(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】チュービング装置
(51)【国際特許分類】
E02D 7/00 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
E02D7/00 Z
(21)【出願番号】P 2020131509
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩司
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177798(JP,A)
【文献】特開2015-094125(JP,A)
【文献】実開昭61-197072(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上に設置されるベースフレームと、該ベースフレームの四隅に設けられて前記レールのフランジ面を転動可能な車輪と、前記ベースフレームの上方に昇降シリンダを介して昇降可能に設けられた昇降フレームとを備え、該昇降フレームにはモータによって回転可能なチャック機構が設けられ、各フレームの貫通孔を通した円筒体を前記チャック機構により把持した状態で、前記昇降シリンダによる昇降動作と前記モータによる回転動作とを前記円筒体に与えるチュービング装置において、
前記ベースフレームには、前記レールに係合して前記円筒体に与える
前記昇降動作及び前記回転動作に対する反力を得るための複数の反力ガイドが設けられ、
前記反力ガイドは、前記ベースフレームの側面に取り付けられる基部材と、連結腕を介して前記基部材に取り付けられる係合爪部と、前記基部材と前記連結腕とを連結し、前記ベースフレームの側面を通る垂直面を境に前記係合爪部を内外方向へ揺動させる揺動軸と、前記係合爪部を前記垂直面の内側及び外側の一方の側に保持する揺動ロック手段とを備え
、
前記基部材は、前記ベースフレームの側面と対面する取付面を備え、該取付面の下端の位置が前記車輪の下端の位置よりも下方に位置されていることを特徴とするチュービング装置。
【請求項2】
前記係合爪部は、前記連結腕の下端部から前記レール側へ突出する爪部本体と、該爪部本体に組み付けられ、上面が前記レールの上側フランジを間に挟んで前記ベースフレーム下面と向き合うブロック部材とからなり、
前記係合爪部を前記垂直面の内側に保持した状態で、前記ブロック部材の上面と前記レールの上側フランジ下面とが上下に対面して配置されるとともに、前記基部材の取付面と前記ブロック部材の上面とが、互いに上下方向に重なりをもつ位置関係に置かれることを特徴とする請求項1記載のチュービング装置。
【請求項3】
前記揺動ロック手段は、前記揺動軸と平行に延びる保持ピンと、前記基部材に設けられて前記保持ピンが抜き差し可能なピン孔と、前記連結腕に設けられて前記保持ピンの周面に当接可能なピン当接部とを備え、
前記ピン当接部は、前記係合爪部が前記垂直面の内側から外側に向かう揺動を規制する外揺動規制部と、前記係合爪部が前記垂直面の外側から内側に向かう揺動を規制する内揺動規制部とを有していることを特徴とする請求項
1又は2記載のチュービング装置。
【請求項4】
前記外揺動規制部は、前記ピン孔と同径の丸孔からなることを特徴とする請求項
3記載のチュービング装置。
【請求項5】
前記複数の反力ガイドは、前記貫通孔の中心軸を回転対称軸として配置した4つの反力ガイドであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のチュービング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チュービング装置に関し、詳しくは、建築、土木の基礎工事で地中への杭の圧入や引き抜きを行うチュービング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎工事で使用されるチュービング装置は、一般に、ベースフレームに対して昇降フレームが昇降シリンダによって昇降可能に設けられ、該昇降フレームにはモータによって回転可能なチャック機構が設けられ、各フレーム中央の貫通孔を通した円筒体、例えば鋼管杭をチャック機構により把持し、モータによる回転と昇降シリンダによる昇降動作とを円筒体に伝えるように構成されている。
【0003】
