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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20240610BHJP
   F04B 39/06 20060101ALI20240610BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240610BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240610BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20240610BHJP
   H02K 1/32 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
F04B39/00 106E
F04B39/06 Q
H02K7/14 B
H02K9/19 A
H02K1/18 Z
H02K1/32 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020168468
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060787
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】桑原 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】平田 弘文
(72)【発明者】
【氏名】三俣 圭史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幹人
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-274972(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052741(WO,A1)
【文献】特開2007-270696(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0090003(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/06
H02K 7/14
H02K 9/19
H02K 1/18
H02K 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる筒状に形成されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されるとともに前記軸線回りに回転して流体を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機を前記軸線回りに回転駆動するモータと、
前記モータを前記ハウジングの内部に固定する複数の締結ボルトと、を備え、
前記モータは、
前記ハウジングの内部に配置されるとともに前記軸線に沿って第1長さを有するステータと、
前記ステータの内周側に配置されるロータと、を備え、
前記ステータは、前記軸線回りの周方向に沿って配置されるとともに前記軸線に沿って前記第1長さよりも短い第2長さを有する複数の位置決め部を有し、
前記ハウジングまたは前記ハウジングに固定される他の部材には、前記締結ボルトが締結される締結穴が形成されており、
前記ステータは、前記位置決め部に形成される挿入穴に挿入される前記締結ボルトを前記締結穴に締結することにより前記ハウジングの内部に固定されており、
前記ステータの外周面には、複数の前記位置決め部が配置される前記周方向の各位置に前記軸線に沿って延びる複数の溝部が形成されており、
前記ハウジングの内周面には、複数の前記溝部に収容されるとともに前記軸線に沿って延びる複数の突出部が形成されており、
前記締結穴は、前記突出部の前記位置決め部と対向する端面に形成されている電動圧縮機。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記軸線に沿った前記圧縮機側の端部に封止部材により封止される開口部を有し、
前記位置決め部は、前記軸線に沿った方向において、前記圧縮機に近接する前記ステータの端部に設けられている請求項に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記位置決め部の前記ハウジングに固定される端面は、前記軸線に沿った方向における前記モータの重心位置の近傍に配置される請求項に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機において、圧縮機構を駆動するためのモータは、圧縮機構と共に密閉構造とされたハウジングに内蔵されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1には、ステータに締結ボルトを挿入する挿入穴を形成し、挿入穴に挿入された締結ボルトの先端をハウジングに形成された締結穴に締結し、ステータをハウジングに固定する構造が開示されている。特許文献2には、ハウジングとステータとの間に冷媒を流通させてステータの温度上昇を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-92889号公報
【文献】特開2017-99173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される電動圧縮機は、ステータをハウジングに固定するためにステータに形成される挿入穴の長さを、モータの駆動軸方向におけるステータの全長(モータ積厚)と同一にしている。そのため、モータの出力を向上させるためにステータの全長を長くすると、それに伴って挿入穴および挿入穴に挿入される締結ボルトの全長が長くなってしまう。
【0005】
この場合、ステータとハウジングが接触する接触位置がステータの駆動軸方向の端部となるため、接触位置とモータの重心位置との駆動軸方向の距離が長くなる。そして、電動圧縮機が動作することによる振動や電動圧縮機に作用する外力によりモータに作用するモーメントが、接触位置とモータの重心位置との駆動軸方向の距離に応じて大きくなる。これにより、電動圧縮機に発生する振動が大きくなり、締結ボルトの緩みや破損が発生しやすくなる。
