(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/06 20060101AFI20240610BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20240610BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240610BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240610BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G03G15/06 101
G03G15/08 220
G03G15/00 303
G03G21/14
G03G15/02 102
G03G15/08 235
(21)【出願番号】P 2020095756
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡安 孝平
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-003886(JP,A)
【文献】特開2009-122464(JP,A)
【文献】特開2007-132987(JP,A)
【文献】特開2002-149030(JP,A)
【文献】特開2002-244456(JP,A)
【文献】特開2007-148227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
13/06-13/08
13/095
13/14-13/16
13/34
15/00
15/02
15/06-15/08
15/095
15/14-15/16
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な像担持体と、
前記像担持体と接触して帯電部を形成し、前記像担持体の表面を前記帯電部において帯電する帯電部材と、
前記像担持体を露光して前記像担持体の表面に静電潜像を形成する露光部と、
正規極性に帯電した現像剤を担持し、前記像担持体の表面に形成された前記静電潜像に現像剤を供給して前記像担持体の表面に現像剤像を形成する現像剤担持体と、
前記像担持体と接触してニップを形成し、前記ニップに搬送された記録材に前記現像剤像を転写する転写部材と、
帯電バイアスを前記帯電部材に印加する帯電バイアス印加部と、
現像バイアスを前記現像剤担持体に印加する現像バイアス印加部と、
転写バイアスを前記転写部材に印加する転写バイアス印加部と、
前記帯電バイアス印加部と前記現像バイアス印加部と前記転写バイアス印加部と、を制御する制御部と、
を備える画像形成装置であって、
前記転写部材に前記転写バイアスが印加され記録材が前記ニップに挟持された状態で前記ニップにおいて記録材と接触する前記像担持体の領域を第1の領域、前記転写部材に前記転写バイアスが印加され記録材が前記ニップに挟持されていない状態で前記ニップにおいて記録材と接触しない前記像担持体の領域を第2の領域とすると、
前記制御部は、前記ニップを通過した後に、第1の帯電バイアスが印加された前記帯電部において第1の表面電位が形成された前記第1の領域が前記現像剤担持体と対向するときに前記現像剤担持体に第1の現像バイアスを印加し、前記第1の帯電バイアスと同極性で前記第1の帯電バイアスよりも絶対値が小さい第2の帯電バイアスが印加された前記帯電部において第2の表面電位が形成された前記第2の領域が前記現像剤担持体と対向するときに前記現像剤担持体に前記第1の現像バイアスの絶対値よりも小さい第2の現像バイアスを印加するように制御
し、
前記ニップを前記第2の領域が通過した後で前記第1の領域が通過する前における第3の領域であって、前記転写部材に前記転写バイアスが印加され記録材が前記ニップに挟持された状態で前記ニップにおいて記録材と接触する前記像担持体の領域を第3の領域、とすると、
前記制御部は、前記第3の領域には第3の帯電バイアスが印加された前記帯電部において第3の表面電位が形成され、前記第3の帯電バイアスは前記第2の帯電バイアスと同極性で前記第2の帯電バイアスよりも絶対値が大きくなるように制御し、
前記帯電部材に印加される前記第2の帯電バイアスを前記第3の帯電バイアスに切り替え、前記第3の帯電バイアスを前記第1の帯電バイアスに切り替えるように前記帯電バイアス印加部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の表面電位、前記第2の表面電位、前記第1の現像バイアス及び前記第2の現像バイアスのそれぞれの極性は、前記正規極性であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の表面電位の絶対値は、前記第2の表面電位の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の表面電位を形成するための第1の帯電電位が前記帯電部材に形成され、
前記第1の帯電電位と同極性であって、前記第2の表面電位を形成するための第2の帯電電位が前記帯電部材に形成され、
前記第1の帯電電位の絶対値は、前記第2の帯電電位の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電バイアス印加部が第1の帯電バイアスを前記帯電部材に印加することで前記第1の帯電電位が形成され、
前記帯電バイアス印加部が前記第1の帯電バイアスと同極性の第2の帯電バイアスを前記帯電部材に印加することで前記第2の帯電電位が形成され、
前記第1の帯電バイアスの絶対値は、前記第2の帯電バイアスの絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の領域と前記第2の領域との間に位置しており前記転写部材に前記転写バイアスが印加され記録材が前記ニップに挟持された状態で前記ニップにおいて記録材と接触する前記像担持体の領域を第3の領域とすると、
前記帯電部において第3の表面電位が形成された前記第3の領域が前記現像剤担持体と対向するときであって、前記第2の現像バイアスから前記第1の現像バイアスに切り替わるときに前記現像剤担持体に形成された現像電位がオーバーシュートし、
前記オーバーシュートしたときの前記現像電位の絶対値は、前記現像剤担持体に前記第1の現像バイアスが印加されたときの前記現像電位の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第3の表面電位の絶対値は、前記第1の表面電位の絶対値及び前記第2の表面電位の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記現像剤担持体に前記第1の現像バイアスが印加されることで前記現像剤担持体に第1の現像電位が形成され、
前記現像剤担持体に前記第2の現像バイアスが印加されることで前記現像剤担持体に第2の現像電位が形成され、
前記第1の現像電位がオーバーシュートすることで前記現像剤担持体に第3の現像電位が形成され、
前記制御部は、前記第3の表面電位と前記第3の現像電位との第3の電位差について、前記第3の領域の面積に対する前記第3の領域における前記現像剤の面積の比率が2%以下となるような前記第3の電位差が形成されるように前記帯電バイアス印加部及び前記現像バイアス印加部を制御することを特徴とする請求項6
又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記現像剤担持体に前記第1の現像バイアスが印加されることで前記現像剤担持体に第1の現像電位が形成され、
前記現像剤担持体に前記第2の現像バイアスが印加されることで前記現像剤担持体に第2の現像電位が形成され、
前記制御部は、前記第1の表面電位と前記第1の現像電位との第1の電位差について、前記第1の領域の面積に対する前記第1の領域における前記現像剤の面積の比率が2%以下となるような前記第1の電位差が形成されるように前記帯電バイアス印加部及び前記現像バイアス印加部を制御することを特徴とする請求項1から
8の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記現像剤担持体に前記第2の現像バイアスが印加されることで前記現像剤担持体に第2の現像電位が形成され、
前記制御部は、前記第2の表面電位と前記第2の現像電位との第2の電位差について、前記第2の領域の面積に対する前記第2の領域における前記現像剤の面積の比率が2%以下となるような前記第2の電位差が形成されるように前記帯電バイアス印加部及び前記現像バイアス印加部を制御することを特徴とする請求項1から
