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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B25F5/00 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020092199
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2020196126
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2019099341
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大村 翔洋
(72)【発明者】
【氏名】松下 隼也
(72)【発明者】
【氏名】市川 佳孝
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-045390(JP,A)
【文献】特開2006-280043(JP,A)
【文献】特開2016-055392(JP,A)
【文献】特開2014-217908(JP,A)
【文献】特開2011-053930(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0095177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
G06F12/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリパックから電力を受給して動作する電動作業機であって、
前記バッテリパックの正極に電気的に接続されるように構成された正極端子と、
前記バッテリパックの負極に電気的に接続されるように構成された負極端子と、
通信端子と、
前記電動作業機の動作を制御するように構成された制御回路と、
第1入力端子と、第2入力端子と、出力端子と、を有する出力回路と、
前記電動作業機に接続された前記バッテリパックから前記制御回路へ電力を供給するための電力供給経路に設けられた電力供給スイッチと、を備え、
前記第1入力端子は、前記バッテリパックから、前記通信端子を介して、前記制御回路が前記バッテリパックから電力を受給することを許可する電力供給許可信号が入力されるように構成され、
前記第2入力端子は、前記制御回路から出力されたオン命令信号が入力されるように構成され、
前記出力端子は、前記第1入力端子に前記電力供給許可信号が入力されている間、及び/又は、前記第2入力端子に前記オン命令信号が入力されている間、第1信号を出力し、前記第1入力端子に前記電力供給許可信号が入力されておらず、且つ、前記第2入力端子に前記オン命令信号が入力されていない間、第2信号を出力するように構成され、
前記電力供給スイッチは、前記出力端子から前記第1信号が出力されている間オン状態を維持し、前記出力端子から前記第2信号が出力されている間オフ状態を維持するように構成され、
前記電力供給経路は、前記電力供給スイッチがオン状態の間、通電状態に維持され、前記電力供給スイッチがオフ状態の間、遮断状態に維持されるように構成され、
前記制御回路は、前記バッテリパックからの前記電力供給許可信号が消失した後においても、所定時間、前記オン命令信号を前記第2入力端子に出力するように構成されている、
電動作業機。
【請求項2】
前記制御回路から出力された前記オン命令信号の伝達経路に設けられた微分回路を備える、
請求項1に記載の電動作業機。
【請求項3】
前記制御回路は、所定の処理を実行する前に、前記オン命令信号を前記電力供給スイッチへ出力する、
請求項1又は2に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記制御回路は、
作業用メモリと保存用メモリとを備え、
前記所定の処理は、前記作業用メモリ上のデータの更新回数が設定値に到達したことに応じて、前記作業用メモリ上のデータを前記保存用メモリに書き込む、書込み処理である、
請求項3に記載の電動作業機。
【請求項5】
前記制御回路は、
作業用メモリと保存用メモリとを備え、
前記所定の処理は、前記バッテリパックからの前記電力供給許可信号が消失したことに応じて、前記作業用メモリ上のデータを前記保存用メモリに書き込む、書込み処理である、
請求項3に記載の電動作業機。
【請求項6】
前記電動作業機は、前記電動作業機を動作又は停止させるために使用者によって操作されるように構成されたトリガスイッチを備え、
前記制御回路は、
作業用メモリと保存用メモリとを備え、
前記所定の処理の実行後に、消費電力を抑制するスリープモードへ移行し、
前記所定の処理は、前記トリガスイッチがオフになったことに応じて、前記作業用メモリ上のデータを前記保存用メモリに書き込む、書込み処理である、
請求項3に記載の電動作業機。
【請求項7】
前記所定時間は、前記電力供給許可信号が消失した後に、前記書込み処理を完了するまでに要する時間よりも長い時間である、
請求項4~6のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項8】
前記電力供給許可信号は、前記バッテリパックから前記電動作業機へ出力される信号が前記電力供給許可信号から電力供給禁止信号に変化したこと、又は、前記バッテリパックが前記電動作業機から取り外されたことに応じて、消失する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項9】
前記正極端子と前記負極端子との両端子間に接続された電解コンデンサと、
前記正極端子と前記負極端子との両端子間に接続され、入力された電力から前記制御回路へ供給する電源を生成するように構成された電源回路と、を備える、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項10】
前記制御回路は、前記電源回路への入力電圧値が、設定された検出電圧値を下回った場合に、前記バッテリパックが前記電動作業機から取り外されたと判定する、
請求項9に記載の電動作業機。
【請求項11】
前記検出電圧値は、前記電源回路が所定電圧の前記電源を生成するために必要な電圧値以上である、
