(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】検出装置、リソグラフィ装置、物品の製造方法、及び検出方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240610BHJP
G03F 9/00 20060101ALI20240610BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240610BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20240610BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
G03F9/00 H
G03F9/00 Z
B29C59/02 Z
G01B11/26 Z
G01B11/00 C
(21)【出願番号】P 2020070721
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】瀧 友和
(72)【発明者】
【氏名】岩井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩之
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-041608(JP,A)
【文献】特開2012-068104(JP,A)
【文献】特開2006-313835(JP,A)
【文献】特開2000-146528(JP,A)
【文献】国際公開第99/050712(WO,A1)
【文献】特開2001-280913(JP,A)
【文献】特開2004-264127(JP,A)
【文献】特開2019-004143(JP,A)
【文献】米国特許第09030661(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 9/00
B29C 59/02
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照明面と光学的に共役な位置に配置され、前記被照明面を照明する
ための照明光を形成する
ための領域と、
前記領域の周囲に形成され前記被照明面で前記照明光を遮光するための領域とを含む光学素子と、
前記被照明面に配置されたマークからの光を受光する受光素子と、
前記光学素子
において前記照明光によって照明された前記マークからの
光が受光された領域の境界を検出することにより、前記光学素子のずれを検出する検出部と、を有することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記光学素子は、前記被照明面を第1の角度分布で照明する照明光を形成する第1の領域と、前記第1の角度分布とは異なる第2の角度分布で前記被照明面を照明する照明光を形成する第2の領域と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
開口絞りと、を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域を離間して配置することで、前記開口絞りにより前記マークの配置面に遮光された領域を形成し、
前記検出部は、前記マークと前記遮光された領域の境界を検出することによって前記光学素子のずれを検出することを特徴とする、請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前
記マークは、ハッチングマークを含むことを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前
記マークは、ラインアンドスペースのマークを含むことを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前
記マークは、互いに直交する2種類のラインアンドスペースのマークを含むことを特徴とする請求項
5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記光学素子のフーリエ変換面に配置された絞りを有することを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記第1の領域と前記第2の領域は前記光学素子にそれぞれ複数設けられていることを有することを特徴とする請求項2又は3に記載の検出装置。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の前記検出装置を有し、前記検出部によって検出された前記ず
れに基づき、型またはレチクルのパターンと基板上の位置合わせを行って前記基板上にパターンを形成するリソグラフィ装置。
【請求項10】
前記型または前記レチクルと前記基板にそれぞれ位置合わせ用のマークを有することを特徴とする請求項
9に記載のリソグラフィ装置。
【請求項11】
請求項
9または
10に記載のリソグラフィ装置を用いて、前記基板上にパターンを形成する工程と、パターンが形成された前記基板を加工することによって物品を製造する工程と、を有することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項12】
被照明面と光学的に共役な位置に配置され、前記被照明面を照明する
ための照明光を形成する
ための領域と、
前記領域の周囲に形成され前記被照明面で前記照明光を遮光するための領域とを含む光学素子と、
前記被照明面に配置されたマークからの光を受光する受光素子と、を有する検出装置を用いる検出方法であって、
前記光学素子
