(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】メモリデバイス、および温度センサのキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
G06F 12/00 20060101AFI20240610BHJP
G01K 15/00 20060101ALI20240610BHJP
G06F 12/06 20060101ALI20240610BHJP
G11C 5/04 20060101ALI20240610BHJP
G11C 7/04 20060101ALI20240610BHJP
G11C 7/24 20060101ALI20240610BHJP
G11C 16/04 20060101ALI20240610BHJP
G11C 16/22 20060101ALI20240610BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240610BHJP
H01L 25/065 20230101ALI20240610BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240610BHJP
【FI】
G06F12/00 564A
G01K15/00
G06F12/00 597U
G06F12/06 550A
G11C5/04 210
G11C7/04
G11C7/24
G11C16/04 170
G11C16/22
H01L25/08 E
(21)【出願番号】P 2020078368
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦志
(72)【発明者】
【氏名】米澤 遼
【審査官】北村 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0231286(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0043559(US,A1)
【文献】特開2014-153232(JP,A)
【文献】特開2019-046321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0365714(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0373876(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0315483(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0349046(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G06F 12/00 - 12/06
G01K 1/00 - 19/00
G11C 5/04
G11C 7/00 - 8/20
G11C 16/00 - 17/18
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の不揮発性メモリダイと、前記積層された複数の不揮発性メモリダイを制御するコントローラと、を含むメモリデバイスであって、
前記メモリデバイスは、
第1の面と、
前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、
前記第1の面で露出した複数の端子と、を含み、
前記積層された複数の不揮発性メモリダイには、複数の温度センサがそれぞれ内蔵されており、
前記積層された複数の不揮発性メモリダイの総数はNであり、
前記コントローラは、
前記積層された複数の不揮発性メモリダイから選択された温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイに内蔵されたN-1個以下の温度センサによってそれぞれ測定され
た温度を前記
温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイから読み出し、
前記読み出し
た温度のうちの最高温度が閾値温度以上である場合、前記積層された複数の不揮発性メモリダイに対するコマンドの発行頻度または前記積層された複数の不揮発性メモリダイに対するアクセス速度を下げるサーマルコントロールを実行する
、ように構成され、
前記温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイは、前記積層された複数の不揮発性メモリダイがアクセスされている間の前記積層された複数の不揮発性メモリダイそれぞれの温度を事前に学習することによって決定される、メモリデバイス。
【請求項2】
前記積層された複数の不揮発性メモリダイのうちの最下層に位置する第1の不揮発性メモリダイは前記第2の面よりも前記第1の面に近い位置に配置されて
いる、請求項
1に記載のメモリデバイス。
【請求項3】
前記積層された複数の不揮発性メモリダイの各々は、室温よりも高い第1の温度にて前記不揮発性メモリダイ内の温度センサの温度出力が前記第1の温度となるように前記温度センサの温度特性をキャリブレーションするための補正値を不揮発に格納しており、
前記複数の温度センサの各々は、対応する不揮発性メモリダイに不揮発に格納されている前記補正値を使用して動作するように構成されている、請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項4】
前記補正値は、ウェハー内の各不揮発性メモリダイを検査するテスタを使用して、前記第1の温度にて前記ウェハー内の各不揮発性メモリダイに内蔵の温度センサをキャリブレーションすることによって求められる、請求項
3に記載のメモリデバイス。
【請求項5】
前記サーマルコントロールは前記第1の温度以上の温度範囲で行われる、請求項
3に記載のメモリデバイス。
【請求項6】
前記第1の温度は前記積層された複数の不揮発性メモリダイの各々の保証温度の上限に設定されている請求項
3に記載のメモリデバイス。
【請求項7】
前記補正値は前記温度センサの温度特性の傾きおよび切片の各々の補正値を含む、請求項
3に記載のメモリデバイス。
【請求項8】
前記積層された複数の不揮発性メモリダイの各々はNAND型フラッシュメモリダイである、請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項9】
前記メモリデバイスは、ホスト機器のプリント回路基板に配置されるコネクタに装着可能なリムーバブルメモリデバイスである、請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項10】
前記メモリデバイスはホスト機器のプリント回路基板に実装される表面実装型メモリデバイスである
、請求項1に記載のメモリデバイス。
【請求項11】
積層された複数の不揮発性メモリダイと、前記積層された複数の不揮発性メモリダイを制御するコントローラと、を含むメモリデバイスであって、
前記メモリデバイスは、
第1の面と、
前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、
前記第1の面で露出した複数の端子と、を含み、
前記積層された複数の不揮発性メモリダイには、複数の温度センサがそれぞれ内蔵されており、
前記積層された複数の不揮発性メモリダイの各々は、ウェハー内の各不揮発性メモリダイを検査するテスタを使用して、室温よりも高い第1の温度にて前記ウェハー内の各不揮発性メモリダイに内蔵の温度センサの温度特性をキャリブレーションすることによって求められた補正値を不揮発に格納しており、
前記複数の温度センサの各々は、対応する不揮発性メモリダイに不揮発に格納されている前記補正値を使用して動作するように構成され、
前記積層された複数の不揮発性メモリダイの総数はNであり、
前記コントローラは、
前記積層された複数の不揮発性メモリダイから選択された温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイに内蔵されたN-1個以下の温度センサによってそれぞれ測定され
た温度を前記
温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイから読み出し、
前記読み出し
た温度のうちの最高温度が閾値温度以上である場合、前記積層された複数の不揮発性メモリダイに対するコマンドの発行頻度または前記積層された複数の不揮発性メモリダイに対するアクセス速度を下げるサーマルコントロールを実行する、
ように構成され、
前記温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイは、前記積層された複数の不揮発性メモリダイがアクセスされている間の前記積層された複数の不揮発性メモリダイそれぞれの温度を事前に学習することによって決定される、メモリデバイス。
【請求項12】
前記サーマルコントロールは前記第1の温度以上の温度範囲で行われる、請求項
11に記載のメモリデバイス。
【請求項13】
前記第1の温度は前記積層された複数の不揮発性メモリダイの各々の保証温度の上限に設定されている、請求項
11に記載のメモリデバイス。
【請求項14】
前記補正値は前記温度センサの温度特性の傾きおよび切片の各々の補正値を含む請求項
11に記載のメモリデバイス。
【請求項15】
メモリデバイスの
パッケージにコントローラと共に内蔵される積層された複数の不揮発性メモリダイ
にそれぞれ内蔵される
複数の温度センサ
の各々を、前記複数の不揮発性メモリダイのパッケージングの前にキャリブレーションするキャリブレーション方法であって、
ウェハー内の各不揮発性メモリダイを検査するテスタによって、室温よりも高い第1の温度にて前記ウェハー内の各不揮発性メモリダイに内蔵の温度センサの温度特性をキャリブレーションすることと、
前記テスタによって、前記キャリブレーションによって求められた前記温度センサの温度特性の補正値を前記各不揮発性メモリダイに不揮発に書き込むことと、を具備し、
前記メモリデバイスは、
第1の面と、
前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、
前記メモリデバイスは、第1の面で露出した複数の端子と、を含み、
前記積層された複数の不揮発性メモリダイの各々においては、前記補正値が不揮発に格納されており、
前記複数の温度センサの各々は、対応する不揮発性メモリダイに不揮発に格納されている前記補正値を使用して動作するように構成され、
前記積層された複数の不揮発性メモリダイの総数はNであり、
前記コントローラは、