請求項10に記載の電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリパックから電動作業機への電力供給許可信号の突然の消失の影響を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電動工具は、内蔵された制御回路による消費電力を低減するため、トリガスイッチが停止操作されると、制御回路をバッテリパックから電気的に遮断して、制御回路への電力供給を停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-341325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリパックが過放電状態になった場合など、バッテリパック側において、電動工具の制御回路への電力供給を許可したくない場合がある。そこで、バッテリパックが、電動工具へ電力供給許可信号を出力するか否かによって、制御回路への電力供給を制御する構成が考えられる。
【0005】
しかしながら、バッテリパックから電動工具へ電力供給許可信号が出力されていないことに応じて、制御回路への電力供給を停止するように電動工具を構成すると、制御回路は、突然電源が遮断され得る。制御回路の電源が突然遮断されると、制御回路が実行する処理に支障が出る可能性がある。
【0006】
本開示は、バッテリパックから電動作業機への電力供給許可信号が突然消失した場合に、電力供給許可信号の消失の影響を抑制可能な電動作業機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面は、バッテリパックから電力を受給して動作する電動作業機であって、制御回路と、電力供給スイッチと、を備える。制御回路は、電動作業機の動作を制御するように構成される。電力供給スイッチは、電動作業機に接続されたバッテリパックから制御回路へ電力を供給するための電力供給経路に設けられており、バッテリパックから電動作業機へ電力供給許可信号が出力されたことに応じてオンになり、電力供給経路を通電状態にするように構成される。制御回路は、バッテリパックからの電力供給許可信号が消失した後においても、所定時間、制御回路への電力供給を維持するように、電力供給スイッチをオンにするためのオン命令信号を電力供給スイッチへ出力する。
【0008】
本開示の1つの局面によれば、バッテリパックから電動作業機への電力供給許可信号が消失した後においても、所定時間、制御回路への電力供給を維持するように、制御回路から電力供給スイッチをオンにするためのオン指令信号が出力される。よって、制御回路が、電動作業機の使用履歴や設定内容等を保存用メモリへ書込む処理や、釘を打ちこむ釘打ち処理などを実行している途中で、電力供給許可信号が消失した場合でも、処理が中断されることを回避できる。すなわち、バッテリパックから電動作業機への電力供給許可信号が消失した場合に、電力供給許可信号の消失の影響を抑制することができる。
【0009】
また、制御回路から出力されたオン命令信号の伝達経路に設けられた微分回路を備えてもよい。
オン命令信号の出力経路に微分回路を設けたことにより、オン命令信号が微分回路を経由して電力供給スイッチに入力される。そのため、制御回路に不具合が生じて、オン命令信号が出力され続けた場合でも、電力供給スイッチに、電力供給スイッチをオンにする信号が入力され続けることを回避できる。したがって、制御回路に不具合が生じ、且つ、電力供給許可信号が消失した場合には、微分回路の時定数に応じた時間後に電力供給スイッチをオフにして、制御回路への電力供給を遮断することができる。ひいては、制御回路に不具合が生じた場合でも、バッテリパックの保護が必要なときにバッテリパックを保護することができる。
【0010】
また、制御回路は、所定の処理を実行する前に、オン命令信号を電力スイッチへ出力してもよい。
所定の処理が実行される前に、オン命令信号が電力供給スイッチへ出力される。これにより、所定の処理の実行前や実行中に、バッテリパックからの電力供給許可信号が消失した場合であっても、制御回路は、電力供給を受けて、所定の処理を実行することができる。所定の処理は、データの保存処理、外部機器への無線通信処理などを含む。
【0011】
また、制御回路は、作業用メモリと保存用メモリとを備えていてもよい。所定の処理は、作業用メモリ上のデータの更新回数が設定値に到達したことに応じて、作業用メモリ上のデータを保存用メモリに書き込む、書込み処理であってもよい。
【0012】
作業用メモリ上のデータの更新回数が設定値に到達する都度、作業用メモリ上のデータが保存用メモリに書き込まれる。これにより、保存用メモリへの頻繁な書込み処理が回避され、保存用メモリへの書込み回数及び制御回路における消費電力を抑制できる。
【0013】
また、制御回路は、作業用メモリと保存用メモリとを備えていてもよい。所定の処理は、バッテリパックからの電力供給許可信号が消失したことに応じて、作業用メモリ上のデータを保存用メモリに書き込む、書込み処理であってもよい。
【0014】
作業用メモリ上のデータの更新回数が設定値に到達する前に、制御回路の電源が遮断されると、作業用メモリ上のデータが消失する。そこで、電力供給許可信号が消失したことに応じて、書込み処理が実行される。これにより、制御回路は、突然電力供給許可信号が消失した場合でも、オン指令信号を出力している間に、作業用メモリ上のデータを保存用メモリに保存することができる。
【0015】
また、電動作業機は、電動作業機を動作又は停止させるために使用者によって操作されるように構成されたトリガスイッチを備えていてもよい。制御回路は、作業用メモリと保存用メモリとを備えていてもよい。また、制御回路は、所定の処理の実行後に、消費電力を抑制するスリープモードへ移行してもよい。所定の処理は、トリガスイッチがオフになったことに応じて、作業用メモリ上のデータを保存用メモリに書き込む、書込み処理であってもよい。
【0016】
消費電力を抑制するスリープモードでは、書込み処理が実行されないため、制御回路は、スリープモードへ移行する前に、書込み処理を実行する。これにより、作業用メモリ上のデータを適切に保存用メモリに保存することができる。
【0017】
また、所定時間は、電力供給許可信号が消失した後に、書込み処理を完了するまでに要する時間よりも長い時間であってもよい。
書込み処理を完了するまでに要する時間よりも長い時間、制御回路から電力供給スイッチへオン指令信号が出力される。これにより、制御回路は、電力供給許可信号が消失した後に電源の供給を受け続けて、書込み処理を完了することができる。したがって、作業用メモリ上のデータを損なうことなく、保存用メモリに保存することができる。
【0018】
また、電力供給許可信号は、バッテリパックから電動作業機へ出力される信号が電力供給許可信号から電力供給禁止信号に変化したこと、又は、バッテリパックが電動作業機から取り外されたことに応じて、消失してもよい。
