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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240610BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240610BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240610BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H01L29/78 301D
H01L29/78 301L
H01L27/04 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020061816
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163800
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】畠中 雅宏
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168650(JP,A)
【文献】特開2010-087291(JP,A)
【文献】特開2011-249721(JP,A)
【文献】米国特許第05907173(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた第2導電型の低濃度拡散層と、
前記第2導電型の低濃度拡散層の表面にゲート酸化膜を介して設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の一方に位置する前記半導体基板の表面に設けられた第1導電型のソース拡散層および前記ゲート電極の他方に位置する前記半導体基板の表面に、前記ゲート電極から離間して設けられた第1導電型のドレイン拡散層と
記ドレイン拡散層を含むように設けられた、前記ドレイン拡散層よりも不純物濃度が低い、第1導電型の高濃度拡散層と、
前記ゲート電極の下方となる前記半導体基板の表面から前第1導電型の高濃度拡散層、および前記ドレイン拡散層を内部に含んで設けられた、前記第1導電型の高濃度拡散層よりも不純物濃度が低い、第1導電型の低濃度拡散層と、
前記第1導電型の高濃度拡散層の側面と前記ゲート電極の前記ドレイン拡散層側の端部の直下との間の前記第1導電型の低濃度拡散層の表面に設けられた、前記第1導電型の低濃度拡散層よりも不純物濃度が高くかつ前記第1導電型の高濃度拡散層よりも不純物濃度が低い、第1導電型のドレインLDD拡散層と、
前記ソース拡散層を覆い、前記ゲート電極の下のチャネルに至る、前記第2導電型の低濃度拡散層よりも不純物濃度が高い、第2導電型の中濃度領域と、
前記ソース拡散層の側面と前記ゲート電極の前記ソース拡散層側の端部の直下との間の前記第2導電型の中濃度領域の表面に設けられた第1導電型のソースLDD拡散層と、
を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路には、静電気放電(ESD)を代表とする様々なサージや電源電圧の変動によるノイズから内部素子を保護する為にESD保護素子が設けられている。特に、ゲートが常時オフするように配置されるオフトランジスタのようなESD保護素子の動作範囲は、半導体集積回路の最大動作電圧よりも高く、半導体集積回路の内部で用いられる内部素子の耐圧よりも低く設定する必要がある。しかし、微細化によりESD保護素子に要求される動作範囲は狭くなり、所望の特性を実現することが難しくなっている。
【0003】
一方、保護素子の機能として、高いESD耐性を備えること、すなわち、抵抗が低く多量の電流を流しても破壊しないことも必要である。
改善策として、トランジスタの耐圧を決めるドレイン側のP/N接合付近の不純物濃度を低くし、不純物濃度が高いドレイン拡散層付近の不純物濃度を高くするために、ドレイン拡散層を含むドレイン領域の周りに二重の拡散層を配置することで耐圧を向上し、かつ、低オン抵抗になるように工夫している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-266473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に濃い拡散層をゲート電極近傍に配置すると電界が大きくなり耐圧が落ちるため、耐圧の強化のためには濃い拡散層をゲート電極から離して配置する必要がある。また保護素子は過電圧印加によりバイポーラ動作に入り、ドレイン拡散層の境界での電界集中による熱破壊が起こりやすい。この現象を抑制するためにはゲート電極からドレイン拡散層までの途中の領域を濃く形成する必要がある。