において前記照明光によって照明された前記マークからの
光が受光された領域の境界を検出することにより、前記光学素子のずれを検出する検出工程を有することを特徴とする検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ装置等におけるマークの検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば光硬化型インプリント装置においては、まず、基板の上のインプリント領域であるショットにインプリント材(光硬化性樹脂)を供給する。インプリント材に型(モールド)のパターンを押し付けた状態でインプリント材に光を照射することによってインプリント材を硬化させる。硬化した樹脂から型を引き離すことにより、樹脂のパターンが基板上に形成される。
【0003】
基板上のインプリント材に型のパターンを押印するためには、基板と型との正確な位置合わせを必要とする。インプリント装置における基板と型との位置合わせには、型に形成されたマークと、ショット毎に基板に形成されたマークとを検出することによって位置合わせを行う、いわゆるダイバイダイ方式が知られている。
【0004】
特許文献1には、型と基板とにそれぞれ形成された位置合わせ用のマークを検出し、基板面におけるX方向とY方向の位置を求める検出器を有するインプリント装置が記載されている。具体的には、X方向位置を検出するためのXマークを照明するための照明領域と、
Y方向位置を検出するためのYマークを照明するための照明領域を持ち、それぞれの照明領域でXマークとYマークからの光を1つの撮像素子で撮像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の検出器では、例えば、回折光学素子などの光学素子の取り付け誤差があった場合に、Xマークを照明するための照明領域の外でXマークを検出してしまう可能性がある。その場合には、マーク位置の計測精度が悪化したり、マーク位置の計測自体が失敗したりしてしまう。
【0007】
また、マーク位置をずらしつつ計測を行い、計測精度が良く、計測が成功する場所を手作業で探すことも可能である。しかし、光学素子の取り付け位置が経時変化する場合は、手作業で探す作業を頻繁に行うこととなり、装置の運用コストが増大し、生産性の低下を招いてしまう。
そこで、本発明は、位置検出精度の高い検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検出装置において、
被照明面と光学的に共役な位置に配置され、前記被照明面を照明するための照明光を形成するための領域と、前記領域の周囲に形成され前記被照明面で前記照明光を遮光するための領域とを含む光学素子と、
前記被照明面に配置されたマークからの光を受光する受光素子と、
前記光学素子において前記照明光によって照明された前記マークからの光が受光された領域の境界を検出することにより、前記光学素子のずれを検出する検出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、位置検出精度の高い検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】アライメントマークの照明および検出の様子を示す図である。
【
図4】アライメントマークからの光の検出信号を示す図である。
【
図5】マークの照明光と検出画像との関係を示す図である。
【
図6】アライメントスコープ172の構成を示すである。
【
図8】光学素子1の回折作用を説明するための図である。
【
図9】照明光学系の瞳面における光強度分布を示す図である。
【
図11】アライメントスコープ172による検出信号を示す図である。
【
図12】光学素子の取り付け誤差がある場合について示した図である。
【
図13】ハッチング状の領域ずれ計測用マークを示した図である。
【
図14】横長のラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークを示した図である。
【
図15】縦長のラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークを示した図である。
【
図16】横長と縦長の両方のラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例を用いて説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。
【0012】
図1はインプリント装置の概要図であり、
図1を参照しながら実施例のインプリント装置について説明する。ここでは、リソグラフィ装置の一例として、UV光(紫外光)の照射によってインプリント材(樹脂)を硬化させるUV光硬化型インプリント装置を例に説明する。ただし、他の波長域の光の照射によって樹脂を硬化させるインプリント装置や、他のエネルギー(例えば、熱)によって樹脂を硬化させるインプリント装置に適用することも可能である。
また、リソグラフィ装置の一例として、原板(マスク、レチクル)を介して基板を露光してパターンを形成する露光装置であってもよい。リソグラフィ装置の一例として、凹凸パターンがない平面部を有するモールド(平面テンプレート)を用いて基板の組成物を平坦化するように成形する平坦化装置であってもよい。また、リソグラフィ装置の一例として、荷電粒子光学系を介して荷電粒子線(電子線やイオンビームなど)で基板に描画を行って、基板にパターン形成を行う描画装置などの装置であってもよい。
【0013】