この種のチュービング装置のなかでも比較的小型のものでは、ベースフレームの四隅に車輪を設け、施工現場に敷設した2本のレール(H鋼)上を走行路として移動可能に形成したものが提案され、実用化に至っている。こうした軌道用車輪を備えたチュービング装置は、低空間、狭小場所といった制約下において、レールに沿った高精度な位置決め機能を発揮できることから、横一列の杭を形成する場合における施工性及び信頼性に資するものである(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
敷設した2本のレールは、走行路を兼ねた足場架台となることから、チュービング装置には、車輪の位置に対応して4つの反力ガイド(連結具)が取り付けられ、該反力ガイドでレールの上側フランジを掴むような形で保持することにより、地盤の掘削動作に伴う浮き上がりや回転に対する反力を確保している。しかしながら、チュービング装置を吊り上げて隣の列に移設する場合、その都度、4つの反力ガイドをボルトで付け外しするため、作業に多くの手間を要していた。しかも、重量のある反力ガイドを持ち運ぶことは容易でなく、作業者の負担が大きいといった課題があった。
【0006】
そこで本発明は、段取り替えを最小限にして杭施工の安全と効率化を図ることが可能な反力ガイドを備えたチュービング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のチュービング装置は、レール上に設置されるベースフレームと、該ベースフレームの四隅に設けられて前記レールのフランジ面を転動可能な車輪と、前記ベースフレームの上方に昇降シリンダを介して昇降可能に設けられた昇降フレームとを備え、該昇降フレームにはモータによって回転可能なチャック機構が設けられ、各フレームの貫通孔を通した円筒体を前記チャック機構により把持した状態で、前記昇降シリンダによる昇降動作と前記モータによる回転動作とを前記円筒体に与えるチュービング装置において、前記ベースフレームには、前記レールに係合して前記円筒体に与える前記昇降動作及び前記回転動作に対する反力を得るための複数の反力ガイドが設けられ、前記反力ガイドは、前記ベースフレームの側面に取り付けられる基部材と、連結腕を介して前記基部材に取り付けられる係合爪部と、前記基部材と前記連結腕とを連結し、前記ベースフレームの側面を通る垂直面を境に前記係合爪部を内外方向へ揺動させる揺動軸と、前記係合爪部を前記垂直面の内側及び外側の一方の側に保持する揺動ロック手段とを備え、前記基部材は、前記ベースフレームの側面と対面する取付面を備え、該取付面の下端の位置が前記車輪の下端の位置よりも下方に位置されていることを特徴としている。
【0008】
また、前記係合爪部は、前記連結腕の下端部から前記レール側へ突出する爪部本体と、該爪部本体に組み付けられ、上面が前記レールの上側フランジを間に挟んで前記ベースフレーム下面と向き合うブロック部材とからなり、前記係合爪部を前記垂直面の内側に保持した状態で、前記ブロック部材の上面と前記レールの上側フランジ下面とが上下に対面して配置されるとともに、前記基部材の取付面と前記ブロック部材の上面とが、互いに上下方向に重なりをもつ位置関係に置かれることを特徴としている。さらに、前記揺動ロック手段は、前記揺動軸と平行に延びる保持ピンと、前記基部材に設けられて前記保持ピンが抜き差し可能なピン孔と、前記連結腕に設けられて前記保持ピンの周面に当接可能なピン当接部とを備え、前記ピン当接部は、前記係合爪部が前記垂直面の内側から外側に向かう揺動を規制する外揺動規制部と、前記係合爪部が前記垂直面の外側から内側に向かう揺動を規制する内揺動規制部とを有していることを特徴としている。
【0009】
さらに、前記外揺動規制部は、前記ピン孔と同径の丸孔からなることを特徴とし、加えて、前記複数の反力ガイドは、前記貫通孔の中心軸を回転対称軸として配置した4つの反力ガイドであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチュービング装置によれば、レール上に設置されるベースフレームの側面に垂直面を規定し、反力ガイドが垂直面を境に内外方向へ揺動する係合爪部と、該係合爪部を垂直面の内側及び外側の一方の側に保持する揺動ロック手段とを備えているので、係合爪部を揺動させてレールのフランジを掴む形にした使用状態と、フランジを離す形にした運搬状態との各状態に保持することが可能となる。これにより、チュービング装置を吊り上げる際に、反力ガイドを取り外す手間がなくなり、レールを使用した杭施工の安全と効率化を図ることができる。また、係合爪部を揺動させる操作は、主たる水平方向の移動によって少ない力で行えることから、作業者の負担軽減に役立ち、もって杭施工の省力化に寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一形態例を示すチュービング装置の側面図であって、ベースフレームをレール上に設置した状態を示す図である。
