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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】障子及び建具
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/06 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
E05D15/06 102
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020099374
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193243
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(73)【特許権者】
【識別番号】596077455
【氏名又は名称】大征工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】芝野 忠行
(72)【発明者】
【氏名】水本 義則
(72)【発明者】
【氏名】大泉 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮本 進一
(72)【発明者】
【氏名】松田 幸一郎
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-035176(JP,U)
【文献】特開2007-002631(JP,A)
【文献】実開昭60-068166(JP,U)
【文献】特開2001-254561(JP,A)
【文献】特開2010-116743(JP,A)
【文献】実公昭45-021480(JP,Y1)
【文献】実公昭46-000214(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子の框体の下框に設置可能に構成された戸車ケースと、前記戸車ケースに収められると共に支持され、前記障子が収められた枠体の下枠のレール部に回転可能に設けられ、上端部が前記戸車ケースの上面から突出している戸車と、を備える戸車装置と、
前記戸車装置が取り付けられた下框を有する框体と、
前記框体に納められたパネル体と、
を備え、
前記下框には、
前記戸車装置が配置される戸車配置領域と、
前記戸車配置領域の上方に設けられて前記パネル体の下端部が配置されるパネル体載置壁部と、
が形成され、
前記戸車の上端部は、前記パネル体載置壁部の一部よりも上方に突出している、
障子
【請求項2】
前記下框には
記戸車配置領域の上方に設けられて前記パネル体の下端部が挿入されるパネル体挿入凹部と、
上下方向において前記パネル体載置壁部と前記パネル体挿入凹部との間に、緩衝材が配置される緩衝材配置領域が形成され、
前記戸車の上端部は、前記緩衝材配置領域内に位置し、
前記戸車の進行方向から見て、前記戸車の上端部と前記緩衝材配置領域とが互いに重なっている、
請求項に記載の障子。
【請求項3】
前記パネル体載置壁部に、前記上下方向で前記緩衝材配置領域に突出する凸壁部が設けられ、
前記戸車の進行方向から見て前記凸壁部の中央部には、前記上下方向で前記戸車配置領域に繋がる孔が形成され、
前記凸壁部は前記戸車の進行方向において複数の所定の領域に設けられ、
前記戸車の進行方向から見て、前記戸車の上端部と前記凸壁部とが互いに重なっている、
請求項に記載の障子。
【請求項4】
請求項からの何れか一項に記載の障子と、
前記障子が収まる枠体と、
を備える、
建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、障子及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、窓等の建具は、建築物の開口部に設けられた枠体と、枠体に納められた障子と、を備える。障子は、枠体の形状に合わせて形成された框体と、框体に納められたガラス板と、を備える。框体のうちガラス板の荷重がかかる下框には、戸車が設けられている。戸車は、例えば下框が収まる下枠に形成されたレール部に接しつつ、レール部の延びる方向に沿って走行可能である。例えば、特許文献1には、下枠内に回転自在に配置された複数の戸車と、複数の戸車の上に載せられた外動障子(障子)と、を備えた大開口サッシ(建具)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/110473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
