IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリヂストンスポーツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図1
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図2
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図3
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図4
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図5
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図6
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図7
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図8
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図9
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図10
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図11
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図12
  • 特許-ゴルフボールの製造方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】ゴルフボールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 45/00 20060101AFI20240610BHJP
   A63B 45/02 20060101ALI20240610BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240610BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20240610BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240610BHJP
   B29C 45/34 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A63B45/00 B
A63B45/02
B29C45/14
B29C33/12
B29C45/26
B29C45/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020101129
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021194135
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】篠原 宏隆
【審査官】野田 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-034469(JP,A)
【文献】特開平05-111550(JP,A)
【文献】特開2004-081670(JP,A)
【文献】特開2020-000624(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0317464(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 45/00-45/02
B29C 45/14
B29C 33/12
B29C 45/26
B29C 45/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボールの製造方法であって、
凹部を有する外表面を備えたインナー層を成型する、インナー層成型ステップと、
前記インナー層成型ステップの後、前記インナー層の外表面を、インナー塗膜用塗料によりコーティングし、それにより、インナー塗膜を形成する、インナー塗膜形成ステップと、
前記インナー塗膜形成ステップの後、前記インナー塗膜のうち、前記凹部の表面を覆うインナー塗膜以外のインナー塗膜を、除去し、それにより、前記インナー層及び前記インナー塗膜を備えたインナーボールを得る、インナー塗膜除去ステップと、
前記インナー塗膜除去ステップの後、前記インナーボールの外周側に、ディンプルを有する外表面を備えたカバー層を成型し、それにより、ゴルフボールを得る、カバー層成型ステップと、
を含み、
前記インナー層と前記インナー塗膜とは、互いに色が異なり、
前記カバー層は、透明又は半透明であり、
前記カバー層の外表面のうち前記ディンプル以外の部分で測ったときの前記カバー層の厚さは、前記ディンプルの深さ超であり、
前記ディンプルは、前記インナー層には形成されない、ゴルフボールの製造方法。
【請求項2】
前記インナー層成型ステップでは、インナー層成型用金型を用いて、前記インナー層を成型する、請求項1に記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項3】
前記凹部の深さは、5mm以下である、請求項1又は2に記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項4】
前記インナー塗膜形成ステップの後、かつ、前記インナー塗膜除去ステップの前に、前記インナー塗膜を乾燥させる、乾燥ステップを、さらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項5】
前記カバー層成型ステップでは、カバー層成型用金型を用いて、射出成型により、前記カバー層を成型し、
前記ゴルフボールの製造方法は、前記インナー塗膜除去ステップの後、かつ、前記カバー層成型ステップの前に、前記インナー塗膜が前記射出成型のゲートと径方向に対向しないように、前記インナーボールを前記カバー層成型用金型のキャビティ内に位置決めする、カバー層成型用位置決めステップを、さらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項6】
前記カバー層成型ステップの後に、前記インナー塗膜が印刷部材の印刷部と径方向に対向しないように、前記ゴルフボールを前記印刷部材に対して位置決めする、印刷用位置決めステップと、
前記印刷用位置決めステップの後に、前記印刷部材を用いて、前記ゴルフボールの外表面上に印刷をする、印刷ステップと、
をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴルフボールの製造方法。
【請求項7】
前記カバー層成型ステップの後、前記カバー層の外周側を、コーティング層用塗料によりコーティングし、それにより、コーティング層を形成して、前記カバー層の外周側に前記コーティング層を備えた前記ゴルフボールを得る、コーティング層形成ステップを、さらに含み、
前記コーティング層は、艶消し粒子を含んでいる、請求項1~6のいずれか一項に記載のゴルフボールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフボールとして、カバー層の外周側に、印刷や塗装により塗膜が形成されたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9283443号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のゴルフボールでは、塗膜が、打撃時等の衝撃により剥離しやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、塗膜の剥離を抑制できるゴルフボールを得ることができる、ゴルフボールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のゴルフボールの製造方法は、
