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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】半導体記憶装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10B 43/27 20230101AFI20240610BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240610BHJP
   H10B 41/27 20230101ALI20240610BHJP
【FI】
H10B43/27
H01L21/302 105A
H10B41/27
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020132863
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029546
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】葉末 俊介
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0330948(US,A1)
【文献】特開2021-028968(JP,A)
【文献】特開2003-347274(JP,A)
【文献】特開2016-171280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0357341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 43/27
H10B 41/27
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と犠牲層とを交互に積層することにより被加工部を形成する工程と、
前記被加工部の表面上にエッチングマスクを形成する工程と、
前記エッチングマスクの一部である第1領域には、前記エッチングマスクの表面から前記被加工部の表面まで到達する複数の貫通孔を形成する工程と、
前記エッチングマスクのうち、前記第1領域に隣接する第2領域には、前記エッチングマスクの表面の一部を前記被加工部に向かって凹状に後退させた凹部、を形成する工程と、を備え、
前記第2領域に前記凹部を形成する工程は、
前記エッチングマスクの表面に、反射防止膜を形成する工程と、
前記反射防止膜の表面にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜のうち前記凹部に対応する部分を除去することにより、前記レジスト膜に前記凹部に対応する開口を形成する工程と、
前記エッチングマスク及び前記反射防止膜に対しエッチングを行い、前記エッチングマスク及び前記反射防止膜のうち、前記レジスト膜の前記開口の直下の部分をエッチングすることにより前記エッチングマスクに前記凹部を形成する工程と、
を含み、
前記複数の貫通孔は、前記第2領域に前記凹部が形成された前記エッチングマスクの前記第1領域に形成され、
前記エッチングマスクの表面に対し垂直な方向に沿って見た場合において、
前記凹部のうち前記第1領域側の端部が、前記第1領域と前記第2領域との境界と平行となり、
前記第1領域と前記第2領域との境界に最も近い位置に形成された前記貫通孔を第1貫通孔とし、
前記境界に対し垂直な方向に沿って、前記第1貫通孔と隣り合う位置に形成された前記貫通孔を第2貫通孔としたときに、
前記第1貫通孔の縁から前記第2貫通孔の縁までの最短距離と、前記第1貫通孔の縁から前記凹部までの最短距離と、が互いに等しくなり、前記第1貫通孔の幅と、前記第2貫通孔の幅とが、同一の高さ位置において互いに同一となるように、それぞれの前記貫通孔及び前記凹部を形成する半導体記憶装置の製造方法。
【請求項2】
前記エッチングマスクの表面に対し垂直な方向に沿って見た場合において、
前記境界に対し垂直な方向に沿って、前記第2貫通孔と隣り合う位置に形成され、且つ、前記第1貫通孔とは反対側となる位置に形成された前記貫通孔を第3貫通孔としたときに、
前記第1貫通孔の縁から前記第2貫通孔の縁までの最短距離と、前記第2貫通孔の縁から前記第3貫通孔の縁までの最短距離と、が互いに等しくなるように、それぞれの前記貫通孔を形成する、請求項に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1領域に前記貫通孔を形成する工程は、
前記凹部が形成された前記エッチングマスクの、前記第1領域及び前記第2領域を含む表面に第2反射防止膜を形成する工程と、
前記第2反射防止膜の表面に塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜の表面に第2レジスト膜を形成する工程と、
前記第2レジスト膜のうち前記貫通孔に対応する部分を除去することにより、前記第2レジスト膜に前記貫通孔に対応する第2開口を形成する工程と、
前記塗布膜と、前記第2反射防止膜と、前記エッチングマスクと、に対しエッチングを行い、前記塗布膜と、前記第2反射防止膜と、前記エッチングマスクと、のうち、前記第2レジスト膜の前記第2開口の直下の部分をエッチングすることにより前記エッチングマスクに前記貫通孔を形成する工程と、
を含む、請求項1に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される実施形態は、半導体記憶装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばNAND型フラッシュメモリのような半導体記憶装置では、複数の絶縁層と導体層が交互に積層された積層部を貫通するように、柱状のメモリピラーが設けられる。それぞれのメモリピラーには、その長手方向に沿って、情報を記憶するためのメモリセルが複数形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-176103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成の半導体記憶装置を製造するにあたっては、積層部となる部分に対しエッチングを行い、メモリピラーを配置するための凹部、すなわちメモリホールを複数形成する必要がある。その際、所謂「ローディング効果」の影響により、複数の凹部が形成されている領域のうち端部に形成される凹部においては、他の凹部に比べてエッチングレートが低下してしまう傾向がある。
【0005】
例えば、エッチングに用いられるマスクに対しOPC補正を行うこと等により、端部に形成される凹部の内径を、他の凹部の内径よりも大きくすれば、全ての凹部のエッチングレートを均等に近づけることが可能となる。しかしながら、近年の半導体記憶装置には小型化、高集積化が高いレベルで求められるので、一部の凹部の形状を大きくすることは好ましくない。
【0006】