インプリント装置100は、インプリント処理を繰り返すことによって基板W(ウエハ)上の複数のショット領域にパターンを形成するように構成されている。ここで、インプリント処理は、型(モールド)Mのパターン部をインプリント材に接触させて、押し付けた(押印)状態で該インプリント材を硬化させることによって基板W上の1つのショット領域にパターンを形成する処理である。インプリント装置100は、硬化ユニット120と、型操作機構130と、型形状補正機構140と、基板駆動部160と、検出器170と、塗布機構180と、観察スコープ190と、制御部CNTとを含む。制御部CNTにはコンピュータとしてのCPUが内蔵されており、制御部CNTはメモリに記憶されたプログラムに基づき装置全体の各種動作を実行させる制御手段として機能する。
【0014】
また、インプリント装置100は、図示を省略しているが、型操作機構130を保持するためのブリッジ定盤、基板駆動部160を保持するためのベース定盤なども有する。
図1においては、基板Wの表面に平行な面内にX軸及びY軸をとり、X軸とY軸とに垂直な方向にZ軸を取っている。
【0015】
硬化ユニット120は、透明な型Mを通過して、基板W上のインプリント材(樹脂、レジスト)Rに紫外光を照射してそれを硬化させる。インプリント材Rは、紫外光硬化樹脂である。硬化ユニット120は、例えば、光源部110と、光学系112とを含む。光源部110は、例えば、紫外光(例えば、i線、g線)を発生する水銀ランプなどの光源と、該光源が発生した光を集光する楕円鏡とを含む。
【0016】
光学系112は、インプリント材Rを硬化させるための光をショット領域内のインプリント材に照射するためのレンズ、アパーチャ、ハーフミラーHMなどを含む。アパーチャは、画角制御や外周遮光制御に使用される。画角制御によって目標とするショット領域のみを照明することができ、外周遮光制御によって紫外光が基板のショット領域を超えて照射されることを制限することができる。
【0017】
光学系112は、型を均一に照明するためにオプティカルインテグレータを含んでもよい。アパーチャによって範囲が規定された光は、光学系112内の結像光学系と型Mを介して、型Mとインプリント材Rが接触した状態で、基板上のインプリント材Rに入射する。型Mは、例えば、デバイスの回路パターン等の凹凸パターンが3次元状に形成された型である。型Mの材質は、紫外線を透過させることが可能な石英などである。
【0018】
型操作機構130は、例えば、型Mを保持する型チャック132と、型チャック132を駆動することによって型Mを駆動する型駆動機構134と、型駆動機構134を支持する型ベース136とを含む。型駆動機構134は、型Mの位置を6軸に関して制御する位置決め機構、および、型Mを基板W或いはその上のインプリント材Rに押し付けたり、硬化したインプリント材Rから型Mを分離したりする機構を含む。ここで、6軸は、型チャック132の支持面(基板Wを支持する面)をXY平面、それに直交する方向をZ軸とするXYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸およびそれらの各軸回りの回転である。
【0019】
型形状補正機構140は型チャック132に搭載されている。型形状補正機構140は、例えば、空気や油等の流体で作動するシリンダを用いて型を外周方向から加圧することによって型Mの形状を補正することができる。或いは、型形状補正機構140は、型Mの温度を制御する温度制御部を含み、型Mの温度を制御することによって型Mの形状を補正する。基板Wは、熱処理などのプロセスを経ることによって変形(典型的には、膨張又は収縮)しうる。
【0020】
型形状補正機構140は、このような基板Wの変形に応じて、型Mのパターンと基板W上の既パターンとのオーバーレイ誤差が許容範囲に収まるように型Mの形状を補正する。
基板駆動部160は、例えば、基板Wを吸着することで保持する基板チャック162と、基板チャック162を駆動することによって基板Wを駆動する基板ステージ164と、不図示のステージ駆動機構を含みうる。ステージ駆動機構は、基板ステージ164の位置を前述の6軸に関して制御することによって基板Wの位置を制御する位置決め機構を含みうる。
【0021】
検出器(検出装置)170は、例えば、アライメントスコープ172と、ステージ機構174と、光学系175を含む。検出器170は、型Mと基板W上のショット領域との相対位置(位置ずれ)を検出する。アライメントスコープ172は、型Mに形成されているアライメントマークと、基板W上に形成されているアライメントマークとを検出する。
【0022】
ステージ機構174は、基板W上のマークの位置に基づいて、アライメントスコープ172の位置決めを行う。光学系175は、アライメントスコープ172の光路を調整するためのレンズ、アパーチャ、ミラー、ハーフミラーなどを含む。
【0023】
塗布機構180は、基板W上にインプリント材を塗布する。塗布機構180は、インプリント材を収容するタンクと、該タンクから供給路を通して供給されるインプリント材を基板に対して吐出するノズルと、該供給路に設けられたバルブと、供給量制御部とを有しうる。供給量制御部は、典型的には、1回のインプリント材の吐出動作において1つのショット領域にインプリント材が塗布されるように、バルブを制御することによって基板W上へのインプリント材の供給量を制御する。
【0024】
観察スコープ190はショット領域全体を観察するためのスコープであり、ショット領域全体を撮像する撮像素子を有する。観察スコープ190は、型Mとインプリント材Rとの接触状態や、型Mのパターンの凹凸部への、インプリント材Rの充填の進み具合の確認のために使用する。
【0025】
