(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
H01L 31/072 20120101AFI20240610BHJP
【FI】
H01L31/06 400
(21)【出願番号】P 2020171579
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 和重
(72)【発明者】
【氏名】中川 直之
(72)【発明者】
【氏名】水野 幸民
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】保西 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】山崎 六月
(72)【発明者】
【氏名】西田 靖孝
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146120(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109309136(CN,A)
【文献】特開2017-098479(JP,A)
【文献】特開2007-013098(JP,A)
【文献】特開2017-034186(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0190824(US,A1)
【文献】特開2006-332373(JP,A)
【文献】特開2014-053572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/06-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p電極と、
n電極と、
前記p電極と前記n電極の間に位置する亜酸化銅を主体とするp型光吸収層と、
前記p型光吸収層と前記n電極の間に位置し、Ga
v1Zn
v2Sn
v3M1
v4O
v5で表される化合物を主体とし、前記M1はHf、Zr、In、Ti、Al、B、Mg、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上であり、前記v1、v2及びv4は0.00以上の数値であり、前記v3及びv5は0より大きい数値であり、前記v1とv2の少なくともどちらか一方は0より大きい数値であり、前記v1、v2、v3及びv4の和を1とする場合の前記v5は1.00以上2.00以下である前記n電極側に位置する第1n型層と、
Ga
w1M2
w2M3
w3M4
w4O
w5で表される化合物を主体とする層であって、前記M2はAl又は/及びBであり、前記M3はIn、Ti、Zn、Hf及びZrからなる群より選ばれる1種以上であり、前記M4はSn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上であり、前記w1及びw5は0より大きい数値であり、前記w2、w3及びw4は0.00以上の数値であり、前記w1、w2、w3及び
w4の和を2とする場合の前記w5は3.00以上3.80以下である前記p型光吸収層側に位置する第2n型層を有するn型層と、を有
し、
前記第1n型層の伝導帯下端から前記n電極の仕事関数を引いた値は、0.1eV以上0.3eV以下であり、
v1/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以下である太陽電池。
【請求項2】
(v1+v2)/(v1+v2+v3+v4)は、0.30以上0.90以下であり、
v3/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以上0.70以下であり、
v4/(v1+v2+v3+v4)は0.00以上0.05以下であり、
(w1+w2)/(w1+w2+w3+w4)は、0.80以上1.00以下であり、
w2/(w1+w2)は、0.00以上0.40以下であり、
w3/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.80以下であり、
w4/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.15以下である請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
(v1+v2)/(v1+v2+v3+v4)は、0.40以上0.90以下であり、
v3/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以上0.60以下であり、
v4/(v1+v2+v3+v4)は0.00以上0.05以下であり、
(w1+w2)/(w1+w2+w3+w4)は、0.90以上1.00以下であり、
w2/(w1+w2)は、0.00以上0.20以下であり、
w3/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.10以下であり、
w4/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.10以下である請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1n型層は、前記n電極と直接的に接している請求項1ないし3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
v2/(v1+v2+v3+v4)は、0.70以上0.90以下であり、
v3/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以上0.30以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項6】
v2/(v1+v2+v3+v4)は、0.75以上0.85以下であり、
v3/(v1+v2+v3+v4)は、0.15以上0.25以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項7】
v2/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以下であり、
v1/(v1+v2+v3+v4)は、0.30以上0.80以下であり、
v3/(v1+v2+v3+v4)は、0.20以上0.70以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項8】
v2/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以下であり
、
v3/(v1+v2+v3+v4)は、0.30以上0.60以下である請求項1ないし4及び7のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記n型層は、第3n型層をさらに有し、
前記第3n型層は、p型光吸収層と第2n型層の間に位置し、
前記第3n型層は、Ga
x1M2
x2M3
x3M4
x4O
x5で表される化合物を主体とし、
前記x1及びx5は0より大きい数値であり、
前記x2、x3及びx4は0.00以上の数値であり、
前記x2とx3の少なくともいずれか一方は0より大きい数値であり、
前記x1、x2、x3及びx4の和を2とする場合の前記x5は3.00以上3.80以下である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項10】
(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4)は、0.60以上1.00以下であり、
前記x1は、前記w1より小さく、
前記x2は、前記w2より大きく、
x2/(x1+x2)は、0.10以上0.30以下であり、
前記w2は前記x2の10%以上90%以下であり、
(w1+w2)/(w1+w2+w3+w4)は0.90以上1.00以下であり
w2/(w1+w2)は0.00以上0.20以下であり、
x3/(x1+x2+x3
+x4)は0.00以上0.50以下であり、
前記w3は前記x3の0%以上90%以下であり、
x4/(x1+x2+x3+x4)は0.01以上0.15以下であり、
前記x4は前記w4の0%以上90%以下である請求項9に記載の太陽電池。
【請求項11】
(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4)は、0.80以上1.00以下であり、
x2/(x1+x2)は、0.10以上0.30以下であり、
前記w2は前記x2の15%以上80%以下であり、
w2/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.20以下であり、
x3/(x1+x2+x3
+x4)は、0.00以上0.10以下であり、
前記w3はx3の0%以上80%以下であり、
x4/(x1+x2+x3+x4)は、0.05以上0.15以下であり、
前記x4は、w4の0%以上50%以下である請求項9又は10に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記n型
層は、第4n型層をさらに有し、
前記第4n型層は、前記第3n型層と前記p型光吸収層の間に位置し、
前記第4n型層は、Ga
y1M2
y2M3
y3M4
y4O
y5で表される化合物を主体とし、
前記y1及びy5は0より大きい数値であり、
前記y2、y3及びy4は0.00以上の数値であり、
前記y2とy3の少なくともいずれか一方は0より大きい数値であり、
前記y1、y2、y3及びy4の和を2とする場合のy5は3.0以上3.8以下であり、
前記y1は、前記x1より小さく、
前記y2は、前記x2より大きい請求項9ないし11のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項13】
(y1+y2)/(y1+y2+y3+y4)は、0.90以上1.00以下であり、
y2/(y1+y2)は、0.20以上0.40以下であり、
前記x2は前記y2の10%以上90%以下であり、
前記w2は前記y2の0%以上50%以下であり、
x3/(x1+x2+x3+x4)は、0.00以上0.50以下であり、
前記x3は前記y3の0%以上90%以下であり、
前記w3は前記y3の0%以上50%以下であり、
y4/(y1+y2+y3+y4)は、0.00以上0.05以下であり、
前記y4は前記x4の0%以上90%以下であり、
前記y4は前記w4の0%以上30%以下である請求項12に記載の太陽電池。
【請求項14】
y2/(y1+y2)は、0.20以上0.40以下であり、
前記x2は、前記y2の15%以上80%以下であり、
前記w2は、前記y2の0%以上30%以下であり、
x3/(x1+x2+x3+x4)は、0.00以上0.05以下であり、
前記x3は前記y3の0%以上80%以下であり、
前記w3は前記y3の0%以上30%以下であり、
y4/(y1+y2+y3+y4)は、0.00以上0.03以下であり、
前記y4は、前記x4の0%以上50%以下であり、
前記y4は、w4の0%以上10%以下である請求項12又は13に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記n型層は、第5n型層をさらに有し、
前記第1n型層と前記第2n型層の間に位置し、
前記第5n型層は、Ga
z1Zn
z2Sn
z3M1
z4O
z5で表される化合物を主体とし、
前記z1、z2及びz4は0.00以上の数値であり、
前記z3及びz5は0より大きい数値であり、
前記z1とz2の少なくともどちらか一方は0より大きい数値であり、
