IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-レンズ装置および撮像装置 図1
  • 特許-レンズ装置および撮像装置 図2
  • 特許-レンズ装置および撮像装置 図3
  • 特許-レンズ装置および撮像装置 図4
  • 特許-レンズ装置および撮像装置 図5
  • 特許-レンズ装置および撮像装置 図6
  • 特許-レンズ装置および撮像装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】レンズ装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20210101AFI20240610BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20240610BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20240610BHJP
   G03B 7/20 20210101ALI20240610BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240610BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240610BHJP
   H04N 23/66 20230101ALI20240610BHJP
【FI】
G02B7/08 C
G02B7/02 E
G03B7/091
G03B7/20
G03B17/02
H04N23/50
H04N23/66
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020125705
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021851
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】長尾 裕貴
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-021201(JP,A)
【文献】特開2015-038576(JP,A)
【文献】特開2019-070777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/08
G02B 7/02
G03B 7/091
G03B 7/20
G03B 17/02
H04N 23/50
H04N 23/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された撮影パラメータに基づいて撮像するカメラ装置と接続されるレンズ装置であって、
第一操作部と、
前記第一操作部の操作に基づき、第一モードにおいては前記レンズ装置の機能を制御し、第二モードにおいては前記カメラ装置の機能を含む複数の撮影パラメータの組合せの設定を切り換える信号を出力するレンズ制御部と、
前記第一モードから前記第二モードへ切り換える切換え手段とを有し、
前記レンズ制御部は、前記切換え手段によって前記第二モードへ切り換えられてからの時間と、前記第一操作部の状態に基づいて、前記第二モードから前記第一モードへ切り換える、または切り換えない判断をすることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記レンズ制御部は、前記第二モードにおいては、前記第一操作部の操作に基づいて、前記カメラ装置の撮影パラメータの組合せの選択における、順送り、逆送り、および設定をする、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記レンズ制御部は、前記カメラ装置からの信号、または前記第一操作部の操作状態に基づき、前記第二モードから前記第一モードへ切り換える、ことを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記レンズ制御部は、前記カメラ装置からレリーズ操作があったことを示す信号に基づき、前記第二モードから前記第一モードへ切り替える、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記第一操作部は、光軸回りの所定の回転範囲で回転するリング部材であり、
前記第一操作部は、自動復帰する位置にある中立状態と、前記中立状態に対して一方側へ回転している状態である第一状態と、前記中立状態に対して他方側へ回転している状態である第二状態とに変更可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記切換え手段は、トリガー手段とロック手段とを含み、
