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特許7500354塔状構造物の運搬装置、運搬装置への搭載方法、及び運搬・仮置き方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】塔状構造物の運搬装置、運搬装置への搭載方法、及び運搬・仮置き方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 67/04 20060101AFI20240610BHJP
   B62D 63/00 20060101ALI20240610BHJP
   B65G 63/00 20060101ALI20240610BHJP
   B65G 67/12 20060101ALI20240610BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20240610BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20240610BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B65G67/04
B62D63/00
B65G63/00 G
B65G67/12
B66F9/06 Z
E04G21/14
E04H12/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020145722
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040823
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】土門 明
(72)【発明者】
【氏名】神田 真一
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 良介
(72)【発明者】
【氏名】玉田 康一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航太郎
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 桂
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-053797(JP,U)
【文献】特開2014-214620(JP,A)
【文献】特開2001-080405(JP,A)
【文献】特許第6195555(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第109720608(CN,A)
【文献】特開2000-191291(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110924738(CN,A)
【文献】米国特許第04771998(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0271102(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 67/04
B62D 63/00
B65G 63/00
B65G 67/12
B66F 9/06
E04G 21/14
E04H 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電設備を構成する塔状構造物を立てたまま運搬する運搬装置であって、
荷台昇降用ジャッキを備える多軸台車と、
前記塔状構造物を立てて載置した状態で、前記多軸台車に載置可能な架台と、
含んで構成され、
前記架台は、前記多軸台車に載置可能な受台と、前記受台の中央部上面に固定されて、前記塔状構造物の下端部を固定可能な固定台座と、前記受台の両端部下面に固定された一対の設置用脚部と、を含み、
前記固定台座は、前記塔状構造物の下端部のフランジ周りに配置される複数のガイド部材を有し、各ガイド部材は、上から下に斜め内向きに配置されて、前記フランジを前記固定台座の中心部に向かって案内可能であり、
前記固定台座は、前記フランジ周りに配置される複数のフック爪を更に有し、各フック爪は、前記フランジと係合する方向、及び、係合を解除する方向に移動可能であり、
前記固定台座は、前記受台上に放射状に固定配置される鋼材をベースとし、各鋼材の外周側に前記ガイド部材を挟む形で前記フック爪が一対設けられており、
前記多軸台車は、ジャッキダウン状態で、前記架台の一対の設置用脚部間に進入可能であり、ジャッキアップ状態で、前記架台を持ち上げ、前記設置用脚部を浮かせた状態で、前記塔状構造物を運搬可能である、塔状構造物の運搬装置。
【請求項2】
前記運搬装置は前記多軸台車を2台備え、該2台の前記多軸台車は並列に配置され、かつ、連結材により横方向に連結されて一体化されている、請求項1に記載の塔状構造物の運搬装置。