障子を開閉する際に使用者に対してかかる開閉力は、戸車の直径によって変わる。一般的に、戸車の直径が大きくなる程、開閉力は小さくなり、使用者は楽に障子を開閉できる。また、戸車の直径が大きくなる程、単位距離あたりの戸車の回転数が減少するので、戸車の耐久性が高くなる。しかしながら、枠体の大きさが一定であれば、戸車の直径が大きくなる程、ガラス板が縮小され、戸車カバーや下框の高さが増し、障子の眺望性及び断熱性が低下する。
【0005】
本開示は、開閉力が過度に大きくならず、且つ戸車の耐久性、障子の眺望性及び断熱性を保持しやすい障子及び建具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る障子は、障子の框体の下框に設置可能に構成された戸車ケースと、前記戸車ケースに収められると共に支持され、前記障子が収められた枠体の下枠のレール部に回転可能に設けられ、上端部が前記戸車ケースの上面から突出している戸車と、を備える戸車装置と、前記戸車装置が取り付けられた下框を有する框体と、前記框体に納められたパネル体と、を備え、前記下框には、前記戸車装置が配置される戸車配置領域と、前記戸車配置領域の上方に設けられて前記パネル体の下端部が配置されるパネル体載置壁部と、が形成され、前記戸車の上端部は、前記パネル体載置壁部の一部よりも上方に突出している
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示に係る建具の正面図である。
図2図1に示す領域Rの障子の正面図である。
図3図2に示すC-C線で矢視した障子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示に係る戸車、障子及び建具の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
本実施形態の建具10は、図1に示す引き違い窓である。建具10は、建築物の壁部に形成された開口部15に設けられている。建具10は、腰窓と呼ばれる窓であり、床面Gから上方に離れた位置に設けられている。建具10は、枠体11と、一対の障子21、22と、を備える。
【0010】
以下の説明において、屋外と屋内とを結ぶ方向、及び壁部に直交する方向を奥行き方向と記載する。奥行き方向から見た際の左側と右側を結ぶ水平方向を左右方向と記載する。床面Gに直交する方向を上下方向と記載する。
【0011】
枠体11は、正面視で矩形の開口部15に合わせて、四方枠状に形成されている。枠体11は、上枠13と、下枠14と、一対の縦枠17、18と、を有する。上枠13及び下枠14は、左右方向に延びている。一対の縦枠17、18は、上下方向に延び、上枠13の両端部と下枠14の両端部とをそれぞれ連結している。上枠13の端部及び下枠14の端部は、縦枠17、18に対して突き当てられ、ビス等の固定具で固定されている。
【0012】
障子21は、枠体11の屋外側に収められている。障子22は、枠体11の屋内側に収められている。一対の障子21、22は、図1に示すように閉じた状態で枠体11を閉塞するように、配置されている。障子21、22の各々は、框体30と、パネル体40と、を備える。
【0013】
枠体11及び框体30は、例えばアルミニウム製の押出成形部材で形成されている。框体30の屋内側の側面は、樹脂で覆われている。框体30は、上框31と、下框32と、戸先框33と、召し合わせ框34と、を備える。上框31及び下框32は、左右方向に延びている。戸先框33及び召し合わせ框34は、上下方向に延び、上框31の両端部と下枠14の両端部とをそれぞれ連結している。上框31の端部及び下框32の端部は、戸先框33及び召し合わせ框34に対して突き当てられ、ビス等の固定具で固定されている。
【0014】
障子22の召し合わせ框34には、クレセント錠49が設けられている。障子21の召し合わせ框34には、不図示のクレセント錠固定部が設けられている。クレセント錠49は、障子21、22を閉じた状態で、クレセント錠固定部に固定される。
【0015】
図2及び図3に示すように、障子21、22の各々の下框32には、戸車装置145が設けられている。戸車装置145は、左右方向において下框32の両端部の近傍に設けられている。図2には、障子22の部分的な構成が示されているが、障子21にも障子22の下框32、戸車ケース150及び戸車101、102が設けられている。
【0016】
戸車装置145は、2つの戸車101、102と、戸車ケース150と、を備える。戸車ケース150は、障子22の框体30の下框32に設置可能に構成されている。2つの戸車101、102の各々は、戸車ケース150に収められている。