【0006】
また、特許文献2に開示される電動圧縮機は、ハウジングとステータの外周面との間に冷媒を流通させてステータの温度上昇を抑制している。しかしながら、冷媒が流通する領域とステータに巻き回されるコイルとの間が離れているため、冷媒によりステータを十分に冷却できずモータ効率が低下する場合がある。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、振動の発生やステータをハウジングに締結する締結ボルトの緩みや破損を抑制することが可能な電動圧縮機を提供することを目的とする。
また、冷媒によりステータを十分に冷却してモータ効率を向上させることが可能な電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る電動圧縮機は、軸線に沿って延びる筒状に形成されるハウジングと、前記ハウジングの内部に配置されるとともに前記軸線回りに回転して流体を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機を前記軸線回りに回転駆動するモータと、前記モータを前記ハウジングの内部に固定する複数の締結ボルトと、を備え、前記モータは、前記ハウジングの内部に配置されるとともに前記軸線に沿って第1長さを有するステータと、前記ステータの内周側に配置されるロータと、を備え、前記ステータは、前記軸線回りの周方向に沿って配置されるとともに前記軸線に沿って前記第1長さよりも短い第2長さを有する複数の位置決め部を有し、前記ハウジングまたは前記ハウジングに固定される他の部材には、前記締結ボルトが締結される締結穴が形成されており、前記ステータは、前記位置決め部に形成される挿入穴に挿入される前記締結ボルトを前記締結穴に締結することにより前記ハウジングの内部に固定されており、前記ステータの外周面には、複数の前記位置決め部が配置される前記周方向の各位置に前記軸線に沿って延びる複数の溝部が形成されており、前記ハウジングの内周面には、複数の前記溝部に収容されるとともに前記軸線に沿って延びる複数の突出部が形成されており、前記締結穴は、前記突出部の前記位置決め部と対向する端面に形成されている。
【0009】
本開示の参考例に係る電動圧縮機は、軸線に沿って延びる筒状に形成されるハウジングと、前記ハウジングの内部に配置されるとともに前記軸線回りに回転して冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機を前記軸線回りに回転駆動するモータと、を備え、前記モータは、前記ハウジングの内部に配置されるステータと、前記ステータの内周側に配置されるロータと、を備え、前記ステータの内部には、前記軸線に沿った一端側に設けられる流入口から前記軸線に沿った他端側に設けられる流出口へ向けて冷媒を流通させる冷媒流路が形成されており、前記冷媒流路は、前記軸線に沿った前記一端側に形成されるとともに前記一端側から前記他端側へ向けて前記軸線からの径方向の距離が漸次短くなる第1流路部と、前記軸線に沿った前記他端側に形成されるとともに前記第1流路部と連通し、前記他端側から前記一端側へ向けて前記軸線からの径方向の距離が漸次短くなる第2流路部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、振動の発生やステータをハウジングに締結する締結ボルトの緩みや破損を抑制することが可能な電動圧縮機を提供することができる。
また、本開示によれば、冷媒によりステータを十分に冷却してモータ効率を向上させることが可能な電動圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る電動圧縮機を示す部分縦断面図である。
図2図1に示す電動圧縮機のA-A矢視断面図である。
図3図1に示す電動圧縮機のB-B矢視断面図である。
図4】比較例の電動圧縮機を示す部分縦断面図である。
図5】第1実施形態の変形例の電動圧縮機を示す部分縦断面図である。
図6】本開示の第2実施形態に係る電動圧縮機を示す部分縦断面図である。
図7図6に示す電動圧縮機のE-E矢視断面図である。
図8】本開示の第3実施形態に係る電動圧縮機を示す部分縦断面図である。
図9】本開示の第4実施形態に係る電動圧縮機を示す部分横断面図である。
図10図9に示すステータのG-G矢視断面図である。
図11図10に示すステータのH-H矢視断面図である。
図12】第4実施形態の第1変形例に係る電動圧縮機を示す部分横断面図である。
図13図12に示すステータのJ-J矢視断面図である。
図14図13に示すステータのK-K矢視断面図である。
図15】第4実施形態の第2変形例に係る電動圧縮機を示す部分横断面図である。
図16図15に示すステータのM-M矢視断面図である。
図17図16に示すステータのN-N矢視断面図である。
図18】第4実施形態の第3変形例に係る電動圧縮機を示す部分横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態に係る電動圧縮機100について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電動圧縮機を示す部分縦断面図である。図2は、図1に示す電動圧縮機100のA-A矢視断面図である。図3は、図1に示す電動圧縮機100のB-B矢視断面図である。図1に示す断面図は、図2のC-C矢視断面図となっている。同様に、図1に示す断面図は、図3のD-D矢視断面図となっている。
【0013】
本実施形態の電動圧縮機100は、吸入ポートP1から吸入される冷媒(流体)を圧縮して吐出ポートP2から外部へ吐出する装置である。図1に示すように、本実施形態の電動圧縮機100は、ハウジング10と、エンドハウジング(封止部材)20と、圧縮機30と、モータ40と、締結ボルト50と、第1軸受60と、第2軸受70と、保持部80と、インバータ90と、を備える。
【0014】
ハウジング10は、軸線Xに沿って延びる略円筒状に形成される部材であり、内部に圧縮機30およびモータ40を収容する。ハウジング10は、アルミニウム合金等の金属材料により形成されている。ハウジング10は、軸線X方向のエンドハウジング20側の端部に、エンドハウジング20により封止される開口部11を有する。