9の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記現像剤担持体は、前記像担持体に対して非接触で配置されており、
前記第1の現像バイアス及び前記第2の現像バイアスは、ACバイアスであることを特徴とする請求項1から1
0の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記現像剤担持体は、前記像担持体に対して接触して配置されており、
前記第1の現像バイアス及び前記第2の現像バイアスは、同極性のDCバイアスであり、
前記第1の現像バイアスの絶対値は、前記第2の現像バイアスの絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項1から1
0の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第2の現像バイアスは、前記像担持体の回転方向の下流側における前記第2の領域の先端が前記現像剤担持体と対向する位置に到達するタイミングから所定時間後に印加されることを特徴とする請求項1から1
1の何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタ、LEDプリンタ等のプリンタ、デジタル複写機等の電子写真方式、静電記録方式、加熱定着装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、感光ドラムの表面と転写ローラとの間に形成された転写ニップで、感光ドラムの表面のトナー像を当該表面から記録紙に直接転写させる直接転写方式が採用されている。また、直接転写方式の画像形成装置の中にはコスト削減の目的で除電光ユニットを有しないものがある。この場合、帯電前に除電光によるドラム表面電位(感光ドラムの表面電位)の初期化がなされないため、直接転写方式の画像形成装置においては、転写ニップでの転写放電状態の差異がそのままドラム表面電位に影響する。
従って、転写ニップの記録紙の有無によってインピーダンスが変化して転写ニップでの放電状態が異なる。そのため、記録紙が転写ニップを通過した後(非通紙時)のドラム表面電位が、記録紙が転写ニップを通過している時(通紙時)のドラム表面電位と比べて変化する。具体的には非通紙時では、記録紙を介さず転写ローラと感光ドラム間で直接放電が起こるため、転写ローラのセルやケバの影響を受けることで、ドラム表面電位の均一性が失われ、ドラム表面電位が荒れた状態となる。
【0003】
転写後の荒れたドラム表面電位が次の帯電時に均一にならない場合、荒れたドラム表面電位の履歴が現像時に影響し、後続の記録紙の画像上に「メモリ」と呼ばれる画像不具合が生じ得る。このメモリを解消するには、次の画像形成工程に向けたドラム表面電位の調整が必要とされる。特許文献1には、メモリに関連する技術が記載されている。
一般的な調整方法としては、感光ドラムの通紙領域(転写ニップを通過する記録紙が接触する領域)と感光ドラムの非通紙領域(記録紙が接触しない領域)で帯電バイアスを変更する方法が知られている。通紙領域の表面電位(Vd1)を形成するための帯電バイアス
V1と非通紙領域の表面電位(Vd2)を形成するための帯電バイアスV2とを設定する。
そして、非通紙領域の表面電位(Vd2)を通紙領域の表面電位(Vd1)よりも予め下げて(絶対値を小さくして)おき、次のプリントのタイミングで帯電部材に帯電バイアスV1を印加することで、放電量によりメモリを解消することができる。
ジャンピング現像の場合、現像ローラに現像バイアスが印加された瞬間から極少量のトナーが感光ドラムの表面電位と現像ローラの現像電位との電位差によって飛翔する。そのため、通紙領域が現像ローラと対向するタイミングまで現像バイアスを現像ローラに印加しない方がトナー消費量の観点から好ましい。しかし、現像バイアスの印加直後はすぐには現像電位が安定しないため、現像電位が安定する時間を見越して、通紙領域が現像ローラと対向する直前に現像バイアスを印加する必要がある。
【0004】
感光ドラムの表面電位と現像ローラの現像電位との電位差(Vback)は画像形成時の感
光ドラム上のかぶり量に影響する。なお、不要なトナーが感光ドラムに付着することをかぶりと呼び、感光ドラム上の不要なトナーの量をかぶり量と呼ぶ。
図1に一般的なモノクロトナーの電位差(Vback)と感光ドラム上のかぶり量との関係を示す。
図1に示すように、電位差(Vback)が小さい側では、感光ドラム上のかぶり量が大き
くなり、感光ドラム上には地かぶりと呼ばれる正規帯電極性のトナーが現像される。また、
図1に示すように、電位差(Vback)が大きい側では、感光ドラム上のかぶり量が大き
くなり、感光ドラム上には反転かぶりと呼ばれる反転極性(正規帯電極性とは逆極性)のトナーが現像される。
トナーの特性によって電位差(Vback)とかぶり量の関係は変化し、ボトムと呼ばれる
最もかぶり量の少ない電位差が存在する。通紙領域のかぶり量はトナー消費量に大きく影
響し、トナー消費量の観点から、電位差(Vback)をボトムに設定することが好ましい。
なお、本明細書では、電位の大きい又は小さいは、電位の絶対値の比較において大きい又は小さいことを意味し、電位の高い又は低いは電位の絶対値の比較において大きい又は小さいことを意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2に記録紙の先端が転写ニップに突入する前後においての、各電位の出力波形を示す。
図2に示すように、メモリを解消するために、非通紙領域の表面電位(Vd2)を通紙領
域の表面電位(Vd1)よりも低くすると、非通紙領域の表面電位(Vd2)と現像電位との電位差(Vback2)が通紙領域に比べて、小さくなってしまう。なお、
図2の各電位の出力タイミングはドラム面に位相を合わせて示している。帯電部材には、通紙領域の表面電位(Vd1)を形成するための帯電電位(Vpri1)と、非通紙領域の表面電位(Vd2)を形成する
ための帯電電位(Vpri2)とが形成される。
【0007】
図2によると、表面電位(Vd1)と現像電位(Vdc)との電位差(Vback1)をボトム付近に設定する場合、表面電位(Vd2)と現像電位(Vdc)との電位差(Vback2)は|Vd1-Vd2
|の分だけ小さくなり、地かぶりが発生する。非通紙領域のかぶりはトナー消費量に影響を与えるだけでなく、非通紙領域のかぶりによって転写ローラの汚れなどが発生してしまう。
一方、非通紙領域のかぶりが発生しないように電位差(Vback2)を大きくするために非通紙領域の表面電位(Vd2)を高くする場合、メモリを解消するために、帯電電位(Vpri1)は更に高くする必要がある。帯電電位(Vpri1)を更に高くすると、通紙領域の表面電
位(Vd1)が更に大きくなり、転写部での放電量が増加し、転写に影響を及ぼす場合があ
る。また、通紙領域の表面電位(Vd1)が高くなる結果、電位差(Vback1)は必要以上に
大きくなってしまう。電位差(Vback1)が大きすぎる場合、所望のトナー載り量が得られないだけでなく、感光ドラム上には反転かぶりが発生しやすく、トナー消費量が悪化する。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、転写ニップで発生するメモリを抑制し、かつかぶりを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
回転可能な像担持体と、
前記像担持体と接触して帯電部を形成し、前記像担持体の表面を前記帯電部において帯電する帯電部材と、
前記像担持体を露光して前記像担持体の表面に静電潜像を形成する露光部と、
正規極性に帯電した現像剤を担持し、前記像担持体の表面に形成された前記静電潜像に現像剤を供給して前記像担持体の表面に現像剤像を形成する現像剤担持体と、
前記像担持体と接触してニップを形成し、前記ニップに搬送された記録材に前記現像剤像を転写する転写部材と、
帯電バイアスを前記帯電部材に印加する帯電バイアス印加部と、
現像バイアスを前記現像剤担持体に印加する現像バイアス印加部と、
転写バイアスを前記転写部材に印加する転写バイアス印加部と、
前記帯電バイアス印加部と前記現像バイアス印加部と前記転写バイアス印加部と、を制御する制御部と、
を備える画像形成装置であって、
前記転写部材に前記転写バイアスが印加され記録材が前記ニップに挟持された状態で前記ニップにおいて記録材と接触する前記像担持体の領域を第1の領域、前記転写部材に前記転写バイアスが印加され記録材が前記ニップに挟持されていない状態で前記ニップにおいて記録材と接触しない前記像担持体の領域を第2の領域とすると、