インプリント装置100によるインプリント処理について説明する。制御部CNTは、まず、基板Wを基板チャック162上に搬送させ、この基板Wを基板チャック162上に固定させる。続いて、制御部CNTは、基板ステージ164を塗布機構180による塗布位置へ移動させ、その後、塗布機構180は、塗布工程として基板Wの所定のショット(インプリント領域)にインプリント材Rを吐出することによって塗布する(塗布工程)。次に、制御部CNTは、基板W上の塗布面が型Mの直下に位置するように、基板ステージ164を移動させる。
【0026】
次に、制御部CNTは、型駆動機構134を駆動させ、基板W上のインプリント材Rに型Mを押型(押圧)する(押型工程)。このとき、インプリント材Rは、型Mの押型により型Mに形成されたパターン面に沿って流動する。さらにこの状態で、検出器170は基板W及び型Mに配置されたマークからの光を検出し、検出結果に基づいて制御部CNTは、基板ステージ164の駆動による型Mと基板Wとの位置合わせ、及び型Mの補正機構による補正などを実施する。
【0027】
そして、インプリント材Rの型Mのパターン面への流動(充填)と、型Mと基板Wとの位置合わせ及び型Mの補正等が十分になされた後で、硬化ユニット120は型Mの背面(上面)から紫外線を照射する。これによって、型Mを透過した紫外線によりインプリント材Rが硬化される(硬化工程)。続いて、型駆動機構134を再駆動させ、型Mを基板Wから離型させること(離型工程)により、基板W上のインプリント材Rに型Mの凹凸パターンが転写される。
【0028】
次に、アライメントマークと、従来のアライメントスコープSについて
図2~
図5を用いて説明する。
図2はアライメントマークを示す図であり、マーク観察領域4において、型Mに形成されたアライメントマークとしてのパターン2a、2bと、基板W上の形成されたアライメントマークとしてのパターン3a、3bとが重なった状態を示す。マーク観察領域4は、アライメントスコープSの観察視野である。
【0029】
なお、リソグラフィ装置がレチクルを用いてパターンを基板に形成する露光装置の場合には上記アライメントマーク(位置合わせ用のマーク)としてのパターン2a、2bはレチクルに設けても良い。
パターン2a、2bは、Y方向の格子ピッチP1とX方向の格子ピッチP2とを有するチェッカーボード状の格子パターンである。パターン3a、3bは、X方向にのみP2とは異なる格子ピッチP3を有する格子パターンである。
【0030】
この2つの格子パターンを重ねた状態で、格子パターンからの回折光が干渉して形成されるモアレ縞(干渉光)が検出される。パターン2aとパターン3aは、型Mと基板W(被検物)のX方向の相対位置を検出するためのマーク(第1アライメントマーク)である。
パターン2bとパターン3bは、型Mと基板WのY方向の相対位置を検出するためのマーク(第2アライメントマーク)である。パターン2bのY方向ピッチとパターン3bのY方向ピッチも異なる。
【0031】
図3はアライメントマークの照明および検出の様子を示す図である。従来のアライメントスコープSは、型M上のパターン2a、2bと、基板W上のパターン3a、3bを、
図3に記載の、照明光学系の瞳面上の照明光IL1~IL4で照明する。そして、アライメントスコープSは、型Mを介して検出開口D1を通ったパターン2a、3aからの光およびパターン2b、3bからの光を検出する(スルー・ザ・モールド(TTM)検出)。
【0032】
これにより、パターン2a、3aとパターン2b、3bをアライメントスコープSで同時に観察することができる。
図4はアライメントマークからの光の検出信号を示す図である。パターン2a、3aは照明光IL1及びIL2からの光で照明されて、パターン2a、3aで回折された光が、
図4(A)に記載のモアレ縞信号として撮像素子等で検出される。
【0033】
このモアレ縞信号から、パターン2aとパターン3aの相対位置、つまり、型Mと基板Wの相対位置が求められる。また、パターン2b、3bは照明光IL3及びIL4からの光で照明されて、パターン2b、3bで回折された光が、
図4(B)に記載のモアレ縞信号として検出される。
【0034】
なお、パターン2a、3aの計測を行う為に使用する照明光IL1、IL2と、パターン2b、3bの計測を行う為に使用する照明光IL3、IL4と、によってパターン2a、3a、2b、3bが照明される。つまり、X、Y方向位置の同時計測を行うために、照明光IL1~IL4でマークの同時照明をおこなっている。
【0035】
図4(A)に示したように、X方向位置の計測では、X方向位置の計測に用いない照明光IL3、IL4からの光が、パターン2a、3aのエッジ(端)で散乱してしまい、フレアとなってモアレ縞信号に混入しまう。
図4(C)に、
図4(A)におけるモアレ縞信号の断面における信号強度(撮像素子の受光面上の光強度分布)を示す。
【0036】
パターン2a、3aのエッジによる散乱光がモアレ縞信号に入り、信号強度の端のピークが大きくなって影響が出ていることが分かる。4周期あるモアレ縞信号の内、2周期は散乱光の影響を受けてしまい、位置計測精度に影響が出てしまう。また、Y方向位置の計測についても同様であり、Y方向位置の計測に用いない照明光IL1、IL2からの光がパターン2b、3bのエッジで散乱してしまい、フレア光となってモアレ縞信号に混入してしまうことが分かった。
【0037】
また、一般的に、モアレ縞信号が生じないマークを検出する場合でも、検出に使用しない光が散乱光となり位置計測精度に影響を与えることを、
図5を用いて示す。
図5はマークの照明光と検出画像との関係を示す図である。
図5(A)は、X方向位置計測用のマークとY方向位置計測用のマークである。
