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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】接合金物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20240610BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
E04B1/24 R
E04B1/58 511H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020076254
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173019
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100087712
【弁理士】
【氏名又は名称】山木 義明
(74)【代理人】
【氏名又は名称】座間 卓宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 倫夫
(72)【発明者】
【氏名】大庭 秀治
(72)【発明者】
【氏名】青木 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 大致
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢一郎
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特公昭52-044133(JP,B2)
【文献】特開2000-319990(JP,A)
【文献】特開平04-289349(JP,A)
【文献】特開平09-088194(JP,A)
【文献】特開2017-160743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートによって形成された構造物の上に設けられた接合金物であって、
板状のベースプレートと、
前記ベースプレートの下面から突出するように、前記ベースプレートに一体的に設けられた板状の突出部と、を備え、
前記突出部には、前記突出部の水平方向の厚さ寸法が、前記突出部に作用する曲げモーメントに応じて前記突出部の下端部に向かうにつれて徐々に小さくなるような先細部が形成され、
前記突出部の前記先細部は、その厚さ方向の両側面の断面形状が、前記側面に沿ってその高さ途中部に、複数の段差部が設けられたような階段状に形成され、
前記突出部の下端部が、前記コンクリートの表面より下方に位置して、前記コンクリートの内部に埋設されるように構成された
ことを特徴とする接合金物。
【請求項2】
前記突出部は、その平面形状が略十字型に形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の接合金物。
【請求項3】
前記接合金物は、コンクリートによって形成された基礎に立設される柱部材の下端部に設けられ、
前記ベースプレートは、その平面形状が前記柱部材の水平断面形状より大きくなるように形成されると共に、前記ベースプレートの上面に前記柱部材の下端部が固定された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の接合金物。
【請求項4】
前記接合金物は、コンクリートによって形成された梁の長さ途中部に設けられ、
前記ベースプレートの上面に設けられたガセットプレートにブレースの端部が固定され

ことを特徴とする請求項1又は2に記載の接合金物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物の一部を構成する柱部材やブレースの端部を、コンクリートにより形成された基礎や梁のような構造物に固定するために用いられる接合金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
S造やSRC造等の建築構造物においては、角型鋼管や円形鋼管等によって構成された柱部材をコンクリートによって形成された基礎の上に立設するために、柱部材の下端部に溶接された接合金物に、基礎コンクリート内部に埋設されたアンカーボルトの上端部が結合されるような接合構造が知られていた(例えば特許文献1の図4参照)。
【0003】
図8及び図9は、従来の接合金物4、及びこれを用いた接合構造2について説明するために参照する図である。
【0004】
接合構造2は、図8に示すように、基礎コンクリート3の上に立設された柱部材5と、柱部材5の下端部に設けられた接合金物4と、基礎コンクリート3の内部に埋設された複数のアンカーボルト8を備えていた。
【0005】
従来の接合金物4は、図9に示すように、所定の厚さ寸法を有し、平面形状が略正方形の板状に形成され、その上面の四隅部の近傍には、接合金物4を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔4aが、それぞれの四隅部に1つずつ形成されていた。
