(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020067821
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 龍太朗
(72)【発明者】
【氏名】長島 匡和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智洋
(72)【発明者】
【氏名】若山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】野澤 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 和一郎
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108644(JP,A)
【文献】特開平06-278938(JP,A)
【文献】特開2021-049712(JP,A)
【文献】特開2014-108561(JP,A)
【文献】特開2000-075565(JP,A)
【文献】特開2002-062750(JP,A)
【文献】特開昭63-315465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0115313(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを収納する収納部と、
前記収納部から搬送されたシートに対して記録を行う記録ユニットと、
前記収納部からのシートを前記記録ユニットに向けて搬送する第1搬送部と、
前記第1搬送部と前記収納部との間に設けられ、前記収納部からのシートを前記第1搬送部に向けて搬送する第2搬送部と、
前記第2搬送部と前記収納部との間に設けられ、前記収納部から搬送されたシートを切断するカッターユニットと、
前記第1搬送部と前記第2搬送部との間においてシートが撓むように前記第1搬送部及び前記第2搬送部を個別に
制御する制御部と、
前記第1搬送部と前記第2搬送部との間に設けられ、シートの撓みを検出するための検出部と、を備え、
前
記制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて
、
シートを所定量搬送した後に前記第1搬送部の駆動を維持させながら前記第2搬送部の駆動を停止して前記カッターユニットによりシートを切断する第1制御と、
シートが前記所定量搬送される前に前記第2搬送部の駆動を停止して前記カッターユニットによりシートを切断しない第2制御と、
を実行する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて、シートが前記所定量搬送される前に前記第2搬送部の駆動を停止して前記カッターユニットによりシートを切断する第3制御を実行する
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記検出部の検出結果においてシートの撓みが基準を満たしていない
場合に該シートが適切に搬送されていないことをユーザに通知する通知部を更に備える
ことを特徴とする
請求項1または請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録ユニットと前記第1搬送部との間に設けられ、シートの平坦度を検出する平坦度センサを備え、
前記制御部は、前記検出部と前記平坦度センサとに基づき前記第2制御を実行する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録ユニットに対向し、シートをベルトで搬送する搬送ベルトを備え、
シートは、前記収納部に収納されたロールシートから送り出される
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録ユニットは、シートにインクを吐出して記録を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項記載の記録装置。
【請求項7】
閉状態で前記第2搬送部から前記第1搬送部へのシートの搬送をガイドし且つ開状態でシートの撓みを発生させるガイド部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項記載の記録装置。
【請求項8】
前記検出部は、シートの通過を更に検出可能な第1検出部であり、
前記記録装置は
、前記収納部から搬送されたシートが前記第2搬送部に到達したことを検出する第2検出部
を更に備え、
前記ガイド部
の前記閉状態において、前
記制御部は、前記第1検出部及び前記第2検出部
の間における検出の時間差に基づいて、前記第2搬送部の駆動態様を変更する
ことを特徴とする請求項7記載の記録装置。
【請求項9】
前
記制御部は、前記第1検出部及び前記第2検出部
の間における検出の時間差に基づいて、前記第2搬送部において発生したシートの搬送量誤差を算出し、該算出の結果に基づいて前記第2搬送部の駆動態様を変更する
ことを特徴とする請求項8記載の記録装置。
【請求項10】
前記第2搬送部の前記駆動態様を変更することは、前記第2搬送部の駆動力を変更することを含む
ことを特徴とする
請求項8または請求項9記載の記録装置。
【請求項11】
前記第2搬送部の前記駆動態様を変更することは、前記第2搬送部の駆動時間を変更することを含む
ことを特徴とする請求項
8から請求項10の何れか1項記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置のなかには、ロールシートを収納する収納部と、記録を行う記録ユニットと、該シートを収納部から記録ユニットまで搬送する搬送部とを備え、該シートへの記録と該シートの切断とを並列して行うものがある(特許文献1参照)。シートの搬送の際、搬送経路における上流側の搬送ローラの駆動力(回転速度、即ち単位時間あたりの搬送量)を下流側の搬送ローラよりも大きくすることで、それらの間に、ループと称されるシートの撓みが形成される。その後、下流側の搬送ローラの駆動を維持することでシートへの記録を実行可能とし、それと共に上流側の搬送ローラを停止することで、ループが縮小している間に該シートの切断を実行可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録装置による記録の品質の向上のため、例えば、記録が適切に行われるように、また、記録済のシートが記録装置本体から適切に排出されるように、上記シートのループ(撓み)が適切に形成されることが求められる。
【0005】
本発明は、記録装置による記録の品質の向上に有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は記録装置にかかり、前記記録装置は、
シートを収納する収納部と、
前記収納部から搬送されたシートに対して記録を行う記録ユニットと、
前記収納部からのシートを前記記録ユニットに向けて搬送する第1搬送部と、