【0015】
図1に示すように、ハウジング10の底部12の近傍の外周面には、吸入ポートP1が設けられている。外部から供給される冷媒は、吸入ポートP1からハウジング10の内部に導入される。ハウジング10に導入された冷媒は、軸線Xに沿って底部12から開口部11へ向けて流通する。
【0016】
エンドハウジング20は、開口部11からハウジング10の内部に圧縮機30およびモータ40が挿入された状態で、ハウジング10の開口部11を封止する部材である。エンドハウジング20は、締結ボルト21をハウジング10の開口部11に形成された締結穴(図示略)に締結することにより、ハウジング10に固定される。ハウジング10の軸線Xに沿った圧縮機30側の端部に配置される開口部11は、エンドハウジング20により封止される。
【0017】
圧縮機30は、ハウジング10の内部に配置されるとともに軸線X回りに回転して流体を圧縮する装置である。圧縮機30は、例えば、ハウジング10に固定される固定スクロール(図示略)に対して組み合わされる旋回スクロール(図示略)を軸線X回りに公転旋回運動させることにより冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構を備える。
【0018】
圧縮機30は、吸入ポートP1からハウジング10の内部に導入された冷媒を吸入して圧縮し、圧縮された冷媒をエンドハウジング20に設けられた吐出ポートP2に導く。吐出ポートP2に導かれた冷媒は、吐出ポートP2に接続される配管(図示略)を介して外部へ供給される。
【0019】
モータ40は、圧縮機30を軸線X回りに回転駆動する装置である。モータ40は、ステータ41と、ロータ42と、駆動軸43と、ボビン44と、ボビン45と、を有する。
【0020】
ステータ41は、環状に打抜き成形された電磁鋼板を所定枚数積層して構成される。図2および図3に示すように、ステータ41の内周側には、複数のティース部41aが設けられている。ステータ41には、ボビン44およびボビン45を介して、複数のティース部41aのそれぞれにコイル巻線(図示略)が巻き回されている。
【0021】
図1に示すように、ステータ41は、ハウジング10の内部に配置されるとともに軸線Xに沿って、底部12側の端部の位置X1から圧縮機30側の端部の位置X2まで長さL1(第1長さ)を有する。ステータ41は、軸線Xに沿って長さL1よりも短い長さL2(第2長さ)を有する複数の位置決め部41bを有する。位置決め部41bは、締結ボルト50が挿入される挿入穴41b1を有する部分である。図2に示すように、位置決め部41bは、軸線X回りの周方向CDに沿って複数箇所に配置されている。
【0022】
図1および図3に示すように、ステータ41の外周面には、複数の位置決め部41bが配置される周方向CDの各位置に、軸線Xに沿って延びる複数の溝部41cが形成されている。ハウジング10の内周面には、複数の溝部41cが配置される周方向CDの各位置に、複数の溝部41cに収容されるとともに軸線Xに沿って延びる複数の突出部15が形成されている。
【0023】
ハウジング10の内周面とステータ41の外周面との間には、冷媒が流通する空間が設けられている。この空間を冷媒が通過することにより、ステータ41の外周面を介してステータ41の熱を冷媒に伝達してステータ41を冷却することができる。ここで、ステータ41の伝熱特性を高めるため、溝部41cを形成するステータ41の外周面に凹凸形状を設けるようにしてもよい。凹凸形状を設けることにより、ステータ41が冷媒と接触する接触面積を増加させ、冷媒によるステータ41の冷却効率を高めることができる。
【0024】
図1および図3に示すように、ハウジング10の突出部15の圧縮機30側の端面には、締結ボルト50が締結される締結穴51が形成されている。ハウジング10の突出部15の圧縮機30側の端面は、位置決め部41bの底部12側の端面と対向する端面である。締結穴51は、位置決め部41bと対向する突出部15の端面に形成されている。
【0025】
ステータ41は、位置決め部41bに形成される挿入穴41b1に挿入される締結ボルト50を締結穴51に締結することによりハウジング10の内部に固定される。複数の締結ボルト50は、モータ40のステータ41を周方向CDの複数箇所でハウジング10の内部に固定する。
【0026】
ロータ42は、ステータ41の内周側に所定の隙間(ギャップ)を設けた状態で配置される。ロータ42は、環状に打抜き成形された電磁鋼板を所定枚数積層して構成される。
【0027】
駆動軸43は、ロータ42の中心に形成される貫通穴に挿入されてロータ42に連結され、軸線X上に配置される部材である。駆動軸43は、ロータ42と一体となって軸線X回りに回転し、圧縮機30に軸線X回りに回転する駆動力を伝達する。駆動軸43の開口部11側の端部は第1軸受60により軸線X回りに回転自在に支持される。駆動軸43の底部12側の端部は第2軸受70により軸線X回りに回転自在に支持される。
【0028】
保持部80は、ハウジング10に固定されるとともに第1軸受60を保持する部材である。保持部80は、底部12側の端面がハウジング10の段部13に接触し、開口部11側の端面が圧縮機30に接触する。保持部80は、ハウジング10にエンドハウジング20を固定することにより、ハウジング10と圧縮機30との間に挟まれた状態で軸線X方向の位置が固定される。
【0029】
インバータ90は、外部電源から供給された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ40に印加してモータ40を回転駆動する装置である。インバータ90は、ハウジング10の内部に形成される密閉空間とは隔離された空間に配置される。
【0030】
次に、電動圧縮機100が動作することによる振動や電動圧縮機100に作用する外力によりモータ40に作用するモーメントについて、比較例を参照して説明する。図4は、比較例の電動圧縮機100Aを示す部分縦断面図である。比較例の電動圧縮機100Aは、ステータ41をハウジング10に固定するためにステータ41に形成される挿入穴41b1の長さを、モータ40の軸線Xに沿った方向におけるステータ41の全長と同一の長さL1にしている。
【0031】