前記z1、z2、z3及びz4の和を1とする場合の前記z5は1.00以上2.00以下である請求項12ないし14のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記z3は、前記v3の50%以上80%以下又は120%以上150%以下である請求項15に記載の太陽電池。
【請求項17】
p電極と、
n電極と、
前記p電極と前記n電極の間に位置する亜酸化銅を主体とするp型光吸収層と、
前記p型光吸収層と前記n電極の間に位置し、前記n電極側に位置し、第1領域及び第5領域を有する第1n型層と、前記p型光吸収層側に位置し、第2領域、第3領域及び第4領域を有する第2n型層を有するn型層と、を有し、
前記第1領域は、Ga
v1Zn
v2Sn
v3M1
v4O
v5で表される化合物を主体とし、前記M1はHf、Zr、In、Ti、Al、B、Mg、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上であり、前記v1、v2及びv4及は、0.00以上の数値であり、前記v3及びv5は0より大きい数値であり、前記v1とv2の少なくともどちらか一方は0より大きい数値であり、前記v1、v2、v3及びv4の和を1とする場合の前記v5は1.00以上2.00以下であり、
前記第2領域は、Ga
w1M2
w2M3
w3M4
w4O
w5で表される化合物を主体とする層であって、前記M2はAl又は/及びBであり、前記M3はIn、Ti、Zn、Hf及びZrからなる群より選ばれる1種以上であり、前記M4はSn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上であり、前記w1及びw5は、0より大きい数値であり、前記w2、w3及びw4は、0.00以上の数値であり、前記w2とw3の少なくともどちらか一方は0より大きい数値であり、前記w1、w2、w3及び
w4の和を2とする場合の前記w5は3.00以上3.80以下であり、
前記第3領域は、Ga
x1M2
x2M3
x3M4
x4O
x5で表される化合物を主体とし、前記x1及びx5は、0より大きい数値であり、前記x2、x3及びx4は、0.00以上の数値であり、前記x2とx3の少なくともいずれか一方は0より大きい数値であり、前記x1、x2、x3及びx4の和を2とする場合の前記x5は、3.00以上3.80以下であり、
前記第4領域は、Ga
y1M2
y2M3
y3M4
y4O
y5で表される化合物を主体とし、前記y1及びy5は、0より大きい数値であり、前記y2、y3及びy4は、0.00以上の数値であり、前記y2とy3の少なくともいずれか一方は0より大きい数値であり、前記y1、y2、y3及びy4の和を2とする場合のy5は3.0以上3.8以下であり、前記y1は、前記x1より小さく、前記y2は、前記x2より大きく、
前記第
5領域は、Ga
z1Zn
z2Sn
z3M1
z4O
z5で表される化合物を主体とし、前記z1、z2及びz4は、0.00以上の数値であり、前記z3及びz5は0より大きい数値であり、前記z1とz2の少なくともどちらか一方は0より大きい数値であり、前記z1、z2、z3及びz4の和を1とする場合の前記z5は1.00以上2.00以下であ
り、
前記第1n型層の伝導帯下端から前記n電極の仕事関数を引いた値は、0.1eV以上0.3eV以下であり、
v1/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以下である太陽電池。
【請求項18】
(v1+v2)/(v1+v2+v3+v4)は、0.30以上0.90以下であり、
v3/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以上0.70以下であり、
v4/(v1+v2+v3+v4)は0.00以上0.05以下であり、
(w1+w2)/(w1+w2+w3+w4)は、0.80以上1.00以下であり、
w2/(w1+w2)は、0.00以上0.40以下であり、
w3/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.80以下であり、
w4/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.15以下で
(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4)は、0.60以上1.00以下であり、
前記x1は、前記w1より小さく、
前記x2は、前記w2より大きく、
x2/(x1+x2)は、0.10以上0.30以下であり、
前記w2は前記x2の10%以上90%以下であり、
x3/(x1+x2+x3+x4)は0.00以上0.50以下であり、
前記w3は前記x3の0%以上90%以下であり、
x4/(x1+x2+x3+x4)は0.01以上0.15以下であり、
前記x4は前記w4の0%以上90%以下で
(y1+y2)/(y1+y2+y3+y4)は、0.90以上1.00以下であり、
y2/(y1+y2)は、0.20以上0.40以下であり、
前記x2は前記y2の10%以上90%以下であり、
前記w2は前記y2の0%以上50%以下であり、
前記x3は前記y3の0%以上90%以下であり、
前記w3は前記y3の0%以上50%以下であり、
y4/(y1+y2+y3+y4)は、0.00以上0.05以下であり、
前記y4は前記x4の0%以上90%以下であり、
前記y4は前記w4の0%以上30%以下である請求項17に記載の太陽電池。
【請求項19】
請求項1ないし
18のいずれか1項に記載の太陽電池と、
請求項1ないし
18のいずれか1項に記載の太陽電池のp型光吸収層よりもバンドギャップの小さい光吸収層を有する太陽電池とを有する多接合型太陽電池。
【請求項20】
請求項1ないし
18のいずれか1項に記載の太陽電池を用いた太陽電池モジュール。
【請求項21】
請求項
20に記載の太陽電池モジュールを用いて太陽光発電を行う太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新しい太陽電池の1つに、亜酸化銅(Cu2O)を光吸収層に用いた太陽電池がある。Cu2Oはワイドギャップ半導体である。Cu2Oは地球上に豊富に存在する銅と酸素からなる安全かつ安価な材料であるため、高効率かつ低コストな太陽電池が実現できると期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、変換効率に優れた太陽電池、多接合型太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽光発電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の太陽電池は、p電極と、n電極と、p電極とn電極の間に位置する亜酸化銅を主体とするp型光吸収層と、p型光吸収層とn電極の間に位置し、Gav1Znv2Snv3M1v4Ov5で表される化合物を主体とし、M1はHf、Zr、In、Ti、Al、B、Mg、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上であり、v1、v2及びv4は0.00以上の数値であり、v3及びv5は0より大きい数値であり、v1とv2の少なくともどちらか一方は0より大きい数値であり、v1、v2、v3及びv4の和を1とする場合のv5は1.00以上2.00以下であるn電極側に位置する第1n型層と、Gaw1M2w2M3w3M4w4Ow5で表される化合物を主体とする層であって、M2はAl又は/及びBであり、M3はIn、Ti、Zn、Hf及びZrからなる群より選ばれる1種以上であり、M4はSn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上であり、w1及びw5は0より大きい数値であり、w2、w3及びw4は0.00以上の数値であり、w1、w2、w3及びw4の和を2とする場合のw5は3.00以上3.80以下であるp型光吸収層側に位置する第2n型層を有するn型層と、を有する。第1n型層の伝導帯下端からn電極の仕事関数を引いた値は、0.1eV以上0.3eV以下である。v1/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図2は、実施形態の太陽電池の分析スポットを説明する図。
【
図9】
図9は、実施形態の多接合型太陽電池の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、特に記載が無い限り、25℃、1気圧(大気)における値を示している。
(第1実施形態)
第1実施形態は、太陽電池に関する。
図1に、第1実施形態の太陽電池100の断面図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池100は、基板1、第1電極であるp電極2と、p型光吸収層3と、n型層4と、第2電極であるn電極5を有する。第1実施形態において、n型層4は、第1n型層4Aと第2n型層4Bを含む。n型層4のn電極5との間等には、図示しない中間層が含まれていてもよい。太陽光はn電極5側、p電極2側いずれから入射しても良いが、n電極5側から入射するのがより好ましい。実施形態の太陽電池100は、透過型の太陽電池であるため、多接合型太陽電池のトップセル(光入射側)に用いることが好ましい。
図1では基板1をp電極2のp型光吸収層3側とは反対側に設けているが、基板1をn電極5のn型層4側とは反対側に設けてもよい。以下は、
図1に示す形態について説明するが、基板1の位置が異なること以外はn電極5側に基板1が設けられた形態も同様である。実施形態の太陽電池100は、n電極5側からp電極2側に向かって光が入射する。
【0008】
基板1は、透明な基板である。基板1には、光を透過するアクリル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリプロピレン(PP)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)など)、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォンやポリエーテルイミドなどの有機系の基板やソーダライムガラス、白板ガラス、化学強化ガラスや石英などの無機系の基板を用いることができる。基板1は、上記に挙げた基板を積層してもよい。
【0009】
p電極2は、基板1上に設けられており、基板1とp型光吸収層3との間に配置されている。p電極2は、p型光吸収層3側に設けられた光透過性を有する導電層である。p電極2の厚さは、典型的には、100nm以上2,000nm以下である。