【0006】
つまり、ドレイン耐圧を確保し、保護素子の劣化を抑制するためには、ゲート電極から高濃度のドレイン拡散層を離すとともに、その途中の領域全体は極力濃度を高くする必要がある。
【0007】
一方、耐圧確保のために、ドレイン領域内においてドレイン拡散層へ至る領域の濃度勾配が緩やかになるように、多重の拡散構造を形成したトランジスタは、所望の耐圧範囲に収まるように拡散層の構造を調整する必要がある。しかし、構造やプロセスの変化に対して耐圧が変動してしまうためにマージンを持って内部素子を守ることができる素子を作るのが難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、ESD保護素子の劣化を抑制し、所望の耐圧を容易に実現するとともに十分なESD耐性を有する半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、本発明は半導体装置を以下のように構成した。
即ち、半導体基板と、前記半導体基板に設けられた第2導電型の低濃度拡散層と、前記第2導電型の低濃度拡散層の表面にゲート酸化膜を介して設けられたゲート電極と、前記ゲート電極の一方に位置する前記半導体基板の表面に設けられた第1導電型のソース拡散層および前記ゲート電極の他方に位置する前記半導体基板の表面に、前記ゲート電極から離間して設けられた第1導電型のドレイン拡散層と、前記ドレイン拡散層と前記ゲート電極の前記ドレイン拡散層側の端部の直下との間の前記半導体基板の表面に設けられた第1導電型のドレインLDD拡散層と、前記ドレインLDD拡散層の前記ソース拡散層側の端部よりも前記ドレイン拡散層に近い位置から前記ドレイン拡散層を含むように設けられた、ドレインLDD拡散層よりも不純物濃度が高く、かつ前記ドレイン拡散層よりも不純物濃度が低い、第1導電型の高濃度拡散層と、前記ゲート電極の下方となる前記半導体基板の表面から、前記ドレインLDD拡散層、前記高濃度拡散層、および前記ドレイン拡散層を内部に含んで設けられた、前記ドレインLDD拡散層よりも不純物濃度が低い、第1導電型の低濃度拡散層と、を有する半導体装置とした。
【発明の効果】
【0010】
上記手段を用いることにより、ゲート電極近傍の電界を緩和させて耐圧の強化を図るとともに、ドレイン拡散層付近の高濃度化により抵抗を下げて高いESD耐性を実現することができる。
【0011】
また、高濃度拡散層をゲート電極から離しドレインLDD拡散層を設けることで、高濃度拡散層のばらつきを抑えられると伴にドレインLDD拡散層により耐圧を容易に調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の半導体装置の第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタを示す模式的断面図である。
図2】第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す模式的断面図である。
図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す模式的断面図である。
図4】第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す模式的断面図である。
図5】第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す模式的断面図である。
図6】第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す模式的断面図である。
図7】第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す模式的断面図である。
図8】本発明の半導体装置の第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタの第1の変形例を示す模式的断面図である。
図9】本発明の半導体装置の第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタの第2の変形例を示す模式的断面図である。
図10】本発明の半導体装置の第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタの第3の変形例を示す模式的断面図である。
図11】本発明の半導体装置の第2の実施形態に係るN型MOSトラジスタを示す模式的断面図である。
図12】本発明の半導体装置の第3の実施形態に係るP型MOSトランジスタを示す模式的断面図である。
