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特許7500334受信モジュ-ル、受信モジュール制御方法及びレーダ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】受信モジュ-ル、受信モジュール制御方法及びレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20240610BHJP
   H04B 1/18 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G01S7/40 121
H04B1/18 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020133941
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030151
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 治夫
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-228240(JP,A)
【文献】特開2018-050112(JP,A)
【文献】特開2010-093400(JP,A)
【文献】特開2003-188751(JP,A)
【文献】特開2002-050976(JP,A)
【文献】特開2003-347953(JP,A)
【文献】特開平02-112780(JP,A)
【文献】特開平2-155302(JP,A)
【文献】特開2003-318672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
H01Q 3/00 - 3/46
H01Q 21/00 - 25/04
H03G 1/00 - 3/34
H04B 1/16 - 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低雑音増幅器と、
中電力増幅器と、
モジュール入力端とモジュール出力端との間に前記低雑音増幅器及び前記中電力増幅器が介在する第1の経路、前記モジュール入力端と前記モジュール出力端との間に前記中電力増幅器が介在する第2の経路、前記モジュール入力端と前記モジュール出力端との間にパス線路が介在する第3の経路のうち、いずれかの経路を選択切換するスイッチ手段と、
前記モジュール出力端の電力を検出してその検出レベルが、第1閾値を超えるまでは前記第1の経路を選択し、前記第1閾値を超え、第2閾値を超えるまでは前記第2の経路を選択し、前記第2閾値を超えた場合には前記第3の経路を選択するように前記スイッチ手段を制御する制御手段と
を具備する受信モジュール。
【請求項2】
前記スイッチ手段は、
前記第1の経路、前記第2の経路、前記第3の経路のいずれかを選択する第1のスイッチと、
前記第1のスイッチが前記第1の経路を選択したとき、前記低雑音増幅器の出力端を前記中電力増幅器の入力端に接続し、前記第1のスイッチが前記第2の経路を選択したとき、前記モジュール入力端を前記中電力増幅器の入力端に接続する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチが前記第1の経路または前記第2の経路を選択したとき、前記中電力増幅器の出力端を前記モジュール出力端に接続し、前記第1のスイッチが前記第3の経路を選択したとき、前記モジュール入力端を前記モジュール出力端に接続する第3のスイッチと
を備える請求項1記載の受信モジュール。
【請求項3】
モジュール入力端とモジュール出力端との間に低雑音増幅器及び中電力増幅器が介在する第1の経路、前記モジュール入力端と前記モジュール出力端との間に前記中電力増幅器が介在する第2の経路、前記モジュール入力端と前記モジュール出力端との間にパス線路が介在する第3の経路のいずれかを選択するスイッチに対して、
前記モジュール出力端の電力を検出し、
前記電力の検出レベルが、第1閾値を超えるまでは前記第1の経路を選択し、前記第1閾値を超え、第2閾値を超えるまでは前記第2の経路を選択し、前記第2閾値を超えた場合には前記第3の経路を選択するように前記スイッチを切換制御する
受信モジュール制御方法。
【請求項4】
複数のアンテナ素子で捕捉したレーダ反射波の受信信号を増幅する複数の受信モジュールを備え前記複数の受信モジュールの出力から目標信号を抽出するレーダ装置に用いられ、
前記複数の受信モジュールは、
低雑音増幅器と、
中電力増幅器と、
モジュール入力端とモジュール出力端との間に前記低雑音増幅器及び前記中電力増幅器が介在する第1の経路、前記モジュール入力端と前記モジュール出力端との間に前記中電力増幅器が介在する第2の経路、前記モジュール入力端と前記モジュール出力端との間にパス線路が介在する第3の経路のうち、いずれかの経路を選択切換するスイッチ手段と、