本開示によれば、製造時におけるローディング効果の影響を低減することのできる半導体記憶装置、及びその製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る半導体記憶装置は、絶縁層と導体層とが交互に積層されている積層部と、前記積層部を貫通している複数のメモリピラーと、を備える。前記積層部の表面に対し垂直な方向に沿って見た場合において、前記積層部は、複数の前記メモリピラーが設けられている部分である第1領域と、前記第1領域に隣接する部分であって、前記メモリピラーが設けられていない部分である第2領域と、を有している。前記第1領域と前記第2領域との境界に最も近い位置に形成された前記メモリピラーを第1メモリピラーとし、前記境界に対し垂直な方向に沿って、前記第1メモリピラーと隣り合う位置に形成された前記メモリピラーを第2メモリピラーとしたときに、前記積層部の表面における前記第1メモリピラーの幅と、当該表面における前記第2メモリピラーの幅とが互いに同一となっている。
【0008】
また、本開示に係る半導体記憶装置の製造方法は、絶縁層と犠牲層とを交互に積層することにより被加工部を形成する工程と、前記被加工部の表面上にエッチングマスクを形成する工程と、前記エッチングマスクの一部である第1領域には、前記エッチングマスクの表面から前記被加工部の表面まで到達する複数の貫通孔を形成し、且つ、前記エッチングマスクのうち、前記第1領域に隣接する第2領域には、前記エッチングマスクの表面の一部を前記被加工部に向かって凹状に後退させた凹部、を形成する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る半導体記憶装置の構成を示す断面図である。
図2図2は、図1に示される半導体記憶装置の構成を示す上面図である。
図3図3は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図4図4は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図5図5は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図6図6は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図7図7は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図8図8は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図9図9は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図10図10は、従来の製造方法における問題点を説明するための図である。
図11図11は、従来の製造方法における問題点を説明するための図である。
図12図12は、従来の製造方法における問題点を説明するための図である。
図13図13は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図14図14は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す上面図である。
図15図15は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図16図16は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図17図17は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図18図18は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図19図19は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図20図20は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図21図21は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図22図22は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
図23図23は、図1に示される半導体記憶装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
本実施形態に係る半導体記憶装置10は、NAND型フラッシュメモリとして構成された不揮発性の記憶装置である。半導体記憶装置10では、複数のメモリセルが3次元に配列されている。図1を参照しながら、半導体記憶装置10の構成について説明する。
【0012】
半導体記憶装置10は、半導体層20と、積層部50と、複数のメモリピラー100と、を備えている。
【0013】
半導体層20は、それぞれのメモリピラー100の下端に繋がる所謂「ソース線」として機能する層である。半導体層20は、例えば、一部に不純物がドープされたシリコン基板である。半導体層20は、シリコン基板を上面から覆うように形成されたアモルファスシリコンからなる層であってもよい。この場合、シリコン基板と半導体層20との間には、半導体記憶装置10へのデータの読み書きを実現するための周辺回路が形成されていてもよい。
【0014】
積層部50は、半導体層20を上方側から覆うように形成された被膜である。尚、ここでいう「上方」とは、半導体記憶装置10を図1のように見た場合における「上方」のことである。以下の説明においても同様に、「上方」や「下方」等の語を用いることがあるが、その場合はいずれも、半導体記憶装置10を図1のように見た場合における方向を示す語として用いることとする。
【0015】
積層部50では、複数の絶縁層30と導体層40とが、半導体層20の上面に対し垂直な方向に沿って並ぶよう交互に積層されている。絶縁層30は、それぞれの導体層40の間を電気的に絶縁するための層である。絶縁層30は、例えば、酸化シリコンを含む材料により形成されている。導体層40は、後に説明するように、メモリピラー100に沿って形成された各トランジスタのゲートに接続され、当該ゲートに対し電圧を印可するための層である。導体層40は、所謂「ワード線」として機能する。導体層40は、例えばタングステンを含む材料により形成されている。
【0016】
メモリピラー100は、略円柱形状に形成された棒状の部材である。メモリピラー100は、その長手方向が、複数の絶縁層30及び導体層40の積層方向に沿うように配置されている。メモリピラー100は、積層部50の上端から下方に向かって、半導体層20の途中となる位置まで伸びている。つまり、メモリピラー100は、絶縁層30及び導体層40からなる積層部50の全体を上下方向に貫通しており、その下端は、ベース層である半導体層20に繋がっている。半導体記憶装置10において、メモリピラー100は複数設けられている。
【0017】