凹部を有する外表面を備えたインナー層を成型する、インナー層成型ステップと、
前記インナー層成型ステップの後、前記インナー層の外表面を、インナー塗膜用塗料によりコーティングし、それにより、インナー塗膜を形成する、インナー塗膜形成ステップと、
前記インナー塗膜形成ステップの後、前記インナー塗膜のうち、前記凹部の表面を覆うインナー塗膜以外のインナー塗膜を、除去し、それにより、前記インナー層及び前記インナー塗膜を備えたインナーボールを得る、インナー塗膜除去ステップと、
前記インナー塗膜除去ステップの後、前記インナーボールの外周側に、ディンプルを有する外表面を備えたカバー層を成型し、それにより、ゴルフボールを得る、カバー層成型ステップと、
を含み、
前記インナー層と前記インナー塗膜とは、互いに色が異なり、
前記カバー層は、透明又は半透明である。
【0007】
本発明のゴルフボールの製造方法において、
前記インナー層成型ステップでは、インナー層成型用金型を用いて、前記インナー層を成型すると、好適である。
【0008】
本発明のゴルフボールの製造方法において、
前記凹部の深さは、5mm以下であると、好適である。
【0009】
本発明のゴルフボールの製造方法において、
前記インナー塗膜形成ステップの後、かつ、前記インナー塗膜除去ステップの前に、前記インナー塗膜を乾燥させる、乾燥ステップを、さらに含むと、好適である。
【0010】
本発明のゴルフボールの製造方法において、
前記カバー層成型ステップでは、カバー層成型用金型を用いて、射出成型により、前記カバー層を成型し、
前記ゴルフボールの製造方法は、前記インナー塗膜除去ステップの後、かつ、前記カバー層成型ステップの前に、前記インナー塗膜が前記射出成型のゲートと径方向に対向しないように、前記インナーボールを前記カバー層成型用金型のキャビティ内に位置決めする、カバー層成型用位置決めステップを、さらに含むと、好適である。
【0011】
本発明のゴルフボールの製造方法において、
前記カバー層成型ステップの後に、前記インナー塗膜が印刷部材の印刷部と径方向に対向しないように、前記ゴルフボールを前記印刷部材に対して位置決めする、印刷用位置決めステップと、
前記印刷用位置決めステップの後に、前記印刷部材を用いて、前記ゴルフボールの外表面上に印刷をする、印刷ステップと、
をさらに含むと、好適である。
【0012】
本発明のゴルフボールの製造方法において、
前記カバー層成型ステップの後、前記カバー層の外周側を、コーティング層用塗料によりコーティングし、それにより、コーティング層を形成して、前記カバー層の外周側に前記コーティング層を備えた前記ゴルフボールを得る、コーティング層形成ステップを、さらに含み、
前記コーティング層は、艶消し粒子を含んでいると、好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗膜の剥離を抑制できるゴルフボールを得ることができる、ゴルフボールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるインナー層成型ステップの説明図であり、インナー層成型ステップで用いるインナー層成型用金型を概略的に示すインナー層成型用金型軸線方向の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるインナー層成型ステップの説明図であり、図1のインナー層成型用金型を示すインナー層成型用金型軸直方向の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるインナー層成型ステップの説明図であり、インナー層成型ステップにより得られるインナーボールを概略的に示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるインナー塗膜形成ステップの説明図であり、インナー塗膜形成ステップにより得られるインナーボールを概略的に示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるインナー塗膜除去ステップの説明図であり、インナー塗膜除去ステップにより得られるインナーボールを概略的に示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるインナー塗膜除去ステップの説明図であり、図5のインナーボールを概略的に示す側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるカバー層成型用位置決めステップおよびカバー層成型ステップの説明図であり、カバー層成型ステップで用いるカバー層成型用金型を概略的に示すカバー層成型用金型軸線方向の断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるカバー層成型ステップの説明図であり、カバー層成型ステップにより得られるゴルフボールを概略的に示す断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるカバー層成型ステップの説明図であり、カバー層成型ステップにより得られるゴルフボールを概略的に示す側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法における印刷用位置決めステップ及び印刷ステップの説明図であり、印刷ステップにより得られるゴルフボールを印刷部材とともに概略的に示す断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるコーティング層形成ステップの説明図であり、コーティング層形成ステップにより得られるゴルフボールを概略的に示す断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法におけるコーティング層形成ステップの説明図であり、コーティング層形成ステップにより得られるゴルフボールを概略的に示す側面図である。
図13】本発明の一変形例に係るゴルフボールの製造方法におけるインナー塗膜除去ステップにより得られるインナーボールを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴルフボールの製造方法は、任意の種類のゴルフボールを製造するために利用できるものであり、例えば、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール、フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボール、シックスピースゴルフボール、糸巻きゴルフボール等を製造するために利用できるものである。
以下、本発明に係るゴルフボールの製造方法の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るゴルフボールの製造方法について、図1図12を参照しつつ、説明する。本実施形態に係るゴルフボールの製造方法は、インナー層成型ステップと、インナー塗膜形成ステップと、乾燥ステップと、インナー塗膜除去ステップと、カバー層成型ステップと、表面処理ステップと、印刷ステップと、コーティング層形成ステップと、を含むことができる。以下では、各ステップについてそれぞれ説明する。
【0017】
〔インナー層成型ステップ〕
インナー層成型ステップでは、1つ又は複数の凹部121を有する外表面を備えたインナー層12を成型する(図1図3)。
インナー層成型ステップにより、少なくともインナー層12を備えた、インナーボール14(図3)が得られる。インナー層成型ステップにより得られるインナーボール14は、その最も外周側の層として、インナー層12を有する。なお、本明細書において、「インナーボール」とは、後述するカバー層が形成されていない状態におけるボールを指す。
【0018】
インナー層成型ステップでは、図1及び図2の例のように、インナー層成型用金型2を用いて、インナー層12を成型すると、好適である。この場合、インナー層成型用金型2を用いて、射出成型又は圧縮成型(型付け)により、インナー層12を成型すると、好適である。