図13】本発明の半導体装置の第3の実施形態に係るP型MOSトランジスタの変形例を示す模式的断面図である。
図14】本発明の第4の実施形態に係るN型MOSトランジスタを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では図面を用いて発明を実施するための形態を説明する。また、以下において、単にドレインと記した場合、ドレイン拡散層を含む、ドレイン拡散層と同じ導電型の不純物層からなる構造を指し、単にソースと記した場合、ソース拡散層を含む、ソース拡散層と同じ導電型の不純物層からなる構造を指すものとする。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の半導体装置の第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタ10を示す模式的断面図である。
【0014】
N型MOSトランジスタ10は、半導体基板100と、半導体基板100の表面から内部にかけて配置された第2導電型(本実施形態ではP型)の低濃度拡散層101と、半導体基板100の表面にゲート酸化膜104を介し配置されたゲート電極105と、ゲート電極105の一方の半導体基板100の表面に配置された第1導電型(本実施形態ではN型)のソース拡散層106Aおよびゲート電極105の他方の半導体基板100の表面にゲート電極105から離間して配置された第1導電型のドレイン拡散層106Bと、ゲート電極105の一端であるドレイン拡散層106B側の端部の直下からドレイン拡散層106Bとの間に配置した第1導電型のドレインLDD拡散層107Bと、ゲート電極105に対してドレインLDD拡散層107Bのソース側の端部よりもドレイン側に離れた位置からドレイン拡散層106Bを内部に含んで設けられ、垂直方向には半導体基板100の表面からドレイン拡散層106Bの底部よりも深い位置まで設けられた第1導電型の高濃度拡散層103と、ゲート電極105の下方となる半導体基板100の表面から、ドレインLDD拡散層107B、高濃度拡散層103、ドレイン拡散層106Bを内部に含んで設けられた第1導電型の低濃度拡散層102とで構成されている。ドレインLDD拡散層107Bの不純物濃度は、第1導電型の低濃度拡散層102の不純物濃度よりも高く、第1導電型の高濃度拡散層103の不純物濃度よりも低いので、中濃度ということも可能である。
【0015】
さらに、N型MOSトランジスタ10においては、ゲート電極105の他端であるソース拡散層側の端部の直下からソース拡散層106Aとの間にはソースLDD拡散層107Aが配置されている。このために、ソース拡散層106Aはゲート電極105の他端から離間して配置されている。ソースLDD拡散層107AとドレインLDD拡散層107Bの間であって、ゲート電極105の下方となる第2導電型の低濃度拡散層101の半導体基板の表面近傍の領域にチャネルが誘起されることになる。なお、このソース拡散層106Aに接しているソースLDD拡散層107Aを配置しないことも可能であり、配置しない場合については変形例として後述する。
【0016】
半導体基板100と低濃度拡散層101とが同じ導電型を有する場合は、両者を同一視することが可能である。即ち、半導体基板100自体を、低濃度拡散層101とみなせる場合である。
【0017】
図中に用いられている、N--、N-、N+、N++およびP--、P-、P+、P++の記号はある領域に拡散されている不純物の相対的な濃度の大小を表している。即ち、N型の不純物の濃度は、N--、N-、N+、N++の順で高くなり、P型の不純物の濃度は、P--、P-、P+、P++の順で高くなる。
【0018】
上記構造とすることにより、チャネルからドレイン拡散層に向かって段階的に濃度勾配をつけることが可能であるため、従来技術よりチャネル付近の不純物濃度を薄く、ドレイン拡散層付近の不純物濃度を濃くすることができる。従って、チャネル付近の電界を緩和させて耐圧を強化し、かつホットキャリアによる劣化を抑制し、更にドレイン拡散層付近の抵抗を下げて高いESD耐性を実現することができる。
【0019】
次に、図1に示したN型MOSトランジスタ10の製造方法について説明する。図2から図7はN型MOSトランジスタ10の作製工程を示す模式的断面図である。
まず、図2に示すように、半導体基板100上にP型不純物をイオン注入してP型領域101を形成する。P型領域101はエピタキシャル成長により形成することも可能である。
【0020】
続いて、図3に示すようにレジスト膜109Aをつけ、それをマスクにしてN型不純物をイオン注入し、レジスト膜109Aの剥離後に熱拡散することによりN型低濃度拡散層102を形成する。
【0021】