前記第1搬送部と前記収納部との間に設けられ、前記収納部からのシートを前記第1搬送部に向けて搬送する第2搬送部と、
前記第2搬送部と前記収納部との間に設けられ、前記収納部から搬送されたシートを切断するカッターユニットと、
前記第1搬送部と前記第2搬送部との間においてシートが撓むように前記第1搬送部及び前記第2搬送部を個別に制御する制御部と、
前記第1搬送部と前記第2搬送部との間に設けられ、シートの撓みを検出するための検出部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて、
シートを所定量搬送した後に前記第1搬送部の駆動を維持させながら前記第2搬送部の駆動を停止して前記カッターユニットによりシートを切断する第1制御と、
シートが前記所定量搬送される前に前記第2搬送部の駆動を停止して前記カッターユニットによりシートを切断しない第2制御と、
を実行する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録装置による記録の品質を向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】インクジェット記録装置の外観斜視図である。
【
図4】記録装置の内部構成を示す側面模式図である。
【
図5A】記録装置の内部構成の一部についての拡大模式図である。
【
図5B】記録装置の内部構成の一部についての拡大模式図である。
【
図5C】記録装置の内部構成の一部についての拡大模式図である。
【
図6】記録装置の制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】記録装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<記録装置の概要>
図1は、実施形態に一態様に係るインクジェット記録装置(以下、記録装置)1の斜視図である。記録装置1には、印刷に関する各種設定を行ったり、装置の状態を表示したりするための操作パネル100が配置される。操作パネル100は、タッチパネルディスプレイであってもよいし、押圧式スイッチ等が配列された操作盤であってもよいし、付随的に、所定の通知音を鳴動するための音源が内蔵されていてもよい。
また、記録装置1本体は、スタンド101により支えられており、記録装置1本体には、記録を行うための記録ユニット(後述)が内蔵され、開閉可能なカバー16により封止されている。詳細については後述とするが、上記記録ユニットには、記録媒体の幅に相当する記録幅を有し且つ該記録媒体にインク(インク液滴)を吐出して画像を記録するライン型の記録ヘッド(ラインヘッド等とも称されうる。)が用いられるものとする。
また、記録装置1本体には、インクを貯留するインクタンクが内蔵されると共に、インクタンクを封止するインクタンクカバー2が設けられる。インクタンクの交換が必要な場合には、インクタンクカバー2を操作することによりインクタンクにアクセス可能となっている。
【0011】
上記記録ユニットは、同様の構成を有する複数の記録ヘッド、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)及びブラック(K)に対応する4つの記録ヘッド、で構成される。即ち、インクタンクカバー2内には、C、M、Y及びKの4色のインクをそれぞれ収容した4つのインクタンクが収容される。尚、これらインクタンクは互いに独立して交換可能である。
【0012】
記録装置1には、長尺状のシートであって上記記録ユニットの記録幅に対応するシート幅(例えば10インチ~40インチの幅)を有するシートがロール状に巻かれたもの(以下、ロールシート)が記録媒体として装填される。この記録媒体を上記記録ユニットの記録領域に搬送しながら画像データに基づく記録を上記記録ユニットにより行うことで、記録媒体上に所望の画像を形成することができる。尚、画像の概念には、文字、記号、図形、写真等が含まれる他、それらの間に形成されうる空白も含まれるものとする。
【0013】
ロールシートは、
図1に示されるように、上段の収納部4aおよび下段の収納部4bのそれぞれに、収納(或いは、格納、取付け)可能であり、それらの1つからロールシートを搬送することにより該ロールシートに対して記録を行うことが可能である。収納部4a及び4bは、それぞれ格納部、取付け部等と表現されてもよい。
図1には、一例として、下段の収納部4bにロールシートRが取り付けられた様子が示される。
【0014】
<記録ユニットの構成例>
図2は、上記記録ユニット(記録ユニット3とする。)の構成を示す斜視図である。記録ユニット3は、C、M、Y及びKの4色のインクを吐出可能な素子基板10が直線上に15個配列(インラインに配置)されたライン型の記録ヘッドである。他の実施形態として、記録ユニット3は、1色のインクを吐出可能に構成された記録ヘッドを4つ、記録媒体の搬送方向に配置することにより上記4色のインクを吐出するように構成されても良い。
【0015】
記録ユニット3は、上記素子基板10を備える他、フレキシブル配線基板40および電気配線基板90、並びに、それらを介して電気的に接続された信号入力端子91および電力供給端子92を更に備える。信号入力端子91及び電力供給端子92は、記録装置1の各制御部(後述)と電気的に接続され、それぞれ、吐出駆動信号及び吐出に必要な電力を素子基板10に供給する。電気配線基板90内の電気回路によって配線を集約することで、信号出力端子91及び電力供給端子92の数を素子基板10の数に比べて少なくすることができる。これにより、記録装置1に対して記録ユニット3を装着する時又は記録ユニット3の交換時に、取外しが必要となる電気接続部の数を少なくすることができる。
【0016】
素子基板10上には、各々の吐出口(ノズル)に対応して不図示の電気熱変換素子(ヒータ)が設けられており、個々の電気熱変換素子は、通電されることによりインクを加熱して発泡させ、その発泡エネルギーで該インクを吐出口から吐出させる。
【0017】
尚、ここでは記録ユニットとしてライン型の記録ヘッドを例示したが、シリアル型の記録ヘッドが用いられてもよいし、或いは、インクジェット方式とは異なる方式が採用されてもよい。
【0018】
<記録装置のシステム構成の例>
図3は、記録装置1の制御回路の構成を示すブロック図である。記録装置1は、記録ユニット3の駆動制御を統括するプリントエンジンユニット417と、スキャナ部の駆動制御を統括するスキャナエンジンユニット411と、記録装置1全体の駆動制御を統括するコントローラユニット410と、を備える。
【0019】
プリントエンジンユニット417は、プリントコントローラ419、ROM(Read-Only Memory)420、RAM(Random Access Memory)421、コントローラI/F(インタフェース)418、画像処理コントローラ422、ヘッドI/F427、搬送制御部426、ヘッドキャリッジ制御部425、インク供給制御部424、及び、メンテナンス制御部423を含む。
【0020】