【0006】
接合金物4は、十分な強度を有する鋼材により形成され、図8に示すように、柱部材5の下端部に溶接等により固定されると共に、そのような柱部材5が、接合金物4の下面と基礎コンクリート3の表面の間に設けられたモルタル層6を介して、基礎コンクリート3の上に立設されていた。
【0007】
その一方で、図8に示すように、基礎コンクリート3の内部には複数のアンカーボルト8が埋設され、これらのアンカーボルト8の上端部は、モルタル層6を貫いて接合金物4に形成されたボルト挿通孔4aに挿通されており、接合金物4の上面より上方に突出したアンカーボルト8の上端ネジ部には、ナット10が締結されていた。
【0008】
このような接合金物4、及びこれを用いた接合構造2によれば、柱部材5の柱脚部に地震等による外力が作用した場合に、建築構造物の柱部材が傾いたり転倒したりすることを防止できるようになっていた。
【0009】
すなわち、図8に示すように、地震等の外力によって、柱部材5の柱脚部に曲げモーメントMが作用した場合には、図中左側のアンカーボルト8に生じる引張力Tや、接合金物4の下面の図中右側にモルタル層6を介して生じる基礎コンクリート3からの圧縮力Cによって、曲げモーメントMに抵抗するような曲げモーメントが柱部材5の柱脚部に作用するようになっていた。
【0010】
しかしながら、このような従来の接合金物4を用いた接合構造2は、柱部材5の柱脚部に作用するせん断方向(図8中左右方向、又は図の紙面に垂直方向)の力がアンカーボルト8に集中するおそれがあった。
【0011】
そのため、これを防止して、柱脚部に作用するせん断力を効率よく基礎コンクリートへと伝達するために、接合金物の下面にシアコッターと呼ばれる突出部を設け、この突出部が基礎コンクリートの内部に埋設されるようにした接合構造が知られていた(例えば特許文献1の図5参照)。
【0012】
図10及び図11は、そのような接合構造に用いられる他の従来の接合金物14、及びこれを用いた他の接合構造12について説明するために参照する図である。
【0013】
接合構造12には、図8示す接合構造2における従来の接合金物4の代わりに、図11に示すような接合金物14が設けられている点において、接合構造2とはその構成が異なるものであった。
【0014】
従来の接合金物14は、図11に示すように、所定の厚さ寸法を有し、平面形状が略正方形の板状に形成されたベースプレート16を備え、その上面の四隅部の近傍には、ベースプレート16を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔16aが、それぞれの四隅部に1つずつ形成されていた。
【0015】
そして、接合金物14のベースプレート16の下面には、図11(a)に示すように、水平断面形状が略十字型に形成された突出部18が、図11(b)に示すように、ベースプレート16の下面から下方に突出するように設けられていた。
【0016】
そして、図10に示すように、接合金物14は、柱部材5の下端部に溶接等により固定されると共に、そのような柱部材5が、ベースプレート16の下面と基礎コンクリート3の表面の間に設けられたモルタル層6を介して基礎コンクリート3の上に立設されていた。
【0017】
そしてこのとき、接合金物14のベースプレート16の下面に設けられた突出部18は、図10に示すように、その下端部が基礎コンクリート3の表面より下方に位置するように、基礎コンクリート3の内部に埋設されるようになっていた。
【0018】
その他の構成は、前記従来の接合金物4、及びこれを用いた接合構造2と同様であるため、このような形態の接合金物14、及びこれを用いた接合構造12であっても、建築構造物の柱脚部に地震等による外力が作用した場合に、建築構造物の柱部材が傾いたり転倒したりすることを防止できるようになっていた。
【0019】
そして、このような接合金物14、及びこれを用いた接合構造12によれば、柱部材5の柱脚部に作用するせん断方向(水平方向)の力がアンカーボルト8に集中することを防止し、柱部材5の柱脚部に作用するせん断力を効率よく基礎コンクリート3へと伝達することができるようになっていた。
【0020】
すなわち、図10に示すように、地震等の外力によって柱部材5の柱脚部に作用するせん断力Fを、基礎コンクリート3の内部に埋設された接合金物14の突出部18の各側面に負担させることができるようになっていた。
【0021】
一方、S造やSRC造等の建築構造物においては、建築構造物の強度を向上させるために、柱部材と梁部材の間を斜めに連結するブレースと呼ばれる補強部材を設けることがあり(例えば特許文献2参照)、図9及び図11に示すような接合金物2,12と同様の構成を有する接合金物を、そのようなブレースの端部をコンクリートによって形成された梁の長さ途中部に固定するために用いることがあった。
【0022】