前記制御部は、前記ニップを通過した後に、第1の帯電バイアスが印加された前記帯電部において第1の表面電位が形成された前記第1の領域が前記現像剤担持体と対向するときに前記現像剤担持体に第1の現像バイアスを印加し、前記第1の帯電バイアスと同極性で前記第1の帯電バイアスよりも絶対値が小さい第2の帯電バイアスが印加された前記帯電部において第2の表面電位が形成された前記第2の領域が前記現像剤担持体と対向するときに前記現像剤担持体に前記第1の現像バイアスの絶対値よりも小さい第2の現像バイアスを印加するように制御し、
前記ニップを前記第2の領域が通過した後で前記第1の領域が通過する前における第3の領域であって、前記転写部材に前記転写バイアスが印加され記録材が前記ニップに挟持された状態で前記ニップにおいて記録材と接触する前記像担持体の領域を第3の領域、とすると、
前記制御部は、前記第3の領域には第3の帯電バイアスが印加された前記帯電部において第3の表面電位が形成され、前記第3の帯電バイアスは前記第2の帯電バイアスと同極性で前記第2の帯電バイアスよりも絶対値が大きくなるように制御し、
前記帯電部材に印加される前記第2の帯電バイアスを前記第3の帯電バイアスに切り替え、前記第3の帯電バイアスを前記第1の帯電バイアスに切り替えるように前記帯電バイアス印加部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
転写ニップで発生するメモリを抑制し、かつかぶりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、実施形態に記載されている構成部品の寸法や材質や形状やそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件などにより適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。
【0013】
(実施例1)
(画像形成装置)
図3に、実施例1に係る画像形成装置100、すなわち実施例1に係る加熱定着装置とプリンタ制御装置を備えた画像形成装置100を示す。なお、
図3は、実施例1に係る画像形成装置100の一例としてのレーザプリンタの概略構成を示す縦断面図である。まず、
図3を参照して画像形成装置100の構成を詳細に説明する。画像形成装置100は、例えば、レーザプリンタ、LEDプリンタ等のプリンタ、デジタル複写機等の電子写真方式、静電記録方式を用いた画像形成装置である。
【0014】
画像形成装置100は、像担持体としてドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」と記載)1と、感光ドラム1の表面を帯電する帯電ローラ(帯電部材)2とを備えている。感光ドラム1は、OPC(有機光半導体)、アモルファスセレン、アモルファスシリコン等の感光材料を、アルミニウム合金やニッケルなどで形成されたシリンダ上のドラム基体上に設けて構成したものである。回転可能な感光ドラム1は、駆動手段(不図示)によって矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動される。感光ドラム1は、その表面における帯電部が帯電ローラ2によって、所定の極性及び電位に均一に帯電される。これにより、感光ドラム1に暗部電位VDが形成される。
【0015】
実施例1の帯電ローラ2は接触帯電ローラであり、芯金となる金属ローラ等の導電体ローラ2aと、その外周面に形成した円筒状の導電層2bとから構成されている。帯電ローラ2は、導電体ローラ2aの両端部を不図示の軸受部材にて回転自在に軸支させて感光ドラム1と並行に配置されている。また、帯電ローラ2は、不図示のスプリング等の押圧手段によって感光ドラム1に圧接されており、感光ドラム1の回転に従動して回転する。画像形成装置100は、帯電バイアスを帯電ローラ2に印加する帯電高圧電源(帯電バイアス印加部)303を有している。
【0016】
帯電後の感光ドラム1の表面は、レーザスキャナ(露光部)3からの画像形成用レーザビームEによって露光され、感光ドラム1の表面に静電潜像が形成される。レーザスキャナ3は、画像情報に応じてON/OFF制御された走査露光を感光ドラム1の長手方向に行い、露光部分の電荷を除去して感光ドラム1の表面に静電潜像を形成する。すなわち、帯電後の感光ドラム1が露光され、感光ドラム1に明部電位VLが形成される。感光ドラム1の暗部電位VDと明部電位VLによって形成された静電潜像は、現像装置(現像手段)4と感光ドラム1とで形成される現像部Ngで現像され、可視化される。本実施例においては、現像手段4と感光ドラム1の間に隙間(ギャップ)を設けるジャンピング現像方法を採用している。現像方法としては、ジャンピング現像法の他、2成分現像法、接触現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせてもよい。現像ローラ(現像剤担持体)41に担持されたトナー(現像剤)が現像部Ngで感光ドラム1に付着する
ことにより、上述の静電潜像がトナー像(現像剤像)として現像される。このように、現像ローラ41は、正規極性に帯電したトナーを担持し、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して感光ドラム1の表面にトナー像を形成する。本実施例におけるトナーの正規極性は負極性とした。なお、トナーの正規極性は正極性でもよい。その場合には、各部材に印加する電圧の極性を本実施例と逆の極性とすればよい。画像形成装置100は、現像バイアスを現像ローラ41に印加する現像高圧電源(現像バイアス印加部)304を有している。
【0017】
記録紙(記録材)Pは、給紙トレイ101に収納されている。画像形成装置100は、転写ローラ(転写部材)5を備えている。転写ローラ5は、感光ドラム1と接触して転写ニップ部(ニップ)Ntを形成する。給紙トレイ101に収納された記録紙Pが、給紙ローラ102によって1枚ずつ給紙され、搬送ローラ103等を介して、感光ドラム1と転写ローラ5との間の転写ニップ部Ntに搬送される。この際、記録紙Pの先端の位置は、トップセンサ104によって検知される。トップセンサ104の検知位置と転写ニップ部Ntの位置との間の距離、及び記録紙Pの搬送速度から、記録紙Pの先端が転写ニップ部Ntに到達するタイミングが検知される。また、記録紙Pの後端の位置は、トップセンサ104によって検知される。トップセンサ104の検知位置と転写ニップ部Ntの位置との間の距離、及び記録紙Pの搬送速度から、記録紙Pの後端が転写ニップ部Ntに到達するタイミングが検知される。画像形成装置100は、転写バイアスを転写ローラ5に印加する転写高圧電源(転写バイアス印加部)305を有している。転写ローラ5に転写バイアスを印加することで、上述のようにして所定タイミングで給紙、搬送される記録紙P上に感光ドラム1上のトナー像が転写される。
【0018】
トナー像が転写された記録紙Pは、加熱定着装置(定着手段)6へ搬送される。記録紙Pが、加熱定着装置6における加熱部材10と加圧ローラ20との間の定着ニップ部にて挟持搬送されつつ、加熱及び加圧されることで、記録紙Pの表面にトナー像が定着される。その後、記録紙Pは、排紙ローラ106により画像形成装置100の上面に形成されている排紙トレイ107上に排出される。尚、この間、排紙センサ105により記録紙Pの先端及び後端が通過するタイミングを検知することにより、ジャム等の発生の有無がモニターされる。一方、トナー像が転写された後の感光ドラム1では、記録紙Pに転写されないで表面に残ったトナー(転写残トナー)がクリーニング装置(クリーニング手段)7のクリーニングブレード71によって除去されて、次の画像形成に供される。以上の動作を繰り返すことで、次々と画像形成を行うことができる。尚、実施例1の画像形成装置100は、解像度600dpi、30枚/分(LTR縦送り:プロセススピード約222mm/s)、寿命10万枚の装置例である。
【0019】
(プリンタ制御装置)
制御部としての制御装置(プリンタ制御装置)300は、コントローラインターフェイス301を用いてホストコンピュータ302と接続して、ホストコンピュータ302との間で通信を行う。制御装置300は、トップセンサ104の検知結果(検知情報)に応じて、帯電ローラ2に印加される帯電バイアスを制御する。制御装置300は、帯電高圧電源303を制御して、帯電ローラ2に帯電電位(Vpri1)を形成するための第1の帯電バ