スキャナエンジンユニット411は、スキャナコントローラ415、コントローラI/F414、搬送制御部413、センサ416、及び、RAM412を含む。
【0021】
コントローラユニット410は、メインコントローラ401、ROM407、RAM406、ホストI/F402、ワイヤレスI/F403、画像処理部408、プリントエンジンI/F405、操作パネル404、及び、スキャナエンジンI/F409を含む。
【0022】
プリントコントローラ419は、MPU(マイクロプロセッシングユニット)や不揮発性メモリ(例えばEEPROMなど)を内蔵し、コントローラユニット410のメインコントローラ401の指示に従ってプリントエンジンユニット417の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット411の各種機構は、コントローラユニット410のメインコントローラ401によって制御される。
【0023】
コントローラユニット410において、CPUにより構成されるメインコントローラ401は、ROM407に格納されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM406を作業領域としながら記録装置1の全体を制御する。例えば、ホストI/F402またはワイヤレスI/F403を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力される。これに応じて、画像処理部408は、メインコントローラ401の指示に従って、印刷ジョブに含まれ又は印刷ジョブと共に入力された画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ401は、プリントエンジンI/F405を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット417へ送信する。
【0024】
なお、記録装置1は、無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えば、ホスト装置400から読取命令が入力されると、メインコントローラ401は、スキャナエンジンI/F409を介してこの命令をスキャナエンジンユニット411に送信する。
【0025】
操作パネル404は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うためのユニットであり、
図1の操作パネル100に対応する。ユーザは、操作パネル404を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、記録モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0026】
プリントエンジンユニット417では、CPUにより構成されるプリントコントローラ419が、ROM420に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM421を作業領域として、プリントエンジンユニット417の各種機構を制御する。
【0027】
コントローラI/F418を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ419は、これを一旦RAM421に保存する。記録ユニット3が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ419は、画像処理コントローラ422により、上記保存された画像データを記録データに変換する。記録データが生成されると、プリントコントローラ419は、ヘッドI/F427を介して記録ユニット3に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ419は、搬送制御部426を介して各搬送部(後述)を駆動して、記録媒体であるロールシートを搬送する。プリントコントローラ419の指示に従って、この搬送動作に連動して記録ユニット3による記録動作が実行されることにより、該ロールシートへの記録処理が行われる。
【0028】
ヘッドキャリッジ制御部425は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ユニット3の向きや位置を変更する。インク供給制御部424は、記録ユニット3へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、液体供給ユニット(不図示)を制御する。メンテナンス制御部423は、記録ユニット3に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット(不図示)におけるキャップユニットやワイピングユニットの動作を制御する。
【0029】
スキャナエンジンユニット411においては、メインコントローラ401が、ROM407に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM406を作業領域としながら、スキャナコントローラ415のハードウェア資源を制御する。これにより、スキャナエンジンユニット411が備える各種機構は制御される。例えば、コントローラI/F414を介してメインコントローラ401は、スキャナコントローラ415内のハードウェア資源を制御して、ユーザによってADF(Auto Document Feeder(不図示))に積載された原稿を搬送制御部413により搬送し、センサ416によって読み取る。そして、スキャナコントローラ415は、読み取られた画像データをRAM412に保存する。
【0030】
なお、プリントコントローラ419は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ユニット3に、スキャナコントローラ415で読み取られた画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0031】
<記憶媒体の搬送機構の構成例>
図4は、記録装置1の側面模式図であり、ロールシートの搬送機構を構成する主要素が示される。収納部4aにはロールシートR1が装填され、収納部4bにはロールシートR2が装填される。ユーザが収納部4aにおける破線の部分にロールシートR1を装填すると、網掛された部分にロールシートR1が回転移動して記録装置1に固定され取り付けられる。同様に、ユーザが収納部4bにおける破線の部分にロールシートR2を装填すると、網掛された部分にロールシートR2が回転移動して記録装置1に固定され取り付けられる。
【0032】
例えば、ロールシートR1に画像を記録する場合、収納部4aの回転軸に取り付けられた給送モータ(不図示)が駆動され、ロールシートR1の先端が送り出され、その先端が送出センサ21により検出されると、給送ローラ対23によりニップされる。そして、給送ローラ対23の回転によりロールシートR1の先端がさらに搬送され、カッターユニット25によりロールシートR1の先端部が切断され、その形状がトリミングされる。詳細については後述とするが、カッターユニット25は主にコントローラユニット410により駆動制御される。