前記積層された複数の不揮発性メモリダイから選択された温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイに内蔵されたN-1個以下の温度センサによってそれぞれ測定され
た温度を前記
温度監視対象のN-1個以下から読み出し、前記読み出し
た温度のうちの最高温度が閾値温度以上である場合、前記積層された複数の不揮発性メモリダイに対するコマンドの発行頻度または前記積層された複数の不揮発性メモリダイに対するアクセス速度を下げるサーマルコントロールを実行
し、
前記温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイは、前記積層された複数の不揮発性メモリダイがアクセスされている間の前記積層された複数の不揮発性メモリダイそれぞれの温度を事前に学習することによって決定される、キャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、不揮発性メモリとコントローラとを含むメモリデバイス、および温度センサのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コントローラと複数の不揮発性メモリダイとを含むメモリデバイスが開発されている。
このようなメモリデバイスにおいては、メモリデバイスのアクセス性能の不必要な低下を招くことなく不揮発性メモリダイの温度がその保証温度の上限を上回ることを防止するための仕組みの実現が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、アクセス性能の不必要な低下を招くことなく不揮発性メモリダイの温度がその保証温度の上限を上回ることを防止することができるメモリデバイス、および温度センサのキャリブレーション方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、積層された複数の不揮発性メモリダイと、前記積層された複数の不揮発性メモリダイを制御するコントローラと、を含むメモリデバイスが提供される。前記メモリデバイスは、第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、前記第1の面で露出した複数の端子と、を含む。前記積層された複数の不揮発性メモリダイには、複数の温度センサがそれぞれ内蔵されている。前記積層された複数の不揮発性メモリダイの総数はNである。前記コントローラは、前記積層された複数の不揮発性メモリダイから選択された温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイに内蔵されたN-1個以下の温度センサによってそれぞれ測定された温度を前記温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイから読み出す。前記コントローラは、前前記読み出した温度のうちの最高温度が閾値温度以上である場合、前記積層された複数の不揮発性メモリダイに対するコマンドの発行頻度または前記積層された複数の不揮発性メモリダイに対するアクセス速度を下げるサーマルコントロールを実行する。前記温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイは、前記積層された複数の不揮発性メモリダイがアクセスされている間の前記積層された複数の不揮発性メモリダイそれぞれの温度を事前に学習することによって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係るメモリデバイスの構成例を示す図。
【
図2】実施形態に係るメモリデバイスに含まれるコントローラの構成例を示すブロック図。
【
図3】
図2のコントローラによって実行されるサーマルコントロール動作の手順の例を示すフローチャート。
【
図4】メモリアクセス中におけるTj_N_maxと転送速度との関係の例を示す図。
【
図5】各NAND型フラッシュメモリダイに含まれるセルアレイの階層構造の例を示す図。
【
図6】実施形態に係るメモリデバイスにおける、コントローラと複数のNAND型フラッシュメモリダイとの間の接続例を示す図。
【
図7】複数のNAND型フラッシュメモリダイをインターリーブによって並列にアクセスする動作の例を示す図。
【
図8】コントローラの温度センサを使用して実行される、比較例に係るサーマルコントロールを説明するための図。
【
図9】複数のNAND型フラッシュメモリダイにそれぞれ含まれる複数の温度センサを使用して実行される、実施形態に係るサーマルコントロールを説明するための図。
【
図10】実施形態に係るメモリデバイスがホスト機器のプリント回路基板に実装された場合におけるメモリデバイス内の複数のNAND型フラッシュメモリダイそれぞれの温度の傾向を説明するための図。
【
図11】実施形態に係るメモリデバイスがホスト機器のプリント回路基板に実装され且つメモリデバイスの上面に熱伝導部材が配置されている場合におけるメモリデバイス内の複数のNAND型フラッシュメモリダイそれぞれの温度の傾向を説明するための図。
【
図12】メモリアクセス中の複数のNAND型フラッシュメモリダイそれぞれの温度の傾向を事前にチェックする学習処理の手順を示すフローチャート。
【
図13】
図12の学習処理の結果に基づいて複数のNAND型フラッシュメモリダイから特定の一つ以上のNAND型フラッシュメモリダイを選択し且つ選択した特定の一つ以上のNAND型フラッシュメモリダイにそれぞれ含まれる温度センサのみを使用してサーマルコントロールを実行する手順を示すフローチャート。
【
図14】室温にてテスタによってウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサのキャリブレーションを行う、比較例に係るキャリブレーション動作を説明するための図。
【
図15】サーマルコントロールが開始される温度付近にてテスタによってウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサのキャリブレーションを行う、実施形態に係るキャリブレーション動作の例を説明するための図。
【
図16】NAND型フラッシュメモリダイの保証温度の上限にてテスタによってウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサのキャリブレーションを行う、実施形態に係るキャリブレーション動作の別の例を説明するための図。
【
図17】各NAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサの構成例を示すブロック図。
【
図18】テスタによって実行される温度センサのキャリブレーション処理の手順の例を示すフローチャート。
【
図19】テスタによって温度センサの温度特性の傾きを調整する例を説明するための図。
【
図20】テスタによって温度センサの温度特性の切片を調整する例を説明するための図。
【
図21】実施形態に係るメモリデバイスがリムーバブルメモリデバイスとして実現される場合のパッケージの例を示す図。
【
図22】実施形態に係るメモリデバイスが表面実装型メモリデバイスとして実現される場合のパッケージの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。
図1は、実施形態に係るメモリデバイス10の構成例を示す図である。このメモリデバイス10は、コントローラと、積層された複数のNAND型フラッシュメモリダイとを一つのパーケッジに内蔵したデバイスである。
【0008】
メモリデバイス10は、ホスト機器として機能するパーソナルコンピュータ、モバイルデバイスといった様々な情報処理装置に接続可能である。メモリデバイス10は、ホスト機器内のプリント回路基板(PCB)201に実装された不図示のコネクタ(ソケットとも称される)に装着可能なリムーバブルメモリデバイスとして実現されてもよい。あるいは、メモリデバイス10は、ホスト機器内のプリント回路基板201に実装される表面実装型メモリデバイスとして実現されてもよい。
【0009】
メモリデバイス10のパッケージ(本体)11はZ軸方向に沿った厚みを有しており、パッケージ11の下面である第1の面21と、パッケージ11の上面である第2の面22とを含む。第2の面22は第1の面21と逆側の面である。
【0010】
メモリデバイス10は、パッケージ基板12、NAND型フラッシュメモリ13、コントローラ14、複数の端子Pを含む。
【0011】
パッケージ基板12の表面上には、NAND型フラッシュメモリ13とコントローラ14とが実装されている。
図1に示すように、パッケージ基板12の裏面は第1の面21として外部に露出されていてもよい。複数の端子Pは第1の面21に配置されており、第1の面21で露出される。パッケージ基板12の裏面が第1の面21として外部に露出されている場合、複数の端子Pはパッケージ基板12の裏面に配置される。
複数の端子Pは、例えば、複数の電源端子、複数のグランド端子、複数の信号端子を含む。
第2の面22は印刷面等として使用され、第2の面22には端子Pは配置されていない。
【0012】
NAND型フラッシュメモリ13は、多段積層された複数のNAND型フラッシュメモリダイ(NAND型フラッシュメモリチップとも称される)を含む。これら複数のNAND型フラッシュメモリダイは、パッケージ基板12の表面上においてZ軸方向に沿って積層されている。
【0013】
積層された複数のNAND型フラッシュメモリダイの個数は限定されないが、
図1では、8個のNAND型フラッシュメモリダイ131~138が積層されている場合が例示されている。NAND型フラッシュメモリダイ131~138は不揮発性メモリダイの一例である。
【0014】
NAND型フラッシュメモリダイ131~138は、温度センサTH_N0~TH_N7をそれぞれ内蔵している。温度センサTH_N0~TH_N7は、NAND型フラッシュメモリダイ131~138の温度(ジャンクション温度とも称される)Tj_N0~Tj_N7をそれぞれ測定する。
【0015】
温度センサTH_N0~TH_N7の各々は、例えば、温度検出回路とアナログ/デジタルコンバータとを含む。
【0016】
コントローラ14もパッケージ基板12の表面上に実装されている。コントローラ14は、NAND型フラッシュメモリダイ131~138を制御するように構成されたLSIである。コントローラ14も温度センサTH_Cを内蔵している。
【0017】
温度センサTH_Cは、コントローラ14の温度(ジャンクション温度とも称される)Tj_Cを測定する。温度センサTH_Cも、温度センサTH_N0~TH_N7の各々と同様に、例えば、温度検出回路とアナログ/デジタルコンバータとを含む。
【0018】
