(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】シャント抵抗器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01C 13/00 20060101AFI20240610BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20240610BHJP
H01C 1/148 20060101ALI20240610BHJP
H01C 17/28 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H01C13/00 J
G01R15/00 500
H01C1/148 Z
H01C17/28
(21)【出願番号】P 2020087233
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100092406
【氏名又は名称】堀田 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】大澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】黒田 毅
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066499(JP,A)
【文献】国際公開第2020/095733(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/021987(WO,A1)
【文献】特開2019-201131(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003360(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 13/00
G01R 15/00
H01C 1/148
H01C 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体と、
前記抵抗体の両側に接続された第1電極および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ電気的に接続された、導電性を有する第1融着材および第2融着材と、
前記第1融着材および前記第2融着材によって前記第1電極および前記第2電極に連結された少なくとも1つの基板を備え、
前記第1融着材は、前記第1電極または前記基板に形成された第1通孔内に配置されており、
前記第2融着材は、前記第2電極または前記基板に形成された第2通孔内に配置されている、シャント抵抗器。
【請求項2】
前記第1通孔および前記第2通孔は、前記基板に形成されている、請求項1に記載のシャント抵抗器。
【請求項3】
前記基板は、前記第1通孔および前記第2通孔の内壁を構成する導電層をさらに備えている、請求項1または2に記載のシャント抵抗器。
【請求項4】
前記第1融着材および前記第2融着材は、はんだを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシャント抵抗器。
【請求項5】
前記基板は、前記第1融着材および前記第2融着材にそれぞれ電気的に接続された第1配線および第2配線を有する配線基板である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシャント抵抗器。
【請求項6】
前記基板と、前記第1電極および前記第2電極との間に配置された絶縁プレートをさらに備えている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシャント抵抗器。
【請求項7】
第1通孔および第2通孔を有する少なくとも1つの基板を用意し、
導電性を有する第1融着材および第2融着材を、前記第1通孔および前記第2通孔内に配置し、
前記第1通孔および前記第2通孔が、抵抗体の両側に接続された第1電極および第2電極にそれぞれ対向した状態で、前記第1融着材および前記第2融着材を加熱することで、前記第1融着材および前記第2融着材を融解させ、
前記第1融着材および前記第2融着材により前記基板を前記第1電極および前記第2電極に連結する、シャント抵抗器の製造方法。
【請求項8】
前記第1融着材および前記第2融着材は、はんだを含む、請求項7に記載のシャント抵抗器の製造方法。
【請求項9】
抵抗体の両側に接続された第1電極および第2電極を用意し、
導電性を有する第1融着材および第2融着材を、前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ形成された第1通孔および第2通孔内に配置し、
基板が前記第1通孔および前記第2通孔に対向した状態で、前記第1融着材および前記第2融着材を加熱することで、前記第1融着材および前記第2融着材を融解させ、
前記第1融着材および前記第2融着材により前記基板を前記第1電極および前記第2電極に連結する、シャント抵抗器の製造方法。
【請求項10】
前記第1融着材および前記第2融着材は、はんだを含む、請求項9に記載のシャント抵抗器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出用のシャント抵抗器に関し、特にシャント抵抗器の電圧検出端子に関する。また、本発明は、そのようなシャント抵抗器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シャント抵抗器は、車載用バッテリーの充放電の電流を監視するなどの大電流の電流検出用途に広く用いられている。このようなシャント抵抗器は、低抵抗材料から構成された抵抗体と、抵抗体の両端に接続された電極と、電極に電気的に接続された電圧検出端子を備えている。電圧検出端子は、抵抗体にかかる電圧(電位差)を測定するために使用される。
【0003】
