(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】コンクリート
(51)【国際特許分類】
C04B 28/08 20060101AFI20240610BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20240610BHJP
C04B 14/18 20060101ALI20240610BHJP
C04B 111/24 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B18/08 Z
C04B14/18
C04B111:24
(21)【出願番号】P 2020084713
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000186968
【氏名又は名称】昭和化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501365631
【氏名又は名称】麻生セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500038662
【氏名又は名称】麻生商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】本松 崇
(72)【発明者】
【氏名】羽原 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】前田 禎夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 義範
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 政司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文則
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030862(JP,A)
【文献】特表平04-500065(JP,A)
【文献】特開2010-132477(JP,A)
【文献】特開2002-274920(JP,A)
【文献】特開昭55-051755(JP,A)
【文献】特開平09-169517(JP,A)
【文献】特開2012-136402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C04B 111/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、細骨材と、粗骨材と、を含むコンクリートであって、
前記セメントが、高炉セメント又は低熱高炉B種セメントであり、
前記細骨材は、II種フライアッシュと、結晶水分が5質量%以下の真珠岩と、を含み、
前記フライアッシュと前記真珠岩との合計量が、コンクリート1m
3当たり50~200kgであ
り、
前記真珠岩の含有率が、前記真珠岩と前記フライアッシュとの合計量の1/10~1/3であることを特徴とする、コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートに関し、より詳しくは、海洋環境下のコンクリート構造物に用いられるコンクリートに関し、特には、塩化物イオンの浸透を抑制し、アルカリ反応性骨材を使用せざるを得ない状況においても、アルカリ骨材反応による膨張ひび割れを低減できるコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
離島や沿岸部等の海洋環境下で使用される大型コンクリート構造物では、海水からの飛沫塩化物イオンの侵入による鉄筋の腐食等の塩害劣化が起き易く、また、使用する骨材がアルカリ反応性である場合には、海水中のナトリウムの侵入が加わり、アルカリ骨材反応による膨張等の劣化が生じ易く、更には、両者による複合劣化を受け易い環境にある。これに対して、ガラス相にAl2O3を多く含むフライアッシュや高炉スラグ等の混合材が有効であり、該混合材を用いることで、ポゾラン反応により、エトリンガイト、モノサルフェート水和物、C4AH13等のカルシウムアルミネート水和物を生成し、塩化物イオンと反応して、フリーデル氏塩(C3A・CaCl2・13H2O)を生成し、コンクリート内部への塩化物イオンの拡散を低減することができる。また、外部から侵入したナトリウム等のアルカリも、ポゾラン反応で生成したCa/Siモル比の低いC-S-Hに固定され、コンクリート中のpHの上昇を低減することができる。しかしながら、従来の高炉B種セメントやフライアッシュB種セメントでは、塩化物イオンの侵入抑制やアルカリ骨材反応による膨張抑制には十分な効果が認められない。