イアスと、帯電ローラ2に帯電電位(Vpri2)を形成するための第2の帯電バイアスとを
切り替える制御を行う。帯電電位(Vpri1)は、第1の帯電電位の一例であり、帯電電位
(Vpri2)は、第2の帯電電位の一例である。帯電電位(Vpri1)の絶対値は、帯電電位(Vpri2)の絶対値よりも大きい。第1の帯電バイアス及び第2の帯電バイアスは、同極性
であり、第1の帯電バイアスの絶対値は、第2の帯電バイアスの絶対値よりも大きい。実施例1では、帯電電位及び帯電バイアスが負極性である場合について説明しているが、上記のようにトナーの正規極性が正極性であれば帯電電位及び帯電バイアスは正極性とする。また、制御装置300は、転写高圧電源305を制御して、転写ローラ5に印加される
転写バイアスを制御する。
【0020】
実施例1では、記録紙Pが転写ニップ部Ntに存在する状態を通紙状態と呼称する。感光ドラム1の表面領域は、少なくとも第1の領域及び第2の領域を有する。感光ドラム1の表面領域のうちの第1の領域が、転写ニップ部Ntにおいて記録紙Pと接触する。実施例1では、感光ドラム1の第1の領域を通紙領域と呼称する。通紙領域は、転写ローラ5に転写バイアスが印加され、記録材Pが転写ニップ部Ntに挟持された状態で転写ニップ部Ntにおいて記録材Pと接触する感光ドラム1の領域である。非通紙領域は、転写ローラ5に転写バイアスが印加され、記録材Pが転写ニップ部Ntに挟持されていない状態で転写ニップNtにおいて記録材Pと接触しない感光ドラム1の領域である。実施例1では、記録紙Pが転写ニップ部Ntに到達する前の記録紙Pが転写ニップ部Ntに存在しない状態を、非通紙状態と呼称する。感光ドラム1の表面領域のうちの第2の領域が、転写ニップ部Ntニップにおいて記録紙Pと接触しない。実施例1では、感光ドラム1の第2の領域を非通紙領域と呼称する。非通紙領域は、通紙領域よりも感光ドラム1の回転方向の下流側に位置する。帯電ローラ2に第1の帯電バイアスが印加され、帯電ローラ2により通紙領域が帯電されることで、通紙領域に表面電位(第1の表面電位)が形成される。帯電ローラ2に第2の帯電バイアスが印加され、帯電ローラ2により非通紙領域が帯電されることで、非通紙領域に表面電位(第2の表面電位)が形成される。非通紙領域は通紙領域よりも感光ドラム1の回転方向の下流側に位置しているため、非通紙領域に表面電位が形成された後、通紙領域に表面電位が形成される。
【0021】
制御装置300は、トップセンサ104の検知結果、転写ニップ部Ntの位置と現像ローラ41の位置との間の距離、及び感光ドラム1の回転速度に基づいて、通紙領域が現像ローラ41と対向するときのタイミングに関する情報を取得する。現像ローラ41の位置として、現像ローラ41の表面上の感光ドラム1に最も近い位置を用いてもよい。制御装置300は、通紙領域と現像ローラ41の表面との間の距離が所定距離以下である場合、通紙領域が現像ローラ41と対向していると決定してもよい。以下、通紙領域が現像ローラ41と対向するときのタイミングに関する情報を、第1のタイミングに関する情報と表記する。
【0022】
制御装置300は、トップセンサ104の検知結果、転写ニップ部Ntの位置と現像ローラ41の位置との間の距離、及び感光ドラム1の回転速度に基づいて、非通紙領域が現像ローラ41と対向するときのタイミングに関する情報を取得する。制御装置300は、非通紙領域と現像ローラ41の表面との間の距離が所定距離以下である場合、非通紙領域が現像ローラ41と対向していると決定してもよい。以下、非通紙領域が現像ローラ41と対向するときのタイミングに関する情報を、第2のタイミングに関する情報と表記する。
【0023】
制御装置300は、通紙領域の表面電位(第1の表面電位)及び非通紙領域の表面電位(第2の表面電位)を取得する。制御装置300は、帯電ローラ2に印加される帯電バイアスに基づいて、通紙領域の表面電位及び非通紙領域の表面電位を算出してもよい。制御装置300は、画像形成装置100の周囲(外部環境)の温度及び湿度に応じて、算出された通紙領域の表面電位及び非通紙領域の表面電位を補正してもよい。制御装置300は、通紙領域の表面電位及び非通紙領域の表面電位を測定してもよい。制御装置300は、通紙領域の表面電位、非通紙領域の表面電位、第1のタイミングに関する情報及び第2のタイミングに関する情報に基づいて、現像ローラ41に印加される現像バイアスを制御する。制御装置300は、現像高圧電源304を制御して、現像ローラ41に現像電位(Vdc1)を形成するための第1の現像バイアスと、現像ローラ41に現像電位(Vdc2)を形成するための第2の現像バイアスとを切り替える制御を行う。現像電位(Vdc1)は、第1の現像電位の一例であり、現像電位(Vdc2)は、第2の現像電位の一例である。
【0024】
制御装置300は、表面電位が形成された通紙領域が現像ローラ41と対向するときに現像ローラ41に第1の現像バイアスが印加されるように、第1のタイミングに関する情報に基づいて現像高圧電源304を制御する。表面電位が形成された通紙領域が現像ローラ41と対向するときに、現像高圧電源304が現像ローラ41に第1の現像バイアスを印加する。制御装置300は、転写ニップ部Ntを通過した後に、感光ドラム1の表面の帯電部において第1の表面電位が形成された通紙領域が現像ローラ41と対向するときに現像ローラ41に第1の現像バイアスを印加するように、現像高圧電源304を制御する。これにより、表面電位が形成された通紙領域が現像ローラ41と対向するときに現像ローラ41に現像電位(Vdc1)が形成される。制御装置300は、表面電位が形成された非通紙領域が現像ローラ41と対向するときに現像ローラ41に第2の現像バイアスが印加されるように、第2のタイミングに関する情報に基づいて現像高圧電源304を制御する。表面電位が形成された非通紙領域が現像ローラ41と対向するときに、現像高圧電源304が現像ローラ41に第2の現像バイアスを印加する。制御装置300は、感光ドラム1の表面の帯電部において第2の表面電位が形成された非通紙領域が現像ローラ41と対向するときに現像ローラ41に第1の現像バイアスの絶対値よりも小さい第2の現像バイアスを印加するように制御する。これにより、表面電位が形成された非通紙領域が現像ローラ41と対向するときに現像ローラ41に現像電位(Vdc2)が形成される。非通紙領域は通紙領域よりも感光ドラム1の回転方向の下流側に位置しているため、現像ローラ41に現像電位(Vdc2)が形成された後、現像ローラ41に現像電位(Vdc1)が形成される。制御装置300は、通紙領域の表面電位に基づいて第1の現像バイアスの値を決定し、非通紙領域の表面電位に基づいて第2の現像バイアスの値を決定する。第1の現像バイアスの値及び第2の現像バイアスの値の詳細については後述する。
【0025】
図4を用いて実施例1における各部材の電位の関係を説明する。
(帯電電位)
<通紙領域に対する帯電電位>
帯電高圧電源303から-900VのDCバイアスが第1の帯電バイアスとして帯電ローラ2に印加される。これにより、例えば25℃、60%RHの環境下では、通紙領域は、Vd1=-400Vに帯電される。
図4に示すように、帯電ローラ2に第1の帯電バイア
スが印加されることで帯電ローラ2に帯電電位(Vpri1)=-900Vが形成され、通紙
領域に表面電位(Vd1)=-400Vが形成される。
【0026】
感光ドラム1の表面が帯電ローラ2によって帯電された後、感光ドラム1の帯電面はレーザスキャナ3のレーザ照射位置に移動し、画像形成用レーザビームEで感光ドラム1の帯電面が露光される。これにより、後の現像工程においてトナーで現像される明部電位VL(画像部電位)が感光ドラム1に形成される。明部電位VLは-100Vである。
【0027】
<非通紙領域に対する帯電電位>
帯電高圧電源303から-850VのDCバイアスが第2の帯電バイアスとして帯電ローラ2に印加される。これにより、例えば25℃、60%RHの環境下では、感光ドラム1の表面は、Vd2=-350Vに帯電される。
図4に示すように、帯電ローラ2に第2の
帯電バイアスが印加されることで帯電ローラ2に帯電電位(Vpri2)=-850Vが形成
され、非通紙領域に表面電位(Vd2)=-350Vが形成される。通紙領域の表面電位(Vd1)の絶対値は、非通紙領域の表面電位(Vd2)の絶対値よりも大きい。
【0028】
(現像バイアス)
現像ローラ41に現像バイアスとしてACバイアスが印加される。例えば、本実施例の構成のように現像ローラ41が感光ドラム1に対して非接触で配置されている場合(ジャンピング現像法)、現像ローラ41にACバイアスが印加される。実施例1では、現像高