【0017】
戸車ケース150は、外側壁151と、内側壁152と、上壁153と、下壁154と、を備える。外側壁151は、戸車ケース150の屋外側に配置されている。内側壁152は、戸車ケース150の屋外側に配置されている。上壁153は、奥行き方向で外側壁151の上端と内側壁152の上端とを連結している。下壁154は、奥行き方向で外側壁151の下端と内側壁152の下端とを連結している。
【0018】
外側壁151と内側壁152との間に、2つの車軸(軸芯)105、106が設けられている。図3に示すように、車軸105、106の各々は、外側壁151と内側壁152と上壁153で囲まれた空間で奥行き方向に延びている。車軸105、106のそれぞれは、例えば不図示のビス等の固定具で形成されている。例えば、戸車101、102は、外側壁151及び内側壁152の一方の外方から前述のビス等の固定具を外側壁151及び内側壁152の他方の外方まで奥行き方向で貫通させる際に、前述の部材に挿入されている。戸車101、102の車軸105、106は、戸車ケース150に支持されている。2つの車軸105、106の左右方向の間隔は、2つの戸車101、102の中心同士の間隔に合わせて適宜設定されている。
【0019】
上壁153には、2つの貫通孔115、116が形成されている。戸車101、102の上端部111、112は、上壁(上面)153の貫通孔115、116から上方に突出している。つまり、戸車101、102の上端部111、112は、戸車ケース150の上壁153から突出している。上端部111、112の上下方向の最大高さは、例えば戸車101、102の直径の50%以下であり、好ましくは40%以下であることが好ましい。
【0020】
下壁154には、2つの貫通孔117、118が形成されている。貫通孔115、117と車軸105との各々の左右方向の中央は、上下方向で互いに重なっている。貫通孔116、118と車軸106との各々の左右方向の中央は、上下方向で互いに重なっている。戸車101、102の各々の下端部は、上下方向で下壁154から突出している。戸車101、102の各々の下端部の上下方向の最大高さは、上端部111、112の上下方向の最大高さに合わせて適宜設定されている。
【0021】
外側壁151、内側壁152、上壁153及び下壁154の各々の左右方向の大きさは、戸車101、102の各々の直径と、戸車101、102の中心同士の左右方向の間隔を考慮して適宜設定されている。外側壁151及び内側壁152の各々の上下方向の大きさは、戸車101、102の直径を考慮して、戸車101、102の上端部111、112及び下端部113、114が戸車ケース150から突出するように適宜設定されている。上壁153及び下壁154の各々の奥行き方向の大きさは、戸車101、102の奥行き方向の大きさに適度な余長を加えた大きさで適宜設定されている。貫通孔115、116の左右方向の幅は、戸車101、102の上端部111、112の左右方向の最大長さに適度な余長を加えた大きさで適宜設定されている。
【0022】
戸車101、102の各々の周面121、122には、凹部125、126が形成されている。凹部125、126は、中心に向かって凹み、周面121、122の周方向の全体に形成されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、障子22の下框32は、少なくとも2つの壁部141、142と、複数の壁部131~136と、を備える。壁部141は、下框32の最も屋外側に位置し、上下方向で所定の大きさを有する。壁部142は、壁部141よりも屋内側に位置し、奥行き方向において壁部141に対して所定の間隔をあけて配置されている。2つの壁部141、142の各々の上端は、上下方向で略同じ位置に位置する。壁部141の下端は、上下方向で壁部142の下端よりも下方に位置する。奥行き方向において、2つの壁部141、142は、2つの壁部131、136によって連結されている。
【0024】
図3に示すように、障子22の下框32において、2つの壁部141、142に挟まれた領域には、左右方向から見て、少なくとも戸車配置領域160と、パネル体挿入領域210と、緩衝材配置領域230が形成されている。
【0025】
壁部136は、壁部142の屋外側の側面の上下方向の所定の位置から、奥行き方向に沿って壁部141に向かう途中の位置まで延びている。壁部136の先端から、下方に壁部132が突出している。壁部131は、壁部141の屋内側の側面の上下方向の所定の位置から、奥行き方向に沿って壁部132と交差する位置まで延び、壁部132に接続されている。
【0026】