【0003】
また、セメント(結合材)として、フライアッシュB種セメント等のフライアッシュセメントを用いたコンクリートは、強度発現が遅く、初期強度が低いことや、十分な養生が必要である等の問題もある。そこで、フライアッシュを、セメント(結合材)として勘定せず、砂等の細骨材の代替として使用することにより、強度発現を改善する技術が検討されており(非特許文献1)、フライアッシュの容積置換率は10~15%が推奨されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】土木学会四国支部,「フライアッシュを細骨材補充混和材として用いたコンクリートの施工指針(案)」
【文献】四国地区骨材資源対策技術委員会,「フライアッシュの海砂代替材技術資料」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、海洋コンクリート構造物は、海水からの飛沫塩化物イオンの侵入が容易であり、鉄筋の腐食による塩害劣化に曝される。また、使用する骨材も現地のものを利用することから、アルカリ骨材反応性である場合もあり、海水中のナトリウムイオンやカリウムイオンの侵入が加わり、アルカリ骨材反応による膨張等の劣化が生じ易い。また、両者による複合劣化を受け易い環境にあり、これらに対応する処方が求められている。
【0006】
コンクリートへの塩化物イオンの侵入に対しては、上述のように、ガラス相にAl2O3を多く含むフライアッシュや高炉スラグ等の混合材が、ポゾラン反応により、エトリンガイト、モノサルフェート水和物、C4AH13等のカルシウムアルミネート水和物を生成し、塩化物イオンと反応して、フリーデル氏塩(C3A・CaCl2・13H2O)を生成することにより、コンクリート内部への塩化物イオンの拡散を低減し、また、外部から侵入したナトリウム等のアルカリも、ポゾラン反応で生成したCa/Siモル比の低いC-S-Hにより固定して、コンクリート中のpHの上昇を低減する。しかしながら、フライアッシュを多量使用した場合には、コンクリートの流動性、作業性に問題が生じ、その使用量にも上限がある。また、フライアッシュをベースとしたセメントでは、強度発現が遅く、十分な養生が必要となる。また、スラグ微粉末の多量使用では、セメント及び高炉スラグの水和により、水和熱が発生し、コンクリートに高い断熱温度上昇をもたらし、温度応力ひび割れ等の問題をもたらす。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、海洋環境下でも劣化し難いコンクリートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、コンクリート1m3当たり、フライアッシュと、真珠岩と、を合計で50~200kg含ませることで、コンクリートが海洋環境下でも劣化し難くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0009】
本発明のコンクリートは、セメントと、細骨材と、粗骨材と、を含むコンクリートであって、
前記細骨材は、II種フライアッシュと、結晶水分が5質量%以下の真珠岩と、を含み、
前記フライアッシュと前記真珠岩との合計量が、コンクリート1m3当たり50~200kgであることを特徴とする。
かかる本発明のコンクリートは、海洋環境下でも劣化し難い。
【0010】
本発明のコンクリートにおいて、前記真珠岩の含有率は、前記真珠岩と前記フライアッシュとの合計量の1/10~1/3であることが好ましい。この場合、アルカリや塩化物イオンに対する耐性が更に向上し、海洋環境下でも更に劣化し難くなる。
【0011】
本発明のコンクリートの好適例においては、前記セメントが、高炉セメント又は低熱高炉B種セメントである。この場合、アルカリや塩化物イオンに対する耐性が更に向上し、海洋環境下でも更に劣化し難くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、海洋環境下でも劣化し難いコンクリートを提供することができる。