すなわち、図12(a)及び(b)に示すように、図8及び図10に示す接合構造2,12と同様に、基礎梁13の長さ途中部に、接合金物4,14を、モルタル層6を介して配置してアンカーボルト8やナット10を用いて固定し、その接合金物4の上面や接合金物14のベースプレート16の上面に、図の紙面に垂直方向に所定の厚さを有する板状に形成されたガセットプレート7を溶接等により固定し、2つのブレース9のそれぞれの端部がガセットプレート7に連結されてボルト等により固定されるような、接合構造19,20が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】特開2000-319990号公報
【文献】特開昭62-101737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、上述したような従来の接合金物14を用いた接合構造12,20は、柱部材5の柱脚部やブレース9の端部に作用するせん断力や曲げモーメントに対する接合金物14の耐力を向上させようとした場合に、接合金物14の突出部18が大型化して、接合金物14の重量が増加するという問題があった。
【0025】
すなわち、従来の接合金物14を用いた接合構造12においては、図10に示すように、柱部材5の柱脚部に作用するせん断力Fを接合金物14の突出部18の各側面に負担させるようになっていると共に、図13に示すように、柱部材5の柱脚部に作用する曲げモーメントMに対して、図中左側のアンカーボルト8に生じる引張力Tや、ベースプレート16の下面の図中右側にモルタル層6を介して生じる基礎コンクリート3からの圧縮力Cと共に、突出部18の各側面に生じる反力fによって、曲げモーメントMに抵抗するような曲げモーメントが柱部材5の柱脚部に作用するようになっていた。
【0026】
そして、接合金物14の突出部18の各側面に生じる反力fによって作用する曲げモーメントM0は、突出部18の下端部に比べて上端部の方が大きくなるため、突出部18とベースプレート16の接合部において、最も大きな負荷がかかるようになっていた。
【0027】
そのため、より大きなせん断力や曲げモーメントが柱脚部に作用することを想定して、接合金物の耐力を向上させようとした場合、そのような反力や曲げモーメントによって突出部18が降伏しないように突出部18を構成する板部材の厚さ寸法を大きくすると共に、突出部18とベースプレート16の接合部をより強固に溶接する必要があった。
【0028】
そして、突出部18の板厚を大きくするとその分、接合金物14の重量が増加するため、接合金物14に使用する材料(鋼材)の量が増えると共に、接合金物14を柱部材5に溶接して固定する際における接合金物14の取り回しが悪化するため、接合金物14の製造コストや接合構造12の施工コストの増加を招くおそれがあった。
【0029】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、せん断力をコンクリートにより形成された基礎や梁のような構造物に効率よく伝達するための十分な耐力を有すると共に、接合金物の軽量化を図り、コストを低減することができる接合金物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
請求項1に係る発明は、コンクリートによって形成された構造物の上に設けられた接合金物であって、板状のベースプレートと、前記ベースプレートの下面から突出するように、前記ベースプレートに一体的に設けられた板状の突出部と、を備え、前記突出部には、前記突出部の水平方向の厚さ寸法が、前記突出部に作用する曲げモーメントに応じて前記突出部の下端部に向かうにつれて徐々に小さくなるような先細部が形成され、前記突出部の前記先細部は、その厚さ方向の両側面の断面形状が、前記側面に沿ってその高さ途中部に、複数の段差部が設けられたような階段状に形成され、前記突出部の下端部が、前記コンクリートの表面より下方に位置して、前記コンクリートの内部に埋設されるように構成されたことを特徴とする接合金物である。
請求項2に係る発明は、前記突出部は、その平面形状が略十字型に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の接合金物である。
請求項3に係る発明は、前記接合金物は、コンクリートによって形成された基礎に立設される柱部材の下端部に設けられ、前記ベースプレートは、その平面形状が前記柱部材の水平断面形状より大きくなるように形成されると共に、前記ベースプレートの上面に前記柱部材の下端部が固定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の接合金物である。
請求項4に係る発明は、前記接合金物は、コンクリートによって形成された梁の長さ途中部に設けられ、前記ベースプレートの上面に設けられたガセットプレートにブレースの端部が固定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の接合金物である。
また、別発明として、以下のものでもよい。
本発明による接合金物は、上記課題を解決するために、
コンクリートによって形成された構造物の上に設けられた接合金物であって、
板状のベースプレートと、
前記ベースプレートの下面から突出するように、前記ベースプレートに一体的に設けられた突出部と、を備え、
