(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】管理装置、インプリント装置、及び管理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240610BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240610BHJP
B29C 33/70 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
B29C33/70
(21)【出願番号】P 2020116403
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】諸川 祐也
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-094487(JP,A)
【文献】特開2018-206974(JP,A)
【文献】特開2019-021678(JP,A)
【文献】特開2020-013953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物を成形する
インプリント装置に用いられる型のメンテナンス処理を管理する管理装置であって、
前記型の領域を複数に分割した所定領域毎に
、前記型のクリーニング
に起因する前記型の消耗度を取得する取得部と、
前記
消耗度に基づいて
前記型のメンテナンス処理を決定する決定部と、を有することを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記
消耗度に基づいて
前記型の交換タイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記所定領域のうち少なくとも1つの領域において、
前記消耗度が所定の閾値よりも大きい場合に、前記型を交換することを決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記所定の閾値は、前記型の情報に基づいて、前記所定領域毎に変更可能であることを特徴とする請求項3に記載の管理装置。
【請求項5】
前記所定の閾値は、ユーザの入力に基づいて、前記所定領域毎に変更可能であることを特徴とする請求項3に記載の管理装置。
【請求項6】
前記
消耗度に基づいて前記型の情報を表示装置へ表示することを制御する表示制御部を更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項7】
前記
消耗度に基づいて前記型の情報を表示装置へ表示することを制御する表示制御部を更に有し、
前記表示制御部は、前記消耗度が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記型の交換を促す画面を前記表示装置へ表示することを制御する請求項3乃至5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項8】
前記
消耗度に基づいて前記型の情報を音声出力装置へ出力することを制御する音声制御部を更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項9】
前記
消耗度に基づいて音声を発する音声出力装置を制御する音声制御部を更に有し、
前記音声制御部は、前記消耗度が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記型の交換を促す音声を前記音声出力装置が発することを制御することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項10】
前記
消耗度に基づいて前記型を交換するように型交換装置を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項11】
前記消耗度が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記型を交換するように型交換装置を制御することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項12】
前記
消耗度は、洗浄液を用いたウェット洗浄
による前記型の消耗度であり、前記洗浄液の種類、濃度、吐出量、洗浄回数、及び洗浄時間の少なくとも1つ
に基づくことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項13】
前記
消耗度は、プラズマを用いたドライ洗浄
による前記型の消耗度であり、前記プラズマの照射回数、照射量、及び照射時間の少なくとも1つ
に基づくことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項14】
前記プラズマは、大気圧中で発生させる大気圧プラズマであることを特徴とする請求項13に記載の管理装置。
【請求項15】
前記決定部は、前記所定領域
のうち、基板との位置合わせに用いるためのマーク
を含む領域
と、前記マークを含まない領域とで、前記型を交換することを決定するための閾値を変更することを特徴とする請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項16】
型を用いて基板上に組成物のパターンを形成するインプリント装置であって、
請求項1乃至
15のいずれか1項に記載の管理装置を含むことを特徴とするインプリント装置。