図1および図4において、モータ40の軸線X方向の重心位置は位置Xgである。本実施形態の電動圧縮機100において、ハウジング10とステータ41の位置決め部41bとが接触する接触位置は、軸線X上の位置Xgと一致している。一方、比較例の電動圧縮機100Aにおいて、ハウジング10とステータ41とが接触する接触位置は、ステータ41の底部12側の端部が配置される位置X1となっている。
【0032】
比較例の電動圧縮機100Aは、ハウジング10とステータ41とが接触する接触位置である位置X1から重心位置である位置Xgまで長さL3だけ離間している。一方、本実施形態の電動圧縮機100は、ハウジング10とステータ41とが接触する接触位置が重心位置である位置Xgと一致している。すなわち、本実施形態の電動圧縮機100は、比較例の電動圧縮機100Aに比べ、ハウジング10とステータ41とが接触する接触位置から重心位置までの距離が短い。
【0033】
本実施形態の電動圧縮機100によれば、ハウジング10にステータ41が位置決めされる位置がステータ41の軸線Xに沿った端面の位置となる場合に比べ、電動圧縮機100が動作することによる振動や電動圧縮機100に作用する外力によりモータ40に作用するモーメントが小さくなる。したがって、振動の発生やステータ41をハウジング10に締結する締結ボルトの緩みや破損を抑制することが可能な電動圧縮機100を提供することができる。
【0034】
なお、本実施形態の電動圧縮機100は、ハウジング10とステータ41とが接触する接触位置が重心位置である位置Xgと一致するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、ハウジング10とステータ41とが接触する接触位置は、ステータ41の軸線Xに沿った端面の位置よりもモータ40の重心位置に近接した位置であれば位置Xgと一致しなくてもよい。
【0035】
図5は、本実施形態の変形例の電動圧縮機100Bを示す部分断面図である。図5に示す電動圧縮機100Bは、ハウジング10とステータ41とが接触する接触位置を、ステータ41の軸線Xに沿った端面の位置X2よりもモータ40の重心位置である位置Xgに近接した位置X3にしたものである。
【0036】
図5に示すように、ステータ41は、ハウジング10の内部に配置されるとともに軸線Xに沿って、底部12側の端部の位置X1から圧縮機30側の端部の位置X2まで長さL1を有する。ステータ41は、軸線Xに沿って長さL1よりも短い長さL2を有する複数の位置決め部41bを有する。
【0037】
図5に示す電動圧縮機100Bにおいて、位置決め部41bは、軸線Xに沿った方向において、圧縮機30に近接するステータ41の端部に設けられている。電動圧縮機100Bにおいて、ハウジング10とステータ41とが接触する接触位置は、重心位置である位置Xgから長さL4だけ離間している。長さL4は、長さL3よりも短い。
【0038】
次に、電動圧縮機100のハウジング10に形成される締結穴51の位置について説明する。図1に示すように、本実施形態の電動圧縮機100において、ハウジング10の開口部11からステータ41とハウジング10とが接触する接触位置までの長さは長さL5となっている。一方、図4に示すように、比較例の電動圧縮機100Aにおいて、ハウジング10の開口部11からステータ41とハウジング10とが接触する接触位置までの長さは長さL5よりも長い長さL6となっている。
【0039】
ハウジング10のステータ41が接触する端面に締結穴51を形成する場合、開口部11から工具の先端を挿入し、ハウジング10の端面に突き当てる必要がある。本実施形態の電動圧縮機100は、比較例の電動圧縮機100Aに比べ、開口部11からステータ41とハウジング10とが接触する接触位置までの長さが短い。そのため、ハウジング10の開口部11から工具を挿入してハウジング10に締結穴51を形成する際の加工性が向上する。
【0040】
また、図5に示す変形例の電動圧縮機100Bにおいて、ハウジング10の開口部11からステータ41とハウジング10とが接触する接触位置までの長さは長さL5よりも短い長さL7となっている。変形例の電動圧縮機100Bは、本実施形態の電動圧縮機100に比べ、開口部11からステータ41とハウジング10とが接触する接触位置までの長さが更に短い。そのため、ハウジング10の開口部11から工具を挿入してハウジング10に締結穴51を形成する際の加工性が更に向上する。
【0041】
以上説明した本実施形態の電動圧縮機100は、以下の作用及び効果を奏する。
本実施形態に係る電動圧縮機100によれば、ステータ41が有する複数の位置決め部41bに形成される挿入穴41b1に締結ボルト50が挿入され、ハウジング10に形成される締結穴51に締結される。軸線Xに沿ったステータ41の位置決め部41bの長さL2は、ステータ41の全長である長さL1よりも短い。そのため、ハウジング10と位置決め部41bが接触する接触位置は、ステータ41の軸線Xに沿った端面の位置よりもモータの重心位置に近接した位置となる。
【0042】
これにより、ハウジングまたは他の部材にステータが位置決めされる位置がステータの軸線に沿った端面の位置となる場合に比べ、電動圧縮機が動作することによる振動や電動圧縮機に作用する外力によりモータに作用するモーメントが小さくなる。したがって、振動の発生やステータをハウジングに締結する締結ボルトの緩みや破損を抑制することが可能な電動圧縮機を提供することができる。
【0043】
また、本実施形態の電動圧縮機100によれば、ステータ41の外周面に形成される複数の溝部41cにハウジング10の内周面から突出する複数の突出部15が収容され、ステータ41の位置決め部41bに挿入される締結ボルト50が突出部15の端面に形成される締結穴51に締結される。位置決め部41bがステータ41の外周面から突出しない形状であるため、電動圧縮機100の外径を大きくせずに、振動の発生や締結ボルト50の緩みや破損を抑制することができる。また、ハウジング10の突出部15がステータ41の溝部41cに収容されるため、ハウジング10に対してモータ40が周方向CDに回転することを適切に規制することができる。
【0044】