【0033】
同様に、ロールシートR2に画像を記録する場合には、収納部4bの回転軸に取り付けられた給送モータ(不図示)が駆動され、ロールシートR2の先端が送り出され、その先端が送出センサ22により検出されると、給送ローラ対24によりニップされる。そして、給送ローラ対24の回転によりロールシートR2の先端がさらに搬送され、カッターユニット26によりロールシートR2の先端部が切断され、その形状がトリミングされる。カッターユニット25同様、カッターユニット26は主にコントローラユニット410により駆動制御される。
【0034】
カッターユニット25及び26のいずれかにより先端がトリミングされたロールシートはさらに矢印の方向に送り出され、その先端が先端検出センサ27により検出されると、個々の搬送ローラが駆動されて回転を始める。そして、搬送ローラ28によりその先端がニップされたロールシートはさらに搬送されてLFローラ29に達する。ロールシートの先端がLFローラ29にニップされると、ロールシートの搬送はLFローラ29と搬送ローラ28とにより行われ、該ロールシートは搬送ベルト41の上を搬送される。なお、先端検出センサ27の近傍には固定ガイド30が設けられており、これによりロールシートの円滑な搬送をサポート可能とする。
【0035】
この時、搬送ローラ28の回転速度(V)がLFローラ29の回転速度(V0)より大きくなるようにローラ28及び29を制御すると、
図4に破線で示されるようにロールシートに撓み(以下、ループという。)31が形成される。ここで、搬送ローラ28とLFローラ29との間には、搬送ローラ28からLFローラ29へのロールシートの搬送をガイドするガイド部として、変位によりループ31の形成の可否を変更可能に構成されたフラッパー32が設けられる。より詳細には、フラッパー32は、一端部が固定され且つ該固定された箇所を回転軸として回転自在となっており、フラッパー32が回転することにより、ループ31の形成が妨げられないようになっている。
【0036】
即ち、フラッパー32は、一端部が回転軸として軸支されており、閉状態ではループ31が形成されないようにロールシートの搬送をガイドする。その間、搬送ローラ28とLFローラ29とは互いに実質的に等しい回転速度で駆動される(V=V0)。また、フラッパー32は、回転により開状態に変位することでループ31が形成されるようにロールシートの搬送をガイドする。その間、搬送ローラ28は、LFローラ29より大きい回転速度で駆動される(V>V0)。
【0037】
ループ31が所定の基準を満たすように形成された後、搬送ローラ28の回転速度VをLFローラ29の回転速度V0と等しくする(V=V0)。これにより、ループ31が維持された状態でロールシートはさらに搬送され、該ロールシートは記録ユニット3の下部とプラテン40との間の記録位置に達することとなる。その後、該搬送されるロールシートに対して記録ユニット3による記録が開始される。
【0038】
詳細については後述とするが、カッターユニット25又は26によりロールシートを切断する場合には、LFローラ29の回転速度V0を維持しながら搬送ローラ28の駆動を抑制し/搬送ローラ28を停止させ(V=0)、その間に、カッターユニット25又は26を駆動する。これにより、ループ31が縮小している間にロールシートが切断されることとなる。その際、搬送ローラ28の駆動が抑制されているため、ロールシートの切断面をシート幅の方向に一致させることが可能となる。また、LFローラ29の回転速度V0が維持されているため、カッターユニット25又は26によるロールシートの切断と並行して、記録ユニット3による該ロールシートへの記録を行うことが可能となる。
【0039】
プラテン40は、
図4に示されるように、ロールシートの搬送方向における記録ユニット3の上流側と下流側との間において搬送ベルト41の下部に設けられおり、ダクト42を介して吸引ファン43に接続される。このような構成により、吸引ファン43を動作させてダクト42の内部の空気を吸引して負圧を発生させることでプラテン40に設けられた孔を通してロールシートを搬送ベルト41に密着させ、搬送中のロールシートが浮き上がることを防止可能とする。
【0040】
尚、本明細書において、上流側および下流側は、ロールシートの搬送経路(以下、単に搬送経路という。)における2つの要素間の相対的な位置関係を示す表現とする。即ち、下流側は、ロールシートの搬送方向(以下、単に搬送方向という。)の側を示し、上流側は、搬送方向とは反対の側を示すものとする。
【0041】
また、記録ユニット3の上流側には回復ユニット51が設けられ、記録ユニット3の下流側にはキャップ52と乾燥ユニット53とが設けられる。
図4に矢印で示されるように、回復ユニット51は搬送方向に移動可能に構成され、キャップ52は回転軸52aの周りに回転可能に構成される。さらに、記録ユニット3は、前述のとおり、記録媒体であるロールシートの幅に相当する記録幅を有し、また、記録中においては固定され、記録動作以外の場合には、
図4に矢印で示されるように上下方向に移動可能に構成される。
【0042】
このような構成により、例えば、記録ユニット3の吐出状態を回復させる場合、記録ユニット3は上方に移動し、これにより作られた空間に回復ユニット51を移動させる。その後、回復ユニット51は、記録ユニット3のインク吐出面をワイピングしたり、その吐出口を吸引したり、記録ヘッド3を予備吐出させたりすることにより、所定の回復動作を実行する。
【0043】
一方、記録動作も回復動作も行わない場合、記録ユニット3は上方に移動させ、それにより形成される空間(記録ユニット3の下方)にキャップ52を回転させて移動させる。これにより、キャップ52により記録ヘッド3をキャップし、記録ユニット3のインク吐出面の乾燥を防止可能とする。
【0044】
また、乾燥ユニット53は、ロールシートの表面を加熱して、記録ユニット3によるインク吐出により記録済となったロールシートを乾燥させる。これにより、記録により濡れた状態のロールシートがさらに搬送されて装置内部(特にロールシートの搬送経路)がインクにより汚染されるのを防止可能とする。さらに、記録ユニット3の上部には、ファン54とダクト55とが設けられ、ファン54を動作させることでダクト55を介して矢印の方向に外部の空気を送出し、それにより記録済のロールシートの乾燥を促進させる。
【0045】
ロールシートの搬送方向の記録長(L)は、操作パネル100からのユーザ指示、または、ホスト装置400からの指示のいずれかにより定められ、ロールシートは、記録長Lに応じた位置で切断される。即ち、カッターユニット25及び26のいずれかにより先端がトリミングされたロールシートが、その先端から記録長Lに応じた量だけ搬送された後、その後端がカッターユニット25及び26のいずれかにより切断される。
【0046】