【請求項17】
組成物を成形する型のメンテナンス処理を管理する管理方法であって、
前記型の領域を複数に分割した所定領域毎に
、前記型のクリーニング
に起因する前記型の消耗度を取得する取得工程と、
前記
消耗度に基づいて前記型のメンテナンス処理を決定する決定工程と、を含むことを特徴とする管理方法。
【請求項18】
組成物を成形する
インプリント装置に用いられる型のメンテナンス処理を管理する管理方法を実行させるためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記型の領域を複数に分割した所定領域毎にクリーニング
に起因する前記型の消耗度を取得する取得工程と、
前記
消耗度に基づいて前記型のメンテナンス処理を決定する決定工程と、を実行させるためのプログラム。
【請求項19】
請求項
17に記載の管理方法を用いて、インプリント装置の型のメンテナンス処理を管理する管理工程と、
前記インプリント装置を用いて、基板上に組成物のパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程でパターンが形成された前記基板の処理を行う処理工程と、を含み
前記処理工程で処理された基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、インプリント装置、及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィ技術に加えて、基板上の未硬化の樹脂(インプリント材)を型で成型し、樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術が注目を集めている。かかる技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上にナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。
【0003】
インプリント技術の1つとして、例えば、光硬化法がある。光硬化法を採用したインプリント装置では、まず、基板上のショット領域(インプリント領域)に樹脂を供給(塗布)する。次いで、基板上の未硬化の樹脂と型とを接触させた状態で光を照射して樹脂を硬化させ、硬化した樹脂から型を引き離すことで基板上にパターンを形成する。
【0004】
インプリント装置では型と基板上の樹脂とを接触させるため、型に樹脂の硬化物が残存することがある。型に樹脂の硬化物が残存した状態でインプリント処理を行うと、残存した樹脂がそのまま転写され、基板上に形成されるパターンに不良(欠陥など)が生じてしまうおそれがある。したがって、型は定期的にクリーニングする必要がある。
【0005】
このような型のクリーニング技術に関して、従来から幾つか開示されている。特許文献1では、型の領域毎に異なる洗浄条件を設定してクリーニングを行う内容が開示されている。特許文献2では、クリーニング情報から型の経時変化情報を取得する内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-13953号公報
【文献】特開2016-27623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、クリーニングを繰り返し行うと型が次第に消耗していくため、型の消耗度を管理することで、型を適切なタイミングで交換する必要がある。特許文献1では、そのような課題認識が無く、型の交換時期を適切に判断することができない。特許文献2では、領域毎に型の経時変化情報を取得することについては言及しておらず、型の領域によって型の消耗度が異なるという課題認識が無いため、型を適切なタイミングで交換できないおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、型の交換時期を適切に決定するために有利な管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての管理装置は、組成物を成形するインプリント装置に用いられる型のメンテナンス処理を管理する管理装置であって、前記型の領域を複数に分割した所定領域毎に、前記型のクリーニングに起因する前記型の消耗度を取得する取得部と、前記消耗度に基づいて前記型のメンテナンス処理を決定する決定部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、型の交換時期を適切に決定するために有利な管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】インプリント装置の構成を示す概略図である。
【
図3】型の交換タイミングを決定するフローチャートである。
【
図4】型の領域を一定間隔の矩形に分割した図である。
【
図5】型の領域を型の情報に基づいた領域に分割した図である。
【
図6】型の領域をクリーニング処理の領域に基づいた領域に分割した図である。
【
図8】型の消耗度や閾値の表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。尚、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
(インプリント装置の構成)
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置100の構成を示す概略図である。インプリント装置100は、物品としての半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用され、型を用いて基板上にインプリント材(組成物とも称する)のパターンを形成するインプリント処理を行うリソグラフィ装置である。