左右方向から見て、壁部131には、複数の貫通孔162が形成され、凸壁部220が設けられている。左右方向において、凸壁部220は、貫通孔162が形成されていない部分の壁部131に設けられている。言い換えると、凸壁部220は、左右方向で複数の領域222に設けられている。戸車101、102の上端部111、112は、2つの貫通孔162、162から壁部131よりも上方に突出している。図3に示すように、戸車101、102の上端部111、112と凸壁部220とは、上下方向及び奥行き方向で互いに重なり、左右方向で互いにずれている。
【0027】
左右方向から見て、凸壁部220の中央部には、孔224が形成されている。孔224は、左右方向に延び、上下方向で戸車配置領域160に繋がっている。孔224は、タッピングホールと呼ばれ、且つ水抜き孔としても機能する。タッピングホールは、パネル体挿入領域210の底部に接する下框32の不図示の部分と戸先框33とを接続させるためにビス等の固定具を挿入するために形成された孔である。凸壁部220は、少なくとも下框32の左右方向の両端部に設けられていればよく、左右方向の両端部よりも中央部において貫通孔162で分断されてもよい。雨や結露等によって水がパネル体挿入領域210に入っても、その水は貫通孔162、孔224をそれぞれ通り、戸車配置領域160に達し、さらに下框32と下枠14との隙間から建具10の外部に排出される。
【0028】
パネル体挿入凹部211は、下框32の上端に形成され、下側即ち床面G(図1参照)に向かって凹み、左右方向に延びている。パネル体挿入領域210は、戸車配置領域160の上方に設けられている。パネル体挿入領域210には、パネル体40の下端部42が配置されている。
【0029】
パネル体40は、3層ガラスであり、3枚のガラス板44、45、46を有する。奥行き方向において、ガラス板44の下端部とガラス板45の下端部との間に、樹脂製のスペーサー47が設けられている。ガラス板45の下端部とガラス板46の下端部との間には、樹脂製のスペーサー48が設けられている。ガラス板44、45、46の各々は、例えばlow-eガラスと呼ばれるガラス板である。ガラス板44、45、46の各々の屋内側の表面及び屋外側の表面には、金属膜がコーティングされている。金属膜がコーティングされていることによって、パネル体40は、一般の複層ガラスに比べて高い断熱性能を発揮する。
【0030】
戸車配置領域160は、下框32においてパネル体挿入凹部211の底面よりも下方に設けられている。戸車配置領域160とパネル体挿入領域210とは、上下方向で壁部131、136によって隔てられている。壁部131、136の上面には、緩衝材240が設けられている。緩衝材240の上面には、パネル体支持部材250が接している。
【0031】
パネル体支持部材250は、外側壁251と、内側壁252と、底壁253と、を備える。外側壁251は、底壁253の屋外側の端から上方に向かって延びている。内側壁252は、底壁253の屋内側の端から上方に向かって延びている。壁部141、142の各々の上端には、奥行き方向で壁部142、141の各々に向かって僅かに突出する爪が設けられている。外側壁251及び内側壁252の各々の上端部は、壁部141、142の各々の爪に接し、奥行き方向で壁部141、142の各々の爪で支持されている。底壁253は、緩衝材240に載った状態で、緩衝材240に支持されている。左右方向から見て、外側壁251と、内側壁252と、底壁253とによって囲まれた部分がパネル体挿入凹部211である。パネル体支持部材250は、例えば樹脂で形成されている。
【0032】
パネル体40の下端部42は、パネル体挿入凹部211に挿入されている。左右方向から見て、壁部141、142の各々の上端面及び壁部141、142の各々の爪部の上面には、押さえ部243、244が設けられている。押さえ部243、244の各々は、上方に延びつつ、奥行き方向で壁部142、141の各々に向かうように上下方向に対して傾斜している。外側壁251及び内側壁252の各々には、突起245、246の各々が設けられている。突起245は、外側壁251の屋内側の側面の上下方向の略中央の位置から、奥行き方向でパネル体挿入凹部211の中央に向けて僅かに突出している。突起246は、内側壁252の上下方向の略中央の位置から、奥行き方向でパネル体挿入凹部211の中央に向けて僅かに突出している。押さえ部243及び突起245の各々の先端は、パネル体40の屋外側の表面に接している。押さえ部244及び突起246の各々の先端は、パネル体40の屋内側の表面に接している。つまり、奥行き方向で、パネル体40は、押さえ部243及び突起245と、押さえ部244及び突起246とに挟まれている。