圧電源304からDuty50%、周波数3kHz、1750V(ピークツーピーク電圧)のACバイアスが現像ローラ41に印加される。実施例1におけるACバイアスは実効値である。制御装置300は、ACバイアスのDuty比及び/又はピークツーピーク電圧を制御することにより、現像ローラ41に印加される現像バイアスを制御する。また、制御装置300は、ACバイアスにDCバイアスを重畳することにより、現像ローラ41に印加される現像バイアスを制御してもよい。
【0029】
<通紙領域に対する現像電位>
図4に示すように、現像ローラ41に-320Vの現像バイアス(第1の現像バイアス)が印加されることで現像ローラ41に現像電位(Vdc1)=-320Vが形成される。これにより、通紙領域が現像ローラ41と対向するときの現像ローラ41に現像電位(Vdc1)=-320Vが形成される。
<非通紙領域に対する現像電位>
図4に示すように、現像ローラ41に-270Vの現像バイアス(第2の現像バイアス)が印加されることで現像ローラ41に現像電位(Vdc2)=-270Vが形成される。これにより、非通紙領域が現像ローラ41と対向するときの現像ローラ41に現像電位(Vdc2)=-270Vが形成される。
【0030】
第1の現像バイアスの絶対値は、第2の現像バイアスの絶対値よりも大きい。制御装置300は、第1の現像バイアスの絶対値が第2の現像バイアスの絶対値よりも大きくなるように、現像高圧電源304を制御する。現像電位(Vdc1)の絶対値は、現像電位(Vdc2)の絶対値よりも大きい。表面電位(Vd1、Vd2)、帯電電位(Vpri1、Vpri2)及び現像電位(Vdc1、Vdc2)は、同極性である。第1、第2の帯電バイアス及び第1、第2の現像バイアスは、同極性である。表面電位(Vd1、Vd2)、第1、第2の現像バイアスのそれぞれの極性は、正規極性であってもよい。これに限らず、各電位及び各バイアスのそれぞれの極性は、正規極性であってもよい。
【0031】
図5は、感光ドラム1の表面電位(Vd)と現像ローラ41の現像電位(Vdc)との電位
差(Vback)と、感光ドラム1上のかぶり量との関係を示したグラフである。
図5の縦軸
は、感光ドラム1上のかぶり量を示し、
図5の横軸は、感光ドラム1の表面電位(Vd)と現像ローラ41の現像電位(Vdc)との電位差(Vback)を示している。ここで、感光ドラム1上のかぶり量の測定方法について説明する。以下の測定方法は一例であり、他の測定方法により感光ドラム1上のかぶり量を測定してもよい。まず、感光ドラム1の表面をポリエステルの粘着テープでテーピングし、感光ドラム1の表面のかぶりトナーを粘着テープで剥ぎ取る。剥ぎ取った粘着テープを白色板に貼り付け、白色光度計TS-6DS/A(東京電色社製)を用いて、粘着テープが貼り付けられた白色板の白色度を測定する。一方、白色板に粘着テープをそのまま貼り付けて、粘着テープが貼り付けられた白色板の白色度も測定する。感光ドラム1の表面を粘着テープでテーピングした後に白色板に貼り付けた粘着テープ(第1の粘着テープ)の白色度(第1の白色度)と、白色板にそのまま貼り付けた粘着テープ(第2の粘着テープ)の白色度(第2の白色度)とを比較する。第1の粘着テープの面積と第2の粘着テープの面積とが同一である場合、第1の白色度(%)は、(第1の粘着テープの面積-第1の粘着テープにおけるトナーの面積)/第1の粘着テープの面積で求めることができる。この場合、第2の白色度(%)は、100%である。第1の白色度(%)と第2の白色度(%)との差をかぶり量とする。また、かぶり量は、第1の粘着テープの面積に対する第1の粘着テープにおけるトナーの面積の比率であってもよい。このように、感光ドラム1上のかぶり量は、感光ドラム1の表面領域のうちの所定領域の面積に対する感光ドラム1の表面領域のうちの所定領域におけるトナーの面積の比率であってもよい。
【0032】
図5によれば、実施例1のかぶりが最も良好な電位差(Vback)は80V付近に存在し
、電位差(Vback)が80Vよりも小さくなるほど、或いは電位差(Vback)が80Vよりも大きくなるほど、かぶりが悪化する。かぶりは、画像が品質的に許容できる範囲があり、実施例1では、かぶり量が3%である場合を画像品質の許容限界点とする。かぶり量の測定方法は上記の通りである。実施例1では、かぶり量が2%以下である場合、品質的に問題ない画像として取り扱う。電位差(Vback)が75V以上120V以下である場合、
品質が良好な画像を得ることが可能である。
【0033】
画像形成時(通紙状態)においては、通紙領域の表面電位(Vd1)と現像電位(Vdc1)
との電位差(Vback1=|Vd1-Vdc1|)が75V以上120V以下になるように、各電位
を設定するのが好ましい。実施例1では、第1の電位差としての電位差(Vback1)が80Vになるように、各電位を設定している。例えば、画像形成時において、通紙領域の表面電位(Vd1)が-400Vである場合、現像電位(Vdc1)を-320Vに設定する。これ
により、画像形成時における通紙領域のかぶりを抑制できる。また、非画像形成時(非通紙状態)においては、非通紙領域の表面電位(Vd2)と現像電位(Vdc2)との電位差(Vback2=|Vd2-Vdc2|)が75V以上120V以下になるように、各電位を設定するのが好ましい。実施例1では、第2の電位差としての電位差(Vback2)が80Vになるように、各電位を設定している。例えば、非画像形成時において、非通紙領域の表面電位(Vd2)
が-350Vである場合、現像電位(Vdc2)を-270Vに設定する。これにより、非画像形成時における非通紙領域のかぶりを抑制できる。
【0034】
制御装置300は、通紙領域の面積に対する通紙領域におけるトナーの面積の比率が2%以下となるような電位差(Vback1)が形成されるように帯電高圧電源303及び現像高圧電源304を制御してもよい。制御装置300は、通紙領域の面積に対する通紙領域におけるトナーの面積の比率が画像品質として許容される範囲となるような電位差(Vback1)が形成されるように帯電高圧電源303及び現像高圧電源304を制御してもよい。制御装置300は、非通紙領域の面積に対する非通紙領域におけるトナーの面積の比率が2%以下となるような電位差(Vback2)が形成されるように帯電高圧電源303及び現像高圧電源304を制御してもよい。制御装置300は、非通紙領域の面積に対する非通紙領域におけるトナーの面積の比率が画像品質として許容される範囲となるような電位差(Vback2)が形成されるように帯電高圧電源303及び現像高圧電源304を制御してもよい。
【0035】
図6は、実施例1における各電位の波形を示す。
図6のY軸(縦軸)は電位を示している。
図6には、記録紙Pの先端が転写ニップ部Ntに突入する前後の各電位の波形が示されている。各電位の出力のタイミングは、感光ドラム1の表面に位相を合わせて示している。X軸の座標0は、記録紙Pの先端が転写ニップ部Ntに突入するタイミングを示している。帯電ローラ2に第2の帯電バイアスが印加されることで帯電ローラ2に帯電電位(Vpri2)が形成され、非通紙領域に表面電位(Vd2)が形成されている。非通紙領域に表面電位(Vd2)が形成されるように、帯電ローラ2に第1の帯電バイアスが印加されている
。すなわち、記録紙Pが転写ニップ部Ntに存在していないときに転写ニップ部Ntにおける感光ドラム1の表面領域(非通紙領域)に表面電位(Vd2)が形成されるように、帯
電ローラ2に第2の帯電バイアスが印加されている。
【0036】
記録紙Pが転写ニップ部Ntに突入するタイミングの100msec手前のタイミングで、現像バイアスがONになる。この際、現像ローラ41に第2の現像バイアスが印加されることで、現像ローラ41に現像電位(Vdc2)が形成される。従って、非通紙領域が現像ローラ41と対向するときの非通紙領域の表面電位(Vd2)と、非通紙領域が現像ロー
ラ41と対向するときの現像電位(Vdc2)との電位差(Vback2=|Vd2-Vdc2|)は80
Vとなる。これにより、非通紙領域のかぶりが抑制される。なお、
図6のX軸(横軸)の時間は、現像ローラ41に第2の現像バイアスを印加するタイミングを示しており、第2
の現像バイアスから第1の現像バイアスを切り替えるタイミングを示すものではない。また、現像ローラ41に第2の現像バイアスを印加するタイミングは、記録紙Pが転写ニップ部Ntに突入するタイミングの100msec手前のタイミングに限定されず、他のタイミングであってもよい。感光ドラム1の回転方向の下流側における非通紙領域の先端(通紙領域の後端)が現像ローラ41と対向する位置に到達するタイミングから所定時間後(例えば100msec後)に、現像ローラ41に第2の現像バイアスを印加してもよい。