図5(B)は、照明光学系の瞳面における照明光IL1、IL2(Y方向の角度分布)でマークを照明したときの、撮像素子で検出されるマークからの光の検出信号(検出画像)を示したものである。
【0038】
照明光IL1、IL2で照明した場合、X方向位置計測用のマークからの光は検出されず、Y方向位置計測用のマークからの光の信号のみが検出される。
図5(C)は、照明光学系の瞳面における照明光IL3、Il4(X方向の角度分布)でマークを照明したときの、マークからの光の検出信号(検出画像)を示したものである。照明光IL3、Il4で照明した場合、Y方向位置計測用のマークからの光は検出されず、X方向位置計測用のマークからの光の信号のみが検出される。
【0039】
図5(D)は、照明光学系の瞳面における照明光IL1、IL2、IL3、IL4で照明したときの、マークからの光の検出信号(検出画像)を示したものである。X、Y方向位置計測用のマークからの光の信号が同時に検出できるが、非計測方向からの照明光によりマークのエッジ部が光り、検出信号に位置計測には不要な散乱光が発生してしまう。
図5(D)では、散乱光を黒太線で示した。散乱光は計測方向における検出信号において強度をもつため、その検出信号を用いると計測誤差となる。
【0040】
次に、上記の問題を解決するアライメントスコープ172の詳細を
図6~9を用いて説明する。アライメントスコープ172は、型Mに形成されたパターン2a、2bと基板W上のパターン3a、3bを照明する照明光学系と、パターン2a、3aからの光およびパターン2b、3bからの光を検出する検出光学系とを有する。アライメントマークとしてのパターンは上述のパターンと同様である。
【0041】
図6はアライメントスコープ172の構成を示すであり、
図6に示すように、照明光学系は、不図示の光源と、光学素子1、照明光学系の瞳面に配置された開口絞り20、分離プリズム30を有し、マーク観察面40(被照明面)を照明する。このマーク観察面40は、基板ステージ164をXやY方向に動かし、型操作機構130をZ下方向に駆動することにより、型Mの表面のみを観察面としても良い。また、型Mを基板W或いはその上のインプリント材Rに押し付けた状態で観察面としても良い。
【0042】
また、型Mが基板Wと非接触の状態で、基板Wの表面を観察面としても良い。また、基板ステージ164上にステージ基準プレート165を配備し、ステージ基準プレート165の表面を観察面としても良い。検出光学系は、受光素子5と、マークからの光を受光素子5の受光面に結像するレンズ系から成る。なお、分離プリズム30は検出光学系を兼用する。
【0043】
マーク観察面40と光学素子1とは光学的に共役な位置関係である。即ち、光学素子1は被照明面と光学的に共役な位置に配置されている。マーク観察面40にあるアライメントマークからの光は、分離プリズム30の透過部(光軸上近傍)を透過して、受光素子5に到達する。X方向位置計測用のマークからの光も、Y方向位置計測用のマークからの光も、同一のレンズ(光学系)を透過し、分離プリズム30の透過部を透過して、受光素子5に到達する。
【0044】
開口絞り20は、光学素子1に対してフーリエ変換面(瞳面)に配置されており、光学素子1からの不要光や0次光を遮光するために使用する。開口絞り20は、アライメントマークの照明に使用したい部分の光を開口部により透過させ、その他は遮光する。開口絞り20の開口を透過した光は分離プリズム30の反射面で反射され、マーク観察面40を照明する。
【0045】
光学素子1は、回折光学素子、マイクロレンズアレイ、空間変調器(Digital mirror array)、プリズムなどの光の角度を偏向させるものを適用することができる。光学素子1は、光源からの光で像面を照明する1つの照明光学系の光路内に配置されている。
【0046】
図7は光学素子1の構成を示す図である。ここでは、回折光学素子の例を示す。光学素子1は、光学素子1に光が垂直に入射したときに、Y方向に回折角度φで回折するA領域(第1の領域)と、X方向に回折角度φで回折するB領域(第2の領域)を有している。即ち、光学素子1は、被照明面を第1の角度分布で照明する照明光を形成する第1の領域と、前記第1の角度分布とは異なる第2の角度分布で前記被照明面を照明する照明光を形成する第2の領域とを含む。
図8は光学素子1の回折作用を説明するための図である。A領域によってY方向に回折角度φで回折した光を
図8(A)に黒丸で示し、B領域によってX方向に回折角度φで回折した光を
図8(B)に黒丸で示す。
【0047】
図9は照明光学系の瞳面における光強度分布を示す図である。A領域に最大入射角度θ/2で入射した光束は、
図9(A)に示すように、瞳面(開口絞り20)の位置において、角度θとY方向の回折角度φをコンボリューションした分布(黒丸)となる。
図9(A)に示す角度分布(第1角度分布)により、マーク観察面40における、A領域に対応する(共役な)位置の部分(第1部分)を照明する。同様にB領域に最大入射角度θ/2で入射した光束は、
図9(B)に示すように、瞳面(開口絞り20)の位置において、角度θとX方向の回折角度φをコンボリューションした分布(黒丸)となる。
【0048】
図9(B)に示す角度分布(第2角度分布)により、マーク観察面40における、B領域に対応する(共役な)位置の部分(第2部分)を照明する。A領域とB領域を1枚のガラス板(1つの光学部材)上に設けられた例を示したが、A領域が形成されたガラス板とB領域が形成されたガラス板を隣接させて構成してもよい。
【0049】