図1では、p電極2は、光吸収層3と直接接している。p電極2は、1層以上の酸化物透明導電膜を含むことが好ましい。酸化物透明導電膜としては、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide;ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al-doped Zinc Oxide;AZO)、ボロンドープ酸化亜鉛(Boron-doped Zinc Oxide;BZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Gallium-doped Zinc Oxide;GZO)、ドープされた酸化スズ、チタンドープ酸化インジウム(Titanium-doped Indium Oxide;ITiO)、酸化インジウム酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide;IZO)や酸化インジウムガリウム亜鉛(Indium Gallium Zinc Oxide;IGZO)、水素ドープ酸化インジウム(Hydrogen-doped Indium Oxide;IOH)など特に限定されない。酸化物透明導電膜は、複数の膜を持つ積層膜であってもよい。酸化スズなどの膜へのドーパントとしては、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上であれば特に限定されない。p電極2は、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上の元素がドープされた酸化スズ膜が含まれることが好ましい。ドープされた酸化スズ膜において、In、Si、Ge、Ti、Cu、Sb、Nb、Ta、W、Mo、F及びClなどからなる群から選ばれる1種以上の元素は、酸化スズ膜に含まれるスズに対して10原子%以下含まれることが好ましい。p電極2として、酸化物透明導電膜と金属膜を積層した積層膜を用いることができる。金属膜は、厚さが10nm以下であることが好ましく、金属膜に含まれる金属(合金を含む)は、Mo、Au、Cu、Ag、Al、TaやWなど特に限定されない。またp電極2は、酸化物透明導電膜と基板1の間、又は、酸化物透明導電膜とp型光吸収層3の間にドット状、ライン状もしくはメッシュ状の電極(金属、合金、グラフェン、導電性窒化物及び導電性酸化物からなる群より選ばれる1種以上)を含むことが好ましい。ドット状、ライン状もしくはメッシュ状の金属は、透明導電膜に対して開口率が50%以上であることが好ましい。ドット状、ライン状もしくはメッシュ状の金属は、Mo、Au、Cu、Ag、Al、TaやWなど特に限定されない。第1電極1に金属膜を用いる場合、透過性の観点から5nm以下程度の膜厚とすることが好ましい。ライン状やメッシュ状の金属膜を用いる場合、透過性は開口部で確保されるため、金属膜の膜厚に関してはこの限りではない。
【0010】
p型光吸収層3は、p型の半導体層である。p型光吸収層3は、p電極2と直接的に接していても良いし、p電極2とのコンタクトを確保できる限り、他の層が存在していても良い。p型光吸収層3は、電極2と第1n型層4Aとの間に配置される。p型光吸収層3は第1n型層4Aとpn接合を形成する。p型光吸収層3としては、Cuを主成分とする金属の酸化物の半導体層である。Cuを主成分とする金属の酸化物は、亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物である。p型光吸収層3の90wt%以上は亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物であることが好ましい。p型光吸収層3の95wt%以上は亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物であることがより好ましい。p型光吸収層3の98wt%以上は亜酸化銅又は/及び亜酸化銅の複合酸化物であることがさらにより好ましい。p型光吸収層3は、異相であるCu又は/及びCuOをほとんど含まないことが好ましい。p型光吸収層3に含まれる異相が少なく結晶性が良いとp型光吸収層3の透光性が高くなるため好ましい。Cuを主成分とする金属の酸化物は、Cuが60.0atom%以上67.0atom%以下であり、O(酸素)が32.5atom%以上34.0atom%以下である。亜酸化銅の複合酸化物には、Cu以外の金属が含まれる。亜酸化銅の複合酸化物に含まれる金属は、Cuに加えて、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、Ga、In、Zn、Mg及びCaからなる群より選ばれる1種以上の金属である。Cu以外にAg、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、Ga、In、Zn、Mg及びCaからなる群より選ばれる1種以上の金属が含まれると、p型光吸収層3のバンドギャップを調整することができる。p型光吸収層3のバンドギャップは、2.0eV以上2.2eV以下であることが好ましい。かかる範囲のバンドギャップであると、Siを光吸収層に用いた太陽電池をボトムセルに用い、実施形態の太陽電池をトップセルに用いた多接合型太陽電池において、トップセル及びボトムセルの両方で太陽光を効率よく利用できる。p型光吸収層3には、SnやSbをさらに含んでもよい。p型光吸収層3のSnやSbは、光吸収層3に添加されたものでもよいし、p電極2に由来するものでもよい。p型光吸収層3は、CuaMbOcで表される酸化物の層である。Mは、Sn、Sb、Ag、Li、Na、K、Cs、Rb、Al、Ga、In、Zn、Mg及びCaからなる群より選ばれる1種以上の金属である。a、b及びcは、1.80≦a≦2.01、0.00≦b≦0.20及び0.98≦c≦1.02を満たすことが好ましい。上記p型光吸収層3の組成比は、p型光吸収層3の全体の組成比である。また、上記のp型光吸収層3の化合物組成比は、p型光吸収層3において全体的に満たすことが好ましい。なお、Sn及びSbのp型光吸収層3中の濃度が高いと、欠陥が増加して、キャリア再結合が増えてしまう。そこで、p型光吸収層3中のSb及びSnの合計体積濃度は、1.5x1019atoms/cm3以下が好ましい。p型光吸収層3と第1n型層4Aの組成は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)で求められる。分析位置は、p電極2と同じで求められた値の平均値を各層組成とすることができる。
【0011】
p型光吸収層3の厚さは、電子顕微鏡による断面観察や、段差計によって求められ、1,000nm以上10,000nm以下が好ましい。
【0012】
p型光吸収層3は、例えばスパッタなどによって成膜されることが好ましい。
【0013】
n型層4は、第1n型層4A及び第2n型層4Bを含む。第1n型層4Aは、n電極5側に位置する。第2n型層4Bは、p型光吸収層3側に位置する。
【0014】
第1n型層4Aは、Gav1Znv2Snv3M1v4Ov5で表される化合物を主体(50wt%以上)とする層であって、M1はHf、Zr、In、Ti、Al、B、Mg、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。v1、v2及びv4及は、0.00以上の数値である。v3及びv5は0より大きい数値である。v1とv2の少なくともどちらか一方は0より大きい数値である。v1、v2、v3及びv4の和を1とする場合、v5は1.00以上2.00以下であることが好ましい。Ga又は/及びZnをベースとする酸化物に他の酸化物が混合した形態、Ga又は/及びZnをベースとする酸化物に他の元素がドープしている形態及び他の元素がドープしたGa又は/及びZnをベースの酸化物と他の酸化物が混合した形態のいずれもGav1Znv2Snv3M1v4Ov5で表している。
【0015】
第1n型層4Aの90wt%以上は、Gav1Znv2Snv3M1v4Ov5表される化合物であることが好ましい。第1n型層4Aの95wt%以上は、Gav1Znv2Snv3M1v4Ov5で表される化合物であることがより好ましい。第1n型層4Aの98wt%以上は、Gav1Znv2Snv3M1v4Ov5で表される化合物であることがさらにより好ましい。第1n型層4Aは、Gav1Znv2Snv3M1v4Ov5で表される化合物で構成(100wt% Gav1Znv2Snv3M1v4Ov5で)されていることがより好ましい。
【0016】
なお、第1n型層4Aの化合物の組成は、特に条件を付けなければ第1n型層4A全体の平均組成である。第1n型層4Aの組成は、第1n型層4Aの厚さをdとする場合、n電極5側の第1n型層4Aの表面から0.2d、0.5d、0.8dの深さにおける組成の平均値である。第1n型層4Aの化合物の元素組成比が傾斜しているといった条件がある場合を除き各深さにおいて、第1n型層4Aは、上記及び下記の好適な組成を満たすことが好ましい。なお、第1n型層4Aが非常に薄い場合(例えば5nm以下)は、n電極5側の第1n型層4Aの表面から0.5dの深さにおける組成を第1n型層4Aの全体の組成とみなすことができる。なお、分析はn型層4の表面からの各距離において
図2の分析スポットに示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポットを例えば二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry;SIMS)で分析することで求められる。
図2は太陽電池100を光の入射側から見た模式図である。D1は第1n型層4Aの幅方向の長さであり、D2は第1n型層4Aの奥行き方向の長さである。
【0017】
第1n型層4Aは、主にGa、ZnとSnによって第2n型層4Bとの伝導帯下端の差が少なくなるように調整されている。p型光吸収層3が良質でp型光吸収層3とこれと接するn型層との伝導帯下端の接続の連続性も重要である。そして、n電極5側に位置し、好ましくは、n電極5と直接的に接している第1n型層4Aとn電極5との接続が変換効率の向上に大きく寄与する。例えば、Ga2O3がn電極5と直接的に接続すると、n電極5の仕事関数とGa2O3の伝導帯下端の差が大きいため、p型光吸収層3とn型層4の伝導帯下端の接続の連続性が良好であっても、変換効率の向上が難しい。ZnOやGa2O3をベースの酸化物とし、比較的多くのSnを含むことで、第1n型層4Aの伝導帯下端とn電極5の仕事関数の差を小さくなる。そして、第1n型層4Aからn電極5の間の電子移動の障壁が小さくなり変換効率の向上に寄与する。
【0018】
第1n型層4Aの伝導帯下端とn電極5の仕事関数の差が小さくなる第1n型層4Aが好ましい。第1n型層4Aの伝導帯下端とn電極5との仕事関数の差を小さくするために、Ga、Zn及びSnが第1n型層4Aの化合物に含まれる。第1n型層4Aの伝導帯下端とn電極5の仕事関数の差([第1n型層4Aの伝導帯下端]-[n電極5の仕事関数])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下であることがより好ましい。
【0019】
第1n型層4Aにおいて、(v1+v2)/(v1+v2+v3+v4)は、0.30以上0.90以下が好ましい。同観点から、第1n型層4Aにおいて、(v1+v2)/(v1+v2+v3+v4)は、0.40以上0.90以下が好ましい。
【0020】
第1n型層4Aは、n型層において最もn電極5側に位置し、好ましくは第1n型層4Aはn電極5と直接的に接している。n型層5中の第2n型層4BなどにZnやSnが含まれる場合、それらの組成比率は、第1n型層4A中のZnとSnのそれぞれの濃度よりも低いことが好ましい。
【0021】
また、第1n型層4Aには、Snが含まれていることが好ましい。Snが第1n型層4Aに含まれていると伝導帯下端の接続の連続性が向上しキャリア濃度が増えることが好ましい。そこで、v3/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以上0.70以下が好ましく、0.15以上0.60以下がより好ましい。
【0022】
第1n型層4AがZnを含む場合、v1/(v1+v2+v3+v4)は、0.00以上0.10以下であり、v2/(v1+v2+v3+v4)は、0.70以上0.90以下が好ましく、0.75以上0.85以下がより好ましい。また、上記範囲を満たす場合、v3/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以上0.30以下が好ましく、0.15以上0.25以下がより好ましい。
【0023】
第1n型層4AがGaを含む場合、v2/(v1+v2+v3+v4)は、0.10以下であり、v1/(v1+v2+v3+v4)は、0.30以上0.80以下が好ましく、0.40以上0.70以下がより好ましい。また、上記範囲を満たす場合、v3/(v1+v2+v3+v4)は、0.20以上0.70以下が好ましく、0.20以上0.60以下がより好ましい。
【0024】