前記突出部には、前記突出部の水平方向の厚さ寸法が、前記突出部の下端部に向かうにつれて徐々に小さくなるような先細部が形成され、
前記突出部の下端部が、前記コンクリートの表面より下方に位置して、前記コンクリートの内部に埋設されるように構成された
ことを特徴とするものである。
【0031】
また、本発明による接合金物は、
前記突出部は、その平面形状が略十字型に形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の接合金物。
【0032】
また、本発明による接合金物は、
前記突出部の前記先細部は、その厚さ方向の両側面の断面形状が、前記側面上の任意の点における接線の水平方向に対する傾斜角が、前記先細部の上端部から下端部に向かうにつれて徐々に大きくなるような弧状に形成された
ことを特徴とするものである。
【0033】
また、本発明による接合金物は、
前記突出部の前記先細部は、その厚さ方向の両側面の断面形状が略直線状に形成された
ことを特徴とするものである。
【0034】
また、本発明による接合金物は、
前記突出部の前記先細部は、その厚さ方向の両側面の断面形状が、前記側面に沿ってその高さ途中部に、複数の段差部が設けられたような階段状に形成された
ことを特徴とするものである。
【0035】
また、本発明による接合金物は、
前記接合金物は、コンクリートによって形成された基礎に立設される柱部材の下端部に設けられ、
前記ベースプレートは、その平面形状が前記柱部材の水平断面形状より大きくなるように形成されると共に、前記ベースプレートの上面に前記柱部材の下端部が固定された
ことを特徴とするものである。
【0036】
また、本発明による接合金物は、
前記接合金物は、コンクリートによって形成された梁の長さ途中部に設けられ、
前記ベースプレートの上面に設けられたガセットプレートにブレースの端部が固定された
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
このような本発明の接合金物によれば、
コンクリートによって形成された構造物の上に設けられた接合金物であって、
板状のベースプレートと、
前記ベースプレートの下面から突出するように、前記ベースプレートに一体的に設けられた突出部と、を備え、
前記突出部には、前記突出部の水平方向の厚さ寸法が、前記突出部の下端部に向かうにつれて徐々に小さくなるような先細部が形成され、
前記突出部の下端部が、前記コンクリートの表面より下方に位置して、前記コンクリートの内部に埋設されるように構成されたことにより、
せん断力をコンクリートにより形成された基礎や梁のような構造物に効率よく伝達するための十分な耐力を有すると共に、接合金物の軽量化を図り、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る接合金物24を用いた柱脚部の接合構造22を示す概略側面図である。
図2図1に示す接合金物24を示す図であって、図2(a)はその上面側からの斜視図であり、図2(b)はその下面側からの斜視図である。
図3】接合金物24を示す図であって、図3(a)はその平面図であり、図3(b)はその底面図である。
図4】接合金物24を示す図であって、図4(a)はその側面図であり、図4(b)は図3(a)におけるA-A線矢視断面図であり、図4(c)は図3(a)におけるB-B線矢視断面図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る接合金物34を示す図であって、図5(a)はその下面側からの斜視図であり、図5(b)はその側面図であり、図5(c)は図5(a)におけるC-C線矢視断面図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る接合金物44を示す図であって、図6(a)はその下面側からの斜視図であり、図6(b)はその側面図であり、図6(c)は図6(a)におけるD-D線矢視断面図である。
図7】接合金物24を用いた、ブレース9と基礎梁13の接合構造29を示す概略側面図である。
図8】従来の接合金物4を用いた柱脚部の接合構造2を示す概略側面図である。
図9図8に示す接合金物4を示す図であって、図9(a)はその平面図であり、図9(b)はその側面図である。
図10】従来の接合金物14を用いた柱脚部の接合構造12を示す概略側面図である。
図11図10に示す接合金物14を示す図であって、図11(a)はその平面図であり、図11(b)はその側面図である。
図12図12(a)は従来の接合金物4を用いたブレース9と基礎梁13の接合構造19を示す概略側面図であり、図12(b)は従来の接合金物14を用いたブレース9と基礎梁13の接合構造20を示す概略側面図である。
図13】従来の接合金物14を用いた接合構造12の柱脚部に作用する力や曲げモーメントについて説明するための図であって、図10に示す接合構造12の柱部材5の下端部周辺を拡大した概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る接合金物を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。なお、図8ないし図13に示した従来の接合金物4,14と同様の部分には、一部を除き同じ符号を付して説明するものとする。