【請求項3】
各設置用脚部は、上下3段に鋼材を配置してなり、
前記フランジと前記フック爪との間には当て金が挿入される、請求項1又は請求項2に記載の塔状構造物の運搬装置。
【請求項4】
前記塔状構造物がトランジッションピースである、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の塔状構造物の運搬装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の運搬装置に前記塔状構造物を立てたまま搭載する方法であって、
クレーンにより前記塔状構造物を前記架台上に吊り下ろす際に、前記ガイド部材により前記フランジを前記固定台座の中心部へ向かって案内することと、
前記フック爪を前記フランジに係合させることで、前記固定台座上に前記塔状構造物を立てたまま固定することと、
を含む、塔状構造物の運搬装置への搭載方法。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の運搬装置を用いて、前記塔状構造物を運搬し、仮置きする方法であって、
前記架台の固定台座上に、前記塔状構造物を立てたまま固定する塔状構造物固定工程と、
前記多軸台車をジャッキダウン状態で前記架台の一対の設置用脚部間に進入させ、ジャッキアップして、前記架台を持ち上げ、前記設置用脚部を床面から浮かせる運搬準備工程と、
前記多軸台車を仮置き場まで移動させることにより、前記塔状構造物を運搬する運搬工程と、
前記仮置き場にて、前記多軸台車をジャッキダウンして、前記設置用脚部を床面に預けて前記塔状構造物を立てたまま仮置きし、前記多軸台車を退出させる仮置き工程と、
を含む、塔状構造物の運搬・仮置き方法。
【請求項7】
前記塔状構造物の仮置きが数年に及ぶ、請求項6に記載の塔状構造物の運搬・仮置き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塔状構造物などの運搬装置、及び、運搬・仮置き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重量物の運搬装置として、特許文献1~3などに示されているように、多軸台車を用いることが知られている。
多軸台車は、荷台を昇降(ジャッキアップ及びジャッキダウン)させることができる荷台昇降用ジャッキを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4004423号公報
【文献】特許第6061191号公報
【文献】特許第6682332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、重量物を運搬する際は、重量物を寝かせた状態(重心を低くした状態)で運搬するのが一般的である。
【0005】
しかしながら、運搬対象の重量物が塔状構造物であって、立てたままで安全に運搬することが求められる場合がある。
また、仮置き場まで運搬して荷下ろしし、施工までの長い期間、立てたままで安全に仮置きすることが求められる場合もある。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑み、多軸台車を用いて運搬対象物を安全に運搬、特に塔状構造物を立てたまま安全に運搬する運搬装置、及び、運搬して仮置きする方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る運搬装置は、運搬対象物が、洋上風力発電設備を構成する塔状構造物であり、これを立てたまま運搬するものである。
【0008】
本発明に係る塔状構造物の運搬装置は、
荷台昇降用ジャッキを備える多軸台車と、
塔状構造物を立てて載置した状態で、前記多軸台車に載置可能な架台と、
含んで構成され、
前記架台は、前記多軸台車に載置可能な受台と、前記受台の中央部上面に固定されて、前記塔状構造物の下端部を固定可能な固定台座と、前記受台の両端部下面に固定された一対の設置用脚部と、を含み、
前記固定台座は、前記塔状構造物の下端部のフランジ周りに配置される複数のガイド部材を有し、各ガイド部材は、上から下に斜め内向きに配置されて、前記フランジを前記固定台座の中心部に向かって案内可能であり、
前記固定台座は、前記フランジ周りに配置される複数のフック爪を更に有し、各フック爪は、前記フランジと係合する方向、及び、係合を解除する方向に移動可能であり、
前記固定台座は、前記受台上に放射状に固定配置される鋼材をベースとし、各鋼材の外周側に前記ガイド部材を挟む形で前記フック爪が一対設けられており、
前記多軸台車は、ジャッキダウン状態で、前記架台の一対の設置用脚部間に進入可能であり、ジャッキアップ状態で、前記架台を持ち上げ、前記設置用脚部を浮かせた状態で、前記塔状構造物を運搬可能である。
【0009】
本発明に係る塔状構造物の運搬・仮置き方法は、上記の運搬装置を用い、
