(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】リモコンシステム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20240610BHJP
H04L 67/00 20220101ALI20240610BHJP
H04N 21/237 20110101ALI20240610BHJP
【FI】
H04Q9/00 321C
H04L67/00
H04N21/237
H04Q9/00 311J
(21)【出願番号】P 2020160529
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 良太
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-098757(JP,A)
【文献】特開2016-178576(JP,A)
【文献】特開2003-304275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H04L 67/00
H04N 21/237
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号の伝送装置を遠隔制御するリモコン端局を備えるリモコンシステムであって、
第1のリモコン端局と、第2のリモコン端局とが第1の通信方式で接続される第1のシステムと、
第3のリモコン端局と、第4のリモコン端局とが第2の通信方式で接続される第2のシステムとを備え、
前記第1のリモコン端局と前記第3のリモコン端局とが第3の通信方式で接続され、
前記第2のリモコン端局と前記第4のリモコン端局とが第4の通信方式で接続され、
前記第3の通信方式及び前記第4の通信方式は、前記第1の通信方式又は前記第2の通信方式が異常の場合に使用し、
前記第1のリモコン端局が、前記第3のリモコン端局から前記第3の通信方式を介して前記第4のリモコン端局宛てのデータを受信するものの、前記第2のリモコン端局から前記第1の通信方式を介して前記第3のリモコン端局宛てのデータを受信しない場合に、前記第4のリモコン端局に異常が発生したと判断することを特徴とするリモコンシステム。
【請求項2】
第2の通信方式が異常となった場合に、
第3のリモコン端局が、第4のリモコン端局宛てのデータを第3の通信方式を用いて第1のリモコン端局に送信し、前記第1のリモコン端局が、第1の通信方式を用いて第2のリモコン端局に送信し、前記第2のリモコン端局が、第4の通信方式を介して前記第4のリモコン端局へ送信し、
前記第4のリモコン端局が、前記第3のリモコン端局宛てのデータを前記第4の通信方式を介して前記第2のリモコン端局に送信し、前記第2のリモコン端局が、前記第1の通信方式を介して前記第1のリモコン端局に送信し、前記第1のリモコン端局が、前記第3の通信方式を介して前記第3のリモコン端局へ送信することを特徴とする請求項1記載のリモコンシステム。
【請求項3】
リモコン端局が、第3の通信方式又は第4の通信方式を用いる際に、送信データに、異常を示す情報を含め、正常時に比べてデータ量を少なくして送信することを特徴とする請求項1又は2記載のリモコンシステム。
【請求項4】
第1又は第2の通信方式に接続する監視端末を備え、
いずれかのリモコン端局又はいずれかの通信方式に異常が発生した場合に、当該異常を監視端末に表示することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか記載のリモコンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送システムの各設備を遠隔監視するリモコンシステムに係り、特に、同一の拠点間に複数の個別リモコンシステムを設け、異常時に相互補完して、設備の監視・制御を継続でき、利便性及びシステム全体の信頼性を向上させることができるリモコンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
放送システムには、FPU(Field Pickup Unit)等の各種設備を遠隔監視・制御するリモコン(リモートコントロール)システムが設けられており、リモコンシステムとしては、FPUリモコンシステム、送信所リモコンシステム等がある。
【0003】
FPUリモコンシステムは、中継現場で撮影された中継映像を、本社まで伝送する際の中継点となるFPU基地局を遠隔監視するリモコンシステムである。