前記ロック手段は、前記トリガー手段からの入力を、前記第二モードへの切換えのためのトリガーとして使用するか、前記レンズ装置の他の機能の操作のための入力として使用するか、を切り換えるスイッチであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記トリガー手段と前記第一操作部は、前記レンズ装置の外周に設けられ、光軸方向において互いに隣接して配置されていることを特徴とする請求項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記トリガー手段は、光軸回りに90度の間隔を空けて複数個所に配置されていることを特徴とする請求項またはに記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記第二モードにおける前記複数の撮影パラメータは、前記レンズ装置の機能および前記カメラ装置の機能を含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記レンズ装置は、光軸回りで回転するリング部材であって、前記レンズ装置の操作対象を割り当て可能な第二操作部を有し、
前記第二モードにおける前記複数の撮影パラメータは、前記第二操作部による操作対象の割り当てを含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のレンズ装置と、
前記第二モードで選択する前記複数の撮影パラメータの組合せを記憶する記憶部を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
前記記憶部は、前記第二モードに移行した時点の前記撮影パラメータの組合せを、前記第二モードでの前記撮影パラメータの組合せの切換えの選択肢として記憶することを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置によって形成された像の光を受ける撮像素子を有し、前記レンズ装置からの前記撮影パラメータの組合せの切換え信号に基づいて撮影パラメータを切換えて撮像するカメラ装置を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
前記撮影パラメータの組合せには、シャッター速度、絞り値、ISO感度、記憶媒体選択、ホワイトバランス設定、画像処理内容、操作手段の操作対象、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項13に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を用いた撮像装置と、撮像装置に対して交換可能なレンズ装置を含む撮像システムが多く使用されている。これらシステムにおいて、ユーザーは所望の映像表現を叶えるべく、撮影環境や被写体の特性に合わせて、撮像装置の撮影モードの選択や複数の撮影に関するパラメータ変更を行った後に撮影を開始する。この操作を素早く且つ、カメラを構えた状態をできるだけ崩さずに行うための構成を有する撮像装置が開示されている。
【0003】
特許文献1では、コントローラの操作により、記憶したカメラの撮影状態やレンズの状態に復帰させることが開示されている。特許文献2では、レンズ側に設けた第一、第二の操作手段の操作の組合せに応じて、レンズ側の機能を制御および、本体側の機能を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-245196号公報
【文献】特開2007-72252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、操作の対象ごとに異なる操作部を有するため、多くの操作ボタンをコントローラに設ける必要があった。特許文献2は、操作の対象としてカメラ本体とレンズ装置の一方を選択するスライドスイッチを有するために、現在の操作対象がカメラ本体なのかレンズ装置なのかを迅速に確認できないという課題があった。また、特許文献1、2のいずれも、記憶した複数パラメータの組合せを即座に呼び出すという点には触れていない。
【0006】
本発明は、記憶されているカメラ装置の複数の撮影パラメータを容易に呼び出して切換えることを可能とした操作性に有利なレンズ装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレンズ装置は、設定された撮影パラメータに基づいて撮像するカメラ装置と接続されるレンズ装置であって、第一操作部と、前記第一操作部からの操作に基づき、第一モードにおいては前記レンズ装置の機能を制御し、第二モードにおいては前記カメラ装置の機能を含む複数の撮影パラメータの組合せの設定を切り換える信号を出力するレンズ制御部と、前記第一モードから前記第二モードへ切り換える切換え手段とを有し、前記レンズ制御部は、前記切換え手段によって前記第二モードへ切り換えられてからの時間と、前記第一操作部の状態に基づいて、前記第二モードから前記第一モードへ切り換える、または切り換えない判断をすることを特徴とする。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記憶されているカメラ装置の複数の撮影パラメータを容易に呼び出して切換えることを可能とした操作性に有利なレンズ装置および撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施例のレンズ装置とカメラのシステム図