また、本発明の好適態様によれば、コンクリート内部で過度の温度上昇がなく、良好な強度発現性を示し、大型のコンクリート構造物における充填性も良好であり、更には、コンクリート表面のこて仕上げ性も良好なコンクリートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のコンクリートを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0014】
本発明のコンクリートは、セメントと、細骨材と、粗骨材と、を含むコンクリートであって、
前記細骨材は、II種フライアッシュと、結晶水分が5質量%以下の真珠岩と、を含み、
前記フライアッシュと前記真珠岩との合計量が、コンクリート1m3当たり50~200kgであることを特徴とする。
【0015】
本発明のコンクリートでは、結合材として作用するセメントに加えて、コンクリートの1m3当たり、フライアッシュ及び真珠岩を合計で50~200kg使用することで、十分な強度を発現したコンクリート中で、更にポゾラン反応を起こし、フライアッシュが、残余の水酸化カルシウムと反応して、C-S-H、C-A-Hを生成させ、アルカリの固定及び塩化物イオンの固定の効果を発揮する。一方、真珠岩は、火山ガラスであるが、マスコンクリート等において、材齢初期に水和熱に伴いコンクリートの温度が50℃以上に上昇すると、真珠岩は、効果的にポゾラン反応を起こし、フライアッシュと共に、ポゾラン反応を進展させ、コンクリートの耐久性を高める。ここで生成したC-A-Hは、外部から侵入した塩化物イオンと反応し、フリーデル氏塩(C3A・CaCl2・13H2O)を生成し、塩化物イオンが内部に浸透することを抑制する。
従って、本発明のコンクリートは、アルカリや塩化物イオンに対する耐性に優れ、海洋環境下でも劣化し難い。
また、本発明のコンクリートは、温度上昇を抑制でき、良好な強度発現性及び良好な充填性を有し、塩化物イオンの透過性を下げ、鉄筋の発錆を抑制できる。
【0016】
本発明のコンクリートは、セメントを含む。該セメントは、水等により水和や重合することができ、結合材として作用する。
該セメントとしては、コンクリートの分野で用いられている種々のセメントを用いることができ、普通ポルトランドセメント、高炉セメント(高炉B種セメント等)、低熱高炉B種セメント等を用いることが好ましい。普通ポルトランドセメントは、JIS R 5210で規定されており、高炉セメントは、JIS R 5211で規定されている。低熱高炉B種セメント(LBB)は、普通ポルトランドセメントに、比表面積の小さな高炉スラグ微粉末をB種の範囲内で高炉B種セメント(BB)より多く、かつ石こうを多く混合したセメントである。これらセメントは、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらセメントの中でも、高炉セメント及び低熱高炉B種セメントが特に好ましい。前記セメントが、高炉セメント又は低熱高炉B種セメントである場合、アルカリや塩化物イオンに対する耐性が向上し、海洋環境下でも更に劣化し難くなる。
コンクリートにおける、前記セメントの含有量は、コンクリートの1m3当たり、100~500kgの範囲が好ましく、200~400kgの範囲が更に好ましい。
【0017】
本発明のコンクリートは、細骨材を含む。該細骨材としては、10mm以上の粒子が含まれない骨材が好ましい。また、細骨材は、公称5mmの篩で篩い分けた場合、質量比で85%以上が篩を通過する大きさの骨材であることが好ましい。また、該細骨材としては、混合したものが、JIS A 5308 レディーミクストコンクリート 付属書A レディーミクストコンクリート用骨材に相当する粒度を有するものが好ましい。
コンクリートにおける、前記細骨材の含有量は、コンクリートの1m3当たり、400~1200kgの範囲が好ましく、600~1000kgの範囲が更に好ましい。
【0018】
前記細骨材は、II種フライアッシュと、結晶水分が5質量%以下の真珠岩と、を含み、更に他の細骨材を含んでもよい。他の細骨材としては、コンクリートの分野で用いられている種々の細骨材を用いることができ、例えば、砂、砕砂等が使用できる。なお、本発明においては、II種フライアッシュと、結晶水分が5質量%以下の真珠岩と、を細骨材として扱い、砂等の一般的な細骨材の少なくとも一部を置換して利用する。
【0019】