また、本実施形態の電動圧縮機100によれば、位置決め部41bが、軸線Xに沿った方向において、圧縮機30に近接するステータ41の端部に設けられている。そのため、圧縮機30から離間したステータ41の端部でステータ41をハウジングに位置決めする場合に比べ、ハウジングの開口部11から締結穴51を形成する位置までの軸線Xに沿った距離を短くすることができる。そのため、ハウジング10の開口部11から工具を挿入してハウジング10に締結穴51を形成する際の加工性が向上する。
【0045】
また、本実施形態の電動圧縮機100によれば、位置決め部41bの端面がモータ40の重心位置の近傍でハウジング10に固定される。そのため、電動圧縮機100が動作することによる振動や電動圧縮機100に作用する外力によりモータ40に作用するモーメントを小さくすることができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る電動圧縮機100Cについて、図面を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る電動圧縮機100Cを示す部分縦断面図である。図7は、図6に示す電動圧縮機100CのE-E矢視断面図である。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0047】
第1実施形態の電動圧縮機100,100Bは、ハウジング10の突出部15をステータ41の外周面に形成された溝部41cに収容し、締結穴51を突出部15の端面に形成するものであった。それに対して、本実施形態の電動圧縮機100Cは、ステータ41の外周面から突出した位置決め部41bに対向するハウジング10の段部14に締結穴51を形成するものである。
【0048】
図6に示すように、ステータ41は、ハウジング10の内部に配置されるとともに軸線Xに沿って、底部12側の端部の位置X1から圧縮機30側の端部の位置X2まで長さL1を有する。ステータ41は、軸線Xに沿って長さL1よりも短い長さL2を有する複数の位置決め部41bを有する。
【0049】
図6に示す電動圧縮機100Cにおいて、位置決め部41bは、軸線Xに沿った方向において、圧縮機30に近接するステータ41の端部に設けられている。電動圧縮機100Cにおいて、ハウジング10とステータ41とが接触する接触位置は、重心位置である位置Xgから長さL4だけ離間している。長さL4は、長さL3よりも短い。
【0050】
図6および図7に示すように、本実施形態の電動圧縮機100Cにおいて、位置決め部41bは、ステータ41の外周面から突出している。ハウジング10の内周面には、位置決め部41bの外径よりも大きい第1内径ID1を有する第1領域R1と位置決め部41bの外径よりも小さい第2内径ID2を有する第2領域R2とを接続する段部14が形成されている。締結穴51は、段部14の位置決め部41bと対向する端面に形成されている。
【0051】
本実施形態の電動圧縮機100Cによれば、位置決め部41bがステータ41の外周面から突出しており、ステータ41の位置決め部41bに挿入される締結ボルト50がハウジング10の段部14の端面に形成される締結穴51に締結される。位置決め部41bがステータ41の外周面から突出する形状であるため、ステータ41の磁力を弱めずに、振動の発生やステータ41をハウジング10に締結する締結ボルト50の緩みや破損を抑制することができる。
【0052】
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態に係る電動圧縮機100Dについて、図面を参照して説明する。図8は、本実施形態に係る電動圧縮機100Dを示す部分縦断面図である。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0053】
第1実施形態の電動圧縮機100,100Bおよび第2実施形態の電動圧縮機100Cは、ハウジング10に締結穴51を形成するものであった。それに対して、本実施形態の電動圧縮機100Dは、ハウジング10とは異なる他の部材に締結穴51を形成するものである。
【0054】
図8に示すように、本実施形態の電動圧縮機100Dにおいて、締結穴51は、ハウジング10とは異なる他の部材である保持部80に形成されている。締結穴51は、保持部80の位置決め部41bと対向する端面に形成されている。
【0055】
本実施形態の電動圧縮機100Dによれば、ロータ42に連結される駆動軸43を支持する第1軸受60を保持部80により保持し、保持部80の位置決め部41bと対向する端面に締結穴51が形成されている。ハウジング10に固定される前の保持部80に予め締結穴51を形成することができる。そのため、ハウジング10に工具を挿入して締結穴51を形成する場合に比べ、締結穴51を形成する際の加工性が向上する。
【0056】
〔第4実施形態〕
次に、本開示の第4実施形態に係る電動圧縮機100Eについて、図面を参照して説明する。図9は、本実施形態に係る電動圧縮機100Eを示す部分横断面図である。図10は、図9に示すステータ41のG-G矢視断面図である。図11は、図10に示すステータ41のH-H矢視断面図である。図9は、図10のI-I矢視断面図となっている。
【0057】
本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0058】
図9図11に示すように、本実施形態の電動圧縮機100Eのステータ41の内部には、冷媒を流通させる冷媒流路46が形成されている。冷媒流路46は、軸線Xに沿った一端側(ハウジング10の底部12側)に設けられる流入口46dから軸線Xに沿った他端側(ハウジング10の開口部11側)に設けられる流出口46eへ向けて冷媒を流通させる流路である。
【0059】
図9および図11に示すように、流入口46dは、径方向RDにおいて、ロータ42よりもハウジング10に近接したステータ41の外周面の近傍に設けられている。ハウジング10に流入した冷媒の流量は、径方向RDの内周側よりもハウジング10に近接した外周側の方が多くなる。流入口46dをステータ41の外周面の近傍に設けることにより、流入口46dへ流入する冷媒の流量を増加させることができる。
【0060】
図10および図11に示すように、冷媒流路46は、流入流路部(第1流路部)46aと、流出流路部(第2流路部)46bと、連通流路部46cと、を有する。流入流路部46aは、軸線Xに沿った流入口46d側に形成されるとともに流入口46dから流出口46eへ向けて軸線Xからの径方向RDの距離が漸次短くなる流路である。