送信所リモコンシステムは、本社から送出されたテレビで視聴可能な電波を送信するための送信所システムを遠隔監視するリモコンシステムである。
【0004】
各リモコンシステムは、少なくとも本社に当該システムのリモコン操作端末(監視端末)を設け、当該システム全体の状態を管理・監視している。
そのため、各リモコンシステムでは、一般的に本社に制御端局、送信所または基地局に被制御端局というリモコン端局を設け、各リモコン端局はその局舎内に存在する関係システム設備を遠隔制御して情報を集約し、その情報をIP、シリアル、音声等の拠点間回線を通じて、操作端末が存在する本社へ伝送している。
【0005】
[リモコンシステムの構成例:
図7]
一般的なリモコンシステムの構成例について
図7を用いて説明する。
図7は、一般的なリモコンシステムの構成例を示す説明図である。
図7に示すように、リモコンシステムでは、リモコン端局A(10a)、リモコン端局B(10b)(両者の区別が不要の場合には、リモコン端局10と記載することもある)と、操作端末11a、操作端末11b(操作端末11と記載することもある)と、データベース12a、データベース12b(データベース12と記載することもある)とを備えている。
【0006】
これらの内、リモコン端局A(10a)、操作端末11a、データベース12aは拠点Aに設けられ、リモコン端局B(10b)、操作端末11b、データベース12bは拠点Bに設けられている。
そして、拠点Aと拠点Bとは、拠点間回線によって接続されている。
【0007】
拠点間回線は、LAN、シリアル、音声等の各種回線によって冗長構成されており、
図7の例では、HUB14を備えたIP回線13と、モデム16を備えた4線式電話回線15を備えている。
これにより、リモコン端局10a,10bは、IP回線13又は4線式電話回線(4W回線)15を用いて、互いに取得した情報の送受信を行って、情報を共有する。つまり、同一リモコンシステム内では、各リモコン端局10は、異なる拠点に設けられたリモコン端局が取得した情報も取得可能となっている(少なくとも一方には両拠点の情報が集約される)。
【0008】
操作端末11aは、リモコン端局10aから情報を取得して、データベース12aに蓄積し、必要に応じて表示出力し、システムの各設備を制御する。
同様に、操作端末11bは、リモコン端局10bから情報を取得して、データベース12bに蓄積し、表示出力し、システム設備を制御する。
操作端末11が同一拠点のリモコン端局10から情報を取得することにより、拠点間の通信を行わずに、システム内の別拠点の情報も取得することができるものである。
【0009】
操作端末11がシステム設備への制御を行う場合、当該設備が送信所または基地局に存在する場合には、拠点間回線を通じて制御信号を伝送している。
尚、システムの重要度によっては送信所や基地局にも操作端末11を設けることがある。
本社の操作端末11で管理している情報を、送信所や基地局の操作端末11でも参照するには、本社の制御端局で集約したシステム設備の情報を、拠点間回線を通じて送信所や基地局のリモコン端局10へ伝送する。
【0010】
[複数のリモコンシステムが設置される場合]
また、リモコンシステムでは、異なる種類のリモコンシステムが複数設置される場合がある。つまり、本社と当該拠点との間で複数のリモコンシステムが設けられている場合である。
リモコンシステムは、その種類によって、監視情報の種類や送出方法が異なることが多い。ここでは、種類毎のリモコンシステムのことを、個別リモコンシステムと称するものとする。
【0011】
例えば、個別リモコンシステムの一つであるFPUリモコンシステムでは、FPUに設けられた回転アンテナ装置の角度情報を連続的に効率よく通信できるように、当該アンテナ角度や当該アンテナに接続される受信機の受信状態を個別に分別して、その部分だけを送るような通信構成になっている。
【0012】
また、各個別リモコンシステムは、その種類に応じて重要性も多少異なっている。
特に一般家庭への放送波出力を管理する送信所リモコンは、より安定性、信頼性が求められるため、他の放送システムよりもシステム設備の信頼性を上げるような構成になることが多い。
【0013】
これらの理由から、各種の個別リモコンシステムは、通常、同一の拠点間をつないで構成することになったとしても、リモコン端局装置、その通信方法、リモコン用拠点間回線、監視・制御する設備が独立化していることが多い。