NAND型フラッシュメモリ13(つまりNAND型フラッシュメモリダイ131~138)がコントローラ14によってアクセスされている間は、NAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々はその電力消費量に応じた熱を発生する。
【0019】
NAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々の熱は、主に、第1の面21からホスト機器のプリント回路基板201への熱伝導によって放熱される。NAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々の熱の一部は第2の面22から空気中への熱伝達によっても放熱されるが、空気中への熱伝達によって放熱される熱量はプリント回路基板201への熱伝導によって放熱される熱量よりも少ない。
【0020】
NAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々の温度は、NAND型フラッシュメモリダイの保証温度の上限を超えてはならない。保証温度は、各NAND型フラッシュメモリダイが安全に動作することを保証可能な温度範囲である。
【0021】
このため、コントローラ14は、NAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々の発熱を抑えるために、NAND型フラッシュメモリダイ131~138に対するコマンドの発行頻度またはNAND型フラッシュメモリダイ131~138に対するアクセス速度を下げる機能を実装している。この機能はサーマルコントロール(またはサーマルスロットリング)と称される。
【0022】
コマンドの発行頻度を下げる動作は、ある1期間当たりにコントローラ14から各NAND型フラッシュメモリダイに発行されるコマンドの数を間引くことによって、1期間当たりに各NAND型フラッシュメモリダイに発行されるコマンドの頻度を下げる動作である。
【0023】
アクセス速度を下げる動作は、コントローラ14から各NAND型フラッシュメモリダイに送信される制御信号(例えば、リードイネーブル信号、ライトイネーブル信号、等)の周期を長くすることによって、リード/ライトアクセスに要する時間を長くする動作である。
【0024】
NAND型フラッシュメモリダイ131~138のうちのどのNAND型フラッシュメモリダイの温度も保証温度の上限を超えないように、コントローラ14は、サーマルコントロールを実行する。
【0025】
ここで、まず、比較例に係るサーマルコントロール動作について説明する。
【0026】
比較例に係るサーマルコントロール動作は、コントローラ14に内蔵された温度センサTH_Cによって測定される温度Tj_CからTj_N_maxを推測する。Tj_N_maxは、Tj_N0~Tj_N7のうちの最も高い温度である。
【0027】
一般に、Tj_C > Tj_N_maxが成り立つ場合が多い。しかし、Tj_CとTj_N_maxとの相関を数式化するのは難しい。
【0028】
このため、Tj_CからTj_N_maxを推測するケースにおいては、大きなマージンを見込んだ上でTj_N_maxの推測値を求めることが必要である。この結果、推測されるTj_N_maxの値は実際のTj_N_maxよりも高くなる場合が多い。
【0029】
これにより、実際のTj_N_maxがサーマルコントロールを開始すべき温度に上昇する前にサーマルコントロールが早めに発動されてしまい、NAND型フラッシュメモリ13のアクセス性能の不必要な低下が引き起こされる。
【0030】
次に、本実施形態に係るサーマルコントロール動作について説明する。
【0031】
本実施形態では、コントローラ14は、Tj_CからTj_N_maxを推測するのではなく、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138にそれぞれ内蔵された温度センサTH_N0~TH_N7によって測定された温度Tj_N0~Tj_N7を用いてTj_N_maxを推測する。
【0032】
この場合、コントローラ14は、温度センサTH_N0~TH_N7によって測定された温度Tj_N0~Tj_N7をNAND型フラッシュメモリダイ131~138から読み出す。そして、コントローラ14は、読み出した温度Tj_N0~Tj_N7のうちの最高温度を、Tj_N_maxとして使用する。
【0033】
コントローラ14は、温度Tj_N0~Tj_N7のうちの最高温度Tj_N_maxが閾値温度以上である場合に、サーマルコントロールを行う。
【0034】
これにより、TH_CからTj_N_maxを推測する比較例に係るサーマルコントロール動作に比べ、Tj_N_maxの精度を高めることが可能となる。よって、比較例に係るサーマルコントロール動作よりもサーマルコントロールが発動されるタイミングを遅らせることができるので、NAND型フラッシュメモリダイ131~138が最大アクセス性能で動作可能な時間を長くすることができる。換言すれば、メモリデバイス10の熱設計の限界近くまで、アクセス性能を高めることが可能となる。
【0035】
さらに、本実施形態では、NAND型フラッシュメモリダイ131~138に内蔵された温度センサTH_N0~TH_N7の各々の測定温度誤差を低減する構成も採用される。
【0036】
次に、メモリデバイス10に含まれるコントローラ14の構成例を説明する。
図2は、コントローラ14の構成例を示すブロック図である。
【0037】
コントローラ14は、ホストインタフェース制御回路141、制御部142、NANDインタフェース制御回路143、バッファメモリ144、およびECCエンコード/デコード部145、等を含む。
【0038】
ホストインタフェース制御回路141、制御部142、NANDインタフェース制御回路143、バッファメモリ144、およびECCエンコード/デコード部145は、バス140に接続されている。
【0039】
ホストインタフェース制御回路141は、ホスト機器との通信を実行するように構成されている。ホストインタフェース制御回路141は、ホスト機器から様々な要求を受信する。様々な要求には、ライト要求、リード要求、等が含まれる。
【0040】
制御部142は、ホストインタフェース制御回路141、NANDインタフェース制御回路143、バッファメモリ144、およびECCエンコード/デコード部145を制御するように構成されている。制御部142は、CPUのようなプロセッサによって実現される。
【0041】
制御部142は、制御プログラム(ファームウェア)を実行することによって、ライト制御処理およびリード制御処理を含む様々な処理を行う。ライト制御処理は、NANDインタフェース制御回路143を介して書き込み対象のNAND型フラッシュメモリダイにデータを書き込む処理である。リード制御処理は、NANDインタフェース制御回路143を介してリード対象のNAND型フラッシュメモリダイからデータを読み出す処理である。
【0042】
さらに、制御部142は、サーマルスロットリング制御部142aを有する。サーマルスロットリング制御部142aは、NAND型フラッシュメモリ13に含まれる複数のNAND型フラッシュメモリダイ131~138から温度をそれぞれ読み出す。NAND型フラッシュメモリダイ131~138から読み出される温度は、NAND型フラッシュメモリダイ131~138に内蔵された温度センサTH_N0~TH_N7によって測定された温度である。
【0043】
サーマルスロットリング制御部142aは、温度取得用の特定のアドレスを指定するリードコマンドを各NAND型フラッシュメモリダイに送信することによって、このNAND型フラッシュメモリダイ内の温度センサによって測定された温度をこのNAND型フラッシュメモリダイから読み出すことができる。以下では、温度センサによって測定された温度は、「センサ出力」、または「温度出力」とも称する。
【0044】
サーマルスロットリング制御部142aは、複数のNAND型フラッシュメモリダイ131~138からそれぞれ読み出された複数の温度出力のうちの最高温度を、Tj_N_maxとして使用する。
【0045】
サーマルスロットリング制御部142aは、Tj_N_maxと閾値温度とを比較し、Tj_N_maxが閾値温度以上である場合、NAND型フラッシュメモリ13に含まれるNAND型フラッシュメモリダイ131~138に対するコマンドの発行頻度またはNAND型フラッシュメモリダイ131~138に対するアクセス速度を下げるサーマルコントロールを実行する。ここでは、サーマルコントロールのために使用される閾値温度が一つである場合について説明したが、互いに異なる複数の閾値温度がサーマルコントロールのために使用されてもよい。
【0046】
NANDインタフェース制御回路143は、制御部142の制御の下、複数のNAND型フラッシュメモリダイを制御するように構成されたメモリ制御回路である。NANDインタフェース制御回路143は、複数のチャンネルCh(Ch#0~Ch#n)を介して複数のNAND型フラッシュメモリダイに接続されている。
【0047】
バッファメモリ144は、ホスト機器から受信されるライトデータを一時的に格納するライトバッファ、およびNAND型フラッシュメモリダイから読み出されたデータを一時的に格納するリードバッファとして機能する。
【0048】
ECCエンコード/デコード部145は、NAND型フラッシュメモリダイに書き込むべきユーザデータをエンコード(ECCエンコード)することによってユーザデータにエラー訂正コード(ECC)を冗長コードとして付加する。NAND型フラッシュメモリダイからユーザデータが読み出された時、ECCエンコード/デコード部145は、読み出されたデータに付加されたECCを使用して、ユーザデータのエラー訂正を行う(ECCデコード)。
【0049】
次に、本実施形態に係るサーマルコントロール動作の手順の例について説明する。
図3は、コントローラ14によって実行されるサーマルコントロール動作の手順を示すフローチャートである。
【0050】
例えば、
図1で説明したように8つのNAND型フラッシュメモリダイ131~138が積層されている場合、Tj_N0~Tj_N7のうちの最大値がTj_N_maxとして使用される。
【0051】
ここでは、各NAND型フラッシュメモリダイの転送速度が互いに異なる以下の4つの状態(内部状態)L1~L4が定義されている場合を想定する。転送速度は、例えば、リードアクセスまたはライトアクセスのスループットを表す。
【0052】
L1: 各NAND型フラッシュメモリダイの転送速度は最大転送速度MAXに設定される。
【0053】
L2: 各NAND型フラッシュメモリダイの転送速度は転送速度Aに設定される。転送速度Aは最大転送速度MAXよりも遅く且つ後述する転送速度Bよりも速い。