市場要求の一つである大電流化が進むにつれて、抵抗体を挟む電極の厚みや幅は大きくなる傾向にある。このような電極の大型化に伴い、電極に接続される電圧検出器の構造自体も電流検出精度に影響しうる。そこで、特許文献1乃至3に示すように、従来から電圧検出器のさまざまな構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-009419号公報
【文献】特開2014-085245号公報
【文献】特開2015-184206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、電圧検出端子としてのピンを電極に立設する技術が開示されている。具体的には、まず貫通孔を電極に形成し、その後ピンを貫通穴に挿入し、さらにピンを電極に固定する。しかしながら、ピンを受け入れる貫通穴の加工精度は、電流検出精度に大きく影響を及ぼす。
特許文献2には、電圧検出ICを保持した回路基板をねじによってバスバーに固定する技術が開示されている。しかしながら、この特許文献2の技術は、ねじを挿入するためのねじ孔を形成する必要がある。さらに、ねじによる固定は、ある程度の広い面積を必要とし、電流検出精度にも影響しうる。
特許文献3には、電圧を検出するための一対のボンディングワイヤを抵抗器に接続する技術が開示されている。しかしながら、ボンディングワイヤの接合強度が低く、経時的に電流検出精度が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、高い電流検出精度を確保できる電圧検出端子を有するシャント抵抗器およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、抵抗体と、前記抵抗体の両側に接続された第1電極および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ電気的に接続された、導電性を有する第1融着材および第2融着材と、前記第1融着材および前記第2融着材によって前記第1電極および前記第2電極に連結された少なくとも1つの基板を備え、前記第1融着材は、前記第1電極または前記基板に形成された第1通孔内に配置されており、前記第2融着材は、前記第2電極または前記基板に形成された第2通孔内に配置されている、シャント抵抗器が提供される。
【0008】
一態様では、前記第1通孔および前記第2通孔は、前記基板に形成されている。
一態様では、前記基板は、前記第1通孔および前記第2通孔の内壁を構成する導電層をさらに備えている。
一態様では、前記第1融着材および前記第2融着材は、はんだを含む。
一態様では、前記基板は、前記第1融着材および前記第2融着材にそれぞれ電気的に接続された第1配線および第2配線を有する配線基板である。
一態様では、前記基板と、前記第1電極および前記第2電極との間に配置された絶縁プレートをさらに備えている。
【0009】
一態様では、第1通孔および第2通孔を有する少なくとも1つの基板を用意し、導電性を有する第1融着材および第2融着材を、前記第1通孔および前記第2通孔内に配置し、前記第1通孔および前記第2通孔が、抵抗体の両側に接続された第1電極および第2電極にそれぞれ対向した状態で、前記第1融着材および前記第2融着材を加熱することで、前記第1融着材および前記第2融着材を融解させ、前記第1融着材および前記第2融着材により前記基板を前記第1電極および前記第2電極に連結する、シャント抵抗器の製造方法が提供される。
一態様では、前記第1融着材および前記第2融着材は、はんだを含む。
【0010】
一態様では、抵抗体の両側に接続された第1電極および第2電極を用意し、導電性を有する第1融着材および第2融着材を、前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ形成された第1通孔および第2通孔内に配置し、基板が前記第1通孔および前記第2通孔に対向した状態で、前記第1融着材および前記第2融着材を加熱することで、前記第1融着材および前記第2融着材を融解させ、前記第1融着材および前記第2融着材により前記基板を前記第1電極および前記第2電極に連結する、シャント抵抗器の製造方法が提供される。
一態様では、前記第1融着材および前記第2融着材は、はんだを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1融着材および第2融着材自体が、電圧検出端子として機能する。従来の電圧検出端子とは異なり、本発明は、ピン、ボンディングワイヤ、ねじなどの要素は不要であり、これらの要素の取り付け不良などに起因する電流検出精度の低下が起こらない。したがって、本発明のシャント抵抗器は、高い電流検出精度を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】シャント抵抗器の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】第1融着材および第2融着材が融解する前のシャント抵抗器を示す断面図である。
【
図4】
図1および
図2に示すシャント抵抗器の製造方法の一実施形態を示す図である。
【
図5】
図1および
図2に示すシャント抵抗器の製造方法の一実施形態を示す図である。
【
図6】
図1および
図2に示すシャント抵抗器の製造方法の一実施形態を示す図である。
【
図7】シャント抵抗器の他の実施形態を示す断面図である。
【
図8】シャント抵抗器のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図9】シャント抵抗器のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図10】シャント抵抗器のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図11】シャント抵抗器のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図12】
図11に示すシャント抵抗器の製造方法の一実施形態を示す図である。
【
図13】
図11に示すシャント抵抗器の製造方法の一実施形態を示す図である。
【
図14】
図11に示すシャント抵抗器の製造方法の一実施形態を示す図である。
【
図15】