それぞれのメモリピラー100は、積層部50に形成されたメモリホールMHの内側に設けられている。メモリホールMHは、絶縁層30及び導体層40の全体を積層方向に沿って、すなわち図1の上下方向に沿って貫通するように形成されている。
【0018】
それぞれのメモリピラー100は、半導体層110とメモリ膜120とを有している。半導体層110は、メモリピラー100の大部分を占める部分であって、例えばアモルファスシリコンからなる材料によって形成されている。メモリピラー100の内側に、例えば絶縁性の材料からなる他の層が形成されていてもよい。
【0019】
メモリ膜120は、半導体層110の側面全体を覆う膜である。メモリ膜120は複数の膜を積層することにより形成されているのであるが、図1においては、これらの全体が単一のメモリ膜120として描かれている。メモリ膜120を構成する複数の膜には、その内側から順に、トンネル絶縁膜、電荷蓄積膜、ブロック絶縁膜が含まれる。最も外側に形成されたブロック絶縁膜には、積層された導体層40のそれぞれが接続されている。
【0020】
メモリピラー100のうち、それぞれの導体層40が接続されている部分の内側は、トランジスタとして機能する。つまり、半導体記憶装置10においては、それぞれのメモリピラー100の長手方向に沿って、複数のトランジスタが直列に接続された状態となっている。それぞれの導体層40は、各トランジスタのゲートとして機能する。トランジスタの内側にある半導体層110は、当該トランジスタのチャネルとして機能する。
【0021】
メモリピラー100の長手方向に沿って、上記のように直列に並ぶそれぞれのトランジスタは、データを記憶するためのメモリセルとして機能する。また、直列に並ぶ複数のメモリセルの両端部に形成されたトランジスタは、各メモリセルのチャネルを流れる電流を制御するためのセレクトトランジスタとして機能する。
【0022】
メモリ膜120が有する電荷蓄積膜には、導体層40に電圧が印加されることにより電荷が蓄積される。電荷蓄積層に蓄積された電荷量が、メモリセルに保持されるデータに対応したものとなる。メモリセルは、電荷蓄積層として例えば窒化シリコン膜等を用いたチャージトラップ型のものであってもよく、電荷蓄積層として例えばシリコン膜等を用いたフローティングゲート型のものであってもよい。
【0023】
メモリピラー100の下方側の端部においては、メモリ膜120が除去されており、半導体層110の下端が半導体層20に対して接続されている。これにより、ソース線として機能する半導体層20と、各トランジスタのチャネルとが電気的に接続されている。半導体層110の上端は、不図示のコンタクトを介してビット線に接続されている。
【0024】
尚、各メモリセルに対するデータの読み書き等を実現するための周辺の回路の構成や、その具体的な動作としては、既に公知となっている様々な態様を採用することができる。このため、更なる具体的な説明については省略する。
【0025】
図2は、図1に示される半導体記憶装置10を上面から見て描いたものである。積層部50のうち最も上方側の表面のことを、以下では「表面S10」とも表記する。図2は、半導体記憶装置10の積層部50を、表面S10に対し垂直な方向に沿って見た場合の図、ということができる。このように見た場合においては、積層部50は、複数のメモリピラー100が設けられている部分である第1領域と、第1領域に隣接する部分であって、メモリピラー100が設けられていいない第2領域と、を有している。
【0026】
図2において符号「BD」が付されている一点鎖線は、第1領域と第2領域との境界を表している。当該境界のことを、以下では「境界BD」とも表記する。このような境界BDは、例えば、図2のように表面S10に対し垂直な方向に沿って見た場合において、複数のメモリピラー100の外周に接するような直線であり、且つ、積層部50を、複数のメモリピラー100が配置されている部分と、メモリピラー100が配置されていない部分とに分割するもの、として定義することができる。
【0027】
尚、図1及び図2は、半導体記憶装置10の全体を表しているのではなく、半導体記憶装置10の一部のみを表している。例えば、図2において描かれている第2領域の更に右側となる位置には、左側と同様の第1領域が設けられていてもよい。また、図2において描かれている第1領域の更に左側となる位置には、右側と同様の第2領域が設けられていてもよい。
【0028】
第2領域には、分離部200が設けられている。分離部200は、複数のメモリピラー100や積層部50を、「ブロック」と称されるグループごと、若しくは「フィンガー」と称されるグループごとに分割するものである。分離部200は、図1の紙面奥行き方向に沿って伸びるように設けられている。メモリピラー100と同様に、分離部200は積層部50を貫通している。
【0029】
分離部200は、積層部50に形成されたスリットSTの内側に設けられている。スリットSTは、メモリホールMHと同様に、絶縁層30及び導体層40の全体を積層方向に沿って貫通するように形成されている。
【0030】
分離部200は、半導体210と絶縁膜220とを有している。半導体210は、分離部200の大部分を占める部分であって、例えばアモルファスシリコンからなる材料によって形成されている。分離部200の内側に、例えば導電性の材料からなる他の層が形成されていてもよい。絶縁膜220は、半導体210の側面全体を覆う膜である。絶縁膜220は、例えば、酸化シリコンを含む材料により形成されている。
【0031】
分離部200の下方側の端部においては、絶縁膜220が除去されており、半導体210の下端が半導体層20に対して接続されている。これにより、ソース線として機能する半導体層20と、半導体210とが電気的に接続されている。半導体210の上端は、不図示のコンタクトを介して、半導体記憶装置10の上方側部分に形成された不図示の配線層に接続されている。このように、分離部200は、複数のメモリピラー100や積層部50を分割する機能に加えて、半導体層20と上記の配線層とを電気的に接続する機能をも有している。
【0032】
以下、本実施形態に係る半導体記憶装置10の製造方法について説明する。
【0033】
<積層工程>積層工程では、半導体層20の上面を覆うように、複数の絶縁層30及び犠牲層60が交互に形成される。図3には、積層工程が完了した状態が示されている。積層された絶縁層30及び犠牲層60の全体は、後に説明するように、メモリホールMH等を形成するための加工が施される部分である。このため、積層工程において積層された絶縁層30及び犠牲層60の全体のことを、以下では「被加工部70」とも表記する。
【0034】
被加工部70は、後の置換工程を経て、最終的には先に述べた積層部50となる部分である。被加工部70のうち、後に積層部50の第1領域となる部分のことを、以下では「被加工部70の第1領域」のように表記する。同様に、被加工部70のうち、後に積層部50の第2領域となる部分のことを、以下では「被加工部70の第2領域」のように表記する。更に、被加工部70における第1領域と第2領域との境界のことを、積層部50の場合と同様に、以下では「境界BD」と表記する。