図10は開口絞り20の構成を示す図である。開口絞り20は、アライメントマークの照明に使用したい部分の光を開口部IL1A、IL2A、IL3A、IL4Aにより透過させ、その他は遮光する。開口部IL1A、IL2Aを透過した照明光が、マーク観察面40における、A領域に対応する位置の部分を照明し、開口部IL3A、IL4Aを透過した照明光が、マーク観察面40における、B領域に対応する位置の部分を照明する。光学素子1からの0次光は、開口絞り20の遮光部分で遮光される。
【0050】
アライメントマークを照明する光の角度分布は、マーク観察面40における、A領域に対応する部分ではY方向の角度分布(第1角度分布)、マーク観察面40における、B領域に対応する部分ではX方向の角度分布(第2角度分布)となる。マーク観察面40における、A領域に対応する位置の部分には、パターン2aとパターン3aのような、型Mと基板WのX方向の相対位置を検出するためのマーク(第1アライメントマーク)が配置されている。
【0051】
また、マーク観察面40における、B領域に対応する位置の部分には、パターン2bとパターン3bのような、型Mと基板WのY方向の相対位置を検出するためのマーク(第2アライメントマーク)が配置されている。そのため、第1角度分布で照明された第1アライメントマークからの光と、第2角度分布で照明された第2アライメントマークからの光と、を受光素子5で検出する。
【0052】
このように、アライメントスコープ172により、マーク観察面40における、A領域に対応する部分ではY方向の角度分布の照明光、マーク観察面40における、B領域に対応する部分ではX方向の角度分布の照明光が形成される。つまり、マーク観察面40における、A領域に対応する部分(第1アライメントマーク)はX方向の角度分布の照明光で照明されないため、従来、X方向位置計測用マークの左右で発生していた照明光IL3、4による散乱光は発生しない。
【0053】
また、マーク観察面40における、B領域に対応する部分(第2アライメントマーク)はY方向の角度分布の照明光で照明されないため、従来Y方向位置計測用マークの上下で発生していた照明光IL1、2による散乱光が発生しない。
【0054】
図11はアライメントスコープ172による検出信号を示す図であり、A領域に対応する部分(第1アライメントマーク)のパターン2aとパターン3aで回折された光によるモアレ縞信号のX方向断面における信号強度を示す。信号強度の端において散乱光が無くなることにより、本来の位置計測に用いられる4周期の信号を精度よく検出することが可能となっている。このように、位置計測対象とする方向が互いに異なる複数のマークに対し、互いに異なる照明光(角度分布)で照明することにより、不要な散乱光を発生することなく、アライメントマークからの光を検出することが可能である。
【0055】
このようにアライメントスコープ172の受光素子5により検出された、A領域に対応する部分(第1アライメントマーク)のパターン2aとパターン3aで回折された光によるモアレ縞信号のデータは、制御部CNTなどのデータ処理部へ送信される。そして、データ処理部は、そのモアレ縞信号のデータからピーク位置を特定し、型Mと基板W(ショット領域)のX方向における相対位置を求めることができる。
【0056】
モアレ縞信号のデータには、散乱光による不要光が含まれていないため、S/N比が高いため、位置計測精度の低下を抑えることができる。そして、制御部CNTは、求められた相対位置に基づいて基板ステージ164を駆動して、型Mと基板W(ショット領域)との位置合わせを行う。なお、相対位置を求めることなく、モアレ縞信号のピーク位置に基づいて型Mと基板W(ショット領域)との位置合わせを行ってもよい。
ここで、
図12は光学素子の取り付け誤差がある場合について示した図である。
【0057】
図12に示すようなA~E領域を有する光学素子1の取り付け誤差がある場合を想定する。なお、光学素子1において、例えばA領域とC領域ではY方向の角度分布の照明光、B領域とD領域ではX方向の角度分布の照明光が形成され、E領域ではXY方向の角度分布の照明光が形成されるものとする。
ここで、例えば本来
図12(A)のような配置の光学素子1で照明されるはずが、
図12(B)のように、光学素子1の全ての領域が一様に大幅にずれた状態で取り付けられてしまい、そのまま照明されてしまう場合がある。
【0058】
そのため、各領域がずれると、基板ステージ164やアライメントスコープ172を設計値通りに動かしても、X方向位置計測用マークがA領域の外で照明される可能性がある。また、同様に、Y方向位置計測用マークがB領域の外で照明される可能性がある。このように、領域外でアライメントマークが照明され、その照明されたアライメントマークの信号を受光素子5が受光した場合、マーク位置の計測精度が悪化したり、マーク位置の計測自体が失敗したり、アライメント精度の悪化につながる。
【0059】
なお、
図12(A)、(B)で黒く塗られている部分は遮光された領域であり、照明はされないので、この遮光された領域に対応した位置のマークからは、何も検出されない。そのため、計測用マークが照明されなかった場合は、計測自体が失敗してしまう。
なお、
図6の光学素子1で、例えば、素ガラスの領域を設けると、素ガラスの領域では光が回折されないので、開口絞り20にて素ガラスの領域に入射される光が全て遮光され、マーク観察面40(被照明面)において遮光された領域が形成される。従って
図12において黒く塗られている領域は光学素子1において素ガラスの領域とすることができる。
【0060】
また、マーク観察面40(被照明面)において、計測用マークなどの反射物が無ければ、マーク観察面40で照明光が回折も散乱もしないため、分離プリズム30で照明光が透過せず、照明光を受光素子5が受光できず、全領域が真っ暗な状態で検出される。そのため、