前述のとおり、カッターユニット25又は26によりロールシートを切断する間、LFローラ29の回転速度V0は維持される一方で、搬送ローラ28の駆動は抑制され/搬送ローラ28を停止させる(V=0)。これにより、ループ31が縮小している間にロールシートが切断されることとなり、ロールシートの切断面をシート幅の方向に一致させることが可能となる。また、LFローラ29の回転速度V0は維持されているため、ループ31が縮小している間、記録ユニット3による該ロールシートへの記録は適切に継続可能である。
【0047】
記録ユニット3により記録済となったロールシートは、その後端がカッターユニット25又は26により切断された後(以下、該切断された部分をカットシートという。)、背面バスケット60又は前面スタッカ61に排出される。カットシートの排出位置の選択(背面バスケット60及び前面スタッカ61の何れにカットシートを排出するか)は、操作パネル100からのユーザ指示、または、ホスト装置400からの指示のいずれかにより行われる。
【0048】
背面バスケット60にカットシートが排出される場合、フラッパー62が回転し、背面バスケット60の方向に搬送経路を形成する。これにより、カットシートは搬送ベルト41の回転により搬送され、
図4に破線で示されるように背面バスケット60へと落下する。なお、シートセンサ63からの出力信号により、カットシートの先端検出、通過中の検出および後端検出が行われる。
【0049】
これに対して、前面スタッカ61にカットシートが排出される場合、フラッパー62が回転して破線で図示される位置に移動し、前面スタッカ61の方向に搬送経路を形成する。これにより、カットシートは搬送ベルト41の回転により搬送され、排出ローラ対64に達し、さらに排出ローラ対65に達し、最終的には前面スタッカ61に排出される。なお、前面スタッカ61までの搬送経路には、シートセンサ66及び67、並びに、排出センサ68が設けられ、カットシートの排出状況が検出される。また、排出ローラ対65と排出センサ68との間には、後端押えレバー69が設けられ、カットシートの後端が跳ねることを防止し、円滑なカットシートの排出をサポート可能とする。
【0050】
なお、詳細な説明については省略とするが、スキャナエンジンユニット411は、ユーザが画像原稿を実線の矢印方向に挿入することで、その画像を読取り可能とする。
【0051】
上述のセンサ21等、所定の対称を検出するための個々の要素は、単に検出部と称されてもよいし、区別のため、第1検出部、第2検出部等と表現されてもよい。また、ローラ対23等、記録媒体(ロールシートまたはカットシート)を搬送するための個々の要素は、単に搬送部と称されてもよいし、区別のため、第1搬送部、第2搬送部等と表現されてもよい。また、以下の説明において、ロールシート及びカットシートは、特に区別を要しない場合には単にシートと表現されうる。これらのことは以下で説明される内容についても同様とする。
【0052】
<第1実施形態>
図5A~
図5Cは、ループ31が形成される空間(空間SP1とする。)およびその周辺の領域における記録装置1の構成を示す拡大模式図である。ここでは、フラッパー32は、ループ31が形成されるように開状態となっているものとする。また、図中において、ロールシートは一点鎖線で示されるものとする。
【0053】
記録装置1は、ループセンサ511および平坦度センサ512を更に備える。ループセンサ511は、搬送経路における搬送ローラ28とLFローラ29との間に配され、ループ31の有無およびその態様を検出可能とする。平坦度センサ512は、LFローラ29の下流側に配され、搬送ベルト41上におけるシートの平坦度を検出可能とする。ループセンサ511および平坦度センサ512には、シートまでの距離を計測可能及び/又は該距離の分布を所定範囲に亘って検出可能な公知のセンサ、例えば光学式センサ、赤外線センサ等、が用いられればよい。
【0054】
コントローラユニット410は、判定部521、信号出力部522および切断制御部523を更に含む。詳細については後述とするが、判定部521は、ループセンサ511の検出結果および平坦度センサ512の検出結果に基づいて、ループ31が適切に形成されたか否か等を判定する。信号出力部522は、判定部521の判定結果に基づいて所定の信号を出力する。切断制御部523は、信号出力部522の信号に基づいてカッターユニット25又は26を駆動制御する。
【0055】
図5Aは、搬送ローラ28とLFローラ29との間にループ31が適切に形成されており、LFローラ29の下流においてジャム(シートに生じうる皺。紙の場合には紙詰まり。)も発生していない場合を示す。この場合、ループセンサ511は、検出範囲におけるロールシートまでの距離が基準値より大きいことに基づいて、ループ31の態様が基準を満たしていることを示す信号(例えば信号値1の信号)を出力する。また、平坦度センサ512は、検出範囲におけるロールシートまでの距離のばらつきが許容範囲内であることに基づいて、ジャムが発生していないことを示す信号(例えば信号値1の信号)を出力する。
【0056】
図5Bは、搬送ローラ28とLFローラ29との間にループ31が適切に形成されずにジャム(図中にてJ1と示す。)が発生している場合を示す。この場合、ループセンサ511は、検出範囲におけるロールシートに該ロールシートまでの距離が基準値より小さい部分が存在することに基づいて、ループ31の態様が基準を満たしていないことを示す信号(例えば信号値0の信号)を出力する。尚、
図5Bの場合においては、平坦度センサ512は、ジャムが発生していないことを示す信号(例えば信号値1の信号)を出力する。
【0057】
図5Cは、搬送ローラ28とLFローラ29との間にループ31が適切に形成されず且つLFローラ29の下流においてジャム(図中にてJ2と示す。)が発生している場合を示す。この場合、ループセンサ511は、検出範囲におけるロールシートに該ロールシートまでの距離が基準値より小さい部分が存在することに基づいて、ループ31の態様が基準を満たしていないことを示す信号(例えば信号値0の信号)を出力する。また、平坦度センサ512は、検出範囲におけるロールシートまでの距離のばらつきが許容範囲外であることに基づいて、ジャムが発生していることを示す信号(例えば信号値0の信号)を出力する。
【0058】
判定部521は、ループセンサ511および平坦度センサ512から、それらの検出結果を示す信号を受け取り、搬送中のロールシートが
図5A~
図5C記載の場合の何れの状態かを、該信号に基づいて判定する。判定部521の判定結果に基づいて、信号出力部522は、該判定結果に対応する信号を出力する。
【0059】
例えば、
図5Aの場合、信号出力部522は、搬送制御部426がローラ28及び29によりロールシートの搬送を継続し、切断制御部523がカッターユニット25又は26によりロールシートの切断を行う、ことを指示する信号を出力する。また、ロールシートの搬送は適切に実現されているため、該ロールシートに対する記録ユニット3による記録も行われる。
【0060】
例えば、