本発明のコンクリートは、前記フライアッシュと前記真珠岩との合計量が、コンクリート1m3当たり50~200kgであることを特徴とする。本発明のコンクリートは、フライアッシュ及び真珠岩を細骨材の少なくとも一部として含み、セメント質量に対して外割で配合したものである。前記フライアッシュと前記真珠岩との合計量が、コンクリート1m3当たり50~200kgであれば、コンクリートのアルカリや塩化物イオンに対する耐性が向上し、海洋環境下でも劣化し難いコンクリートを得ることができる。なお、前記フライアッシュと前記真珠岩との合計量が、コンクリート1m3当たり50kg未満では、コンクリートのアルカリや塩化物イオンに対する耐性が不十分であり、一方、コンクリート1m3当たり200kgを超えると、コンクリートの流動性、作業性が悪化する。
【0020】
前記フライアッシュとしては、強熱減量を5質量%以下にしたものを使用する。ここで、強熱減量は、JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)の「8.3 強熱減量」の項に記載の方法で測定される。
本発明のコンクリートでは、フライアッシュとして、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)に規定されるフライアッシュII種相当のものを使用する。該フライアッシュによれば、流動性の改善、断熱温度上昇やブリージングの抑制、アルカリ骨材反応による膨張の低減、塩化物イオンの浸透の抑制が図れる。
【0021】
前記フライアッシュの粉末度は、ブレーン値で2500~10000cm2/gであることが好適である。粉末度がブレーン値で2500cm2/gを下回ると、コンクリートでのブリージングが高くなったり、温度上昇を十分抑制できなくなったりする。逆に粉末度がブレーン値で10000cm2/gを超えると、コンクリートでの作業性及び流動性が低下したり、自己収縮を抑制できなくなる恐れがある。この範囲の粉末度のフライアッシュは、チューブミル又はローラーミルで粉砕し、必要に応じて分級すればよい。
【0022】
前記真珠岩としては、篩等により、粒度調整した粉末を使用することが好ましい。該真珠岩は、SiO2やAl2O3を主成分とする火山ガラスの微粉末であり、50℃以上の温度に曝されるとポゾラン反応を開始し、上述のフライアッシュと同様な効果を発揮して、流動性の改善、断熱温度上昇やブリージングの抑制、アルカリ骨材反応による膨張の低減、塩化物イオンの浸透の抑制が図れる。
ここで、真珠岩とは、火山ガラスの一種であり、結晶水の含有量が2~5質量%であるものを言う。火山ガラスには、真珠岩の他に、黒曜石、松脂岩が存在するが、真珠岩は、黒曜石より結晶水の含有量が高く、松脂岩より結晶水の含有量が低い点で、区別される。
【0023】
前記真珠岩の粉末度は、ブレーン値で2500~10000cm2/gであることが好適である。粉末度がブレーン値で2500cm2/gを下回ると、コンクリートでのブリージングが高くなったり、温度上昇を十分抑制できなくなったりする。逆に粉末度がブレーン値で10000cm2/gを超えると、コンクリートでの作業性および流動性が低下したり、自己収縮を抑制できなくなるおそれがある。この範囲の粉末度の真珠岩は、チューブミル又はローラーミルで粉砕し、必要に応じて分級すればよい。
【0024】
なお、前記真珠岩は、化学組成上、流紋岩(稀にデイサイト)で、石基はほぼガラス質で少量の結晶(斑晶)を含む火山ガラスである。球状や楕円体状のひび割れが多数あり、その割れ目から真珠のように丸い破片がぽろぽろ落ちることから、この名が付けられた。肉眼で丸いひび割れが見られない場合でも、顕微鏡で見ると円形や楕円形の割れ目が多数見られる。このような丸い割れ目を真珠状割れ目という。肉眼で真珠状割れ目が見えない場合は、半透明なガラス又は色の薄い黒曜岩のように見え、不規則にぽろぽろと割れる。流紋岩質マグマが水中等特殊な条件で噴出することにより、真珠状割れ目ができると考えられている。真珠状割れ目がまったくなければ黒曜岩であるが、その違いが何に起因するかは未だ分かっていない。
【0025】
本発明のコンクリートにおいて、前記真珠岩の含有率は、前記真珠岩と前記フライアッシュとの合計量(質量)の1/10~1/3であることが好ましい。この場合、真珠岩の作用効果と、フライアッシュの作用効果と、がバランスよく発揮されて、アルカリや塩化物イオンに対する耐性が更に向上し、海洋環境下でも更に劣化し難くなる。
コンクリートにおける、フライアッシュと真珠岩との比率は、上記の範囲が好ましいが、個別にみると、前記フライアッシュの含有量は、コンクリートの1m3当たり、30~190kgの範囲が好ましく、前記真珠岩の含有量は、コンクリートの1m3当たり、5~50kgの範囲が好ましい。
【0026】
