(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】印刷装置とその制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/393 20060101AFI20240610BHJP
B41J 21/00 20060101ALI20240610BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240610BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20240610BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240610BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20240610BHJP
H04N 1/60 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B41J29/393 101
B41J21/00 Z
G03G15/00 303
G03G15/01 Y
G06T1/00 510
H04N1/387 110
H04N1/60
(21)【出願番号】P 2020109000
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 喜貴
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-022956(JP,A)
【文献】特開2006-178096(JP,A)
【文献】特開2016-171448(JP,A)
【文献】特開2005-161650(JP,A)
【文献】米国特許第07486414(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0152776(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/393
B41J 21/00
G03G 15/00
G03G 15/01
G06T 1/00
H04N 1/387
H04N 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
印刷ジョブに基づいてシートに画像を印刷する印刷手段と、
シートに印刷された階調補正用のパッチを測色する測色手段と、
前記印刷手段により第一の色のパッチを所定サイズの第1シートに印刷させ、前記第一の色とは異なる色の第二の色のパッチを前記所定サイズの第2シートに印刷させる印刷制御手段と、
前記第1シートと前記第2シートに印刷された前記第一の色のパッチと前記第二の色のパッチを前記測色手段により測色した測色結果に基づいて補正情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記補正情報を用いて画像データを補正する補正手段と、を有し、
前記
補正手段は、
前記所定サイズの前記第1シートと前記所定サイズの前記第2シートが連続して印刷されることを条件に、前記第一の色のパッチと前記第二の色のパッチを測色した測色結果に基づいて補正情報を生成
することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記所定サイズは、A4サイズであることを特徴とする請求項
1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷制御手段は更に、前記第1シートに、前記第一の色と前記第二の色とは異なる色の第三の色のパッチを印刷させ、前記第2シートに、前記第一の色と前記第二の色と前記第三の色とは異なる色の第四の色のパッチを印刷させることを特徴とする請求項1
又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷ジョブは、異なる用紙サイズのデータが混在する用紙混在ジョブであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記用紙混在ジョブは、A3サイズのシートとA4サイズのシートが混在するジョブであることを特徴とする請求項
4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷制御手段は、前記印刷手段により前記印刷ジョブに基づいて画像が印刷される領域の外側の余白域に前記階調補正用のパッチを印刷させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
印刷装置を制御する制御方法であって、
印刷ジョブに基づいてシートに画像を印刷する印刷工程と、
シートに印刷された階調補正用のパッチを測色する測色工程と、
前記印刷工程で第一の色のパッチを所定サイズの第1シートに印刷させ、前記第一の色とは異なる色の第二の色のパッチを前記所定サイズの第2シートに印刷させる印刷制御工程と、
前記第1シートと前記第2シートに印刷された前記第一の色のパッチと前記第二の色のパッチを前記測色工程で測色した測色結果に基づいて補正情報を生成する生成工程と、
前記生成工程で生成された前記補正情報を用いて画像データを補正する補正工程と、を有し、
前記
補正工程は、
前記所定サイズの前記第1シートと前記所定サイズの前記第2シートが連続して印刷されることを条件に、前記第一の色のパッチと前記第二の色のパッチを測色した測色結果に基づいて補正情報を生成
することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
前記所定サイズは、A4サイズであることを特徴とする請求項
7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記印刷制御工程は更に、前記第1シートに、前記第一の色と前記第二の色とは異なる色の第三の色のパッチを印刷させ、前記第2シートに、前記第一の色と前記第二の色と前記第三の色とは異なる色の第四の色のパッチを印刷させることを特徴とする請求項
7に記載の制御方法。
【請求項10】
前記印刷ジョブは、異なる用紙サイズのデータが混在する用紙混在ジョブであることを特徴とする請求項
7に記載の制御方法。
【請求項11】
前記用紙混在ジョブは、A3サイズのシートとA4サイズのシートが混在するジョブであることを特徴とする請求項
10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記印刷制御工程は、前記印刷工程で前記印刷ジョブに基づいて画像が印刷される領域の外側の余白域に前記階調補正用のパッチを印刷させることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項13】