図2】第一実施例のレンズ装置の操作部材を示す側面図
図3】第一実施例のカスタム設定毎に割り当てた各種パラメータ一覧
図4】第一実施例の動作を示すフローチャート
図5】第一実施例の動作を示すフローチャート
図6】第二実施例のレンズ装置とカメラのシステム図
図7】第二実施例の各カスタム設定に割り当てた各種パラメータ一覧
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
レンズ装置100は、撮影光学系101、フォーカス駆動手段102、ズーム駆動手段103、光量調節手段104、フォーカス位置検出手段105、ズーム位置検出手段106、レンズマイコン(レンズ制御部)112、メモリ111、カメラ装置200との通信手段150を有する。光量調節手段104の状態を検出する検出手段113を有する。
【0012】
操作系として、記憶指示と記憶モードへの遷移を指示する遷移スイッチ107、記憶モードの状態に応じて記憶指示スイッチ108と記憶指示スイッチ108の状態を検出する第三検出手段109を有する。第三検出手段109が記憶指示スイッチ108の操作を検出すると、ユーザーにブザー音を鳴らすパターンや音量、LEDの点滅状態や表示パネルなどで操作されたことを知らせることができる。
【0013】
撮影光学系101は、被写体の光学像を形成して撮像素子206に集光させる。また、撮影光学系101は、変倍時に光軸方向に移動するズーム光学系151や焦点調節時に光軸方向に移動されるフォーカス光学系などの複数枚のレンズを有する。フォーカス駆動手段102、ズーム駆動手段103はそれぞれ、フォーカス光学系152、ズーム光学系151を光軸方向に移動させる。フォーカス駆動手段102およびズーム駆動手段103は、超音波モータ、DCモータ、ステッピングモータなどから構成され、レンズマイコン112によって駆動が制御される。
【0014】
フォーカス位置検出手段105は、フォーカス光学系の光軸上の位置を検出し、エンコーダや磁気センサなどから構成される。例えば、フォーカス駆動手段102の出力キーを光軸周りに回転可能に構成し、出力キーの回転と同時にエンコーダから回転量に応じて発生されるパルスとグレーコードパターン上をブラシが走行することでフォーカス光学系152の位置を検出することができる。
【0015】
第一操作手段(第一操作部)110、第二操作手段(第二操作部)118は、撮影光学系101の光軸周りに設けられたリング部品である。第一操作手段110が操作されたこと、および、その場合の操作量と操作方向は、第一検出手段114によって検出される。
【0016】
第二操作手段118が操作されたこと、および、その場合の操作量と操作方向は、第二検出手段119によって検出される。
【0017】
レンズマイコン112は、カメラマイコン210と電気的に接続され、撮影動作に必要な情報の交換を行う制御部であり、マイクロコンピュータ(CPU、プロセッサ)から構成されている。レンズマイコン112とカメラマイコン210は双方向データ通信を行う。
【0018】
本実施例では、記憶指示スイッチ108を所定時間以内の1回オン状態にすることで、その時点でのフォーカス位置検出手段105で検出されたフォーカス位置をメモリ111に記憶する。本実施例の記憶指示スイッチ108は、自動復帰する機械的スイッチであり、操作力を与えている間のみオン状態になり操作力を解除するとオフ状態になる。記憶指示スイッチ108を使用して、例えば、ある被写体距離に対して合焦するフォーカス光学系の位置をフォーカス位置としてメモリ111に記憶する。フォーカスプリセット情報をメモリ111に記憶させることによって、その後、記憶させた位置とは異なる位置にフォーカス光学系を移動させた場合でも、所定の復帰操作により、記憶位置にフォーカス光学系を復帰させることができる(フォーカスプリセット機能)。
【0019】
メモリ111は、フォーカスプリセット情報、後述する制御方法に必要な情報やそのプログラム、その他の各種の情報を保持する。フォーカスプリセットに必要な情報は、プリセット位置までフォーカス光学系を移動する速度などを含む。
【0020】
カメラ装置200は、電源スイッチ201、レリーズスイッチ202、測光手段203、測距手段204、露光手段205、撮像素子206、信号処理部207、第一画像記録部208、第二画像記録部209、カメラマイコン210、レンズ装置100との通信手段250を有する。