これは、一つのシステム不具合が別のシステムに影響しないようにするため、また、各々のリモコンシステムの個別の特徴を活かして効率よく通信するため、等の理由による。
【0014】
[関連技術]
尚、リモコンシステムに関する従来技術としては、特開2004-32440号公報「FPUリモコンシステム」(特許文献1)がある。
特許文献1には、FPUの受信設備における受信電波の伝搬状況を測定し、測定データを元に利オートコントロール制御器の画面状にOFDM遅延波の波形として表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述したように、従来のリモコンシステムでは、同一拠点間に複数の個別リモコンシステムが設けられていても、各システムが独立しており、異常発生時に相互補完することはできず、不便であるという問題点があった。
【0017】
尚、特許文献1及び特許文献2には、同一の拠点間に複数の個別リモコンシステムを設け、異常時に通信を相互補完して、設備の監視・制御を継続することは記載されていない。
【0018】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、同一の拠点間に複数の個別リモコンシステムを設け、異常時に通信を相互補完して、設備の監視・制御を継続でき、利便性及びシステム全体の信頼性を向上させることができるリモコンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、映像信号の伝送装置を遠隔制御するリモコン端局を備えるリモコンシステムであって、第1のリモコン端局と、第2のリモコン端局とが第1の通信方式で接続される第1のシステムと、第3のリモコン端局と、第4のリモコン端局とが第2の通信方式で接続される第2のシステムとを備え、第1のリモコン端局と第3のリモコン端局とが第3の通信方式で接続され、第2のリモコン端局と第4のリモコン端局とが第4の通信方式で接続され、第3の通信方式及び第4の通信方式は、第1の通信方式又は第2の通信方式が異常の場合に使用し、第1のリモコン端局が、第3のリモコン端局から第3の通信方式を介して第4のリモコン端局宛てのデータを受信するものの、第2のリモコン端局から第1の通信方式を介して第3のリモコン端局宛てのデータを受信しない場合に、第4のリモコン端局に異常が発生したと判断することを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、上記リモコンシステムにおいて、第2の通信方式が異常となった場合に、第3のリモコン端局が、第4のリモコン端局宛てのデータを第3の通信方式を用いて第1のリモコン端局に送信し、第1のリモコン端局が、第1の通信方式を用いて第2のリモコン端局に送信し、第2のリモコン端局が、第4の通信方式を介して第4のリモコン端局へ送信し、第4のリモコン端局が、第3のリモコン端局宛てのデータを第4の通信方式を介して第2のリモコン端局に送信し、第2のリモコン端局が、第1の通信方式を介して第1のリモコン端局に送信し、第1のリモコン端局が、第3の通信方式を介して第3のリモコン端局へ送信することを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、上記リモコンシステムにおいて、リモコン端局が、第3の通信方式又は第4の通信方式を用いる際に、送信データに、異常を示す情報を含め、正常時に比べてデータ量を少なくして送信することを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、上記リモコンシステムにおいて、第1又は第2の通信方式に接続する監視端末を備え、いずれかのリモコン端局又はいずれかの通信方式に異常が発生した場合に、当該異常を監視端末に表示することを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、映像信号の伝送装置を遠隔制御するリモコン端局を備えるリモコンシステムであって、第1のリモコン端局と、第2のリモコン端局とが第1の通信方式で接続される第1のシステムと、第3のリモコン端局と、第4のリモコン端局とが第2の通信方式で接続される第2のシステムとを備え、第1のリモコン端局と第3のリモコン端局とが第3の通信方式で接続され、第2のリモコン端局と第4のリモコン端局とが第4の通信方式で接続され、第3の通信方式及び第4の通信方式は、第1の通