M1の元素は第1n型層4Aに含まれていてもよいし含まれていなくてもよい。M1の元素が含まれる場合は、その組成比率は低いことが好ましい。そこで、v4/(v1+v2+v3+v4)は0.00以上0.05以下であることが好ましい。M1の元素は、第2n型層4B又はn電極5に含まれる元素と共通していることが好ましい。
【0025】
第1n型層4Aにおいて、Ga、Zn、Sn及びM1の元素は、p型光吸収層3側からn電極5に向かって傾斜的、階段状、又は、傾斜的な変化と階段状が組み合わさったように変化してもよい。例えば、Snはn電極5側に多く、Ga及びZnは第2n型層4B側に多くすることが好ましい。
【0026】
第1n型層4Aは、例えばスパッタやALD(Atomic Layer Deposition)などによって成膜されることが好ましい。
第2n型層4Bは、n型の半導体層である。第2n型層4Bは、第1n型層4Aとp型光吸収層3との間に配置される。第2n型層4Bは、p型光吸収層3のp電極2と接した面とは反対側の面と直接接していることが好ましい。第2n型層4BはGaを含む酸化物半導体層であって、Gaをベースとする化合物を含むことが好ましい。第2n型層4BはGaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合していてもよいし、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしていてもよいし、他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合していてもよい。
【0027】
第2n型層4Bは、Gaw1M2w2M3w3M4w4Ow5で表される化合物を主体(50wt%以上)とする層であって、M2はAl又は/及びBであり、M3はIn、Ti、Zn、Hf及びZrからなる群より選ばれる1種以上であり、M4はSn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。w1及びw5は、0より大きい数値である。w2、w3及びw4は、0.00以上の数値である。w1、w2、w3及びx4の和を2とする場合、w5は3.00以上3.80以下であることが好ましい。Gaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合した形態、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしている形態及び他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合した形態のいずれもGaw1M2w2M3w3M4w4Ow5で表している。
【0028】
第2n型層4Bの90wt%以上は、Gaw1M2w2M3w3M4w4Ow5で表される化合物であることが好ましい。第2n型層4Bの95wt%以上は、Gaw1M2w2M3w3M4w4Ow5で表される化合物であることがより好ましい。第2n型層4Bの98wt%以上は、Gaw1M2w2M3w3M4w4Ow5で表される化合物であることがさらにより好ましい。第2n型層4Bは、Gaw1M2w2M3w3M4w4Ow5で表される化合物で構成(100wt% Gaw1M2w2M3w3M4w4Ow5)されていることがより好ましい。
【0029】
なお、第2n型層4Bの化合物の組成は、特に条件を付けなければ第2n型層4A全体の平均組成である。第2n型層4Bの組成は、第1n型層4Aの厚さをdとする場合、p型光吸収層3側の第2n型層4Bの表面から0.2d、0.5d、0.8dの深さにおける組成の平均値である。第2n型層4Bの化合物の元素組成比が傾斜しているといった条件がある場合を除き各深さにおいて、第2n型層4Bは、上記及び下記の好適な組成を満たすことが好ましい。なお、第2n型層4Bが非常に薄い場合(例えば5nm以下)は、p型光吸収層3側の第2n型層4Bの表面から0.5dの深さにおける組成を第2n型層4Bの全体の組成とみなすことができる。なお、分析はn型層4の表面からの各距離において
図2の分析スポットに示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポットを例えば二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry;SIMS)で分析することで求められる。
図2は太陽電池100を光の入射側から見た模式図である。D1は第2n型層4Bの幅方向の長さであり、D2は第2n型層4Bの奥行き方向の長さである。
【0030】
p型光吸収層3の伝導帯下端(Conduction Band Minimum:CBM)と第2n型層4Bの伝導帯下端の差が小さくなる第2n型層4Bが好ましい。p型光吸収層3と第2n型層4Bとの伝導帯下端の差を小さくするために、M2の元素が第2n型層4Bの化合物に含まれる。p型光吸収層3の伝導帯下端と第2n型層4Bのp型光吸収層3側の伝導帯下端の差([p型光吸収層3の伝導帯下端]-[第2n型層4Bの伝導帯下端])は、0.6eV以上1.0eV以下であることが好ましく、0.6eV以上0.8eV以下がより好ましい。
【0031】
第2n型層4Bの伝導帯下端と第1n型層4Aの伝導帯下端との差が小さくなる第2n型層4Aが好ましい。第1n型層4Aと第2n型層4Bとの伝導帯下端の差を小さくするために、M2の元素が第2n型層4Bの化合物に含まれる。第2n型層4Bの第1n型層4A側の伝導帯下端と第1n型層4Aの第2n型層4B側の伝導帯下端との差([第2n型層4Bの伝導帯下端]-[第1n型層4Aの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下であることがより好ましい。第1n型層4Aの伝導帯下端を調整する観点から、w2とw3の少なくともどちらか一方は0より大きい数値であることが好ましい。
【0032】
実施形態の第2n型層4Bは、主にGaとM2の元素によって伝導帯下端が調整されている。M2の元素比率を高めることで第2n型層4Bの伝導帯下端が上がり、p型光吸収層3の伝導帯下端の差を少なくすることができる。同観点から、第2n型層4Bにおいて、(w1+w2)/(w1+w2+w3+w4)は、0.80以上1.00以下が好ましく、0.90以上1.00以下がより好ましい。M2の元素としては、Al又はAl及びBが好ましく、Alがより好ましい。GaとM2の元素をベースとする酸化物を第1n型層4Aに用いることで変換効率が向上することから、w2は、w3より大きく、w2は、w4より大きいことが好ましい。同観点からw2は、w3の2倍より大きく、w4の2倍より大きいことが好ましい。
【0033】
w2/(w1+w2)は、0.00以上0.50以下が好ましい。w2/(w1+w2)が0.50より大きい場合は、pn接合界面の伝導帯が不連続となるスパイクが生じてFFが低くなるため、変換効率の高い太陽電池を得ることは難しい。上記観点から、w2/(w1+w2)は、0.00以上0.40以下がより好ましく、0.00以上0.20以下がより好ましい。
【0034】
実施形態の第2n型層4Bは、GaとM3(又はM2及びM3)の元素によって伝導帯下端を調整することができる。第2n型層4Bの化合物にはM3で表されるIn、Ti、Zn、Hg及びZrからなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。w3/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.80以下が好ましい。また、M3の元素は、第2n型層4Bの伝導帯下端を調整することができる。M3の元素が多すぎると第1n型層4A又はp型光吸収層3の伝導帯下端と第2n型層4Bの伝導帯下端の差が大きくなる場合がある。そこで、w3/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.10以下がより好ましく、0.00以上0.05以下がより好ましい。
【0035】
第2n型層4Bの化合物にはM4で表されるSn、Si及びGeからなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。M4の元素が第2n型層4Bに含まれると、第2n型層4Bのキャリア濃度を高くすることができる。w4/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.15以下であることが好ましく、0.00以上0.10以下であることがより好ましい。
【0036】
Ga、M2の元素、M3の元素及びM4の元素からなる群より選ばれる1以上は、第2n型層4B中で第2n型層4Bの膜厚方向に組成比率が変化していてもよい。M4の元素は、p型光吸収層3側で少なく、第1n型層4A側で多いことが好ましい。M2の元素は、p型光吸収層3側で多く、第1n型層4A側で少ないことが好ましい。組成の変化は、傾斜的、階段状又は傾斜的な変化と階段状の変化が組み合わさっていることが好ましい。また、組成の変化は太陽電池100の各層の積層方向に全体的又は部分的である。これらの元素の組成分布を変えることで、p型光吸収層3側からn電極5側に向かって、キャリア濃度、伝導帯下端及び屈折率を調整することができ、変換効率の向上に寄与することができる。
【0037】
n型層4は、例えばスパッタやALD(Atomic Layer Deposition)などによって成膜されることが好ましい。
【0038】
第1n型層4Aの膜厚と第2n型層4Bの膜厚の和は、典型的には、3nm以上100nm以下である。第1n型層4Aの膜厚と第2n型層4Bの膜厚の和が3nm未満であると第1n型層4Aと第2n型層4Bのカバレッジが悪い場合にリーク電流が発生し、特性を低下させてしまう場合がある。カバレッジが良い場合は上記膜厚に限定されない。第1n型層4Aの膜厚と第2n型層4Bの膜厚の和が50nmを超えると第1n型層4A及び第2n型層4Bを合わせたn型層4の過度の高抵抗化による特性低下や、透過率低下による短絡電流低下が起こる場合がある。従って、第1n型層4Aの膜厚と第2n型層4Bの膜厚の和は3nm以上30nm以下がより好ましく、5nm以上30nm以下がさらにより好ましい。
【0039】
n電極5は、可視光に対して、光透過性を有する第1n型層4A側の電極である。n電極5とp型光吸収層3によって第1n型層4Aを挟んでいる。第1n型層4Aとn電極5の間には、図示しない中間層を設けることができる。この中間層にはメッシュやライン形状の電極を含むことができる。中間層を設けた場合も、第1n型層4Aとn電極5は直接的に接していることが好ましい。n電極5には、酸化物透明導電膜又は/及びグラフェンを用いることが好ましい。n電極5で用いられる酸化物透明導電膜としては、酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ボロンドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、チタンドープ酸化インジウム、酸化インジウムガリウム亜鉛及び水素ドープ酸化インジウムからなる群より選ばれる1種以上の透明導電膜であることが好ましい。グラフェンの仕事関数も第1n型層4Aの伝導帯下端との差が小さい。グラフェンをn電極5に用いても酸化物透明導電膜と同様に電子障壁を少なくすることができる。グラフェンはドープドグラフェンでもよい。グラフェンは、Agワイヤなどの中間層と併用することで、導電性及び透過性の観点から好ましい。これらの酸化物透明導電膜やグラフェンは、仕事関数が高いが、第1n型層4Aの伝導帯下端も高い。従って、実施形態では、n電極5と接するn型層4の伝導帯下端とn電極5の仕事関数の差を小さくすることができる。
【0040】
n電極5の厚さは、電子顕微鏡による断面観察や、段差計によって求められ、特に限定はないが、典型的には、1nm以上2μm以下である。
【0041】