印刷装置に、
印刷ジョブに基づいてシートに画像を印刷する印刷工程と、
シートに印刷された階調補正用のパッチを測色する測色工程と、
前記印刷工程で第一の色のパッチを所定サイズの第1シートに印刷させ、前記第一の色とは異なる色の第二の色のパッチを前記所定サイズの第2シートに印刷させる印刷制御工程と、
前記第1シートと前記第2シートに印刷された前記第一の色のパッチと前記第二の色のパッチを前記測色工程で測色した測色結果に基づいて補正情報を生成する生成工程と、
前記生成工程で生成された前記補正情報を用いて画像データを補正する補正工程と、を実行させ、
前記
補正工
程は、
前記所定サイズの前記第1シートと前記所定サイズの前記第2シートが連続して印刷されることを条件に、前記第一の色のパッチと前記第二の色のパッチを測色した測色結果に基づいて補正情報を生成
することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置とその制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置は、情報処理端末や画像制御装置からネットワークを介して送られてきたPDL(Page Descritption Language)データをビットマップに展開し、その展開した画像データに従って用紙に画像を形成する。
【0003】
また用紙に画像を形成する画像形成装置の後段にインラインセンサを接続し、画像形成装置が形成した用紙上の画像をインラインセンサで読み取る印刷システムが知られている。このような印刷システムでは、画像形成装置が印刷物の余白に画像形成位置や画質を調整するために印刷したパッチをインラインセンサに読み取らせることで、画像形成装置における調整結果をリアルタイムで画像形成装置にフィードバックできる。
【0004】
しかしながら印刷物の余白は領域が限られているため、画像形成装置が調整に必要なパッチを正確に印刷できない場合がある。特許文献1では、画像形成位置の調整用パッチと画質調整用パッチとを同時に印刷しようとして互いのパッチが重なってしまった場合、画質調整用パッチの階調数を減らして、これらパッチが重ならないように印刷する技術が記載されている。
【0005】
例えば、必要なパッチを打つための領域が足りているサイズのシートと、領域が足りていないサイズのシートとが混在している場合がある。特許文献1には、領域が足りていないサイズのシートに対しては、階調数を減らしたパッチを印刷する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記従来技術では、階調数を減らしたパッチを印刷することにより画質の調整精度が低下するという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決することにある。
【0009】
本発明の目的は、階調補正用のパッチをシート印刷してリアルタイムで画質調整を行う場合に、パッチが1枚のシートに収まるサイズのシートと、1枚に収まらないシートとが混在している場合でも、正確な画質調整が行われる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る印刷装置は以下のような構成を備える。即ち、
印刷装置であって、
印刷ジョブに基づいてシートに画像を印刷する印刷手段と、
シートに印刷された階調補正用のパッチを測色する測色手段と、
前記印刷手段により第一の色のパッチを所定サイズの第1シートに印刷させ、前記第一の色とは異なる色の第二の色のパッチを前記所定サイズの第2シートに印刷させる印刷制御手段と、
前記第1シートと前記第2シートに印刷された前記第一の色のパッチと前記第二の色のパッチを前記測色手段により測色した測色結果に基づいて補正情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記補正情報を用いて画像データを補正する補正手段と、を有し、
前記補正手段は、前記所定サイズの前記第1シートと前記所定サイズの前記第2シートが連続して印刷されることを条件に、前記第一の色のパッチと前記第二の色のパッチを測色した測色結果に基づいて補正情報を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、階調補正用のパッチをシート印刷してリアルタイムで画質調整を行う場合に、パッチが1枚のシートに収まるサイズのシートと、1枚に収まらないシートとが混在している場合でも、正確な画質調整を行うことができるという効果がある。
【0012】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図1】本発明の実施形態に係る印刷システムの全体構成を示す模式図。
【
図2】実施形態係る印刷装置のハードウェア構成を説明するブロック図。
【
図3】実施形態に係る印刷装置のソフトウェア構成を説明する機能ブロック図。
【
図4】実施形態に係る印刷装置用いて余白利用型の印刷処理を実行するときの基本動作のシーケンスを説明する図。
【
図5】実施形態に係る印刷装置において基準情報と補正情報とをクリアする手順を説明する図。
【
図6】実施形態に係る印刷装置によるシート種類毎の基準情報と補正情報のクリア処理を説明するフローチャート(A)と、実施形態に係る印刷装置が、シート種類毎の基準情報と補正情報を登録する処理を説明するフローチャート(B)。
【
図7】実施形態に係る印刷装置の給紙段にシート種類を登録する画面例を示す図。
【
図8A】実施形態に係る印刷装置が有する管理テーブルの情報を説明する図。
【
図8B】実施形態に係る印刷装置が有する管理テーブルの情報を説明する図。
【
図9】シートがラージサイズシートかスモールサイズシートかを示すテーブルの一例を示す図。
【
図10】実施形態に係る印刷装置が出力する、シートサイズに応じたリアルタイム多階調補正を目的としたパッチの出力例を示す図。
【
図11】実施形態に係る印刷装置においてリアルタイム多階調補正の実施可否を判定する処理を説明するフローチャート。
【
図12】リアルタイム多階調補正用のパッチを印刷したシートの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これら複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る印刷システムの全体構成を示す模式図である。
【0016】
この印刷システムは、印刷装置101と情報処理端末102とがLAN(Local Area Network)ケーブル100を介して接続されている。印刷装置101は、情報処理端末102から受信した印刷ジョブを出力することが可能である。
【0017】