インナー層成型用金型2は、図1及び図2に示すように、インナー層12の外表面を成型するように構成されたインナー層成型用キャビティ面23を有している。インナー層成型用キャビティ面23は、インナー層成型用キャビティ20を区画している。インナー層成型用キャビティ面23は、内周側へ突出する1つ又は複数の凸状面231を有している。凸状面231は、インナー層12の凹部121(図3)を成型するように構成されている。
インナー層成型用金型2を用いてインナー層12を成型することにより、例えば複数の凹部121をインナー層12に形成する場合に、複数の凹部121どうしの相対位置を、1つの工程で簡単に、所期したとおりに位置決めすることができる。それにより、後述のインナー塗膜除去ステップ後に得られるインナーボール14(図5)においてそれぞれ凹部121の表面121aを覆う複数のインナー塗膜13どうしの相対位置を、簡単に所期したとおりにすることができる。
【0019】
インナー層成型ステップでは、図1図3の例のように、コアボール10の外周側にインナー層12を成型してもよい。この場合、インナー層成型ステップにより得られるインナーボール14は、コアボール10と、コアボール10の外周側に位置するインナー層12と、を備えることとなる。コアボール10は、1層又は複数層を備える。コアボール10は、例えば、1層又は複数層のゴム層を備える。図1図3の例において、コアボール10は、1層のゴム層から構成されている。コアボール10が備え得る1層又は複数層のゴム層を構成するゴムは、それぞれ、例えばブタジエンゴムが好適である。コアボール10が複数層のゴム層を備える場合、各ゴム層を構成するゴムどうしは、互いに組成が異なっていると好適である。また、コアボール10が複数層のゴム層を備える場合、各ゴム層を構成するゴムどうしは、互いに硬度が異なっていると好適である。コアボール10は、1層又は複数層のゴム層の外周側に、1層又は複数層の樹脂層を備えることができる。
例えば、コアボール10が図1図3の例のように1層又は複数層のゴム層のみを備える場合、インナー層12は、ゴムから構成されてもよいし、あるいは、樹脂から構成されてもよい。図1図3の例において、インナー層12は、例えば樹脂から構成されている。
コアボール10が、1層又は複数層のゴム層に加えて、その外周側に、1層又は複数層の樹脂層を備える場合、インナー層12は、樹脂から構成される。
インナー層12を構成し得るゴムとしては、例えばブタジエンゴムが好適である。
ただし、インナー層成型ステップでは、コアボール10を用いずに、インナー層12を成型してもよい。この場合、インナー層成型ステップにより得られるインナーボール14は、インナー層12のみを備えることとなる。この場合、インナー層12は、ゴムから構成されると好適であるが、樹脂から構成されてもよい。
【0020】
図1図3の例において、インナー層12(図3)は、インナー層成型用金型2を用いて、射出成型により成型される。すなわち、図1図3の例において、インナー層成型用金型2は、射出成型用金型である。
以下、図1図3の例のように、インナー層成型用金型2が射出成型用金型である場合における、インナー層成型用金型2の構成例を説明する。
図1図2に示すように、インナー層成型用金型2は、第1インナー層成型用金型部分21と第2インナー層成型用金型部分22とを備える。第1インナー層成型用金型部分21と第2インナー層成型用金型部分22とは、互いに対向配置されるように構成されている。図1の例において、第1インナー層成型用金型部分21と第2インナー層成型用金型部分22とは、互いに鉛直方向に対向配置されるように構成されており、また、第1インナー層成型用金型部分21は、第2インナー層成型用金型部分22に対し、鉛直方向の上側に位置するように構成されている。ただし、第1インナー層成型用金型部分21と第2インナー層成型用金型部分22とは、互いに鉛直方向以外の任意の方向に対向配置されるように構成されていてもよく、また、第1インナー層成型用金型部分21は、第2インナー層成型用金型部分22に対し、鉛直方向の上側以外の任意の側に位置するように構成されていてもよい。
本明細書では、インナー層成型用金型2における第1インナー層成型用金型部分21と第2インナー層成型用金型部分22とが互いに対向配置される方向(図の例では、鉛直方向)を、「インナー層成型用金型軸線方向IAD」という。一方、インナー層成型用金型軸線方向IADに対し垂直な方向(図の例では、水平方向)を、「インナー層成型用金型軸直方向IPD」という。
【0021】
第1インナー層成型用金型部分21と第2インナー層成型用金型部分22とは、それぞれ略半球状に窪んだインナー層成型用キャビティ面23を有している。第1インナー層成型用金型部分21の外表面のうち第2インナー層成型用金型部分22と対向する分割面21Fと、第2インナー層成型用金型部分22の外表面のうち第1インナー層成型用金型部分21と対向する分割面22Fとが、互いに合わさった状態(すなわち、インナー層成型用金型2が閉じた状態)において、第1インナー層成型用金型部分21のインナー層成型用キャビティ面23と第2インナー層成型用金型部分22のインナー層成型用キャビティ面23とが連続して、略球状のインナー層成型用キャビティ面23を形成し、当該略球状のインナー層成型用キャビティ面23によって、インナー層成型用キャビティ(キャビティ)20が区画される(図1)。
【0022】
インナー層成型用金型2は、溶融材料(例えば、溶融樹脂)をインナー層成型用キャビティ20内に注入するように構成された複数のゲート25Gを備えている。各ゲート25Gは、インナー層成型用キャビティ面23に開口しており、すなわち、インナー層成型用キャビティ20に連通している。これら複数のゲート25Gは、図1図2の例のように、周方向に沿って互いから間隔を空けて配置されてもよい。また、各ゲート25Gは、図1の例のように、第1インナー層成型用金型部分21の分割面21Fと、第2インナー層成型用金型部分22の分割面22Fとに、開口していてもよい。より具体的に、図1図2の例のように、インナー層成型用金型2は、溶融材料が通される主ランナー241(図2)と、主ランナー241の下流側に連続し周方向に環状に延在するリング状ランナー242と、リング状ランナー242から内周側へ延在する複数のノズル状ランナー243と、ノズル状ランナー243とインナー層成型用キャビティ20との間を連通する複数のゲート25Gと、を備えてもよい。この場合、リング状ランナー242と各ノズル状ランナー243と各ゲート25Gとは、図1図2の例のように、第1インナー層成型用金型部分21の分割面21Fと、第2インナー層成型用金型部分22の分割面22Fとに、開口していてもよい。
射出成型の直後に得られる成型品は、インナーボール14(図3)と、リング状ランナー242、ノズル状ランナー243、およびゲート25Gによって成型された余剰部分とが、連続したものからなる。当該成型品から、当該余剰部分が除去されることによって、インナーボール14が得られる。このとき、インナーボール14のインナー層12の外表面には、ゲート25Gに対応する位置に、射出成型のインナー層ゲート跡125G’(図3)が残る場合がある。便宜のため、図3以外の図面では、インナー層ゲート跡125G’の図示を省略する。
【0023】
インナー層成型用金型2の第1インナー層成型用金型部分21及び第2インナー層成型用金型部分22は、それぞれ、図1の例のように、ガス抜き穴27と、ガス抜き穴27に挿入されたガス抜きピン(ピン)28Pと、を有すると、好適である。これにより、インナー層成型ステップで成型されるインナー層12の内部に気泡が残るのを抑制できる。ガス抜き穴27は、インナー層成型用キャビティ20に連通している。これにより、射出成型時にインナー層成型用キャビティ20内に生じたガスがガス抜き穴27を介してインナー層成型用キャビティ20の外部へ排出されるようにされている。
この場合、インナー層成型ステップにより得られるインナーボール14のインナー層12の外表面には、ガス抜きピン(ピン)28Pに対応する位置に、インナー層ガス抜きピン跡(インナー層ピン跡)128P’(図3)が残る場合がある。便宜のため、図3以外の図面では、インナー層ガス抜きピン跡(インナー層ピン跡)128P’の図示を省略する。
【0024】