本発明のコンクリートは、粗骨材を含む。粗骨材を含むことで、コンクリートとなり、粗骨材を含まないものは、モルタルに分類される。また、粗骨材は、公称5mmの篩で篩い分けた場合、質量比で85%以上が篩上に残留する大きさの骨材であることが好ましい。該粗骨材としては、JIS A 5005「コンクリート用砕石及び砕砂」の砕石に相当する粒度を有するものが好ましい。
コンクリートにおける、前記粗骨材の含有量は、コンクリートの1m3当たり、500~1500kgの範囲が好ましく、800~1200kgの範囲が更に好ましい。
【0027】
前記粗骨材としては、コンクリートの分野で用いられている種々の粗骨材を用いることができ、砂利、石灰石、砕石等が使用できる。
【0028】
本発明のコンクリートは、上述のセメント、細骨材、粗骨材に加え、通常水を含み、更に、必要に応じて、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、促進剤、遅延材等の化学混和剤を含むことができる。特に、化学混和剤の中でも、AE減水剤及び高性能AE減水剤の使用がより好ましい。AE減水剤及び高性能AE減水剤には、ナフタレン塩、リグニンスルホン酸塩及びポルカルボン酸塩を主成分とするものがあり、種類は特に限定しないが、低水セメント比で使用される高強度コンクリートでは、ポリカルボン酸塩が好ましい。AE減水剤及び高性能AE減水剤の使用量は、特に限定されるものではないが、セメント100質量部に対して0.5~2質量部の範囲が好ましい。
【0029】
本発明のコンクリート(コンクリート用組成物)は、例えば、フライアッシュ及び真珠岩と、セメントに加え、砂等の他の細骨材、砂利等の粗骨材、適量の混練水、及び減水剤等の化学混和材を配合することで製造できる。また、コンクリートを混練するにあたっては、混練時に直接コンクリートミキサーへ、当該フライアッシュ及び真珠岩を、セメント、砂、砂利、混練水等と共に投入してもよい。また、本発明のコンクリートには、膨張材等の混和材を必要に応じて使用できる。コンクリート混練方法としては、特に限定されるものではなく、コンクリートの分野で通常実施される方法が利用できる。
【0030】
本発明の好適態様のコンクリートは、コンクリート内部で過度の温度上昇がなく、良好な強度発現性を示し、大型のコンクリート構造物における充填性も良好である。ここで、コンクリートの断熱温度上昇量の測定方法は、特に限定されず、また、断熱の方式として液体循環式、空気循環式があるが、どちらの方式でもよい。
【0031】
また、本発明のコンクリートは、ブリージング率が1~5%であることが好ましい。該ブリージング率は、JIS A 1123(コンクリートのブリージング試験方法)に準じて測定される。1~5%の低ブリージング率のコンクリートは、コンクリート表面のこて仕上げ性が良好であり、四季を通じてコンクリート表面のこて仕上げ性で問題が生じることが少なくなる。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
(1)使用材料
実施例、比較例において用いた材料を、対応する記号と共に表1に示す。
【0034】
【0035】
表1中の「粗粒率」は、JIS A 1102 骨材のふるい分け試験方法に従って測定した値である。
【0036】
(2)コンクリートの配合割合
表2の配合組成に従い、コンクリートを調製した。実施例及び比較例のコンクリートの配合を、上記記号を使用してそれぞれ表2に示す。
【0037】
【0038】
表2中「s/a」は、コンクリート中の全骨材量に対する細骨材の容量比を百分率で表した値である。
表2中「C」は、セメントを示す。
【0039】
(3)圧縮強度試験
コンクリート躯体のコア及び別で型枠に打設したテストピースの28日圧縮強度試験の結果を表3に示す。
【0040】
【0041】
(4)断熱温度上昇試験
実施例及び比較例のコンクリートについて、断熱温度上昇量の測定を行った。断熱温度上昇量を表4に示す。
【0042】
【0043】
(5)塩化物浸透抵抗性試験
実施例及び比較例のコンクリートについて、塩化物浸透抵抗性試験を行った。塩化物拡散係数の結果を表5に示す。
【0044】
【0045】
(6)アルカリ反応性の骨材を使用した場合のモルタルバー試験
表2の配合のモルタル部分の骨材(S1(細骨材1:海砂)及びS2(細骨材2:石灰石砕砂))をアルカリ反応性のもの(ここでは、安山岩質骨材を使用した)に置き換え、Na2O換算のアルカリをセメントに対して0質量%、0.5質量%、1.0質量%添加したモルタルバー試験を行った。結果(材齢6か月)を表6に示す。
【0046】
【0047】