図2は、実施形態係る印刷装置101のハードウェア構成を説明するブロック図である。
【0018】
印刷装置101は、シート(用紙)に画像を印刷する印刷機能を有する。実施形態では、印刷装置101を例に説明するが、印刷装置にスキャナやFAX機能を含むMFP(Multi Function Peripheral)等の印刷装置であってもよい。また印刷装置が画像制御装置(プリンタドライバ)と画像出力装置(プリンタ)とに分かれ、画像出力装置と画像制御装置はビデオケーブル及びLANケーブルで接続される印刷装置であってもよい。また印刷装置が画像制御装置と画像出力装置に分かれ、画像出力装置と画像制御装置はLANケーブルのみで接続される印刷装置であってもよい。
【0019】
CPU(Central Processing Unit)201を含む制御部200は、印刷装置101全体の動作を制御する。CPU201は、ROM(Read Only Memory)202又はストレージ204に記憶されたプログラムをRAM203に展開し、その展開したプログラムを実行して印刷制御や読取制御などの各種制御を行う。ROM202は、CPU201で実行可能な制御プログラムやブートプログラム等を格納する。RAM(Random Access Memory)203は、CPU201の主記憶メモリであり、ワークエリア又は各種制御プログラムを展開するための一時記憶領域として用いられる。ストレージ204は、印刷データ、画像データ、各種プログラム、及び各種設定情報を記憶する。実施形態ではストレージ204としてHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置を想定しているが、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを用いても良い。尚、実施形態に係る印刷装置101では、1つのCPU201が1つのメモリ(RAM203)を用いて後述するフローチャートに示す各処理を実行するものとするが、他の様態であっても構わない。例えば複数のCPU、RAM、ROM、及びストレージを協働させて、後述するフローチャートに示す各処理を実行しても良い。またASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェア回路を用いて一部の処理を実行するようにしてもよい。
【0020】
操作部I/F(インタフェース)205は、操作部206と制御部200とを接続する。操作部206には、タッチパネル機能を有する表示部や各種ハードキーなどが備えられ、情報を表示する表示部や、ユーザの指示を受け付ける受付部として機能する。画像処理部207は、通信部I/F208を介して受信した印刷ジョブを展開して印刷に用いる画像データを生成するRIP(Raster Image Processor)の機能を備えている。また画像処理部207は、印刷ジョブを展開して得られた画像データの解像度変換や補正処理を行うこともできる。尚、実施形態では、画像処理部207がハードウェア回路(ASIC又はFPGAなど)で実現されることを想定しているが、これに限定されるものではない。例えば、印刷装置101が画像処理用途向けのプロセッサを更に備え、そのプロセッサが画像処理プログラムを実行することにより、画像処理や、印刷データへの展開処理を実現してもよい。この場合、このプロセッサとCPU201とが協働して後述するフローチャートを実現するものとする。更には、画像処理を行うためのプログラムをCPU201が実行し、画像処理や印刷データの展開処理を行うように構成することもできる。また、これらのいずれかの組み合わせにより画像処理を行うようにしてもよい。
【0021】
印刷部(プリンタエンジン)209は、画像処理部207により生成された画像データに基づいて給紙カセット(不図示)から給送されたシートに画像を印刷する。尚、印刷部209の印刷方式は、電子写真方式であってもよいし、インクジェット方式であってもよい。また熱転写方式などその他の印刷方式を適用することもできる。測色部210は、印刷部209のシート搬送路の下流側に位置していて、印刷されたシートに形成された階調補正用マークの各色の階調パッチの色をCISカラーセンサで測定し、測色データを取得する。制御部200は、通信部I/F208を介してLAN100に接続される。通信部I/F208は、LAN100上の情報処理端末102からの印刷要求(印刷ジョブ)の受信を行う。尚、実施形態では、印刷システムの一例を
図1で説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも1つ以上の情報処理端末と印刷装置とがネットワークを介して通信可能に接続されていればよい。またネットワークは無線であっても有線であっても良い。
【0022】
図3は、実施形態に係る印刷装置101のソフトウェア構成を説明する機能ブロック図である。尚、
図3に示す各部の機能は、前述のCPU201がRAM203に展開したプログラムを実行することにより実現される。
【0023】
印刷ジョブ生成部301は、ジョブが投入されると印刷ジョブを生成し、ジョブ制御部303に登録する。データ受信制御部302は、通信部I/F208を介して情報処理端末102から送信されたPDLデータを受信する。ジョブ制御部303は、登録された印刷ジョブに含まれる全ページについて、1ページ目から順に処理開始をページ制御部304に伝えてページ処理を開始させる。そしてジョブ制御部303は、次ページの処理開始可能をページ制御部304から通知されると、次のページの処理開始をページ制御部304に伝えることを繰り返す。そして、全ページについてページ制御部304から処理終了の通知を受けると、ジョブ終了を印刷ジョブ生成部301に通知する。ページ制御部304は、ジョブ制御部303からのページ処理開始の通知を受けて、各ページの処理を制御する。PDL解析部305は、受信したPDLデータを解析して中間データに変換する。RIP制御部306は、中間データをラスタライズしてビットマップ形式の画像データに変換する。画像生成部307は、生成されたビットマップ形式の画像データに対して、印刷に使用するシートの補正情報を反映させて、補正済の印刷用の画像データ(印刷画像データ)を生成する。そして、その印刷画像データをエンジン制御部308のパッチ合成部309に転送する。画像生成部307は、画像処理部207の制御を行う。
【0024】
エンジン制御部308は、パッチ合成部309、補正情報保存部310、基準情報保存部311、測色センサ制御部312、給紙段管理部313、給紙制御部314、印刷制御部315を含む。測色センサ制御部312は、測色部210の制御を行う。またエンジン制御部308は、パッチ合成部309、補正情報保存部310、基準情報保存部311、給紙段管理部313、給紙制御部314、印刷制御部315は、印刷部209の制御を行う。