【0033】
外側壁251、内側壁252及び底壁253の各々の左右方向の大きさは、パネル体40の左右方向の大きさに対応している。底壁253の奥行き方向の大きさは、パネル体40の奥行き方向の大きさと略同じである。外側壁251及び内側壁252の上下方向の大きさは、パネル体挿入凹部211に挿入されたパネル体40の下端部42を支持可能な大きさで適宜設定されている。
【0034】
障子22の下框32において、上下方向で壁部(パネル体載置壁部)131、136よりも上方の領域は、パネル体挿入領域210と、緩衝材配置領域230に分かれている。パネル体挿入領域210は、上下方向において、壁部131、136よりも上方の領域のうちパネル体支持部材250の底壁253よりも上方の領域である。緩衝材配置領域230は、上下方向において、パネル体支持部材250の底壁253と壁部131、136との間の領域である。壁部131は、壁部136よりも低い位置に設けられ、戸車配置領域160を囲む上側の壁部である。緩衝材配置領域230において、上下方向で壁部131とパネル体支持部材250の底壁253との間の第1領域231は、壁部136とパネル体支持部材250の底壁253との間の第2領域232よりも大きい。
【0035】
左右方向から見たとき、緩衝材配置領域230のうち第1領域231には、戸車101、102の上端部111、112が貫通孔162を通って戸車配置領域160から突出している。戸車101、102の各々の上端は、上下方向で壁部136と略同じに配置されている。第1領域231において、緩衝材240は、上下方向でパネル体支持部材250の底壁253と壁部131との間を満たしている。第2領域232において、緩衝材240は、上下方向でパネル体支持部材250の底壁253と壁部131との間を満たすように配置されている。
【0036】
緩衝材240は、例えば樹脂で形成されている。図3に示すように、緩衝材240は、前述のように戸車102の上端部112が閉める領域を除いて緩衝材配置領域230を満たす形状で成形されている。緩衝材240は、左右方向で凸壁部220と同じ位置に配置され、貫通孔162で分断されている。戸車101、102の上端部111、112と緩衝材240とは、上下方向及び奥行き方向で互いに重なり、左右方向で互いにずれている。
【0037】
緩衝材240の上下方向の最小厚さは、パネル体支持部材250の底壁253と壁部135との間の緩衝材240の上下方向の厚さ、及び底壁253と戸車102の上端との間の緩衝材240の上下方向の厚さと略等しい。緩衝材240の上下方向の最小厚さは、パネル体40の重量を受け止めるために必要な最小厚さと同等の厚さを意味する。
【0038】
戸車配置領域160は、複数の壁部131~135によって部分的に囲まれた領域である。壁部133は、壁部141の屋内側の側面の上下方向で壁部131との交差位置よりも下方の所定の位置から、奥行き方向に沿って延びている。壁部134は、壁部141の屋内側の側面の上下方向で壁部133との交差位置よりも下方の所定の位置から戸車102の屋外側の表面近傍まで、奥行き方向に延びている。奥行き方向で戸車ケース150の外側壁151と互いに重なる位置の壁部134には、上下方向に貫通する細孔138が形成されている。壁部135は、壁部142の屋内側の側面の下端から奥行き方向で戸車102の屋内側の表面近傍まで、奥行き方向に延びている。奥行き方向で戸車ケース150の内側壁152と互いに重なる位置の壁部135には、上下方向に貫通する細孔139が形成されている。壁部135は、上下方向で壁部134と互いに重なっている。壁部131の底面と壁部134、135の各々の上面との上下方向の距離は、戸車ケース150の上下方向の大きさと略等しい。
【0039】
戸車ケース150の外側壁151の下端には、留め部157が設けられている。留め部157は、下方に延びつつ屋外側に突出している。戸車ケース150の内側壁152の下端には、留め部158が設けられている。留め部158は、下方に延びつつ屋内側に突出している。留め具157、158の各々は、左右方向に沿って延び、外側壁151及び内側壁152の各々の下端の左右方向全体に設けられている。
【0040】
戸車ケース150は、戸車配置領域160に配置されている。戸車ケース150は、複数の壁部131~135によって位置決めされている。戸車ケース150の外側壁151は、壁部133、134の先端に屋内側から接している。戸車ケース150の内側壁152は、壁部132のうち壁部131と交差する位置よりも下側の部分の屋外側の側面と、壁部135の先端に屋外側から接している。戸車ケース150の上壁153は、壁部131に下側から接している。戸車ケース150の下壁154は、壁部134の奥行き方向の屋内側の部分と壁部135の奥行き方向の屋外側の部分との各々に上側から接している。留め具157、158の各々は、壁部134の細孔138及び壁部135の細孔139の各々を貫通している。留め具157、158の各々の上面は、壁部134、135の各々の底面に下側から接している。