【
図8】反力ガイドを使用状態から運搬状態に変更する説明図である。
【
図9】チュービング装置を吊り上げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図9は、本発明のチュービング装置の一形態例を示している。本形態例に示すチュービング装置11は、
図1乃至
図3に示すように、地盤に敷設した2本のレール12,12上に設置されるベースフレーム13と、該ベースフレームの四隅に設けられて前記レール12のフランジ上面12aを転動可能な4つの車輪(軌道用車輪)14と、ベースフレーム13の上方に、4本のガイド筒15とその内部に収容された昇降シリンダ(図示せず)とからなる伸縮機構を介して昇降可能に設けられた昇降フレーム16と、該昇降フレーム16の上方に4本のチャックシリンダ17を介して昇降可能に設けられたチャックフレーム18とを備えており、前記ベースフレーム13、昇降フレーム16及びチャックフレーム18の中央部には、鉛直方向に貫通して同軸上に配置された杭貫通孔19が設けられている。
【0013】
昇降フレーム16には、回転伝達機構である油圧モータ20及び減速機21と、前記杭貫通孔19を囲むコーンベアリング22とが設けられている。コーンベアリング22は、円筒体(施工部材)である鋼管杭23を把持する複数のチャック部材24と対になってチャック機構を形成するもので、昇降フレーム16に対して回転自在に組み付けられ、油圧モータ20の回転が減速機21を介して伝えられる。また、コーンベアリング22の内周部には、チャック部材24の楔形に当接可能なテーパ面が形成されている。
【0014】
チャック部材24は、チャックフレーム18において、杭貫通孔19の周方向に等間隔で設けられている。具体的には、チャックフレーム18に対してリンクやチャックベアリング(図示せず)を介して吊り下げられており、チャックシリンダ17を伸縮させることよってチャック部材24が相対的に上下動する。これにより、鋼管杭23とコーンベアリング22との間にチャック部材24が差し込まれ、あるいは、引き抜かれて鋼管杭23の把持と解放とが行われる。
【0015】
チャックフレーム18の上面には、杭貫通孔19の内径に対応した内径を有する開口25aを備えた作業デッキ25が設けられ、チャックフレーム18の前面及び後面には、レール12と作業デッキ25との間を昇降するための梯子26が設けられている。作業デッキ25は、開口25aの周囲4箇所に吊り上げ用の吊り部27が設けられ、外縁部に複数の手摺28を設置することで、デッキ上からの転落防止が図られている。
【0016】
チュービング装置11を使用して鋼管杭23を圧入する場合、施工前段階として、あらかじめ杭埋設対象地盤にレール12が敷設される。レール12には、フランジ面を上にした2本のH鋼が用いられ、チュービング装置11が安定する広さのレール幅に、つまりベースフレーム13の幅寸法に整合して設置されている。こうした前提の準備がなされた後、クレーンの吊り操作でチュービング装置11がレール12上に設置される。
【0017】
軌道走行によって施工位置(杭芯位置)に移動したチュービング装置11は、まず、杭貫通孔19に鋼管杭23を挿入した状態とし、チャックシリンダ17の収縮作動によってチャックフレーム18を下降させ、チャック機構を介して昇降フレーム16との間で鋼管杭23をチャックする。続いて、昇降シリンダを収縮作動させてチャックフレーム18と昇降フレーム16とを鋼管杭23と一緒に下降させる。このとき、回転伝達機構から高トルクの回転が鋼管杭23に伝達されるため、鋼管杭23は回転しながら地盤に対して圧入された状態となる。こうして、複数の鋼管杭23を継ぎ足しながら順次押し込むことにより、鋼管杭23の下端が所定の深さに到達する。
【0018】
ところで、こうした軌道走行可能なチュービング装置11は、施工中に鋼管杭23の圧入反力を得るための反力受け構造が必要となる。そこで、チュービング装置11には、ベースフレーム13の側面における前後左右4箇所に、レール12の上側フランジを掴むような形で設けられた4つの反力ガイド29が具備され、昇降動作や回転動作が鋼管杭23に与えられたときに、これに伴う浮き上がりや回転に対する反力を確保している。こうした4つの反力ガイド29は、全て同一構造を有しており、杭貫通孔19の中心軸Cを回転対称軸として前後左右に離間して整列配置されている(
図2)。
【0019】
反力ガイド29は、
図4乃至