【0025】
パッチ合成部309は、画像生成部307から受け取った補正済の印刷画像データに基づき形成される画像に加えて階調補正用マーク(パッチ)が形成されるように、印刷画像データに階調補正用マーク情報(階調パッチ)を合成する。そして、印刷制御部315に合成済の画像データの印刷を指示する。補正情報保存部310は、基準情報保存部311が保持する基準情報と、測色センサ制御部312が取得した測色データとを比較して求めた補正情報を、給紙段にセットされているシートの種類毎に保持する。ここで基準情報とは、後述する測色センサ制御部312から通知された測色結果、給紙段、シートサイズ、シートタイプ、など)である。補正情報とは、保存されていた基準値と、測色センサ制御部312から通知された測色結果から算出されたものである。
【0026】
基準情報保存部311は、測色センサ制御部312により取得された測色データを基に生成された基準情報を、給紙段にセットされているシート種類毎に保持する。測色センサ制御部312は、シート上に形成された階調補正用マークを測定するよう測色部210を制御して測色結果を取得する。
【0027】
給紙段管理部313は、印刷装置101が備える全ての給紙段にセットされているシートのサイズや種類の情報を管理する。またUI制御部316からのシートの登録要求に応じて、基準情報保存部311が保持している、交換のため取り除かれるシート種類に対する基準情報をクリアする。更に、補正情報保存部310が、交換のため取り除かれるシート種類に対する補正情報を保持している場合に、その補正情報もクリアする。給紙制御部314は、印刷ジョブの指示に応じた給紙段を制御して、給紙段に収容しているシートを搬送し、供給する。印刷制御部315は、階調パッチ合成済の印刷画像データに基づいて、給紙制御部314により供給されたシート上に印刷し、排紙する。実施形態においては、必要に応じて、階調補正用マーク情報(階調パッチ)が付加された画像データに基づきシート上に画像が形成される。
【0028】
UI制御部316は、ユーザが操作部206を操作して給紙段にシートの情報が設定されると、給紙段管理部313に対してシートの登録を要求する。また、登録が完了したシートの情報を操作部206に表示する。UI制御部316は、操作部206の制御を行う。
【0029】
続いて、階調補正用の測色パッチを印刷ジョブの出力紙上に形成し、測色センサでリアルタイムに計測し、補正値を継続的に後続ページにフィードバックする印刷処理の基本シーケンスを説明する。以後、この制御をリアルタイム多階調補正と呼ぶことにする。
【0030】
リアルタイムの多階調補正には、出力シートの余白を利用してパッチを印刷する余白利用型と、出力シートの余白が利用できない場合に、専用のシートを挿入してパッチを印刷するチャート挿入型の2種類がある。余白利用型は、ユーザが投入した印刷データの余白に毎ページにパッチが印刷されフィードバック補正が行われる。これに対して、チャート挿入型は、予め印刷装置101に設定した挿入間隔でパッチを印刷した専用のシートを挿入してフィードバック補正が行われる。リアルタイム多階調補正を、余白利用型で実行するか、チャート挿入型で実行するかは、ユーザが印刷ジョブ投入時に印刷装置101に対して指示する。
【0031】
図4は、実施形態に係る印刷装置101用いて余白利用型の印刷処理を実行するときの基本動作のシーケンスを説明する図である。このシーケンスは、印刷装置101のCPU201がROM202に記憶されたプログラムをRAM203に展開して実行することで実現される。
【0032】
印刷ジョブ生成部301は、通信部I/F208から受信したジョブに従って印刷ジョブを生成する。そしてS401で印刷ジョブ生成部301は、その生成した印刷ジョブをジョブ制御部303に登録する。これによりジョブ制御部303はS403で、その登録された印刷ジョブの実行順を決定し順次処理を開始する。こうしてジョブ制御部303が処理を開始すると、ページ制御部304にNページ目の処理の開始を通知する。ページ制御部304は、ジョブ制御部303からのNページ目の処理開始を受信するとS404で、そのページに指定されたシートサイズとシート種類を、どの給紙段から給紙するかを給紙段管理部313に問い合わせる。これにより給紙段管理部313はS405で、指定されたシートサイズとシート種類とに基づいて、どの給紙段から給紙するかを決定し、その結果をページ制御部304に返す。
【0033】
ページ制御部304はS406で、給紙段管理部313が決定した給紙段からの給紙を給紙制御部314へ指示する。これにより給紙制御部314はS407で、ページ制御部304からの給紙指示に従い、指示された給紙段からの給紙を行う。そしてS408で、その給紙結果をページ制御部304に通知する。ページ制御部304は、給紙制御部314から正常の給紙結果を受けるとS409で、ジョブ制御部308に次ページの処理開始が可能になったことを通知する。またページ制御部304は、給紙制御部314から正常の給紙結果を受けるとS410で、画像生成部307に印刷画像データの生成と、その画像データの転送の指示を行う。このとき、ページ制御部304から画像生成部307に対して、給紙した給紙段、シートサイズ、シートタイプが通知される。
【0034】
画像生成部307は、印刷画像データの生成とその画像データの転送の指示を受けると、その通知されたシート情報等を基にS411で、補正情報保存部310に補正情報を要求する。これにより補正情報保存部310はS412で、その渡された情報に該当する補正情報がRAM203に保存されているか検索する。そして補正情報保存部310は該当する補正情報を検出するとS413で、画像生成部307に補正情報を通知する。これにより画像生成部307はS414で、画像情報保存部310から通知された補正情報を使用して印刷画像データを生成する。
【0035】
一方、補正情報保存部310は、画像生成部307から渡された情報に該当する補正情報を検出できなかった場合はS415で、補正情報が無いことを画像生成部307に通知する。補正情報が無い場合はS416で画像生成部307は、補正無しの印刷画像データを生成する。そして画像生成部307はS417で、その生成した印刷画像データと、ページ制御部304から通知された給紙段、シートサイズ、シートタイプ情報をパッチ合成部309に転送する。
【0036】