図12(B)のように全ての領域がマーク観察面40のマークからずれてしまった場合、マークが検出されないので領域ずれがどの程度あるのかを調べることも出来ない。
【0061】
そこで、A領域に対応する部分でY方向の角度分布の照明光が形成されている場合、基板ステージ164やアライメントスコープ172を少しずつ動かしてはスコープで観察する作業を行う。これによって、X方向位置計測用マークの設計上の目標位置がA領域に対してどの程度X方向にずれているか調べ、そのずれ量を基板ステージ164やアライメントスコープ172の駆動位置に反映させることができる。
【0062】
このため、光学素子1の取り付け誤差があっても、計測用マークを計測することが可能である。しかし、光学素子1の取り付け位置が経時変化する場合は、手作業で探す作業を頻繁に行うこととなり、装置の運用コストが増大したり、生産性の低下を招いたりする場合がある。
【0063】
図13はハッチング状の領域ずれ計測用マークを示した図である。本実施例では、
図13(A)のようなハッチング状の領域ずれ計測用マークを例えば
図1のステージ基準プレート165の上に配置する。即ち、被照明面としてのステージ基準プレート165の上に配置された領域ずれ計測用マーク(ハッチング状マーク)を有する。
【0064】
そして、ハッチング状の領域ずれ計測用マークを、
図13(B)のように、例えばA領域(第1の領域)とB領域(第2の領域)等で照明しつつ、基板ステージ164やアライメントスコープ172を動かす。それによって、照明されたハッチング状マークの例えば角の2辺を短時間で検出することができる。即ち、アライメントスコープ172は、光学素子1の第1の領域と第2の領域による照明位置をずらしながら領域ずれ計測用マークからの反射光を検出することによって、領域ずれ計測用マークの位置を検出することができる。
【0065】
そして領域ずれ計測用マークの所定の角の2辺が検出できたときの、光学素子1のずれ方向とずれ量を検出することによって、光学素子の取り付け誤差を検出できる。勿論、第1の領域と第2の領域による照明位置をずらさなくても最初から
図13(C)のように、領域ずれ計測用マークの所定の角の位置が検出できれば、光学素子の取り付け誤差を検出できる。
【0066】
このように、検出部としてのアライメントスコープは、光学素子の第1の領域と第2の領域によって照明された領域ずれ計測用マークからの反射光に基づき、光学素子のずれ方向とずれ量を検出している。
なお、
図12~
図16に示すように、第1の領域と前記第2の領域は離れて配置されているので領域ずれ計測用マークの所定の角の2辺を検出しやすくなっている。
【0067】
また第1の領域と第2の領域は光学素子1にそれぞれ複数設けられているので、領域ずれ計測用マークの所定の角の2辺をより短時間で検出しやすいという効果がある。
そして、ハッチング状マークの例えば角の2辺と例えばA領域とB領域の位置関係に基づき、ハッチングマークのずれ方向とずれ量を検出することが出来る。
【0068】
そしてアライメントスコープ(検知部)172で検知した角の2辺の位置の平均値などの統計情報に基づき、光学素子1の取り付け誤差を自動的に算出し、その誤差をゼロに近づけるように自動的に位置制御することが出来る。
即ち、上記のずれ方向とずれ量がわかれば、例えばインプリント装置において、モールドのアライメントマークと基板のアライメントマークに光を照射する際に、予め上記ずれを補正して照射することができる。
【0069】
つまり、例えば
図12(B)のように位置がずれている光学素子からの光を、
図12(A)のような状態になるように、例えば基板ステージ等の位置をずらした上で、アライメントマークに照射することができ、短時間で高精度の位置合わせが可能となる。
なお、前記ずれ方向とずれ量に応じて、基板ステージ等の位置をずらす代わりに、アライメントスコープ172の位置や、光学素子1の位置をずらすようにしても良い。
【0070】
なお、本実施例では、ハッチング状の領域ずれ計測用マーク(ハッチングマーク)を用いているので各セグメントのエッジ部に照明された光が散乱する。
従って、Y方向の角度分布の照明光であっても、X方向の角度分布の照明光であっても、XY方向両方の角度分布の照明光であっても、検出することが可能である。
なお、遮光された領域とハッチングマークの境界を検出する際、A領域とB領域の両方を用いて検出しても良いし、A領域とB領域の一方だけを用いて検出しても良い。
【0071】
更にまた、
図13(C)のように、A領域とB領域とC領域とD領域とE領域のいずれか複数の、隣接していない領域から、遮光された領域とハッチングマークの境界を検出する。そして、その検出した境界の位置の平均値などの統計情報から、光学素子1の取り付け誤差を自動的に算出しても良い。A領域~E領域など、或いは更に多数の領域を用いれば短時間でマークの角を見つけることができる。
【0072】
次に
図14を用いて領域ずれ計測用マークの他の例を説明する。
図14は横長のラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークを示した図である。
図14(A)では、X方向のラインアンドスペース(平行な複数のストライプからなるパターン)の領域ずれ計測用マークを例えばステージ基準プレート165に配備する。
そして、
図14(B)のように、例えばA領域とB領域で照明されるように、基板ステージ164やアライメントスコープ172を駆動させると、B領域では照明光の向きとラインアンドスペースの向きが異なるため、検出されない。
【0073】
一方、A領域では、ラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークが検出される。従って、