図6に示すように、主に厚板材を使用して形成した部材同士をピン結合するブラケット構造であって、ベースフレーム13の側面に取り付けられる基部材30と、前後一対の連結腕31,31を介して基部材30に取り付けられる係合爪部32と、基部材30と連結腕31とを連結し、ベースフレーム13の側面を通る垂直面Sを境に係合爪部32を内外方向へ揺動させる揺動軸(揺動ピン)33と、係合爪部32を前記垂直面Sの内側及び外側の一方の側に保持する揺動ロック手段34とを備えている。
【0020】
基部材30は、上部中央に設けられた吊り孔30aと、連結腕31を差し込んでピン結合する前後一対の二股部30b,30bと、ベースフレーム13の側面と対面する取付面30cとを備えており、ベースフレーム13の側面に密着させた状態で、2箇所のプッシャーボルト35,35を締めたり緩めたりして前後方向の傾きを調節した後、複数の取付ボルト36を使用して固定される。この固定状態では、取付面30cの下端の位置が車輪14の下端の位置よりも、つまりレール12の上側フランジ上面12aよりも下方に位置され、基部材30とレール12とが、互いに左右方向(レール幅方向)の隙間と上下方向の重なりとを有して配置されている。これにより、軌道走行中は基部材30がレール12上を案内するガイド機能を果たし、車輪14がレール12から脱輪してしまうことはない。一方、施工中は鋼管杭23の回転動作でチュービング装置11が回転しようとしても、基部材30が上側フランジの縁部12bに当接してこれ以上回転しないように拘束する。
【0021】
係合爪部32は、連結腕31の下端部からレール12側(内側)へ突出する爪部本体37と、該爪部本体37に組み付けられ、上面38aがレール12の上側フランジを間に挟んでベースフレーム13下面と向き合う前後一対のブロック部材38,38とからなり、爪部本体37に設けられた山形傾斜面37aに両ブロック部材38,38を配置した状態で、複数の取付ボルト39を使用して固定される。この固定状態では、ブロック部材38に設けられたテーパ状の下面38bが山形傾斜面37aに当接し、両ブロック部材38,38の上面38a,38aが面一となって平坦状になる。これにより、爪部本体37とブロック部材38,38との組付強度が得られるとともに、補給部品としてブロック部材38の交換も容易な係合爪部32の構造が得られる。
【0022】
ここで、反力ガイド29は、揺動軸33を中心に内方向へ揺動した係合爪部32が垂直面Sの内側に位置すると、ブロック部材38の上面38aとレール12の上側フランジ下面(裏面)12cとが上下に対面(近接)して配置された使用状態になる。このとき、基部材30の取付面30cとブロック部材38の上面38aとは、互いに上下方向に重なりをもつ位置関係に置かれる。これにより、施工中に鋼管杭23の押込み動作でチュービング装置11が浮き上がろうとしても、ブロック部材38の上面38aがフランジ下面12cに当接してこれ以上浮き上がらないように拘束するとともに、上側フランジとの間で基部材30の掛かり代を確保して回転をも拘束する。一方、外方向へ揺動した係合爪部32が垂直面Sの外側に位置すると、上側フランジの下方空間が空けられ、クレーンの吊り操作が可能な運搬状態になる。これにより、チュービング装置11を吊り上げて、例えば、隣の列のレール上に移設することができる。
【0023】
こうした使用状態と運搬状態との各状態を保持するために、前記揺動ロック手段34は、揺動軸33と平行に延びる保持ピン40と、基部材30の二股部30bに設けられて前記保持ピン40が抜き差し可能なピン孔30dと、連結腕31に設けられて保持ピン40の周面に当接可能なピン当接部41とを備えている。
【0024】
ピン当接部41は、連結腕31を板材から形成するときに作り出される端面(切断面)であって、
図7に示すように、保持ピン40の周面に当接して、係合爪部32が垂直面Sの内側から外側に向かう揺動を規制する外揺動規制部41aと、係合爪部32が垂直面Sの外側から内側に向かう揺動を規制する内揺動規制部41bとを有している(
図9も参照)。また、内外揺動規制部41a,41bのうち一方の外揺動規制部41aは、基部材30のピン孔30dと同径の丸孔からなり、各孔を一致させて保持ピン40を差し込むと、実質的には保持ピン40の全周面が外揺動規制部(丸孔)41aに当接した状態、すなわち、使用状態にある反力ガイド29の係合爪部32を、外方向だけでなく内方向にも揺動不能に規制した状態となる。
【0025】
このように形成したチュービング装置11は、隣の列のレール上に移設する段取り替えを行う際に、反力ガイド29を使用状態から運搬状態へと変更する。具体的に手順を追って説明すると、まず、保持ピン40を抜き取って外揺動規制部41aとの間で当接状態を解除する。このとき、