続いて、図4に示すように、N型低濃度拡散層102の内側となる領域が開口するようにレジスト膜109Bをつけ、それをマスクにしてN型不純物をイオン注入してN型高濃度拡散層103を形成する。
【0022】
P型低濃度拡散層101、N型低濃度拡散層102は主にウェルとして利用することが多いため、含まれる不純物を広範囲に拡散して濃度も薄くなっている。それに対してN型高濃度拡散層103はウェルの拡散のための高温、長時間の熱処理を加えないため、均一、かつ、熱処理によるばらつきを少なく拡散層を形成することが可能である。これにより、図1で示したように、このN型高濃度拡散層103とチャネルとの距離およびN型高濃度拡散層103の端からドレイン拡散層106Bにあるコンタクトまでの距離によってMOSトランジスタの耐圧を大きく変化させることができるので、構造のばらつきが少ないN型高濃度拡散層103を用いることは内部素子との耐圧のマージンの少ない場合に使用できるオフトランジスタを作製する際に特に有効である。
【0023】
続いて、図5に示すようにゲート酸化膜104を形成した後、図6に示すようにゲート電極105を形成する。ゲート電極105は多結晶シリコンを一般に主成分としている。
続いて、図7に示すように、必要な部分が開口されたレジスト膜109Cを用いて、N型不純物をイオン注入することにより、N型のソース拡散層106Aおよびドレイン拡散層106Bを形成する。
【0024】
そして、図1に戻り、そこに示されるように、ゲート電極105をマスクとして、N型不純物をイオン注入してN型のソースLDD拡散層107AおよびドレインLDD拡散層107Bを形成する。ソースLDD拡散層107AおよびドレインLDD拡散層107Bはゲート電極105両方の端部からソース拡散層106Aおよびドレイン拡散層106Bの表面に至るまで連続して形成しても良い。これは、ソースLDD拡散層107AおよびドレインLDD拡散層107Bの不純物濃度が、N型低濃度拡散層102の不純物濃度よりは高いが、N型高濃度拡散層103とN型のソース拡散層106Aおよびドレイン拡散層106Bのそれぞれの不純部濃度よりも低いからである。N型のソースLDD拡散層107AおよびドレインLDD拡散層107Bの形成は、ウェハー製造工程の終わりに近い段階なので、加えられる熱処理は少なく、熱拡散に伴い発生する特性のばらつきが少ない。そのため、この両者が有する不純物の濃度により、素子耐圧を容易に調整することが可能となる。
【0025】
以下、図示は省略するが、ゲート電極105、ソース拡散層106A、およびドレイン拡散層106Bの上に設けられた層間絶縁膜を貫通してコンタクトを形成し、メタル配線、パッシベーション膜を形成することで半導体装置が完成する。
【0026】
図8は、本発明の半導体装置の第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタ10の第1の変形例であるN型MOSトランジスタ20を示す模式的断面図である。N型MOSトランジスタ20においては、ソース拡散層106AおよびソースLDD拡散層107Aを覆って、ゲート電極105の下のチャネルに至るP型中濃度領域108が設けられている点が、N型MOSトランジスタ10とは異なっている。
【0027】
P型中濃度領域108を設けることにより、ソース拡散層106AおよびソースLDD拡散層107Aと接するP型の領域の不純物濃度をP型低濃度拡散層101よりも高くすることで、ソース拡散層106AおよびソースLDD拡散層107Aへ流れ込むリーク電流を削減することが可能となる。さらに、P型中濃度領域108はソース側のみに設けられているので、ドレイン側の不純物分布は変化しない。そのため、N型MOSトランジスタ20は第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタ10と同等のESD耐圧を保持することができる。
【0028】
図9は、本発明の半導体装置の第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタ10の第2の変形例であるN型MOSトランジスタ30を示す模式的断面図である。N型MOSトランジスタ10において、ソース拡散層106Aからゲート電極105の直下に至る領域に設けられていたソースLDD拡散層107Aは、N型MOSトランジスタ30においては設けられていない。さらに、ソース拡散層106Aはゲート電極105の端部の直下に接して設けられている。ソース拡散層106Aの近傍では、電界強度が著しく大きくなることがない場合、このようにソースLDD拡散層107Aを省き、ソース拡散層106Aをゲート電極105の端部の直下に配置することができる。このようにすることで、N型MOSトランジスタ30のチャネルに沿った方向のサイズを縮めることを可能とする。
【0029】