信方式又は第2の通信方式が異常の場合に使用し、第1のリモコン端局が、第3のリモコン端局から第3の通信方式を介して第4のリモコン端局宛てのデータを受信するものの、第2のリモコン端局から第1の通信方式を介して第3のリモコン端局宛てのデータを受信しない場合に、第4のリモコン端局に異常が発生したと判断するリモコンシステムとしているので、第1又は第2のシステムの拠点間回線である第1の通信方式又は第2の通信方式が異常の場合、正常なシステムの拠点間回線と、第3及び第4の通信方式とを用いて、異常が発生したシステムにおける通信を補完でき、異常が発生したシステムの設備についても、操作端末での監視及び制御を継続して、利便性及びシステム全体の信頼性を向上させることができ、別のシステムにおけるリモコン端局の異常を回線異常と区別して検知することができ、復旧作業を迅速に行うことができる効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、リモコン端局が、第3の通信方式又は第4の通信方式を用いる際に、送信データに、異常を示す情報を含め、正常時に比べてデータ量を少なくして送信する上記リモコンシステムとしているので、異常が発生していない他方のシステムに異常発生を報知でき、他方のシステムの通信を圧迫せずに通信を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本リモコンシステムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】拡張インタフェースを用いた通信を示す説明図である。
【
図3】トンネリングモードにおける表示例を示す説明図である。
【
図4】緊急通信モードにおける表示例を示す説明図である。
【
図5】別システムのリモコン端局の異常を検知する場合の動作を示す説明図である。
【
図6】本リモコンシステムの応用例を示す説明図である。
【
図7】一般的なリモコンシステムの構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るリモコンシステム(本リモコンシステム)は、同一拠点間に、第1のリモコン端局と第2のリモコン端局とが第1の拠点間回線で接続される第1の個別リモコンシステムと、第3のリモコン端局と第4のリモコン端局とが第2の拠点間回線で接続される第2の個別リモコンシステムとを備え、一方の拠点内の第1のリモコン端局と第3のリモコン端局とが第3の通信回線で接続され、他方の拠点内の第2のリモコン端局と第4のリモコン端局とが第4の通信回線で接続され、第3の通信回線及び第4の通信回線は、第1の拠点間回線又は第2の拠点間回線が異常の場合に使用されるリモコンシステムとしており、一方の個別リモコンシステムの拠点間回線が異常の場合、他方の個別リモコンシステムの拠点間回線と、拡張インタフェースによる第3及び第4の通信回線とを用いて、他方の個別リモコンシステムを介して異常が発生した個別リモコンシステムの設備についても本社の操作端末での監視及び制御を継続することができ、利便性及びシステム全体の信頼性を向上させることができるものである。
【0029】
[実施の形態に係るリモコンシステムの構成:
図1]
本リモコンシステムの概略構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本リモコンシステムの概略構成を示す説明図である。
図1に示すように、本リモコンシステムは、拠点Aと拠点Bとの間に、個別リモコンシステム(1)と、個別リモコンシステム(2)とを備えている。
【0030】
個別リモコンシステム(1)は、拠点Aのリモコン端局1A(1a)(以下、リモコン端局1aと記載)と拠点Bのリモコン端局1B(1b)(リモコン端局1b)とを、拠点間回線(IP回線)3で接続しており、拠点間回線3にはHUB4a、4bが設けられている。拠点間回線3は、請求項に記載した第1の通信方式に相当している。
【0031】
個別リモコンシステム(2)は、拠点Aのリモコン端局2A(2a)(以下、リモコン端局2aと記載)と拠点Bのリモコン端局2B(2b)(リモコン端局2b)とを、モデム6を介して拠点間回線(4W回線)5で接続している。拠点間回線5は、請求項に記載した第2の通信方式に相当している。
【0032】
そして、通常(正常時)は、個別リモコンシステム(1)と個別リモコンシステム(2)とは互いに関わり合うことなく、それぞれ独立して動作しており、各リモコン端局が設備の状態を監視して同一個別リモコンシステム内で情報を共有し、設備の制御を行っている。