電力供給許可信号は、電力供給許可信号が電力供給禁止信号に変化したこと、及び、バッテリパックが電動作業機から取り外されたことに応じて消失する。
【0019】
また、正極端子と、負極端子と、電解コンデンサと、電源回路と、を備えてもよい。正極端子は、バッテリパックの正極(複数のバッテリセルが直列に接続されたバッテリセル群の正極)に電気的に接続されたバッテリパックの第1端子に接続されるように構成される。負極端子は、バッテリパックの負極(複数のバッテリセルが直列に接続されたバッテリセル群の負極)に電気的に接続されたバッテリパックの第2端子に接続されるように構成される。電解コンデンサは、正極端子と負極端子との両端子間に接続される。電源回路は、正極端子と負極端子との両端子間に接続され、入力された電力から制御回路へ供給する電源を生成するように構成される。
【0020】
正極端子と負極端子との両端子にバッテリパックが接続されている場合には、電源回路にバッテリパックの電力が入力され、電源回路に入力されたバッテリパックの電力から制御回路へ供給する電源が生成される。一方、両端子にバッテリパックが接続されていない場合は、両端子間に電解コンデンサが接続されているため、電源回路に電解コンデンサに蓄積された電力が入力される。よって、この場合、電源回路に入力された電解コンデンサの電力から、制御回路へ供給する電源が生成される。したがって、バッテリパックが電動作業機から突然取り外された場合でも、電源回路は、電解コンデンサを補助電源として利用して、制御回路へ電源を供給することができる。ひいては、バッテリパックが電動作業機から突然取り外された場合でも、制御回路は、所定時間、電源の供給を受けて、処理を実行することができる。
【0021】
また、制御回路は、電源回路への入力電圧値が、設定された検出電圧値を下回った場合に、バッテリパックが電動作業機から取り外されたと判定してもよい。
制御回路は、電源回路の入力電圧が設定電圧を下回った場合に、バッテリパックが電動作業機から取り外されたと判定して、電力供給許可信号の消失を認識することができる。
【0022】
また、検出電圧値は、電源回路が所定電圧の電源を生成するために必要な電圧値以上であってもよい。
電源回路の入力電圧が、所定電圧の電源を生成するために必要な電圧値よりも下がる前に、バッテリパックが電動作業機から取り外されたと判定される。そのため、制御回路は、電源回路の所定電圧の電源を生成できなくなる前に、オン指令信号を電力供給スイッチへ出力して、電源回路から電源の供給を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る電動作業機システムの構成を示す図である。
図2】更新回数に到達した場合におけるデータ保存処理の手順を示すフローチャートである。
図3】スリープモードに入る前におけるデータ保存処理の手順を示すフローチャートである。
図4】電源遮断時におけるデータ保存処理の手順を示すフローチャートである。
図5】更新回数に到達した場合における、バッテリ出力、マイコン出力、電力供給スイッチの動作、回路電源、及びROM書込み動作のタイムチャートである。
図6】バッテリパックからシャットダウン命令が電動作業機に入力された場合における、バッテリ出力、電力供給スイッチの動作、電源コンデンサ電圧、マイコン出力、ROM書込み動作、及び回路電源のタイムチャートである。
図7】バッテリパックが電動作業機から外された場合における、バッテリの挿抜、電力供給スイッチの動作、サージキラーコンデンサ電圧、電源コンデンサ電圧、マイコン出力、ROM書込み動作、及び回路電源のタイムチャートである。
図8】第1実施形態の比較例に係る電動作業機システムの構成を示す図である。
図9】第1実施形態の比較例において、バッテリパックからシャットダウン命令が電動作業機に入力された場合における、バッテリ出力、回路電源、及びROM書込み動作のタイムチャートである。
図10】第2実施形態に係る電動作業機システムの構成を示す図である。
図11】マイコンの不具合の発生時に電源遮断できる場合における、マイコン出力、バッテリ出力、OR回路入力、電力供給スイッチの動作、及び回路電源のタイムチャートである。
図12】マイコンの不具合の発生時に電源遮断できない場合における、マイコン出力、バッテリ出力、及び回路電源のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
(第1実施形態)
<1-1.構成>
まず、第1実施形態に係る電動作業機システム100の構成について、図1を参照して説明する。電動作業機システム100は、バッテリパック10と、電動作業機30と、を備える。
【0025】
バッテリパック10は、バッテリ11と、監視回路12と、バッテリ側正極端子13と、バッテリ側負極端子14と、バッテリ側通信端子15と、を備える。
バッテリ11は、複数のバッテリセルが直列に接続されて構成された二次バッテリである。バッテリ11は、例えばリチウムイオンバッテリであり、定格電圧は例えば36Vである。バッテリ11の正極は、バッテリ側正極端子13に接続されており、バッテリ11の負極は、バッテリ側負極端子14に接続されている。
【0026】
監視回路12は、バッテリ11に含まれるバッテリセルの各セル電圧、少なくとも1つのバッテリセルのセル温度、バッテリ11を流れる充放電電流などを監視する。そして、監視回路12は、監視している各種値に基づいて、バッテリ11が過放電状態か否か判定する。
【0027】
監視回路12は、バッテリ11が過放電状態ではないと判定した場合には、バッテリ側通信端子15を介して、電動作業機30へ電力供給許可信号を出力する。また、監視回路12は、バッテリ11が過放電状態であると判定した場合には、バッテリ側通信端子15を介して、電動作業機30へ電力供給禁止信号を出力する。電力供給許可信号は、後述する電動作業機30のマイクロコンピュータ32(以下、マイコン32)が、バッテリ11から電力を受給することを許可する信号であり、High信号である。一方、電力供給禁止信号は、マイコン32が、バッテリ11から電力を受給することを禁止する信号であり、Low信号である。すなわち、電力供給禁止信号は、マイコン32にシャットダウンを命令する信号である。
【0028】
電動作業機30は、バッテリパック10から電力を受給して動作する作業機である。電動作業機30は、例えば、モータの動力によって先端工具を駆動させる、電動工具や電動園芸機器である。あるいは、電動作業機30は、モータの動力を用いないレーザ墨出し器、ラジオ、ライトなどでもよい。
【0029】
