12参照)に合致するかを確認する(
図1のS110の処理に対応)。通信サービスDの通信特性が、映像閲覧に対する通信要件に合致すると確認されると、通信装置201は基地局D1 210との間でデータの送受信を行う。例えば、通信装置201は、基地局D1 210を介して、映像サーバ211とのデータの送受信を行うことができる。
【0039】
なお、
図10において、M1001~M1004において通信装置201が受信する報知情報は1つずつのように記載されていが、各基地局からの報知情報が複数ある場合は、複数回受信することができる。また、
図10では、通信装置201は、通信サービスDの通信特性と実行予定の機能に対する通信要件が合致した例を示しているが、これらが合致しない場合は、接続優先順位表にリストされる基地局の順にM1006からM1010までのメッセージの送受信と処理が繰り返される。
【0040】
このように、本実施形態によれば、通信装置が各基地局へ接続する前に、実行しようとする機能やアプリケーションに適する通信サービスを提供可能な基地局を決定することが可能となる。よって、通信リソースを効率的に使用して、接続するのに適切な基地局を決定することが可能となる。
【0041】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【0042】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0043】
201 通信装置、511 解析部、512 作成部、513 接続処理部、514 通信特性確認部、515 位置・姿勢取得部 516 機能実行部