【0040】
図1ないし図4は、本発明の第1の実施の形態に係る接合金物24について説明するために参照する図である。
【0041】
接合構造22は、図1に示すように、基礎コンクリート3の上に立設された柱部材25と、柱部材25の下端部に設けられた接合金物24と、基礎コンクリート3の内部に埋設された複数のアンカーボルト8を備えている。
【0042】
柱部材25は、水平断面形状が略正方形の角筒形状に形成された角型鋼管であって、図1に示すように、基礎コンクリート3の上に図中上下方向に伸びるように立設され、その下端部には接合金物24が一体的に固定されている。
【0043】
接合金物24は、図2に示すように、板状のベースプレート26と、ベースプレート26の下面の略中央から下方に向けて突出するように設けられた突出部28を備えている。
【0044】
接合金物24のベースプレート26は、図3(a)及び(b)に示すように、図の紙面に垂直方向に所定の厚さ寸法を有し、平面形状が略正方形の板状に形成され、その上面の四隅部の近傍には、ベースプレート26を厚さ方向に貫通するボルト挿通孔26aが、それぞれの四隅部に2つずつ形成されている。
【0045】
接合金物24の突出部28は、図4(a)に示すように、図中上下方向に所定の高さを有し、水平断面形状が略十字型(図3(a)及び(b)参照)に形成されている。
【0046】
そして、図4(a)及び(c)に示すように、突出部28の高さ途中部から下端部にかけて、略十字型の突出部28を構成する板状の部分の水平方向(図中左右方向)の厚さ寸法が、突出部28の下端部に向かうにつれて徐々に小さくなるような先細部28cが形成されている。
【0047】
すなわち、突出部28は、図3(b)に示すように、図中上下方向に所定の厚さを有し、図中左右方向に所定の幅を有する第1垂直板部28aと、図中左右方向に所定の厚さを有し、図中上下方向に所定の幅を有する第2垂直板部28bが、それぞれの幅方向の中央部で略直角に交差して一体的に結合されたように形成されている。
【0048】
そして、突出部28の先細部28cは、図4(a)及び(c)に示すように、第1垂直板部28aと第2垂直板部28bのそれぞれの高さ途中部から下端部にかけて、第1垂直板部28aと第2垂直板部28bの厚さ寸法が、第1垂直板部28aと第2垂直板部28bの下端部に向かうにつれて徐々に小さくなるように、それぞれ形成されている。
【0049】
そして、この先細部28cは、図4(c)に示すように、突出部28の厚さ方向(図中左右方向)の両端の両側面の断面形状が、その側面上の任意の点における接線の水平方向(図中左右方向)に対する傾斜角が、突出部28の上端部から下端部に向かうにつれて徐々に大きくなるような弧状に形成されている。
【0050】
このような突出部28が、図4(a)に示すように、その上端部がベースプレート26の下面の略中央に一体的に結合され、突出部28の上端部から下方に伸びる突出部28の高さ部分がベースプレート26の下面より下方に突出するように形成されている。
【0051】
このような接合部材24は、そのベースプレート26や突出部28を十分な強度を有する鋼材により形成することができ、例えば、鋳造や鍛造により作成した突出部28を、ベースプレート26の下面に溶接等により固定することにより形成することができる。また、鋳造や鍛造によってベースプレート26や突出部28を一体的に成型することにより形成することもできる。
【0052】
このような接合金物24が、図1に示すように、柱部材25の下端面が接合金物24のベースプレート26の上面に当接するように、柱部材25の下端部に配置されている。
【0053】
このとき、接合金物24のベースプレート26は、図1に示すように、その外形が柱部材25の水平断面形状より大きくなるように形成され、また、ベースプレート26のボルト挿通孔26aは、柱部材25の下端部の外側面より外側に位置するように形成されている。
【0054】
そして、接合金物24は、柱部材25の下端部と接合金物24のベースプレート26の上面を、柱部材25の下端部の周部に沿って溶接することにより、柱部材25の下端部に一体的に固定されている。
【0055】
そして、このようにして接合金物24が下端部に固定された柱部材25が、図1に示すように、接合金物24と基礎コンクリート3の間に設けられたモルタル層6を介して、基礎コンクリート3の上に図中上下方向に伸びるように立設されている。
【0056】
そしてこのとき、接合金物24の突出部28は、その下端部が基礎コンクリート3の表面より下方に位置して、基礎コンクリート3の内部に埋設されるようになっている。
【0057】
一方、基礎コンクリート3の内部には、図1に示すように、複数のアンカーボルト8が、その長さ部分が基礎コンクリート3の内部に図中上下方向に伸びると共に、その上端部が基礎コンクリート3の表面より上方に突出するように埋設されている。
【0058】