【0061】
流出流路部46bは、軸線Xに沿った流出口46e側に形成されるとともに流出口46eから流入口46dへ向けて軸線Xからの径方向RDの距離が漸次短くなる流路である。連通流路部46cは、流入流路部46aと流出流路部46bとを連通させる流路であり、軸線Xに沿った各位置で、軸線Xからの径方向RDの距離が一定となる流路である。連通流路部46cは、流入流路部46aおよび流出流路部46bよりも、ステータ41の内周側(軸線Xに近接した側)で冷媒を流通させる。
【0062】
本実施形態の電動圧縮機100Eによれば、ステータ41の内部に形成される冷媒流路46は、流入口46dから流出口46eへ向けて軸線Xからの径方向RDの距離が漸次短くなる流入流路部46aと、流出口46eから流入口46dへ向けて軸線Xからの径方向RDの距離が漸次短くなる流出流路部46bとを有する。流入口46dから流入した冷媒は流入流路部46aにより径方向RDの外周側から内周側に導かれる。
【0063】
そのため、冷媒を径方向RDの外周側で流通させる場合に比べ、ステータ41の内周側の加熱領域の冷却効率を高めることができる。また、径方向RDの内周側へ導かれた冷媒を流出流路部46bにより径方向RDの内周側から外周側へ導くことができる。したがって、冷媒によりステータ41を十分に冷却してモータ効率を向上させることが可能な電動圧縮機100Eを提供することができる。
【0064】
以上で説明した電動圧縮機100Eが備える冷媒流路46は、軸線Xに沿って直線状に延びる流路であり、軸線X回りの周方向CDの同一の位置を流通するものであったが他の態様であってもよい。例えば、本実施形態の第1変形例の電動圧縮機100Fのように、冷媒流路46は、周方向CDに旋回する旋回流路部46fを有するものであってもよい。
【0065】
図12は、本実施形態の第1変形例に係る電動圧縮機100Fを示す部分横断面図である。図13は、図12に示すステータ41のJ-J矢視断面図である。図14は、図13に示すステータ41のK-K矢視断面図である。図12は、図13のL-L矢視断面図となっている。
【0066】
図12図14に示すように、第1変形例の電動圧縮機100Fのステータ41の内部に形成される冷媒流路46は、軸線Xに沿った一端側(ハウジング10の底部12側)に設けられる流入口46dから軸線Xに沿った他端側(ハウジング10の開口部11側)に設けられる流出口46eへ向けて冷媒を流通させる流路である。
【0067】
図13および図14に示すように、冷媒流路46は、流入流路部(第1流路部)46aと、流出流路部(第2流路部)46bと、旋回流路部(第3流路部)46fと、を有する。流入流路部46aは、流出流路部46bよりも軸線Xに沿った流入口46d側に形成されるとともに流入口46dから流出口46eへ向けて軸線Xからの径方向RDの距離が漸次短くなる流路である。
【0068】
流出流路部46bは、流入流路部46aよりも軸線Xに沿った流出口46e側に形成されるとともに流出口46eから流入口46dへ向けて軸線Xからの径方向RDの距離が漸次短くなる流路である。
【0069】
旋回流路部46fは、流入口46dに連結されるとともに流入口46d側から流出口46e側へ向けて軸線X回りの周方向CDに旋回し、流入流路部46aと連通する流路である。図14に示すように、旋回流路部46fは、軸線Xに沿った各位置において、軸線Xからの径方向RDの距離は一定となっている。
【0070】
本実施形態の電動圧縮機100Fによれば、軸線X回りの周方向CDにおいて流入流路部46aおよび流出流路部46bが配置される位置とは異なる位置に流入口46dを配置する場合であっても、流入口46dから流入する冷媒を流入流路部46aへ導き、流出流路部46bを介して流出口46eへ導くことができる。例えば、ステータ41のティース部41aとティース部41aの間に最も温度が低い冷媒が流入する場合に、最も温度の低い冷媒を流入口46dから取り込んでティース部41aに形成された冷媒流路に導くことができる。
【0071】
以上で説明した第1変形例の電動圧縮機100Fが備える冷媒流路46は、周方向CDの一方向にのみ旋回する旋回流路部46fを有するものであったが他の態様であってもよい。例えば、第2変形例の電動圧縮機100Gが備える冷媒流路46のように、周方向CDの二方向にのみ旋回するように分岐する分岐流路部46gを有するものとしてもよい。
【0072】
図15は、本実施形態の第2変形例に係る電動圧縮機100Gを示す部分横断面図である。図16は、図15に示すステータ41のM-M矢視断面図である。図17は、図14に示すステータ41のN-N矢視断面図である。図15は、図14のO-O矢視断面図となっている。
【0073】
図15図17に示すように、第2変形例の電動圧縮機100Gのステータ41の内部に形成される冷媒流路46は、軸線Xに沿った一端側(ハウジング10の底部12側)に設けられる流入口46dから軸線Xに沿った他端側(ハウジング10の開口部11側)に設けられる流出口46eへ向けて冷媒を流通させる流路である。図16に示す冷媒流路46は、1つの流入口46dから流入する冷媒を2つの流出口46eへ分岐して流出させる。
【0074】
図16および図17に示すように、冷媒流路46は、流入流路部(第1流路部)46aと、流出流路部(第2流路部)46bと、分岐流路部(第3流路部)46gと、を有する。流入流路部46aは、流出流路部46bよりも軸線Xに沿った流入口46d側に形成されるとともに流入口46dから流出口46eへ向けて軸線Xからの径方向RDの距離が漸次短くなる流路である。
【0075】
流出流路部46bは、流入流路部46aよりも軸線Xに沿った流出口46e側に形成されるとともに流出口46eから流入口46dへ向けて軸線Xからの径方向RDの距離が漸次短くなる流路である。
【0076】
分岐流路部46gは、流入口46dに連結されるとともに流入口46d側から流出口46e側へ向けて軸線X回りの周方向CDに旋回し、2つの流入流路部46aと連通する流路である。図17に示すように、分岐流路部46gは、軸線Xに沿った各位置において、軸線Xからの径方向RDの距離は一定となっている。分岐流路部46gは、流入口46dから流入した冷媒を周方向CDの一方側の第1分岐流路46g1と、周方向CDの他方側の第2分岐流路46g2に分岐させる。