パッチ合成部309はS418で、画像生成部307により転送された印刷画像データの余白に階調調整用マーク情報(階調パッチ)を合成する。次にS419でパッチ合成部309は、生成した合成画像データと画像生成部から通知された給紙段、シートサイズ、シートタイプ等の情報を印刷制御部315に送信して印刷を指示する。こうして印刷制御部315はS420で、受け取った画像データ(階調調整用マーク情報が合成済の画像データ)を、給紙制御部314により供給されたシートに印刷する。こうして印刷が完了すると印刷制御部315はS421で、ページ制御部304と測色センサ制御部312に印刷完了(排紙完了)を通知する。この印刷完了(排紙完了)の通知には、給紙段、シートサイズ、シートタイプなどの情報が付加される。こうしてページ制御部304は印刷制御部315からの印刷完了(排紙完了)通知を受信するとS422で、ジョブ制御部303にNページ目の処理の完了を通知する。
【0037】
一方、測色センサ制御部312は、印刷制御部315からの印刷完了(排紙完了)通知を受信するとS423で、S420で印刷された階調調整用マーク情報(階調パッチ)の測色を行う。そしてS424で、測色結果と、印刷制御部315から通知される給紙段、シートサイズ、シートタイプなどの情報とを対応付けた情報を基準情報保存部311に通知する。
【0038】
基準情報保存部311はS425で、測色センサ制御部312から通知された情報に該当する基準値がRAM203に保存されているか検索する。そして、その通知された情報に該当する基準値が保存されている場合はS426で、保存されていた基準値と測色センサ制御部312から通知された測色結果から補正値を算出する。次にS427で基準値情報保存部311は、その算出した補正値を補正情報保存部310に通知する。こうして補正情報保存部310はS428で、基準値情報保存部311から通知された内容(補正値)を補正情報として保存する。一方、S425で、基準値が保存されていない場合は基準値情報保存部311はS429で、測色センサ制御部312から通知された情報(測色結果、給紙段、シートサイズ、シートタイプ、など)を基準値(初期情報)としてRAM203に保存する。
【0039】
尚、ここでS403~S425の処理は、ジョブ制御部303に登録された印刷ジョブの全ページに対して実行されるという意味でLOOP表記している。S403で示す各ページに対する処理開始は、S409の次ページ処理開始が可能であることを示す通知を受信すると発行することが可能となる。
【0040】
こうしてジョブ制御部303は、Nページ目の処理の完了を受信するとS430で、Nページ目が印刷ジョブの最終ページかどうかを判定する。そしてジョブ制御部303は、最終ページの完了を受信したと判定するとS431で、印刷ジョブ生成部301にジョブの終了を通知する。
【0041】
図5は、実施形態に係る印刷装置101において基準情報と補正情報とをクリアする手順を説明する図である。この手順で示された処理は、印刷装置101のCPU201がROM202に記憶されたプログラムをRAM203に展開して実行することで実現される。
【0042】
印刷装置101がシートに画像を形成する際、シートの種類によって画像を形成するための特性が異なるため、印刷装置101が正しく階調補正を行うためには、シートの種類毎に基準情報を保持する必要がある。印刷装置101は数多くの種類のシートを利用できるが、実際に使用するシートは給紙段にセットされている必要があるため、基準情報保存部311は給紙段にセットされているシートの種類の基準情報のみを保持する。そのため、ユーザが印刷装置101の給紙段に新たな種類のシートをセットする際、交換のために取り除かれるシートの種類に対応する基準情報と補正情報をクリアする。
【0043】
S501でユーザは、印刷装置101の操作部206に表示されるUI画面を操作し、給紙段の設定画面を選択する。S502で印刷装置101のUI制御部316が、ユーザからの操作を受け付けると、給紙段管理部313から印刷装置101が備えている全ての給紙段にセットされているシートのサイズとシートの種類の情報を取得する。そしてS503でUI制御部316は、S502で取得した情報を操作部206のUI画面に表示する。
【0044】
図7(A)は、このときに表示されるUI画面700の一例を示す図である。
【0045】
S504でユーザは、このUI画面700を介して、シートを変更したい給紙段を選択する。
図7(A)において、選択ボタン701~704は、印刷装置101の給紙段に対応している。S505で印刷装置101のUI制御部316は、ユーザからの操作を受け付けると、選択された選択ボタンに対応する給紙段に設定可能なシートの種類のリストをUI画面に表示する。
図7(A)では、選択ボタン701が選択されている。
【0046】
図7(B)は、選択ボタンに対応する給紙段に設定可能なシートの種類の一覧710の表示例を示す図である。
【0047】
S506でユーザは、シートの種類の一覧710から、変更したいシートの種類を選択する。これによりS507で印刷装置101のUI制御部316は、ユーザからの操作を受け付けると給紙段管理部313に対して、ユーザが選択した給紙段とシートの種類の登録を要求する。
図7の例では、選択ボタン701に対応する給紙段のシートを参照番号707で示す「普通紙3」に変更するように要求する。これによりS508で給紙段管理部313は、基準情報保存部311と補正情報保存部310に保存されている情報の更新を行う。この更新処理の詳細は
図6を参照して後述する。尚、
図7の画面に関しては、
図5のシーケンスを参照して、より詳しく後述する。
【0048】
図6(A)のフローチャートに基づいて給紙段管理部313が基準情報と補正情報のクリアが必要と判定するとS509,S510でそれぞれ基準情報と補正情報のクリア処理を行う。S509で給紙段管理部313は、基準情報保存部311に保存されていた交換のための取り除かれるシートの種類に対する基準情報をクリアする。更にS510で給紙段管理部313は、補正情報保存部310に、交換のための取り除かれるシートの種類に対する補正情報が存在するか判定し、存在する場合はその補正情報をクリアする。こうして給紙段管理部313は、S508の一連の処理が完了するとS511で、ユーザにより指定されたシートの種類の登録処理(選択された給紙段にセットされるシートの情報の更新)を行う。そしてS512で給紙段管理部313は、UI制御部316に対して登録完了を通知する。こうしてS513でUI制御部316は、登録が完了したシートの種類の情報に従ってUI画面を更新する。
【0049】
図6(A)は、実施形態に係る印刷装置101によるシート種類毎の基準情報と補正情報のクリア処理を説明するフローチャートである。また
図6(B)は、実施形態に係る印刷装置101が、シート種類毎の基準情報と補正情報を登録する処理を説明するフローチャートである。これらいずれのフローチャートで示す処理も、印刷装置101のCPU201がROM202に記憶されたプログラムをRAM203に展開して実行することで実現される。
【0050】
まず
図6(A)は、上述した
図5のS507で、ユーザが選択した給紙段とシート種類の登録を要求されたときに、S509,S510でCPU201が給紙