【0014】
インプリント材には、硬化用のエネルギーが与えられることによって硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱などが用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光を用いる。
【0015】
硬化性組成物は、光の照射によって、或いは、加熱によって硬化する組成物である。光の照射によって硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を含有しても良い。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0016】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されても良い。また、インプリント材は、液体噴射ヘッドによって基板上に液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状に付与されても良い。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0017】
基板には、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂などが用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていても良い。具体的には、基板は、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどを含む。
【0018】
インプリント装置100は、検出部1と、型3(型、テンプレート、又は原版とも呼ばれ得る)を保持して移動する型保持部2と、基板7を保持して移動する基板ステージ8と、内部クリーニング部5と制御部20とを有する。
【0019】
検出部1は、型3の状態を観察して、型3に付着した異物4を検出する。本実施形態では、型3の基準となるデータ(例えば、高さ)を予め求めておくことで、かかるデータと任意のタイミングでの検出結果との差分から型3のパターン面3aに付着した異物4を検出することができる。また、異物4からの反射に起因してパターン面3aの状態が観察不可能となるような場合には、型3のパターン面3aへの異物4の付着が発生したことを検出することができる。
【0020】
内部クリーニング部5は、プラズマ5aを発生させ、型保持部2に型3が保持された状態において、型3を局所的に洗浄するドライ洗浄によって型3のクリーニングを行う。即ち、型3のパターン面3aの一部分のクリーニングを行う。内部クリーニング部5は、型保持部2に保持された型3に対して移動可能に構成され、例えば、
図1に示すように、基板ステージ8に配置されている。内部クリーニング部5から照射されるプラズマ5aは、例えば、高周波電源を用いて大気圧中で発生させる大気圧プラズマである。大気圧プラズマは、他のドライ洗浄方法と比べてコストを低減できる点で有利である。
【0021】
内部クリーニング部5は、型3に対する相対的な移動の方向(例えば、X方向)と平面内で直交する方向(例えばY方向)のプラズマ5aの照射幅を調節する調節部(不図示)を備える。このような調整部を備えることにより、型表面の任意の領域にプラズマを照射することができ、様々なクリーニング条件に柔軟に対応することが可能となる。即ち、内部クリーニング部5は、型3の領域を複数に分割した所定領域毎に、それぞれに適したクリーニングを実行可能である。
【0022】
外部クリーニング部6は、主に、内部クリーニング部5では異物を除去できないと判断した場合に使用する。外部クリーニング部6は、例えば、異物4を薬液や純水等を使用して洗浄するウェット洗浄と、エキシマUVや大気圧プラズマ等を使用して洗浄するドライ洗浄を適当に組み合わせて洗浄する装置である。また、外部クリーニング部6とインプリント装置100は互いに情報をやり取りすることが可能であり、外部クリーニング部6で行ったクリーニング履歴は、インプリント装置100で把握できる。ドライ洗浄工程におけるクリーニングとしては、例えば、プラズマモジュールの場合には、真空度、ガス種、ガスの圧力、印加電圧の波形、ドライ洗浄装置内の温調、プラズマの照射強度、プラズマの照射回数、プラズマの照射時間などが挙げられる。ウェット洗浄工程におけるクリーニング条件としては、例えば、洗浄液の種類、洗浄液の濃度、洗浄液の吐出量(単位時間当たりの吐出量)、洗浄回数、及び洗浄時間などが挙げられる。
【0023】
回収部9は、型保持部2に保持された型3の近傍に配置され、内部クリーニング部5が型3のクリーニングを行うことによって生じるガス、特に、インプリント処理に対して阻害となるガスを回収する。但し、インプリント処理に対して阻害となるガスが生じない場合には、回収部9は、必ずしも必要な構成要素ではない。
【0024】