図8に示すように、自重で外方向へと揺動する係合爪部32の動きに従って連結腕31を持ち上げ、保持ピン40をピン孔30dに差し込むことが可能な位置にて仮保持する。この状態で、
図9に示すように、抜き取った保持ピン40を再びピン孔30dに差し込んだ後、連結腕31の内揺動規制部41bを保持ピン40の周面に当接させ、係合爪部32の内方向への揺動を規制する。こうして、4箇所の反力ガイド29を全て同様に操作し、係合爪部32がベースフレーム13の真下に入り込むのを規制した運搬状態で、機体の吊り上げ操作が行われる。
【0026】
このように、本発明のチュービング装置11によれば、レール12上に設置されるベースフレーム13の側面に垂直面Sを規定し、反力ガイド29が垂直面Sを境に内外方向へ揺動する係合爪部32と、該係合爪部32を垂直面Sの内側及び外側の一方の側に保持する揺動ロック手段34とを備えているので、係合爪部32を揺動させてレール12のフランジを掴む形にした使用状態と、フランジを離す形にした運搬状態との各状態に保持することが可能となる。これにより、チュービング装置11を吊り上げる際に、反力ガイド29を取り外す手間がなくなり、レール12を使用した杭施工の安全と効率化を図ることができる。また、係合爪部32を揺動させる操作は、主たる水平方向の移動によって少ない力で行えることから、作業者の負担軽減に役立ち、もって杭施工の省力化に寄与するものとなる。
【0027】
また、揺動ロック手段34が揺動軸33と平行な保持ピン40を備え、連結腕31に設けたピン当接部41を基部材30のピン孔30dを貫く保持ピン40の周面に当接可能な構成とし、更にはピン当接部41を構成する内外揺動規制部41a,41bにより、係合爪部32が垂直面Sを境に内側から外側に又はその逆に向かう揺動を規制するので、使用位置や運搬位置での保持状態を簡便なピン固定構造によって実現することが可能となり、係合爪部32の位置の変更と保持とを保持ピン40を抜き差しする簡単な操作で行うことができる。
【0028】
さらに、外揺動規制部41aが基部材30のピン孔30dと同径の丸孔からなるので、使用状態にある係合爪部32を安定させることができる。しかも、実施例のように、保持ピン40のピン孔30dを一箇所に設けるだけで反力ガイド29を各位置に保持できるので、安価で実用性に優れたものである。とりわけ、基部材30において取付面30cの下端の位置を車輪14の下端の位置よりも下方に位置させるので、チュービング装置11の運転に伴う円筒体の回転が揺動ロック手段に伝わることを回避し、揺動ロック手段を小型・軽量に構成することができる。すなわち、保持ピンを抜き差しするピン固定構造であれば、一連の操作がより少ない力で行えるという利点がある。加えて、反力受け構造が杭貫通孔19の中心軸Cを回転対称軸として配置した4つの反力ガイド29からなるので、杭の圧入反力を得るための必要な機能を安定して確保することができる。
【0029】
なお、本発明のチュービング装置は、前記形態例に限定されるものではなく、反力ガイドは、ベースフレームに設けてあればよく、円筒体を地盤に圧入する際に必要な回転反力と押込み反力とが得られる構成であれば、その形状や数量、配置は任意である。また、揺動ロック手段は、油圧の力で達成される構成であってもよい。さらに、ピン当接部は、使用状態と運搬状態との各状態に対応する2つのピン孔を設けて、これらのピン孔に保持ピンを選択的に抜き差しする構成としてもよい。加えて、チャック機構として楔形のチャック部材を使用したチュービング装置を示して説明したが、この他にもバンドチャック式などのチャック機構を設けたチュービング装置であってもよい。また、反力ガイドを取り外せば地上に設置して施工が行えることから、チュービング装置が使用される現場のニーズに広く対応することができる。
【符号の説明】
【0030】
11…チュービング装置、12…レール、12a…フランジ上面、12b…縁部、12c…フランジ下面、13…ベースフレーム、14…車輪、15…ガイド筒、16…昇降フレーム、17…チャックシリンダ、18…チャックフレーム、19…杭貫通孔、20…油圧モータ、21…減速機、22…コーンベアリング、23…鋼管杭、24…チャック部材、25…作業デッキ、25a…開口、26…梯子、27…吊り部、28…手摺、29…反力ガイド、30…基部材、30a…吊り孔、30b…二股部、30c…取付面、30d…ピン孔、31…連結腕、32…係合爪部、33…揺動軸、34…揺動ロック手段、35…プッシャーボルト、36…取付ボルト、37…爪部本体、37a…山形傾斜面、38…ブロック部材、38a…上面、38b…下面、39…取付ボルト、40…保持ピン、41…ピン当接部、41a…外揺動規制部、41b…内揺動規制部