前記モジュール出力端の電力を検出してその検出レベルが、第1閾値を超えるまでは前記第1の経路を選択し、前記第1閾値を超え、第2閾値を超えるまでは前記第2の経路を選択し、前記第2閾値を超えた場合には前記第3の経路を選択するように前記スイッチ手段を制御する制御手段と
を具備するレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、受信モジュ-ル、受信モジュール制御方法及びレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダ装置に用いられるマイクロ波帯受信モジュールでは、受信アンテナで受けた高周波(マイクロ波)信号をSP3Tスイッチでスルーライン、20dBアッテネータ、40dBアッテネータのいずれかに通して低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)で低雑音増幅し、その出力を中電力増幅器(MPA:Middle Power Amplifier)で電力増幅して信号処理装置に出力する。ここで、受信アンテナで受けた高周波信号の入力レベルが大きくなると、受信モジュール内の低雑音増幅器及び中電力増幅器の飽和を回避するため、SP3Tスイッチでスルーライン、20dBアッテネータ、40dBアッテネータを順に選択することで入力の減衰量を段階的に大きくし、入力電力が上昇しても出力電力が上昇しないように制御している。
【0003】
しかしながら、入力される高周波信号が目的の信号(目標からのレーダ波反射信号)であれば問題無いが、目的とは異なる信号(例えば干渉波)が同時に入力されることを考慮すると、増幅器の飽和回避のために、アッテネータの減衰量を大きくする必要がある。その場合は、雑音指数悪化によりS/N比が悪化してしまうため、目的とする信号のレベルが-30dBm以下の場合は必要なS/N比を確保できなくなり、結果的に目的とする信号を検出できないことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-50112号公報
【文献】特開2003-347953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の受信モジュールでは、入力される高周波信号が目的の信号と同時に目的とは異なる信号が入力されることを考慮すると、増幅器の飽和回避のために、アッテネータの減衰量を大きくする必要があるが、雑音指数悪化によりS/N比が悪化して、目的とする信号に必要なS/N比を確保できなくなり、結果的に目的とする信号を検出できないことになる。
【0006】
本発明の課題は、目的とは異なる信号の入力レベルが大きくなっても、増幅器の飽和を回避しつつ、目的とする信号に必要なS/N比を確保することのできる受信モジュール、受信モジュール制御方法及びレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、実施形態に係る受信モジュールは、低雑音増幅器と、中電力増幅器と、スイッチ群と、制御器とを備える。前記スイッチ群は、モジュール入力端とモジュール出力端との間に前記低雑音増幅器及び前記中電力増幅器が介在する第1の経路、前記モジュール入力端と前記モジュール出力端との間に前記中電力増幅器が介在する第2の経路、前記モジュール入力端と前記モジュール出力端との間にパス線路が介在する第3の経路のうち、いずれかの経路を選択切換する。前記制御器は、前記モジュール出力端の電力を検出してその検出レベルが、第1閾値を超えるまでは前記第1の経路を選択し、前記第1閾値を超え、第2閾値を超えるまでは前記第2の経路を選択し、前記第2閾値を超えた場合には前記第3の経路を選択するように前記スイッチ手段を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る受信モジュールの構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る受信モジュールと比較するための従来構成例を示すブロック図である。
図3図3は、図1に示す受信モジュールにおいて、出力レベルに応じてスイッチ制御を行う制御フローを示すフローチャートである。
図4図4は、図2に示す受信モジュールにおいて、出力レベルに応じてスイッチ制御を行う制御フローを示すフローチャートである。
図5図5は、入力電力が一定に増加した場合の出力電力の変化について、実施形態のモジュールと従来構成のモジュールとを比較して示す波形図である。
図6図6は、入力電力に対する雑音指数の変化について、実施形態のモジュールと従来構成例のモジュールとを比較して示す波形図である。
図7図7は、入力電力に対するS/N比の変化について、実施形態のモジュールと従来構成例のモジュールとを比較して示す波形図である。
図8図8は、本実施形態の受信モジュールを適用したレーダ装置の系統の一部を抜粋して示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る受信モジュールの構成を示し、図2は実施形態に係る受信モジュールと比較するための従来構成例を示している。