電動作業機30は、電源回路31と、マイコン32と、電力供給スイッチ41と、トリガスイッチ42と、OR回路43と、サージキラーコンデンサ44と、電源コンデンサ45と、プルダウン抵抗器49と、作業機側正極端子33と、作業機側負極端子34と、作業機側通信端子35と、を備える。
【0030】
作業機側正極端子33は、バッテリ側正極端子13に接続され、作業機側負極端子34は、バッテリ側負極端子14に接続される。作業機側通信端子35は、バッテリ側通信端子15に接続される。また、プルダウン抵抗器49は、作業機側通信端子35と作業機側負極端子34との間に接続されている。本実施形態では、バッテリ側正極端子13が第1端子に相当し、バッテリ側負極端子14が第2端子に相当する。なお、第1端子は、バッテリパック10の正極端子に限らず、バッテリパック10の正極に、例えばレギュレータ等を介して電気的に接続された端子であってもよい。同様に、第2端子は、バッテリパック10の負極端子に限らず、バッテリパック10の負極に電気的に接続された端子であればよい。
【0031】
電源回路31は、正極ライン51を介して作業機側正極端子33に接続されているとともに、負極ライン52を介して作業機側負極端子34に接続されている。電力供給スイッチ41は、正極ライン51上に設けられている。電力供給スイッチ41がオンのとき、正極ライン51は通電状態になり、バッテリパック10から作業機側正極端子33と作業機側負極端子34との両端子間に入力された入力電力が、電源回路31に入力される。一方、電力供給スイッチ41がオフのとき、正極ライン51は遮断状態になる。
【0032】
電源回路31は、電力供給スイッチ41がオンのときに、正極ライン51と負極ライン52とのライン間に入力された入力電力から、マイコン32を含む各種回路へ供給する所定電圧の電源を生成する。本実施形態では、電源回路31は、5Vの電源を生成してマイコン32へ供給する。
【0033】
トリガスイッチ42は、電動作業機30を動作又は停止させるために使用者よって操作されるスイッチである。トリガスイッチ42の操作信号はマイコン32へ入力される。
マイコン32は、CPU32a、ROM32b、RAM32c及びI/O等を備え、電源回路31から電源を受給して起動する制御回路である。そして、マイコン32は、トリガスイッチ42のオフを検出した場合に、オフを検出してから所定時間経過すると、消費電力を抑制するスリープモードへ移行する。また、マイコン32は、電源回路31からの電源の供給が遮断されると、シャットダウンする。
【0034】
また、マイコン32は、CPU32aが、ROM32bに格納されているプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。RAM32cは、作業用の揮発性メモリであり、各種データが一時的に記憶される。ROM32bは、保存用の不揮発性メモリである。マイコン32は、RAM32c上のデータが設定量に到達した場合、スリープモードに移行する前、及び、電源遮断時に、RAM32c上のデータをROM32bへ書込む書込み処理を実行する。さらに、マイコン32は、書込み処理の実行時に、電力供給スイッチ41をオンにするためのオン命令信号を出力する。オン命令信号はHigh信号である。オン命令信号の出力についての詳細は後述する。
【0035】
サージキラーコンデンサ44は、電源回路31及び電力供給スイッチ41よりも端子33,34側に位置し、正極ライン51と負極ライン52との間に接続されている。サージキラーコンデンサ44は、入力電力のサージ電圧を吸収する電解コンデンサである。サージキラーコンデンサ44の容量は大きく、例えば、1000μF以上である。そのため、電源回路31は、バッテリパック10が電動作業機30から取り外された後、しばらくの間、サージキラーコンデンサ44の残留電荷を利用して、電源を生成することができる。すなわち、電源回路31は、サージキラーコンデンサ44を補助電源として用いることができる。
【0036】
電源コンデンサ45は、電源回路31と電力供給スイッチ41との間に位置し、正極ライン51と負極ライン52との間に接続されている。電源コンデンサ45は、マイコン32が、電源回路31への入力電力の電圧を検出するために設けられた電解コンデンサである。マイコン32は、電源コンデンサ45の正極と負極ライン52とに接続されており、電源コンデンサ45の電圧から入力電圧を検出する。電源コンデンサ45の容量は、サージキラーコンデンサ44と比べて非常に小さく、例えば、10μF程度である。
【0037】
OR回路43は、2つの入力端子と1つの出力端子とを備える。第1入力端子には、バッテリ側通信端子15及び作業機側通信端子35を介して、監視回路12から出力された電力供給許可信号又は電力供給禁止信号が入力される。また、第1入力端子は、プルダウン抵抗器49により負極ライン52へプルダウンされている。電動作業機30からバッテリパック10が取り外された場合に、第1入力端子の電位はLowレベルになる、すなわち、第1入力端子にはLow信号が入力される。第2入力端子には、マイコン32から出力されたオン命令信号が入力される。OR回路43は、電力供給許可信号及びオン命令信号の少なくとも一方が入力された場合に、出力端子から電力供給スイッチ41へHigh信号を出力する。また、OR回路43は、電力供給許可信号及びオン命令信号のいずれも入力されない場合に、出力端子から電力供給スイッチ41へLow信号を出力する。電力供給スイッチ41は、High信号の入力に応じてオンになり、Low信号の入力に応じてオフになる。すなわち、電力供給スイッチ41は、バッテリパック10の監視回路12及び電動作業機30のマイコン32の少なくとも一方からHigh信号が出力された場合に、オンになる。
【0038】
<1-2.データ保存処理>
<1-2-1.更新回数が多い場合におけるデータ保存処理>
次に、マイコン32が実行する、更新回数が多い場合におけるデータ保存処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。ROM32bの書込み回数には上限がある。また、ROM32bへデータを書込むとバッテリパック10の電力を消費する。そのため、マイコン32は、書込み回数を抑制し、バッテリパック10の電力を保持するため、RAM32c上にある程度データが蓄積されてから、データをROM32bに保存する。すなわち、マイコン32は、RAM32c上のデータと、ROM32b上のデータとの差異が大きくなった場合に、RAM32c上のデータをROM32bに保存する。
【0039】