【0037】
通紙領域に表面電位(Vd1)が形成されるように、第2の帯電バイアスから第1の帯電
バイアスに切り替えて、帯電ローラ2に第1の帯電バイアスを印加する。すなわち、記録紙Pが転写ニップ部Ntに存在しているときに転写ニップ部Ntにおける感光ドラム1の表面領域(通紙領域)に表面電位(Vd1)が形成されるように、帯電ローラ2に第1の帯
電バイアスを印加する。帯電ローラ2に第1の帯電バイアスが印加され、帯電ローラ2に帯電電位(Vpri1)が形成され、通紙領域に表面電位(Vd1)が形成される。このように、帯電電位(Vpri2)から帯電電位(Vpri1)に切り替わり、記録紙Pが転写ニップ部Ntに突入するタイミング(X座標:0)に合わせて、表面電位(Vd2)から表面電位(Vd1)に切り替わる。
【0038】
感光ドラム1の回転方向の下流側における通紙領域の先端が現像ローラ41に対向する位置に到達するタイミングで、制御装置300は、第2の現像バイアスから第1の現像バイアスに切り替える。従って、通紙領域が現像ローラ41と対向するときの通紙領域の表面電位(Vd1)と、通紙領域が現像ローラ41と対向するときの現像電位(Vdc1)との電
位差(Vback1=|Vd1-Vdc1|)は80Vとなる。これにより、通紙領域のかぶりが抑制
される。第2の現像バイアスから第1の現像バイアスに変更するタイミングは、通紙領域の先端が現像ローラ41に対向する位置に到達するタイミングに限定されない。通紙領域の先端が現像ローラ41に対向する位置に到達するタイミングよりも前のタイミングで、制御装置300は、第2の現像バイアスから第1の現像バイアスに変更してもよい。例えば、通紙領域の先端が現像ローラ41に対向する位置に到達するタイミングの10msec手前のタイミングで、制御装置300は、第2の現像バイアスから第1の現像バイアスに変更してもよい。
【0039】
(効果確認)
実施例1の画像形成装置100は、通紙領域の表面電位(Vd1)を形成するための第1
の帯電バイアスと、非通紙領域の表面電位(Vd2)を形成するための第2の帯電バイアス
とを切り替える。また、画像形成装置100は、非通紙領域が現像ローラ41と対向するときに第2の現像バイアスを現像ローラ41に印加する。すなわち、画像形成装置100は、非通紙領域に表面電位(Vd2)が形成された後の所定のタイミングで第2の現像バイ
アスを現像ローラ41に印加する。そして、画像形成装置100は、通紙領域が現像ローラ41と対向するときに第1の現像バイアスを現像ローラ41に印加する。すなわち、画像形成装置100は、非通紙領域に表面電位(Vd2)が形成された後の所定のタイミング
で第1の現像バイアスを現像ローラ41に印加する。第1の現像バイアスが現像ローラ41に印加されることにより、現像ローラ41に現像電位(Vdc1)が形成される。現像電位(Vdc1)は、通紙領域の表面電位(Vd1)との間で所定の電位差(Vback1)が確保されて
いる。第2の現像バイアスが現像ローラ41に印加されることにより、現像ローラ41に現像電位(Vdc2)が形成される。現像電位(Vdc2)は、非通紙領域の表面電位(Vd2)と
の間で所定の電位差(Vback2)が確保されている。
【0040】
比較例1及び比較例2として、第1の帯電バイアスと第2の帯電バイアスとを切り替えて、帯電ローラ2に帯電バイアスを印加する画像形成装置を用いる。比較例1の画像形成装置では、通紙領域及び非通紙領域が現像ローラ41と対向するときに第1の現像バイア
スを現像ローラ41に印加し、第2の現像バイアスを現像ローラ41に印加しない。比較例2の画像形成装置では、通紙領域及び非通紙領域が現像ローラ41と対向するときに、第2の現像バイアスを現像ローラ41に印加し、第1の現像バイアスを現像ローラ41に印加しない。
【0041】
(実験1)
実験1の実験方法としてはA4の記録紙Pを、2枚連続して通紙し、通紙領域のかぶり量と、非通紙領域のかぶり量とを測定する。通紙領域及び非通紙領域のかぶり量の測定方法は、感光ドラム1上のかぶり量の測定方法と同様である。実験1の結果を表1に示す。表1には、第1の白色度(%)と第2の白色度(%)との差を、かぶり量として示している。また、通紙領域のかぶり量は、通紙領域の面積に対する通紙領域におけるトナーの面積の比率であってもよい。非通紙領域のかぶり量は、非通紙領域の面積に対する非通紙領域におけるトナーの面積の比率であってもよい。通紙領域のかぶり量が低いほど画像は品質的に良く、具体的には、通紙領域のかぶり量は3%以下が好ましい。実施例1では、通紙領域のかぶり量が3%以下になるように、各電位を設定している。
【0042】
【表1】
比較例1では、非通紙領域の表面電位(Vd2)と現像ローラ41の現像電位(Vdc1)と
の電位差(Vback)が適正に確保されていないため、非通紙領域のかぶり量が大きい。比
較例2では、通紙領域の表面電位(Vd1)と現像ローラ41の現像電位(Vdc2)との電位
差(Vback)が適正に確保されていないため、通紙領域のかぶり量が大きい。一方、実施
例1では、電位差(Vback1、Vback2)を適正に確保することができるため、通紙領域及び非通紙領域のかぶり量が抑制され、トナー消費量を抑えることが可能である。
【0043】
上記では、現像バイアスとしてACバイアスを現像ローラ41に印加する例を示したが、現像バイアスとしてDCバイアスを現像ローラ41に印加してもよい。例えば、現像ローラ41が感光ドラム1に接触して配置されている場合(接触現像法)、現像ローラ41にDCバイアスが印加される。現像高圧電源304から-320VのDCバイアスを第1の現像バイアスとして現像ローラ41に印加してもよい。これにより、通紙領域が現像ローラ41と対向するとき、現像ローラ41に-320Vの現像電位(Vdc1)が形成される。現像高圧電源304から-270VのDCバイアスを第2の現像バイアスとして現像ローラ41に印加してもよい。これにより、非通紙領域が現像ローラ41と対向するとき、現像ローラ41に-270Vの現像電位(Vdc2)が形成される。この場合、第2の現像バイアスとして印加されるDCバイアスは、第1の現像バイアスとして印加されるDCバイアスと同極性である。また、第1の現像バイアスの絶対値は、第2の現像バイアスの絶対値よりも大きい。また、DCバイアスにACバイアスを重畳した現像バイアスを現像ローラ41に印加してもよい。
【0044】
(実施例2)
実施例2に係る画像形成装置100について説明する。なお、以下の説明以外の構成に関しては、実施例1と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0045】
実施例2では、記録紙Pが転写ニップ部Ntに存在する状態を通紙状態と呼称する。感光ドラム1の表面領域は、少なくとも第1の領域、第2の領域及び第3の領域を有する。感光ドラム1の表面領域のうちの第1の領域及び第3の領域が、転写ニップ部Ntにおいて記録紙Pと接触する。実施例2では、感光ドラム1の第1の領域及び第3の領域を含む領域を通紙領域と呼称し、感光ドラム1の第1の領域を第1の通紙領域と呼称し、感光ドラム1の第3の領域を第2の通紙領域と呼称する。実施例2では、記録紙Pが転写ニップ部Ntに到達する前の記録紙Pが転写ニップ部Ntに存在しない状態を、非通紙状態と呼称する。感光ドラム1の表面領域のうちの第2の領域が、転写ニップ部Ntニップにおいて記録紙Pと接触しない。実施例2では、感光ドラム1の第2の領域を非通紙領域と呼称する。非通紙領域は、通紙領域よりも感光ドラム1の回転方向の下流側に位置する。第2の通紙領域は、第1の通紙領域と非通紙領域との間に位置する。従って、第1の通紙領域
は、非通紙領域と離れており、第2の通紙領域は、第1の通紙領域及び非通紙領域と連続している。第2の通紙領域は、第1の通紙領域と非通紙領域との間に位置しており転写ローラ5に転写バイアスが印加され記録材Pが転写ニップ部Ntに挟持された状態で転写ニップNtにおいて記録材Pと接触する感光ドラム1の領域である。
【0046】
実施例2の画像形成装置100は、第1の通紙領域の表面電位(Vd1)を形成するため
の第1の帯電バイアスと、非通紙領域の表面電位(Vd2)を形成するための第2の帯電バ
イアスとを切り替える。画像形成装置100は、表面電位が形成された非通紙領域が現像ローラ41と対向するときに第2の現像バイアスを現像ローラ41に印加した後、表面電位が形成された通紙領域が現像ローラ41と対向するときに第1の現像バイアスを現像ローラ41に印加する。更に、実施例2は、現像バイアスの切り替え時に発生するオーバーシュートを考慮した帯電バイアスを用いることを特徴としている。具体的には、現像バイアスの切り替えタイミングでオーバーシュートした現像電位とかぶりの発生しない第3の電位差としての電位差(Vback3)を確保するための第3の帯電バイアスを用いることを特徴としている。