図10は、本発明の半導体装置の第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタ10の第3の変形例であるN型MOSトランジスタ40を示す模式的断面図である。N型MOSトランジスタ40においては、ソース拡散層106Aからゲート電極105の直下に至る領域に設けられていたソースLDD拡散層107Aがない点、およびソース拡散層106Aを覆って、ゲート電極105の下のチャネルに至るP型中濃度領域108が設けられている点が、N型MOSトランジスタ10とは異なっている。
【0030】
N型MOSトランジスタ40においては、P型中濃度領域108が設けられていることにより、第1の変形例であるN型MOSトランジスタ20と同様にソース拡散層106Aへ流れ込むリーク電流を削減することが可能となる。さらに、ソースLDD拡散層107Aがないので、ソース拡散層106Aをゲート電極105の端部の直下に配置することができ、N型MOSトランジスタ40のチャネルに沿った方向のサイズを縮めることが可能となる。
<第2の実施形態>
図11は、本発明の半導体装置の第2の実施形態に係るN型MOSトランジスタ50を示す模式的断面図である。
【0031】
N型MOSトランジスタ50は、ドレインとソースの構造が同一であり、対称になっている。即ち、第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタ10においては、ソースとドレインの構造は同一でなく、非対称であったが、ソース拡散層106Aを取り囲むソースの構造をドレインの構造と等しくすることにより、N型MOSトランジスタ50は、構成される。
【0032】
具体的には、N型MOSトランジスタ50は、半導体基板100と、半導体基板100の表面から内部にかけて配置された第2導電型(本実施形態ではP型)の低濃度拡散層101と、半導体基板100の表面にゲート酸化膜104を介し配置されたゲート電極105と、ゲート電極105の一方の半導体基板100の表面にゲート電極105から離間して配置された第1導電型(本実施形態ではN型)のソース拡散層106Aおよびゲート電極105の他方の半導体基板100の表面にゲート電極105から離間して配置された第1導電型のドレイン拡散層106Bと、ゲート電極105の一端であるドレイン拡散層106B側の端部の直下からドレイン拡散層106Bとの間に配置した第1導電型のドレインLDD拡散層107Bおよびゲート電極105の他端であるソース拡散層106A側の端部の直下からソース拡散層106Aとの間に配置した第1導電型のソースLDD拡散層107Aと、ゲート電極105に対してドレインLDD拡散層107Bよりもドレイン側に離れた位置からドレイン拡散層106Bまで設けられ、垂直方向には半導体基板100の表面からドレイン拡散層106Bの底部よりも深い位置まで設けられた第1導電型の高濃度拡散層103Bおよびゲート電極105に対してソースLDD拡散層107Aよりもソース側に離れた位置からソース拡散層106Aまで設けられ、垂直方向には半導体基板100の表面からソース拡散層106Aの底部よりも深い位置まで設けられた第1導電型の高濃度拡散層103Aと、ゲート電極105の下方となる半導体基板100の表面から、ドレインLDD拡散層107B、高濃度拡散層103B、ドレイン拡散層106Bを内部に含んで設けられた第1導電型の低濃度拡散層102Bおよびゲート電極105の下方となる半導体基板100の表面から、ソースLDD拡散層107A、高濃度拡散層103A、ソース拡散層106Aを内部に含んで設けられた第1導電型の低濃度拡散層102Aとで構成されている。
【0033】
N型MOSトランジスタ50は、ドレインとソースの構造が同一であり、対称になっているので、ソースとドレインを入れ替えても使用することが可能である。
<第3の実施形態>
図12は、本発明の半導体装置の第3の実施形態に係るP型MOSトランジスタ60を示す模式的断面図である。P型MOSトランジスタ60は、第1の実施形態に係るN型MOSトランジスタ10において、すべての領域の導電型を反対の導電型に入れ替えたものである。即ち、N型MOSトランジスタ10において、P型の領域をN型の領域とし、N型の領域をP型の領域としたものである。
【0034】