【0035】
犠牲層60は、後の置換工程において導体層40に置き換えられる層であって、例えば窒化シリコンを含む材料により形成される。積層工程においては、絶縁層30及び犠牲層60からなる被加工部70が、例えばCVDにより形成される。このように、積層工程は、絶縁層30と犠牲層60とを交互に積層することにより被加工部70を形成する工程、となっている。
【0036】
積層工程が完了した時点における被加工部70の表面のことを、以下では「表面S11」とも表記する。表面S11は、最終的には、積層部50の表面S10となる面である。
【0037】
<マスク形成工程>積層工程の後に行われるマスク形成工程では、被加工部70の表面S11上を覆うようにエッチングマスク300が形成される。図4には、マスク形成工程が完了した状態が示されている。エッチングマスク300としては、比較的高いエッチング耐性を有するカーボン系のマスクを用いることが好ましく、例えばAPFを用いることが好ましい。このように、マスク形成工程は、被加工部70の表面S11上にエッチングマスク300を形成する工程となっている。マスク形成工程が完了した時点におけるエッチングマスク300の表面のことを、以下では「表面S20」とも表記する。
【0038】
<マスク加工工程>マスク形成工程の後に行われるマスク加工工程では、エッチングマスク300に貫通孔310と凹部320とが形成される。図5には、マスク加工工程が完了した状態が示されている。貫通孔310は、メモリホールMHが形成されるそれぞれの位置において貫通孔310を貫通するように形成される穴である。それぞれの貫通孔310は、エッチングマスク300の表面S20から、被加工部70の表面S11まで到達するように形成される。表面S20に対し垂直な方向に沿って見た場合における貫通孔310の形状は、後に形成されるメモリホールMHの形状と概ね同じである。
【0039】
エッチングマスク300についても、積層部50や被加工部70の場合と同様に「第1領域」及び「第2領域」を定義する。すなわち、エッチングマスク300の「第1領域」とは、エッチングマスク300のうち貫通孔310が形成される部分のことであって、被加工部70の第1領域を上方から覆っている部分のことである。エッチングマスク300の「第2領域」とは、エッチングマスク300のうち貫通孔310が形成されない部分のことであって、被加工部70の第2領域を上方から覆っている部分のことである。
【0040】
エッチングマスク300における第1領域と第2領域との境界のことを、積層部50の場合と同様に、以下では「境界BD」とも表記する。表面S20に対し垂直な方向に沿って見た場合においては、エッチングマスク300の境界BDは、被加工部70の境界BDと重なった状態となる。
【0041】
エッチングマスク300の境界BDは、図2を参照しながら説明したような、積層部50の境界BDと同じように定義することができる。すなわち、エッチングマスク300の境界BDは、表面S20に対し垂直な方向に沿って見た場合において、複数の貫通孔310の縁に接するような直線であり、且つ、エッチングマスク300を、複数の貫通孔310が形成されている部分と、貫通孔310が形成されていない部分とに分割するもの、として定義することができる。
【0042】
マスク加工工程では、上記のようにエッチングマスク300の第1領域に複数の貫通孔310が形成されるのに加えて、エッチングマスク300の第2領域に凹部320が形成される。凹部320は、図5に示されるように、エッチングマスク300の表面S20の一部を被加工部70に向かって凹状に後退させたものである。凹状に後退した部分におけるエッチングマスク300の表面のことを、表面S20とは区別して、以下では「表面S21」とも表記する。このような凹部320を形成することの効果や、具体的な形成方法については、後に説明する。
【0043】
このように、マスク加工工程は、エッチングマスク300の一部である第1領域に、エッチングマスク300の表面S20から被加工部70の表面S11まで到達する複数の貫通孔310を形成し、且つ、エッチングマスク300のうち、第1領域に隣接する第2領域に、エッチングマスク300の表面S20の一部を被加工部70に向かって凹状に後退させた凹部320、を形成する工程となっている。
【0044】
<凹部形成工程>マスク加工工程の後に行われる凹部形成工程では、後にメモリホールMHとなる凹部71が、例えばRIE(Reactive Ion Etching)により形成される。図6には、凹部形成工程が完了した状態が示されている。凹部形成工程では、被加工部70のうち、貫通孔310の直下となる位置にイオンが到達することによって被加工部70がエッチングされ、これにより凹部71が形成されて行く。
【0045】
凹部71は、被加工部70の表面S11から、半導体層20の途中となる位置まで形成される。このように、凹部形成工程は、被加工部70を貫通し、その下にある半導体層20の途中まで至る凹部71、を形成する工程となっている。凹部形成工程において、半導体層20は、凹部71を形成する際におけるエッチングストッパーとして機能する。
【0046】
凹部形成工程においては、エッチングマスク300も僅かにエッチングされる。このため、凹部形成工程が完了した時点におけるエッチングマスク300の各部の厚さは、マスク加工工程が完了した時点における当初の厚さよりも薄くなっている。ただし、エッチングマスク300の第2領域は、凹部320も含めて、凹部形成工程が完了した時点においても依然として被加工部70の第2領域全体を覆っている。このため、凹部形成工程においては、被加工部70のうち第2領域における表面S11はエッチングされない。凹部形成工程が完了すると、エッチングマスク300はアッシングにより除去される。
【0047】
<メモリピラー形成工程>凹部形成工程の後に行われるメモリピラー形成工程では、凹部71の内周面に、ブロック絶縁膜、電荷蓄積膜、トンネル絶縁膜、が順に形成され、これにより、メモリ膜120が形成される。その後、メモリ膜120の更に内側に半導体層110が形成され、これによりメモリピラーが形成される。図7には、メモリピラー形成工程が完了した状態が示されている。メモリ膜120及び半導体層110の形成は、いずれも、例えばCVDにより行われる。
【0048】
<スリット形成工程>メモリピラー形成工程の後に行われるスリット形成工程では、被加工部70の第2領域に、後にスリットSTとなるスリット状の凹部72が、例えばRIEにより形成される。図8には、スリット形成工程が完了した状態が示されている。凹部72の形状は、図1を参照しながら説明したスリットSTの形状と同じである。
【0049】
図示は省略するが、スリット形成工程においても、凹部形成工程の場合と同様に被加工部70の表面S11にエッチングマスクが予め形成され、当該エッチングマスクの開口を介して被加工部70の一部がエッチングされる。凹部72は、被加工部70の表面S11から、半導体層20の途中となる位置まで形成される。