【0033】
尚、
図1では、説明を簡単にするために、個別リモコンシステム(1)には、拠点間回線(IP回線)3のみを設け、個別リモコンシステム(2)には、拠点間回線(4W回線)5のみを設けたものとしているが、個別リモコンシステム(1)に更に4W回線による拠点間回線を設け、個別リモコンシステム(2)にIP回線による拠点間回線を設けてもよい。
また、操作端末も省略しているが、いずれの拠点についても、個別リモコンシステム毎に操作端末が設けられていてもよい。
【0034】
そして、本リモコンシステムの特徴として、各リモコン端局は、拡張通信インタフェース(拡張インタフェース)を備え、同一拠点内のリモコン端局同士は、拡張インタフェース回線によって接続されている。
【0035】
つまり、本リモコンシステムでは、拠点Aのリモコン端局1aとリモコン端局2aが、拡張インタフェース回線7で接続され、拠点Bのリモコン端局1bとリモコン端局2bとが、拡張インタフェース回線8で接続されている。拡張インタフェース回線7,8は、それぞれ、請求項に記載した第3、第4の通信方式に相当している。
各リモコン端局では、拡張インタフェース回線7又は8で接続される相手のリモコン端局の情報を予め記憶している。
【0036】
拡張インタフェース回線7は、拡張インタフェース回線71及び72を備え、双方向通信を行い、同様に、拡張インタフェース回線8は、拡張インタフェース回線81及び82で双方向通信を行う。
【0037】
また、上述したように、正常時には、リモコンシステム(1)は拠点間回線3を介してリモコン端局1a,1bが通信を行い、リモコンシステム(2)は拠点間回線5を介してリモコン端局2a,2bが通信を行っているため、拡張インタフェース回線7,8は使用されず、信号は流れない。
【0038】
[拡張インタフェースを用いた通信:
図2]
次に、拡張インタフェースを用いた通信について
図2を用いて説明する。
図2は、拡張インタフェースを用いた通信を示す説明図である。
本リモコンシステムでは、あるリモコンシステムの拠点間回線に異常が発生して、リモコン端局間の通信ができなくなった場合に、拡張インタフェース回線7,8及び同一拠点間に設けられた別のリモコンシステムの拠点間回線を介して通信を継続するようにしている。
【0039】
図2に示すように、例えば、リモコンシステム(2)の全ての拠点間回線(ここでは拠点間回線5)に異常が発生して、リモコン端局2aとリモコン端局2bとの通信ができなくなった場合、リモコン端局2aは、リモコン端局2b宛てのデータを、拡張インタフェース回線71を介してリモコン端局1aに送信する。宛先情報には、拠点及びリモコン端局を示す情報が含まれる。
【0040】
拠点Aのリモコン端局1aは、拡張インタフェース回線71を介して、リモコン端局2aからリモコン端局2b宛てのデータを受信して、拠点B宛てであることを認識すると、拠点間回線3を介してリモコン端局1bに当該データを送信する(トンネリング通信)。
【0041】
拠点Bのリモコン端局1bは、拠点間回線3を介して当該データを受信すると、拡張インタフェース回線81を介してリモコン端局2bに当該データを送信する。
リモコン端局2bは、拡張インタフェース回線81を介して当該データを受信する。
【0042】
同様に、リモコン端局2bからリモコン端局2a宛てのデータは、拡張インタフェース回線82、拠点間回線3、拡張インタフェース回線72を介してリモコン端局2aに送信される。
【0043】
これにより、個別リモコンシステム(2)の拠点間回線5が異常となった場合でも、拡張インタフェース回線7,8と、個別リモコンシステム(1)の拠点間回線3を用いて、個別リモコンシステム(2)のリモコン端局2a,2b間の通信を実現することができ、回線異常が発生した場合に別のシステムで補完して、システム全体の信頼性を向上させることができるものである。
【0044】
尚、ここでは、個別リモコンシステム(2)の拠点間回線5に異常が発生した場合を例としたが、個別リモコンシステム(1)の拠点間回線3に異常が発生した場合も同様である。
具体的には、リモコン端局1aからリモコン端局1b宛てのデータは、拡張インタフェース回線72、リモコン端局2a、拠点間回線5、リモコン端局2b、拡張インタフェース回線82を介してリモコン端局1bに受信され、リモコン端局1bからリモコン端局1a宛てのデータは、拡張インタフェース回線81、リモコン端局2b、拠点間回線5、リモコン端局2b、拡張インタフェース回線71を介してリモコン端局1aに受信される。