【0054】
L3: 各NAND型フラッシュメモリダイの転送速度は転送速度Bに設定される。転送速度Bは転送速度Aよりも遅く且つ後述する転送速度Cよりも速い。
【0055】
L4: 各NAND型フラッシュメモリダイの転送速度は転送速度Cに設定される。転送速度Cは転送速度Bよりも遅い。
【0056】
コントローラ14は、Tj_N_maxと3つの閾値温度(TMT1、TMT2、TMT3)とを使用して、各NAND型フラッシュメモリダイの転送速度を制御する。ここで、TMT1、TMT2、TMT3は、TMT1<TMT2<TMT3という関係を有している。
【0057】
まず、コントローラ14は、Tj_N_maxと閾値温度TMT1とを比較し、Tj_N_maxが閾値温度TMT1未満であるか否かを判定する(ステップS11)。Tj_N_maxが閾値温度TMT1未満である間は(ステップS11におけるYES)、コントローラ14は、各NAND型フラッシュメモリダイの内部状態が状態L1となるように各NAND型フラッシュメモリダイに対するアクセスを制御する(ステップS14)。この場合、各NAND型フラッシュメモリダイの転送速度は最大転送速度MAXに設定される。
【0058】
Tj_N_maxが閾値温度TMT1以上である場合(ステップS11におけるNO)、コントローラ14は、Tj_N_maxが閾値温度TMT1以上で且つ閾値温度TMT2未満の温度であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0059】
Tj_N_maxが閾値温度TMT1以上で且つ閾値温度TMT2未満の温度である間は(ステップS12におけるYES)、コントローラ14は、各NAND型フラッシュメモリダイの内部状態が状態L2となるように各NAND型フラッシュメモリダイに対するアクセスを制御する(ステップS15)。この場合、各NAND型フラッシュメモリダイの転送速度は最大転送速度MAXよりも遅い転送速度Aに設定される。
【0060】
Tj_N_maxが閾値温度TMT2以上である場合(ステップS12におけるNO)、コントローラ14は、Tj_N_maxが閾値温度TMT2以上で且つ閾値温度TMT3未満の温度であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0061】
Tj_N_maxが閾値温度TMT2以上で且つ閾値温度TMT3未満の温度である間は(ステップS13におけるYES)、コントローラ14は、各NAND型フラッシュメモリダイの内部状態が状態L3となるように各NAND型フラッシュメモリダイに対するアクセスを制御する(ステップS16)。この場合、各NAND型フラッシュメモリダイの転送速度は転送速度Aよりも遅い転送速度Bに設定される。
【0062】
Tj_N_maxが閾値温度TMT3以上である場合(ステップS13におけるNO)、コントローラ14は、各NAND型フラッシュメモリダイの内部状態が状態L4となるように使用して各NAND型フラッシュメモリダイに対するアクセスを制御する(ステップS17)。この場合、各NAND型フラッシュメモリダイの転送速度は転送速度Bよりも遅い転送速度Cに設定される。
【0063】
ここでは、3つの閾値温度を使用する場合を説明したが、使用する閾値温度の数は2以下であってもよいし、4以上であってもよい。
【0064】
図4は、メモリアクセス中におけるTj_N_maxと転送速度との関係の例を示す図である。
【0065】
図4では、例えば、転送速度Aが最大転送速度MAXの1/2、転送速度Bが最大転送速度MAXの1/4、転送速度Cが最大転送速度MAXの1/8の場合が例示されている。最大転送速度MAXに対する転送速度A、B、Cの比率はこの例に限定されず、MAX>A>B>Cの関係を満たす他の任意の比率を使用することができる。例えば、転送速度Aが最大転送速度MAXの3/5、転送速度Bが最大転送速度MAXの2/5、転送速度Cが最大転送速度MAXの1/5であってもよい。
【0066】
Tj_N_maxがTMT1未満である間は、転送速度は最大転送速度MAXに設定される。Tj_N_maxがTMT1以上になると(タイミングt1)、転送速度は最大転送速度MAXから転送速度Aに低下される。
【0067】
これにより、Tj_N_maxがTMT1未満に低下すると(タイミングt2)、転送速度は転送速度Aから最大転送速度MAXに増加される。この状態でTj_N_maxが再びTMT1以上になると(タイミングt3)、転送速度は最大転送速度MAXから転送速度Aに再び低下される。
【0068】
もしTj_N_maxが上昇し続け、そしてTMT2以上になると(タイミングt4)、転送速度は転送速度Aから転送速度Bに再び低下される。これにより、Tj_N_maxがTMT2未満に低下すると(タイミングt5)、転送速度は転送速度Bから転送速度Aに増加される。この状態でTj_N_maxが再びTMT2以上になると(タイミングt6)、転送速度は転送速度Aから転送速度Bに低下される。
【0069】
もしTj_N_maxが上昇し続け、そしてTMT3以上になると(タイミングt7)、転送速度は転送速度Bから転送速度Cに低下される。これにより、Tj_N_maxがTMT3未満に低下すると(タイミングt8)、転送速度は転送速度Cから転送速度Bに増加される。この状態でTj_N_maxが再びTMT3以上になると(タイミングt9)、転送速度は転送速度Bから転送速度Cに低下される。これにより、Tj_N_maxがTMT3未満に低下すると(タイミングt10)、転送速度は転送速度Cから転送速度Bに増加される。
【0070】
次に、各NAND型フラッシュメモリダイの構成例について説明する。
図5は、各NAND型フラッシュメモリダイに含まれるセルアレイの階層構造の例を示す図である。
【0071】
図5では、NAND型フラッシュメモリダイ131(NANDダイ#0としても参照される)に含まれるセルアレイの階層構造が例示されている。
【0072】
NANDダイ#0はチップイネーブル信号を受信するためのチップイネーブル端子CEを有している。チップイネーブル信号がアサートされると、NANDダイ#0へのアクセスが可能となる。
【0073】
通常、NANDダイ#0のセルアレイは、複数のプレーンを含む。
図5では、NANDダイ#0のセルアレイが2つのプレーン(プレーン#0、プレーン#1)を含む場合が例示されている。各プレーンの各々は、複数のブロックを含む。各ブロックは、データを消去する消去動作の単位である。各ブロックは、複数のページを含む。各ページは、データ書き込み動作およびデータ読み出し動作の単位である。一つのページは、同一ワード線に接続された複数のメモリセルを含む。
【0074】
図6は、コントローラ14とNAND型フラッシュメモリダイ131~138との間の接続例を示す図である。
【0075】
図6では、コントローラ14が4つのチャンネルCh#0~Ch#3を介してNAND型フラッシュメモリダイ131~138に接続されており、各チャンネルに2つのNAND型フラッシュメモリダイが接続されているケースが例示されている。
【0076】
チャンネルCh#0~Ch#3の各々は、例えば、8ビット幅のIOバス、および複数の制御信号線(コマンドラッチイネーブル信号線、アドレスラッチイネーブル信号線、リードイネーブル信号線、ライトイネーブル信号線、等)を含む。
【0077】
チャンネルCh#0にはNAND型フラッシュメモリダイ131、132が接続されている。同様に、チャンネルCh#1にはNAND型フラッシュメモリダイ133、134が接続され、チャンネルCh#2にはNAND型フラッシュメモリダイ135、136が接続され、チャンネルCh#3にはNAND型フラッシュメモリダイ137、138が接続されている。
【0078】
また、NAND型フラッシュメモリダイ131~138それぞれのチップイネーブル端子には、コントローラ14からのチップイネーブル信号CE0~CE7がそれぞれ個別に供給される。
【0079】
図7は、NAND型フラッシュメモリダイ131~138をインターリーブによって並列にアクセスする動作の例を示す。
図7では、NAND型フラッシュメモリダイ131~138をインターリーブによって並列にライトアクセスする動作が例示されている。
【0080】
図7において、DINは、1ページ分のライトデータ(例えば16KBのデータ)をNAND型フラッシュメモリダイに転送するためのデータ入力サイクルを示している。各NAND型フラッシュメモリダイが2つのプレーン#0、#1を含むマルチブレーン構成を有するケースにおいては、2つの連続するデータ転送サイクルDIN(0)、DIN(1)によって2ページ分のライトデータ(例えば32KBのデータ)が転送される。
【0081】
データ転送サイクルDIN(0)では、プレーン#0に属する書き込み対象ブロックに書き込むべき1ページ分のライトデータがNAND型フラッシュメモリダイに転送され、データ転送サイクルDIN(1)では、同じNAND型フラッシュメモリダイのプレーン#1に属する書き込み対象ブロックに書き込むべき1ページ分のライトデータがこのNAND型フラッシュメモリダイに転送される。
【0082】
tPROGは、各NAND型フラッシュメモリダイにおいてページプログラム動作が実行されているプログラム時間を示している。tPROGにおいては、プレーン#0に対応するページプログラム動作とプレーン#1に対応するページプログラム動作とが並列に実行される。
【0083】
チャンネルCh#0~Ch#3の各々においては、あるNAND型フラッシュメモリダイがプログラム動作を実行している期間に、別のNAND型フラッシュメモリダイへのライトデータの転送が実行される(インターリーブ)。
【0084】
このように、NAND型フラッシュメモリダイ131~138をインターリーブによって並列にアクセスすることにより、全てのNAND型フラッシュメモリダイ131~138を並列に動作させることができる。
【0085】
次に、本実施形態のサーマルコントロールの詳細を説明する。本実施形態のサーマルコントロールの詳細の説明に先立ち、まず、比較例に係るサーマルコントロールについて説明する。
図8は、コントローラ14の温度センサTH_Cを使用して実行される、比較例に係るサーマルコントロールを説明するための図である。
【0086】
比較例では、コントローラ14の温度センサTH_Cによって測定されるコントローラ14の温度からTj_N_maxを推測することでサーマルコントロールを行う。
【0087】
しかし、コントローラ14はNAND型フラッシュメモリダイ131~138から物理的に離れた位置に存在するため、コントローラ14の温度からTj_N_maxを精度よく推測することは難しい。また温度センサTH_Cの測定温度自体に含まれる誤差(測定温度誤差)も存在する。