型3は、基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理に用いられる。型3の片側の表面には、基板上に供給されたインプリント材を成形する凹凸のパターンが3次元形状に形成されたパターン部3aを備える。パターン部3aは、メサとも呼ばれ、型3のパターン部3a以外が基板に接触しないように数10μm~数100μmの凸部に形成されている。このため、メサエッジと呼ばれるパターン部3aの端部には、インプリント材の硬化物が残存しやすく、インプリント処理を繰り返すとインプリント材の硬化物が堆積することがある。また、型3のパターン部3aは、基板上のパターン(ショット領域)と位置合わせを行う際に用いるアライメントマークを有する。アライメントマークは、例えば、石英からなる型1に形成された凹凸構造であり、アライメントマークとして形成された凹部や凸部の表面にクロム膜が設けられても良い。アライメントマークの形状は、例えば、複数のライン状のパターンである。
【0025】
制御部20は、CPUやメモリなどを含むコンピュータで構成され、メモリに格納されたプログラムに従ってインプリント装置100の各部を制御する。制御部20は、インプリント装置100の各部の動作及び調整などを制御することで基板上にパターンを形成するインプリント処理を制御する。また、制御部20は、インプリント装置100の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成されても良いし、インプリント装置100の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成されても良い。
【0026】
本実施形態に係る制御部20は、型3のメンテナンス処理を管理する管理装置としての側面も持つ。型3のメンテナンス処理とは、型3のクリーニングや型3の交換などを含む型3のメンテナンスに関わる処理である。
図2は、管理装置21のCPUの構成を示す図である。管理装置21は、取得部22、記憶部23、算出部24、決定部25、表示制御部26、音声制御部27を有する。管理装置21は、型3のパターン部3aを構成する複数の領域において、クリーニングに起因する型3の消耗度に関する情報を管理する。管理装置21は、消耗度に関する情報に基づいて、型3の交換タイミングを決定する。
【0027】
取得部22は、クリーニングに起因する型3の消耗度に関する情報、即ち、型3のクリーニングを実行したクリーニング履歴を取得する。記憶部23は、取得部22で取得したクリーニング履歴を記憶する。算出部24は、クリーニング履歴に基づいて、型3の消耗度を算出する。決定部25は、記憶部23で記憶したクリーニング履歴や算出部24で算出した型3の消耗度に基づいて、型3の交換タイミングを決定する。
【0028】
決定部25で、型3の交換タイミングであると決定された場合には、型3の交換をユーザに促すために、表示制御部26が表示装置10に型3の交換を促す画面を表示するよう制御しても良い。また、型3の交換をユーザに促すために、音声制御部27が音声出力装置11に型3の交換を促す音声(例えば、警告音)を出力させるよう制御しても良い。或いは、制御部20が型交換部12を制御して、型3を交換する処理を実行させても良い。ここで、表示装置10は、インプリント装置100全体の制御に係る情報を映出する機能を備え得る。表示装置10は、例えば、液晶が組み込まれた汎用ディスプレイによって構成されうる。音声出力装置11は、インプリント装置100全体の制御に係る異常等をユーザに知らせるための音声出力機能を備え得る。表示装置10や音声出力装置11は、インプリント装置100の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成されても良いし、インプリント装置100の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成されても良い。
【0029】
型3のパターン部3aは、クリーニングによって摩耗するため、クリーニングを繰り返し行うことで、インプリント処理をした際に基板のパターン形成精度を悪化させる。また、型3の領域によって、クリーニング処理に対する耐久性も異なる。そのため、本実施形態では、型3の所定領域毎に型3の消耗度を管理し、型3の交換タイミングを決定する。これにより、適切な交換タイミングで型3を交換できるため、パターンの形成精度の悪化を低減することができる。
【0030】
(フローチャート)
図3は、本実施形態に係る管理装置21を用いてクリーニングに起因する型3の消耗度を管理し、型3の交換が必要であるか否かを決定するためのフローチャートである。フローチャートの各ステップは、制御部20がインプリント装置100を含む各部を統括的に制御することで行われる。
【0031】
ステップS301では、基板上の各ショット領域にインプリント処理を行う。まず、基板7上のインプリント処理を行う対象ショット領域に樹脂を供給する。基板上の対象ショット領域が型3の下に位置するように基板ステージ8を移動させて、型3と基板7との位置合わせ(アライメント)を行う。続いて、型3と基板上の樹脂とを接触させた状態で樹脂を硬化させ、硬化した樹脂から型3を引き離すことで基板上にパターンを形成する。
【0032】
ステップS302では、制御部20が型3のクリーニングを行うかどうかを判定する。判定方法としては、例えば、検出部1が異物4を検出しない場合、型3のクリーニングは不要と判断され、ステップS307に移る。検出部1が異物4を検出した場合、型3のクリーニングが必要と判断され、S303の工程に移る。かかる判定は、型3のパターン面3aに付着した異物4の有無を基準として行っても良いし、型3のパターン面3aに付着した異物4の大きさを基準として行っても良い。また、型3のパターン面3aに付着した異物4が基板上に形成されるパターンや型3に将来的に与える影響の度合いを基準として判定を行っても良い。また、異物4により判断する方法ではなく、インプリント処理が所定の回数(例えば、2000回)に到達したかを判断し、所定の回数を超えた場合に型3のクリーニングが必要であると判断しても良い。