図11に示すシャント抵抗器の製造方法の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、シャント抵抗器の一実施形態を示す斜視図であり、
図2は
図1のA-A線断面図である。シャント抵抗器1は、抵抗体3と、抵抗体3の両側に接続された第1電極5Aおよび第2電極5Bと、第1電極5Aおよび第2電極5Bにそれぞれ電気的に接続された第1融着材6Aおよび第2融着材6Bと、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bによって第1電極5Aおよび第2電極5Bに連結された基板10を備えている。
【0014】
抵抗体3の材料の例として、ニッケルクロム系合金、銅ニッケル系合金、銅マンガン系合金、銅-マンガン-ニッケル系合金が挙げられるが、抵抗体3の材料は、その意図した目的を達成できるものである限りにおいて特に限定されない。第1電極5Aおよび第2電極5Bの材料の一例として、銅(Cu)が挙げられるが、第1電極5Aおよび前記第2電極5Bの材料も、その意図した目的を達成できるものである限りにおいて特に限定されない。第1電極5Aおよび第2電極5Bは、シャント抵抗器1の全体の位置を固定するためのボルト孔9A,9Bをそれぞれ有している。
【0015】
第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、導電性を有する材料から構成されており、本実施形態では、はんだから構成されている。
図2に示すように、第1融着材6Aは、基板10に形成された第1通孔7A内に配置されている。はんだからなる第1融着材6Aは、加熱されて融解した後、硬化した状態であり、第1融着材6Aの端部は第1電極5Aに接触している。第2融着材6Bは、基板10に形成された第2通孔7B内に配置されている。はんだからなる第2融着材6Bも、第1融着材6Aと同様に、加熱されて融解した後、硬化した状態である。第2融着材6Bの端部は第2電極5Bに接触している。
【0016】
本実施形態に使用される基板10は、配線がプリントされた配線基板(あるいはプリント基板)である。基板10は、基台プレート12と、基台プレート12の上下面を覆う絶縁層14を有している。基台プレート12の材料の例としては、ガラスエポキシなどの樹脂、セラミックス、アルミニウムなどの金属、およびこれらの組み合わせが挙げられる。基板10の上下面は絶縁層14から形成されており、基板10の下面を形成する絶縁層14は、第1電極5A、第2電極5B、および抵抗体3に接触している。図示しないが、基板10は、増幅器、A/D変換器、温度センサなどをさらに備えてもよい。
図1および
図2に示す基板10は例であり、基台プレート12、第1通孔7A、第2通孔7Bを備えている限りにおいて、基板10の構成は
図1および
図2に示す実施形態に限られない。
【0017】
第1通孔7Aは、第1電極5Aに対向しており、第2通孔7Bは第2電極5Bに対向している。基板10は、第1通孔7Aの内壁を構成する第1導電層15Aと、第2通孔7Bの内壁を構成する第2導電層15Bと、第1導電層15Aおよび第2導電層15Bにそれぞれ接続された第1ランド16Aおよび第2ランド16Bをさらに備えている。第1通孔7Aの内壁を構成する第1導電層15Aと第1ランド16Aは一体である。第2通孔7Bの内壁を構成する第2導電層15Bと第2ランド16Bは一体である。第1ランド16A、第2ランド16B、第1導電層15A、および第2導電層15Bの例としては、銅箔、金箔、銀箔等の導電物が挙げられる。銅箔または金箔は、めっきにより基台プレート12上に形成することができる。第1ランド16Aおよび第2ランド16Bは、基台プレート12に配置された第1配線17Aおよび第2配線17Bに電気的に接続されている。本実施形態では、第1配線17Aおよび第2配線17Bは、プリント配線である。尚、第1配線17Aおよび第2配線17Bは、基台プレート12の内部(内層パターン)、表面、裏面いずれにあってもよく、限定するものではない。
【0018】
第1通孔7Aおよび第2通孔7Bの水平断面形状は特に限定されないが、水平断面形状の例としては、円形、半円形が挙げられる。円形の場合、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bの直径は、10mm以下とされる。
【0019】
第1融着材6Aは、第1通孔7Aの内壁を構成する第1導電層15A、および第1電極5Aに接触している。したがって、第1融着材6Aは、第1導電層15Aと第1電極5Aとの電気的な接続を確立する。同様に、第2融着材6Bは、第2通孔7Bの内壁を構成する第2導電層15B、および第2電極5Bに接触している。したがって、第2融着材6Bは、第2導電層15Bと第2電極5Bとの電気的な接続を確立する。尚、基板10と第1電極5Aおよび第2電極5Bとを機械的に連結するために、ねじ、ボルト、樹脂材などの機械的な連結要素をさらに設けてもよい。
【0020】
図2に示す、はんだからなる第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、加熱されて融解した後、硬化した状態である。
図3は、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bが融解する前のシャント抵抗器1を示す断面図である。
図3に示すように、はんだからなる第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bに配置(充填)される。
【0021】
第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを加熱することで、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを融解させる。その結果、