まず、S10では、RAM32c上に蓄積されている電動作業機30の使用履歴データの更新回数が、予め設定された所定値に到達したか否か判定する。すなわち、ROM32bの更新時期が来たか否か判定する。S10において、更新回数が所定値に到達したと判定した場合は、S20の処理へ進む。一方、S10において、更新回数が所定値に到達していないと判定した場合は、更新回数が所定値に到達したと判定するまで、S10の処理を繰り返し実行する。
【0040】
続いて、S20では、電力供給スイッチ41へオン命令信号を出力する。ここで、ROM32bへの使用履歴データの書込み中に、バッテリパック10の電力供給許可信号が消失し、電力供給スイッチ41がオフになると、マイコン32がシャットダウンする。書込み中にマイコン32がシャットダウンすると、ROM32bに書込まれたデータにエラーが生じる。そこで、書込み中にバッテリパック10の電力供給許可信号が消失したとしても、電力供給スイッチ41がオフにならないように、書込み前に電力供給スイッチ41へオン命令信号を出力する。
【0041】
これにより、バッテリパック10からの出力信号に関わらず、OR回路43から電力供給スイッチ41へHigh信号が出力され、電力供給スイッチ41がオンになる。ひいては、書込み中にバッテリパック10からの電力供給許可信号が消失しても、マイコン32がシャットダウンすることを回避できる。なお、電力供給許可信号は、バッテリパック10からの出力信号が電力供給許可信号から電力供給禁止信号に変化した場合、又は、バッテリパック10が電動作業機30から取り外されたことに応じて、消失する。
【0042】
続いて、S30では、RAM32c上の使用履歴データをROM32bへ書込む、書込み処理を実行する。書込み処理が終了すると、S40の処理へ進む。
続いて、S40では、電力供給スイッチ41へオフ命令信号を出力する。オフ命令信号はLow信号である。これにより、書込み処理の終了後に、バッテリパック10から電力供給許可信号が出力されていない場合には、マイコン32をシャットダウンさせることができる。
【0043】
<1-2-2.スリープモードに入る前におけるデータ保存処理>
次に、マイコン32が実行する、スリープモードに入る前におけるデータ保存処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。マイコン32は、スリープモード中に、RAM32c上の使用履歴データを更新しないため、スリープモードに入る前に、RAM32c上の使用履歴データをROM32bに保存する。
【0044】
まず、S100では、トリガスイッチ42のオフを検出してから、予め設定された所定時間Tbが経過したか否か判定する。S100において、所定時間Tbが経過したと判定した場合は、S110の処理へ進む。一方、S100において、所定時間Tbが経過していないと判定した場合は、所定時間Tbが経過したと判定するまで、S100の処理を繰り返し実行する。
【0045】
続いて、S110~S130では、S20~S40と同様の処理を実行する。その後、スリープモードへ移行する。
<1-2-3.電源遮断時におけるデータ保存処理>
次に、マイコン32が実行する、電源遮断時におけるデータ保存処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。マイコン32は、RAM32c上の使用履歴データがある程度蓄積される都度、RAM32c上の使用履歴データを、ROM32bに保存する。よって、ROM32bの更新タイミングが到来する前に、バッテリパック10の出力信号が電力供給許可信号から電力供給禁止信号に切り替わる、又は、バッテリパック10が電動作業機30から取り外されると、マイコン32の電源が遮断されて、RAM32c上の使用履歴データは消失してしまう。そこで、マイコン32は、電源回路31への入力電圧が低下したことを検出した場合に、RAM32c上の使用履歴データをROM32bに保存する。
【0046】
まず、S200では、電源回路31への入力電圧値が、予め設定された検出電圧値を下回ったか否か判定する。具体的には、電源コンデンサ45の電圧VC2が検出電圧値を下回ったか否か判定する。この検出電圧値は、電源回路31が、所定電圧の電源を生成するために必要な電圧値以上の値である。本実施形態では、検出電圧値は、電源回路31が5Vの電源を生成するために必要な電圧値以上の値である。
【0047】
S200において、入力電圧値が検出電圧値を下回ったと判定した場合は、S210の処理へ進む。この時点では、電源回路31は、入力電力から5Vの電源を生成して、マイコン32へ供給している。一方、入力電圧値が検出電圧値以上と判定した場合は、入力電圧値が検出電圧値を下回ったと判定するまで、S200の処理を繰り返し実行する。
【0048】
続いて、S210では、ROM32bに書込むべき使用履歴データがあるか否か判定する。すなわち、前回ROM32bに書込んだ後に、RAM32c上で更新された使用履歴データがあるか否か判定する。S210において、書込むべき使用履歴データがあると判定した場合は、S220の処理へ進む。一方、書込むべき使用履歴データがないと判定した場合は、S240の処理へ進む。
【0049】
S220では、電力供給スイッチ41へオン命令信号を出力する。オン命令信号の出力に伴い、OR回路43から電力供給スイッチ41へHigh信号が出力され、電力供給スイッチ41がオンになる。これにより、電源回路31の入力電圧が、所定電圧の電源を生成できない程度にまで下がる前に、電力供給スイッチ41がオンになるため、電源回路31は、所定電圧の電源を生成し続けることができる。
【0050】
続いて、S230では、RAM32c上の使用履歴データをROM32bへ書込む、書込み処理を実行する。書込み処理が終了すると、S240の処理へ進む。
S240では、電力供給スイッチ41へオフ命令信号を出力する。これにより、書込み処理の終了後に、電力供給スイッチ41をオフにして、マイコン32をシャットダウンさせることができる。
【0051】
<1-3.動作>
<1-3-1.更新回数が多い場合における動作>
次に、更新回数が多い場合におけるデータ保存処理を実行した場合における、電動作業機30の動作について、図5のタイムチャートを参照して説明する。
【0052】
バッテリパック10から電力供給許可信号が出力されている状況下で、時点t11において、使用履歴データの更新回数が所定値に到達し、ROM32bへの書込みタイミングが到来している。よって、時点t11において、マイコン32から電力供給スイッチ41へオン命令信号が出力されている。その後、時点t12において、ROM32bへの書込みが開始され、時点t13において、書込みが完了している。そして、書込み完了後、時点t14において、マイコン32の出力信号が、オン命令信号からオフ命令信号へ切り替わっている。