前記架台の固定台座上に、前記塔状構造物を立てたまま固定する塔状構造物固定工程と、
前記多軸台車をジャッキダウン状態で前記架台の一対の設置用脚部間に進入させ、ジャッキアップして、前記架台を持ち上げ、前記設置用脚部を床面から浮かせる運搬準備工程と、
前記多軸台車を仮置き場まで移動させることにより、前記塔状構造物を運搬する運搬工程と、
前記仮置き場にて、前記多軸台車をジャッキダウンして、前記設置用脚部を床面に預けて前記塔状構造物を立てたまま仮置きし、前記多軸台車を退出させる仮置き工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塔状構造物などの運搬対象物を多軸台車を用いて安全に、特に塔状構造物の場合は立てたまま安全に運搬することができ、また安全に仮置きすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】洋上風力発電設備の概略図
図2】本発明の一実施形態として示すトランジッションピース運搬装置の全体図
図3図2のジャッキアップ状態の側面図
図4図2のジャッキダウン状態の側面図
図5図2の架台部分(受台+固定台座)の平面図
図6】固定台座の拡大平面図
図7】固定台座のガイド部材及びフック爪の平面図、及び、作動状態別の正面図
図8】本発明の他の実施形態として示すトランジッションピース運搬装置の全体図
図9図8の側面図
図10図8の架台部分(受台+固定台座)の平面図
図11】運搬及び仮置きの説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本実施形態では、塔状構造物として、洋上風力発電設備用のトランジッションピースを運搬し、仮置きする。
【0013】
従って、先ず、洋上風力発電設備について、その代表例を、図1の概略図に基づいて説明する。
【0014】
洋上風力発電設備100は、モノパイル1と、トランジッションピース2と、タワー3と、ナセル(発電部)4と、複数のブレード5と、を含んで構成される。
【0015】
モノパイル1は、水底BW以深の地盤(水底地盤)に打ち込まれて、杭基礎(杭状構造物)をなす。モノパイル1の上端は水面DLより上方に位置させてある。
【0016】
トランジッションピース2は、モノパイル1の上端部に接続される鉛直度調整用の塔状構造物で、トランジッションピース2の下端部内周がモノパイル1の上端部外周に嵌合した状態で接続固定される。
【0017】
タワー3は、トランジッションピース2の上端部に立設される。なお、トランジッションピース2の上端部には、タワー3設置用及び発電設備維持管理用のデッキ(足場設備)2dが設けられる。
【0018】
ナセル4は、タワー3の頂部に設置される発電部である。
ブレード5は、ナセル4の水平軸(ロータ軸)の前端部に取付けられて、複数、放射状に配置され、風力により回転してナセル4にて発電を行わせる。
【0019】
上記のような洋上風力発電設備100を港付近の洋上に多数基設置する場合、洋上風力発電設備100の構成部材(モノパイル1、トランジッションピース2、タワー3、ナセル4及びブレード5)を海外から船で全基分搬入して、施工(モノパイル1の打設、トランジッションピース2、タワー3、ナセル4及びブレード5の設置)することが多い。
【0020】
また、基礎施工(モノパイル1の打設とトランジッションピース2の設置)と上部施工(風車部材であるタワー3、ナセル4及びブレード5の設置)とに分ける場合、基礎施工は、全基分のモノパイル1及びトランジッションピース2の搬入後に行うこととなる。
【0021】
しかし、洋上風力発電設備の構成部材は、いずれも重量物であるため、例えばトランジッションピースの場合、1つの船で2~3基分搬入するのが限度である。
従って、全基分の基礎施工用の構成部材(モノパイル1及びトランジッションピース2)を搬入するのに、1~数年かかることもある。
【0022】
従って、全基分の基礎施工用の構成部材が揃った後に、施工する場合、船が着くごとに、構成部材を荷下ろしして、仮置き場まで運搬し、仮置きすることになり、仮置きは数年に及ぶこともある。
【0023】
また、数年後の施工時には、仮置き場から船着き場へ運搬して、洋上風力設備据付船に直接積み込むか、運搬船に積み込んで洋上風力設備据付船に供給することになる。
【0024】
本実施形態は、上記のような場合に、塔状構造物であるトランジッションピース2を船着き場から仮置き場まで(あるいは仮置き場から船着き場まで)多軸台車で運搬し、仮置きするための、運搬装置、及び、運搬・仮置き方法についての、実施形態である。
トランジッションピース2は、立てたままで運搬し、同じく立てたままで仮置きすることが求められる。
【0025】
図2は本発明の一実施形態として示すトランジッションピース運搬装置の全体図(台車の側方から見た正面図)である。また、図3図2のジャッキアップ状態の側面図、図4図2のジャッキダウン状態の側面図である。更に、図5図2の架台部分(受台+固定台座)の平面図である。