【0088】
したがって、コントローラ14の温度からTj_N_maxを推測するケースにおいては、まず、大きなマージンを見込んで温度センサTH_Cの温度出力からコントローラ14の温度を推測し、さらに、このコントローラ14の温度の推測値からTj_N_maxを推測することが必要となる。比較例に係るサーマルコントロールでは、例えば、温度センサTH_Cの測定値から4℃のマージンを見込んで、コントローラ14の温度を推測することが必要となる。
【0089】
図9は、NAND型フラッシュメモリダイ131~138にそれぞれ含まれる温度センサTH_N0~TH_N7を使用して実行される、実施形態に係るサーマルコントロールを説明するための図である。
【0090】
実施形態に係るサーマルコントロールにおいては、コントローラ14は、温度センサTH_N0~TH_N7の温度出力をNAND型フラッシュメモリダイ131~138から読み出し、読み出した温度センサTH_N0~TH_N7の温度出力からTj_N_maxを推測することでサーマルコントロールを行う。
【0091】
積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138の温度は同一ではない。また、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138のうちのどの一つのNAND型フラッシュメモリダイの温度も、NAND型フラッシュメモリダイの保証温度の上限を超えてはいけない。
【0092】
したがって、コントローラ14は、全ての温度センサTH_N0~TH_N7の温度出力をNAND型フラッシュメモリダイ131~138から読み出し、そして読み出した温度センサTH_N0~TH_N7の温度出力のうちで最も高い温度をTj_N_maxとして使用することによって、サーマルコントロールを行う。
【0093】
温度センサTH_N0~TH_N7の各々の温度出力を示すデータは、各NAND型フラッシュメモリダイに特定のアドレスを指定するリードコマンドを送信することによって、各NAND型フラッシュメモリダイから読み出すことができる。
【0094】
温度センサTH_N0~TH_N7の各々の温度出力を各NAND型フラッシュメモリダイから読み出す処理は、メモリデバイス10のアクセス性能に影響の無いような方法を用いて実行される。
【0095】
例えば、コントローラ14は、全ての温度センサTH_N0~TH_N7の測定値を常時監視するのではなく、一定時間(たとえば1秒)おきに、全ての温度センサTH_N0~TH_N7の温度出力をNAND型フラッシュメモリダイ131~138から読み出してもよい。
【0096】
本実施形態では、NAND型フラッシュメモリダイ131~138に内蔵された温度センサTH_N0~TH_N7によって測定された温度からTj_N_maxが推測されるので、Tj_N_maxの推測に際しては、各温度センサTH_N0~TH_N7の測定温度誤差のみをマージンとして見込めばよい。
【0097】
そのため、比較例に係るサーマルコントロールにおいて必要とされたマージン4℃をキャンセルすることができる。
【0098】
また、本実施形態は、パッケージ11内のNAND型フラッシュメモリダイ131~138の放熱傾向を用いて一番高いTj_Nを高速にサーチする手法も採用している。
【0099】
さらに、本実施形態は、温度センサのキャリブレーション温度を変えることで温度センサの測定温度誤差を低減する手法も採用している。
【0100】
次に、パッケージ11内のNAND型フラッシュメモリダイ131~138の放熱傾向について説明する。
図10は、メモリデバイス10がホスト機器のプリント回路基板201に実装された場合におけるメモリデバイス10内の積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138それぞれの温度の傾向を説明するための図である。
【0101】
メモリデバイス10の熱は、主に、第1の表面21を介したホスト機器のプリント回路基板201への熱伝導によって放熱される。このため、第1の表面21に近い位置における放熱効率は高い。一方、メモリデバイス10の熱は第2の表面22を介した空気中への熱伝達によっても放熱されるが、空気中への熱伝達によって放熱される熱量は少ない。
【0102】
したがって、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138を含むメモリデバイス10においては、プリント回路基板201に近い一つ以上のNAND型フラッシュメモリダイの温度が比較的低く、且つプリント回路基板201から遠い位置に存在する一つ以上のNAND型フラッシュメモリダイの温度が比較的高いという傾向がある。
【0103】
したがって、積層されたNAND型フラッシュメモリダイの総数がN(Nは2以上の整数)である場合には、コントローラ14は、必ずしも、N個のNAND型フラッシュメモリダイの温度を全て読み出す必要は無い。つまり、パッケージ11内のNAND型フラッシュメモリダイ131~138の放熱傾向を考慮することにより、一番高いTj_Nを高速にサーチすることが可能となる。
【0104】
この場合、コントローラ14は、NAND型フラッシュメモリダイ131~138から選択された温度監視対象のN-1個以下のNAND型フラッシュメモリダイに内蔵されたN-1個以下の温度センサによってそれぞれ測定された温度を温度監視対象のN-1個以下のNAND型フラッシュメモリダイから読み出す。そして、コントローラ14は、読み出した温度のうちの最高温度が閾値温度以上である場合に、サーマルコントロールを実行する。
【0105】
積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138のうちの最下層に位置するNAND型フラッシュメモリダイ131は第2の面22よりも第1の面21に近い位置に配置されており、NAND型フラッシュメモリダイ131~138のうちで最も温度が低い可能性が高い。よって、NAND型フラッシュメモリダイ131は温度監視対象から除外可能である。NAND型フラッシュメモリダイ131のみならず、第1の面21に近い2以上のNAND型フラッシュメモリダイを温度監視対象から除外してもよい。
【0106】
したがって、温度監視対象のN-1個以下のNAND型フラッシュメモリダイは、NAND型フラッシュメモリダイ131~138から少なくともNAND型フラッシュメモリダイ131を除いた他の一つ以上の不揮発性メモリダイを含むこととなる。
【0107】
図11は、メモリデバイス11がホスト機器のプリント回路基板201に実装され且つメモリデバイスの上面(第2の面22)にTIM(thermal interface matelial)202のような熱伝導部材が配置されている場合におけるメモリデバイス11内の積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138それぞれの温度の傾向を説明するための図である。
【0108】
図11のように第2の面22にTIM202が貼り付けられている場合には、メモリデバイス10の熱は第2の表面22を介したTIM202への熱伝導によっても放熱されるので、プリント回路基板201から遠い位置に存在する一つ以上のNAND型フラッシュメモリダイの放熱効率も改善される。
【0109】
したがって、
図11の構造においては、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138のうち、中央部付近に存在する一つ以上のNAND型フラッシュメモリダイの温度が最も高くなる傾向となる。
【0110】
この場合、少なくとも、最下層に位置するNAND型フラッシュメモリダイ131と最上層に位置するNAND型フラッシュメモリダイ138を温度監視対象から除外してもよい。
【0111】
温度監視対象のN-1個以下のNAND型フラッシュメモリダイは、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138がアクセスされている間のNAND型フラッシュメモリダイ131~138それぞれの温度を事前に学習することによって、精度よく決定することができる。
【0112】
換言すれば、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138のうちのどのNAND型フラッシュメモリダイの温度が高いのか/低いのかを学習する処理を事前に行うことにより、コントローラ14は、全てのNAND型フラッシュメモリダイ131~138の温度を読み出すのではなく、より温度が高い特定の一つ以上のNAND型フラッシュメモリダイ内の温度センサの温度出力のみを読み出すことによってサーマルコントロールを行うことができる。
【0113】
図12は、メモリアクセス中のNAND型フラッシュメモリダイ131~138それぞれの温度の傾向を事前にチェックする学習処理の手順の例を示すフローチャートである。
【0114】
学習処理においては、コントローラ14は、NAND型フラッシュメモリダイ131~138に対するシーケンシャルアクセスを行い(ステップS21)、シーケンシャルアクセスの実行中に、温度センサTH_N0~TH_N7によってそれぞれ測定された温度(温度センサTH_N0~TH_N7それぞれの測定値)をNAND型フラッシュメモリダイ131~138から読み出す(ステップS22)。
【0115】
コントローラ14は、読み出した温度センサTH_N0~TH_N7それぞれの測定値を学習結果として保存する(ステップS23)。学習結果は、例えば、コントローラ14のファームウェアのテーブルに保存されてもよい。
【0116】
このような学習処理を行うことにより、より温度が高くなる傾向があるNAND型フラッシュメモリダイを温度監視対象のNAND型フラッシュメモリダイとして特定することができる。よって、パッケージ11内に積層されたN個のNAND型フラッシュメモリダイの中から学習処理によって温度監視対象として選択されたN-1個以下のNAND型フラッシュメモリダイ内のN-1個以下の温度センサの温度出力のみを読み出すことによってサーマルコントロールを行うことができる。温度監視対象として選択されたN-1個以下のNAND型フラッシュメモリダイを示す情報は、コントローラ14のファームウェアのテーブルに保存されてもよい。
【0117】
事前に学習処理を行うタイミングの例としては、下記が挙げられる。
【0118】
(1)メモリデバイス11の開発者がコントローラ14のファームウェアの開発中に学習処理を行う。
【0119】
(2)メモリデバイス11の出荷前のファイナルテストで学習処理を行う。
【0120】
