IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガスセンサ 図1
  • 特許-ガスセンサ 図2
  • 特許-ガスセンサ 図3
  • 特許-ガスセンサ 図4
  • 特許-ガスセンサ 図5
  • 特許-ガスセンサ 図6
  • 特許-ガスセンサ 図7
  • 特許-ガスセンサ 図8
  • 特許-ガスセンサ 図9
  • 特許-ガスセンサ 図10
  • 特許-ガスセンサ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20240610BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G01N27/416 331
G01N27/419 327H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020171670
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063406
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠介
(72)【発明者】
【氏名】新妻 匠太郎
(72)【発明者】
【氏名】平川 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】青田 隼実
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158802(JP,A)
【文献】特開2015-148503(JP,A)
【文献】特開昭61-194345(JP,A)
【文献】特開2015-227897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質から成る層を少なくとも一つ以上含む積層体と、
前記積層体内に形成され、前記積層体の長手方向の一方である前端側に位置するガス導入口を介して導入される被測定ガスが流通する被測定ガス流路と、
前記被測定ガス流路の長手方向に沿うように形成され、前記被測定ガス流路内に露出するポンプ電極と、
を備え、
前記ポンプ電極は、前記ポンプ電極の中心に対して前記前端側に位置する前端側領域と、前記ポンプ電極の中心に対して前記前端側の反対である後端側に位置する後端側領域とを有し、
前記ポンプ電極は、前記後端側領域の一部で、前記積層体を構成する複数の層のうちの第1層と、前記第1層に隣接する第2層との間に少なくとも挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって被覆され、
前記ポンプ電極のうちの前記被測定ガス流路内に露出している部分の面積は、4mm以上であり、
前記前端側領域のうちの前記被測定ガス流路内に露出している部分の面積は、前記後端側領域のうちの前記被測定ガス流路内に露出している部分の面積より大きい、ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサにおいて、
前記積層体は、前記第2層に隣接する第3層を更に含み、
前記被測定ガス流路は、前記第2層に形成されており、
前記被測定ガス流路の底面と天面とは、前記第1層と前記第3層とによって区画されており、
前記被測定ガス流路の側面は、前記第2層によって区画されており、
前記ポンプ電極は、前記被測定ガス流路の底面に形成された底面側ポンプ電極と、前記被測定ガス流路の天面に形成された天面側ポンプ電極とを含み、
前記底面側ポンプ電極及び前記天面側ポンプ電極のうちの一方は、前記後端側領域のうちの一部で、前記第1層と前記第2層との間に挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって被覆され、
前記底面側ポンプ電極及び前記天面側ポンプ電極のうちの他方は、前記後端側領域のうちの一部で、前記第2層と前記第3層との間に挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって被覆されている、ガスセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスセンサにおいて、
前記ポンプ電極のうちの前記被測定ガス流路内に露出していない部分の面積の、前記ポンプ電極の総面積に対する比率は、5~50%である、ガスセンサ。
【請求項4】
請求項3に記載のガスセンサにおいて、
前記ポンプ電極のうちの前記被測定ガス流路内に露出していない部分の面積の、前記ポンプ電極の総面積に対する比率は、10~50%である、ガスセンサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記ポンプ電極の平面形状は矩形であり、
前記ポンプ電極のうちの前記第1層と前記第2層との間に挟み込まれた部分、又は、前記ポンプ電極のうちの前記被覆層によって被覆された部分は、前記被測定ガス流路の前記長手方向に沿った前記ポンプ電極の中心線を中心として、前記ポンプ電極の両側に少なくとも位置している、ガスセンサ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記ポンプ電極は、前記前端側領域のうちの少なくとも一部で、前記第1層と前記第2層との間に更に挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって更に被覆されている、ガスセンサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記ポンプ電極のうちの前記前端側の端部が、前記第1層と前記第2層との間に挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって更に被覆されている、ガスセンサ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記ポンプ電極のうちの前記後端側の端部が、前記第1層と前記第2層との間に更に挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の前記内面に形成された被覆層によって更に被覆されている、ガスセンサ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記第1層及び前記第2層は、固体電解質から成る、ガスセンサ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載のガスセンサにおいて、