図5Bの場合、信号出力部522は、搬送制御部426がローラ28及び29によるロールシートの搬送を中断し、切断制御部523がカッターユニット25又は26によるロールシートの切断を行わない、ことを指示する信号を出力する。また、ロールシートの搬送が適切に実現されていないため、該ロールシートに対する記録も中断され、そのことを示す情報が、所定の通知部により(本実施形態では操作パネル100に表示されることにより)ユーザに通知されうる。
【0061】
例えば、
図5Cの場合、信号出力部522は、切断制御部523がカッターユニット25又は26によりロールシートの切断を行う、ことを指示する信号を出力する。該切断により搬送経路上に残されたカットシートは、ユーザの手動により除去されてもよいし、或いは、信号出力部522の信号に基づいて搬送制御部426により駆動されたローラ28及び29により搬送されて排出されてもよい。また、
図5Bの場合同様、カットシートの搬送が適切に実現されていないため、該カットシートに対する記録は中断され、そのことを示す情報が操作パネル100に表示され、ユーザに通知されうる。
【0062】
図6は、ループ31の有無およびその態様に基づく記録装置1の制御方法を示すフローチャートである。本フローチャートは、印刷ジョブが入力されたことに応じて、主にコントローラユニット410により実行される。その概要は、搬送中のロールシートが
図5A~
図5C記載の場合の何れの状態かに基づいて、搬送制御部426によりローラ28及び29を駆動制御し、また、切断制御部523によりカッターユニット25又は26を駆動制御する、というものである。尚、本フローチャートの実行の間、記録ユニット3による記録が適宜行われうるが、以下においては説明を省略する。
【0063】
ステップS1000(以下、単に「S1000」という。後述の他のステップについても同様とする。)では、印刷ジョブに基づいて、収納部4a(又は4b)からロールシートR1(又はR2)をローラ対23(又は24)により搬送ローラ28まで送出する。ロールシートが搬送ローラ28に到達したことは、先端検出センサ27により検出可能である。ロールシートが搬送ローラ28に到達したことに応じてS1010に進む。
【0064】
S1010では、フラッパー32を閉状態に維持したまま、ロールシートをLFローラ29まで搬送する。ロールシートがLFローラ29に到達したことは、先端検出センサ27、ループセンサ511及び/又は平坦度センサ512により検出可能である。例えば、ループセンサ511がローラ28及び29の中央部に位置する場合、先端検出センサ27及びループセンサ511間でのロールシートの検出のタイミングの差に基づいて、ロールシートがLFローラ29に到達するタイミングを適切に算出可能である。また、平坦度センサ512は、LFローラ29の下流に配されているため、ロールシートがLFローラ29に到達したことを検出可能である。尚、この段階では、ローラ28及び29は、互いに等しい回転速度で駆動される(V=V0)。
【0065】
ロールシートがLFローラ29に到達したことに応じてS1020に進む。
【0066】
S1020では、ループ31の形成を開始する。このことは、前述のとおり、フラッパー32を回転させて開状態とした後、搬送ローラ28を、LFローラ29より大きい回転速度で駆動すること(V>V0)により実現される。ループ31の形成の開始から所定時間が経過した後、S1030に進む。
【0067】
S1030では、S1020で形成されたループ31が基準を満たすか否かを判定する。この判定は、前述のとおり、ループセンサ511の検出結果に基づいて行われる。ループ31が基準を満たすと判定された場合にはS1040に進み、そうでない場合にはS1070に進む。
【0068】
S1040では、S1030にてループ31が基準を満たすと判定されたことに応じて、S1020で形成されたループ31を維持しながら、ローラ28及び29によりロールシートを更に搬送する。このことは、前述のとおり、搬送ローラ28の回転速度VをLFローラ29の回転速度V0と等しくすることで実現可能である(V=V0)。その後、ロールシートが、その先端から記録長Lに応じた量だけ搬送されたことに応じて、S1050に進む。
【0069】
S1050では、カッターユニット25(又は26)によりロールシートを切断する。このことは、前述のとおり、LFローラ29の回転速度V0を維持しながら搬送ローラ28の駆動を抑制し/搬送ローラ28を停止させ(V=0)、その間(ループ31が縮小している間)に行われる。ロールシートの切断後、S1060に進む。
【0070】
S1060では、S1050で得られたカットシートをLFローラ29により搬送し、記録装置1本体から排出させる。
【0071】
S1070では、S1030にてループ31が基準を満たさないと判定されたことに応じて、ジャムの有無を判定する。この判定は、前述のとおり、ループセンサ511および平坦度センサ512の検出結果に基づいて判定部521により行われる(
図5B及び
図5C参照)。ここでは説明の容易化のため、ジャムは、
図5Bの場合および
図5Cの場合の何れかのものが発生するものとする。ジャムが発生したと判定された場合にはS1080に進み、ジャムが発生していないと判定された場合にはS1110に進む。
【0072】
S1080では、S1030にてループ31が基準を満たさないと判定され、S1070にてジャムが発生したと判定されたことに応じて、ジャムの種類を判定部521により判定する。ジャムの種類が
図5Bの場合(ジャムJ1の場合)にはS1090に進み、
図5Cの場合(ジャムJ2の場合)にはS1100に進む。
【0073】
S1090では、S1080にて
図5B記載のジャムJ1が発生したと判定されたことに応じて、ローラ28及び29によるロールシートの搬送を中断し、カッターユニット25又は26によるロールシートの切断を行わない。付随的に、ジャムJ1が発生したことが操作パネル100によりユーザに通知される。また、搬送経路上に残されたロールシートをユーザの手動により除去するべきことが付随的に通知されうる。
【0074】
S1100では、S1080にて
図5C記載のジャムJ2が発生したと判定されたことに応じて、カッターユニット25又は26によりロールシートの切断を行う。付随的に、ジャムJ2が発生したことが操作パネル100によりユーザに通知される。また、該切断により搬送経路上に残されたカットシートをユーザの手動により除去するべきことが付随的に通知され、或いは、該カットシートはローラ28及び29により搬送されて排出されうる。
【0075】
S1110では、S1030にてループ31が基準を満たさないと判定されたにも関わらず、S1070にてジャムが発生していないと判定されたことに応じて、本実施形態ではS1090同様の制御を行う。即ち、ここでは、ローラ28及び29によるロールシートの搬送を中断し、カッターユニット25又は26によるロールシートの切断を行わないものとする。尚、他の実施形態として、ロールシートに生じた事象(例えば、ジャムJ1及びJ2の双方が同時に発生している場合等)を個別具体的に更に判定することにより、他の制御が実行されてもよい。