(3)ホスト機器を製造するセットメーカーにおいて、ホスト機器の開発中に学習処理を行う。
【0121】
図13は、
図12の学習処理によって温度監視対象として特定されたN-1個以下のNAND型フラッシュメモリダイにそれぞれ含まれる温度センサのみを使用して、サーマルコントロールを実行する手順を示すフローチャートである。
【0122】
メモリデバイス11の出荷後においては、コントローラ14は、一定時間(たとえば1秒)おきに、学習処理によって特定されたN-1個以下のNAND型フラッシュメモリダイにそれぞれ含まれる温度センサの温度出力のみをこれら特定されたN-1個以下のNAND型フラッシュメモリダイから読み出す(ステップS31)。そして、コントローラ14は、読み出したN-1個以下の温度センサの温度出力のうちの最高温度をTj_N_maxとして使用することによって、
図3のサーマルコントロールを行う(ステップS32)。
【0123】
なお、学習というアプローチではなく、パッケージ11内の積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138に対応する複合熱抵抗のシミュレーションを行うことによって、Tj_N_maxを推測することも検討可能である。Tj_N_maxを推測する際には、温度センサTH_N0~TH_N7それぞれの温度出力と、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138に対応する複合熱抵抗とを利用して熱抵抗モデルを計算する。
【0124】
次に、温度センサのキャリブレーションを行う温度を変えることで温度センサの測定温度値の誤差を低減する手法について説明する。以下では、理解し易くするために、具体的な数値を用いて説明するが、これら数値は例として示したものであり、本実施形態はこれら数値にのみ限定されるものではない。
【0125】
各NAND型フラッシュメモリダイに内蔵される温度センサTH_Nのキャリブレーションは、ウェハーから各NAND型フラッシュメモリダイを切り出すダイシングの前に、テスタによって行われる。ここで、TH_Nは、ウェハーに含まれるキャリブレーション対象の任意の温度センサを示している。
【0126】
テスタは、ウェハーに形成された複数のLSIチップ(ダイ)を、プローバーを使用して検査する装置である。複数のNAND型フラッシュメモリダイを含むウェハーがプローバーにセットされ、そしてウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイに内蔵される温度センサTH_Nのキャリブレーションが実行される。
【0127】
図14は、室温にてテスタによってウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサTH_Nのキャリブレーションを行う、比較例に係るキャリブレーション動作を説明するための図である。
【0128】
NAND型フラッシュメモリダイの実際の温度Tj_Nと温度センサTH_Nによって測定される温度TH_Nとの間には以下の2種類の誤差が存在する。
【0129】
テスタ誤差:比較例は、室温(30℃付近)にてテスタによって温度センサTH_Nのキャリブレーションを行う。テスタによって設定される雰囲気温度の精度は、例えば、30℃±1.5℃である。このため、±1.5℃の誤差がテスタ誤差として生じる。
【0130】
測定温度誤差:測定温度誤差は温度センサTH_Nのリニアリティ(直線性)によって生じる誤差である。30℃で温度センサTH_Nのキャリブレーションを行っても、測定対象温度と30℃との間の温度差が大きくなるに連れて温度センサTH_Nの測定温度誤差が増える。例えば90℃では、温度センサTH_Nの温度出力には±1.5℃の測定温度誤差が含まれる。
【0131】
したがって、90℃では、テスタ誤差±1.5℃と測定温度誤差±1.5℃とを合計した±3.0℃の誤差が生じる。
【0132】
現状のNAND型フラッシュメモリダイにおいては、サーマルコントロールは室温(例えば30℃)よりも高い温度範囲(70℃以上の温度範囲)において行われる。この温度範囲は、例えば、70℃の前半から85℃の範囲である。
【0133】
このため、本実施形態では、温度センサTH_Nの測定温度誤差を低減するために、室温よりも高い温度にて温度センサTH_Nのキャリブレーションを行う。これにより、温度センサTH_Nのキャリブレーションが行われた温度とサーマルコントロールが行われる温度との間の温度差を少なくすることができるので、サーマルコントロールが必要な温度範囲における温度センサTH_Nの測定温度誤差を低減することが可能となる。
【0134】
図15は、サーマルコントロールが開始される温度付近にてテスタによってウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサTH_Nのキャリブレーションを行う、実施形態に係るキャリブレーション動作の例を説明するための図である。
【0135】
図15では、70℃にてテスタによって温度センサTH_Nのキャリブレーションを行う場合が例示されている。
【0136】
ウェハーの周囲の雰囲気温度はテスタによって70℃付近に設定される。そして、温度センサTH_Nによって測定される温度(以下、温度センサTH_Nの温度出力としても参照される)が70℃になるように、テスタによって温度センサTH_Nがキャリブレーションされる。温度センサTH_Nのキャリブレーションは、例えば、温度センサTH_Nの温度特性を表す直線の傾き(ゲイン)と切片(オフセット)とを調整することによって実行することができる。傾きと切片を調整するための補正値は、最終的には、テスタによってNAND型フラッシュメモリダイに不揮発に書き込まれる。
【0137】
温度センサTH_Nの温度特性は、次の一次関数によって近似することができる。
【0138】
y=ax+b
xは温度センサTH_Nの周囲温度(温度入力)を示し、yは温度センサTH_Nによって測定される温度(温度出力)を示し、aは温度センサTH_Nの温度特性を表す直線の傾きを示し、bはこの直線の切片(y切片)を示す。
【0139】
図14の場合と同様に、テスタ誤差±1.5℃が生じる。しかし、温度センサTH_Nのキャリブレーションは70℃で行われるため、温度センサTH_Nのキャリブレーションが行われた温度とサーマルコントロールが行われる温度との間の温度差を少なくすることができる。例えば、90℃では、温度センサTH_Nの測定値に含まれる誤差を±0.5℃に低減できる。
【0140】
したがって、90℃では、テスタ誤差±1.5℃と測定温度誤差±0.5℃との合計は±2.0℃に低減される。この結果、より精度よくサーマルコントロールを行うことが可能となるので、メモリデバイス11のアクセス性能の不必要な低下を抑制することができる。
【0141】
図16は、NAND型フラッシュメモリダイの保証温度の上限(例えば85℃)にてテスタによってウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサTH_Nのキャリブレーションを行う、実施形態に係るキャリブレーション動作の別の例を説明するための図である。
【0142】
ウェハーの周囲の雰囲気温度はテスタによって85℃付近に設定される。そして、温度センサTH_Nによって測定される温度(温度センサTH_Nの温度出力)が85℃になるように、テスタによって温度センサTH_Nがキャリブレーションされる。
【0143】
図14の場合と同様に、テスタ誤差±1.5℃が生じる。しかし、温度センサTH_Nのキャリブレーションは85℃で行われるため、温度センサTH_Nのキャリブレーションが行われた温度とサーマルコントロールが行われる温度との間の温度差を少なくすることができる。例えば、90℃では、温度センサTH_Nの測定値に含まれる誤差を±0.375℃に低減できる。
【0144】
したがって、90℃では、テスタ誤差±1.5℃と測定温度誤差±0.375℃との合計は±1.875℃に低減される。この結果、Tj_N_maxをより精度よく測定することが可能となるので、Tj_N_maxがサーマルコントロールを開始すべき閾値温度に上昇する前にサーマルコントロールが早いタイミングで発動されてしまうことを抑制することが可能となる。
【0145】
本実施形態では、メモリデバイス11内のNAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々においては、室温(30℃)よりも高い第1の温度(70℃、または85℃)にて温度センサTH_Nの温度出力が第1の温度(70℃、または85℃)となるように温度センサTH_Nの温度特性をキャリブレーションするための補正値が不揮発に格納されている。さらに、NAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々に内蔵された温度センサTH_Nは、対応するNAND型フラッシュメモリダイに不揮発に格納されている補正値を使用して動作するように構成されている。したがって、サーマルコントロールが行われる温度範囲での各温度センサTH_Nの測定温度誤差を低減することができる。
【0146】
補正値は、ウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイを検査するテスタを使用して、第1の温度にてウェハー内の各不揮発性メモリダイに内蔵の温度センサTH_Nをキャリブレーションすることによって求めることができる。この補正値は、温度センサTH_Nの温度特性の傾きおよび切片の各々の補正値を含む。
【0147】
次に、温度センサTH_Nのキャリブレーションを行うための方法の例について説明する。
図17は各NAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサTH_Nの構成例を示すブロック図である。
【0148】
温度センサTH_Nは、温度検出回路301、およびアナログ/デジタルコンバータ(ADコンバータ)302を含む。ADコンバータ302は、温度検出回路301のアナログ出力値(出力電圧)を、温度を示すデジタル値(例えば10ビット)に変換する回路である。ADコンバータ302は、例えば、逐次比較用デジタル/アナログコンバータ(DAC)311、コンパレータ(CMP)312、および逐次比較ロジック313を含む。
【0149】
逐次比較ロジック313は、DAC311に対して徐々に出力電圧を上げるよう指示を行う。CMP312は、DAC311の出力電圧と温度検出回路301の出力電圧とを比較し、DAC311の出力電圧と温度検出回路301の出力電圧との大小関係を示す比較結果を出力する。
【0150】