n電極5は、例えばスパッタなどによって成膜されることが好ましい。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態は太陽電池に関する。
図3に第2実施形態の太陽電池101の断面概念図を示す。第2実施形態の太陽電池101は、第1n型層4A、第2n型層4Bと第3n型層4Cの3積層したn型層4を有することなどが第1実施形態の太陽電池100と異なることである。第1実施形態と第2実施形態で共通する説明は省略する。
【0043】
第3n型層4Cは、p型光吸収層3と第2n型層4Bとの間に位置する。
図3において、第3n型層4Cの第2n型層4B側の面は、第2n型層4Bと直接的に接している。
図3において、第3n型層4Cのp型光吸収層3側の面は、p型光吸収層3と直接的に接している。第3n型層4CはGaを含む酸化物半導体層であって、Gaをベースとする化合物を含むことが好ましい。第2n型層4Bと第3n型層4Cの界面は明瞭な場合と不明瞭な場合がある。第3n型層4CはGaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合していてもよいし、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしていてもよいし、他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合していてもよい。
【0044】
第3n型層4Cは、Gax1M2x2M3x3M4x4Ox5で表される化合物を主体(50wt%以上)とする層であって、M2はAl又は/及びBであり、M3はIn、Ti、Zn、Hf及びZrからなる群より選ばれる1種以上であり、M4はSn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。x1及びx5は、0より大きい数値である。x2、x3及びx4は、0.00以上の数値である。x2とx3の少なくともいずれか一方は0より大きい数値である。x1、x2、x3及びx4の和を2とする場合、x5は、3.00以上3.80以下であることが好ましい。Gaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合した形態、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしている形態及び他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合した形態のいずれもGax1M2x2M3x3M4x4Ox5で表している。
【0045】
第3n型層4Cの90wt%以上は、Gax1M2x2M3x3M4x4Ox5で表される化合物であることが好ましい。第3n型層4Cの95wt%以上は、Gax1M2x2M3x3M4x4Ox5で表される化合物であることがより好ましい。第3n型層4Cの98wt%以上は、Gax1M2x2M3x3M4x4Ox5で表される化合物であることがさらにより好ましい。第3n型層4CはGax1M2x2M3x3M4x4Ox5で表される化合物で構成(100wt% Gax1M2x2M3x3M4x4Ox5)されていることがより好ましい。
【0046】
第3n型層4Cが接する層との伝導帯下端の接続の連続性を向上させる為に、第2n型層4Bの伝導帯下端を調整する場合は、x2とx3の少なくともいずれか一方は0より大きい数値であることが好ましい。
【0047】
第3n型層4Cは、主にGaとM2の元素によって伝導帯下端が調整されている。第3n型層2CのM2の元素比率を第2n型層4Bよりも多くしてGaの比率を低くする(x1はw1より小さく、x2はw2より大きい)ことで第3n型層4Cの伝導帯下端が第2n型層4Bよりも高くなる。そして、p型光吸収層3から第1n型層4Aの間の伝導帯下端の接続の連続性が向上する。第3n型層4Cにおいて、(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4)は、0.60以上1.00以下が好ましい。同観点から、第3n型層4Cにおいて、(x1+x2)/(x1+x2+x3+x4)は、0.80以上1.00以下が好ましく、0.90以上1.00以下がより好ましい。
【0048】
第3n型層4Cは、第2n型層4Bよりも伝導帯下端が高い層であり、第3n型層4Cの伝導帯下端は、p型光吸収層3と第2n型層4Bの間にある。第3n型層4Cを用いることで、p型光吸収層3から第1n型層4Aまで伝導帯下端が連続的につながりFF及びVocが向上して変換効率の向上に寄与する。x2が0より大きな数値である場合は、第2n型層4Bと共通するM2の元素を第3n型層4Cも有すことが好ましい。つまり、第2n型層4BにAlが含まれれば第3n型層4CにAlが含まれないことよりもAlが含まれることが好ましい。そして、x1はw1より小さく、x2はw2より大きいことに起因して第3n型層4Cの伝導体下端が第2n型層4Bの伝導帯下端よりも高く、伝導帯下端の接続の連続性が向上する。同観点からx2/(x1+x2)は、0.10以上0.30以下が好ましく、0.15以上0.25以下がより好ましい。また、x2とw2が近い値であると第3n型層4Cを設けることによる伝導帯下端の接続の連続性の向上が少ない。そこでw2は、x2の10%以上90%以下が好ましく、w2はx2の15%以上80%以下がより好ましく、w2は、x2の20%以上70%以下がより好ましい。
【0049】
第3n型層4Cがn型層4に含まれる場合、第3n型層4Cと第2n型層4Bの伝導帯下端の連続性を考慮すると、第2n型層4Bにおいて、(w1+w2)/(w1+w2+w3+w4)は、0.90以上1.00以下が好ましい。w2/(w1+w2)は、0.00以上0.20以下が好ましい。また、w2/(w1+w2+w3+w4)は、0.00以上0.10以下が好ましい。
【0050】
p型光吸収層3の伝導帯下端と第3n型層4Cのp型光吸収層3側の伝導帯下端の差([p型光吸収層3の伝導帯下端]-[第3n型層4Cの伝導帯下端])は、0.3eV以上0.9eV以下であることが好ましく、0.3eV以上0.6eV以下がより好ましい。
【0051】
第3n型層4Cの伝導帯下端と第2n型層4Bの第3n型層4C側の伝導帯下端の差([第3n型層4Cの伝導帯下端]-[第2n型層4Bの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下がより好ましい。
【0052】
第2n型層4Bの伝導帯下端と第1n型層4Aの第2n型層4B側の伝導帯下端の差([第2n型層4Bの伝導帯下端]-[第1n型層4Aの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下がより好ましい。
【0053】
n型層4を3層構造とすることで各層の伝導帯下端の差をより小さくすることができる。
【0054】
実施形態の第3n型層4Cは、GaとM3(又はM2及びM3)の元素によって伝導帯下端を調整することができる。第3n型層4Cの化合物にはM3で表されるIn、Ti、Zn、Hg及びZrからなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。x3/(x1+x2+x3+x4)は、0.00以上0.50以下が好ましく、0.00以上0.10以下がより好ましく、0.00以上0.05以下がより好ましい。伝導帯下端の接続の連続性を考慮すると、w3はx3の0%以上90%以下が好ましく、0%以上80%以下がより好ましく0%以上70%以下がより好ましい。
【0055】
M4の元素が第3n型層4Cに含まれていてもよい。第3n型層4Cよりも第2n型層4Bのキャリア濃度が高いことが好ましい(w4は、x4よりも大きい)好ましい。x4/(x1+x2+x3+x4)は0.01以上0.15以下であることがより好ましく、0.05以上0.15以下であることがさらにより好ましい。伝導帯下端の接続の連続性を考慮すると、x4はw4の0%以上90%以下が好ましく、w4の0%以上50%以下がより好ましく、w4の0%以上10%以下がより好ましい。
【0056】
Ga、M2の元素、M3の元素及びM4の元素からなる群より選ばれる1以上は、第3n型層4C中で第3n型層4Cの膜厚方向に、第2n型層4B中で第2n型層4Bの膜厚方向に組成比率が変化していてもよい。Ga及びM4の元素は、p型光吸収層3側で少なく、第1n型層4A側で多いことが好ましい。M2の元素及びM3の元素は、p型光吸収層3側で多く、第1n型層4A側で少ないことが好ましい。組成の変化は、傾斜的、階段状又は傾斜的な変化と階段状の変化が組み合わさっていることが好ましい。また、組成の変化は太陽電池101の各層の積層方向に全体的又は部分的である。これらの元素の組成分布を変えることで、p型光吸収層3側からn電極5側に向かって、キャリア濃度、伝導帯下端及び屈折率を調整することができ、変換効率の向上に寄与することができる。
【0057】
第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚と第3n型層4Cの和は、典型的には、3nm以上100nm以下である。第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚と第3n型層4Cの和が3nm未満であると第1n型層4A、第2n型層4Bと第3n型層4Cのカバレッジが悪い場合にリーク電流が発生し、特性を低下させてしまう場合がある。カバレッジが良い場合は上記膜厚に限定されない。第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚と第3n型層4Cの和が50nmを超えると第1n型層4Aから第3n型層4Cまでのn型層4の過度の高抵抗化による特性低下や、透過率低下による短絡電流低下が起こる場合がある。従って、第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚と第3n型層4Cの和は3nm以上30nm以下がより好ましく、5nm以上30nm以下がさらにより好ましい。
【0058】
第2実施形態の太陽電池101も第1実施形態の太陽電池100と同様に伝導帯下端の接続の連続性が優れ、Jsc、Voc及びFFが向上して変換効率の向上に寄与する。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態は太陽電池に関する。
図4に第3実施形態の太陽電池102の断面概念図を示す。第3実施形態の太陽電池102は、第2n型層4Bが第1領域4aと第2領域4bを有することが第2実施形態の太陽電池101と異なることである。第1実施形態から第2実施形態と第3実施形態で共通する説明は省略する。
【0060】
第1領域4aは、第2n型層4Bの第1n型層4A側に位置する。また、第2領域4bは、第1n型層4Aのp型光吸収層3側に位置する。第1領域4aと第2領域4bの界面は確認されない。第2n型層4Bのp型光吸収層3側の表面から第1n型層4A側に向かって第2n型層4Bの厚さの半分までを第2領域4bとする。また、第2n型層4Bの第1n型層4A側の表面からp型光吸収層3側に向かって第2n型層4Bの厚さの半分までを第1領域4aとする。なお、分析は第1実施形態と同様にn型層4の表面からの各距離において
図2の分析スポットに示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポットを例えばSIMSで分析することで求められる。
【0061】
第3実施形態の第1領域4aが第2実施形態の第2n型層4Bに対応する。第3実施形態の第2領域4bが第2実施形態の第3n型層4Cに対応する。従って、第2実施形態において説明した傾斜的な組成変化等については第3実施形態の太陽電池102等においても同様である。
【0062】
第3実施形態の太陽電池102も第2実施形態の太陽電池101と同様に伝導帯下端の接続の連続性が優れ、Jsc、Voc及びFFが向上して変換効率の向上に寄与する。
【0063】