【0047】
帯電ローラ2に第1の帯電バイアスが印加され、帯電ローラ2により第1の通紙領域が帯電されることで、第1の通紙領域に表面電位(第1の表面電位)が形成される。帯電ローラ2に第2の帯電バイアスが印加され、帯電ローラ2により非通紙領域が帯電されることで、非通紙領域に表面電位(第2の表面電位)が形成される。帯電ローラ2に第3の帯電バイアスが印加され、帯電ローラ2により第2の通紙領域が帯電されることで、第2の通紙領域に表面電位(第3の表面電位)が形成される。非通紙領域は通紙領域よりも感光ドラム1の回転方向の下流側に位置しており、第2の通紙領域は第1の通紙領域と非通紙領域との間に位置している。そのため、非通紙領域に表面電位が形成された後、第2の通紙領域に表面電位が形成され、その後、第1の通紙領域に表面電位が形成される。第1の通紙領域の表面電位の絶対値は、非通紙領域の表面電位の絶対値よりも大きい。第2の通紙領域の表面電位の絶対値は、第1の通紙領域の表面電位の絶対値及び非通紙領域の表面電位の絶対値よりも大きい。
【0048】
実施例1のように、通紙領域の先端が現像ローラ41に対向する位置に到達するタイミングで、第2の現像バイアスから第1の現像バイアスに切り替えると、現像電位が所望の電位になる前に現像電位がオーバーシュートすることがある。オーバーシュートした現像電位(Vdc3)は狙いの現像電位(例えばVdc1)よりも大きくなる。この場合、通紙領域の表面電位(Vd1)と現像電位(Vdc3)との電位差(Vback)が想定よりも小さくなる。そ
のため、感光ドラム1上に帯状のトナーが形成される場合があり、画像不良が発生する可能性がある。なお、帯電バイアスの切り替え時に帯電電位はオーバーシュートするが、帯電ローラ2の体積抵抗により、帯電電位のオーバーシュートは感光ドラム1の表面電位には大きな影響を及ぼさない。
【0049】
図7は現像電位の立ち上がり時の波形を示している。第2の現像バイアスから第1の現像バイアスに切り替えた瞬間、現像電位(Vdc1)がオーバーシュートして、実施例2においては現像電位(Vdc1)が30V程度高くなる。この場合、表面電位が形成された第2の通紙領域が現像ローラ41と対向している。表面電位が形成された第2の通紙領域が現像ローラ41と対向するときであって、第2の現像バイアスから第1の現像バイアスに切り替わるときに現像電位(Vdc1)がオーバーシュートすることで、現像ローラ41に現像電位(Vdc3)が形成される。現像電位(Vdc3)は、第3の現像電位の一例である。現像電位(Vdc3)の絶対値は、現像電位(Vdc1)の絶対値及び現像電位(Vdc2)の絶対値よりも大きい。なお、オーバーシュートした現像電位(Vdc3)が徐々に低くなり、所定時間後(例えば50msec後)に目標の現像電位(Vdc2)に収束する。
【0050】
現像電位(Vdc1)がオーバーシュートする場合、表面電位(Vd1)と現像電位(Vdc1)
との電位差(Vback1)が瞬間的に50Vまで小さくなる。実施例1のように、電位差(Vback1)が80Vになるように第2の現像バイアスから第1の現像バイアスに切り替えると、電位差(Vback1)が瞬間的に小さくなることにより、画像上にかぶりの帯が発生してしまう。実施例2においても、感光ドラム1の表面電位(Vd)と現像ローラ41の現像電位(Vdc)との電位差(Vback)と、感光ドラム1上のかぶり量との関係は
図5に示すとおりである。従って、実施例1と同様に、実施例2において、かぶり量が2%以下の品質が良好な画像を得るための電位差(Vback1)の範囲が、現像電位(Vdc1)のオーバーシュートを考慮すると、105V以上120V以下になる。このように、オーバーシュートが発生すると、オーバーシュートが発生していないときの電位差(Vback1)の範囲が狭くなる。これに対して、実施例2では、現像電位(Vdc1)がオーバーシュートするタイミングで、予め帯電バイアスを上げることで、画像上のかぶりの帯を抑制することができる。
【0051】
図8を用いて実施例2における各部材の電位の関係を説明する。第2の帯電バイアスから第1の帯電バイアスに切り替えるタイミングで、オーバーシュートを考慮した第3の帯電バイアスを帯電ローラ2に50msec印加する。このように、現像電位(Vdc1)がオーバーシュートするタイミングに応じて、第3の帯電バイアスを帯電ローラ2に印加する。現像電位(Vdc1)がオーバーシュートして、現像電位(Vdc1)が30V高くなる場合、帯電ローラ2の帯電電位(Vpri3)が-930Vとなるように、第3の帯電バイアスを帯
電ローラ2に印加する。例えば、帯電高圧電源303から-930VのDCバイアスが第3の帯電バイアスとして帯電ローラ2に印加される。帯電電位(Vpri3)は、第3の帯電
電位の一例である。帯電電位(Vpri3)の絶対値は、帯電電位(Vpri1)の絶対値及び帯電電位(Vpri2)の絶対値よりも大きい。第3の帯電バイアスの絶対値は、第1の帯電バイ
アス及び第2の帯電バイアスの絶対値よりも大きい。
【0052】
帯電電位(Vpri3)=-930Vは、帯電電位(Vpri2)=-900Vよりもマイナス側に30V高い。これにより、オーバーシュートが発生するタイミングにおける感光ドラム1の表面電位(Vd3)が-430Vになる。オーバーシュートした現像電位(Vdc3)は-
350Vである。従って、オーバーシュートが発生するタイミングの感光ドラム1の表面電位(Vd3)と現像ローラ41の現像電位(Vdc3)との電位差(Vback3)が80Vになる
。これにより、画像上のかぶりの帯を抑制することができる。表面電位(Vd1、Vd2、Vd3
)、帯電電位(Vpri1、Vpri2、Vpri3)及び現像電位(Vdc1、Vdc2、Vdc3)は、同極性で
ある。第1、第2、第3の帯電バイアス及び第1、第2の現像バイアスは、同極性である。表面電位(Vd1、Vd2、Vd3)、第1、第2の現像バイアスのそれぞれの極性は、正規極
性であってもよい。これに限らず、各電位及び各バイアスのそれぞれの極性は、正規極性であってもよい。
【0053】
実施例1と同様に、実施例2では、電位差(Vback)が75V以上120V以下である
場合、品質が良好な画像を得ることが可能である。従って、電位差(Vback3)が75V以
上120V以下になるように、各電位を設定するのが好ましい。なお、実施例2では、現像電位(Vdc1)がオーバーシュートして、現像電位(Vdc1)が30V程度高くなる場合について説明しているが、30Vに限定されない。現像高圧電源304の性能や構成に応じてオーバーシュート量が異なる場合があり、また、現像電位の切り替え量(|Vdc1-Vdc2|)によってもオーバーシュート量が変化する場合がある。現像高圧電源304の性能や構成に応じて、また、現像電位の切り替え量に応じて、オーバーシュートを加味した帯電電位(Vpri3)を設定してもよい。制御装置300は、第2の通紙領域の面積に対する第
2の通紙領域におけるトナーの面積の比率が2%以下となるような電位差(Vback3)が形成されるように帯電高圧電源303及び現像高圧電源304を制御してもよい。制御装置300は、第2の通紙領域の面積に対する第2の通紙領域におけるトナーの面積の比率が画像品質として許容される範囲となるような電位差(Vback3)が形成されるように帯電高圧電源303及び現像高圧電源304を制御してもよい。
【0054】
図9は、実施例2における各電位の波形を示す。
図9のY軸(縦軸)は電位を示している。
図9には、記録紙Pの先端が転写ニップ部Ntに突入する前後の各電位の波形が示されている。各電位の出力のタイミングは、感光ドラム1の表面に位相を合わせて示している。X軸の座標0は、記録紙Pの先端が転写ニップ部Ntに突入するタイミングを示している。帯電ローラ2に第2の帯電バイアスが印加されることで帯電ローラ2に帯電電位(Vpri2)が形成され、非通紙領域に表面電位(Vd2)が形成される。すなわち、記録紙Pが転写ニップ部Ntに存在していないときに転写ニップ部Ntにおける感光ドラム1の表面領域(非通紙領域)に表面電位(Vd2)が形成されるように、帯電ローラ2に第2の帯電
バイアスを印加する。
【0055】