DAC311の出力電圧が温度検出回路301の出力電圧未満である間は、逐次比較ロジック313は、DAC311に対して徐々に出力電圧を上げるよう指示を行う。DAC311の出力電圧は徐々に増加する。DAC311の出力電圧が温度検出回路301の出力電圧以上になると、コンパレータ312の比較結果出力が反転する。逐次比較ロジック313は、比較結果出力が反転した時の温度検出回路301の出力電圧値に割り当てられた温度を示すデジタル値(例えば10ビット)を出力する。
【0151】
温度センサTH_Nのキャリブレーションは、逐次比較ロジック313に対して補正値(傾きおよび切片)を設定することによって行われる。逐次比較ロジック313に設定された補正値(傾きおよび切片)は、ADコンバータ302によって温度検出回路301の出力電圧を温度に変換するために使用される。
【0152】
なお、コントローラ14内蔵の温度センサTH_Cも、NAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサTH_Nと同様の構成によって実現することができる。
【0153】
図18は、ウェハーを検査するためのテスタによって実行される温度センサTH_Nのキャリブレーション処理の手順の例を示すフローチャートである。
【0154】
ここでは、室温(例えば30℃)にて温度センサのキャリブレーション処理が行われる場合を例示してキャリブレーション処理の手順を説明する。
【0155】
テスタは、複数のNAND型フラッシュメモリダイが形成された検査対象ウェハーの周囲の雰囲気温度を30℃(例えば、30℃±1.25℃)に設定する(ステップS101)。
【0156】
テスタは、特定のアドレスを指定するリードコマンドを検査対象のNAND型フラッシュメモリダイに送信して、検査対象のNAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサTH_Nによって測定された温度(温度出力)をこの検査対象のNAND型フラッシュメモリダイから読み取る(ステップS102)。
【0157】
テスタは、テスタプログラムに従って、まず、雰囲気温度30℃に対応する事前評価結果と、読み取った温度出力とから、温度センサTH_Nに設定すべき補正値(傾きの補正値)を求め、そしてこの傾きの補正値を温度センサTH_Nのキャリブレーション用のレジスタ等に書き込むことによって、温度センサTH_Nの温度特性の傾きを調整する(ステップS103)。
【0158】
ステップS102、S103の傾き調整においては、
図19に示すように、温度センサTH_Nの温度特性の傾きが補正値によって示される傾きになるように調整される。
図19では、実線で示される直線は、傾きが調整される前の温度センサTH_Nの温度特性を表し、破線で示される直線は、傾きが調整された後の温度センサTH_Nの温度特性を表している。
【0159】
テスタは、特定のアドレスを指定するリードコマンドを検査対象のNAND型フラッシュメモリダイに再び送信して、検査対象のNAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサTH_Nによって測定された温度(温度出力)をこの検査対象のNAND型フラッシュメモリダイから読み取る(ステップS104)。
【0160】
テスタは、雰囲気温度30℃に対応する事前評価結果と、読み取った温度出力とから、温度センサTH_Nに設定すべき補正値(切片の補正値)を求め、そしてこの切片の補正値を温度センサTH_Nのキャリブレーション用のレジスタ等に書き込むことによって、温度センサTH_Nの温度特性の切片(オフセット)を調整する(ステップS105)。
【0161】
ステップS104、S105の切片調整においては、
図20に示すように、温度センサTH_Nの温度特性の切片が補正値によって示される切片になるように調整される。
図20では、実線で示される直線は、切片が調整される前の温度センサTH_Nの温度特性を表し、破線で示される直線は、切片が調整された後の温度センサTH_Nの温度特性を表している。このように、雰囲気温度30℃において温度出力30℃が温度センサTH_Nから正しく出力されるように切片の調整が行われる。
【0162】
次いで、テスタは、特定のアドレスを指定するリードコマンドを検査対象のNAND型フラッシュメモリダイに再び送信して、検査対象のNAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサTH_Nによって測定された温度(温度出力)をこの検査対象のNAND型フラッシュメモリダイから読み取る(ステップS106)。
【0163】
テスタは、温度センサTH_Nのキャリブレーションが成功したか否かを判定するために、読み取った温度出力が30℃±0.25℃の精度であることを確認する(ステップS107)。読み取った温度出力が30℃±0.25℃の精度である場合には、温度センサTH_Nのキャリブレーションが成功したと判定される。
【0164】
ステップS101における誤差1.25℃とステップS107における誤差0.25℃との合計が、上述した1.5℃のテスタ誤差に相当する。
【0165】
次いで、テスタは、補正値(傾き、切片)を検査対象のNAND型フラッシュメモリダイ内の不揮発記憶領域に書き込む(ステップS108)。NAND型フラッシュメモリダイにおいては、補正値(傾き、切片)は、ユーザデータとは異なる制御情報を格納するために使用される、電気的に書き換え可能なROM領域に書き込まれる。このNAND型フラッシュメモリダイがメモリデバイス10としてパッケージングされた後においては、このNAND型フラッシュメモリダイ内の温度センサTH_Nは、ROM領域に格納されている補正値(傾き、切片)を使用して動作する。
【0166】
なお、コントローラ14の温度センサTH_Cのキャリブレーションを行った場合には、補正値(傾き、切片)は、コントローラ14内の不揮発記憶領域として使用可能な電子フューズ(eFuse)に書き込まれる。
【0167】
テスタは、検査対象ウェハーの周囲の雰囲気温度を90℃(例えば、90℃±1.25℃)に設定する(ステップS109)。
【0168】
テスタは、特定のアドレスを指定するリードコマンドを検査対象のNAND型フラッシュメモリダイに再び送信して、検査対象のNAND型フラッシュメモリダイに含まれる温度センサTH_Nによって測定された温度(温度出力)をこの検査対象のNAND型フラッシュメモリダイから読み取る(ステップS110)。
【0169】
テスタは、読み取った温度出力が、例えば、90℃±1.75℃の精度であることを確認する(ステップS111)。このとき、読み取った温度出力が90℃±1.75℃から外れた場合には検査対象のNAND型フラッシュメモリダイを不良チップとしてマークする。1.75℃は、ステップS107における誤差0.25℃と、90℃における測定温度誤差1.5℃との合計に相当する。
【0170】
本実施形態では、ステップS102、S103の傾き調整、およびステップS104、S105の切片調整は、雰囲気温度を70℃(例えば、70℃±1.25℃)、または85℃(例えば、85℃±1.25℃)に設定された状態で実行される。
【0171】
また、本実施形態では、ステップS107において、読み取った温度出力が70℃±0.25℃の精度であること、または読み取った温度出力が85℃±0.25℃の精度であることが確認される。そして、ステップS108において、補正値(傾き、切片)が検査対象のNAND型フラッシュメモリダイ内の不揮発記憶領域に書き込まれる。NAND型フラッシュメモリダイにおいては、補正値(傾き、切片)は、電気的に書き換え可能なROM領域に書き込まれる。このNAND型フラッシュメモリダイがメモリデバイス10としてパッケージングされた後においては、このNAND型フラッシュメモリダイ内の温度センサTH_Nは、ROM領域に格納されている補正値(傾き、切片)を使用して動作することができる。よって、サーマルコントロールが行われる温度範囲での各温度センサTH_Nの測定温度誤差を低減することが可能となる。
【0172】
なお、本実施形態では、70℃でキャリブレーションを行った場合には、ステップS111において、読み取った温度出力が例えば90℃±0.75℃の精度であることが確認され、85℃でキャリブレーションを行った場合には、ステップS111において、読み取った温度出力が例えば90℃±0.625℃の精度であることが確認される。
【0173】
このように、本実施形態に係るキャリブレーション方法は、メモリデバイス10のパーケージ11にコントローラ14と共に内蔵される積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々に内蔵される温度センサを、NAND型フラッシュメモリダイ131~138のパッケージングの前にキャリブレーションする。
【0174】
この場合、本実施形態に係るキャリブレーション方法は、(1)ウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイを検査するテスタによって、室温よりも高い第1の温度(例えば、70℃、または85℃)にてウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイに内蔵の温度センサの温度特性をキャリブレーションし、そして(2)テスタによって、キャリブレーションによって求められる温度センサの温度特性の補正値をウェハー内の各NAND型フラッシュメモリダイに書き込む。
【0175】
このように70℃または85℃で温度センサのキャリブレーションが行われたNAND型フラッシュメモリダイをメモリデバイス10としてパッケージングすることにより、メモリデバイス11においては、コントローラ14は、サーマルコントロールが行われる温度範囲において、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々の温度センサから誤差の少ない測定温度を読み取ることができる。
【0176】
次に、メモリデバイス10に適用されるパッケージの構造について説明する。
図21は、メモリデバイス10がリムーバブルメモリデバイスとして実現された場合のパッケージの例を示す図である。
メモリデバイス10のパッケージ(本体)11は、例えば、Y軸方向に延びた略矩形の板状に形成される。Y軸方向は、メモリデバイス10およびパッケージ11の長手方向である。パッケージ(本体)11の外縁は、第1の縁31と、第2の縁32と、第3の縁33と、第4の縁34と、第1の角部35と、第2の角部36と、第3の角部37と、第4の角部38とを有する。
【0177】
第1の縁31は、X軸方向に延び、Y軸の正方向に向く。第2の縁32は、Y軸方向に延び、X軸の負方向に向く。第3の縁33は、第2の縁32の反対側に位置してY軸方向に延び、X軸の正方向に向く。第4の縁34は、第1の縁31の反対側に位置してX軸方向に延び、Y軸の負方向に向く。