【0076】
以上、本実施形態によれば、搬送制御部426は、LFローラ29(第1搬送部)と搬送ローラ28(第2搬送部)との間においてループ31が形成されるように(シートが撓むように)、ローラ28及び29を個別に駆動制御する。そして、ループセンサ511(検出部)により、ループ31が基準を満たしているか否かを検出し、その検出結果に基づいて、信号出力部522は所定の信号を出力する。例えば、ループ31が適切に形成されていないことを信号出力部522の信号が示す場合、第1実施形態においては、切断制御部523はカッターユニット25及び26の駆動を抑制する。これにより、意図しない態様でシートが切断されること、それに伴うカッターユニット25及び26の損傷、シートが無用に使用されること等を防止可能となる。
【0077】
例えば、ループ31が基準を満たすことを示す第1信号(例えばイネーブル信号)が信号出力部522により出力された場合、搬送制御部426はLFローラ29の駆動を維持しながら搬送ローラ28の駆動を抑制する。そして、その間、切断制御部523はカッターユニット25又は26を駆動する。一方、ループ31が基準を満たさないことを示す第2信号(例えばディセーブル信号)が信号出力部522から出力された場合、搬送制御部426はローラ28及び29の駆動を抑制する。そして、切断制御部523はカッターユニット25及び26の駆動を抑制する。
【0078】
付随的に、本実施形態では、更に平坦度センサ512の検出結果に基づいて判定部521によりジャムの有無およびその態様を判定可能とした。その判定結果に基づいて、搬送制御部426は、ローラ28及び29の駆動の実行の可否を決定し、切断制御部523は、カッターユニット25及び26の駆動の実行の可否を決定する。これにより、シートの搬送が適切に実現されているか否か、及び、その態様に基づいて、該シートの搬送を継続し、若しくは、該搬送を中断し、及び/又は、該シートを切断して排出し、若しくは、該切断を実行しないことが可能となる。尚、ループ31についての判定のみを行う場合(ジャムについての判定を省略する場合)には平坦度センサ512は設けられなくてもよい。
【0079】
<第2実施形態>
前述の第1実施形態では、ループ31が適切に形成されているか否かをループセンサ511により検出することを述べた。第1実施形態では、ループセンサ511の検出結果に基づいて、搬送制御部426によるローラ28及び29の駆動制御、及び/又は、切断制御部523によるカッターユニット25及び26の駆動制御が行われる。しかしながら、ループセンサ511の用途は、これに限られるものではない。
【0080】
例えば、ループセンサ511には、第1実施形態では、シートまでの距離を計測可能及び/又は該距離の分布を所定範囲に亘って検出可能なものが用いられたが、他の用途においては、より簡素なものが用いられうる。以下に述べる第2実施形態では、ループセンサ511には、ロールシートの有無を検出可能なシートセンサ(区別のため、シートセンサ511とする。)が用いられるものとし、そのようなセンサによってもループ31を適切に形成可能となる。
【0081】
図7は、第2実施形態に係る記録装置1の制御方法を示すフローチャートである。本フローチャートは、印刷ジョブが入力されたことに応じて、主にコントローラユニット410により実行される。その概要は、シートセンサ511の検出結果に基づいてフラッパー32を閉状態から開状態に変位させてル-プ31の形成を開始し、付随的に搬送ローラ28の駆動態様を変更する、というものである。尚、本フローチャートの実行の間、記録ユニット3による記録が適宜行われうるが、以下においては説明を省略する。
【0082】
S2000では、S1000同様(
図6参照)、印刷ジョブに基づいて、収納部4a(又は4b)からロールシートR1(又はR2)をローラ対23(又は24)により搬送ローラ28まで送出する。ロールシートは、搬送ローラ28に到達した後、閉状態のフラッパー32によりガイドされてLFローラ29に向けて搬送される。
【0083】
S2010では、上記搬送されたロールシートがシートセンサ511を通過したか否かを判定する。前述のとおり、シートセンサ511はロールシートの有無を検出可能であるため、該判定はシートセンサ511の検出結果に基づいて行われる。ロールシートがシートセンサ511を通過したものと判定された場合にはS2020に進み、そうでない場合にはS2010に戻る。
【0084】
S2020では、ループ31の形成を開始する。このことは、フラッパー32を閉状態から開状態に変位させながら、搬送ローラ28を、LFローラ29より大きい回転速度で駆動すること(V>V0)により実現される。後述の他の回転速度との区別のため、このときの搬送ローラ28の回転速度Vを第1の回転速度(V1)とする(即ち、V=V1(>V0))。
【0085】
S2030では、ループ31の形成が適切に開始されたか否かを判定する。前述のとおり、シートセンサ511はロールシートの有無を検出可能であるため、該判定はシートセンサ511の検出結果に基づいて行われる。より詳細には、S2000にて閉状態のフラッパー32によりガイドされ且つS2010にてシートセンサ511を通過したロールシートが、シートセンサ511から離間したか否かに基づいて、上記判定が行われることとなる。ループ31の形成が適切に開始されたと判定された場合にはS2040に進み、そうでない場合にはS2030に戻る。
【0086】
S2040では、ループ31の形成が適切に開始されたと判定されたことに応じてループ31の形成を継続し、即ち、ループ31が所望の態様で形成されるように(例えば、所要時間内に所望の大きさとなるように)、ローラ28及び29の駆動を継続する。本実施形態では、ローラ28及び29の回転速度V1及びV0が所定時間に亘って維持されるものとするが、付随的に、搬送ローラ28の駆動態様が変更されてもよく、例えば回転速度Vは他の回転速度(Vx)に変更されてもよい(但し、Vx>V0とする。)。
【0087】
S2050では、ループ31の形成を完了とし、該ループ31を維持しながらロールシートの搬送を継続する。このことは、前述のとおり、搬送ローラ28の回転速度VをLFローラ29の回転速度V0と等しくすることで実現可能である(V=V0)。その後、ロールシートが、その先端から記録長Lに応じた量だけ搬送されたことに応じて、S2060に進む。
【0088】
その後、S2060では、S1050同様(
図6参照)、カッターユニット25(又は26)によりロールシートを切断する。このことは、前述のとおり、LFローラ29の回転速度V0を維持しながら搬送ローラ28の駆動を抑制し/搬送ローラ28を停止させ(V=0)、その間に行われる。ロールシートの切断後、S2070では、S1060同様(
図6参照)、S2060で得られたカットシートをLFローラ29により搬送し、記録装置1本体から排出させる。
【0089】