図14(C)の矢印が示すようにラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークと遮光された領域の境界を1方向分だけ求めることが出来る。
【0074】
次に
図15を用いて領域ずれ計測用マークの更に他の例を説明する。
図15は縦長のラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークを示した図である。
図15(B)のように、例えばC領域とD領域で照明されるように、基板ステージ164やアライメントスコープ172を駆動させると、C領域では照明光の向きとラインアンドスペースの向きが異なるため、検出されない。
【0075】
一方、D領域では、ラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークが検出されるため、
図15(C)の矢印が示すようにラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークと遮光された領域の境界を1方向分だけ求めることが出来る。
このように、
図14、
図15のように2種類のラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークを用いることで、XY方向両方で光学素子1の取り付け誤差を自動で算出することが出来る。
【0076】
次に
図16を用いて領域ずれ計測用マークの別の例を説明する。
図16は横長と縦長の両方のラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークを示した図である。
図16(A)のように、横長と縦長の、互いに直交する2種類のラインアンドスペースをそれぞれ含むように構成された領域ずれ計測用マークを用いる。
それによって、
図16(B)の例えばA領域からX方向の領域ずれ、B領域、D領域からY方向の領域ずれを検出し、XY方向両方で光学素子1の取り付け誤差を自動で算出することも可能である。
【0077】
なお、アライメントスコープ172の別の例としては、光学素子1を用いることなく開口絞りで照明光を形成する場合でも、以下の処理を時間的に分離して行う事が出来る。つまり、開口絞りで第1角度分布の照明光を形成してA領域に対応する部分を照明して受光素子で画像を取得する。また、開口絞りで第2角度分布の照明光を形成してB領域に対応する部分を照明して受光素子で画像を取得する。この場合、開口絞りの複数の開口を選択的に遮光したり、開口絞りを回転させたり、開口位置が互いに異なる複数の開口絞りを切り替えて光路内に配置したりすることによって、種々の照射角度分布を形成することできる。
【0078】
以上のように、実施例においては、光学素子1の例えばX方向、Y方向、XY方向の角度分布の照明光が形成される領域を用いて、例えばハッチング形状の領域ずれ計測用マークを照明、検出している。従って、遮光された領域と領域ずれ計測用マークの角の2辺を効率的に検出することが出来る。あるいは、X方向の角度分布の照明光が形成される領域で、縦長のラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークを照明、検出することができる。
【0079】
あるいは、Y方向の角度分布の照明光が形成される領域で、横長のラインアンドスペースの領域ずれ計測用マークを照明、検出することにより、遮光された領域と領域ずれ計測用マークの境界(角の2辺)を効率的に検出することが出来る。これらの境界の検出を利用することで、光学素子1の取り付け誤差を補正し、位置検出精度を高めることができる。また、位置ずれ検出のための効率を向上することが出来る。
[物品の製造方法]
【0080】
以上のような検出装置や検出方法を用いることによって、物品(半導体集積回路デバイス、液晶表示デバイス、MEMS、ハードディスク、カラーフィルタ等)をリソグラフィ装置により製造することができる。即ち、物品の製造方法において、実施例の検出部によって光学素子1の取り付け位置のずれ方向とずれ量を検出するステップと、このずれ方向とずれ量に基づき、型またはレチクルのパターンと基板上の位置合わせを行うステップとを含む。更にインプリント装置や露光装置等のリソグラフィ装置によって、基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等)にパターンを転写(形成)するステップを含む。
【0081】
さらに、該製造方法は、パターンが形成された基板をエッチングやダイシングなどで加工するステップを含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングステップの代わりに、パターンを転写された前記基板を加工することによって物品を製造する他の加工ステップを含みうる。本物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0082】
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
なお、本実施例における制御の一部または全部を上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介して検出装置に供給するようにしてもよい。そしてその検出装置におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0083】
1 光学素子
5 受光素子
20 開口絞り
40 マーク観察面
164 基板ステージ
172 アライメントスコープ