【0026】
本実施形態では、図3(又は図4)から解るように、2台の多軸台車10を使用し、これらは並列に配置されて連結材(H形鋼)により横方向に連結・一体化されている。各多軸台車10は、同軸の一対の車輪10a、10aを、横方向に2組(図3参照)、前後方向に16組(図2参照)有しており、32軸の構成である。各一対の車輪10a、10aは、それぞれの垂直軸回りに旋回可能である。
【0027】
多軸台車10の荷台10bは、荷台昇降用ジャッキ10cにより、昇降(ジャッキアップ及びジャッキダウン)可能である。
なお、図3は荷台10bを上昇させたジャッキアップ状態、図4は荷台10bを下降させたジャッキダウン状態を示している。
このように、本実施形態では、荷台昇降用ジャッキ10cを備え、並列に配置されて横方向に連結された複数(例えば2台)の多軸台車10を使用する。
【0028】
多軸台車10によりトランジッションピース2を立てたまま運搬するため、及び、トランジッションピース2を立てたまま仮置きするため、専用の架台(水平架台)20が用いられる。
架台20は、トランジッションピース2を立てて載置した状態で、多軸台車10の荷台10b上に載置可能である。
【0029】
すなわち、並列な2台の多軸台車10によりトランジッションピース2を運搬するため、2台の多軸台車10の荷台10b上に、架台20が載置される。従って、架台20は、2台の多軸台車10に跨がって(更に後述のように横方向の両端部が荷台10bからはみ出して)載置される。
【0030】
架台20は、受台21(下段受材21a及び上段受材21b)と、固定台座22と、設置用脚部30とを含んで構成される。
【0031】
受台21は、多軸台車10に載置可能である。
但し、受台21は、図3から解るように、その中央部が多軸台車10の荷台10b上に載置され、左右の両端部は多軸台車10の荷台10bから横方向にはみ出している。
【0032】
受台21は、詳しくは、複数の鋼材(H形鋼)を並列に水平配置してなる下段受材21aと、複数の鋼材(H形鋼)を並列に水平配置してなる上段受材21bとからなり、下段受材21aと上段受材21bとは、互いの鋼材を交差(直交)させた状態で、固定されている。より詳しくは、下段受材21aの鋼材は多軸台車10の横方向に延び、上段受材21bの鋼材は多軸台車10の前後方向に延びて、全体として格子状をなしている。これらは荷重を分散させるためである。
【0033】
次に固定台座22について説明する。
固定台座22は、受台21の中央部上面に固定されて、トランジッションピース2の下端部を固定可能である。これについては図6及び図7を併せて参照して更に詳しく説明する。
【0034】
図6は固定台座の拡大平面図である。また、図7(A)は固定台座のガイド部材及びフック爪の部分の平面図、図7(B)、(C)は同上の作動状態別の正面図である。ここで図7(B)はフック爪の係合状態を示し、図7(C)はフック爪の係合解除状態を示している。
【0035】
固定台座22は、図5及び図6に示されるように、受台21の上段受材21b上に放射状に固定配置される鋼材(H形鋼)23をベースとし、各鋼材23の外周側にガイド部材24及びフック爪25を組み込んである。
【0036】
ガイド部材24は、図6に示されるように、固定台座22上に搭載されるトランジッションピース2の下端部のフランジ2f周りに配置されるように、固定台座22を構成する放射状配置の鋼材23のそれぞれに設けられる。
【0037】
そして、ガイド部材24は、図7に示されるように、そのガイド面が、上から下に斜め内向きに配置されて、前記フランジ2fを固定台座22の中心部へ向かって案内する。
このようなガイド部材24を備えることで、トランジッションピース2をクレーンで吊って搭載する際の位置決めを確実なものとすることができる。
【0038】
フック爪25は、図6に示されるように、固定台座22上に搭載されるトランジッションピース2の下端部のフランジ2f周りに配置されるように、固定台座22を構成する放射状配置の鋼材23のそれぞれに、ガイド部材24を挟む形で、一対設けられる。
【0039】
そして、フック爪25は、図7(B)に示されるように、油圧シリンダ26の伸長動作により、前記フランジ2fと係合する方向に移動可能であり、また、図7(C)に示されるように、油圧シリンダ26の短縮動作により、前記フランジ2fとの係合を解除する方向に移動可能である。
【0040】
なお、フック爪25や油圧シリンダ26の回動支持機構の配置のため、固定台座22を構成する放射状配置の鋼材(H形鋼)23については、図7(C)に鋼材(H形鋼)23の断面図を併記してあるように、側部にウェブと平行に一対の鋼板27、27を溶着してある。
【0041】