【0021】
カメラマイコン210は、不図示の記憶部に記憶されているプログラムに従ってカメラ装置200の全体を制御する。
【0022】
表示制御部211は、カメラ装置200のファインダ表示や背面表示部において被写体像をライブビュー表示するとともに、撮影パラメータ調整のための表示制御を行う。すなわち、カメラ装置200の背面に配置された表示部には、被写体像に重畳して撮影パラメータ、例えば、露出補正値、絞り値、シャッター速度、ピント等の調整モードの選択用の画像、が表示される。表示制御部211は、この表示の制御を行う。また、カメラ装置200内に配置され、接眼部を通して観察するファインダ表示部には、被写体像に重畳して露出補正値等の撮影パラメータの数値の設定用の画像が表示され、表示制御部211はこの表示の制御も行う。
【0023】
撮像制御部212は、絞り優先モードや、シャッター速度優先モードなどの各種撮影モードの設定や各種撮影に関わるパラメータを制御し、設定した撮影モードや撮影パラメータを反映した撮影を行う。撮影に関わるパラメータとは、例えば、絞り値、シャッター速度、ISO感度などがある。
【0024】
信号処理部207は、撮像素子206から入力した画像データの画像処理、例えば、ホワイトバランス、色補正、ライブビュー表示用画像生成、動画画像生成、画像圧縮・画像伸張、エッジ強調レベル等の種々の画像処理を行なう。なお、画像処理内容については、各種パラメータをユーザーが一つずつ調整してもよいが、本実施例のカメラにおいては、色補正・エッジ強調レベルなど各被写体に応じて推奨の組合せがあらかじめ、「人物」「風景」・・・など複数記憶されている。従って、ユーザーは撮影前に、画像処理内容の選択として「人物」などを選択するだけでよい。
【0025】
第一画像記録部208、第二画像記録部209は、カメラ本体に脱着自在な記録媒体、若しくは内蔵の記録媒体から構成される。第一画像記録部208、第二画像記録部209には、撮像素子206から出力され、画像処理および信号処理部207によって画像処理された静止画や動画の画像データや、付随するデータが記録される。画像データは、第一画像記録部208のみ、第二画像記録部209のみ、或いはデータ紛失のリスクを軽減するべく第一画像記録部208と第二画像記録部209の同時記録を選択して記録することができる。
【0026】
図2は、本発明のレンズ装置100の外観を示すものである。
記憶指示スイッチ108とカメラ操作許可手段(ロック手段、切換え手段)115はレンズ装置100の外装部のスイッチパネル内に配置される。
【0027】
また、第一操作手段110は、レンズ装置100の外装に撮影光学系101の光軸周りに回転可能なリング部材として配置される。回転操作が行いやすいように滑り止めのためのローレットパターンが設けられている。また、第一操作手段110は、光軸周りに所定の回転範囲だけ回転が可能なように、回転操作の回転方向の両側に移動端が設けられている。そして、操作力を与えない場合には、常に回転可動範囲の所定の中立位置(必ずしも中央でなくてもよい)に自動復帰するよう構成されている。
【0028】
本明細書においては、第一操作手段110の回転操作位置が中立位置にある状態を「中立状態」と定義する。第一検出手段114は、第一操作手段110を中立位置から一方の回転方向(一方側)に回転させた際、移動端に達する前に設定された所定位置で第一状態を知らせる信号を出力する。すなわち、中立状態から一方向に回転した状態であることが第一検出手段114によって検出されると、第一状態を知らせる信号が出力される。他方の回転方向(他方側)に回転させた場合も同じく、移動端に達する前に設定された所定位置で第二状態を知らせる信号を出力する。すなわち、中立状態から第二方向に回転した状態であることが第一検出手段114によって検出されると、第二状態を知らせる信号が出力される。従って、本実施例では、第一検出手段114は、第一状態操作手段110三つの状態(中立位置、第一状態、第二状態)を検出する。
【0029】
第二操作手段118は、レンズ装置100の外装に撮影光学系101の光軸周りに回転可能なリング部材として配置される。第二操作手段118は、光軸周りに無制限の回転が可能なリングである。第二操作手段118は、カメラ装置200のメニュー設定により、フォーカス調整、絞り値調整など撮影に関わる種々の調整が可能なリングとして機能が割り当てられる。第二操作手段118は、操作感をユーザーに伝えるために光軸周りの回転において所定の回転角度の間隔でクリック感を感じさせる構成を有する。
【0030】
カメラ操作許可手段115は、レンズ装置100からカメラ装置200の各種パラメータの操作の許可或いは不許可を選択するスライドスイッチとして構成されている。
【0031】