【0050】
<置換工程>スリット形成工程の後に行われる置換工程では、被加工部70において複数形成されていた犠牲層60が導体層40に置き換えられる。図9には、置換工程が完了した状態が示されている。置換工程では、凹部72を介したウェットエッチングにより全ての犠牲層60が除去される。その後、犠牲層60が形成されていた空間に、例えばタングステンを含む金属材料が埋め込まれ、これにより導体層40が形成される。金属材料は、例えばCVDによって埋め込まれる。犠牲層60が導体層40に置き換えられることにより、被加工部70は積層部50となる。また、被加工部70に形成されていた凹部71は積層部50のメモリホールMHとなり、被加工部70に形成されていた凹部72は積層部50のスリットSTとなる。
【0051】
<分離部形成工程>置換工程の後に行われる分離部形成工程では、スリットSTの内周面に絶縁膜220が形成される。その後、絶縁膜220の更に内側に半導体210が形成され、これにより分離部200が形成される。これにより、図1に示される半導体記憶装置10が完成する。絶縁膜220及び半導体210の形成は、いずれも、例えばCVDにより行われる。
【0052】
マスク加工工程において、エッチングマスク300の第2領域に凹部320を形成する理由について説明する。先ず、従来の製造方法のように、マスク加工工程において凹部320を形成しない場合の例を、本実施形態の比較例として説明する。図10には、この比較例に係る製造方法において、マスク加工工程が完了した状態が示されている。比較例に係るマスク加工工程が完了した時点においては、エッチングマスク300の第1領域には、図5の例と同様に複数の貫通孔310が形成されている。一方、エッチングマスク300の第2領域には、図5の例とは異なり凹部320が形成されていない。
【0053】
エッチングマスク300が図10のように加工された後においても、続く凹部形成工程を行えば、図6と同様の凹部71を形成することができるようにも思われる。しかしながら、この場合には、それぞれの凹部71を均等に形成することが難しくなる。図11には、図10の状態に続いて凹部加工工程が行われている途中の状態が模式的に示されている。図11に示されるように、この比較例においては、境界BDに最も近い位置に形成される凹部71のエッチングレートが、他の位置に形成される凹部71のエッチングレートよりも低くなってしまう。
【0054】
その理由は以下の通りである。一般に知られているように、RIE等による異方性エッチングが行われる際には、所謂「ローディング効果」により、加工パターンの粗密に応じてエッチングマスク300の消費レートが場所ごとに変化してしまう。この比較例の場合には、複数の貫通孔310が密に形成された第1領域では、エッチングマスク300の消費レートが比較的大きくなる一方で、貫通孔310が形成されていない第2領域では、エッチングマスク300の消費レートが比較的小さくなる。
【0055】
このため、図11において点線DL1で囲まれた部分のように、境界BD及びその近傍部分においては、エッチングマスク300の表面S20において段差が生じてしまう。具体的には、第1領域における表面S20の高さ位置に比べて、第2領域における表面S20の高さ位置の方が高くなってしまう。
【0056】
RIEにおいて、貫通孔310を通り被加工部70へと到達するフッ化炭素イオン(CF)は、その全てが表面S20に対して垂直な方向に沿って進むのではなく、同方向に対し傾斜した方向に沿って進むものも存在する。すなわち、フッ化炭素イオンが進む方向については、所定の角度分布が存在する。
【0057】
このため、例えば、境界BDよりも第2領域側の空間において表面S20に向かうフッ化炭素イオンの一部は、所謂「シャドウイング効果」により、エッチングマスク300のうち点線DL1で囲まれた段差部分に遮られてしまい、被加工部70に到達することができなくなる。その結果、境界BDに最も近い位置に形成される凹部71のエッチングレートが、他の位置に形成される凹部71のエッチングレートよりも低くなってしまうのである。
【0058】
また、第2領域においては、広範囲におけるエッチングマスク300がエッチングされることに伴って、エッチングマスク300から分離した成分が一時的に浮遊する。当該成分の一部は、境界BDの近傍にある貫通孔310の内側に入り込み、フッ化炭素イオンによる被加工部70のエッチングを妨げてしまう。このような現象によっても、境界BDに最も近い位置に形成される凹部71のエッチングレートが低下してしまうと考えられる。
【0059】
図11の状態から、全ての凹部71を半導体層20まで到達するように加工しようとすると、凹部形成工程におけるRIEを過剰に行う必要がある。しかしながら、RIEを過剰に行うことで全ての凹部71を形成しようとすると、それぞれの凹部71の内径が、少なくとも一部において大きくなり過ぎてしまう可能性がある。近年では、高集積化のために、被加工部70における積層数を増加させる傾向があるが、被加工部70における積層数が増加するほど、上記のような問題が顕在化し、過剰なRIEによって凹部71を形成することが難しくなる。
【0060】
境界BDに最も近い位置に形成される凹部71のエッチングレートが低下してしまう現象を防止するための対策としては、例えば図12に示される例のように、境界BDに最も近い位置に形成される凹部71の内径D21を、他の凹部71の内径D20に比べて大きくすることが考えられる。具体的には、マスク加工工程において例えばOPC補正を行うことにより、境界BDに最も近い位置に形成される貫通孔310の内径D21を、他の貫通孔310の内径D20に比べて大きく形成しておいた後に、続く凹部形成工程を行うことが考えられる。
【0061】
この場合、境界BDに最も近い位置に形成される凹部71のエッチングレートが、図11の場合よりも高くなるので、上記のようなローディング効果が生じる状況の下でも、各凹部71のエッチングレートを均等に近づけることができる。しかしながら、近年の半導体記憶装置には小型化、高集積化が高いレベルで求められることに鑑みれば、一部の凹部71の形状を大きくすることは好ましくない。
【0062】
例えば、図12には、後のスリット形成工程において形成される凹部72の形状が、点線DL2で示されている。境界BDに最も近い位置に形成される凹部71の内径を大きくした場合には、当該凹部71が、点線DL2(つまり凹部72)に近づき過ぎることとなる。また、被加工部70における積層数が増加するほど、凹部71の内径を上下方向の全体に亘って均等とすることが難しくなるので、凹部71と点線DL2との距離を小さくすることは困難となる。
【0063】
従来における半導体記憶装置の製造方法においては、例えば図12の例のように、境界BDの近傍に形成される貫通孔310の形状を、他の貫通孔の形状とは異ならせることにより、凹部形成工程におけるエッチングレートのバラつきの問題を解決してきた。しかしながら、今後、半導体記憶装置の更なる小型化、高集積化が進むと、上記のような解決方法には限界が生じる。高集積化等に対応するためには、製造時におけるローディング効果の影響を低減し、全ての凹部71の形状を均等な形状とすることが好ましい。