【0045】
[トンネリングで伝送される送信データ量]
別のリモコンシステムの拠点間回線を利用してデータを送信する場合のデータ量について説明する。
拠点間回線5に不具合を生じた個別リモコンシステム(2)の通信は、個別リモコンシステム(1)の通信の隙間を用いて伝送するトンネリングによって行われる。そのため、個別リモコンシステム(1)の動作に影響を及ぼさないよう、最低限の情報とすることが望ましい。
【0046】
例えば、自己の拠点間回線に異常を検出したリモコン端局2a,2bは、設備の監視データとして、一定の周期での定期監視結果のみ送信し、変化を検出した際には送信しないようにしたり、コマンド間インターバルを通常より長めにとるようにしたり、あるいは、コマンド等によって抽出された重要データ部分のみを送信する、といった方法で送信データ量を低減する。
これにより、正常時の通信に比べてデータ量を少なくすることができるものである。
【0047】
[トンネリングで伝送されるデータの形式]
また、トンネリングによって伝送される個別リモコンシステム(2)のデータは、正常な個別リモコンシステム(1)のデータと識別可能とする必要がある。
そこで、正常時のデータとは異なる位置にフラグを立てるなど、トンネリング用のデータであることを識別可能としておく。トンネリング用のデータであることを識別可能とするデータは、請求項に記載した異常を示す情報に相当する。
これにより、データを受信した正常な個別リモコンシステムのリモコン端局が、相手が異常状態であり、それを認識していることを容易に判別することができるものである。
【0048】
[トンネリングモードと緊急通信モード]
本リモコンシステムの各拠点のリモコン端局1a,1b,2a,2bは、動作モードとして、従来と同様に、他の個別リモコンシステムと関わらない通常モードに加えて、他のリモコンシステムと相互に関与して動作するモードとして、トンネリングモードと、緊急通信モードとを備えている。
そして、リモコン端局1a,1b,2a,2bは、それぞれ、自己の拠点間回線の状況や、受信したデータを監視して、トンネリングモードや緊急通信モードに移行して動作を行う。
【0049】
[トンネリングモード]
本リモコンシステムのリモコン端局1a,1b,2a,2bは、自己の個別リモコンシステムの拠点間回線が(複数ある場合にはいずれかが)正常な状態で、別の個別リモコンシステムのパケットを拡張インタフェース回線7又は8を介して受信した場合に、トンネリングモードに移行する。
図2に示した例では、拠点間回線が正常に動作している個別リモコンシステム(1)のリモコン端局1a,1bがトンネリングモードとなる。
【0050】
この場合、リモコン端局1a,1bは、個別リモコンシステム(2)の拠点間回線5の不具合により、同じ拠点にある不具合状態の個別リモコンシステム(2)のリモコン端局2a,2bから、それぞれ拡張インタフェース7,8を用いてデータを受信し、自己の拠点間回線3を用いて別の拠点に送信する。
【0051】
[トンネリングモードにおける表示例:
図3]
次に、トンネリングモードで動作している個別リモコンシステムにおける操作端末での表示例について
図3を用いて説明する。
図3は、トンネリングモードにおける表示例を示す説明図である。ここでは、
図2の状態で、個別リモコンシステム(1)のリモコン端局1aがトンネリングモードで動作している場合を例として説明する。
【0052】
個別リモコンシステム(1)に設けられた操作端末では、
図3に示すように、自己の個別リモコンシステム(個別リモコンシステム(1))の各設備の状態表示及び操作画面に加えて、別の個別リモコンシステム(ここでは個別リモコンシステム(2))によるトンネリング通信が行われていることを示す「トンネル回線使用中」が表示される。
【0053】
また、リモコン端局1a及び1bは、自己の回線が正常にもかかわらず、拡張インタフェース7又は8からデータを受信することから、個別リモコンシステム(2)で回線異常が発生したことを認識し、操作端末に報告する。
これにより、
図3に示すように、操作端末は、「システム2 回線異常」の表示を行う。
【0054】