【0077】
本実施形態の電動圧縮機100Gによれば、流入口46dを設ける箇所が少ない場合であっても、流入口46dから流入する冷媒を第1分岐流路46g1および第2分岐流路46g2に分岐させ、ステータ41の周方向CDの異なる領域を適切に冷却することができる。
【0078】
以上で説明した本実施形態の電動圧縮機においては、図9に示すように、冷媒流路46の軸線Xに直交する断面形状は、円形であるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、冷媒流路46の軸線Xに直交する断面形状は、円形以外の矩形などの他の形状であってもよい。
【0079】
図18は、第4実施形態の第3変形例に係る電動圧縮機100Hを示す部分横断面図である。図18に示すように、第3変形例に係る電動圧縮機100Hのステータ41に形成される冷媒流路46の軸線Xに直交する断面形状は、径方向の外周側よりも内周側の方が周方向の流路幅が狭い三角形状となっている。
【0080】
冷媒流路46の軸線Xに直交する断面形状は、三角形状以外の他の形状であってもよい。例えば、外周側が矩形であり内周側が半円形となる形状を採用してもよい。その他、径方向の外周側よりも内周側の方が周方向の流路幅が狭い形状とするのが好ましい。冷媒流路46の外周側の流路幅よりも内周側の流路幅が狭くすることで、これらを同じ流路幅にする場合に比べ、ステータ41の鉄心中の磁束密度の低下を抑制することができる。
【0081】
以上説明した本実施形態に記載の電動圧縮機は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る電動圧縮機(100)は、軸線(X)に沿って延びる筒状に形成されるハウジング(10)と、前記ハウジングの内部に配置されるとともに前記軸線回りに回転して流体を圧縮する圧縮機(30)と、前記圧縮機を前記軸線回りに回転駆動するモータ(40)と、前記モータを前記ハウジングの内部に固定する複数の締結ボルト(50)と、を備え、前記モータは、前記ハウジングの内部に配置されるとともに前記軸線に沿って第1長さ(L1)を有するステータ(41)と、前記ステータの内周側に配置されるロータ(42)と、を備え、前記ステータは、前記軸線回りの周方向(CD)に沿って配置されるとともに前記軸線に沿って前記第1長さよりも短い第2長さ(L2)を有する複数の位置決め部(41b)を有し、前記ハウジングまたは前記ハウジングに固定される他の部材(80)には、前記締結ボルトが締結される締結穴(51)が形成されており、前記ステータは、前記位置決め部に形成される挿入穴(41b1)に挿入される前記締結ボルトを前記締結穴に締結することにより前記ハウジングの内部に固定されている。
【0082】
本開示に係る電動圧縮機によれば、ステータは、ステータが有する複数の位置決め部に形成される挿入穴に締結ボルトが挿入され、ハウジングまたはハウジングに固定される他の部材に形成される締結穴に締結される。軸線に沿ったステータの位置決め部の第2長さは、ステータの全長である第1長さよりも短い。そのため、ハウジングまたは他の部材と位置決め部が接触する接触位置は、ステータの軸線に沿った端面の位置よりもモータの重心位置に近接した位置となる。
【0083】
これにより、ハウジングまたは他の部材にステータが位置決めされる位置がステータの軸線に沿った端面の位置となる場合に比べ、電動圧縮機が動作することによる振動や電動圧縮機に作用する外力によりモータに作用するモーメントが小さくなる。したがって、振動の発生やステータをハウジングに締結する締結ボルトの緩みや破損を抑制することが可能な電動圧縮機を提供することができる。
【0084】
本開示に係る電動圧縮機において、前記ステータの外周面には、複数の前記位置決め部が配置される前記周方向(CD)の各位置に前記軸線(X)に沿って延びる複数の溝部(41c)が形成されており、前記ハウジングの内周面には、複数の前記溝部に収容されるとともに前記軸線に沿って延びる複数の突出部(15)が形成されており、前記締結穴は、前記突出部の前記位置決め部と対向する端面に形成されている構成としてもよい。
【0085】
本構成の電動圧縮機によれば、ステータの外周面に形成される複数の溝部にハウジングの内周面から突出する複数の突出部が収容され、ステータの位置決め部に挿入される締結ボルトが突出部の端面に形成される締結穴に締結される。位置決め部がステータの外周面から突出しない形状であるため、電動圧縮機の外径を大きくせずに、振動の発生やステータをハウジングに締結する締結ボルトの緩みや破損を抑制することができる。また、ハウジングの突出部がステータの溝部に収容されるため、ハウジングに対してモータが周方向に回転することを適切に規制することができる。
【0086】
本開示に係る電動圧縮機において、前記位置決め部は、前記ステータの外周面から突出しており、前記ハウジングの内周面には、前記位置決め部の外径よりも大きい第1内径(ID1)を有する第1領域(R1)と前記位置決め部の外径よりも小さい第2内径(ID2)を有する第2領域(R2)とを接続する段部(14)が形成されており、前記締結穴は、前記段部の前記位置決め部と対向する端面に形成されている構成としてもよい。
【0087】
本構成の電動圧縮機によれば、位置決め部がステータの外周面から突出しており、ステータの位置決め部に挿入される締結ボルトがハウジングの段部の端面に形成される締結穴に締結される。位置決め部がステータの外周面から突出する形状であるため、ステータの磁力を弱めずに、振動の発生やステータをハウジングに締結する締結ボルトの緩みや破損を抑制することができる。
【0088】
上記構成に係る電動圧縮機において、前記ハウジングは、前記軸線(X)に沿った前記圧縮機側の端部に封止部材(20)により封止される開口部(11)を有し、前記位置決め部は、前記軸線に沿った方向において、前記圧縮機に近接する前記ステータの端部に設けられている構成としてもよい。
【0089】
本構成の電動圧縮機によれば、位置決め部が、軸線に沿った方向において、圧縮機に近接するステータの端部に設けられている。そのため、圧縮機から離間したステータの端部でステータをハウジングに位置決めする場合に比べ、ハウジングの開口部から締結穴を形成する位置までの軸線に沿った距離を短くすることができる。そのため、ハウジングの開口部から工具を挿入してハウジングに締結穴を形成する際の加工性が向上する。