【0033】
ステップS303では、内部クリーニング部5(又は、外部クリーニング部6)が型3のクリーニング処理を実行する。制御部20は、検出部1の検出結果に基づいて、型3のパターン面3aに付着した異物4の位置を特定する。制御部20は、特定された異物4の情報に基づき、クリーニング条件を生成する。異物4の情報とは、型3のパターン面3aにおける異物4の位置(座標)を表すデータ、異物4の大きさを表すデータ、異物4の高さを表すデータなどを含む。
【0034】
クリーニング条件としては、例えば、内部クリーニング部5から照射されるプラズマ5aの照射量、照射回数、照射時間が含まれる。異物4が多い領域や、大きい異物4が残存する領域には、クリーニング強度の強い(プラズマの照射量が多い、照射回数が多い、照射時間が長い)クリーニング条件で異物4を除去するようにクリーニングを行う。異物4が少ない領域や、小さい異物4が残存する領域には、クリーニング強度の弱い(プラズマ照射量が少ない、照射回数が少ない、照射時間が短い)クリーニング条件で異物4を除去するようにクリーニングする。型3のクリーニングを行うことで異物4を除去し、次のインプリント処理でのパターンの欠陥や型3の破損を抑制することができる。
【0035】
ステップS304では、ステップS303で行ったクリーニング処理のクリーニング履歴を管理する。具体的には、型3を複数領域に分割した所定領域毎にクリーニング履歴を記憶部23に記憶していく。記憶部23が記憶する情報の一例として、クリーニング条件が毎回異なることを想定し、クリーニングの強度に関する情報を累積していっても良いし、クリーニング条件に基づく型3の消耗度として記憶しても良い。型3の消耗度とは、算出部24が、ステップS303で実行したクリーニング処理のプラズマの照射量、照射回数、照射時間などによって算出される数値であり、例えばプラズマの照射量と照射回数(又は照射時間)の積の累計値である。クリーニング強度が毎回異なる場合に、同じクリーニングの強度として、型3の消耗度を算出してしまうと、正確な型3の管理が行えないおそれがある。
【0036】
ステップS305では、ステップS304で算出部24が算出した型3の消耗度が所定の閾値を越えているかを判定する。閾値とは、型3を交換するタイミングの指標である。型3の領域毎の耐久性は、型3のパターン部3aの情報(例えば、材質や形状)により異なるため、型3の情報に基づいて閾値が設定される事が望ましい。例えば、型3のアライメントマークが位置する領域ではクロム膜が使われているため、その他の領域よりもクリーニング処理による消耗が激しい。そのため、型3のパターン全面を同じ閾値で管理してしまうと、型3を交換するタイミングを正確に判断することができない。そのため、例えば、型3のアライメントマークが位置する領域では、その他の領域に比べて低い閾値を設定して型3の管理を行うことが望ましい。このように、型3の所定領域毎の閾値は変更可能であることが望ましく、型3の所定領域毎の閾値の管理は、ユーザの入力等によって適宜変更しても良い。
【0037】
また、型3のパターン全面を同じ閾値と設定する場合には、ステップS304で算出部が型3の情報に基づいて型の消耗度を重み付けして算出することが望ましい。例えば、型3のアライメントマークが位置する領域では、同じクリーニング処理を行った場合でもその他の領域に比べて型3の消耗度が高くなるように重み付けをして算出することが望ましい。型3の消耗度が所定の閾値を越えている場合にはステップS306へと進み、型3の消耗度が所定の閾値を越えていない場合にはステップS307へと進む。
【0038】
ステップS306では、型3を他の型と交換するための処理を行う。型3を他の型と交換するための処理とは、表示装置10や音声出力装置11が型3の交換をユーザに促すこと、型交換部12が型3を他の型と交換すること、型交換部12が型3をインプリント装置100から搬出すること、の少なくとも1つを含み得る。
【0039】
ステップS307では、インプリント処理を終了するか否かを判定する。インプリント処理を終了する場合には終了となり、次のインプリント領域でインプリント処理を続ける場合にはステップS301に戻ってインプリント処理を終了するまで繰り返す。以上が、本実施形態に係る管理装置21を用いてクリーニングに起因する型3の消耗度を管理し、型3の交換が必要であるか否かを決定するためのフローチャートの説明である。
【0040】
(型の分割領域の管理)
次に、型の分割領域の管理について説明する。
図4は、型の領域を一定間隔の矩形に分割して管理する例である。
図4(a)は、型の領域を設定するための設定画面である。
図4(b)は、
図4(a)で設定した分割領域を反映させた型3のパターン面3aを示す図である。
図4(a)の設定画面や、
図4(b)の分割領域表示は、表示装置10に表示されても良い。
図4(a)で示す白の矩形は、その右側に記載された動作を行うことが設定されていない状態を示し、黒の矩形は、その右側に記載された管理を行うことが設定された状態を示している。ユーザは矩形を選択することで、他の分割方法に設定を変更することができる。
【0041】
図4(a)で示す「領域を矩形に分割」を設定した場合、型3のパターン面3aを所定の設定値の矩形に分割する。例えば、縦=3、横=4と設定された場合には、