そして、これらのアンカーボルト8の上端部は、モルタル層6を図中上下方向に貫いて、接合金物24のベースプレート26に形成されたボルト挿通孔26aに下方から緩く挿通されており、ベースプレート26の上面より上方に突出するアンカーボルト8の上端ネジ部には、ナット10が締結されている。
【0059】
このような本実施の形態に係る接合金物24によれば、接合金物24の突出部28を、柱脚部に作用するせん断力を基礎コンクリートへ効率よく伝達するためのシアコッターとして利用することができるため、建築構造物の柱脚部に作用するせん断力を効率よく基礎コンクリートへと伝達することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る接合金物24によれば、突出部28を小型化して接合金物24の軽量化を図ることができる。
【0061】
すなわち、本実施の形態に係る接合金物24を用いた接合構造22においては、図13に示す従来の接合金物14を用いた接合構造12と同様に、柱部材25の柱脚部に曲げモーメントが作用した際に、これに抵抗するように、接合金物24の突出部28の各側面に生じる反力によって作用する曲げモーメントは、突出部28の下端部に比べて上端部の方が大きくなるため、突出部28とベースプレート26の接合部において、最も大きな負荷がかかるようになっている。
【0062】
そして、本実施の形態に係る接合金物24は、負荷の大きい突出部28の上端部の厚さ寸法が下端部に比べて大きくなっているため、接合金物24の耐力が向上させることができると共に、負荷の小さい突出部28の下端部の厚さ寸法は上端部に比べて小さいため、その分、突出部28を小型化して、接合金物24の軽量化を図ることができる。
【0063】
そして、突出部28を小型化して、接合金物24の軽量化を図ることにより、接合金物24に使用する材料の量を少なくすることができると共に、接合金物24を柱部材25に溶接して固定する際の取り回しも向上するため、接合金物24の製造コストや接合構造22の施工コストを低減することができる。
【0064】
このように、本実施の形態に係る接合金物24によれば、せん断力をコンクリートにより形成された基礎や梁のような構造物に効率よく伝達するための十分な耐力を有すると共に、接合金物の軽量化を図り、コストを低減することができる。
【0065】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る接合金物34について説明するために参照する図である。
【0066】
本実施の形態に係る接合金物34には、前記第1の実施の形態に係る接合金物24に設けられた突出部28に代わって、図5に示すような突出部38が設けられている点において、前記第1の実施の形態に係る接合金物24とはその構成が異なるものである。
【0067】
接合金物34の突出部38は、図5(a)に示すように、前記第1の実施の形態に係る接合金物24における突出部28と同様に、第1垂直板部38aと第2垂直板部38bを備え、第1垂直板部38aと第2垂直板部38bのそれぞれの高さ途中部から下端部にかけて、先細部38cがそれぞれ形成されている。
【0068】
そして、突出部38の先細部38cは、図5(c)に示すように、その厚さ方向(図中左右方向)の両端の両側面の断面形状が略直線状に形成され、それにより、前記第1の実施の形態に係る接合金物24の突出部28における先細部28cと同様に、突出部38を構成する第1垂直板部38aと第2垂直板部38bの厚さ寸法が、下端部に向かうにつれて徐々に小さくなるように形成されている。
【0069】
その他の構成は、前記第1の実施の形態に係る接合金物24と同様であり、このような接合金物34によっても、せん断力をコンクリートにより形成された基礎や梁のような構造物に効率よく伝達するための十分な耐力を有すると共に、接合金物の軽量化を図り、コストを低減することができる。
【0070】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る接合金物44について説明するために参照する図である。
【0071】
本実施の形態に係る接合金物44には、前記第1の実施の形態に係る接合金物24に設けられた突出部28に代わって、図6に示すような突出部48が設けられている点において、前記第1の実施の形態に係る接合金物24とはその構成が異なるものである。
【0072】
接合金物44の突出部48は、図6(a)に示すように、前記第1の実施の形態に係る接合金物24における突出部28と同様に、第1垂直板部48aと第2垂直板部48bを備え、第1垂直板部48aと第2垂直板部48bのそれぞれの高さ途中部から下端部にかけて、先細部48cがそれぞれ形成されている。
【0073】
そして、突出部48の先細部48cは、図6(c)に示すように、その厚さ方向(図中左右方向)の両端の両側面の断面形状が、その側面に沿ってその高さ途中部に、複数の段差部が設けられたような階段状に形成され、それにより、前記第1の実施の形態に係る接合金物24の突出部28における先細部28cと同様に、突出部38を構成する第1垂直板部38aと第2垂直板部38bの厚さ寸法が、下端部に向かうにつれて徐々に小さくなるように形成されている。
【0074】