(第4実施形態)
第4実施形態は太陽電池に関する。
図5に第4実施形態の太陽電池103の断面概念図を示す。第4実施形態の太陽電池103は、第1n型層4A、第2n型層4Bと第3n型層4C、第4n型層4Dの4積層したn型層4を有することなどが第2実施形態の太陽電池101と異なることである。第1実施形態から第3実施形態と第4実施形態で共通する説明は省略する。
【0064】
第4n型層4Dは、p型光吸収層3と第3n型層4Cとの間に位置する。
図5において、第4n型層4Dの第3n型層4C側の面は、第3n型層4Cと直接的に接している。
図5において、第4n型層4Dのp型光吸収層3側の面は、p型光吸収層3と直接的に接している。第4n型層4DはGaを含む酸化物半導体層であって、Gaをベースとする化合物を含むことが好ましい。第3n型層4Cと第4n型層4Dの界面は明瞭な場合と不明瞭な場合がある。第4n型層4DはGaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合していてもよいし、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしていてもよいし、他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合していてもよい。
【0065】
第4n型層4Dは、Gay1M2y2M3y3M4y4Oy5で表される化合物を主体(50wt%以上)とする層であって、M2はAl又は/及びBであり、M3はIn、Ti、Zn、Hf及びZrからなる群より選ばれる1種以上であり、M4はSn、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。y1及びy5は、0より大きい数値である。y2、y3及びy4は、0.00以上の数値である。y2とy3の少なくともいずれか一方は0より大きい数値である。y1、y2、y3及びy4の和を2とする場合、y5は3.0以上3.8以下であることが好ましい。Gaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合した形態、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしている形態及び他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合した形態のいずれもGay1M2y2M3y3M4y4Oy5で表している。
【0066】
第4n型層4Dはの90wt%以上は、Gay1M2y2M3y3M4y4Oy5で表される化合物であることが好ましい。第4n型層4Dはの95wt%以上は、Gay1M2y2M3y3M4y4Oy5で表される化合物であることがより好ましい。第4n型層4Dはの98wt%以上は、Gay1M2y2M3y3M4y4Oy5で表される化合物であることがさらにより好ましい。第4n型層4Dは、Gay1M2y2M3y3M4y4Oy5で表される化合物で構成(100wt% Gay1M2y2M3y3M4y4Oy5)されていることがより好ましい。
【0067】
第4n型層4Dは、主にGaとM2の元素によって伝導帯下端が調整されている。第4n型層4DのM2の元素比率を第3n型層4Cよりも多くしてGaの比率を小さくする(y1はx1より小さく、y2はx2より大きい)ことで第4n型層4Dの伝導帯下端が第3n型層4Bよりも高くなる。そして、p型光吸収層3から第1n型層4Aの間の伝導帯下端の接続の連続性が向上する。第4n型層4Dにおいて、(y1+y2)/(y1+y2+y3+y4)は、0.90以上1.00以下が好ましい。また、上記の第4n型層4DのM2の元素比率を第3n型層4Cよりも多くしてGaの比率を小さくし、第3n型層4CのM2の比率よりも第2n型層2Bを小さくする、つまりy1はx1より小さく、x1はw1より小さくすることで、p型光吸収層3から第1n型層4Aの間の伝導帯下端の接続の連続性をさらに向上させることができる。
【0068】
第4n型層4Dは、第3n型層4Cよりも伝導帯下端が高い層であり、第4n型層4Dの伝導体下端は、p型光吸収層3と第3n型層4Cの間にある。第4n型層4Dを用いることで、p型光吸収層3から第1n型層4Aまで伝導帯下端が連続的につながりFF及びVocが向上して変換効率の向上に寄与する。そのため、y2はx2より大きく、x2はw2より大きいのが良い。y2が0より大きな数値である場合は、第3n型層4Cと共通するM2の元素を第4n型層4Dも有することが好ましい。つまり、第3n型層4CにAlが含まれれば第4n型層4DにAlが含まれないことよりもAlが含まれることが好ましい。また、第4n型層4Eの伝導帯下端を調整する観点からy2とy3の少なくともいずれか一方は0より大きい数値であることが好ましい。
【0069】
上述したように、第4n型層4Dの伝導体下端が第3n型層4Cの伝導帯下端よりも高く、第3n型層4Cの伝導帯下端が第2n型層4Bの伝導帯下端より高いことで、伝導帯下端の接続の連続性が向上する。同観点からy2/(y1+y2)は、0.20以上0.40以下が好ましく、0.25以上0.35以下がより好ましい。また、y2とx2が近い値であると第3n型層4Cを設けることによる伝導帯下端の接続の連続性の向上が少ない。そこでx2はy2の10%以上90%以下でw2はy2の0%以上50%以下が好ましく、x2はy2の15%以上80%以下でw2はy2の0%以上30%以下がより好ましく、x2は、y2の20%以上70%以下でw2はy2の0%以上10%以下がさらにより好ましい。
【0070】
実施形態の第4n型層4Dは、GaとM3(又はM2及びM3)の元素によって伝導帯下端を調整することができる。第4n型層4Dの化合物にはM3で表されるIn、Ti、Zn、Hg及びZrからなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。x3/(x1+x2+x3+x4)は、0.00以上0.50以下が好ましく、0.00以上0.10以下がより好ましく、0.00以上0.05以下がより好ましい。伝導帯下端の接続の連続性を考慮すると、x3はy3の0%以上90%以下でw3はy3の0%以上50%以下が好ましく、x3はy3の0%以上80%以下でw3はy3の0%以上30%以下がより好ましく、x3はy3の0%以上70%以下でw3はy3の0%以上10%以下がさらにより好ましい。
【0071】
M4の元素が第4n型層4Dに含まれていてもよい。第4n型層4Dよりも第3n型層4Cのキャリア濃度が高く(x4は、y4よりも大きい)、第3n型層4Cよりも第2n型層4Bのキャリア濃度が高い(w4は、x4よりも大きい)ことが好ましい。y4/(y1+y2+y3+y4)は0.00以上0.05以下であることがより好ましく、0.00以上0.03以下であることがさらにより好ましい。伝導帯下端の接続の連続性を考慮すると、y4はx4の0%以上90%以下でw4の0%以上30%以下が好ましく、x4の0%以上50%以下でw4の0%以上10%以下がより好ましく、x4の0%以上30%以下でw4の0%以上5%以下がさらにより好ましい。
【0072】
p型光吸収層3の伝導帯下端と第4n型層4Dのp型光吸収層3側の伝導帯下端の差([p型光吸収層3の伝導帯下端]-[第4n型層4Dの伝導帯下端])は、0.0eV以上0.8eV以下であることが好ましく、0.0eV以上0.4eV以下がより好ましい。
【0073】
第4n型層4Dの伝導帯下端と第3n型層4Cのp型光吸収層3側の伝導帯下端の差([第4n型層4Dの伝導帯下端]-[第3n型層4Cの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下がより好ましい。
【0074】
第3n型層4Cの伝導帯下端と第2n型層4Bの第3n型層4C側の伝導帯下端の差([第3n型層4Cの伝導帯下端]-[第2n型層4Bの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下がより好ましい。
【0075】
第2n型層4Bの伝導帯下端と第1n型層4Aの第2n型層4B側の伝導帯下端の差([第2n型層4Bの伝導帯下端]-[第1n型層4Aの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下がより好ましい。
【0076】
n型層4を4層構造とすることで各層の伝導帯下端の差をより小さくすることができる。
【0077】
Ga、M2の元素、M3の元素及びM4の元素からなる群より選ばれる1以上は、第4n型層4D中で第4n型層4Dの膜厚方向に、第3n型層4C中で第3n型層4Cの膜厚方向に、第2n型層4B中で第2n型層4Bの膜厚方向に組成比率が変化していてもよい。Ga及びM4の元素は、p型光吸収層3側で少なく、第1n型層4A側で多いことが好ましい。M2の元素及びM3の元素は、p型光吸収層3側で多く、第1n型層4A側で少ないことが好ましい。組成の変化は、傾斜的、階段状又は傾斜的な変化と階段状の変化が組み合わさっていることが好ましい。また、組成の変化は太陽電池101の各層の積層方向に全体的又は部分的である。これらの元素の組成分布を変えることで、p型光吸収層3側からn電極5側に向かって、キャリア濃度、伝導帯下端及び屈折率を調整することができ、変換効率の向上に寄与することができる。
【0078】
第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚、第3n型層4Cの膜厚と第4n型層4Dの膜厚の和は、典型的には、3nm以上100nm以下である。第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚、第3n型層4Cの膜厚と第4n型層4Dの膜厚の和が3nm未満であると第1n型層4A、第2n型層4B、第3n型層4Cと第4n型層4Dのカバレッジが悪い場合にリーク電流が発生し、特性を低下させてしまう場合がある。カバレッジが良い場合は上記膜厚に限定されない。第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚、第3n型層4Cの膜厚と第4n型層4Dの膜厚の和が50nmを超えると第1n型層4Aから第4n型層4Dまでのn型層4の過度の高抵抗化による特性低下や、透過率低下による短絡電流低下が起こる場合がある。従って、第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚、第3n型層4Cの膜厚と第4n型層4Dの和は3nm以上30nm以下がより好ましく、5nm以上30nm以下がさらにより好ましい。
【0079】
第2実施形態の太陽電池101も第1実施形態の太陽電池100と同様に伝導帯下端の接続の連続性が優れ、Jsc、Voc及びFFが向上して変換効率の向上に寄与する。
【0080】
(第5実施形態)
第5実施形態は、太陽電池に関する。
図6に第4実施形態の太陽電池104の断面概念図を示す。第4実施形態の太陽電池103は、第2n型層4Bが第1領域4a、第2領域4b及び第3領域4cを有することが第1実施形態の太陽電池100と異なることである。第1実施形態から第4実施形態と第5実施形態で共通する説明は省略する。第5実施形態の第3領域4cは、第3実施形態の第4n型層4Dに相当する。
【0081】
第1領域4aは、第1n型層4A側に位置する。また、第3領域4cは、p型光吸収層3側に位置する。第2領域4bは、第1領域4aと第3領域4cの間に位置する。第1領域4aと第2領域4bの界面及び第2領域4bと第3領域4cは確認されない。第2n型層4Bのp型光吸収層3側の表面から第1n型層4A側に向かって第2n型層4Bの厚さの1/3までを第3領域4bとする。また、第2n型層4Bの第1n型層4A側の表面からp型光吸収層3側に向かって第2n型層4Bの厚さの1/3までを第1領域4aとする。なお、分析は第1実施形態と同様にn型層4の表面からの各距離において