カメラ操作開始指示手段(トリガー手段、切換え手段)117はレンズ装置100の外装(外周)に設けられ、撮影光学系101の光軸周りに4か所配置(2か所は不図示)されている。本実施例のカメラ操作開始指示手段117は、自動復帰する機械的スイッチであり、操作力を与えている間のみオン状態になり操作力を解除するとオフ状態になるものである。カメラ操作開始指示手段117は、操作対象とする機能を割当てることが可能である。図4、5を参照しながら後述する本発明の機能である、レンズ装置よりカメラ装置の操作を開始する信号を出す機能が有効でない場合は、カメラ操作開始指示手段117は他の機能に割り当てられている。例えば、被写体認識をして設定したフレーム内の被写体を追尾して合焦状態を維持し続ける機能を有する撮像装置において、追尾している被写体の前を横切る別の被写体に合焦距離が変化してしまうことを避けるため、強制的に合焦についての被写体の追尾を停止して合焦距離を固定する機能のために使用される。例えば、この機能は、ボタンを押している間だけ合焦距離を固定するようにしたり、ボタン操作のたびに、合焦距離の固定と追尾を切り換えるようにしてもよい。
【0032】
三脚座リング116は、三脚を使用した際の撮影時にレンズ装置100を三脚座に固定したまま縦位置での撮影を可能にすべく、レンズ装置100を光軸周りに回転可能な態様で支持するリングである。
【0033】
図4は、第一操作手段110を使用した一機能であるフォーカスプリセット機能に関する制御方法(第一モード)を説明するためのフローチャートである。図5は、カメラ操作開始指示手段117と第一操作手段110の操作を組み合わせた本発明の特徴部分である撮影の各種パラメータの組合せを登録した複数のカスタム設定の一つを呼び出す機能を説明するためのフローチャートである。図4図5に示す制御方法はコンピュータによって実行可能なプログラムとして具現化され、レンズマイコン112によって実行される。
【0034】
カメラ装置200とレンズ装置100が電気的に接続されカメラ装置200の電源スイッチ201がオンされた際の初期状態より説明する。
【0035】
カメラ装置200の電源スイッチにより電源オンされると、図4に示したフォーカスプリセット機能に関する制御の処理が開始される。
【0036】
最初にステップS301において、レンズマイコン112で、フォーカスプリセットのモードが設定される。
【0037】
次にステップS302において、メモリ111に、デフォルトとして無限遠に合焦するフォーカス位置が記憶される。
【0038】
続いて、ステップS303において、カメラ操作許可手段115の状態を確認し、「レンズ装置の操作でのカメラ装置の操作可能」が設定されている場合はステップS304に進み、「レンズ装置の操作でのカメラ装置の操作不可」が設定されている場合はステップS305に進む。
【0039】
ステップS305では、フォーカス位置検出手段105により、現在のフォーカス位置を検出し、ステップS306に進む。
【0040】
ステップS306では、第一検出手段114により、第一操作手段110の操作状態を検出し、第一操作手段110の状態が、第一、第二のいずれかの状態であれば、ステップS307に進み、メモリ111に記憶されたフォーカス位置にフォーカス光学系を移動する。このときの駆動速度は、フォーカス駆動手段102で駆動可能な最高速度で移動する。第一操作手段110の状態が、中立状態であれば、ステップS308に進む。
【0041】
ステップS308では、レンズマイコン112は、第三検出手段109により、記憶指示スイッチ108の状態を検出し、記憶指示スイッチ108の操作を検出するとステップS309に進む。
【0042】
ステップS309では、カメラ装置200或いはレンズ装置100に設けられたブザー音を鳴らしたりLEDを点滅させて、オペレータに現在位置が記憶されることを認識させ、メモリ111にステップS305で検出したフォーカス光学系の現在位置を記憶する(ステップS302で記憶した位置に上書きして、ステップS305で検出した位置にアップデートする)。
【0043】
ステップS303にてカメラ操作許可手段115の状態が「レンズ装置の操作でのカメラ装置の操作可能」が設定されている場合は、ステップS304に進み、カメラ操作開始指示手段117の状態検出を行う。
【0044】
ステップS304で、カメラ操作開始指示手段117が押下(トリガー信号が出力)されてカメラ操作の開始が指令されたことを検出するとステップS310に進み、カメラ操作の開始が指示されなければステップS305に進む。
【0045】
次に、本発明の特徴部分の説明を行う。