インナー層成型ステップにおいて、コアボール10の外周側にインナー層12を成型する場合、インナー層成型用金型2の第1インナー層成型用金型部分21及び第2インナー層成型用金型部分22は、それぞれ、図1の例のように、複数の支持ピン(ピン)26Pを有すると、好適である。これによって、コアボール10がインナー層成型用キャビティ20内で偏心するのを抑制でき、ひいては、インナー層成型ステップで得られるインナーボール14(図3)においてコアボール10が偏心するのを抑制できる。各支持ピン26Pは、インナー層成型用金型軸線方向IADに延在しており、インナー層成型用金型軸線方向IADに進退可能に構成されている。インナー層成型用キャビティ20の内部にコアボール10が収容され、かつ、インナー層成型用金型2が閉じた状態において、各支持ピン26Pは、コアボール10がインナー層成型用キャビティ20の中心に位置するように、コアボール10を支持する(図1)。そして、射出成型の間(例えば、溶融材料がインナー層成型用キャビティ20の内部に注入される間)、各支持ピン26Pは、インナー層成型用キャビティ20の外部へと徐々に後退する。
この場合、インナー層成型ステップにより得られるインナーボール14のインナー層12の外表面には、支持ピン(ピン)26Pに対応する位置に、インナー層支持ピン跡(インナー層ピン跡)126P’(図3)が残る場合がある。便宜のため、図3以外の図面では、インナー層支持ピン跡(インナー層ピン跡)126P’の図示を省略する。
【0025】
〔インナー塗膜形成ステップ〕
インナー層成型ステップの後、インナー塗膜形成ステップでは、インナー層12の外表面を、インナー塗膜用塗料によりコーティングし、それにより、インナー塗膜13を形成する(図4)。
インナー塗膜形成ステップにより、少なくとも、インナー層12と、インナー層12の外周側を覆うインナー塗膜13と、を備えた、インナーボール14が得られる。
インナー塗膜形成ステップでは、インナー層12の外表面のうち、少なくとも凹部121の底面121abの全体を、インナー塗膜用塗料によりコーティングし、それにより、少なくとも凹部121の底面121abの全体を覆うように、インナー塗膜13を形成すればよい。インナー塗膜形成ステップでは、インナー層12の外表面のうち、少なくとも凹部121の表面121a(底面121ab及び側面121as)の全体を、インナー塗膜用塗料によりコーティングし、それにより、少なくとも凹部121の表面121aの全体を覆うように、インナー塗膜13を形成すると好適である。また、インナー塗膜形成ステップでは、インナー層12の外表面の全体を、インナー塗膜用塗料によりコーティングし、それにより、インナー層12の外表面の全体を覆うように、インナー塗膜13を形成すると、インナー塗膜用塗料のコーティング作業がし易いので、より好適である。
インナー塗膜用塗料によりコーティングする手法としては、例えば、スプレー塗装又はディッピング塗装が好適である。
【0026】
インナー層12とインナー塗膜13(ひいてはインナー塗膜用塗料)とは、互いに色が異なるようにする。ここで、「互いに色が異なる」とは、互いに色相、彩度、及び明度のうち少なくとも1つが異なることを指す。インナー層12とインナー塗膜13とは、互いに色相が異なると、好適である。インナー層12とインナー塗膜13とは、互いに色調が異なると、好適である。
インナー層12とインナー塗膜13(ひいてはインナー塗膜用塗料)とは、それぞれ、不透明であると、好適である。
インナー塗膜13(ひいてはインナー塗膜用塗料)は、着色されている、即ち、有色であると、好適である。ここで、「有色」とは、白色以外の色相を有し、かつ、無色透明でないことを指す。
【0027】
〔乾燥ステップ〕
インナー塗膜形成ステップの後、かつ、後述のインナー塗膜除去ステップの前に、乾燥ステップでは、インナー塗膜13を乾燥させる(図4)。
乾燥ステップを行うことにより、後述のインナー塗膜除去ステップがしやすくなるとともに、後述のインナー塗膜除去ステップを行う間に凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13がダレるのを抑制できる。
ただし、乾燥ステップは行わなくてもよい。
【0028】
〔インナー塗膜除去ステップ〕
インナー塗膜形成ステップの後、インナー塗膜除去ステップでは、インナー塗膜形成ステップで形成されたインナー塗膜13のうち、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13以外のインナー塗膜13を、除去する(図5図6)。インナー塗膜除去ステップでは、インナー塗膜形成ステップで形成されたインナー塗膜13のうち、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13以外のインナー塗膜13のみを、除去すると、好適である。上述の乾燥ステップを行う場合、インナー塗膜除去ステップは、乾燥ステップの後に行う。
インナー塗膜除去ステップにより、少なくとも、インナー層12と、インナー層12の外表面のうち凹部121の表面121aのみを覆うインナー塗膜13と、を備えた、インナーボール14が得られる。インナー塗膜13は、少なくとも凹部121の底面121abの全体を覆っていればよいが、図5の例のように凹部121の表面121a(底面121ab及び側面121as)の全体を覆っていると好適である。
インナー塗膜形成ステップで形成されたインナー塗膜13のうち、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13以外のインナー塗膜13のみを、除去する手法としては、例えば、バレル研磨機により、インナー塗膜形成ステップで得られたインナーボール14(図4)を外周側から徐々にインナー層12の外表面の位置まで研磨するものが挙げられる。
【0029】
〔カバー層成型ステップ〕
インナー塗膜除去ステップの後、カバー層成型ステップでは、インナーボール14の外周側に、多数のディンプル151を有する外表面を備えたカバー層15を成型する(図7図9)。
カバー層成型ステップにより、インナーボール14と、インナーボール14の外周側に位置するカバー層15と、を備えた、ゴルフボール1が得られる。カバー層成型ステップにより得られるゴルフボール1は、その最も外周側の層として、カバー層15を有する。カバー層15は、インナーボール14の外表面を覆っている。ディンプル151は、カバー層15には形成されるが、インナーボール14(ひいてはインナー層12)には形成されない。すなわち、カバー層15は、ディンプル151の深さ以上(好適には、深さ超)の最大厚さを有する。カバー層15の最大厚さは、カバー層15の外表面のうちディンプル151以外の部分(ランド部)で測ったときのカバー層15の厚さに相当する。
カバー層15は、例えばウレタン又はアイオノマーから構成される。
【0030】
カバー層15は、透明又は半透明である。これにより、図9に示すように、ゴルフボール1を観たときに、カバー層15を介して、インナーボール14の外観を観ることができる。
本明細書において、「透明」とは、可視光線透過率が、60%以上であることを指し、「半透明」とは、可視光線透過率が、30%以上60%未満であることを指し、「不透明」とは、可視光線透過率が、30%未満であることを指す。なお、「可視光線透過率」とは、380~780nmの波長領域で、1nm刻みで測定した光線透過率の測定値の平均値である。「可視光線透過率」は、カバー層と同じ厚み・材質のサンプル、又は、製品ゴルフボールから直接剥離したカバー層のサンプルを用い、例えば任意の紫外可視分光光度計を用いて、380~780nmの波長領域における、1nm刻みの光線透過率を測定することにより、求めることができる。
カバー層15は、透明であると、好適である。これにより、ゴルフボール1を観たときに、カバー層15を介して、インナーボール14の外観を、よりクリアに観ることができる。同様の観点から、カバー層15は、可視光線透過率が70%以上であるとより好適であり、可視光線透過率が80%以上であるとさらに好適である。
カバー層15は、無色であると好適であるが、有色であってもよい。
【0031】
カバー層成型ステップでは、図7の例のように、カバー層成型用金型3を用いて、カバー層15を成型すると、好適である。この場合、カバー層成型用金型3を用いて、射出成型又は圧縮成型(型付け)により、カバー層15を成型すると、好適である。