図2の分析スポットに示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポットを例えばSIMSで分析することで求められる。
【0082】
第5実施形態の第1領域4aが第4実施形態の第2n型層4Bに対応する。第5実施形態の第2領域4aが第4実施形態の第2n型層4Bに対応する。第5実施形態の第3領域4bが第4実施形態の第3n型層4Cに対応する。第5実施形態の第4領域4cが第4実施形態の第4n型層4Dに対応する。従って、第4実施形態において説明した傾斜的な組成変化等については第5実施形態の太陽電池104等においても同様である。
【0083】
第5実施形態の太陽電池104も第3実施形態の太陽電池102と同様に伝導帯下端の接続の連続性が優れ、Jsc、Voc及びFFが向上して変換効率の向上に寄与する。
【0084】
(第6実施形態)
第6実施形態は太陽電池に関する。
図7に第6実施形態の太陽電池105の断面概念図を示す。第6実施形態の太陽電池105は、第1n型層4A、第5n型層4E、第2n型層4Bと第3n型層4C、第4n型層4Dの5積層したn型層4を有することなどが第4実施形態の太陽電池103と異なることである。第1実施形態から第5実施形態と第6実施形態で共通する説明は省略する。第1実施形態から第5実施形態のいずれの太陽電池にも第5n型層5Eを用いることができる。
【0085】
第5n型層4Eは、第1n型層4Aと第2n型層4Bとの間に位置する。
図7において、第5n型層4Eの第1n型層4A側の面は、第1n型層4Aと直接的に接している。
図7において、第5n型層4Eの第2n型層4B側の面は、第2n型層4Bと直接的に接している。第4n型層4DはGaを含む酸化物半導体層であって、Gaをベースとする化合物を含むことが好ましい。第3n型層4Cと第4n型層4Dの界面は明瞭な場合と不明瞭な場合がある。第4n型層4DはGaをベースとする酸化物に他の酸化物が混合していてもよいし、Gaをベースとする酸化物に他の元素がドープしていてもよいし、他の元素がドープしたGaベースの酸化物と他の酸化物が混合していてもよい。
【0086】
第5n型層4Eは、Gaz1Znz2Snz3M1z4Oz5で表される化合物を主体(50wt%以上)とする層であって、M1はHf、Zr、In、Ti、Al、B、Mg、Si及びGeからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。z1、z2及びz4は、0.00以上の数値である。z3及びz5は0より大きい数値である。z1とz2の少なくともどちらか一方は0より大きい数値である。z1、z2、z3及びz4の和を1とする場合、z5は1.00以上2.00以下であることが好ましい。Ga又は/及びZnをベースとする酸化物に他の酸化物が混合した形態、Ga又は/及びZnをベースとする酸化物に他の元素がドープしている形態及び他の元素がドープしたGa又は/及びZnをベースの酸化物と他の酸化物が混合した形態のいずれもGaz1Znz2Snz3M1z4Oz5で表している。
【0087】
第5n型層4Eの90wt%以上は、Gaz1Znz2Snz3M1z4Oz5表される化合物であることが好ましい。第5n型層4Eの95wt%以上は、Gaz1Znz2Snz3M1z4Oz5で表される化合物であることがより好ましい。第5n型層4Eの98wt%以上は、Gaz1Znz2Snz3M1z4Oz5で表される化合物であることがさらにより好ましい。第5n型層4Eは、Gaz1Znz2Snz3M1z4Oz5で表される化合物で構成されている(100wt% Gaz1Znz2Snz3M1z4Oz5)ことがより好ましい。
【0088】
第5n型層4Eは、主にGa、ZnとSnによって第2n型層4B及び第1n型層4Aとの伝導帯下端の差が少なくなるように調整されている。第1n型層4AよりもSnを多くするか、少なくすることで、第5n型層4Eの仕事関数及び伝導帯下端が第1n型層4Aと第2n型層4Bの間になる。z3は、v3の50%以上80%以下又は120%以上150%以下が好ましく、v3の50%以上70%以下又は130%以上150%以下がより好ましい。
【0089】
第5n型層4Eの伝導帯下端と第1n型層4Aの伝導帯下端の差が小さくなる第5n型層4Eが好ましい。第5n型層4Eと第1n型層4Aとの伝導帯下端の差を小さくするために、Ga、Zn及びSnの元素が第5n型層4Eの化合物に含まれる。第5n型層4Eの伝導帯下端と第1n型層4Aの伝導帯下端の差([第5n型層4Eの伝導帯下端]-[第1n型層4Aの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下であることがより好ましい。第5n型層4Eからn電極5までの仕事関数の差が小さいことが好ましいため、第1n型層4Aの伝導帯下端とn電極5の伝導帯下端の差([第1n型層4Aの伝導帯下端]-[n電極5の仕事関数])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下であることがより好ましい。
【0090】
第5n型層4Eのz1、z2、z3、z4及びz5の好適な数値範囲は、第1n型層4Aのx1、x2、x3、x4及びx5と同様であるが、第5n型層4EのSnの比率(z3)は、第1n型層4AのSnの比率(v3)よりも高いか低いため、第1n型層4AのGav1Znv2Snv3M1v4Ov5で表される化合物と第5n型層4EのGaz1Znz2Snz3M1z4Oz5で表される化合物は同一組成にならない。
【0091】
第5n型層4Eは、n型層において最もn電極5側に位置した第1n型層4Aのp型光吸収層側に位置し、好ましくは第5n型層4Eは第1n型層4A及び第2n型層4Bと直接的に接している。n型層5中の第2n型層4BなどにZnやSnが含まれる場合、それらの組成比率は、第5n型層4E中のZnとSnのそれぞれの濃度よりも低いことが好ましい。
【0092】
第5n型層4Eにおいて、Ga、Zn、Sn及びM4の元素は、p型光吸収層3側からn電極5に向かって傾斜的、階段状、又は、傾斜的な変化と階段状が組み合わさったように変化してもよい。例えば、Snは第1n型層4A側に多くてGa及びZnは第2n型層4B側に多くすること、又は、Snは第1n型層4A側に少なくてGa及びZnは第2n型層4B側に少なくすることが好ましい。
【0093】
p型光吸収層3の伝導帯下端と第4n型層4Dのp型光吸収層3側の伝導帯下端の差([p型光吸収層3の伝導帯下端]-[第4n型層4Dの伝導帯下端])は、0.0eV以上0.8eV以下であることが好ましく、0.0eV以上0.4eV以下がより好ましい。
【0094】
第4n型層4Dの伝導帯下端と第3n型層4Cのp型光吸収層3側の伝導帯下端の差([第4n型層4Dの伝導帯下端]-[第3n型層4Cの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下がより好ましい。
【0095】
第3n型層4Cの伝導帯下端と第2n型層4Bの第3n型層4C側の伝導帯下端の差([第3n型層4Cの伝導帯下端]-[第2n型層4Bの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下がより好ましい。
【0096】
第2n型層4Bの伝導帯下端と第5n型層4Eの第2n型層4B側の伝導帯下端の差([第2n型層4Bの伝導帯下端]-[第5n型層4Eの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下がより好ましい。
【0097】
第5n型層4Eの伝導帯下端と第1n型層4Aの第5n型層4E側の伝導帯下端の差([第5n型層4Eの伝導帯下端]-[第1n型層4Aの伝導帯下端])は、0.1eV以上0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以上0.3eV以下がより好ましい。
【0098】
n型層4を5層構造とすることで各層の伝導帯下端の差をより小さくすることができる。
【0099】
第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚、第3n型層4Cの膜厚、第4n型層4Dの膜厚と第5n型層4Eの膜厚の和は、典型的には、3nm以上100nm以下である。第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚、第3n型層4C、第4n型層4Dの膜厚と第5n型層4Eの膜厚和が3nm未満であると第1n型層4A、第2n型層4B、第3n型層4C、第4n型層4Dと第5n型層4Eのカバレッジが悪い場合にリーク電流が発生し、特性を低下させてしまう場合がある。カバレッジが良い場合は上記膜厚に限定されない。第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚、第3n型層4Cの膜厚、第4n型層4Dの膜厚と第5n型層4Eの膜厚が50nmを超えると第1n型層4Aから第5n型層4Eまでのn型層4の過度の高抵抗化による特性低下や、透過率低下による短絡電流低下が起こる場合がある。従って、第1n型層4Aの膜厚、第2n型層4Bの膜厚、第3n型層4Cの膜厚、第4n型層4Dの膜厚と第5n型層4Eの膜厚の和は3nm以上30nm以下がより好ましく、5nm以上30nm以下がさらにより好ましい。
【0100】
第5実施形態の太陽電池104も第1実施形態の太陽電池100と同様にn電極5とn型層4のn電極4側において仕事関数の差が小さく、Jsc、Voc及びFFが向上して変換効率の向上に寄与する。
【0101】
(第7実施形態)
第7実施形態は太陽電池に関する。
図8に第7実施形態の太陽電池106の断面概念図を示す。第7実施形態の太陽電池106は、第1n型層4Aが第4領域4dと第5領域4eを有することが第5実施形態の太陽電池104と異なることである。第1実施形態から第6実施形態と第7実施形態で共通する説明は省略する。
【0102】
第4領域4dは、第1n型層4Aのn電極5側に位置する。また、第5領域4eは、第1n型層4Aのp型光吸収層3側に位置する。第4領域4dと第5領域4eの界面は確認されない。第1n型層4Aのp型光吸収層3側の表面からn電極5側に向かって第1n型層4Aの厚さの半分までを第5領域4eとする。また、第1n型層4Aのn電極5側の表面からp型光吸収層3側に向かって第1n型層4Aの厚さの半分まで第4領域4dとする。なお、分析は第1実施形態と同様にn型層4の表面からの各距離において
図2の分析スポットに示すような等間隔に可能な限り隔たり無く分布した分析スポットを例えばSIMSで分析することで求められる。
【0103】
第7実施形態の第4領域4dが第6実施形態の第1n型層4Aに対応する。第7実施形態の第5領域4eが第6実施形態の第5n型層4Eに対応する。従って、第6実施形態において説明した第5n型層4Eの配置や傾斜的な組成変化等については第7実施形態の太陽電池106等においても同様である。第1n型層4Aと第2n型層4Bの界面がなく、第1領域4aから第5領域4eまでを含む1層のn型層4としてもよい。また、いずれの実施形態においても第1n型層4Aから第5n型層4Eの一部を領域とすることができる。例えば第1n型層4Aと第2n型層4Bの間に第5領域4eを備えることができる。
【0104】
第7実施形態の太陽電池106も第6実施形態の太陽電池105と同様にn電極5とn型層4のn電極4側において仕事関数の差が小さく、Jsc、Voc及びFFが向上して変換効率の向上に寄与する。
【0105】
(第8実施形態)
第8実施形態は、多接合型太陽電池に関する。
図9に第8実施形態の多接合型太陽電池の断面概念図を示す。