カメラマイコン210は、撮影に関する様々なパラメータや画像処理内容、画像を記録する対象(第一画像記録部208/第二画像記録部209)の選択の組合せが保存可能となっている。例えば、図3に示すように、撮影前に、個別に設定した「現在の状態」、「カスタム1」、「カスタム2」、・・・・のように、ユーザーが好む撮影に関わる複数の撮影条件を記憶させておき、撮影中に撮影を中断することなく、これらの複数の撮影パラメータ等の組合せの一つを容易な操作で瞬時に選択して呼び出し、撮影に反映させることができる。撮影中に撮影条件に応じて変更することが想定される撮影パラメータがある場合には、予め1以上の撮影パラメータのセットを記憶させておき、撮影中の必要に応じて、簡易な操作で記憶しておいた撮影パラメータのセットを呼び出して撮影することができる。また、予め設定されて記憶されている「カスタム1」、「カスタム2」等の撮影パラメータの組合せに加え、撮影パラメータ等の組合せの一つを選択して呼び出す操作をした時点での「撮影パラメータ等の組合せ」も「現在の状態」(選択肢の一つ)として記憶することにより、「カスタム1」、「カスタム2」等の撮影パラメータの組合せから、「現在の状態」の設定に戻すことができる。
【0046】
設定項目は、シャッター速度、絞り値、ISO感度、記憶媒体選択、ホワイトバランス設定、保存する画像の画像処理内容の選択の少なくともいずれかを含む。従って、撮影から記憶媒体に撮影データを保存するところまでの条件の組合せを、カスタム設定(カスタム1、カスタム2、・・・)として記憶することができる。撮影パラメータの組合せは、「現在の状態」、「カスタム1」、「カスタム2」、・・・・とカスタム設定が遷移するごとに、リアルタイムで画像表示部213に表示される。
【0047】
ステップS310へ移行して開始される、レンズ装置からカメラ装置のカメラマイコン210に記憶されている撮影パラメータの組合せの切換えを操作する制御(第二モード)のフローを図5を用いて説明する。図4を参照しながら説明したように、カメラ操作許可手段115とカメラ操作開始指示手段117の双方(切換え手段)の条件が揃った場合に、上述の第二モードでの制御が開始される。
【0048】
ステップS401にて、ステップS304でカメラ操作開始指示手段117のボタンが押下されてからの時間を計測するようにタイマーでカウントを始め、ステップS402に進む。
【0049】
ステップS402にて、カメラ操作の開始の指示があった直後の撮影パラメータの組合せとしての「現在の状態」を、後に復帰可能とするために記憶する。
【0050】
ステップS403で、第一検出手段114によって第一操作手段110の状態を確認する。ここで、第一操作手段110が中立状態である場合はステップS404に進み、第一状態である場合はステップS405に進み、第二状態である場合はステップS407に進む。
【0051】
ステップS404では、タイマーのカウント値を確認し、所定時間を経過しているかどうかを判定する。所定時間として本実施例では1.5秒としているが、本発明はこれに限定されることはない。もし、所定時間を経過してもステップS403で第一操作手段110が中立状態のままなら、操作者にはレンズ装置からカメラ装置を操作しようとする意図はなく、カメラ操作開始指示手段117が誤操作されて、ステップS305からステップS310に進んだものと判断して、図5の処理を終了し、図4のステップS303に戻る。ステップS404で所定時間を経過していなければ、ステップS403に戻る。
ステップS405では、タイマーカウントをリセットし、ステップS406に進む。
ステップS407では、タイマーカウントをリセットし、ステップS408に進む。
【0052】
ステップS406では、パラメータのセットが順送りで順次変更される。すなわち、図3に示された例では、カスタム設定の選択前の状態「現在の状態」からカスタム1に遷移する(順送りされる)ように指令する切換え信号が、レンズ装置100の通信手段150からカメラ装置200の通信手段250に出力される。パラメータ等のセットが変更された後、処理はステップS409に進む。
【0053】
ステップS408では、パラメータ等のセット(カスタム設定)が逆送りで順次変更される。すなわち、図3に示された例では、カスタム設定の選択前の状態「現在の状態」からカスタム2に遷移する(逆送りされる)ように指令する切換え信号が、レンズ装置100の通信手段150からカメラ装置200の通信手段250に出力される。パラメータ等のセットが変更された後、処理はステップS409に進む。
【0054】
ステップS409にて第一操作手段110が一旦操作された状態から中立状態に戻るのを待ち、ステップS410に進む。
【0055】
ステップS410では、タイマーカウント値が所定時間経過したか否かを判断する。所定時間が経過しているとカスタム設定の選択が終了したと判断して、図4のステップS303に戻る。所定時間が経過していない場合は、ステップS411に進む。
【0056】