【0053】
続いて、時点t15において、再度、ROM32bへの書込みタイミングが到来して、マイコン32の出力信号が、オフ命令信号からオン命令信号へ切り替わっている。その後、時点t16において、ROM32bへの書込みが開始され、時点t18において、書込みが完了している。
【0054】
ここで、書込み中の時点t17において、バッテリパック10の出力信号が、電力供給許可信号から電力供給禁止信号への切り替わりが生じている。すなわち、時点t17において、電力供給許可信号が消失している。しかしながら、時点t17から時点t19までの所定時間Ta、マイコン32から継続してオン命令信号が出力されている。所定時間Taは、電力供給許可信号が消失した後、書込み処理が完了するまでに要する時間よりも長い時間である。
【0055】
したがって、時点t11から時点t19までの間、電力供給許可信号及びオン命令信号の少なくとも一方がOR回路43に入力されるため、OR回路43からはHigh信号が出力され続けている。その結果、時点t11から時点t19までの間、マイコン32へ5Vの電源が継続して供給されている。一方、時点t19以降では、電力供給禁止信号及びオフ命令信号がOR回路43に入力されるため、OR回路43からはLow信号が出力されている。ただし、時点t19において電力供給スイッチ41がオフになっても、電源回路31には電源コンデンサ45が接続されているため、電源回路31は電源コンデンサ45の残留電荷を用いて生成した電源をマイコン32へ供給する。その結果、時点t19において、マイコン32の電源は直ちに遮断されない。時点t19以降において、電源コンデンサ45の残留電荷の減少とともに、マイコン32に供給される電源電圧が徐々に低下し、マイコン32の電源が遮断されている。
【0056】
<1-3-2.比較例の動作>
次に、本実施形態の比較例について、図8及び図9を参照して説明する。図8に示すように、比較例に係る電動作業機システム150は、バッテリパック10と、電動作業機300と、を備える。電動作業機300は、OR回路43を備えず、マイコン32から電力供給スイッチ41へオン命令信号又はオフ命令信号が出力されない点で、電動作業機30と異なる。すなわち、バッテリパック10からの出力信号は、バッテリ側通信端子15及び作業機側通信端子35を介して、電力供給スイッチ41へ直接出力される。電力供給スイッチ41は、電力供給許可信号が入力された場合にオンになり、電力供給許可信号が消失した場合にオフになる。
【0057】
次に、電動作業機300の動作について、図9を参照して説明する。バッテリパック10から電力供給許可信号が出力されている状況下で、時点t1において、ROM32bへの書込みが開始され、時点t2で書込みが完了している。その後、時点t3において、ROM32bへの書込みが再度開始されるが、書込みが完了する前の時点t4において、バッテリパック10からの出力信号が、電力供給許可信号から電力供給禁止信号に切り替わっている。その結果、時点t4において、電力供給スイッチ41がオフになり、マイコン32へ供給される電源が低下し始めている。その後、時点t5において、マイコン32に供給される電源電圧が不足状態になって、マイコン32の動作が停止し、書込みエラーが発生している。
【0058】
これに対して、本実施形態に係る電動作業機30では、書込み処理中に、マイコン32から電力供給スイッチ41へオン命令信号が出力され続ける。そのため、書込み中に、バッテリパック10からの出力信号が、電力供給許可信号から電力供給禁止信号に切り替わっても、書込み中にマイコン32の電源電圧が不足状態になることを回避して、書込みエラーの発生を抑制できる。
【0059】
<1-3-3.突然シャットダウン命令が入力された場合における動作>
次に、バッテリパック10から突然シャットダウン命令が入力された場合における、電動作業機30の動作について、図6のタイムチャートを参照して説明する。
【0060】
時点t31において、バッテリパック10の出力信号が、電力供給許可信号から電力供給禁止信号に切り替わり、電力供給スイッチ41がオンからオフに切り替わっている。電力供給スイッチ41がオフになったことにより、電源回路31に接続されている電源は、電源コンデンサ45のみになる。よって、電源回路31は、電源コンデンサ45の残留電荷を利用して、所定電圧の電源を生成する。そのため、時点t31において、電源コンデンサ45の電圧VC2が低下し始める。
【0061】
そして、時点t32において、電圧VC2が検出電圧まで低下したことにより、電力供給スイッチ41のオフが検出され、マイコン32の出力信号が、オフ命令信号からオン命令信号に切り替わっている。これに伴い、時点t32において、電力供給スイッチ41がオフからオンに切り替わっている。
【0062】
よって、時点t32以降において、電源回路31には、バッテリパック10から供給された電力が入力される。これにより、電源コンデンサ45は再充電され、電圧VC2は上昇している。電源回路31は、時点t31から時点t32の間においては、電源コンデンサ45の残留電荷から5Vの電源を生成し、時点t32以降においては、バッテリパック10からの入力電力から5Vの電源を生成する。
【0063】
続いて、時点t33において、ROM32bへの書込みが開始され、時点t34において、書込みが完了している。そして、書込み完了後、時点t35において、マイコン32の出力信号が、オン命令信号からオフ命令信号へ切り替わっている。これにより、時点t35において、OR回路43からLow信号が出力され、電力供給スイッチ41がオンからオフに切り替わっている。その結果、時点t31から時点t35までの所定時間Ta、マイコン32への電力供給が維持されている。そして、時点t35以降において、マイコン32に供給される電源電圧が徐々に低下し、マイコン32の電源が遮断されている。
【0064】
<1-3-4.バッテリパックが突然取り外された場合における動作>
次に、バッテリパック10が電動作業機30から突然取り外された場合における、電動作業機30の動作について、図7のタイムチャートを参照して説明する。
【0065】
時点t51において、バッテリパック10が電動作業機30から取り外される。よって、時点t51において、電力供給許可信号が消失するため、電力供給スイッチ41がオンからオフに切り替わっている。電力供給スイッチ41がオフになったことにより、電源回路31に接続されている電源は、電源コンデンサ45のみになる。よって、電源回路31は、電源コンデンサ45の残留電荷を利用して、所定電圧の電源を生成する。そのため、時点t51において、電源コンデンサ45の電圧VC2が低下し始める。