カバー層成型用金型3は、図7に示すように、カバー層15の外表面を成型するように構成されたカバー層成型用キャビティ面33を有している。カバー層成型用キャビティ面33は、カバー層成型用キャビティ30を区画している。カバー層成型用キャビティ面33は、内周側へ突出する多数のディンプル成型用突起面331を有している。ディンプル成型用突起面331は、カバー層15のディンプル151を成型するように構成されている。
【0032】
図7の例において、カバー層15は、カバー層成型用金型3を用いて、射出成型により成型される。すなわち、図7の例において、カバー層成型用金型3は、射出成型用金型である。
以下、図7の例のように、カバー層成型用金型3が射出成型用金型である場合における、カバー層成型用金型3の構成例を説明する。
カバー層成型用金型3は、図1に示すインナー層成型用金型2と同様に構成することができる。図7に示すように、カバー層成型用金型3は、第1カバー層成型用金型部分31と第2カバー層成型用金型部分32とを備える。第1カバー層成型用金型部分31と第2カバー層成型用金型部分32とは、互いに対向配置されるように構成されている。図7の例において、第1カバー層成型用金型部分31と第2カバー層成型用金型部分32とは、互いに鉛直方向に対向配置されるように構成されており、また、第1カバー層成型用金型部分31は、第2カバー層成型用金型部分32に対し、鉛直方向の上側に位置するように構成されている。ただし、第1カバー層成型用金型部分31と第2カバー層成型用金型部分32とは、互いに鉛直方向以外の任意の方向に対向配置されるように構成されていてもよく、また、第1カバー層成型用金型部分31は、第2カバー層成型用金型部分32に対し、鉛直方向の上側以外の任意の側に位置するように構成されていてもよい。
本明細書では、カバー層成型用金型3における第1カバー層成型用金型部分31と第2カバー層成型用金型部分32とが互いに対向配置される方向(図の例では、鉛直方向)を、「カバー層成型用金型軸線方向CAD」という。一方、カバー層成型用金型軸線方向CADに対し垂直な方向(図の例では、水平方向)を、「カバー層成型用金型軸直方向CPD」という。
【0033】
第1カバー層成型用金型部分31と第2カバー層成型用金型部分32とは、それぞれ略半球状に窪んだカバー層成型用キャビティ面33を有している。第1カバー層成型用金型部分31の外表面のうち第2カバー層成型用金型部分32と対向する分割面31Fと、第2カバー層成型用金型部分32の外表面のうち第1カバー層成型用金型部分31と対向する分割面32Fとが、互いに合わさった状態(すなわち、カバー層成型用金型3が閉じた状態)において、第1カバー層成型用金型部分31のカバー層成型用キャビティ面33と第2カバー層成型用金型部分32のカバー層成型用キャビティ面33とが連続して、略球状のカバー層成型用キャビティ面33を形成し、当該略球状のカバー層成型用キャビティ面33によって、カバー層成型用キャビティ30が区画される(図7)。
【0034】
カバー層成型用金型3は、溶融材料(例えば、溶融ウレタン又は溶融アイオノマー)をカバー層成型用キャビティ30内に注入するように構成された複数のゲート35Gを備えている。各ゲート35Gは、カバー層成型用キャビティ面33に開口しており、すなわち、カバー層成型用キャビティ30に連通している。これら複数のゲート35Gは、図7の例のように、周方向に沿って互いから間隔を空けて配置されてもよい。また、各ゲート35Gは、図7の例のように、第1カバー層成型用金型部分31の分割面31Fと、第2カバー層成型用金型部分32の分割面32Fとに、開口していてもよい。より具体的に、図7の例のように、カバー層成型用金型3は、溶融材料が通される主ランナー(図示せず)と、主ランナーの下流側に連続し周方向に環状に延在するリング状ランナー342と、リング状ランナー342から内周側へ延在する複数のノズル状ランナー343と、ノズル状ランナー343とカバー層成型用キャビティ30との間を連通する複数のゲート35Gと、を備えてもよい。この場合、リング状ランナー342と各ノズル状ランナー343と各ゲート35Gとは、図7の例のように、第1カバー層成型用金型部分31の分割面31Fと、第2カバー層成型用金型部分32の分割面32Fとに、開口していてもよい。
射出成型の直後に得られる成型品は、ゴルフボール1(図8)と、リング状ランナー342、ノズル状ランナー343、およびゲート35Gによって成型された余剰部分とが、連続したものからなる。当該成型品から、当該余剰部分が除去されることによって、ゴルフボール1が得られる。このとき、ゴルフボール1のカバー層15の外表面には、ゲート35Gに対応する位置に、射出成型のカバー層ゲート跡155G’(図8)が残る場合がある。便宜のため、図8以外の図面では、カバー層ゲート跡155G’の図示を省略する。
【0035】
カバー層成型用金型3の第1カバー層成型用金型部分31及び第2カバー層成型用金型部分32は、それぞれ、図7の例のように、ガス抜き穴37と、ガス抜き穴37に挿入されたガス抜きピン(ピン)38Pと、を有すると、好適である。これにより、カバー層成型ステップで成型されるカバー層15の内部に気泡が残るのを抑制できる。ガス抜き穴37は、カバー層成型用キャビティ30に連通している。これにより、射出成型時にカバー層成型用キャビティ30内に生じたガスがガス抜き穴37を介してカバー層成型用キャビティ30の外部へ排出されるようにされている。
この場合、カバー層成型ステップにより得られるゴルフボール1のカバー層15の外表面には、ガス抜きピン(ピン)38Pに対応する位置に、カバー層ガス抜きピン跡(カバー層ピン跡)158P’(図8)が残る場合がある。便宜のため、図8以外の図面では、カバー層ガス抜きピン跡(カバー層ピン跡)158P’の図示を省略する。
【0036】
カバー層成型用金型3の第1カバー層成型用金型部分31及び第2カバー層成型用金型部分32は、それぞれ、図7の例のように、複数の支持ピン(ピン)36Pを有すると、好適である。これによって、インナーボール14がカバー層成型用キャビティ30内で偏心するのを抑制でき、ひいては、カバー層成型ステップで得られるゴルフボール1(図8)においてインナーボール14が偏心するのを抑制できる。各支持ピン36Pは、カバー層成型用金型軸線方向CADに延在しており、カバー層成型用金型軸線方向CADに進退可能に構成されている。カバー層成型用キャビティ30の内部にインナーボール14が収容され、かつ、カバー層成型用金型3が閉じた状態において、各支持ピン36Pは、インナーボール14がカバー層成型用キャビティ30の中心に位置するように、インナーボール14を支持する(図7)。そして、射出成型の間(例えば、溶融材料がカバー層成型用キャビティ30の内部に注入される間)、各支持ピン36Pは、カバー層成型用キャビティ30の外部へと徐々に後退する。
この場合、カバー層成型ステップにより得られるゴルフボール1のカバー層15の外表面には、支持ピン(ピン)36Pに対応する位置に、カバー層支持ピン跡(カバー層ピン跡)156P’(図8)が残る場合がある。便宜のため、図8以外の図面では、カバー層支持ピン跡(カバー層ピン跡)156P’の図示を省略する。
【0037】
〔表面処理ステップ〕
カバー層成型ステップの後、表面処理ステップでは、カバー層15の表面処理を行う。
カバー層15の表面処理としては、例えば、プラズマ処理が好適である。これにより、後述の印刷ステップで形成されるスタンプ部16(図10)や、後述のコーティング層形成ステップで形成されるコーティング層17(図11)が、よりしっかりとカバー層15の外周側に載るようになる。
ただし、表面処理ステップは、行わなくてもよい。
【0038】
〔印刷ステップ〕
カバー層成型ステップの後、印刷ステップでは、ゴルフボール1の外表面上にマークやロゴ等を印刷する。
印刷ステップは、例えば、パッド印刷ステップとすることができる。パッド印刷ステップでは、パッド印刷機(図示せず)の印刷パッドからなる印刷部材4を用いて、ゴルフボール1の外表面上にパッド印刷をする(図10)。
前述の表面処理ステップを行う場合、印刷ステップは、表面処理ステップの後に行う。印刷ステップでは、印刷を1回又は複数回行う。印刷により、カバー層15の外周側には、スタンプ部16が形成される。