上記のようにして、多数のフック爪25を全周からトランジッションピース2の下端部のフランジ2fに全周から係合させることで、固定台座22上にトランジッションピース2を立てたまま固定することができる。
【0042】
このとき、フック爪25とフランジ2fとの間には、図7(B)に示されているように、適当な厚さの当て金28を挿入することで、係合固定をより確実なものとすることができるとともに、トランジッションピース2を傷付けることを防止できる。
【0043】
また、全数のフック爪25を係合させた状態で、PC鋼線などのワイヤーを全数のフック爪25の外周に回して、緊張させることで、トランジッションピース2の固定をより確実なものとするようにしてもよい。
【0044】
次に設置用脚部30について図3及び図4により説明する。
設置用脚部30は、受台22(下段受材22a)の両端部下面に固定されて、一対設けられる。ここで、各設置用脚部30は、上下3段に鋼材(H形鋼)を配置してなる。
【0045】
一対の設置用脚部30は、図4に示されるように、これらを床面(地面を含む)に預けることで、受台21及び固定台座22を介して、トランジッションピース2を支持することができる。
【0046】
多軸台車10は、図4に示されるように、床面上を走行し、ジャッキダウン状態で、一対の設置用脚部30、30の間に進入することができる。このとき、多軸台車10の荷台10bの上面と、架台20(受台21)の下面との間には、十分な隙間がある。
【0047】
そして、前記進入状態で、ジャッキアップすることにより、図3に示されるように、架台20(受台21)を持ち上げて、左右の設置用脚部30、30を床面から 100mm程度、浮かせることができる。この状態で、多軸台車10は、架台20(受台21及び固定台座22)を介して、トランジッションピース2を支持することができ、トランジッションピース2を運搬することができる。
【0048】
図8は本発明の他の実施形態として示すトランジッションピース運搬装置の全体図(台車の側方から見た正面図)である。また、図9図8の側面図である。更に、図10図2の架台部分(受台+固定台座)の平面図である。
【0049】
図8図10の実施形態は、図2図5の実施形態と、受台のみが異なる。
図2図5の実施形態では、受台21は、複数の鋼材を並列に配置してなる下段受材21aと、複数の鋼材を並列に配置してなる上段受材21bとからなり、下段受材21aと上段受材21bとは、互いの鋼材を交差(直交)させた状態で、固定されて、格子状をなしている。
【0050】
これに対し、図8図10の実施形態の受台21’は、特に図10から明らかなように、鋼材を同一平面にて格子状に配置して、溶接等により一体化してなる。すなわち、受台21’を格子桁としている。
このような格子桁からなる受台21’であっても、荷重分散効果を得られる一方、受台21’の高さを低くして、安定性を向上させることができる。
【0051】
次にトランジッションピース2の実際の運搬と仮置きについて図11により説明する。
図11は運搬及び仮置きの説明図である。
【0052】
トランジッションピースの運搬船200は、図4と同様(但し台車無し)、架台20により支持して、トランジッションピース2を搬入する。
【0053】
運搬船200が港に着岸すると、クレーンにより、トランジッションピース2を架台20ごと吊り下ろす。又は、トランジッションピース2のみを吊り上げ、船着き場に予め設置した架台20上に吊り下ろして固定する。本工程が、架台20の固定台座22上に、トランジッションピース2を立てたまま固定するトランジッションピース固定工程に相当する。
【0054】
次に、多軸台車10が到着し、図4に示されているように、ジャッキダウン状態で、架台20の一対の設置用脚部30、30の間に進入する。そして、進入状態で、ジャッキアップすることにより、図3に示されているように、架台20(受台21)を持ち上げ、左右の設置用脚部30、30を床面から 100mm程度、浮かせる。本工程が運搬準備工程に相当する。
【0055】
これにより、多軸台車10は、架台20(受台21及び固定台座22)を介して、トランジッションピース2を支持することができ、トランジッションピース2を運搬可能となる。
【0056】
なお、多軸台車10が架台20を載置した状態で船着き場に来て、運搬船からトランジッションピース2を吊り上げて、多軸台車10の架台20の上に吊り下ろして固定するようしてもよい。
【0057】
架台20を介してトランジッションピース2を搭載した多軸台車10は、船着き場から走行して、仮置き場へ向かい、トランジッションピース2を運搬する。本工程が運搬工程に相当する。
【0058】
多軸台車10は、仮置き場へ到着すると、図4と同様に、ジャッキダウンして、架台20の設置用脚部30、30を床面に預け、トランジッションピース2を架台20ごと仮置きする。そして、自らは架台20の下から退出する。本工程が仮置き工程に相当する。
【0059】