【0010】
図1に示す実施形態では、受信アンテナ11の信号出力端は受信モジュール12のSP3Tスイッチ121の可動端(入力端)aに接続され、SP3Tスイッチ121の第1の固定端(出力端)bは低雑音増幅器(LNA)122の入力端に接続され、低雑音増幅器122の出力端は第1SPDTスイッチ123の第1の固定端(入力端)bに接続される。上記SP3Tスイッチ121の第2の固定端(出力端)cは第1SPDTスイッチ123の第2の固定端(入力端)cに接続される。また、第1SPDTスイッチ123の可動端(出力端)aは中電力増幅器(MPA)124の入力端に接続され、中電力増幅器124の出力端は第2SPDTスイッチ125の第1の固定端(入力端)bに接続され、SP3Tスイッチ121の第3の固定端(出力端)dは第2SPDTスイッチ125の第2の固定端(入力端)cに接続され、第2SPDTスイッチ125の可動端(出力端)aは後段の信号処理装置の信号入力端に接続される。
【0011】
受信モジュール12の出力ラインには電力レベル検出器126が装着される。この電力レベル検出器126は受信モジュール12の出力電力レベルを検出し、制御器127に出力する。制御器127は、検出された電力出力レベルを第1閾値、第2閾値と比較し、それぞれの比較結果に基づいて上記スイッチ121,123,125を切換制御する。
【0012】
図2に示す従来構成例では、受信アンテナ21の信号出力端は受信モジュール22の第1SP3Tスイッチ221の可動端(入力端)aに接続され、第1SP3Tスイッチ121の第1の固定端(出力端)bはパスライン222を介して第2SP3Tスイッチ221の第1の固定端(入力端)bに接続され、第1SP3Tスイッチ121の第2の固定端(出力端)cは-20dBアッテネータ223を介して第2SP3Tスイッチ225の第2の固定端(入力端)cに接続され、第1SP3Tスイッチ221の第3の固定端(出力端)dは-40dBアッテネータ224を介して第2SP3Tスイッチ225の第3の固定端(入力端)dに接続される。第2SP3Tスイッチ225の可動端(出力端)aは、低雑音増幅器(LNA)226の入力端に接続され、低雑音増幅器226の出力端は中電力増幅器(MPA)227の入力端に接続され、中電力増幅器227の出力端は後段の信号処理装置の信号入力端に接続される。
【0013】
受信モジュール22の出力ラインには電力レベル検出器228が装着される。この電力レベル検出器228は受信モジュール22の出力電力レベルを検出し、制御器229に出力する。制御器229は、検出された電力出力レベルを第1閾値、第2閾値と比較し、それぞれの比較結果に基づいて上記スイッチ221,225を切換制御する。
【0014】
図3は、図1の実施形態に係る受信モジュール12の制御フローを示し、図4図2の従来構成例に係る受信モジュール22の制御フローを示している。
【0015】
まず、実施形態に係る受信モジュール12の制御器127では、図3に示すように、電力レベル検出器126を通じて出力電力の検出レベルを監視して、検出レベルが第1閾値20dBを超えた否かを判断する(ステップS11)。ここで、出力電力の検出レベルが20dBを超えていなければ(NO)、SP3Tスイッチ121の可動端(入力端)aの接続先を第1の固定端(出力端)bに切換制御し、第1SPDTスイッチ123の可動端(出力端)aの接続先を第1固定端(入力端)bに切換制御し、第2SPDTスイッチ125の可動端(出力端)aの接続先を第1固定端(入力端)bに切換制御する。これにより、受信モジュール12では、受信アンテナ11からの高周波信号をLNA122、MPA124で順次増幅して信号処理装置に出力する(ステップS12)。
【0016】
また、ステップS11の判断で、出力電力の検出レベルが20dBを超えた場合には(YES)、SP3Tスイッチ121の可動端(入力端)aの接続先を第2の固定端(出力端)cに切換制御し、第1SPDTスイッチ123の可動端(出力端)aの接続先を第2固定端(入力端)cに切換制御し、第2SPDTスイッチ125の可動端(出力端)aの接続先を第2固定端(入力端)cに切換制御する。これにより、受信モジュール12では、受信アンテナ11からの高周波信号を、LNA122をパスして、MPA124で増幅して信号処理装置に出力する(ステップS13)。
【0017】
次に、ステップS13の状態において出力電力の検出レベルが第2閾値40dBを超えた否かを判断する(ステップS14)。ここで、出力電力の検出レベルが40dBを超えていなければ(NO)、ステップS11に戻ることで、出力電力の検出レベルが20dBを超えた場合はステップS13の接続を維持し、20dB以下となった場合はステップS12の接続に切換制御する。また、ステップS14の判断で、出力電力の検出レベルが第2閾値40dBを超えた場合には(YES)、SP3Tスイッチ121の可動端(入力端)aの接続先を第3の固定端(出力端)dに切換制御し、第2SPDTスイッチ125の可動端(出力端)aの接続先を第2固定端(入力端)cに切換制御する。これにより、受信モジュール12では、受信アンテナ11からの高周波信号を、LNA122、MPA124をパスして信号処理装置に出力する(ステップS15)。