図4(b)に示すように、型3に設けられたパターン面3aの領域を縦に3分割、横に4分割することを表す。この分割方法の利点としては、ユーザが任意の設定で分割できる点や型3の位置情報だけで管理できる点が挙げられる。
【0042】
図5は、型の領域を型3の情報に基づいた領域に分割して管理する例である。
図5(a)は、型の領域を設定するための設定画面である。
図5(b)は、
図5(a)で設定した分割領域を反映させた型3のパターン面3aを示す図である。
図5(a)の設定画面や、
図5(b)の分割領域表示は、表示装置10に表示されても良い。
図4(a)と同様に、
図5(a)で示す白の矩形は、その右側に記載された動作を行うことが設定されていない状態を示し、黒の矩形は、その右側に記載された管理を行うことが設定された状態を示している。ユーザは矩形を選択することで、他の分割方法に設定を変更することができる。
【0043】
図5(a)で示す「型の情報に基づいた領域に分割」を設定した場合、型3のパターン面3aを型3の情報に基づいた領域に分割する。型3の情報とは、型3に設けられたパターン面3aのアライメントマーク3b、パターン3c、それ以外の領域3dの位置情報のことである。それぞれの位置情報に基づき、
図5(b)のように型3を複数の領域に分割する。また、「型の情報に基づいた領域に分割」を設定した場合、それぞれの領域のクリーニング処理に対する耐久性を考慮して、閾値を設定することができる。例えば、アライメントマーク3bには、クロムなどが使われており、クリーニング処理に対する耐久性が他の領域と比べて低いため、設定された全体の閾値の60%に閾値を設定する。このように、分割した領域毎に、ユーザが閾値を設定することができる。この分割方法の利点としては、型3の情報に基づいてクリーニングに対する耐久性を考慮して閾値を所定領域毎に設定することができるため、より正確な型3の管理ができる点が挙げられる。
【0044】
図6は、型の領域をクリーニング処理が行われた所定領域毎に分割して管理する例である。
図6では、クリーニング処理として内部クリーニング部5によるプラズマが照射された場合を想定しているが、これに限らず、他の方法によるクリーニング処理でも良い。
図6(a)は、型の領域を設定するための設定画面である。
図6(b)は、
図6(a)で設定した分割領域を反映させた型3のパターン面3aを示す図である。
図6(a)の設定画面や、
図6(b)の分割領域表示は、表示装置10に表示されても良い。
図4(a)や
図5(a)と同様に、
図6(a)で示す白の矩形は、その右側に記載された動作を行うことが設定されていない状態を示し、黒の矩形は、その右側に記載された管理を行うことが設定された状態を示している。ユーザは矩形を選択することで、他の分割方法に設定を変更することができる。
【0045】
図5(a)で示す「プラズマの照射範囲で分割」を設定した場合、
図6(b)のように型3のパターン面3aをプラズマの照射範囲で分割する。プラズマの照射範囲とは、型3のパターン面3aに、内部クリーニング部5が実際に照射したプラズマ5aの照射範囲5bのことである。プラズマの照射範囲が重なっている領域では、プラズマの照射範囲が重なっていない領域に比べて、クリーニング処理が多く実行されているため両者を区別して領域を設定することが望ましい。この分割方法の利点としては、矩形の領域に分割する設定に比べて、より詳細に型3を管理できる点である。例えば、異物4の大きさや量によって、クリーニング条件が異なるため、一度で照射するプラズマの範囲もクリーニング毎に変わるため、プラズマの照射範囲で分割を行えば、より正確に型3を管理できる。
【0046】
(型の消耗度の設定)
次に、型3の消耗度の設定について、
図7を用いて詳細に説明していく。
図7は、型3の消耗度を管理する例である。
図7(a)は、型3の消耗度を管理する方法を設定するための設定画面である。
図7(a)の設定画面は、表示装置10に表示されても良い。
図4(a)、
図5(a)、
図6(a)と同様に、
図7(a)で示す白の矩形は、その右側に記載された動作を行うことが設定されていない状態を示し、黒の矩形は、その右側に記載された管理を行うことが設定された状態を示している。ユーザは矩形を選択することで、他の消耗度を管理する方法に設定を変更することができる。尚、
図7(a)での矩形の選択は
図4(a)、
図5(a)、
図6(a)とは異なり、複数選択することも可能である。矩形を複数選択し場合には、選択した条件を加味して算出部24が型3の消耗度を算出することができる。
【0047】
図7(a)で示したそれぞれの項目について説明する。尚、以下の説明では、クリーニング処理として内部クリーニング部5によるプラズマが照射された場合を想定しているが、これに限らず、他の方法によるクリーニング処理でも良い。
【0048】
消耗度を管理する方法として、クリーニング回数を設定した場合には、内部クリーニング部5が照射するプラズマ5aの照射回数に基づいて、型3の消耗度を管理する。この管理方法の利点として、分割した領域毎に回数のみを累積していけば良いので、少ない情報で型3を管理できるという点が挙げられる。
【0049】
消耗度を管理する方法として、クリーニング時間を設定した場合には、内部クリーニング部5が照射するプラズマ5aの照射時間に基づいて、型3の消耗度を管理する。この管理方法の利点として、異物4の大きさや量によって一度で照射するプラズマ5aの照射時間が異なるため、より正確に型3を管理できるという点が挙げられる。
【0050】