なお、仮置きが長期間に及ぶ場合は、仮置き場に、コンクリート基礎により強固に固定された架台20を用意しておき、その架台20に、多軸台車10により搬送したトランジッションピース2をクレーンで吊り下ろして固定するようにしてもよい。この場合、多軸台車10は、架台20を載せたまま、次のトランジッションピース2の運搬のために、船着き場に戻ることができる。
【0060】
また、図11には、運搬船200により寝かせた状態(横置き状態)で搬入したモノパイル1を、別の多軸台車50により運搬して、モノパイル仮置き場に仮置きする様子も示されている。
【0061】
また、上記では、船着き場から仮置き場へ運搬して仮置きする場合について説明したが、仮置き期間の経過後、施工に先立って、仮置き場から船着き場へ運搬する場合も、一時的には船着き場に仮置きすることになるので、同様に適用することができる。
【0062】
なお、上記の説明では、運搬・仮置き対象の塔状構造物を洋上風力発電設備のトランジッションピースとしたが、本発明はこれに限るものではなく、塔状構造物一般に適用可能である。
更に、本発明は、塔状構造物の運搬に最適であるが、必ずしもに限るものでもなく、大重量の運搬対象物一般に適用する余地もある。
【0063】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を概略的に例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
なお、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
荷台昇降用ジャッキを備える多軸台車と、
前記多軸台車に載置可能な架台と、
を含んで構成され、
前記架台は、前記多軸台車に載置可能な受台と、前記受台の中央部上面に固定されて、運搬対象物を固定可能な固定台座と、前記受台の両端部下面に固定された一対の設置用脚部と、を含み、
前記多軸台車は、ジャッキダウン状態で、前記架台の一対の設置用脚部間に進入可能であり、ジャッキアップ状態で、前記架台を持ち上げ、前記設置用脚部を浮かせた状態で、運搬対象物を運搬可能であることを特徴とする、運搬装置。
[請求項2]
塔状構造物を立てたまま運搬する装置であって、
荷台昇降用ジャッキを備える多軸台車と、
前記塔状構造物を立てて載置した状態で、前記多軸台車に載置可能な架台と、
を含んで構成され、
前記架台は、前記多軸台車に載置可能な受台と、前記受台の中央部上面に固定されて、前記塔状構造物の下端部を固定可能な固定台座と、前記受台の両端部下面に固定された一対の設置用脚部と、を含み、
前記多軸台車は、ジャッキダウン状態で、前記架台の一対の設置用脚部間に進入可能であり、ジャッキアップ状態で、前記架台を持ち上げ、前記設置用脚部を浮かせた状態で、前記塔状構造物を運搬可能であることを特徴とする、塔状構造物の運搬装置。
[請求項3]
前記固定台座は、前記塔状構造物の下端部のフランジ周りに配置される複数のフック爪を有し、各フック爪は、前記フランジと係合する方向、及び、係合を解除する方向に移動可能であることを特徴とする、請求項2記載の塔状構造物の運搬装置。
[請求項4]
前記固定台座は、前記塔状構造物の下端部のフランジ周りに配置される複数のガイド部材を有し、各ガイド部材は、上から下に斜め内向きに配置されて、前記フランジを前記固定台座の中心部に向かって案内することを特徴とする、請求項2又は請求項3記載の塔状構造物の運搬装置。
[請求項5]
前記受台は、鋼材を格子状に配置してなることを特徴とする、請求項2~請求項4のいずれか1つに記載の塔状構造物の運搬装置。
[請求項6]
請求項2~請求項5のいずれか1つに記載の運搬装置を用いて、塔状構造物を運搬し、仮置きする方法であって、
前記架台の固定台座上に、塔状構造物を立てたまま固定する塔状構造物固定工程と、
前記多軸台車をジャッキダウン状態で前記架台の一対の設置用脚部間に進入させ、ジャッキアップして、前記架台を持ち上げ、前記設置用脚部を床面から浮かせる運搬準備工程と、
前記多軸台車を仮置き場まで移動させることにより、塔状構造物を運搬する運搬工程と、
前記仮置き場にて、前記多軸台車をジャッキダウンして、前記設置用脚部を床面に預けて仮置きし、前記多軸台車を退出させる仮置き工程と、
を含むことを特徴とする、塔状構造物の運搬・仮置き方法。
【符号の説明】
【0064】
100 洋上風力発電設備
1 モノパイル
2 トランジッションピース
2d デッキ(足場設備)
3 タワー
4 ナセル(発電部)
5 ブレード
10 多軸台車
10a 車輪
10b 荷台
10c 荷台昇降用ジャッキ
20 架台
21 受台
21a 下段受材
21b 上段受材
21’ 受台(格子桁)
22 固定台座
23 放射状配置の鋼材
24 ガイド部材
25 フック爪
26 油圧シリンダ
27 鋼板
28 当て金
30 設置用脚部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11