【0018】
一方、従来構成例に係る受信モジュール22の制御器229では、図4に示すように、初期段階で第1SP3Tスイッチ221の可動端(入力端)aの接続先を第1の固定端(出力端)bに切換制御し、第2SP3Tスイッチ225の可動端(入力端)aの接続先を第1の固定端(出力端)bに切換制御する。これにより、受信モジュール22では、受信アンテナ21からの高周波信号をパスライン(0dBアッテネータ)222を介してLNA226及びMPA227で順次増幅して信号処理装置に出力する(ステップS21)。
【0019】
ここで、電力レベル検出器228を通じて出力電力の検出レベルを監視して、検出レベルが第1閾値20dBを超えた否かを判断する(ステップS22)。ここで、出力電力の検出レベルが20dBを超えていなければ(NO)、ステップS21の接続状態を維持する。ステップS22の判断で、出力電力の検出レベルが20dBを超えた場合には(YES)、第1SP3Tスイッチ221の可動端(入力端)aの接続先を第2の固定端(出力端)cに切換制御し、第2SP3Tスイッチ225の可動端(入力端)aの接続先を第2の固定端(出力端)cに切換制御する。これにより、受信モジュール22では、受信アンテナ21からの高周波信号を、-20dBアッテネータ223で-20dB減衰させて、LNA226及びMPA227で順次増幅して信号処理装置に出力する(ステップS23)。
【0020】
さらに、検出レベルが第2閾値40dBを超えた否かを判断する(ステップS24)。ここで、出力電力の検出レベルが40dBを超えていなければ(NO)、ステップS22の接続状態を維持する。ステップS24の判断で、出力電力の検出レベルが40dBを超えた場合には(YES)、第1SP3Tスイッチ221の可動端(入力端)aの接続先を第3の固定端(出力端)dに切換制御し、第2SP3Tスイッチ225の可動端(入力端)aの接続先を第3の固定端(出力端)dに切換制御する。これにより、受信モジュール22では、受信アンテナ21からの高周波信号を、-40dBアッテネータ224で-40dB減衰させて、LNA226及びMPA227で順次増幅して信号処理装置に出力する(ステップS25)。
【0021】
上記実施形態に係る受信モジュール12について、従来構成例に係る受信モジュール22と比較して説明する。
【0022】
図5は、入力電力が一定に増加した場合の出力電力の変化について、実施形態の受信モジュール12と従来構成例の受信モジュール22とを比較して示している。従来構成例の受信モジュール22では、出力電力が20dBに達するまでは、パスライン222を介してLNA226及びMPA227で順次増幅して出力させ、出力電力が20dBに達した時点Aで、パスライン222から-20dBアッテネータ223に切り換えて出力電力を0dBに戻し、その後、再び出力電力が20dBに達した時点Bで、-20dBアッテネータ223から-40dBアッテネータ224に切り換えて出力電力を0dBに戻すようにしている。これに対して、実施形態の受信モジュール12では、出力電力が20dBに達するまでは、LNA122、MPA124を信号経路に介在させ、出力電力が20dBに達した時点Aで、LNA122をパスしてMPA124を信号経路に介在させて出力電力を0dBに戻し、その後、再び出力電力が20dBに達した時点Bで、LNA122、MPA124を共に信号経路からパスすることで、出力電力を0dBに戻すようにしている。図5に比較して示すように、両者の電力の入出力特性はほぼ同じであるが、雑音指数、S/N比の特性に差が生じる。
【0023】
図6は、入力電力に対する雑音指数の変化について、実施形態のモジュール12と従来構成例のモジュール22とを比較して示す波形図、図7は、入力電力に対するS/N比の変化について、実施形態のモジュール12と従来構成例のモジュール22とを比較して示す波形図である。
【0024】
従来構成例の受信モジュール22では、受信アンテナ11で受信された高周波信号の入力レベルが大きくなると、パスライン222から-20dBアッテネータ223、-40dBアッテネータ224に順に切り替えてLNA226及びMPA227の入力を減衰させてその飽和を回避させている。
【0025】
この場合、雑音指数悪化によりS/N比が悪化してしまうため、目的とする信号のレベルが-30dBm以下の場合は、必要なS/N比を確保できなくなり、結果的に目的とする信号を検出できないことになる。
【0026】
例えば、図6に示すように、干渉波が0dBm以上入力されると、アッテネータ223,224の設定値が40dBとなり、S/N比が45dB程度となり、信号処理に必要なS/N比と15dBと仮定すると、45dB-15dB=30dB,0dBm-30dB=-30dBmで、目的とする信号レベルが-30dBm以下の場合はS/N比を確保できなくなり、結果的に目的とする信号を検出できないことになる。