更に、リモコン端局1a及び1bは、トンネル通信を行った時間を表示したり、トンネル通信のデータ量を判別し、自己の送信データ量と合わせて、1秒間の総データ量「総データ(Mbps)」を表示したり、トンネル通信の1秒間のデータ量を付して「総データ(Mbps)(トンネル(Mbps))」を表示することも可能である。
更にまた、トンネリングモードにおける操作端末では、認識した相手システム(個別リモコンシステム(2))のシステム状態を、自己のシステムの操作画面に表示してもよい。
【0055】
[緊急通信モード]
本リモコンシステムのリモコン端局1a,1b,2a,2bは、自己の個別リモコンシステムの拠点間回線が全て異常となったことを検出すると、緊急通信モードに移行して動作を行う。
緊急通信モードでは、リモコン端局1a,1b,2a,2bは、拡張インタフェース回線を用いて、予め設定された同一拠点の別のリモコンシステムのリモコン端局を介してトンネリング通信を行う。
【0056】
この場合、緊急通信モードとなったリモコン端局は、上述したように、送信データ量を低減するよう制御し、送信データに緊急通信時のトンネリング用のデータであることを示す情報(フラグ等)を含めて送信する。
【0057】
[緊急通信モードにおける表示例:
図4]
緊急通信モードにおける表示例について
図4を用いて説明する。
図4は、緊急通信モードにおける表示例を示す説明図である。
緊急通信モードは、自己の個別リモコンシステムの拠点間回線が全て異常である状態で、リモコン端局が、拡張インタフェース回線を介してパケットを受信している状態であり、上述した
図2の例では、個別リモコンシステム(2)のリモコン端局2a,2bが緊急通信モードとなる。
【0058】
例えば、リモコン端局2aで、拠点間回線5が異常となったことを検出すると、リモコン端局2aはその旨を操作端末に出力し、拠点Aの操作端末では、
図4に示すように、自己の個別リモコンシステム(リモコンシステム(2))の状態表示・操作画面に、まず、「回線異常」のアラーム表示を出力する。
これにより、操作端末の操作を行う作業員に、自己の拠点間回線4に異常が発生したことを報知して、迅速な対応を可能とするものである。
【0059】
そして、
図2で説明したように、リモコン端局2a,2bは、自己の拠点間回線5が異常となったため、拡張インタフェース回線7,8及び同一拠点のリモコン端局1a,1bを介してデータの送受信を行う。
リモコン端局2a,2bは、拡張インタフェース回線7,8から正常に自己の個別リモコンシステムのデータを送受信して、設備の状態を共有できる場合には、迂回による通信が正常であることを認識して操作端末にその旨通知し、操作端末では、「緊急回線正常」の表示を行う。
【0060】
また、相手のリモコン端局から応答がない場合、リモコン端局2a,2bは、拡張インタフェース回線7,8を用いた緊急時の迂回経路にも不具合が出ていると判断し、その旨を操作端末に通知し、操作端末では「緊急回線異常」の表示を行う。
【0061】
更に、自己は緊急通信モードで動作しているにも関わらず、相手のリモコン端局から正常時のデータ構成で送信されている場合には、相手のリモコン端局が回線の異常を認識していないと判断し、操作端末は「端局 状態不一致」を表示する。
この場合には、回線異常ではなく、自装置の不具合の可能性がある。
【0062】
[別システムのリモコン端局の異常検知:
図5]
次に、リモコン端局が、別システムのリモコン端局の異常を検知する動作について
図5を用いて説明する。
図5は、別システムのリモコン端局の異常を検知する場合の動作を示す説明図である。
例えば、
図5に示すように、リモコン端局2bが異常であった場合、拠点間回線5が正常であったとしても、リモコン端局2aからのデータは送られない。
リモコン端局2aは、相手のリモコン端局2bからのデータを受信しないことから、拠点間回線5の異常と判断して、緊急通信モードに移行する。
【0063】
リモコン端局2aから拡張インタフェース回線71を介してトンネリング通信のデータを受信したリモコン端局1aは、拠点間回線3を用いてリモコン端局1bに当該データを送信し、当該データはリモコン端局1b、拡張インタフェース回線81を介してリモコン端局2bに送信される。
【0064】
しかし、リモコン端局2bは異常となっているので、応答を送信できない。
リモコン端局1aは、拡張インタフェース回線71から拠点間回線3へのトンネリング通信はあるものの、拠点間回線3から拡張インタフェース回線72へのトンネリング通信がないことを検知して、リモコン端局2bの装置異常の可能性があることを検出する。