段管理部313として機能して基準情報と補正情報をクリアする処理を説明するフローチャートである。
【0051】
S601でCPU201は、ユーザが選択した給紙段と、シートの種類の登録要求を受ける。次にS602に進みCPU201は、その登録要求においてシートの種類の変更があるか否かを判定し、変更がなければ(同一シート種類の再登録の場合)この処理を終了する。一方、シートの種類が変更されるときはS603へ進みCPU201は、S601で変更対象の給紙段にセットされていた以前のシートと同一種類のシートが他の給紙段に設定されているか判定する。ここで、以前のシートと同一種類のシートが他の給紙段にあると判定したときはS605へ進み、そうでないときはS604に進む。S604でCPU201は、全ての給紙段で変更前の種類のシートを使用しなくなるため、そのシートの基準値及び補正値情報(後述するTBL881(
図8B(B)),TBL883(
図8B(C)))を基準情報保存部311と補正情報保存部31
0から削除してS605に進む。S605でCPU201は、基準値管理テーブル、補正値管理テーブルから、設定変更する給紙段のシートの種類情報のレコードを削除する。ここでレコードとは、
図8Bを参照して後述するシート種類891、対象給紙段892、基準値(1/2速)893、基準値(1/1速)894、生成ページID895、開始日時896の各項目を有する。
【0052】
図6(B)は、上述した
図4のS424で測色センサ制御部312から測色結果の通知を受けたときの、基準情報保存部311及び補正情報保存部310による処理を説明するフローチャートである。
【0053】
S620でCPU201は基準情報保存部311として機能し、測色センサ制御部312から測色結果を取得する。次にS621に進みCPU201は基準情報保存部311として機能し、基準値管理テーブルに測色センサ制御部312から通知された測色結果に紐づく給紙段のレコードが登録されているか否か判定する。ここで登録されていないと判定したときはS622へ、登録されていると判定したときはS626へ進む。
【0054】
S622でCPU201は基準情報保存部311として機能し、基準値管理テーブルを参照して、測色センサ制御部312から通知された測色結果に紐づくシートの種類のレコードが他の給紙段で登録されているか否か判定する。ここで登録されていないと判定したときはS623へ進む。S623でCPU201は基準情報保存部311として機能し、測色センサ制御部312から通知された測色結果を基準値(後述の
図8B(B)のようにTBL881)として保存する。そしてS624に進みCPU201は基準情報保存部311として機能し、測色センサ制御部312から通知された測色結果に紐づく給紙段のレコードを基準値管理テーブルに追加し、S623で保存した基準値を参照するリンク処理を行って、この処理を終了する。
【0055】
一方、S622でCPU201は、測色センサ制御部312から通知された測色結果に紐づくシートの種類のレコードが他の給紙段で登録されていると判定したときはS625に進む。S625でCPU201は基準情報保存部311において、測色センサ制御部312から通知された測色結果に紐づく給紙段のレコードとして、既に基準値管理テーブルに登録されていた同一のシート種類のレコードを基準値管理テーブルにコピーする。これによりそのシートの種類の基準値が保存されたことになる。次に626に進みCPU201は基準情報保存部311として機能し、測定値と基準値とから補正値を算出し、算出した補正値(後述の
図8B(C)のようにTBL883)を補正情報保存部310に通知する。そしてS627でCPU201は補正情報保存部310として機能し、基準情報保存部311から通知された内容を補正情報として保存して、この処理を終了する。
【0056】
図7は、実施形態に係る印刷装置101の給紙段にシート種類を登録する画面例を示す図である。以下、前述の
図5のシーケンスの処理を参照しながら、
図7の画面を説明する。
【0057】
図7(A)は、UI制御部316が表示する給紙段の設定画面を示す。
図5のS501でユーザが給紙段の設定画面を呼び出すと、UI制御部316はS502で、給紙段管理部313に現在の給紙段の設定情報を問い合わせる。そしてS503で、その結果がUI画面700に表示される。
【0058】
ユーザはUI画面700を介して、シートの種類を設定する給紙段を選択する。実施形態では、印刷装置101が有する4つの給紙段に対応して選択ボタン701~704が割り当てられる。ユーザは特定の給紙段を選択後、S504で、シートの種類を設定する設定ボタン705を押下すると、
図7(B)のシート種類の設定画面710が表示される(S505)。尚、
図7(A)の時点では、設定ボタン705に対応する給紙段には、A4サイズの「普通紙1」が設定されている。
【0059】
シート種類の
設定画面710では、UI画面700で選択した給紙段にセットした/セットするシート種類に一致するものを1つ選択する。
図7(B)の例では、ここでは、選択ボタン701に対応する給紙段のシートの種類(普通紙1)を「普通紙3」に変更するように指示している(S506)。そして
図7(B)のOKボタン708が押下されるとUI画面700に戻る。こうしてユーザは、所望の給紙段のシートの種類が変更できたことを確認するとOKボタン706を押下する。これによりUI制御部316は、ユーザによるシートの設定を給紙段管理部313に通知して(S507)、その登録要求を行う。
【0060】
図8A、
図8Bは、実施形態に係る印刷装置101が有する管理テーブルの情報を説明する図である。この管理テーブルは、階調補正用の階調補正用マーク(階調パッチ)の印刷位置、印刷したカラーパッチを測定するカラーセンサ、カラーセンサからの信号値やその信号値から導かれる補正値を保持している。
【0061】
図8A(A)は、実施形態に係るリアルタイム階調補正を目的とした階調補正用マーク(階調パッチ)の出力例を説明する図である。
【0062】
リアルタイムに多階調補正を行うために必要なパッチは、印刷シート800の内側で、かつ印刷シート800の印刷保証領域801の外側で、且つ両側に定義された余白域に印刷される。印刷保証領域801は、最終成果物となる部分であり、ユーザ画像の印刷を保証する領域である。一方、印刷保証領域801の外は画像形成可能なエリアもあるが、最終成果物としては断裁・除去されることを前提としている。尚、POD機では画質調整に必要な各種パッチや検品に必要な情報の印刷に使用される。
【0063】