【0178】
第2の縁32および第3の縁33のそれぞれの長さは、第1の縁31および第4の縁34のそれぞれの長さよりも長い。第1の縁31および第4の縁34は、略矩形のメモリデバイス10の短辺を形成し、第2の縁32および第3の縁33は、略矩形のメモリデバイス10の長辺(側辺)を形成する。
【0179】
第1の角部35は、第1の縁31と第2の縁32との間の角部分であり、第1の縁31のX軸の負方向における端と、第2の縁32のY軸の正方向における端とを接続する。
【0180】
第1の角部35は、第1の縁31のX軸の負方向における端と、第2の縁32のY軸の正方向における端との間で直線状に延びる。第1の縁31と第2の縁32との角が、いわゆるC1.1の角面取り(C面取りともいう)に設定されることで、第1の角部35が設けられる。別の表現によれば、第1の角部35は、第1の縁31と第2の縁32との間に形成された角面取り部Cである。
【0181】
第2の角部36は、第1の縁31と第3の縁33との間の角部分であり、第1の縁31のX軸の正方向における端と、第3の縁33のY軸の正方向における端とを接続する。第2の角部36は、第1の縁31のX軸の正方向における端と、第3の縁33のY軸の正方向における端との間で円弧状に延びる。第1の縁31と第3の縁33との角が、いわゆるR0.2の丸面取り(R面取りともいう)に設定されることで、第2の角部36が設けられる。
【0182】
第3の角部37は、第2の縁32のY軸の負方向における端と、第4の縁34のX軸の負方向における端とを接続する。第4の角部38は、第3の縁33のY軸の負方向における端と、第4の縁34のX軸の正方向における端とを接続する。第3の角部37および第4の角部38はそれぞれ、第2の角部36と同様に円弧状に延びる。
【0183】
パッケージ11は、例えば、Y軸方向における長さが約18±0.10mmに設定され、X軸方向における長さが約14±0.10mmに設定され、Z軸方向における厚さが約1.4mm±0.10mmに設定されてもよい。
【0184】
メモリデバイス10の第1の面21には、複数の端子Pが第1の列R1、第2の列R2、第3の列R3の3列に配置されていてもよい。第1の列R1には、例えば、PCI Express(登録商標)(PCIe)のような高速シリアルインタフェース用の2レーン分の信号端子が配置されている。
【0185】
図21では、メモリデバイス10が32個の端子Pを有している場合を例示しているが、端子Pの数はあくまで一例であって、この例に限られない。すなわち、端子Pの数は32個より少なくてもよいし、32個より多くてもよい。
【0186】
複数の端子Pは3列に並べられ、第1の列R1、第2の列R2および第3の列R3を形成する。第1の列R1に属する端子群Pは、例えば、PCIe規格に準拠した2レーン分の差動信号ペアを伝達するための信号端子として利用される。第2の列R2に属する端子群Pは、製品毎に異なる任意のオプション信号用の信号端子として使用されてもよい。第3の列R3に属する端子群には、製品毎に共通な制御信号、および電源用の端子が配置される。この端子は、主に、差動クロック信号用の信号端子、共通のPCIeサイドバンド信号用の信号端子、電源端子および他の信号端子として利用される。
【0187】
第1の列R1は、第4の縁34よりも第1の縁31に近い位置で互いに間隔を介してX軸方向に並べられた13個の端子P101~端子P113を含む。端子P101~端子P113は、第1の縁31の近傍で、当該第1の縁31に沿ってX軸方向に並べられる。
【0188】
第2の列R2は、第1の縁31よりも第4の縁34に近い位置で互いに間隔を介してX軸方向に並べられた3個の端子P114~端子P116を含む。さらに、第2の列R2は、第1の縁31よりも第4の縁34に近い位置で互いに間隔を介してX軸方向に並べられた3個の端子P117~端子P119を含む。
【0189】
端子P114~端子P116は、X軸方向におけるメモリデバイス10の中心線(一点鎖線で示される)と第2の縁32との間に配置され、端子P117~端子P119は、X軸方向におけるメモリデバイス10の中心線と第3の縁33との間に配置される。
【0190】
端子P116と端子P117との間の間隔は、列R2に属する他の端子間のX方向の間隔(具体的には、端子P114と端子P115との間隔、端子P115と端子P116との間隔、端子P117と端子P118との間隔、端子P118と端子P119との間隔)よりも広い。
【0191】
第3の列R3は、第1の縁31よりも第4の縁34に近い位置で互いに間隔を介してX軸方向に並べられた13個の端子P120~端子P132を含む。第3の列R3に属する端子P120~端子P132は、第2の列R2に属する端子P114~端子P119よりも第4の縁34に近い位置で並べられる。
【0192】
Y軸方向における第1の列R1と第3の列R3との間の距離D1は、Y軸方向における第1の列R1と第1の縁31との間の距離D2、および、Y軸方向における第3の列R3と第4の縁34との間の距離D3よりも長い。
【0193】
第1の列R1、第2の列R2および第3の列R3それぞれの端子PのY軸方向における長さは、同一に設定される。つまり、第1の列R1、第2の列R2および第3の列R3それぞれの端子Pは、当該端子PのY軸の負方向およびY軸の正方向における端が共に揃うように並べられている。
【0194】
第1の面21内の破線で示される領域A1は、ホスト機器のプリント回路基板201に貼り付けられたTIMと接触する接触領域として機能する。つまり、メモリデバイス10がプリント回路基板201上のコネクタに装着された場合には、第1の面21内の各端子Pがコネクタのリードフレームに接触するだけでなく、第1の面21内の領域A1がプリント回路基板201に貼り付けられたTIMと接触する。これにより、第1の面21からホスト機器のプリント回路基板201への熱伝導による放熱効率を十分に高めることができる。
【0195】
図22は、メモリデバイス10が表面実装型メモリデバイスとして実現される場合のパッケージの例を示す図である。
【0196】
ここでは、表面実装型メモリデバイスのパッケージとしてBGAパッケージが例示されている。BGAパッケージはホスト機器のプリント回路基板201に直接的に実装される表面実装型パッケージの一例である。メモリデバイス10のBGAパッケージにおいては、コントローラ14と、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138とが内蔵される。さらに、
図22に示すように、複数のボールが端子Pとして第1の面21に配置される。
【0197】
以上説明したように、本実施形態によれば、コントローラ14は、温度センサTH_N0~TH_N7によって測定された温度をNAND型フラッシュメモリダイ131~138から読み出し、そして読み出した温度センサTH_N0~TH_N7の温度のうちの最高温度をTj_N_maxとして用いることによってサーマルコントロールを行う。
【0198】
コントローラ14内の温度は各NAND型フラッシュメモリダイの温度よりも高い場合が多い。したがって、もしコントローラ14内の温度センサTH_Cによって測定される温度を使用してTj_N_maxを推測したならば、実際のTj_N_maxがサーマルコントロールを開始すべき温度に上昇する前にサーマルコントロールが早めに発動される傾向となり、NAND型フラッシュメモリ13のアクセス性能の不必要な低下が引き起こされる。
【0199】
本実施形態では、温度センサTH_N0~TH_N7によって測定された温度のうちの最高温度をTj_N_maxとして用いることにより、コントローラ14内の温度センサTH_Cによって測定される温度を使用してTj_N_maxを推測する場合よりも、サーマルコントロールが発動されるタイミングを遅らせることができるので、NAND型フラッシュメモリダイ131~138が最大アクセス性能で動作する時間を長くすることができる。よって、メモリデバイス10のアクセス性能の不必要な低下を招くことなくNAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々の温度がNAND型フラッシュメモリダイの保証温度の上限を上回ることを防止することができる。
【0200】
また、コントローラ14は、パッケージ11内に積層されたN個のNAND型フラッシュメモリダイの中から温度監視対象として選択されたN-1個以下のNAND型フラッシュメモリダイ内のN-1個以下の温度センサによって測定された温度のみを読み出すことによってサーマルコントロールを行うことができる。
【0201】
これにより、パッケージ11内に積層されたN個のNAND型フラッシュメモリダイの温度のうちで一番高い温度を高速にサーチすることが可能となる。また、これにより、温度を読み出すために必要なリードアクセスの回数を減らすことができるので、ユーザデータのリード/ライトに関するアクセス性能を改善することができる。
【0202】
温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイは、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138がアクセスされている間のNAND型フラッシュメモリダイ131~138それぞれの温度を事前に学習することによって決定することができる。これにより、精度よく温度監視対象のN-1個以下の不揮発性メモリダイを決定することが可能となる。
【0203】
また、本実施形態では、積層されたNAND型フラッシュメモリダイ131~138の各々は、室温(30℃)よりも高い第1の温度(70℃、または85℃)にて温度センサTH_Nの温度出力が第1の温度(70℃、または85℃)となるように温度センサTH_Nの温度特性をキャリブレーションするための補正値を不揮発に格納している。さらに、各温度センサTH_Nは、対応するNAND型フラッシュメモリダイに不揮発に格納されている補正値を使用して動作するように構成されている。したがって、サーマルコントロールが行われる温度範囲での各温度センサTH_Nの測定温度誤差を低減することができる。
【0204】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0205】
10…メモリデバイス、14…コントローラ、21…第1の面、22…第2の面、P…端子、131~138…NAND型フラッシュメモリダイ、142a…サーマルスロットリング制御部、TH_C…コントローラ内の温度センサ、TH_N0~TH_N7…NAND型フラッシュメモリダイ内の温度センサ、301…温度検出回路、302…ADコンバータ。