【0041】
戸車配置領域160に配置された戸車ケース150の戸車102は、上下方向で枠体11の下枠14に設けられた突起(レール部)16に支持されている。
【0042】
図3に示すように、枠体11の下枠14には、下框配置領域159が設けられている。下框配置領域159には、パネル体40の下端部42が収められた下框32と、戸車101、102を含む戸車ケース150とが配置されている。下框配置領域159は、複数の壁部311~316に部分的に囲まれ、屋外側に開放された領域である。
【0043】
壁部313は、下枠14において最も屋外側に配置され、上下方向に延びている。壁部311は、壁部313の屋内側の表面の上下方向で中央よりも下側の所定の位置から戸車101、102の略真下に向かって奥行き方向に延びている。壁部317は、壁部311の屋内側の端部から上方に延びている。壁部312は、壁部317の上端から屋内に向けて進むに従って段階的に上昇する。壁部317の上端には、さらに上方に突出する突起16が設けられている。突起16の突出方向の先端は、基端よりも膨らんでいる。突起16の先端の形状は、戸車101、102の凹部125、126の各々の形状に合わせて、左右方向から見て戸車101、102の中心に向かって凹む半円状である。
【0044】
壁部314は、壁部312の屋内側の端部から上方に延びている。壁部315は、壁部314の上端部から屋外に向けて奥行き方向に延びている。壁部315の先端には、下方に垂下する下框支持部材保持部330が設けられている。下框支持部材保持部330には、下框支持部材332の屋内側の部分が収まっている。下框支持部材332の屋外側の部分は、下框支持部材保持部330から屋外に向かって奥行き方向に突出し、下框32の壁部142の2つの突起147、148に屋内側から接している。2つの突起147、148の各々は、壁部142の屋内側の側面の所定の位置から屋内に向かって突出している。2つの突起147、148は、上下方向で互いに間隔をあけて配置されている。壁部316は、壁部315の屋外側の端部から上方に延びている。壁部316の上端部からは、屋内に向かって奥行き方向に延びる壁部318が設けられている。
【0045】
戸車101、102の凹部125、126の各々が下枠14の突起16に嵌まり、下框32の2つの突起147、148が下框支持部材332に支持されている。さらに、上框31が上枠13に上下方向及び奥行き方向で支持されている。戸車101、102の各々が周方向に回転し、突起16をレールとして左右方向に走ることで、障子22は左右方向にスライドする。障子21は、障子22と同様の構成を備える。左右方向は、戸車101、102の進行方向と同じである。
【0046】
以上説明した戸車装置145は、少なくとも障子21、22の各々の下框32に設けられた戸車ケース150と、戸車ケース150に収まって戸車ケース150の車軸105、106に支持された戸車101、102と、を備える。戸車101、102の上端部111、112は、戸車ケース150の上壁153よりも上方に突出している。戸車101、102の各々は、枠体11の下枠14に設けられた突起16に嵌まりつつ周方向に回転可能であり、左右方向に走る。従来の戸車の上端部は、戸車ケースの上壁よりも下方の収容空間内に配置されていた。しかしながら、戸車101、102の上端部111、112は、戸車ケース150の上壁153よりも上方に突出しているので、戸車ケース150の上下方向の大きさを抑えることができる。障子21、22の下框32に戸車101、102及び戸車ケース150を設けたときに、下框32内の空間を上手く活用し、上下方向で戸車101、102の上端部111、112をパネル体40に近づけることができる。戸車101、102の上端部111、112をパネル体40に近づけることで、枠体11の大きさが一定であれば、戸車101、102の直径を減少させずに、パネル体40の大きさを確保できる。戸車101、102の直径を減少させずに保持できることで、障子21、22の開閉力の増大と戸車101、102の耐久性の低下とを抑えることができる。ガラス板等のパネル体40の大きさを確保できることで、障子21、22の眺望性及び断熱性を保持できる。
【0047】