印刷ステップにより、少なくとも、インナーボール14と、インナーボール14の外周側に位置するカバー層15と、カバー層15の外周側に位置する1つ又は複数のスタンプ部16と、を備えた、ゴルフボール1が得られる。
パッド印刷ステップで用いられる印刷部材4は、パッド印刷機(図示せず)に備えられている。印刷部材4の印刷部(印刷部材4の先端部、図10の下端部)には、インクKが塗布される。そして、印刷部材4の印刷部は、ゴルフボール1の外表面上に押し当てられ、それにより、印刷部材4の印刷部に塗布されたインクKがゴルフボール1の外表面上に転写されて、スタンプ部16が形成される。
図12に示すように、スタンプ部16は、例えば、1つ又は複数の文字(数字、英字等)、記号、及び/又は、模様等を表してもよく、それにより、スタンプ部16は、例えば、マーク、ロゴ、及び/又は、絵柄等を表してもよい。
スタンプ部16(ひいてはインクK)は、不透明であると、スタンプ部16を視認しやすくなるので、好適である。また、スタンプ部16(ひいてはインクK)とインナー層12とは、互いに色が異なると、スタンプ部16を視認しやすくなるので、好適である。スタンプ部16(ひいてはインクK)とインナー塗膜13とは、互いに色が異なっていてもよいし、互いに色が同じでもよい。ここで、「互いに色が同じ」とは、互いに色相、彩度、及び明度の全てが同じであることを指す。
なお、印刷ステップは、パッド印刷ステップではなく、熱転写印刷ステップ等であってもよい。
なお、印刷ステップは、行わなくてもよい。
【0039】
〔コーティング層形成ステップ〕
カバー層成型ステップの後、コーティング層形成ステップでは、カバー層15の外周側を、コーティング層用塗料によりコーティングし、それにより、コーティング層17を形成する(図11図12)。前述の表面処理ステップを行う場合、コーティング層形成ステップは、表面処理ステップの後に行う。また、前述の印刷ステップを行う場合、コーティング層形成ステップは、印刷ステップの後に行うと好適であるが、印刷ステップの前に行ってもよい。
コーティング層形成ステップにより、少なくとも、インナーボール14と、インナーボール14の外周側に位置するカバー層15と、カバー層15の外周側に位置するコーティング層17と、を備えた、ゴルフボール1が得られる。
コーティング層形成ステップでは、カバー層15の外表面の全体を、コーティング層用塗料によりコーティングし、それにより、カバー層15の外表面の全体を覆うように、コーティング層17を形成すると、好適である。
コーティング層17は、図11に示すように、ディンプル151を完全には埋めないような厚さに形成される。すなわち、コーティング層17の厚さは、ディンプル151の深さ未満である。コーティング層17の厚さは、10~15μmであると、好適である。
コーティング層17は、透明又は半透明であると、好適である。これにより、図12に示すように、ゴルフボール1を観たときに、コーティング層17(及びカバー層15)を介して、インナーボール14の外観を観ることができる。コーティング層17は、無色であると好適であるが、有色であってもよい。
コーティング層用塗料によりコーティングする手法としては、例えば、スプレー塗装又はディッピング塗装が好適である。
なお、コーティング層形成ステップは、行わなくてもよい。
【0040】
ここで、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態に係るゴルフボールの製造方法は、上述のように、凹部121を有する外表面を備えたインナー層12を成型する、インナー層成型ステップと、インナー層成型ステップの後、インナー層12の外表面を、インナー塗膜用塗料によりコーティングし、それにより、インナー塗膜13を形成する、インナー塗膜形成ステップと、インナー塗膜形成ステップの後、インナー塗膜13のうち、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13以外のインナー塗膜13を、除去し、それにより、インナー層12及びインナー塗膜13を備えたインナーボール14を得る、インナー塗膜除去ステップと、インナー塗膜除去ステップの後、インナーボール14の外周側に、ディンプル151を有する外表面を備えたカバー層15を成型し、それにより、ゴルフボール1を得る、カバー層成型ステップと、を含む。これにより得られるゴルフボール1は、インナーボール14と、インナーボール14の外表面を覆い、ディンプル151を有する外表面を備えた、カバー層15と、を備え、インナーボール14は、凹部121を有する外表面を備えた、インナー層12と、インナー層12の外表面のうち凹部121の表面121aのみを覆う、インナー塗膜13と、を有する。また、インナー層12とインナー塗膜13とは、互いに色が異なり、カバー層15は、透明又は半透明である。
インナー層12とインナー塗膜13とが互いに色が異なることによって、ゴルフボール1が、インナー層12に対するインナー塗膜13のコントラストによって表されるデザインを有することができ、ひいては、ゴルフボール1のデザイン性を向上できる。また、カバー層15が透明又は半透明であることによって、ゴルフボール1を観たときに、当該デザインを、カバー層15を介して、観ることができる。
また、インナー塗膜13は、ディンプル151の深さ以上の最大厚さを有するカバー層15によって覆われているため、仮にインナー塗膜13がカバー層15の外周側に形成された場合に比べて、ゴルフボール1の打撃時等の衝撃によってインナー塗膜13(塗膜)が剥離するのを効果的に抑制できる。また、仮にインナー塗膜13をカバー層15の外周側に形成する場合、ディンプル151の存在によってインナー塗膜13の形成位置が制限され得るが、本実施形態であれば、ディンプル151の位置に依らず、任意の位置にインナー塗膜13を形成することができるので、デザインの自由度を向上できる。
また、インナー層成型ステップ、インナー塗膜形成ステップ、及び、インナー塗膜除去ステップを介して、インナー層12の外表面のうち凹部121の表面121aのみを覆うインナー塗膜13を得ることにより、所期したとおりのデザインを簡単に実現することができる。
【0041】
以下、本発明のゴルフボールの製造方法に関し、さらなる詳細な説明、好適な構成、変形例等について、説明する。
【0042】
本明細書で説明する各例においては、インナー層成型用金型2のインナー層成型用キャビティ面23の凸状面231の突出高さL1(図1)が、5mm以下であると、好適であリ、3mmであると、さらに好適である。これにより、インナー層成型ステップにおいて、凸状面231の存在によってインナー層成型用キャビティ20内の材料の流れが不均一になるのを抑制できる。ひいては、例えば、コアボール10がインナー層成型用キャビティ20内で偏心するのを抑制できる。
なお、凸状面231の「突出高さL1」(図1)は、凸状面231の根元から凸状面231の突出先端までの距離を、凸状面231の根元に対し垂直に測ったものとする。凸状面231の「根元」とは、図1に破線で示すように、インナー層成型用キャビティ面23を凸状面231に向けて滑らかに延長させた仮想面を指す。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、インナー層12の凹部121の深さL1’(図3)が、5mm以下であると、好適であり、3mm以下であると、さらに好適である。
なお、凹部121の「深さL1’」(図3)は、凹部121の開口端面から凹部121の底面121abまでの距離を、凹部121の開口端面に対し垂直に測ったものとする。凹部121の「開口端面」とは、図3に破線で示すように、インナー層12の外表面を凹部121に向けて滑らかに延長させた仮想面を指す。
【0043】
本明細書で説明する各例においては、インナー層成型ステップ(図1図3)で用いられるインナー層成型用金型2のインナー層成型用キャビティ面23の凸状面231の突出高さL1(図1)が、0.5mm以上であると、好適である。これにより、インナー塗膜除去ステップ(図5図6)において、例えば、研磨機を用いてインナー層12の外周側を覆うインナー塗膜13を研磨する際に、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13までも研磨してしまうのを、抑制できる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、インナー層12の凹部121の深さL1’(図3)が、0.5mm以上であると、好適である。