前記第1層は、固体電解質から成り、
前記第2層は、絶縁体から成る、ガスセンサ。
【請求項11】
請求項2に記載のガスセンサにおいて、
前記第3層は、固体電解質から成る、ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)等の濃度を測定し得る積層型ガスセンサ素子が開示されている。特許文献1に開示された積層型ガスセンサ素子には、被測定ガスが導入される被測定ガス室と、被測定ガス室に面するように設けられたポンプ電極を有する酸素ポンプセルと、被測定ガス室内の特定ガス濃度を検出するセンサセルとが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-151018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のガスセンサでは、ポンプ電極が剥離してしまう場合があった。ポンプ電極が剥離してしまうと、検出精度の低下を招き、更には、検出が不能となってしまうこともある。ポンプ電極の剥離を防止すべく、ポンプ電極の周縁を埋設することも考えられるが、ポンプ電極の周縁を単に埋設した場合には、必ずしも良好な性能が得られない。
【0005】
本発明の目的は、良好な性能を確保しつつポンプ電極の剥離を抑制し得るガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によるガスセンサは、固体電解質から成る層を少なくとも一つ以上含む積層体と、前記積層体内に形成され、前記積層体の長手方向の一方である前端側に位置するガス導入口を介して導入される被測定ガスが流通する被測定ガス流路と、前記被測定ガス流路の長手方向に沿うように形成され、前記被測定ガス流路内に露出するポンプ電極と、を備え、前記ポンプ電極は、前記ポンプ電極の中心に対して前記前端側に位置する前端側領域と、前記ポンプ電極の中心に対して前記前端側の反対である後端側に位置する後端側領域とを有し、前記ポンプ電極は、前記後端側領域の一部で、前記積層体を構成する複数の層のうちの第1層と、前記第1層に隣接する第2層との間に少なくとも挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって被覆され、前記ポンプ電極のうちの前記被測定ガス流路内に露出している部分の面積は、4mm以上であり、前記前端側領域のうちの前記被測定ガス流路内に露出している部分の面積は、前記後端側領域のうちの前記被測定ガス流路内に露出している部分の面積より大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な性能を確保しつつポンプ電極の剥離を抑制し得るガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態によるガスセンサの例を示す断面図である。
図2】一実施形態によるガスセンサの一部を示す断面図である。
図3図3A及び図3Bは、一実施形態によるセンサ素子の一部の例を示す断面図である。
図4図4A図4Fは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
図5図5A及び図5Bは、一実施形態によるセンサ素子の一部の例を示す断面図である。
図6図6A及び図6Bは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
図7図7A図7Dは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
図8図8A図8Cは、一実施形態によるセンサ素子の一部の例を示す断面図である。
図9】試験結果を示す表を示す図である。
図10】試験結果を示す表を示す図である。
図11】変形実施形態によるガスセンサの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特許文献1に開示されているような従来のガスセンサにおいては、ポンプ電極を長期間に亘って繰り返し使用すると、ポンプ電極に含まれている白金(Pt)が酸化され、酸化白金が生成される。酸化白金は白金に比べて昇華しやすいため、ポンプ電極において酸化白金が生成されると、当該酸化白金が昇華し、ポンプ電極の剥離が生じる。
【0010】
ポンプ電極の剥離を防止すべく、ポンプ電極の周縁を埋設することが考えられる。しかしながら、ポンプ電極の周縁を単に埋設すると、ポンプ電極と被測定ガスとが接する面積が小さくなり、結果としてポンプ電圧が上昇してしまう。ポンプ電圧が上昇してしまうと、測定電極よりも上流側において窒素酸化物が分解されてしまい、検出精度の低下を招いてしまう。
【0011】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、以下のようなガスセンサを想到した。本願発明者らが想到した以下のようなガスセンサによれば、後述するように、測定電極よりも上流において窒素酸化物が分解されてしまうのを抑制しつつ、ポンプ電極の剥離耐性を向上させることができる。
【0012】
本発明によるガスセンサについて、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0013】
[一実施形態]