記録紙Pが転写ニップ部Ntに突入するタイミングの100msec手前のタイミングで、現像バイアスがONになる。この際、現像ローラ41に第2の現像バイアスが印加されることで、現像ローラ41に現像電位(Vdc2)が形成される。従って、非通紙領域が現像ローラ41と対向するときの非通紙領域の表面電位(Vd2)と、非通紙領域が現像ロー
ラ41と対向するときの現像電位(Vdc2)との電位差(Vback2=|Vd2-Vdc2|)は80
Vとなる。これにより、非通紙領域のかぶりが抑制される。なお、
図9のX軸(横軸)の時間は、現像ローラ41に第2の現像バイアスを印加するタイミングを示しており、第2の現像バイアスから第1の現像バイアスを切り替えるタイミングを示すものではない。
【0056】
通紙領域の先端が現像ローラ41に対向するタイミングで、制御装置300は、第2の現像バイアスから第1の現像バイアスに変更する。この際、現像電位(Vdc1)がオーバーシュートする。すなわち、第2の現像バイアスから第1の現像バイアスに変更するタイミングで、現像電位(Vdc1)が現像電位(Vdc2)よりも高い現像電位(Vdc3)にオーバーシュートした後、現像電位(Vdc2)に収束する。そこで、通紙領域の先端が現像ローラ41に対向するタイミングで、オーバーシュートの発生を考慮した第3の帯電バイアスを帯電ローラ2に印加する。これにより、現像電位(Vdc)がオーバーシュートするタイミング
において、第2の通紙領域(オーバーシュート領域)に表面電位(Vd3)が形成される。
従って、現像電位(Vdc)がオーバーシュートするタイミングにおいて、第2の通紙領域
の表面電位(Vd3)と現像ローラ41の現像電位(Vdc3)との電位差(Vback3=|Vd3-Vdc3|)が80Vになる。換言すれば、第2の通紙領域が現像ローラ41と対向するときの第2の通紙領域の表面電位(Vd3)と、第2の通紙領域が現像ローラ41と対向するとき
の現像電位(Vdc3)との電位差が80Vとなる。そのため、第2の通紙領域のかぶりが抑制されると共に、画像上のかぶりの帯が抑制される。その結果、トナー消費量を抑えることが可能である。
【0057】
その後、現像電位(Vdc1)のオーバーシュートが収束するため、制御装置300は、第3の帯電バイアスから第1の帯電バイアスに変更する。例えば、感光ドラム1の下流側に
おける通紙領域の先端が帯電ローラ2に対向するタイミングから50msec後に、第3の帯電バイアスから第1の帯電バイアスに変更する。第3の帯電バイアスから第1の帯電バイアスに変更するタイミングは任意のタイミングであってもよい。第1の帯電バイアスを帯電ローラ2に印加することで、帯電ローラ2に帯電電位(Vpri1)が形成され、第1
の通紙領域に表面電位(Vd1)が形成される。従って、第1の通紙領域が現像ローラ41
と対向するときの第1の通紙領域の表面電位(Vd1)と、第1の通紙領域が現像ローラ4
1と対向するときの現像電位(Vdc1)との電位差(Vback1=|Vd1-Vdc1|)が80Vと
なる。そのため、第1の通紙領域のかぶりが抑制される。その結果、トナー消費量を抑えることが可能である。
【0058】
実施例2によれば、現像電位(Vdc)を切り替えた際にオーバーシュートが発生しても
、オーバーシュートが発生したタイミングにおける電位差(Vback)をかぶりが発生しな
い値に保つことができる。そのため、現像電位(Vdc)のオーバーシュートによる画像上
のかぶりの帯を抑制することが可能である。
【0059】
上記では、帯電電位(Vpri1)と帯電電位(Vpri3)との電位差が、現像電位(Vdc1)と現像電位(Vdc3)との電位差と同じである。これに限らず、かぶりが発生しないのであれば、帯電電位(Vpri1)と帯電電位(Vpri3)との電位差を、現像電位(Vdc1)と現像電位(Vdc3)との電位差より大きくしてもよい。すなわち、帯電電位(Vpri1)と帯電電位(Vpri3)との電位差が、現像電位(Vdc1)と現像電位(Vdc3)との電位差以上であってもよい。また、かぶりが発生しないのであれば、帯電電位(Vpri1)と帯電電位(Vpri3)との電位差を、現像電位(Vdc1)と現像電位(Vdc3)との電位差より小さくしてもよい。すなわち、帯電電位(Vpri1)と帯電電位(Vpri3)との電位差が、現像電位(Vdc1)と現像電位(Vdc3)との電位差以下であってもよい。
【0060】
実施例1、2では、帯電電位(Vpri1)と帯電電位(Vpri2)との電位差を50Vに設定している。この設定に限定されず、メモリを抑制できる場合には、帯電電位(Vpri1)と
帯電電位(Vpri2)との電位差を50V以外の値に設定してもよい。従って、メモリを抑
制できる場合には、第1の帯電バイアスと第2の帯電バイアスとの差を50V以外の値に設定してもよい。
【0061】
実施例1、2では、帯電電位(Vpri1)と帯電電位(Vpri2)との電位差(50V)が、現像電位(Vdc1)と現像電位(Vdc2)との電位差(50V)と同じである。通紙領域及び非通紙領域のかぶりが抑制できる場合には、帯電電位(Vpri1)と帯電電位(Vpri2)との電位差が、現像電位(Vdc1)と現像電位(Vdc2)との電位差と異なってもよい。例えば、帯電電位(Vpri1)と帯電電位(Vpri2)との電位差が、現像電位(Vdc1)と現像電位(Vdc2)との電位差よりも大きくてもよい。例えば、帯電電位(Vpri1)と帯電電位(Vpri2)との電位差が、現像電位(Vdc1)と現像電位(Vdc2)との電位差よりも小さくてもよい。
【0062】
通紙領域及び非通紙領域のかぶりが実使用上問題のない程度に抑制できる場合には、電位差(Vback1)及び電位差(Vback2)を80V以外の値に設定してもよい。例えば、電位差(Vback1)及び電位差(Vback2)が所定範囲内に収まるように、電位差(Vback1)及び電位差(Vback2)を設定してもよい。この場合、制御装置300は、電位差(Vback1)及び電位差(Vback2)が所定範囲内に収まるように、帯電高圧電源303及び現像高圧電源304を制御する。所定範囲は、例えば、75V以上120V以下である。電位差(Vback1)が、電位差(Vback2)と同じであってもよいし、電位差(Vback2)と異なってもよい。電位差(Vback1)及び電位差(Vback2)が75V以上120V以下である場合、通紙領域及び非通紙領域のかぶり量を2%以下に抑えることが可能である。従って、制御装置300が、通紙領域及び非通紙領域のかぶり量が2%以下(所定値以下)となるように、電位差(Vback1)及び電位差(Vback2)を制御することで、通紙領域及び非通紙領域のかぶ
りが実使用上問題のない程度に抑制される。
【0063】
第2の通紙領域のかぶりが実使用上問題のない程度に抑制できる場合には、電位差(Vback3)を80V以外の値に設定してもよい。例えば、電位差(Vback3)が所定範囲内に収まるように、電位差(Vback3)を設定してもよい。この場合、制御装置300は、電位差(Vback3)が所定範囲内に収まるように、帯電高圧電源303及び現像高圧電源304を制御する。所定範囲は、例えば、75V以上120V以下である。電位差(Vback3)が、電位差(Vback1)及び電位差(Vback2)と同じであってもよいし、電位差(Vback1)と異なってもよいし、或いは電位差(Vback2)と異なってもよい。電位差(Vback3)が75V以上120V以下である場合、第2の通紙領域のかぶり量を2%以下に抑えることが可能である。従って、制御装置300が、第2の通紙領域のかぶり量が2%以下(所定値以下)となるように、電位差(Vback3)を制御することで、第2の通紙領域のかぶりが実使用上問題のない程度に抑制される。第2の通紙領域のかぶり量は、第2の通紙領域の面積に対する第2の通紙領域におけるトナーの面積の比率であってもよい。
【0064】
帯電バイアスや現像バイアスの切り替え回数、切り替え方法、及び切り替えタイミングは画像形成装置100の構成に応じて任意に設定してもよい。実施例1、2において、導電ローラ(帯電ローラ2)を用いたローラ帯電方式を採用しているが、その他の帯電方式、例えばコロナ帯電方式を採用してもよく、その他の帯電方式であっても同様の効果が得られる。実施例1、2において、画像形成装置100はクリーニング装置7を備える構成を採用しているが、クリーナレス方式の画像形成装置100を採用する場合にも同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0065】
1…感光ドラム、2…帯電ローラ、3…レーザスキャナ、5…転写ローラ、41…現像ローラ、100…画像形成装置、300…制御装置、303…帯電高圧電源、304…現像高圧電源、Nt…転写ニップ部、P…記録紙