【0044】
本明細書で説明する各例において、インナー塗膜13(ひいては、インナー塗膜用塗料)は、ポリウレタン、特に、ポリオールとポリイソシアネートとを用いた2液硬化型のポリウレタンを含んでいると、好適である。これにより、ゴルフボール1の打撃時等の衝撃によってカバー層15とインナー塗膜13とが擦れる際に、インナー塗膜13が剥離するのを、抑制できる。
【0045】
図5に示す例では、インナー層12の凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13の厚さL2(図5)が、インナー層12の凹部121の深さL1’(図5)よりも、小さい。
ただし、本明細書で説明する各例においては、図13に示す変形例のように、インナー層12の凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13の厚さL2(図13)が、インナー層12の凹部121の深さL1’(図13)と、同じであってもよい。
インナー層12の凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13の厚さL2は、10~15μmであると、好適である。
【0046】
本明細書で説明する各例においては、インナー層成型ステップ(図1図3)の後、かつ、インナー塗膜形成ステップ(図4)の前に、インナー層12の下処理をする、下処理ステップを行うと、好適である。
インナー層12の下処理としては、例えば、プラズマ処理及び/又はプライマー処理が好適である。これにより、インナー塗膜形成ステップで形成されるインナー塗膜13が、よりしっかりとインナー層12の外周側に載るようになる。ひいては、ゴルフボール1の打撃時等の衝撃によってカバー層15とインナー塗膜13とが擦れる際に、インナー塗膜13が剥離するのを、抑制できる。
ただし、下処理ステップは、行わなくてもよい。
【0047】
本明細書で説明する各例においては、図1に示すように、インナー層成型ステップ(図1図3)で用いられるインナー層成型用金型2が射出成型用金型である場合、インナー層成型用金型2において、インナー層成型用キャビティ面23の凸状面231が、ゲート25Gに対し径方向に重複していないと、好適である。これにより、凸状面231によって成型される凹部121(図3)の形状を、より確実に、所期したとおりとすることができる。
本明細書において、「径方向に重複」とは、径方向に投影して観たときに重なっていることを指す。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、図3に示すように、インナーボール14において、インナー層12の凹部121が、射出成型のインナー層ゲート跡125G’に対し径方向に重複していないと、好適である。
【0048】
本明細書で説明する各例においては、図1に示すように、インナー層成型ステップで用いられるインナー層成型用金型2において、インナー層成型用キャビティ面23の凸状面231が、ピン26P、28P(支持ピン26P及び/又はガス抜きピン28P)に対し径方向に重複していないと、好適である。これにより、凸状面231によって成型される凹部121(図3)の形状を、より確実に、所期したとおりとすることができる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、図3に示すように、インナーボール14において、インナー層12の凹部121が、インナー層ピン跡126P’、128P’(インナー層支持ピン跡126P’及び/又はインナー層ガス抜きピン跡128P’)に対し径方向に重複していないと、好適である。
【0049】
本明細書で説明する各例においては、インナー塗膜除去ステップ(図5図6)の後、かつ、カバー層成型ステップ(図7図9)の前に、インナーボール14をカバー層成型用金型3のカバー層成型用キャビティ(キャビティ)30内に位置決めする、カバー層成型用位置決めステップ(図7)を行うと、好適である。
カバー層成型用位置決めステップは、インナーボール用位置決め装置(図示せず)によって自動で行ってもよいし、あるいは、手動で行ってもよい。当該インナーボール用位置決め装置によってカバー層成型用位置決めステップを行う場合、当該インナーボール用位置決め装置は、画像処理によって、カバー層成型用キャビティ30に対するインナーボール14のインナー塗膜13の相対位置を検知し、その検知結果に基づいて、インナーボール14をカバー層成型用キャビティ30内に位置決めするようにされていると、好適である。
カバー層成型ステップ(図7図9)においてカバー層成型用金型3を用いて射出成型によりカバー層15を成型する場合、カバー層成型用位置決めステップでは、図7の例のように、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13がゲート35Gと径方向に対向しないように(すなわち、ゲート35Gに対し径方向に重複しないように)、インナーボール14をカバー層成型用金型3のカバー層成型用キャビティ30内に位置決めすると、好適である。これにより、カバー層成型ステップ(図7図9)において射出成型をする際に、ゲート35Gからカバー層成型用キャビティ30内に注入される高温かつ高圧の溶融材料が直接インナー塗膜13に掛かることによってインナー塗膜13が溶けて消えるのを、抑制できる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、図8に示すように、ゴルフボール1において、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13が、射出成型のカバー層ゲート跡155G’に対し径方向に重複していないことが、好適である。
なお、本明細書で説明する各例においては、図7の例のように、カバー層成型用位置決めステップにおいて、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13がピン36P、38P(支持ピン36P及び/又はガス抜きピン38P)と径方向に対向しないように(すなわち、ピン36P、38Pに対し径方向に重複しないように)、インナーボール14をカバー層成型用金型3のカバー層成型用キャビティ30内に位置決めしてもよい。これにより、ゴルフボール1(図8)を外部から観たときに、カバー層ピン跡156P’、158P’によって、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13が視認しにくくなるのを、抑制できる。あるいは、カバー層成型用位置決めステップでは、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13がピン36P、38P(支持ピン36P及び/又はガス抜きピン38P)と径方向に対向するように(すなわち、ピン36P、38Pに対し径方向に重複するように)、インナーボール14をカバー層成型用金型3のカバー層成型用キャビティ30内に位置決めしてもよい。
同様に、本明細書で説明する各例においては、図8に示すように、ゴルフボール1において、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13が、カバー層ピン跡156P’、158P’(カバー層支持ピン跡156P’及び/又はカバー層ガス抜きピン跡158P’)に対し径方向に重複していなくてもよい。あるいは、ゴルフボール1において、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13は、カバー層ピン跡156P’、158P’(カバー層支持ピン跡156P’及び/又はカバー層ガス抜きピン跡158P’)に対し径方向に重複していてもよい。
【0050】