P型MOSトランジスタ60は、半導体基板100と、半導体基板100の表面から内部にかけて配置された第2導電型(本実施形態ではN型)の低濃度拡散層201と、半導体基板100の表面にゲート酸化膜104を介し配置されたゲート電極105と、ゲート電極105の一方の半導体基板100の表面に配置された第1導電型(本実施形態ではP型)のソース拡散層206Aおよびゲート電極105の他方の半導体基板100の表面にゲート電極105から離間して配置された第1導電型のドレイン拡散層206Bと、ゲート電極105の一端であるドレイン拡散層206B側の端部の直下からドレイン拡散層206Bとの間に配置した第1導電型のドレインLDD拡散層207Bと、ゲート電極105に対してドレインLDD拡散層207Bよりもソース側に離れた位置からドレイン拡散層206Bまで設けられ、垂直方向には半導体基板100の表面からドレイン拡散層206Bの底部よりも深い位置まで設けられた第1導電型の高濃度拡散層203と、ゲート電極105の下方となる半導体基板100の表面から、ドレインLDD拡散層207B、高濃度拡散層203、ドレイン拡散層206Bを内部に含んで設けられた第1導電型の低濃度拡散層202とで構成されている。さらに、ゲート電極105の他端であるソース拡散層側の端部の直下からソース拡散層206Aとの間にはソースLDD拡散層207Aが配置されている。
【0035】
P型MOSトランジスタ60は、VDDなどのように、電源電圧の高い側をソースに印加される電圧として、N型MOSトランジスタ10などとともに、組み合わせて使用することが容易である。
【0036】
図13は、本発明の半導体装置の第3の実施形態に係るP型MOSトランジスタ60の変形例であるP型MOSトランジスタ70を示す模式的断面図である。P型MOSトランジスタ70においては、ソース拡散層206AおよびソースLDD拡散層207Aを覆って、ゲート電極105の下のチャネルに至るP型中濃度領域208がさらに設けられている点が、P型MOSトランジスタ60とは異なっている。
【0037】
P型MOSトランジスタ70の図12に示したP型MOSトランジスタ60に対する特徴は、N型MOSトランジスタ20の図1に示したN型MOSトランジスタ10に対する特徴と同様であり、ESD耐圧を保持したままリーク電流の削減が可能となる。
<第4の実施形態>
図14は、本発明の半導体装置の第4の実施形態に係るN型MOSトランジスタ80を示す模式的断面図である。
【0038】
N型MOSトランジスタ80は、チャネルの途中からドレイン拡散層106Bに至る半導体基板100の表面にゲート酸化膜104よりも厚いフィールド酸化膜110を有する点が、第1の実施形態の第1の変形例として説明したN型MOSトランジスタ20と異なっている。一方、第1導電型(ここではN型)のソース拡散層106Aの周囲に設けられている第1導電型のソースLDD拡散層107Aおよび第2導電型(ここではP型)の中濃度領域108、ドレイン拡散層106Bの周囲に設けられている第1導電型の低濃度拡散層102、第1導電型の高濃度拡散層103、および第1導電型のドレインLDD拡散層107Bに関しては本質的に同一である。
【0039】
ゲート電極105はゲート酸化膜104の上だけでなく、フィールド酸化膜110の上にまで、延伸して設けられている。これにより、ゲート電極105のドレイン拡散層側の端部とドレインLDD拡散層107Bのソース拡散層側の端部は、半導体基板の表面に垂直な方向からの平面視において接している必要はない。また、第1導電型の低濃度拡散層102に関しては、半導体基板の表面におけるソース拡散層側の境界面がフィールド酸化膜110の下に位置することもあれば、ゲート酸化膜104の下に位置することもある。
【0040】
N型MOSトランジスタ80の構造においては、ゲート電極105とドレイン拡散層106Bの周囲に設けられた複数の第1導電型の拡散層との間にフィールド酸化膜110が存在するので、ゲートとドレインの間の耐圧を向上させることができ、特にN型MOSトランジスタ80がオフしているときの耐圧を向上させる。
【0041】
N型MOSトランジスタ80は、ソースLDD拡散層107Aおよび第2導電型の中濃度領域108を有しているが、これらのいずれか、あるいはこれら両者を有していない構造も上記第1の実施形態において説明したのと同様に、容易に実施が可能である。
【0042】
また、N型MOSトランジスタ80に対して、不純物を含む拡散層の導電型をすべて入れ替えたP型MOSトランジスタを構成することも容易である。
【符号の説明】
【0043】
100 半導体基板
101 P型低濃度拡散層
102、102A、102B N型低濃度拡散層
103、103A、103B N型高濃度拡散層
104 ゲート酸化膜
105 ゲート電極
106A N型ソース拡散層
106B N型ドレイン拡散層
107A、107B N型LDD拡散層
108 P型中濃度領域
109A、109B、109C レジスト膜
201 N型低濃度拡散層
202 P型低濃度拡散層
203 P型高濃度拡散層
206A P型ソース拡散層
206B P型ドレイン拡散層
207A、207B P型LDD拡散層
208 N型中濃度領域
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図14