ステップS411では、カメラ装置200のレリーズスイッチ202が半押し操作、または、全押し操作がされている場合は、カスタム設定の選択が終了したと判断し、図4のステップS303に戻る。レリーズスイッチ202が操作されていない場合は、カスタム設定の選択が完了していないと判断し、ステップS403に戻る。ちなみに、レリーズスイッチ202の全押し操作がされると、カスタム設定の選択を終了して撮影に適用するパラメータのセットが確定されるとともに、そのもとで撮影が行われる。すなわち、カメラ装置の何らかのレリーズ操作がなされると、カスタム設定の選択を終了して撮影に適用するパラメータの組合せが設定される。
【0057】
その後、ステップS403で第一操作手段110が操作されると、第一操作手段110が第一状態か第二状態かに基づいて、それぞれ順送り、逆送りでカスタム設定を切り換えて選択することができる。
【0058】
その後は前述の通りで、カスタム設定の選択を終えたとの判定で図4のステップS303に戻る。
なお、カスタム設定の呼び出し後は、カスタム設定内の各パラメータをカメラ背面の操作ダイアル214やカメラ装置側のメニュー設定にて調整や変更することが可能である。これにより、ある撮影状態から別の撮影状態に遷移する際に、基準となるカスタムモードを呼び出し、そこから微調整したい項目のみを調整することができる。このようにすると、必要最低限の調整だけで済むため、即座に次の撮影準備状態に入ることが可能となる。またここで設定したパラメータの組合せは新しいカスタム設定に登録したり、元々のカスタム設定に上書きして再度呼び出すことが可能である。
【0059】
本実施例では、記憶できるパターン数は、カスタム選択前の状態「現在の状態」を含む3パターンとした(現在の状態、カスタム1、カスタム2)。記憶できるパターンは3パターンに限定されず、2パターンでも4パターン以上でも本発明は同様に適用できる。
【0060】
また、ステップS410で、カスタム設定の選択が終了したか否かの判定を、レリーズスイッチ202の操作の有無で判断したが本発明はこれに限定されることはない。別のスイッチやボタンなどの入力に基づいて判断するようにしてもよいが、装置のコンパクト化や撮影の操作性の観点からは例示したようにレリーズスイッチの入力に基づくことがこのましい。
【0061】
本実施例においては、第一操作手段110は中立状態、第一状態、第二状態を出力することができる構成であったが、本発明はこれに限定されることはない。第一操作手段は、2つの状態を出力することができる構成で、一方が中立状態に対応し、他方が第一状態または第二状態の何れかに対応する出力をする構成で、順送り/逆送りの一方だけで変更する構成としても、同様の効果を奏することができる。
【実施例2】
【0062】
次に、各カスタム設定に登録する対象をレンズ側の機能も含むように拡張した実施例2を説明する。
【0063】
図6において実施例1の構成と異なる部分のみ説明する。実施例1では、第二操作手段118が1つのリングであったが、本実施例では、操作手段118-1、操作手段118-2のように2つ設けられている。操作手段118-1と操作手段118-2にはそれぞれ、検出手段119-1、検出手段119-2が設けられており、各々が操作手段118-1、操作手段118-2の操作量と操作方向とを検出可能になっている。操作手段118-1、操作手段118-2には、操作感をユーザーに伝えるために光軸周りの所定間隔でクリック感を感じさせる構成を有する。
【0064】
図7は、実施例1と同様に撮影に関する様々なパラメータや画像処理内容、画像記録対象の選択の組合せをカスタム設定に割り当てたものであるが、実施例2では、パラメータの項目をレンズ側の操作リングへの割り当てにまで拡張している。具体的には、操作手段118-1を操作したときに調整する対象の設定、操作手段118-2を操作したときに調整する対象の設定が追加される。
【0065】
ある条件下での撮影において、各種設定状態が「現在の状態」であったとする。これを実施例1に述べた操作により、「カスタム1」を選択したとする。すると操作手段118-1はシャッター速度変更が可能なリングとなり、操作手段118-2は絞り値を変更なリングとなる。操作の際に感じる1クリック毎に対象となるパラメータが一単位ごとに増減する。
【0066】
以上示したように、レンズ装置100に設けられたカメラ操作開始指示手段117、第一操作手段110の組合せにより、撮影環境や被写体が大きく変わった場合の撮影パラメータを容易に変更することができる。カメラ操作許可手段115は必ずしもレンズ装置100に設置されている必要はなく、カメラ装置200側に設置或いは、カメラ装置200内でメニュー内の設定メニューに含まれていてもよい。第一操作手段110はレンズ装置100光軸周りに回転可能なリング部材として構成されている。従って、正位置の構図での撮影時、縦位置の構図での撮影時にも同じ操作性を維持することができる。この構成により、撮影中においても撮影姿勢を大きく変更することなく即時に第一操作手段110を操作させたい場合にも対応が可能である。
【0067】