表2に示すように、普通ポルトランドセメントを使用したコンクリート配合(試験No.0)、高炉セメントB種を使用したコンクリート配合(試験No.1)、低熱高炉セメントB種を使用したコンクリート配合(試験No.2)、及び、フライアッシュ及び真珠岩を用い、低熱高炉セメントB種を使用した配合(試験No.3)について試験を実施した。
【0048】
表4に示すように、海岸構造物の鉄筋コンクリートに用いた場合の最大水セメント比を55%とした場合、目標スランプ12cm、空気量4.5%とし、規定内のスランプ、空気量が得られた。
【0049】
圧縮強度は、28N/mm2を目標としたが、表3に示すように、構造物のコアからもどの水準も上回る結果となった。本発明に従う実施例のコンクリート配合(試験No.3)では、標準養生供試体及びコア供試体ともに、試験No.2の配合を上回っていた。
【0050】
また、表4に示すように、断熱温度上昇は、普通ポルトランドセメントを使用したコンクリート配合(試験No.0)と高炉セメントB種を使用したコンクリート配合(試験No.1)がほぼ同じであり、低熱高炉セメントB種を使用したコンクリート配合(試験No.2)は約8℃低い結果となった。また、本発明に従う実施例のコンクリート配合(試験No.3)では、試験No.2の配合に比べ、更に低い結果となった。
【0051】
また、表5に示すように、塩化物イオンの見かけの拡散係数は、本発明に従う実施例の配合(試験No.3)のコンクリートでは、普通ポルトランドセメントを用いた配合(試験No.0)の1/20以下であった。
【0052】
また、表6に示すように、アルカリ骨材反応では、従来の高炉セメントB種を使用した配合(試験No.1)では、有害の判定となる6か月の膨張量が0.1%を超え、0.15%に達するが、本発明に従う実施例の配合(試験No.3)のコンクリートでは、0.02%とほぼ膨張しない結果となった。
【0053】
このように、本発明に従う実施例のコンクリートでは、塩化物イオンの遮断とアルカリ骨材反応の抑制において、十分な能力があることが分かる。本発明に従う実施例のコンクリートでは、フライアッシュと真珠岩を併用することにより、フライアッシュのポゾラン反応により生成するカルシウムアルミネート水和物が、侵入した塩化物イオンをフリーデル氏塩として固定し、内部への浸透を抑制したものと考えられる。一方、真珠岩は、50℃以上の温度でポゾラン反応を開始し、同様の反応が得られ、生成する水酸化カルシウムを消費するため、アルカリ骨材反応の抑制効果も認められる。
【0054】
(7)フライアッシュ及び真珠岩の使用量の検討
フライアッシュ及び真珠岩の使用量については、高炉セメントB種を使用した表2の配合をもとに、フライアッシュ及び真珠岩を、S1(細骨材1:海砂)の一部の代替として使用した配合を用いて、表7に示す実験を行い、検討した。結果を表7に示す。
【0055】
【0056】
高炉セメントB種を使用した表2の配合をもとに、フライアッシュ及び真珠岩を砂代替として使用した配合
A: 試験番号
B: フライアッシュ及び真珠岩の合計単位量 F+P(kg/m3)
C: フライアッシュの単位量 F(kg/m3)
D: 真珠岩の割合P/(F+P)(%)
E: アル骨膨張量(%)(アルカリ1%添加時)(%6か月)、試験方法は、前述の「(6)アルカリ反応性の骨材を使用した場合のモルタルバー試験」に従う
F: 見かけの塩化物拡散係数Dc(cm2/年)、試験方法は、前述の「(5)塩化物浸透抵抗性試験」に従う
G: 特記事項
H: アル骨膨張量0.1%以下、塩化物イオン拡散係数0.30cm2/年以下、且つ流動性良好の場合:〇(良好)、一つでも不都合な場合:△
【0057】
表7の試験No.2-1の結果から、フライアッシュと真珠岩との合計量が、コンクリート1m3当たり50kg未満では、アルカリ骨材反応による膨張抑制効果も、塩化物イオン拡散係数の低減効果も不十分であることが分かる。
また、試験No.2-19の結果から、フライアッシュと真珠岩との合計量が、コンクリート1m3当たり200kgを超えると、コンクリートの流動性が悪化することが分かる。
また、試験No.2-5の結果から、真珠岩を含まないと、塩化物イオン拡散係数の低減効果が不十分であることが分かる。一方、試験No.2-2から2-4、2-6から2-18の結果から、真珠岩の使用は、50℃以上の温度になった場合のアルカリ骨材反応による膨張抑制効果、塩化物イオン拡散係数の低減効果において著しく、その量は、フライアッシュ及び真珠岩の合計量の1/10~1/3が好ましいことが分かる。