【0064】
そこで、本実施形態においては先に述べたように、マスク加工工程において、エッチングマスク300に凹部320を形成することとしている。
【0065】
図13には、本実施形態のマスク加工工程が完了した状態が、図5と同様に示されている。尚、図13においては、被加工部70のうち上方側の一部のみが図示されている。後の説明に用いる図15図23においても同様である。
【0066】
図14には、図13に示されるエッチングマスク300を、表面S20に対し垂直な方向に沿って見た状態が示されている。図14のように、エッチングマスク300の表面S20に対し垂直な方向に沿って見た場合においては、凹部320のうち第1領域側の端部321が、第1領域と第2領域との境界BDと平行となるように、凹部320が形成されている。「凹部320のうち第1領域側の端部321」とは、図13に示されるように、表面S21のうち第1領域側の端部から、上方側に向かって伸びる壁面のことである。
【0067】
尚、図13では、エッチングマスク300のうち当該壁面の高さ、すなわち、凹部320の深さが「H11」と表記されている。エッチングマスク300のうち凹部320を除く部分の厚さを「H10」とすると、エッチングマスク300のうち凹部320の部分の厚さは、(H10-H11)ということになる。
【0068】
図14のように、エッチングマスク300の表面S20に対し垂直な方向に沿って見た場合において、エッチングマスク300の第1領域と第2領域との境界BDに最も近い位置に形成された貫通孔310のことを、以下では「第1貫通孔310A」とも表記する。また、境界BDに対し垂直な方向(つまり、図14の左右方向)に沿って、第1貫通孔310Aと隣り合う位置に形成された貫通孔310のことを、以下では「第2貫通孔310B」とも表記する。更に、同方向に沿って第2貫通孔310Bと隣り合う位置に形成され、且つ、第1貫通孔310Aとは反対側となる位置に形成された貫通孔310のことを、以下では「第3貫通孔310C」とも表記する。
【0069】
本実施形態のマスク加工工程においては、第1貫通孔310Aの縁から第2貫通孔310Bの縁までの最短距離と、第2貫通孔310Bの縁から第3貫通孔310Cの縁までの最短距離と、が互いに等しくなるように、それぞれの貫通孔310が形成される。図13、14では、これらの最短距離が「L30」と表記されている。本実施形態のマスク加工工程においては、上記の第1貫通孔310A、第2貫通孔310B、及び第3貫通孔310Cのみならず、境界BDに対し垂直な方向に沿って互いに隣り合う貫通孔310間の距離が、いずれも等しくL30となるように、それぞれの貫通孔310が形成される。
【0070】
また、本実施形態のマスク加工工程においては、第1貫通孔310Aの縁から第2貫通孔310Bの縁までの最短距離と、第1貫通孔310Aの縁から凹部320までの最短距離と、が互いに等しくなるように、それぞれの貫通孔310及び凹部320が形成される。つまり、本実施形態のマスク加工工程では、第1貫通孔310Aの縁から凹部320までの最短距離がL30となるように、凹部320が形成される。
【0071】
更に、本実施形態のマスク加工工程においては、エッチングマスク300の表面S20に対し垂直な方向に沿って見た場合において、第1貫通孔310Aと、第2貫通孔310Bの形状とが互いに同一となるように、それぞれの貫通孔310が形成される。図13、14では、それぞれの貫通孔310の内径が「D30」と表記されている。本実施形態のマスク加工工程においては、上記の第1貫通孔310A及び第2貫通孔310Bのみならず、全ての貫通孔310の内径が、いずれも等しくD30となるように、それぞれの貫通孔310が形成される。
【0072】
尚、第1貫通孔310Aの内径と、第2貫通孔310Bの内径とは、完全に同一でなくてもよい。少なくとも、第1貫通孔310Aの幅と、第2貫通孔310Bの幅とが、同一の高さ位置において互いに同一となっていればよい。尚、上記における「幅」とは、例えば、境界BDに対し垂直な方向(図13における左右方向)に沿った、第1貫通孔310Aや第2貫通孔310Bの内径寸法のことである。
【0073】
図13において、境界BDに最も近い位置に形成された第1貫通孔310Aに着目すると、第1貫通孔310Aの左側には、幅がL30であり且つ高さがH10のエッチングマスク300が存在している。また、第1貫通孔310Aの右側には、幅がL30であり且つ高さがH10のエッチングマスク300が存在している。
【0074】
次に、同図において第1貫通孔310Aの隣にある第2貫通孔310Bに着目すると、第2貫通孔310Bの左側には、幅がL30であり且つ高さがH10のエッチングマスク300が存在している。また、第2貫通孔310Bの右側には、幅がL30であり且つ高さがH10のエッチングマスク300が存在している。
【0075】
つまり、第1貫通孔310Aの周囲に存在しているエッチングマスク300の形状と、第2貫通孔310Bの周囲に存在しているエッチングマスク300の形状とを対比すると、両者は互いに一致している。第1貫通孔310A及び第2貫通孔310Bは、それぞれの周囲に配置されたエッチングマスク300の形状において互いに一致しているので、ローディング効果の生じやすさにおいても互いに一致することとなる。
【0076】
従って、マスク加工工程において、以上に説明したような形状となるようにエッチングマスク300を加工しておけば、続く凹部形成工程においては、ローディング効果の影響が低減される。つまり、第1貫通孔310Aと凹部320との間の部分を含む全体において、エッチングマスク300の消費レートが均一化される。その結果、図11において点線DL1で囲まれた部分のような段差は生じなくなり、全ての凹部71を同程度のエッチングレートで均等に加工することが可能となる。エッチングマスク300に形成される全ての貫通孔310の内径を、本実施形態のように一律にD30とすれば、凹部形成工程において形成される凹部71の内径を、全ての凹部71について互いに同一の寸法とすることができる。
【0077】
尚、凹部形成工程においては、凹部320の表面S21もエッチングされるので、表面S21から分離した成分が一時的に浮遊し、第1貫通孔310Aの下にある被加工部70のエッチングに影響を及ぼすことも考えられる。しかしながら、S21から分離した成分は、凹部320のうち第1領域側の端部321によって遮られるので、当該成分の影響は無視できる程度に抑制することが可能となる。本発明者らが行った実験によれば、凹部320の深さであるH11を概ね500nm程度とすれば、凹部71のエッチングレートを均等化できることが確認されている。当該寸法は、被加工部70における絶縁層30及び犠牲層60の積層数、エッチングマスク300の材質、及びエッチング条件等に応じて、適切な寸法となるように調整すればよい。
【0078】