その他の構成は、前記第1の実施の形態に係る接合金物24と同様であり、このような接合金物44によっても、せん断力をコンクリートにより形成された基礎や梁のような構造物に効率よく伝達するための十分な耐力を有すると共に、接合金物の軽量化を図り、コストを低減することができる。
【0075】
なお、本発明は、前記実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を達成することができる範囲内であれば、種々の変更が可能である。
【0076】
例えば、前記第1の実施の形態に係る接合金物24を用いた接合構造22においては、図1に示すように、接合金物24は、基礎コンクリート3の上に立設される柱部材25の下端部に設けられていたが、図12に示す接合構造19,20と同様に、接合金物24(又は前記第2及び第3の実施の形態に係る接合金物34,44)を、コンクリートによって形成された梁の長さ途中部にブレースの端部を固定するために用いてもよい。
【0077】
すなわち、図7に示すように、接合金物24を、基礎梁13の長さ途中部に、モルタル層6を介して、突出部28の下端部が基礎梁13の内部に埋設するように配置し、アンカーボルト8とナット10を用いて固定し、そのベースプレート26の上面にガセットプレート7を溶接等により固定し、2つのブレース9のそれぞれの端部がガセットプレート7に連結されてボルト等により固定されるような、接合構造29を用いてもよい。
【0078】
また、前記第1ないし第3の実施の形態に係る接合金物24,34,44においては、ベースプレート26は、その平面形状が略正方形に形成されているが、ベースプレート26の平面形状は正八角形や円形など、正方形以外の形状に形成されていてもよい。
【0079】
また、前記第1ないし第3の実施の形態に係る接合金物24,34,44においては、ベースプレート26の上面や下面はいずれも平坦に形成されているが、それらの部分は平坦でなくともよく、例えば、ベースプレート26の上面に、ベースプレート26の強度を向上させるためのリブを形成したり、ベースプレート26の下面に、モルタル層6との付着力を向上させるための凹凸形状を形成してもよい。
【0080】
また、前記第1ないし第3の実施の形態に係る接合金物24,34,44においては、ベースプレート26には、それぞれの四隅部に2つずつ、合計8つのボルト挿通孔26aが形成されているが、ベースプレート26に形成されるボルト挿通孔26aの数は、8つより少なくてもよいし多くてもよく、また、ボルト挿通孔26aがベースプレート26の四隅部以外の位置に形成されていてもよい。
【0081】
また、前記第1ないし第3の実施の形態に係る接合金物24,34,44においては、突出部28,38,48は、その平面形状が略十字型に形成されているが、突出部28,38,48は、例えば、平面形状が中心から八方に放射状に広がるような形状や、円筒状、角筒状等の、十字型以外の形状に形成されていてもよい。
【0082】
また、前記第1ないし第3の実施の形態に係る接合金物24,34,44においては、突出部28,38,48は、ベースプレート26の下面に1つ設けられているが、ベースプレート26の下面に2つ以上の突出部28,38,48が設けられていてもよい。
【0083】
また、前記第1ないし第3の実施の形態に係る接合金物24,34,44においては、突出部28,38,48には、それぞれ弧状、直線状、階段状の先細部28c,38c,48cが設けられているが、突出部の厚さ寸法が上端部から下端部に向かうにつれて小さくなるようになっていれば、先細部はどのような形状に形成されていてもよい。
【0084】
また、前記第1の実施の形態に係る接合金物24を用いた接合構造22や図6に示す接合構造29においては、接合金物24は、基礎コンクリート3や基礎梁13に設けられていたが、接合金物24(又は接合金物34,44)は、コンクリートにより形成されていれば、基礎や梁以外の構造物に設けることができるため、接合金物24,34,44を、そのようなコンクリートにより形成された基礎や梁以外の構造物に柱部材やブレースの端部を固定するために用いてもよい。
【符号の説明】
【0085】
2 接合構造
3 基礎コンクリート
4 接合金物
4a ボルト挿通孔
5 柱部材
6 モルタル層
7 ガセットプレート
8 アンカーボルト
9 ブレース
10 ナット
12 接合構造
13 基礎梁
14 接合金物
16 ベースプレート
16a ボルト挿通孔
18 突出部
19 接合構造
20 接合構造
22 接合構造
24 接合金物
25 柱部材
26 ベースプレート
26a ボルト挿通孔
28 突出部
28a 第1垂直板部
28b 第2垂直板部
28c 先細部
29 接合構造
34 接合金物
38 突出部
38a 第1垂直板部
38b 第2垂直板部
38c 先細部
44 接合金物
48 突出部
48a 第1垂直板部
48b 第2垂直板部
48c 先細部
M,M0 曲げモーメント
T 引張力
C 圧縮力
F せん断力
f 反力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13