また、カメラ操作開始指示手段117が操作されてから所定時間の経過をカウントし始め、所定時間内に第一操作手段110の操作が無い場合は撮影パラメータの変更処理をすることなく図4のフローに復帰するため、誤操作によるカメラ装置200の機能の誤選択や撮影パラメータの不意な変更を防止できる。
【0068】
カメラ操作開始指示手段117は、レンズ装置100の光軸周りに複数個所に配置されている。カメラ操作開始指示手段117は、光軸回りで90度の間隔を空けて、4箇所に配置されているとより好ましい。こちらも、正位置(水平方向に長い)の構図での撮影時、縦位置(水平方向に短い)の構図での撮影時にも同じ操作性を維持することができる。第一操作手段110の、カメラ装置本体を操作する撮影者から見て反時計回りの回転操作が検出された状態を第一の状態、撮影者から見て時計回りの回転操作が検出された状態を第二の状態と定義した。ただし、本発明はこの操作方式に限定されることはなく、第一操作手段110が光軸方向に前後する操作部を有する部材としてもよい。この場合は、第一操作手段110が、自動復帰する所定の基準位置に対して、被写体側に移動した場合を第一状態、カメラ装置200側に移動した場合を第二状態として処理を行うようにしてもよい。また、光軸周りの回転動作と光軸方向の移動動作がともに可能な部材として構成してもよい。その場合には、状態選択の幅が増える。また、第一操作手段110は、レバー式の中点復帰スイッチでもよい。その場合は、移動方向と移動量に応じて、第一操作手段110の状態を判断する。

【0069】
また、レンズ装置100に設けられた操作部は、被写体側からカメラ装置200側に向かって操作開始指示手段、第一の操作部、第二の操作部の順で配置されている。これにより、レンズ装置100の先端側の固定部に対して操作開始指示手段を設置することで、質量のある機材をしっかり前側でホールドした状態で操作開始指示手段を操作することが可能になる。
【0070】
また、操作開始指示手段に隣接して第一操作手段を配置することでレンズ装置100のホールディングスタイル(撮影姿勢)を大きく変えることなくカスタム設定を呼び出すことができる。
【0071】
第二操作手段118(操作手段118-1、操作手段118-2)は回転操作の際にクリック感を感じる全周リングとして説明したが、必ずしもクリック感がある必然性はなく、撮影光学系101の光軸周りに設定される全周リングである必要もない。クリックがない場合は、所定単位角度の回転を検出するごとにパラメータが一単位ごとに増減する。全周リングでない場合は、レンズ側に設けられた小型のダイアルでも良い。
【0072】
本実施例では、各カスタム設定に割り当てて記憶されるパラメータの要素として、シャッター速度、絞り値、ISO感度、記憶媒体選択、ホワイトバランス設定手段、画像処理内容、操作手段の操作対象の組合せを選択できるようにした。
【0073】
カメラ装置200側にシャッター優先、絞り優先、ISO優先モードなどが設定可能なモード選択用の専用ダイアルが搭載されていない場合、或いは、専用ダイアルが搭載されていてもその表示が電子表示である場合も考えられる。その場合は、シャッター優先、絞り優先、ISO優先モードの選択も各カスタム設定に割り当てる各種パラメータ群の一部に含めることが可能である。しかし、本発明は、この構成に限定されるものではなく、レンズ装置100の機能や各種パラメータの選択、カメラ装置200の機能や各種パラメータの選択であればカスタム設定に割り当てることが可能である。
【0074】
例示した実施例では、第一操作手段として、レンズ装置の外装に撮影光学系の光軸周りに回転可能なリング部材として構成されるものとして例示したが、本発明はこの構成に限定されることはない。例えば、第一操作手段として、レンズ装置の外装に撮影光学系の光軸周りで回転可能な構成を有する部材であるが、リング形状の部材でなくてもよく、リング形状の一部を含む円弧形状の部分を含む部材でもよい。また、第一操作手段としてのリング形状の部材や円弧形状の部分を含む部材は、その部材の全てがレンズ装置の外装に露出していなくてもよく、オペレータに操作される部分がレンズ装置の外側から操作できるように露出していればよい。
【0075】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークまたは記憶媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0076】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
110 第一操作手段(第一操作部)
112 レンズマイコン(レンズ制御部)
115 カメラ操作許可手段(ロック手段、切換え手段)
117 カメラ操作開始指示手段(トリガー手段、切換え手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7