本フローチャートによれば、シートセンサ511を比較的簡素なものとしながら、ループ31を適切に形成可能となる。シートセンサ511の用途は上述の例に限られるものではなく、本フローチャートの内容は、その趣旨を逸脱しない範囲で変更されてもよい。
【0090】
例えば、S2040では、搬送ローラ28の駆動力及び/又は駆動時間が変更されてもよい。このことは、一例として、搬送ローラ28による搬送量誤差を算出することにより行われる。例えば、S2000~S2010では、搬送ローラ28はLFローラ29の回転速度V0と等しい回転速度で駆動されるが(V=V0)、搬送ローラ28ではロールシートの搬送滑りが生じ得、このことは搬送ローラ28による搬送量誤差をもたらすこととなる。このことは、ループ31を所望の態様で形成することを妨げる原因ともなりうる。
【0091】
ここで、先端検出センサ27及びシートセンサ511間の距離(D)は予め特定可能である。そのため、それらセンサ27及び511間でのロールシートの検出のタイミングの差に基づいて、搬送ローラ28による搬送量の理論値と実測値との差を算出可能であり、該算出の結果に基づいて、搬送ローラ28の回転速度の実効値(V0a)が算出可能である。即ち、上記搬送滑りの度合い(或いは搬送量誤差)は搬送ローラ28の回転速度の実効値V0aに等価換算可能、と云える。
【0092】
例えば、先端検出センサ27によるロールシートの検出のタイミングをT1とし、シートセンサ511によるロールシートの検出のタイミングをT2とする。このとき、センサ27及び511間の距離Dを用いて、上記搬送滑りの度合いは、評価値E(≡V0a/V0)として、
E={D/(T2-T1)}/V0
と評価可能である。この評価値Eに基づいて、S2040では、搬送ローラ28の駆動態様を変更ないし調整することが可能であり、例えば、搬送ローラ28の駆動力が変更され、及び/又は、搬送ローラ28の駆動時間が変更されうる。
【0093】
以上、本実施形態によれば、搬送制御部426は、LFローラ29(第1搬送部)と搬送ローラ28(第2搬送部)との間においてループ31を形成する(シートを撓ませる)のに際して、信号出力部522の信号に基づいて各要素の駆動制御を行う。また、ループ31の形成が開始された後には、付随的に、搬送ローラ28の駆動態様を変更することも可能である。搬送ローラ28の駆動態様を変更することの例として、搬送ローラ28の駆動力を変更すること、搬送ローラ28の駆動時間を変更すること等が挙げられる。これにより、ループ31を所望の態様で形成することが可能となる。
【0094】
本実施形態においては、シートセンサ511(第1検出部)は、シートの通過を検出可能であり、また、先端検出センサ27(第2検出部)は、収納部4a/4bから搬送されたシートが搬送ローラ28に到達したことを検出可能である。このような構成において、搬送制御部426は、フラッパー32(ガイド部)が閉状態(ループ31を発生させない状態)の間、センサ27及び511間における検出の時間差に基づいて、搬送ローラ28において発生したシートの搬送量誤差を算出する。搬送制御部426は、該算出の結果に基づいて信号出力部522に所定の信号を出力させ、それにより搬送ローラ28の駆動態様を変更することができる。
【0095】
第1~第2実施形態の内容は相互に組合せ可能である。例えば、S2030では、シートセンサ511の検出結果に基づいて(ロールシートがシートセンサ511から離間したか否かに基づいて)、ループ31の形成が適切に開始されたか否かを判定することとした。しかしながら、所定時間が経過してもS2040が開始されない場合には、第1実施形態同様(
図6のS1070~S1110参照)、ジャムの発生の有無等の判定が行われてもよい。例えば、
図5Aの場合(ループ31が適切に形成されている場合)には、シートセンサ511はロールシートが存在しないことを検出することとなる。これに対して、
図5Bの場合(ジャムJ1の場合)及び
図5Cの場合(ジャムJ2の場合)には、シートセンサ511はロールシートが存在することを検出することとなる。
【0096】
以上で例示された第1~第2実施形態およびそれらの変形例によれば、ローラ28及び29間に配されたループセンサ/シートセンサ511の検出結果に基づいて、信号出力部522は所定の信号を出力する。この信号を用いることにより、記録装置1の個々の要素について、該検出結果に応じた適切な駆動制御を行うことが可能となる。信号出力部522の信号は多値化されてもよく、それにより更に多様な効果を図ることも可能である。
【0097】
<プログラム>
本発明は、上記実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、該システム又は装置のコンピュータにおける1以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理により実現されてもよい。例えば、本発明は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によって実現されてもよい。
【0098】
<その他>
上述の説明においては、インクジェット記録方式を用いた記録装置1を例に挙げて説明したが、記録方式は上述の態様に限られるものではない。また、記録装置1は、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであっても良いし、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであっても良い。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であっても良い。
【0099】
また、本明細書でいう「記録」は広く解釈されるべきものである。従って、「記録」の態様は、記録媒体上に形成される対象が文字、図形等の有意の情報であるか否かを問わないし、また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わない。
【0100】
また、「記録媒体」は、上記「記録」同様広く解釈されるべきものである。従って、「記録媒体」の概念は、一般的に用いられる紙の他、布、プラスチックフィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能な如何なる部材をも含みうる。
【0101】
更に、「インク」は、上記「記録」同様広く解釈されるべきものである。従って、「インク」の概念は、記録媒体上に付与されることによって画像、模様、パターン等を形成する液体の他、記録媒体の加工、インクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)等に供され得る付随的な液体をも含みうる。
【0102】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0103】
1:記録装置、3:記録ユニット、4a~4b:収納部、29:LFローラ(第1搬送部)、28:搬送ローラ(第2搬送部)、426:搬送制御部、511:ループセンサ/シートセンサ(検出部)、522:信号出力部。