【0027】
このように、従来構成例のモジュール22では、入力電力の増加に伴ってアッテネータ223,224の切換接続によりLNA226及びMPA227の入力減衰量が増大するため、図6に示すように、入力電力に対する雑音指数も減衰量に応じて大きく変化し、図7に示すように、入力電力に対するS/N比に多大な悪影響を及ぼす。
【0028】
これに対して、実施形態の受信モジュール12では、受信アンテナ11で受信された高周波信号の入力レベルが大きくなると、LNA122及びMPA124の飽和を回避するため、スイッチ121,123,125で信号経路を変更してLNA122、またはLNA122とMPA124を迂回する経路に変更することにより、入力電力が上昇しても出力電力が上昇しないように制御している。
【0029】
このように、本実施形態の受信モジュール12では、高周波信号の入力電力増加に伴って、LNA121、MPA124を順にパスするように経路の切換制御を行うので、図6に示すように、雑音指数の変化は大幅に低減され、これによってS/N比も良好なレベルに抑圧することが可能となる。
【0030】
特に、入力される高周波信号が目的とは異なる信号(例えば干渉波)として同時に入力された場合でも、図6図7に示すように、本実施形態の受信モジュール12では、雑音指数の悪化は従来構成例より大幅に小さく、S/N比の悪化も大幅に小さくなる。例えば、図6に示すように、干渉波が0dBm以上入力された場合でも、信号経路を変更することによりS/N比は65dB程度確保できる。信号処理に必要なS/N比を15dBと仮定すると、65dB-15dB=50dB,0dBm-50dB=-50dBmとなり、-50dBm程度まで下がってもS/N比を15dB以上確保することができるので、目的とする信号を検出できることになり、従来構成例の場合より20dBも大幅に改善することができる。
【0031】
なお、上記実施形態は受信モジュール全般について適用した場合であるが、フェーズドアレイレーダ用の送受信モジュールの受信系、通信装置の受信モジュール等、信号伝送において広く適用できることは言うまでもない。また、マイクロ波帯にかぎらず、他の周波数帯の信号を扱う場合も同様に適用可能である。また、LNA,MPAに限らず、他の増幅器を取り扱う場合でも同様に実施可能である。
【0032】
図8は、上記実施形態の受信モジュールを適用したレーダ装置の系統の一部を抜粋して示すブロック図である。図8に示すレーダ装置は、フェーズドアレイアンテナを採用した場合のアンテナ素子1系統を抜粋して示している。すなわち、送信系統では、送信信号生成器101で生成された送信信号を周波数変換器102でマイクロ波帯の信号に変換し、電力増幅器103で電力増幅した後、サーキュレータ104を介してアンテナ素子105から送出する。受信系統では、アンテナ素子105で受信されたレーダ波反射波の高周波信号を、サーキュレータ104を介して受信モジュール106に入力する。この受信モジュール106は、入力信号を適正レベルに増大するLNA,MPAを備える。ここで、受信モジュール106は、図1に示したモジュール12の構成を採用し、入力信号の電力増加に合わせてLNA,MPAを経路からパスするように切換制御する。受信モジュール106の出力は、周波数変換器107で信号処理用の周波数に変換された後、受信信号処理装置108に送られる。この受信信号処理装置108は、受信信号から目標信号を抽出し、目標位置を特定する。
【0033】
上記構成によるレーダ装置は、フェーズドアレイアンテナに用いられる個々のアンテナ素子に対して、個別に受信モジュール106に受信モジュール12の系統を提供することで、目的とは異なる信号の入力レベルが大きくなっても、アンテナ素子毎に増幅器の飽和を回避しつつ、目的とする信号に必要なS/N比を確保することができるので、干渉波を受けた場合の多数の増幅器の飽和を未然に防止することができ、極めて有益である。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0035】
11…受信アンテナ、12…受信モジュール、121…SP3Tスイッチ、122…低雑音増幅器(LNA)、123…第1SPDTスイッチ、124…中電力増幅器(MPA)、125…第2SPDTスイッチ、126…電力レベル検出器、127…制御器、
21…受信アンテナ、22…受信モジュール、221…第1SP3Tスイッチ、222…パスライン、223…-20dBアッテネータ、224…-40dBアッテネータ、225…第2SP3Tスイッチ、226…低雑音増幅器(LNA)、227…中電力増幅器(MPA)、228…電力レベル検出器、229…制御器、
101…送信信号生成器、102…周波数変換器、103…電力増幅器、104…サーキュレータ、105…アンテナ素子、106…受信モジュール、107…周波数変換器、108…受信信号処理装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8