図9の多接合型太陽電池200は、光入射側に第1実施形態の太陽電池(第1太陽電池)100と、第2太陽電池201を有する。第2太陽電池201の光吸収層のバンドギャップは、第1実施形態の太陽電池100のp型光吸収層3よりも小さいバンドギャップを有する。なお、実施形態の多接合型太陽電池は、3以上の太陽電池を接合させた太陽電池も含まれる。なお、第8実施形態において、第1実施形態の太陽電池100の代わりに第2実施形態から第7実施形態の太陽電池101-106を用いてもよい。
【0106】
第1実施形態の第1太陽電池100のp型光吸収層3のバンドギャップが2.0eV-2.2eV程度であるため、第2太陽電池200の光吸収層のバンドギャップは、1.0eV以上1.6eV以下であることが好ましい。第2太陽電池の光吸収層としては、Inの含有比率が高いCIGS系、CuZnSnSSe系及びCdTe系からなる群から選ばれる1種以上の化合物半導体層、結晶シリコン及びペロブスカイト型化合物からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。
【0107】
(第9実施形態)
第9実施形態は、太陽電池モジュールに関する。
図10に第9実施形態の太陽電池モジュール300の斜視図を示す。
図10の太陽電池モジュール300は、第1太陽電池モジュール301と第2太陽電池モジュール302を積層した太陽電池モジュールである。第1太陽電池モジュール301は、光入射側であり、第1実施形態の太陽電池100を用いている。第2の太陽電池モジュール302には、第2太陽電池201を用いることが好ましい。第1太陽電池モジュール301には、第2から第7実施形態の太陽電池101-106も使用することができる。
【0108】
図11に太陽電池モジュール300の断面図を示す。
図11では、第1太陽電池モジュール301の構造を詳細に示し、第2太陽電池モジュール302の構造は示していない。第2太陽電池モジュール301では、用いる太陽電池の光吸収層などに応じて適宜、太陽電池モジュールの構造を選択する。
図11の太陽電池モジュールは、複数の太陽電池100(太陽電池セル)が横方向に並んで配線304で電気的に直列に接続した破線で囲われたサブモジュール303が複数含まれ、複数のサブモジュール303が電気的に並列もしくは直列に接続している。隣り合うサブモジュール303は、バスバー305で電気的に接続している。
【0109】
隣り合う太陽電池100は、上部側のn電極5と下部側のp電極2が配線304によって接続している。第6実施形態の太陽電池100も第1実施形態の太陽電池100と同様に、基板1、p電極2、p型光吸収層3、n型層4とn電極5を有する。サブモジュール303中の太陽電池100の両端は、バスバー305と接続し、バスバー305が複数のサブモジュール303を電気的に並列もしくは直列に接続し、第2太陽電池モジュール302との出力電圧を調整するように構成されていることが好ましい。なお、第6実施形態に示す太陽電池100の接続形態は一例であり、他の接続形態によって太陽電池モジュールを構成することができる。
【0110】
(第10実施形態)
第10実施形態は太陽光発電システムに関する。第10実施形態の太陽電池モジュールは、第10実施形態の太陽光発電システムにおいて、発電を行う発電機として用いることができる。実施形態の太陽光発電システムは、太陽電池モジュールを用いて発電を行うものであって、具体的には、発電を行う太陽電池モジュールと、発電した電気を電力変換する手段と、発電した電気をためる蓄電手段又は発電した電気を消費する負荷とを有する。
図12に実施形態の太陽光発電システム400の構成図を示す。
図12の太陽光発電システムは、太陽電池モジュール401(300)と、コンバーター402と、蓄電池403と、負荷404とを有する。蓄電池403と負荷404は、どちらか一方を省略しても良い。負荷404は、蓄電池403に蓄えられた電気エネルギーを利用することもできる構成にしてもよい。コンバーター402は、DC-DCコンバーター、DC-ACコンバーター、AC-ACコンバーターなど変圧や直流交流変換などの電力変換を行う回路又は素子を含む装置である。コンバーター402の構成は、発電電圧、蓄電池403や負荷404の構成に応じて好適な構成を採用すればよい。
【0111】
太陽電池モジュール300に含まれる受光したサブモジュール301に含まれる太陽電池セルが発電し、その電気エネルギーは、コンバーター402で変換され、蓄電池403で蓄えられるか、負荷404で消費される。太陽電池モジュール401には、太陽電池モジュール401を常に太陽に向けるための太陽光追尾駆動装置を設けたり、太陽光を集光する集光体を設けたり、発電効率を向上させるための装置等を付加することが好ましい。
【0112】
太陽光発電システム400は、住居、商業施設や工場などの不動産に用いられたり、車両、航空機や電子機器などの動産に用いられたりすることが好ましい。実施形態の変換効率に優れた太陽電池を太陽電池モジュールに用いることで、発電量の増加が期待される。
【0113】
太陽光発電システム400の利用例として車両を示す。
図13に車両500の構成概念図を示す。
図13の車両500は、車体501、太陽電池モジュール502、電力変換装置503、蓄電池504、モーター505とタイヤ(ホイール)506を有する。車体501の上部に設けられた太陽電池モジュール501で発電した電力は、電力変換装置503変換されて、蓄電池504にて充電されるか、モーター505等の負荷で電力が消費される。太陽電池モジュール501又は蓄電池504から供給される電力を用いてモーター505によってタイヤ(ホイール)506を回転させることにより車両500を動かすことができる。太陽電池モジュール501としては、多接合型ではなく、第1実施形態の太陽電池100等を備えた第1太陽電池モジュールだけで構成されていてもよい。透過性のある太陽電池モジュール502を採用する場合は、車体501の上部に加え、車体501の側面に発電する窓として太陽電池モジュール502を使用することも好ましい。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0114】
(実施例1)
ガラス基板上に、裏面側のp電極として、ガラスと接する側に上面にITO(In:Sn=90:10、膜厚20nm)とATO(Sn:Sb=98:2 膜厚 150μm)を堆積する。透明なp電極上に酸素、アルゴンガス雰囲気中でスパッタリング法により500℃で加熱してCu2O光吸収層を成膜する。その後、ALD法により、第2n型層として組成傾斜の無いGa1.80Al0.20O3.00を10nm堆積し、第1n型層として、組成傾斜の無いZn0.80Sn0.20O1.20を10nm堆積表面側のn電極としてAZO透明導電膜を堆積する。そして、反射防止膜としてMgF2膜を成膜することで太陽電池を得る。得られた太陽電池について、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性を評価する。なお、n型層の酸素組成比は金属酸化物の金属の種類と組成比から求めている。
【0115】
太陽電池の透光性を評価する。太陽電池の透過性は、分光光度計で波長700-1200nmを測定した際の平均透過率である。
【0116】
(実施例2-27、比較例)
図14の実施例に関する表に実施例及び比較例のn型層及びn電極の条件を示している。n型層(第1n型層、第2n型層n型層の条件以外は、実施例1と同様である。実施例で3層のn型層を形成している場合は、各n型層の厚さを6nmとしている。実施例で4層のn型層を形成している場合は、各n型層の厚さを5nmとしている。実施例で5層のn型層を形成している場合は、各n型層の厚さを4nmとしている。実施例15は、第1n型層に第4領域と第5領域が含まれ、第2n型層に第1領域から第3領域が含まれる。
【0117】
AM1.5Gの光源を模擬したソーラーシミュレータを用い、その光源下で基準となるSiセルを用いて1sunになるように光量を調節する。測定は大気圧下で測定室内の気温は25℃とする。電圧をスイープし、電流密度(電流をセル面積で割ったもの)を測定する。横軸を電圧、縦軸を電流密度とした際に、横軸と交わる点が開放電圧Vocとなり、縦軸と交わる点が短絡電流密度Jscとなる。測定曲線上において、電圧と電流密度を掛け合わせ、最大になる点をそれぞれVmpp、Jmpp(マキシマムパワーポイント)とすると、FF=(Vmpp*Jmpp)/(Voc*Jsc)であり、変換効率Eff.はEff.=Voc*Jsc*FFで求まる。
【0118】
図15の実施例に関する表に実施例及び比較例の短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、変換効率及び透光性をまとめて示す。
【0119】
透光性は、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が75%以上である場合をAと評価し、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が70%以上75%未満である場合をBと評価し、700nm以上1200nm以下の波長帯の光の透光率が70%未満である場合をCと評価する。
【0120】
Jscは、比較例1の変換効率に対して1.1倍以上である場合をAと評価し、比較例1のJscに対して1.0倍以上1.1倍未満である場合をBと評価して、比較例1のJscに対して1.0倍未満である場合をCと評価する。
【0121】
Vocは、比較例1の変換効率に対して1.3倍以上である場合をAと評価し、比較例1のVocに対して1.1倍以上1.3倍未満である場合をBと評価して、比較例21Vocに対して1.1倍未満である場合をCと評価する。
【0122】
FFは、比較例1の変換効率に対して1.1倍以上である場合をAと評価し、比較例1のFFに対して1.0倍以上1.1倍未満である場合をBと評価して、比較例1のFFに対して1.0倍未満である場合をCと評価する。
【0123】
変換効率は、比較例1の変換効率に対して1.5倍以上である場合をAと評価し、比較例1の変換効率に対して1.1倍以上1.5倍未満である場合をBと評価して、比較例1の変換効率に対して1.1倍未満である場合をCと評価する。
【0124】
表2から分るように、p型光吸収層の伝導帯とn電極の間をエネルギー的にスムーズに接続するために、n層に、組成を意図的に制御した多層構造または傾斜構造を適用することで、比較例と比べて、Jsc、Voc、FFは各々改善して、効率は大幅に向上する。以上の結果より、n型層の膜厚方向の伝導帯のエネルギー構造を制御し、適正化することは、Cu2O太陽電池の特性向上に向けて、重要な技術であることが理解される。実施例の太陽電池をトップセルとして用い、Siを光吸収層とする太陽電池をボトムセルとする多接合型太陽電池において、トップセルの高い透光率と変換効率によって、多接合型太陽電池においても優れた変換効率が得られる。明細書中一部の元素は、元素記号のみで示している
【0125】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定解釈されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成することができる。例えば、変形例の様に異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0126】
100,101…太陽電池(第1太陽電池)、1…基板、2…p電極(第1p電極2a、第2p電極2b)、3…p型光吸収層、4…n型層、5…n電極
200…多接合型太陽電池、201…第2太陽電池、
300…太陽電池モジュール、6…基板、301第1太陽電池モジュール、302…第2太陽電池モジュール、303…サブモジュール、304…バスバー、
400…太陽光発電システム、401…太陽電池モジュール、402…コンバーター、403…蓄電池、404…負荷
500…車両、501…車体、502…太陽電池モジュール、503…電力変換装置、504…蓄電池、505…モーター、506…タイヤ(ホイール)