消耗度を管理する方法として、クリーニング強度を設定した場合には、内部クリーニング部5が照射するプラズマ5aの照射量に基づいて、型3の消耗度を管理する。この管理方法の利点として、異物4の大きさや量によって、一度で照射するプラズマ5aの照射量が異なるため、より正確に型3を管理できるという点が挙げられる。
【0051】
上記の管理方法を組み合わせることで、より正確に型3を管理できることが期待される。例えば、クリーニング回数とクリーニング強度を設定した場合には、その両方の情報に基づいて型3を管理できるため、より正確に型3を管理できることが期待できる。また、ユーザは、型3全体の閾値を設定しても良く、設定された閾値をもとに型3の寿命が設定される。例えば、クリーニング回数の閾値を1000回と設定した場合、型3のクリーニング回数が1000回を越えたときに型3の交換が必要であると決定部25により決定される。また、
図5のように分割領域毎に閾値の割合が設定されている場合については、その割合についても考慮する。例えば、クリーニング回数の閾値を1000回と設定した上で、
図5のようにアライメントマーク3bの領域の閾値が60%と設定されている場合には、アライメントマーク3bの領域のクリーニング回数の閾値は600回と設定される。アライメントマーク3bの領域は、その他の領域よりもクリーニング処理に対する耐久性が低いため、型3のアライメントマーク3bが位置する領域のクリーニング回数が600回を越えたときに型3の交換が必要であると決定部25により決定される。
【0052】
図7(b)は、プラズマ5aの照射回数を記憶部23が記憶する例である。
図7(b)に示す例では、灰色の円の一部として図示されたプラズマ5aの照射範囲5bに対して、型3が矩形の領域に分割されている。照射範囲5bが一部でも含まれる矩形領域では、プラズマ5aが照射されたと判断される。
図7(b)に示す例では、プラズマ5aが1回照射されていると想定しているため1と表示されている。他の領域ではプラズマの照射が行われていないと想定しているため0と表示されている。更にプラズマ5aが繰り返し照射される場合には、記憶部23に累積して記憶されていく。
図7(b)に示す例では、クリーニング回数を例としているがこれに限らず、クリーニング時間で管理する場合には、実際にプラズマを照射した時間、クリーニング強度の場合には、実際にプラズマ5aを照射した照射量を累積していけば良い。
【0053】
図8は、型3の消耗度や閾値を確認するための確認画面である。この確認画面は、型3の消耗度や閾値を確認する際に、表示装置10に表示されても良い。
図8では、分割されたそれぞれの領域において、現在の消耗度や閾値を確認することができるため、型の交換タイミングの時期を予測することができる。したがって、型3の交換が必要であると判断される前に交換に必要な処理を行うことが可能なため、型の交換による生産性の低下を低減できる効果も期待できる。
【0054】
以上のように、本実施形態では、所定領域毎に異なるクリーニング条件でクリーニング処理を実行している場合でも、型3の交換タイミングを適切に決定することができる。これにより、型3に欠陥がある状態でインプリント処理を実行することを抑制できるため、基板のパターン形成精度の悪化を抑制することができる。
【0055】
<物品の製造方法の実施形態>
次に、上述したインプリント装置100を用いた物品(電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等)の製造方法を説明する。インプリント装置100によって形成された硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に用いられる。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0056】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。さらに、基板を処理する周知の工程としては、酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等が含まれる。
【0057】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。
図9(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0058】
図9(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図9(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0059】
図9(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0060】
図9(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図7(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用しても良い。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも一つにおいて有利である。
【0061】
<他の実施形態>
本発明は、上述の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
3 型
5 内部クリーニング部
6 外部クリーニング部
7 基板
20 制御部
21 管理装置
22 取得部
23 記憶部
25 決定部