本明細書で説明する各例においては、カバー層成型ステップ(図7図9)の後、かつ、印刷ステップ(図10)の前に、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13が印刷部材4の印刷部と径方向に対向しないように、ゴルフボール1を印刷部材4に対して位置決めする、印刷用位置決めステップ(図10)を行うと、好適である。これにより、印刷ステップ(図10)で得られるゴルフボール1(図10)を外部から観たときに、スタンプ部16によって、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13が視認しにくくなるのを、抑制できる。なお、印刷ステップがパッド印刷ステップである場合、印刷用位置決めステップにおいては、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13が、パッド印刷機の印刷パッドからなる印刷部材4の印刷部と径方向に対向しないように、ゴルフボール1を印刷部材4に対して位置決めする。一方、印刷ステップが熱転写印刷ステップである場合、印刷用位置決めステップにおいては、凹部121の表面121aを覆うインナー塗膜13が、熱転写フィルムからなる印刷部材の印刷部と径方向に対向しないように、ゴルフボール1を印刷部材に対して位置決めする。
印刷用位置決めステップは、ゴルフボール用位置決め装置(図示せず)によって自動で行ってもよいし、あるいは、手動で行ってもよい。当該ゴルフボール用位置決め装置によって印刷用位置決めステップを行う場合、当該ゴルフボール用位置決め装置は、画像処理によって、印刷部材の印刷部に対するゴルフボール1のインナー塗膜13の相対位置を検知し、その検知結果に基づいて、ゴルフボール1を印刷部材に対して位置決めするようにされていると、好適である。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、図10に示すように、ゴルフボール1において、インナー塗膜13は、スタンプ部16に対し径方向に重複していないと、好適である。
【0051】
本明細書で説明する各例において、コーティング層17(図11図12。ひいては、コーティング層用塗料。)は、艶消し粒子を含んでいると、好適である。これにより、コーティング層17を、艶や光沢のないマットな層とすることができる。それにより、ゴルフボール1は、図12に示すように、その外表面にディンプル151による凹凸を有しつつも、ゴルフボール1を外部から観たときに、あたかもディンプル151が存在しないかのように、ディンプル151がほとんど見えないようにすることができる。それにより、インナー塗膜13の視認性を向上でき、ひいては、デザイン性を向上できる。また、コーティング層17(ひいては、コーティング層用塗料)が艶消し粒子を含むことにより、コーティング層形成ステップ(図11図12)において、コーティング層用塗料がダレにくくなるので、コーティング層用塗料(ひいてはコーティング層17)がより正確にディンプル151の形状に沿うようになり、ひいては、ゴルフボール1の飛び性能を所期したとおりのものとすることができる。
艶消し粒子を含むコーティング層17(ひいては、コーティング層用塗料)としては、特に制限はないが、ウレタン系塗料を用いることが好適である。ゴルフボールの過酷な使用状況に耐えうる必要から、2液硬化型のウレタン塗料、特に、無黄変のウレタン塗料が好適に挙げられる。
2液硬化型のウレタン塗料の場合、主剤としては、飽和ポリエステルポリオール、アクリルポリオールやポリカーボネートポリオール等の各種ポリオールを用いるとともに、イソシアネートとしては、無黄変ポリイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体、又はこれらの混合物を用いることが好適である。
また、艶消し粒子としては、例えば、シリカ系、メラミン系、アクリル系等が挙げられる。具体的には、シリカ、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリスチレン、ポリアクリル酸ブチルなどが挙げられ、有機系のものでも無機系のものでもよいが、特に、シリカが好適に用いられる。
上記艶消し粒子の比表面積としては、消光性や塗布性の点から、BET比表面積で200~400m2/gであることが好適であり、より好ましくは250~350m2/gである。
また、上記艶消し粒子の平均一次粒子径は、スピン性能と消光性の点から、1.0~3.0μmであることが好適であり、より好ましくは2.0~2.8μmである。この値が3.0μmを超えると、ボール表面が粗くなるためスピン性能に悪影響を及ぼし該性能が低下するおそれがある。一方、この値が小さすぎると、消光性効果が小さくなるおそれがある。
上記の艶消し粒子の配合量は、コーティング層17の塗料組成物の主剤(樹脂成分と溶剤との合計量)100質量部に対して、好ましくは5~10質量部とすることができる。この配合量が多すぎると、塗料組成物の粘度が上がり塗布作業性が悪くなる傾向にあり、少なすぎると、消光性効果が小さくなるおそれがある。
上記コーティング層17の表面の平均粗さRaは、アプローチ時のボールのスピン量と消光性の両立の点から、0.5~1.0であることが好適である。このコーティング層17の表面の平均粗さRaは、JIS B0601(1994)の算術平均粗さを意味する。
また、上記コーティング層17の光沢度計による反射率は、入射角20°では5.0以下であり、入射角60°では20.0以下であり、且つ、入射角85°では40.0以下であることが好適である。このように、上記反射率が上記数値範囲を満たすように適正化したコーティング層17であれば艶消し効果を十分に付与できる。なお、上記の光沢度計による反射率の測定条件は、BYK社製「micro-TRI-gloss」を使用し、ABS樹脂製の板に20μmの厚さで塗布したものを測定したものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のゴルフボールの製造方法は、任意の種類のゴルフボールを製造するために利用できるものであり、例えば、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール、フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボール、シックスピースゴルフボール、糸巻きゴルフボール等を製造するために利用できるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 ゴルフボール
10 コアボール
12 インナー層
121 凹部
121a 凹部の表面
121ab 凹部の底面
121as 凹部の側面
125G’ インナー層ゲート跡(ゲート跡)
126P’ インナー層支持ピン跡(インナー層ピン跡)
128P’ インナー層ガス抜きピン跡(インナー層ピン跡)
13 インナー塗膜
14 インナーボール
15 カバー層
151 ディンプル
155G’ カバー層ゲート跡(ゲート跡)
156P’ カバー層支持ピン跡(カバー層ピン跡)
158P’ カバー層ガス抜きピン跡(カバー層ピン跡)
16 スタンプ部
17 コーティング層
2 インナー層成型用金型
20 インナー層成型用キャビティ(キャビティ)
21 第1インナー層成型用金型部分
21F 分割面
22 第2インナー層成型用金型部分
22F 分割面
23 インナー層成型用キャビティ面
231 凸状面
241 主ランナー
242 リング状ランナー
243 ノズル状ランナー
25G ゲート
26P 支持ピン(ピン)
27 ガス抜き穴
28P ガス抜きピン(ピン)
IAD インナー層成型用金型軸線方向
IPD インナー層成型用金型軸直方向
3 カバー層成型用金型
30 カバー層成型用キャビティ(キャビティ)
31 第1カバー層成型用金型部分
31F 分割面
32 第2カバー層成型用金型部分
32F 分割面
33 カバー層成型用キャビティ面
331 ディンプル成型用突起面
342 リング状ランナー
343 ノズル状ランナー
35G ゲート
36P 支持ピン(ピン)
37 ガス抜き穴
38P ガス抜きピン(ピン)
CAD カバー層成型用金型軸線方向
CPD カバー層成型用金型軸直方向
4 印刷部材
K インク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13