リアルタイム階調補正用のパッチは、印刷保証領域801の外側に並べて印刷され、そのパッチを印刷面側のセンサ861,862が読み取る。このため、各色のパッチは、これらセンサ861,862の位置に合わせて搬送方向に並行して配置される。印刷シート800には、シアンパッチ810、マゼンタパッチ850、イエローパッチ830、ブラックパッチ840が印刷される。これら各色のパッチのそれぞれは、各色のトナーにより濃度が10%刻みで10個のパッチを含み、4色で合計40個のパッチが印刷される。
【0064】
例えば、シアンのカラーパッチ810では、最も左側のパッチの濃度は100%、そして右側に向かって10%(所定濃度単位)刻みで濃度が低くなり、最も右側のパッチは濃度10%である。マゼンタ、イエロー、ブラックの各色も同じ10個で1セットの構成である。4色分の基準値及び測定値のデータが揃って初めて階調補正に必要なフィードバック情報が生成可能となる。階調補正パッチは、パッチ合成部309が画像生成部307の生成画像に合成する。
【0065】
図8A(B)は、
図8A(A)のパッチを印刷する際の印刷装置101の搬送パスを横から見た断面図である。印刷シート800に対して、CMYK各色の現像機871~874でトナーを転写した後、定着器875で定着処理を実行する。各色のパッチ810,830,840,850を搬送方向の左右両端に設置されたカラーセンサ861,862により読み取る。カラーセンサ861,862は印刷面側に設置されている。
【0066】
図8B(A)は、カラーセンサ861,862がスキャンしたCMYKの濃度情報に基づき生成される、基準値、測定値、補正値の一例を示す図である。
【0067】
図8A(A)の印刷シート800には、CMKY毎に10個、合計40個のパッチが印刷されるため、これをカラーセンサ861,862で読みとると40個の測定値が得られる。実施形態では、
測色センサ制御部312はパッチ濃度を1024段階で数値化して保存する。
測色センサ制御部312から通知された測色結果は、基準情報保存部311において給紙段にセットされたシートの種類毎に基準値として保持される。ここで測色結果はシートの種類ごとに管理する必要がある。
測色センサ制御部312から通知されたシートの測色結果が基準情報保存部311に未登録の種類のシートである場合は、40点の測色結果を新しい「基準値」881(
図8B(A))として保存する。
【0068】
一方、
測色センサ制御部312から通知されたシートの測色結果が基準情報保存部311に登録済の種類のシートである場合は、測色結果を新しい「測定値」882として扱い、基準値と測定値の差分から補正値883(
図8B(A))を算出する。これら補正値は、補正情報保存部310に保存される。尚、実施形態では、補正値を保存するが、測定値を保存しておき、使用する都度、基準値と測定値との差分から補正値を算出してもよい。
【0069】
図8B(B)は、基準情報保存部311が基準値を管理する管理テーブルの一例を示す図である。この管理テーブルのレコード情報は、シート種類891、対象給紙段892、基準値(1/2速)893、基準値(1/1速)894、生成ページID895、開始日時896の各項目を有している。この管理テーブルの基準値は、「給紙段1」に「普通紙3」がセットされ、開始日時「2019/07/18の10:04:06」に電源が投入されてから累積で60014ページ目の印刷処理が実行されている。このとき「給紙段1」から「普通紙3」を「1/1速」で給紙し、その印刷結果を測色・基準値として登録している。尚、「普通紙3」が「給紙段1」から除去された場合、そのレコード情報を削除する。
【0070】
図8B(C)は、補正情報保存部310が補正値を管理するテーブルの一例を示す図である。このテーブルの基本構成は、基準値が補正値に置き換わる以外、
図8B(B)の管理テーブルと同一である。ここでもシートが対象給紙段897から除去されると、そのシートのレコード情報は削除される。
【0071】
図9は、シートがラージサイズシートかスモールサイズシートかを示すテーブル901の一例を示す図である。
【0072】
例えば、A3のシートは、ラージサイズ902であり、A4のシートはスモールサイズ903であることを示している。このテーブル901は、後述する階調パッチを合成する処理において、各シートがスモールサイズのシートであるかラージサイズのシートであるかの判定に利用される。
【0073】
図10は、実施形態に係る印刷装置101が出力する、シートサイズに応じたリアルタイム多階調補正を目的としたパッチの出力例を示す図である。
【0074】
インラインセンサが正確にパッチを読み取るために、
図8A(A)に示すシアンパッチ810、マゼンタパッチ850、イエローパッチ830、ブラックパッチ840の各パッチのサイズは予め決められている。例えば、1パッチの搬送方向のサイズを11mmとした場合、10%刻みトナー単色の濃度の10個分のパッチを連続で印刷するためには、11mm×10で110mmの長さが必要となる。更に、
図8A(B)のように搬送方向に沿ってシアンパッチ810とイエローパッチ830を配置するとなると、搬送方向に220mm以上の長さが必要となる。そのため印刷装置101は、シートサイズの搬送方向の長さに応じてパッチの出力方法を切り替えて印刷を行う必要がある。
【0075】
図10(A)は、必要なパッチを打つための領域が足りているサイズのシートの場合の出力例を示す図である。この場合は
図8A(A)と同様に、印刷シート1000にシアンパッチ1002、マゼンダパッチ1005、イエローパッチ1003、ブラックパッチ1004の各トナー単色の濃度を10%刻みで10個(10段階)ずつ、合計40個のパッチを印刷することができる。
【0076】
図10(B)は、必要なパッチを打つための領域が足りていないサイズのシートの場合の出力例を示す図である。この場合は、2枚の印刷シート1010と印刷シート1020にパッチが印刷される。印刷シート1010には、シアンパッチ1012、ブラックパッチ1013の各トナー単色の濃度を10%刻みで10個(10段階)ずつ合計20個のパッチが印刷される。また印刷シート1020には、イエローパッチ1022、マゼンダパッチ1023の各トナー単色の濃度を10%刻みで10個(10段階)ずつ、合計20個のパッチが印刷される。
【0077】
画質調整用のパッチは、シアン・マゼンダ・イエロー・ブラックのような色毎のパッチであり、調整を行うためには全色のパッチのデータを揃える必要がある。必要なパッチを印刷するための領域が十分に用意できるサイズのシートの場合は、1枚のシートにシアン・マゼンダ・イエロー・ブラックの全色のパッチデータを印刷できるため、1枚のシートだけで画質調整を行うことができる。一方、必要なパッチを印刷する領域が足りていない小さいサイズのシートの場合は、例えば1枚目のシートにシアン・マゼンダを、2枚目のシートにイエロー・ブラックのパッチが印刷される。この場合は、これら2枚目のシートが揃わなければ調整を行うことができない。
【0078】