【0066】
そして、時点t52において、電圧VC2が検出電圧まで低下したことにより、電力供給スイッチ41のオフが検出され、マイコン32の出力信号が、オフ命令信号からオン命令信号に切り替わる。これに伴い、時点t52において、電力供給スイッチ41がオフからオンに切り替わっている。
【0067】
よって、時点t52以降において、電源回路31にはサージキラーコンデンサ44が接続されるため、電源コンデンサ45は再充電され、電圧VC2は上昇している。電源回路31は、時点t52以降において、サージキラーコンデンサ44の残留電荷から5Vの電源を生成する。そのため、時点t52以降において、サージキラーコンデンサ44の電圧VC1は低下し始める。また、電源コンデンサ45の電圧VC2は、電圧VC1と共に低下している。
【0068】
続いて、時点t53において、ROM32bへの書込みが開始され、時点t54において、書込みが完了している。ここで、サージキラーコンデンサ44は大容量であるため、電圧VC1は緩やかに低下する。電源回路31の入力電圧が検出電圧よりも低下するまでに要する時間は、書込み処理に要する時間よりも長い。よって、マイコン32は、サージキラーコンデンサ44の残留電荷から生成された電源を用いて、書込みを完了することができる。
【0069】
そして、書込み完了後、時点t55において、マイコン32の出力信号が、オン命令信号からオフ命令信号へ切り替わっている。これにより、時点t55において、OR回路43からLow信号が出力され、電力供給スイッチ41がオンからオフに切り替わっている。その結果、時点t51から時点t55までの所定時間Ta、マイコン32への電力供給が維持されている。時点t55以降において、マイコン32の電源電圧が徐々に低下し、マイコン32の電源が遮断されている。
【0070】
<1-3.効果>
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)バッテリパック10から電動作業機30への電力供給許可信号が消失した後においても、所定時間Ta、マイコン32への電力供給を維持するように、マイコン32から電力供給スイッチ41へオン命令信号が出力される。よって、マイコン32が書込み処理を実行している途中で、電力供給許可信号が消失した場合でも、書込み処理が中断されることを回避できる。
【0071】
(2)RAM32c上の使用履歴データのデータ更新回数が設定値に到達する都度、RAM32c上の使用履歴データがROM32bに書き込まれる。これにより、頻繁な書込み処理が回避され、ROM32bの書込み回数及びマイコン32における消費電力を抑制できる。
【0072】
(3)電力供給許可信号が消失したことに応じて、書込み処理が実行される。これにより、マイコン32は、突然電力供給許可信号が消失した場合でも、オン命令信号を出力している間に、RAM32c上のデータをROM32bに保存することができる。
【0073】
(4)消費電力を抑制するスリープモードでは、書込み処理が実行されないため、マイコン32は、スリープモードへ移行する前に、書込み処理が実行される。これにより、RAM32c上の使用履歴データを適切にROM32bに保存することができる。
【0074】
(5)書込み処理を完了するまでに要する時間よりも長い時間、マイコン32から電力供給スイッチ41へオン命令信号が出力される。これにより、マイコン32は、電力供給許可信号が消失した後に電源の供給を受け続けて、書込み処理を完了することができる。したがって、RAM32c上のデータを損なうことなく、ROM32bに保存することができる。
【0075】
(6)電動作業機30にバッテリパック10が接続されていない場合は、正極ライン51と負極ライン52との間にサージキラーコンデンサ44が接続されているため、電源回路31にサージキラーコンデンサ44の電力が入力される。よって、この場合、電源回路31に入力されたサージキラーコンデンサ44の電力から、マイコン32へ供給する電源が生成される。したがって、バッテリパック10が電動作業機30から突然取り外された場合でも、電源回路31は、サージキラーコンデンサ44を補助電源として利用して、マイコン32へ電源を供給することができる。ひいては、バッテリパック10が電動作業機30から突然取り外された場合でも、マイコン32は、所定時間Ta、電源の供給を受けて、処理を実行することができる。
【0076】
(7)マイコン32は、電源回路31の入力電圧値が検出電圧値を下回った場合に、バッテリパック10が電動作業機30から取り外されたと判定して、電力供給許可信号の消失を認識することができる。
【0077】
(8)電源回路31の入力電圧が、所定電圧の電源を生成するために必要な電圧値よりも下がる前に、バッテリパック10が電動作業機30から取り外されたと判定される。そのため、マイコン32は、電源回路31が所定電圧の電源を生成できなくなる前に、オン命令信号を電力供給スイッチ41へ出力して、電源回路31から電源の供給を受けることができる。
【0078】
(第2実施形態)
<2-1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0079】
図10に示すように、第2実施形態に係る電動作業機システム100Aは、バッテリパック10と、電動作業機30Aと、を備える。第2実施形態に係る電動作業機30Aは、微分回路55を備える点で、第1実施形態に係る電動作業機30と異なる。
【0080】
微分回路55は、マイコン32から出力されるオン命令信号の伝達経路に設けられている。詳しくは、微分回路55は、マイコン32と、OR回路43の第2入力端子との間に設けられている。
【0081】
微分回路55は、微分コンデンサ46と、微分抵抗器47と、ダイオード48と、を備える。微分抵抗器47は、OR回路43の第2入力端子と負極ライン52との間に接続されている。微分コンデンサ46は、OR回路43の第2入力端子と微分抵抗器47との接続点とマイコン32との間に接続されている。ダイオード48は、アノードが負極ライン52側になるように、微分抵抗器47に並列に接続されている。
【0082】
微分回路55の時定数は、微分コンデンサ46の容量と微分抵抗器47の抵抗値とで決まり、ROM32bへの書込み処理の開始から完了までに要する時間以上の長さに設定されている。また、ダイオード48は、マイコン32から電力供給スイッチ41への出力信号が、High信号からLow信号へ変化したときに、OR回路43の第2入力端子に負電圧が入力されることを回避するために設けられている。