以下では、エッチングマスク300を図13、14に示される形状に加工するための、マスク加工工程の詳細について説明する。尚、以下に説明するのは、マスク加工工程の一例に過ぎない。マスク加工工程では、以下の説明する方法とは異なる方法で、エッチングマスク300の加工が行われてもよい。
【0079】
<反射防止膜形成工程>マスク形成工程が行われ、図4のように均等な厚さのエッチングマスク300が形成された後は、反射防止膜形成工程が行われる。反射防止膜形成工程では、エッチングマスク300の表面S20を覆うように反射防止膜410が形成される。反射防止膜410は、例えば酸化シリコンを含む材料により形成された反射防止膜である。反射防止膜410は、例えばCVDにより形成される。図15には、反射防止膜形成工程が完了した状態が示されている。
【0080】
<第1レジスト形成工程>反射防止膜形成工程の後に行われる第1レジスト形成工程では、反射防止膜410の表面を覆うようにレジスト膜420が形成される。その後、レジスト膜420に露光及びエッチングを行うことで、レジスト膜420のうち凹部320に対応する部分が除去される。図16には、第1レジスト形成工程が完了した状態が示されている。
【0081】
上記のエッチングにより、レジスト膜420に形成される開口のことを、以下では「開口421」とも表記する。エッチングマスク300のうち、開口421の直下にある部分が、後のマスク加工工程において加工され凹部320となる。
【0082】
<マスク凹部形成工程>第1レジスト形成工程の後に行われるマスク凹部形成工程では、エッチングマスク300及び反射防止膜410に対する異方性エッチングが行われる。これにより、開口421の直下の部分がエッチングされ、エッチングマスク300に凹部320が形成される。凹部320が形成された後は、レジスト膜420はアッシングにより除去される。図17には、マスク凹部形成工程が完了した状態が示されている。
【0083】
<積み増し工程>マスク凹部形成工程の後に行われる積み増し工程では、図17の状態において上方側に露出している表面の全体に対し、例えばCVDにより反射防止膜410が形成される。これにより、予め反射防止膜410が形成されていた部分においては、当該反射防止膜410が積み増されて厚くなる。また、予め反射防止膜410が形成されていなかった部分、すなわち、図17において露出していた凹部320の表面S21や端部321は、新たに形成された反射防止膜410によって覆われた状態となる。図18には、積み増し工程が完了した状態が示されている。
【0084】
<塗布膜形成工程>積み増し工程の後に行われる塗布膜形成工程では、図18の状態において上方側に露出している表面の全体に対し、塗布膜が形成される。本実施形態では、塗布膜として、SOC(Spin on Carbon)膜430、及びSOG(Spin on Glass)膜440が順に形成される。図19には、塗布膜形成工程が完了した状態が示されている。
【0085】
SOC膜430はカーボン系の塗布型ハードマスクであり、SOG膜440はシリコン系の塗布型ハードマスクである。最も上方側に形成されたSOG膜440の表面は、凹部320を覆っている部分も含めて、全体が平坦な面となる。
【0086】
<第2レジスト形成工程>塗布膜形成工程の後に行われる第2レジスト形成工程では、SOG膜440の表面を覆うようにレジスト膜450が形成される。その後、レジスト膜450に露光及びエッチングを行うことで、レジスト膜450のうち貫通孔310に対応する部分のそれぞれが除去される。図20には、第1レジスト形成工程が完了した状態が示されている。尚、「レジスト膜450のうち貫通孔310に対応する部分」とは、後のマスク加工工程において、エッチングマスク300に貫通孔310が形成される部分の直上を覆っている部分である。上記のエッチングにより、レジスト膜450に形成される開口のことを、以下では「開口451」とも表記する。
【0087】
<塗布膜加工工程>第2レジスト形成工程の後に行われる塗布膜加工工程では、塗布膜であるSOC膜430及びSOG膜440に対する異方性エッチングが行われる。これにより、SOG膜440のうち開口451の直下で露出している部分がエッチングされ、貫通孔441が形成される。また、SOC膜430のうち開口451の直下の部分もエッチングされ、貫通孔431が形成される。図21には、塗布膜加工工程が完了した状態が示されている。
【0088】
尚、レジスト膜450の材料としては、SOC膜430と同様のカーボン系の材料が用いられる。このため、塗布膜加工工程においては、SOC膜430と共に表面のレジスト膜450もエッチングされる。塗布膜加工工程が完了した時点では、図21に示されるように、レジスト膜450は完全に除去された状態となる。
【0089】
<反射防止膜加工工程>塗布膜加工工程の後に行われる反射防止膜加工工程では、反射防止膜410に対する異方性エッチングが行われる。これにより、反射防止膜410のうち貫通孔431の直下で露出している部分がエッチングされ、貫通孔411が形成される。図22には、反射防止膜加工工程が完了した状態が示されている。
【0090】
尚、SOG膜440の材料としてはシリコン系の材料が用いられているので、反射防止膜加工工程においては、反射防止膜410と共に表面のSOG膜440もエッチングされる。反射防止膜加工工程が完了した時点では、図22に示されるように、SOG膜440は完全に除去された状態となる。
【0091】
<マスク貫通孔加工工程>反射防止膜加工工程の後に行われるマスク貫通孔加工工程では、エッチングマスク300に対する異方性エッチングが行われる。これにより、エッチングマスク300のうち貫通孔411の直下で露出している部分がエッチングされ、貫通孔310が形成される。図23には、マスク貫通孔加工工程が完了した状態が示されている。
【0092】
尚、SOC膜430の材料としては、エッチングマスク300と同様のカーボン系の材料が用いられている。このため、マスク貫通孔加工工程においては、エッチングマスク300と共に表面のSOC膜430もエッチングされる。マスク貫通孔加工工程が完了した時点では、図23に示されるように、SOC膜430は完全に除去された状態となる。ただし、SOC膜430が完全に除去されても、エッチングマスク300のうち凹部320の表面S21は、その全体が反射防止膜410により覆われ保護されている。このため、マスク貫通孔加工工程の実行中において、表面S21がエッチングされてしまうことは無い。
【0093】
マスク貫通孔加工工程が完了した後は、反射防止膜410の全体がエッチバックにより除去される。これにより、マスク加工工程の全体が完了し、エッチングマスク300は図5に示される状態となる。
【0094】
以上のように、本実施形態のマスク加工工程では、これまでに説明した反射防止膜形成工程、第1レジスト形成工程、マスク凹部形成工程、積み増し工程、塗布膜形成工程、第2レジスト形成工程、塗布膜加工工程、反射防止膜加工工程、及びマスク貫通孔加工工程を順に経ることにより、エッチングマスク300に貫通孔310と凹部320とがそれぞれ形成される。本実施形態のマスク加工工程では、先に凹部320が形成され、その後に貫通孔310が形成されるのであるが、凹部320及び貫通孔310が形成される順序は、これとは異なっていてもよい。