【0090】
上記構成に係る電動圧縮機において、前記位置決め部の前記ハウジングに固定される端面は、前記軸線に沿った方向における前記モータの重心位置の近傍に配置される構成としてもよい。
本構成の電動圧縮機によれば、位置決め部の端面がモータの重心位置の近傍でハウジングまたは他の部材に固定される。そのため、電動圧縮機が動作することによる振動や電動圧縮機に作用する外力によりモータに作用するモーメントを小さくすることができる。
【0091】
本開示に係る電動圧縮機において、前記モータは、前記ロータに連結されるとともに前記軸線上に配置される駆動軸(43)を有し、前記駆動軸を回転自在に支持する軸受(60,70)と、を備え、前記他の部材は、前記ハウジングに固定されるとともに前記軸受を保持する保持部(80)であり、前記締結穴は、前記保持部の前記位置決め部と対向する端面に形成されている構成としてもよい。
【0092】
本構成の電動圧縮機によれば、ロータに連結される駆動軸を支持する軸受を保持部により保持し、保持部の位置決め部と対向する端面に締結穴が形成されている。ハウジングに固定される前の保持部に予め締結穴を形成することができる。そのため、ハウジングに工具を挿入して締結穴を形成する場合に比べ、締結穴を形成する際の加工性が向上する。
【0093】
本開示に係る電動圧縮機は、軸線に沿って延びる筒状に形成されるハウジングと、前記ハウジングの内部に配置されるとともに前記軸線回りに回転して冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機を前記軸線回りに回転駆動するモータと、を備え、前記モータは、前記ハウジングの内部に配置されるステータと、前記ステータの内周側に配置されるロータと、を備え、前記ステータの内部には、前記軸線に沿った一端側に設けられる流入口(46d)から前記軸線に沿った他端側に設けられる流出口(46e)へ向けて冷媒を流通させる冷媒流路が形成されており、前記冷媒流路は、前記軸線に沿った前記一端側に形成されるとともに前記一端側から前記他端側へ向けて前記軸線からの径方向の距離が漸次短くなる第1流路部(46a)と、前記軸線に沿った前記他端側に形成されるとともに前記第1流路部と連通し、前記他端側から前記一端側へ向けて前記軸線からの径方向の距離が漸次短くなる第2流路部(46b)とを有する。
【0094】
本開示に係る電動圧縮機によれば、ステータの内部に形成される冷媒流路は、一端側から他端側へ向けて軸線からの径方向の距離が漸次短くなる第1流路部と、他端側から一端側へ向けて軸線からの径方向の距離が漸次短くなる第2流路部とを有する。流入口から流入した冷媒は第1流路部により径方向の外周側から内周側に導かれる。そのため、冷媒を径方向の外周側で流通させる場合に比べ、ステータの内周側の加熱領域の冷却効率を高めることができる。また、径方向の内周側へ導かれた冷媒を第2流路部により径方向の内周側から外周側へ導くことができる。したがって、冷媒によりステータを十分に冷却してモータ効率を向上させることが可能な電動圧縮機を提供することができる。
【0095】
本開示に係る電動圧縮機において、前記冷媒流路は、前記流入口に連結されるとともに前記一端側から前記他端側へ向けて前記軸線回りの周方向に旋回し、前記第1流路部と連通する第3流路(46f,46g)を有する構成としてもよい。
本構成の電動圧縮機によれば、軸線回りの周方向において第1流路部および第2流路部が配置される位置とは異なる位置に流入口を配置する場合であっても、流入口から流入する冷媒を第1流路部へ導き、第2流路部を介して流出口へ導くことができる。例えば、ステータのティースとティースの間に最も温度が低い冷媒が流入する場合に、最も温度の低い冷媒を流入口から取り込んでティースに形成された冷媒流路に導くことができる。
【0096】
上記構成に係る電動圧縮機において、前記第3流路は、前記流入口から流入した冷媒を前記周方向の一方側の第1分岐流路(46g1)および他方側の第2分岐流路(46g2)に分岐させる構成であってもよい。
本構成の電動圧縮機によれば、流入口を設ける箇所が少ない場合であっても、流入口から流入する冷媒を第1分岐流路および第2分岐流路に分岐させ、ステータの周方向の異なる領域を適切に冷却することができる。
【0097】
本開示に係る電動圧縮機において、前記流入口は、前記ステータの外周面の近傍に設けられている構成であってもよい。
本構成の電動圧縮機によれば、流入口がステータの外周面の近傍に設けられているため、冷媒の流通量が多いステータの外周面の近傍から流入口へ冷媒を十分に取り込み、ステータの内周側の領域を確実に冷却することができる。
【0098】
本開示に係る電動圧縮機において、前記冷媒流路の前記軸線に直交する断面形状は、前記径方向の外周側よりも内周側の方が前記周方向の流路幅が狭い形状となっている構成であってもよい。
本構成の電動圧縮機によれば、冷媒流路の外周側の流路幅よりも内周側の流路幅が狭いため、これらを同じ流路幅にする場合に比べ、ステータの磁束密度の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0099】
10 ハウジング
11 開口部
12 底部
13,14 段部
15 突出部
20 エンドハウジング
21 締結ボルト
30 圧縮機
40 モータ
41 ステータ
41a ティース部
41b 位置決め部
41b1 挿入穴
41c 溝部
42 ロータ
43 駆動軸
44,45 ボビン
46 冷媒流路
46a 流入流路部
46b 流出流路部
46c 連通流路部
46d 流入口
46e 流出口
46f 旋回流路部
46g 分岐流路部
46g1 第1分岐流路
46g2 第2分岐流路
50 締結ボルト
51 締結穴
60 第1軸受
70 第2軸受
80 保持部
90 インバータ
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H 電動圧縮機
CD 周方向
ID1 第1内径
ID2 第2内径
P1 吸入ポート
P2 吐出ポート
R1 第1領域
R2 第2領域
RD 径方向
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図18