【0083】
<2.動作>
次に、マイコン32の不具合発生時における、電動作業機30Aの動作について、図11のタイムチャートを参照して説明する。
【0084】
バッテリパック10から電力供給許可信号が出力されている状況下で、時点t71において、使用履歴データの更新回数が所定値に到達し、ROM32bへの書込みタイミングが到来している。よって、時点t71において、マイコン32から電力供給スイッチ41へオン命令信号が出力されている。これに伴い、OR回路43の第2入力端子には、微分回路55を介してHigh信号が入力されている。時点t71以降、OR回路43の第2入力端子に入力される信号は、微分回路55の時定数に応じて電圧値が低下する。
【0085】
そして、書込み処理の完了後、時点t72において、マイコン32の出力信号が、オン命令信号からオフ命令信号に切り替わっている。ここで、微分回路55の時定数は、書込み処理に要する時間以上の長さに設定されている。すなわち、微分回路55の時定数は、書込み処理の完了時に、微分回路55の出力信号の電圧値が、High閾値電圧よりも大きくなるように設定されている。したがって、時点t71から時点t72の間、OR回路43の第2入力端子に入力される信号は、High信号になっている。よって、時点t71から時点t72の間、OR回路43からHigh信号が出力されるため、電力供給スイッチ41はオンに維持され、マイコン32には5Vの電源が供給されている。
【0086】
続いて、時点t73において、マイコン32に不具合が発生し、時点t73以降、マイコン32からオン命令信号が出力され続けている。これに伴い、時点t73以降、微分回路55にはHigh信号が入力される。
【0087】
続いて、時点t74において、バッテリパック10からの出力信号が電力供給許可信号から電力供給禁止信号に切り替わっている。これにより、OR回路43の第1入力端子にはLow信号が入力される。一方、OR回路43の第2入力端子には、微分回路55の出力信号が入力される。時点t74において、微分回路55の出力信号は、High閾値電圧よりも大きいため、OR回路43の第2入力端子に入力される信号は、High信号になっている。したがって、時点t74において、OR回路43からはHigh信号が出力され、電力供給スイッチ41はオンに維持されるため、マイコン32の電源は遮断されていない。
【0088】
その後、時点t75において、OR回路43の第2入力端子に入力される信号は、電圧値がLow閾値電圧よりも低下し、High信号からLow信号に切り替わっている。その結果、時点t75において、電力供給スイッチ41はオンからオフに切り替わっている。そして、時点t75以降において、マイコン32の電源電圧が徐々に低下し、マイコン32の電源が遮断されている。すなわち、微分回路55を介して、マイコン32の出力信号をOR回路43の第2入力端子に入力することにより、マイコン32からオン命令信号が出力され続ける不具合が発生した場合でも、マイコン32の電源を遮断することができる。ひいては、バッテリパック10が過放電状態のときに、バッテリパック10を適切に保護することができる。
【0089】
これに対して、微分回路55を介さず、マイコン32の出力信号をOR回路43の第2入力端子に入力する場合における、動作のタイムチャートを図12に示す。
マイコン32からオン命令信号が出力され続ける不具合が発生すると、その後、バッテリパック10の出力信号が電力供給許可信号から電力供給禁止信号に変化しても、マイコン32の電源を遮断することができず、マイコン32に電源が供給され続ける。
【0090】
<3.効果>
以上説明した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)~(8)に加え、以下の効果が得られる。
【0091】
(9)マイコン32からのオン命令信号の出力経路に微分回路55を設けたことにより、オン命令信号が微分回路55を経由して電力供給スイッチ41に入力される。そのため、マイコン32の不具合によりオン命令信号が出力され続けた場合でも、OR回路43の第2入力端子にHigh信号が入力され続けることを回避できる。したがって、マイコン32に不具合が生じ、且つ、電力供給許可信号が消失した場合には、微分回路55の時定数に応じた時間後に電力供給スイッチ41をオフにして、マイコン32への電力供給を遮断することができる。
【0092】
(他の実施形態)
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0093】
(a)上記実施形態では、書込み処理において、使用履歴データをROM32bへ書込んだが、ROM32bへ書込むデータは使用履歴データに限らない。電動作業機30,30Aの使用再開時に、前回の使用終了時の状態で電動作業機30,30Aを使用できるように、電動作業機30,30Aの終了時の設定内容をROM32bへ書込んでもよい。例えば、電動作業機30,30Aがレーザ墨出し器の場合、レーザ光の照射パターンモードをROM32bへ書込んでもよい。
【0094】
(b)上記実施形態では、書込み処理中にマイコン32の電源が遮断されないように、マイコン32からオン指令信号を出力したが、処理中におけるマイコン32の電源遮断によって支障が生じる処理は書込み処理に限らない。書込み処理以外の処理中に、マイコン32の電源が遮断されないように、マイコン32からオン指令信号を出力してもよい。例えば、電動作業機30,30Aが釘打ち機の場合、釘の打ち込みが終わるまでマイコン32の電源が遮断されないように、マイコン32からオン指令信号を出力してもよい。
【0095】
(c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0096】
10…バッテリパック、13…バッテリ側正極端子、14…バッテリ側負極端子、15…バッテリ側通信端子、30,30A…電動作業機、31…電源回路、32…マイクロコンピュータ、32a…CPU、32b…ROM、32c…RAM、33…作業機側正極端子、34…作業機側負極端子、35…作業機側通信端子、41…電力供給スイッチ、42…トリガスイッチ、43…OR回路、44…サージキラーコンデンサ、45…電源コンデンサ、46…微分コンデンサ、47…微分抵抗器、48…ダイオード、51…正極ライン、52…負極ライン、55…微分回路、100,100A…電動作業機システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12