そして、その旨を個別リモコンシステム(1)の操作端末に通知して、操作端末においてリモコン端局2bの装置異常を示すアラートを表示させることができるものである。
【0065】
このように、本リモコンシステムは、個別リモコンシステムが相互に関連した動作を行うことにより、相手システムの装置異常を検出することができ、迅速な対応を可能とするものである。
【0066】
[本リモコンシステムの応用例:
図6]
次に、本リモコンシステムの応用例について
図6を用いて説明する。
図6は、本リモコンシステムの応用例を示す説明図である。
図6に示すように、本リモコンシステムの応用例(応用例のシステム)は、これまでに説明してきたものと同様の個別リモコンシステム(1)及び個別リモコンシステム(2)からの情報を本社等で集約して、両方の個別リモコンシステムの状態を統合的に監視する構成である。
【0067】
応用例のシステムでは、個別リモコンシステム(1)及び個別リモコンシステム(2)の拠点間回線がクラウドネットワーク90に接続され、クラウドネットワーク90を介して、本社等に、操作端末91、サーバ92が設けられている。サーバ92には情報を蓄積するデータベースが設けられている。
【0068】
また、個別リモコンシステム(1)は、リモコン端局1a,1bを備え、個別リモコンシステム(2)は、リモコン端局2a,2bを備えており、リモコン端局1aと1b、リモコン端局2aと2bとはそれぞれ拡張インタフェース回線7,8で接続されている。
リモコン端局1b、2bは送信所や基地局に設けられていてもよい。
【0069】
そして、サーバ92は、個別リモコンシステム(1)及び個別リモコンシステム(2)の監視情報をクラウドネットワーク90を介して受信、蓄積し、操作端末91や各拠点等に設けられた操作端末からの要求に応じて、任意の個別リモコンシステムの監視データを閲覧可能としている。
また、操作端末91から、各個別リモコンシステムに対する制御も可能としている。
本社側のシステム(本社クラウドシステム)は、GUI(Graphical User Interface)を備え、操作性を向上させ、統合的な監視及び制御を容易にするものである。
【0070】
応用例のシステムでは、いずれかの個別リモコンシステムの拠点間回線に不具合が生じた場合でも、正常な個別リモコンシステムの拠点間回線を用いて、本社クラウドシステムに不具合の情報を通知して、操作端末91で表示させることができ、より迅速に対応して、システムを早急に復旧することができ、システム全体の信頼性を向上させることができるものである。
つまり、応用例のシステムでは、
図5を用いて説明した別の個別リモコンシステムにおける異常検知がより効果的に利用できるものである。
【0071】
[実施の形態の効果]
本リモコンシステムによれば、同一拠点間に、リモコン端局1aとリモコン端局1bとが拠点間回線3で接続される個別リモコンシステム(1)と、リモコン端局2aとリモコン端局2bとが拠点間回線5で接続される個別リモコンシステム(2)とを備え、一方の拠点内のリモコン端局1aとリモコン端局2aとが拡張インタフェース回線7で接続され、他方の拠点内のリモコン端局1bとリモコン端局2bとが拡張インタフェース回線8で接続され、拡張インタフェース回線7及び拡張インタフェース回線8は、拠点間回線3又は拠点間回線5が異常の場合に使用されるリモコンシステムとしているので、一方の個別リモコンシステムの拠点間回線が異常の場合、他方の個別リモコンシステムの拠点間回線と、拡張インタフェース回線7,8とを用いて通信を補完し、他方の個別リモコンシステムを介して、異常が発生した個別リモコンシステムの設備についても本社の操作端末での監視及び制御を継続することができ、利便性及びシステム全体の信頼性を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、同一の拠点間に複数の個別リモコンシステムを設け、異常時に通信を5相互補完して、設備の監視・制御を継続でき、利便性及びシステム全体の信頼性を向上させることができるリモコンシステムに適している。
【符号の説明】
【0073】
1a,1b,2a,2b,10,10a,10b,…リモコン端局、 3,5,13,15…拠点間回線、 4,14…HUB、 6,16…モデム、 7,8,71,72,81,82…拡張インタフェース回線、 11,11a,11b,91…操作端末、 12,12a,12b…データベース、 90…クラウドネットワーク、 92…サーバ