図2に示すように、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、第1通孔7Aおよび第2通孔7B内で融解し、第1電極5Aおよび第2電極5Bにそれぞれ接触する。第1融着材6Aおよび第2融着材6Bの温度が低下するにつれて、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは硬化する。硬化した第1融着材6Aは、第1電極5A、および第1通孔7Aの内壁を形成する第1導電層15Aの両方に接合し、硬化した第2融着材6Bは、第2電極5B、および第2通孔7Bの内壁を形成する第2導電層15Bの両方に接合する。このようにして、基板10は、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを通じて第1電極5Aおよび第2電極5Bに電気的に接続される。
【0022】
本実施形態によれば、
図2に示す第1融着材6Aおよび第2融着材6B自体が、電圧検出端子として電気的に機能する。従来の電圧検出端子とは異なり、本実施形態は、ピン、ボンディングワイヤ、ねじなどの要素は不要であり、これらの要素の取り付け不良などに起因する電流検出精度の低下が起こらない。したがって、本実施形態のシャント抵抗器1は、高い電流検出精度を達成することができる。さらに、本実施形態によれば、第1電極5Aおよび第2電極5Bに通孔やねじ穴を形成することが不要であるので、電気的機能の要求による孔の加工精度に起因する電流検出精度の低下を防止することができる。
【0023】
加熱される前に第1通孔7Aおよび第2通孔7Bに配置される第1融着材6Aおよび第2融着材6Bとしてのはんだの例としては、はんだペースト、糸はんだが挙げられる。第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、導電性を有し、かつ接着、固着機能を有する材料であれば、はんだ以外の材料でもよい。例えば、銅ペースト、導電性接着剤を用いてもよい。
【0024】
上述した実施形態では、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bの両方を有する単一の基板10が使用されているが、本発明は上述した実施形態に限定されない。一実施形態では、基板10は、第1通孔7Aを有する第1基板と、第2通孔7Bを有する第2基板を備えてもよい。この構成でも、第1通孔7A内に配置された第1融着材6Aにより第1基板は第1電極5Aに連結され、第2通孔7B内に配置された第2融着材6Bにより第2基板は第2電極5Bに連結される。
【0025】
次に、
図1および
図2に示すシャント抵抗器1の製造方法について、
図4乃至
図6を参照して説明する。
まず、
図4に示すように、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bを有する基板10を用意する。さらに、抵抗体3、および抵抗体3の両側に接続された第1電極5Aおよび第2電極5Bを含む組立体20を用意する。
【0026】
図5に示すように、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bが、抵抗体3の両側に接続された第1電極5Aおよび第2電極5Bにそれぞれ対向するように基板10を組立体20上に配置する。
図3を参照して説明したように、第1通孔7Aおよび第2通孔7B内に、融解していない第1融着材6Aおよび第2融着材6Bをそれぞれ配置(充填)する。
一実施形態では、基板10を組立体20上に配置した後に、融解していない第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを第1通孔7Aおよび第2通孔7B内にそれぞれ配置(充填)してもよい。
【0027】
図6に示すように、基板10が組立体20に接触した状態で、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを加熱し、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを融解させる。加熱温度は、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bの融点以上である。第1融着材6Aおよび第2融着材6Bの加熱は、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを含む基板10および組立体20の全体を加熱してもよいし、または第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを局所的に加熱してもよい。例えば、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bの加熱は、リフロー装置、レーザー加熱器などを用いて実施することができる。
【0028】
融解した第1融着材6Aおよび第2融着材6Bが冷却されると、
図2を参照して説明したように、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは硬化する。硬化した第1融着材6Aは、第1電極5A、および第1通孔7Aの内壁を形成する第1導電層15Aの両方に接合し、硬化した第2融着材6Bは、第2電極5B、および第2通孔7Bの内壁を形成する第2導電層15Bの両方に接合する。基板10は、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bにより第1電極5Aおよび第2電極5Bに連結される。硬化した第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、第1電極5Aおよび第2電極5Bにそれぞれ接触しているので、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、シャント抵抗器1の電圧検出端子として機能する。
【0029】
図7は、シャント抵抗器1の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および製造方法は、
図1乃至
図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0030】