以上説明した障子21、22は、上述の戸車101、102と、戸車101、102が収められた戸車ケース150と、戸車ケース150が取り付けられた下框32を有する框体30と、框体30に納められたパネル体40と、を備える。障子21、22の大きさが一定であれば、戸車101、102の直径を減少させずに、パネル体40の大きさを確保できる。
【0048】
以上説明した障子21、22の下框32には、戸車ケース150が配置される戸車配置領域160と、パネル体40の下端部42が挿入されるパネル体挿入凹部211と、上下方向において戸車配置領域160とパネル体挿入凹部211との間に緩衝材240を挿入するための緩衝材配置領域230と、が形成されている。図3に示すように、戸車101、102の上端部111、112の各々と緩衝材配置領域230が、上下方向及び奥行き方向で互いに重なっている。戸車101、102の上端部111、112は、左右方向において互いに隣り合う領域222、222に設けられた緩衝材240の間の貫通孔162に配置されている。例えば、従来の障子では、戸車及び戸車ケースが戸車配置領域160に相当する領域のみに収まっていた。しかしながら、上述の障子21、22では、戸車101、102の上端部111、112を上下方向で緩衝材配置領域230内に位置させた。障子21、22及び建具10によれば、従来の障子と同様の機能を実現しつつ、緩衝材240を配置することのみに活用されていた緩衝材配置領域230を、戸車101、102の上端部111、112を配置する領域としても活用できる。したがって、戸車101、102の直径を減少させずに、パネル体40の大きさを確保し、良好な眺望性及び断熱性を得ることができる。
【0049】
以上説明した障子21、22の下框32には、上述の凸壁部220が設けられている。凸壁部220の中央部には孔224が形成されている。戸車101、102の上端部111、112と凸壁部220とは、上下方向及び奥行き方向で互いに重なっている。戸車101、102の上端部111、112は、左右方向において互いに隣り合う領域222、222に設けられた凸壁部220の間の貫通孔162に配置されている。タッピングホールや水抜き穴等に用いられる孔224を左右方向で複数の領域に分けても、凸壁部220の従来から機能を維持できる。凸壁部220の従来から機能とは、例えば下框32と戸先框33とを接続させるためのビス等の固定具を挿入させる機能、水抜き機能等である。凸壁部220を左右方向で複数の領域に分けることで、互いに隣り合う凸壁部220の間の領域を戸車101、102の上端部111、112を配置する領域として活用できる。したがって、戸車101、102の直径を減少させずに、パネル体40の大きさを確保し、良好な眺望性及び断熱性を得ることができる。
【0050】
以上説明した建具10は、上述の障子21、22と、枠体11と、を備える。建具10によれば、障子21、22の大きさが一定であれば、戸車101、102の直径を減少させずに、パネル体40の大きさを確保できる。ガラス板等のパネル体40の大きさを確保できることで、建具10の眺望性及び断熱性を保持できる。
【0051】
以上、本開示に係る好ましい実施形態について詳述したが、本開示は上述した実施形態に限定されない。本開示は、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0052】
上述の各実施形態の戸車装置181は2つの戸車401、402を備えるが、戸車装置181は、1つの戸車401のみを備えてもよく、各々が戸車401と同様に形成され且つ左右方向に間隔をあけて設けられた3つ以上の戸車を備えてもよい。
【0053】
例えば、本開示に係る建具は、上述の建具10に限定されず、例えば戸車を備えた窓、戸、扉等の可動部分と枠体とを有する建具をすべて含む。また、上述の実施形態ではレール部は突起としたが、本開示に係る建具のレール部は凹部であってもよい。
【0054】
上述の建具10の下框32及び下枠14の左右方向から見た断面形状は、図3に示す断面形状に限定されない。下框32には、少なくともパネル体挿入凹部と戸車配置領域が設けられ、上下方向でパネル体挿入凹部と戸車配置領域との間に戸車の上端部を配置可能な領域が設けられていればよい。
【符号の説明】
【0055】
10…引き違い窓(建具)、11…枠体、16…突起(レール部)、21,22…障子、30…框体、32…下框、40…3層ガラス(パネル体)、101、102…戸車、111、112…上端部、105、106…車軸(軸芯)、131、136…壁部、145…戸車装置、150…戸車ケース、153…上壁(上面)、160…戸車配置領域、211…パネル体挿入凹部、220…凸壁部、222…領域、224…孔、230…緩衝材配置領域、240…緩衝材
図1
図2
図3