【0095】
本実施形態では、以上のようなマスク加工工程によってエッチングマスク300に凹部320が形成される。これにより、先に述べたようにローディング効果の影響を抑制することができ、凹部形成工程においては、複数の凹部71を概ね均等なエッチングレートで加工することができる。
【0096】
図14を参照しながら先に説明したように、本実施形態のマスク加工工程では、エッチングマスク300の表面S20に対し垂直な方向に沿って見た場合において、凹部320のうち第1領域側の端部321が、第1領域と第2領域との境界BDと平行となるように、凹部320が形成される。これにより、ローディング効果の影響を受けやすい第1貫通孔310Aの全てにおいて、凹部320までの距離(図14の例ではL30)が等しくなる。その結果、それぞれの第1貫通孔310Aを含む全ての貫通孔310のエッチングレートをより均等に近づけることができる。
【0097】
また、図14を参照しながら先に説明したように、本実施形態のマスク加工工程では、第1貫通孔310Aの縁から第2貫通孔310Bの縁までの最短距離と、第1貫通孔310Aの縁からから凹部320までの最短距離と、が互いに等しくなるように、それぞれの貫通孔310及び凹部320が形成される。このような構成により、第1貫通孔310Aの周囲に存在しているエッチングマスク300の形状と、第2貫通孔310Bの周囲に存在しているエッチングマスク300の形状と、が互いに一致することとなるので、全ての貫通孔310のエッチングレートをより均等に近づけることができる。
【0098】
本実施形態に係る製造方法によれば、凹部形成工程におけるローディング効果の影響が抑制されるので、第1貫通孔310Aの形状を、他の貫通孔310の形状と異ならせる必要が無い。従って、図13、14を参照しながら説明したように、マスク加工工程では、第1貫通孔310Aの形状と、第2貫通孔310Bの形状とが互いに同一となるように、それぞれの貫通孔310を形成することが可能となる。また、エッチングマスク300の表面S20に対し垂直な方向に沿って見た場合において、第1貫通孔310Aの縁から第2貫通孔310Bの縁までの最短距離と、第2貫通孔310Bの縁から第3貫通孔310Cの縁までの最短距離と、が互いに等しくなるように、それぞれの貫通孔310を形成することも可能となる。
【0099】
図2を再び参照しながら、以上のような製造工程を経て製造される半導体記憶装置10の構成について説明する。図2のように、積層部50の表面S10に対し垂直な方向に沿って見た場合において、積層部50の第1領域と第2領域との境界BDに最も近い位置に形成されたメモリピラー100のことを、以下では「第1メモリピラー100A」とも表記する。また、境界BDに対し垂直な方向に沿って、第1メモリピラー100Aと隣り合う位置に形成されたメモリピラー100のことを、以下では「第2メモリピラー100B」とも表記する。更に、同方向に沿って第2メモリピラー100Bと隣り合う位置に形成され、且つ、第1メモリピラー100Aとは反対側となる位置に形成されたメモリピラー100のことを、以下では「第3メモリピラー100C」とも表記する。
【0100】
本実施形態では、マスク加工工程において、それぞれの貫通孔310が互いに等しい形状となるように形成され、その結果として、メモリピラー100を配置するためのそれぞれのメモリホールMHも互いに等しい形状となるように形成される。
【0101】
このため、半導体記憶装置10においては、図2に示されるように、積層部50の表面S10における第1メモリピラー100Aの形状と、当該表面S10における第2メモリピラー100Bの形状とが互いに同一となっている。図2では、表面S10におけるそれぞれのメモリピラー100の直径が「D10」と表記されている。半導体記憶装置10では、上記の第1メモリピラー100A及び第2メモリピラー100Bのみならず、全てのメモリピラー100の直径が、表面S10においてはいずれも等しくD10となっている。このD10は、エッチングマスク300に形成された貫通孔310の内径であるD30(図14を参照)と概ね等しい寸法である。
【0102】
尚、表面S10における第1メモリピラー100Aの形状と、当該表面S10における第2メモリピラー100Bの形状とは、完全に同一でなくてもよい。少なくとも、第1メモリピラー100Aの幅と、第2メモリピラー100Bの幅とが、表面S10において互いに同一となっていればよい。尚、上記における「幅」とは、例えば、境界BDに対し垂直な方向(図2における左右方向)に沿った、第1メモリピラー100Aや第2メモリピラー100Bの外径寸法のことである。
【0103】
本実施形態では、マスク加工工程において、境界BDに垂直な方向に沿って互いに隣り合う貫通孔310間の距離が、互いに等しくなるように、それぞれの貫通孔310が形成される。その結果として、メモリピラー100を配置するためのそれぞれのメモリホールMH間の距離も、互いに等しい距離となる。
【0104】
このため、半導体記憶装置10においては、図2に示されるように、表面S10においては、第1メモリピラー100Aの縁から第2メモリピラー100Bの縁までの最短距離と、第2メモリピラー100Bの縁から第3メモリピラー100Cの縁までの最短距離と、が互いに等しくなっている。
【0105】
図2では、それぞれのメモリピラー100間の距離が「L10」と表記されている。半導体記憶装置10では、上記の第1メモリピラー100Aと第2メモリピラー100Bとの間の距離や、第2メモリピラー100Bと第3メモリピラー100Cとの間の距離のみならず、境界BDに垂直な方向に沿って互いに隣り合う貫通孔310間の距離の全てが、いずれも等しくL10となっている。このL10は、エッチングマスク300において互いに隣り合うように形成された貫通孔310間の距離であるL30(図14を参照)と概ね等しい寸法である。
【0106】
以上のように、本実施形態に係る半導体記憶装置10では、境界BDに最も近い位置に形成された第1メモリピラー100Aを含む全てのメモリピラー100が、同一形状となっており且つ等間隔に並ぶように配置されている。このため、ローディング効果の影響を考慮して、一部のメモリピラー100の形状や配置を他と異ならせていた従来の構成に比べて、半導体記憶装置10の大型化を抑制することが可能となっている。
【0107】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0108】
10:半導体記憶装置、30:絶縁層、40:導体層、50:積層部、60:犠牲層、70:被加工部、71:凹部、100:メモリピラー、S10:表面、S11:表面、S20:表面、S21:表面、BD:境界。
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