本実施形態では、基板10にフレキシブル基板が使用されている。フレキシブル基板からなる基板10は、可撓性シートからなる基台プレート12を備えている。本実施形態の基台プレート12は、一般的なガラスエポキシからなる基台プレートよりも薄い。このように、シャント抵抗器1に使用される基板10の厚さおよび材料は、特に限定されない。
【0031】
図8は、シャント抵抗器1のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および製造方法は、
図1乃至
図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0032】
本実施形態では、2枚の基板10,11が重なった状態で、これら基板10,11が、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bにより第1電極5Aおよび第2電極5Bに連結されている。2枚の基板10,11は第1通孔7Aおよび第3通孔22Aをそれぞれ有しており、第1通孔7Aおよび第3通孔22Aは直列に並んでいる。第1融着材6Aは第1通孔7Aおよび第3通孔22A内に配置されている。同様に、2枚の基板10,11は第2通孔7Bおよび第4通孔22Bをそれぞれ有しており、第2通孔7Bおよび第4通孔22Bは直列に並んでいる。第2融着材6Bは第2通孔7Bおよび第4通孔22B内に配置されている。2枚の基板10,11同士は、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bにより互いに連結され、さらに2枚の基板10,11は、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bにより第1電極5Aおよび第2電極5Bに連結されている。2枚の基板10,11のそれぞれは、
図2に示す基板10と同じ構成を有しているので、その詳細な説明を省略する。
【0033】
それぞれの基板10,11は、電圧検出端子としての第1融着材6Aおよび第2融着材6Bに電気的に接続された配線を有したプリント基板である。2つの基板10のうちの一方の配線17A,17Bは、上述したように、電流検出の目的で電圧(電位差)を測定する用途に使用できる。さらに、他方の基板11の配線23A,23Bは、制御信号としての電流または電圧を測定する用途に使用できる。このように、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bに電気的に接続された配線17A,17B,23A,23Bを有する複数の基板10,11を備えたシャント抵抗器1は、本来の電流検出を含む様々な用途に使用することができる。
図8に示す実施形態では、2枚の基板10,11が重なり合っているが、3枚以上の基板が重なり合ってもよい。
【0034】
図9は、シャント抵抗器1のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および製造方法は、
図1乃至
図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bを形成する内壁は、基台プレート12自体から構成されている。すなわち、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bは、基台プレート12に形成された孔であり、これらの孔の内壁を覆う導電層は設けられていない。第1通孔7Aおよび第2通孔7Bの開口端は、銅箔または金箔などの導電材からなる第1ランド16Aおよび第2ランド16Bにそれぞれ囲まれている。
【0036】
第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bの全体に充填されている。第1融着材6Aおよび第2融着材6Bの一方の端部は第1電極5Aおよび第2電極5Bにそれぞれ接触しており、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bの他方の端部は第1ランド16Aおよび第2ランド16Bにそれぞれ接触している。第1ランド16Aおよび第2ランド16Bは、第1配線17Aおよび第2配線17Bにそれぞれ接続されている。本実施形態では第1配線17Aおよび第2配線17Bはプリント配線であるが、導電線からなる配線であってもよい。第1電極5Aは、第1融着材6Aおよび第1ランド16Aを通じて第1配線17Aに電気的に接続され、第2電極5Bは、第2融着材6Bおよび第2ランド16Bを通じて第2配線17Bに電気的に接続されている。尚、第1ランド16Aおよび第2ランド16Bの位置は、基台プレート12の表面、裏面などであってもよく、その位置は特に限定されない。
【0037】
図10は、シャント抵抗器1のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および製造方法は、
図1乃至
図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0038】
本実施形態では、シャント抵抗器1は、基板10と、第1電極5Aおよび第2電極5Bとの間に配置された絶縁プレート25を備えている。絶縁プレート25は、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bにそれぞれ直列に並ぶ通孔26A,26Bを有している。第1融着材6Aは第1通孔7Aおよび絶縁プレート25の通孔26A内に配置されており、第2融着材6Bは第2通孔7Bおよび絶縁プレート25の通孔26B内に配置されている。絶縁プレート25には、ユーザーが視覚的に認識することができる目印や、タグなどを付すことができる。
【0039】
図10に示すシャント抵抗器1は、
図1乃至
図6を参照して説明した実施形態と基本的に同じである。すなわち、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bを有する基板10と、通孔26A,26Bを有する絶縁プレート25と、抵抗体3、および抵抗体3の両側に接続された第1電極5Aおよび第2電極5Bを含む組立体20を用意する。