ユーザが投入する画像データは様々であり、例えば、パッチが1枚に収まるサイズのシートと、パッチを複数枚のシートに分割して印刷しなければならないサイズのシートの両方から構成されるデータがある。
【0079】
図12は、リアルタイム多階調補正用のパッチを印刷したシートの一例を示す図である。例えば
図12(A)、
図12(B)のように全てのシートサイズが同じデータもある。また
図12(C)のように、複数のサイズのシートが混在したデータもある。
図12(B)のデータを出力する場合は、シート1211~1214はそれぞれ、パッチが1枚のシートに収まるサイズであるため、1枚のシートを読み込めばそのまま調整は開始できる。
【0080】
一方、
図12(A)のように、シート1201~1207のそれぞれは、全てのパッチが1枚のシートに収まるサイズでないため、これらパッチを2枚のシートに分割して印刷しなければならない。この場合は、分割されたパッチをすべて読み込む、即ち、2枚のシートのパッチを読み込むことによって調整を開始できる。
【0081】
これに対して
図12(C)のように、パッチが1枚のシートに収まるサイズのシート1221と1223と、パッチを複数枚のシートに分割して印刷しなければならないサイズのシート1222,1224~1227が組み合わさった場合がある。この場合は、1枚目のシートのパッチを検出した後に、2枚目のシート1222の後、次の2番目のシート1224を読み取るまで補正を開始できないという課題がある。このように1組のパッチを含む先行するシートと後続のシートとの間隔が空いてしまうと、後続のパッチを印刷するときの印刷装置の状態が変わってしまうため、正確でないパッチを使った画質調整が行われてしまう可能性がある。
【0082】
図11は、実施形態に係る印刷装置101においてリアルタイム多階調補正の実施可否を判定する処理を説明するフローチャートである。
図11では、読み込む必要があるパッチが4種類のケースを例に説明を行う。このフローチャートで示す各動作は、CPU201がROM202に記憶されたプログラムをRAM203に展開して実行することで実現される。ここでは、処理を実現するコンポーネントを明確にするためコンポーネント名を主語として説明する。
【0083】
まずS1101でCPU201は、受信したPDLデータを出力(印刷)した測色対象のシートに対して測色センサ制御部312で読み取りが完了したか、即ち、全てのシートの確認が終了した否か判定する。ここで全シートの確認が終わっていないと判定した場合はS1102に処理を進め、全シートの確認が終わっていると判定した場合は、この処理を終了する。S1102でCPU201は、測色センサ制御部312を使って、受信したPDLデータを印刷したシートからパッチを読み込む。そしてS1103に処理を進めCPU201は、エンジン制御部308からS1102で読み込んだシートのシートサイズを取得する。そしてS1104に処理を進めてCPU201は、読み込んだシートのサイズがラージ系かスモール系か判定する。ここでのラージ系かスモール系かの判定は、
図9に示すテーブルに従う。ここで読み込んだシートが、ラージ系シートに分類されると判定するとS1105に処理を進める。一方、読み込んだシートがスモール系シートに分類されると判定するとS1108に処理を進める。
【0084】
S1105でCPU201は、読み込んだパッチの情報を一時格納する保持部(RAM203或いはストレージ204に設けられている)の初期化を行う。そしてS1106に処理を進めCPU201は、その保持部に読み込んだパッチの情報を格納する。ここでは4つのパッチを読み込んだため、読み込んだパッチの情報を測定値として、
図8B(A)の補正値883の算出に使用する。そしてS1107に処理を進めCPU201は、格納したパッチ情報を測色センサ制御部312が取得した測色データとして決定する。そしてCPU201はS1102に処理を進める。この場合は、1枚のシートのパッチを読み取るだけで、必要なパッチの情報が得られたことになる。
【0085】
S1108でCPU201は、スモール系シートに分類されるシートであるため、2枚のスモール系シート上に配置されたパッチを読み取る必要がある。よって、CPU201はS1108で1つ前のシートのサイズ情報を判定する。一つ前に読み込んだシートがラージ系シートか、或いはシートが存在していないときはS1109に処理を進め、一つ前に読み込んだシートがスモール系シートに分類される場合はS1111に処理を進める。S1109でCPU201は、読み込んだ測定パッチの情報を格納する一時格納する保持部の初期化を行う。そしてS1110に処理を進めCPU201は、読み込んだ2つのパッチの情報をその保持部に格納する。そして次に2枚目のスモール系シートのパッチを読み込むためにS1102に処理を進める。
【0086】
一方、S1111でCPU201は、一つ前に読み込んだシートと現在読み込んだシートのサイズがともにスモール系であることを条件に、読み込んだ2つのパッチの情報を格納する。これにより補正値883を算出するために、2枚のスモール系のシートが連続して読み取られて、必要な4つのパッチが取得できたのでS1107に処理を進める。そしてCPU201は、格納したパッチ情報を測色センサ制御部312が取得した測色データとして決定してCPU201はS1102に処理を進める。この場合は、連続した2枚のシートのパッチを読み取ることにより、必要なパッチの情報が得られたことになる。
【0087】
尚、実施形態では、ラージ系シートの場合は1度の読み込みで測色データを決定し、スモール系シートの場合は2枚連続で読み込んだ場合に測色データを測定値として決定する。しかしながら測色データの読み込みタイミングはこれに限定されるものではない。例えば、毎回シアン・マゼンダのシート、イエロー・ブラックのシートの順で読み込む場合や、毎回イエロー・ブラックのシート、シアン・マゼンダのシートの順で読み込む場合、或いは前記2ケース以外の順番で読み込んでもよい。また測定すべきシートが2枚以上に亘る場合は、複数枚連続できた場合に処理してもよい。或いは測定すべきシートが2枚以上に亘る場合、補正に利用できるシートが揃い次第処理してもよい。
【0088】
また、測定すべきシートが2枚連続していないために補正情報が得られない場合は、最新の補正情報或いは、最新のラージ系のシートのパッチを測定して得られた補正情報を使用して補正を行うようにしても良い。
【0089】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0090】
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0091】
101…印刷装置、102…情報処理端末、201…CPU、204…ストレージ、206…操作部、209…印刷部、210…測色部、308…エンジン制御部