次に、第1通孔7Aおよび絶縁プレート25の通孔26A内に、融解していない第1融着材6Aを配置(充填)し、第2通孔7Bおよび絶縁プレート25の通孔26B内に、融解していない第2融着材6Bを配置(充填)する。
【0040】
そして、絶縁プレート25が基板10と組立体20との間に配置された状態で、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを加熱し、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを融解させる。第1融着材6Aおよび第2融着材6Bの温度が低下すると、基板10は、硬化した第1融着材6Aおよび第2融着材6Bによって第1電極5Aおよび第2電極5Bに連結され、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは電圧検出端子として機能する。
【0041】
図11は、シャント抵抗器1のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および製造方法は、
図1乃至
図6を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0042】
本実施形態では、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bは、第1電極5Aおよび第2電極5Bにそれぞれ形成されている。基板10は通孔を有していない。基板10の第1配線17Aおよび第2配線17Bは、第1電極5Aおよび第2電極5Bに対向している。第1融着材6Aは、第1電極5Aに形成された第1通孔7A内に配置され、第2融着材6Bは、第2電極5Bに形成された第2通孔7B内に配置されている。第1融着材6Aは、第1電極5Aと第1配線17Aの両方に接触し、第2融着材6Bは、第2電極5Bと第2配線17Bの両方に接触している。基板10は、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bによって第1電極5Aおよび第2電極5Bに連結されている。本実施形態でも、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、電圧検出端子として機能する。
【0043】
次に、
図11に示すシャント抵抗器1の製造方法について、
図12乃至
図15を参照して説明する。
まず、
図12に示すように、第1配線17Aおよび第2配線17Bを有する基板10と、抵抗体3、および抵抗体3の両側に接続された第1電極5Aおよび第2電極5Bを含む組立体20を用意する。第1電極5Aおよび第2電極5Bは、第1通孔7Aおよび第2通孔7Bをそれぞれ有している。
【0044】
次に、
図13に示すように、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを、第1通孔7Aおよび第2通孔7B内に配置(充填)する。
図14に示すように、基板10の第1配線17Aが第1通孔7Aに対向し、かつ基板10の第2配線17Bが第2通孔7Bにそれぞれ対向するように該基板10を配置する。
一実施形態では、基板10を組立体20上に配置した後に、融解していない第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを第1通孔7Aおよび第2通孔7B内にそれぞれ配置(充填)してもよい。
【0045】
図15に示すように、基板10が組立体20に接触した状態で、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを加熱し、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを融解させる。加熱温度は、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bの融点以上である。第1融着材6Aおよび第2融着材6Bの加熱は、基板10および第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを含む組立体20の全体を加熱してもよいし、または第1融着材6Aおよび第2融着材6Bを局所的に加熱してもよい。例えば、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bの加熱は、リフロー装置、レーザー加熱器などを用いて実施することができる。
【0046】
融解した第1融着材6Aおよび第2融着材6Bが冷却されると、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは硬化する。硬化した第1融着材6Aは、第1電極5A、および第1配線17Aの両方に接合し、硬化した第2融着材6Bは、第2電極5B、および第2配線17Bの両方に接合する。基板10は、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bにより第1電極5Aおよび第2電極5Bに連結される。第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、第1電極5Aおよび第2電極5Bにそれぞれ接触しているので、第1融着材6Aおよび第2融着材6Bは、シャント抵抗器1の電圧検出端子として機能する。
【0047】
上述した各実施形態のシャント抵抗器1は、4端子測定などの電流測定に適用することができる。上記実施形態に係るシャント抵抗器1を用いれば、精度の高い電流検出が達成される。
【0048】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 シャント抵抗器
3 抵抗体
5A 第1電極
5B 第2電極
6A 第1融着材
6B 第2融着材
7A 第1通孔
7B 第2通孔
9A,9B ボルト孔
10,11 基板
12 基台プレート
14 絶縁層
15A 第1導電層
15B 第2導電層
16A 第1ランド
16B 第2ランド
17A 第1配線
17B 第2配線
20 組立体
22A 第3通孔
22B 第4通孔
23A,23B 配線
25 絶縁プレート
26A,26B 通孔