一実施形態によるガスセンサについて図1図10を用いて説明する。図1は、本実施形態によるガスセンサの例を示す断面図である。図2は、本実施形態によるガスセンサの一部を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、ガスセンサ10には、センサ素子12が備えられている。センサ素子12の形状は、例えば長尺な直方体形状である。センサ素子12の長手方向、即ち、図2の紙面左右方向を前後方向とする。センサ素子12の厚み方向、即ち、図2の紙面上下方向を上下方向とする。センサ素子12の幅方向、即ち、前後方向及び上下方向に垂直な方向を左右方向とする。
【0015】
ガスセンサ10には、センサ素子12の長手方向の一方である前端側を保護する保護カバー14が更に備えられている。ガスセンサ10には、セラミックハウジング16を含むセンサ組立体20が更に備えられている。セラミックハウジング16には、金属端子18が装着されている。金属端子18は、センサ素子12の後端部を保持するとともにセンサ素子12に電気的に接続される。セラミックハウジング16に金属端子18が装着されることによって、コネクタ24が構成されている。
【0016】
ガスセンサ10は、例えば、車両の排ガス管等の配管26に取り付けられ得る。ガスセンサ10は、被測定ガスである排気ガス等に含まれる特定ガスの濃度を測定するために用いられ得る。特定ガスとしては、例えば、窒素酸化物、酸素(O)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0017】
保護カバー14には、内側保護カバー14aと、外側保護カバー14bとが備えられている。内側保護カバー14aは、センサ素子12の前端を覆う有底筒状の保護カバーである。外側保護カバー14bは、内側保護カバー14aを覆う有底筒状の保護カバーである。内側保護カバー14a及び外側保護カバー14bには、被測定ガスを保護カバー14内に流通させるための複数の孔が形成されている。内側保護カバー14aで囲まれた空間内、即ち、センサ素子室28内に、センサ素子12の前端が位置している。
【0018】
センサ組立体20には、センサ素子12を封入固定する素子封止体30が備えられている。また、センサ組立体20には、素子封止体30に取り付けられたナット32が更に備えられている。センサ組立体20には、外筒34と、コネクタ24とが更に備えられている。コネクタ24に備えられた金属端子18は、センサ素子12の後端の表面、即ち、センサ素子12の後端の上面及び下面に形成された不図示の電極に接続されている。
【0019】
素子封止体30には、筒状の主体金具40と、筒状の内筒42とが備えられている。主体金具40の中心軸と内筒42の中心軸とは一致している。主体金具40と内筒42とは、溶接固定されている。主体金具40及び内筒42の内側の貫通孔内には、セラミックスサポータ44a~44cと、圧粉体46a、46bと、メタルリング48とが封入されている。センサ素子12は、素子封止体30の中心軸上に位置しており、素子封止体30を前後方向に貫通している。内筒42には、縮径部42a、42bが形成されている。縮径部42aは、圧粉体46bを内筒42の中心軸方向に押圧するためのものである。縮径部42bは、メタルリング48を介してセラミックスサポータ44a~44c、圧粉体46a、46bを前方に押圧するためのものである。縮径部42a、42bからの押圧力によって、主体金具40とセンサ素子12との間、及び、内筒42とセンサ素子12との間で、圧粉体46a、46bが圧縮される。これにより、保護カバー14内のセンサ素子室28と外筒34内の空間50との間が圧粉体46a、46bによって封止されるとともに、センサ素子12が固定される。
【0020】
ナット32は、主体金具40に固定されている。ナット32の中心軸と主体金具40の中心軸とは一致している。ナット32の外周面には、雄ネジ部が形成されている。配管26に溶接された固定用部材52の内周面には、雌ネジ部が形成されている。ナット32の外周面に形成された雄ネジ部は、内周面に雌ネジ部が形成された固定用部材52内に挿入されている。これにより、保護カバー14によって保護されたセンサ素子12の前端が配管26内に突出している状態で、ガスセンサ10が配管26に固定されている。
【0021】
外筒34は、内筒42、センサ素子12、及び、コネクタ24の周囲を覆っている。コネクタ24に接続された複数のリード線54が、外筒34の後端から外部に引き出されている。リード線54は、コネクタ24を介してセンサ素子12の各電極に導通している。外筒34とリード線54との隙間は、グロメット等によって形成された弾性絶縁部材56によって封止されている。外筒34内の空間50は基準ガス、即ち、大気によって満たされている。センサ素子12の後端は、空間50内に位置している。
【0022】
図2に示すように、センサ素子12は、複数の層60、62、64、66、68、70から成る積層体13を有する。第1基板層60上には、第2基板層62が積層されている。第2基板層62上には、第3基板層64が積層されている。第3基板層64上には、固体電解質層66が積層されている。固体電解質層66上には、スペーサ層68が積層されている。スペーサ層68上には、固体電解質層70が積層されている。これらの層60、62、64、66、68、70の材料として、例えば固体電解質、より具体的には、酸素イオン伝導性の固体電解質が用いられている。酸素イオン伝導性の固体電解質としては、例えばジルコニア(ZrO)等が挙げられ得る。これらの層60、62、64、66、68、70は、気密性が高い。センサ素子12は、以下のように製造され得る。即ち、各層に対応するセラミックスグリーンシートに対して所定の加工及び所定のパターンの印刷等を行う。この後、これらのセラミックスグリーンシートを積層する。この後、焼成によってこれらのセラミックスグリーンシートを一体化する。こうして、センサ素子12が製造され得る。なお、これらの層60、62、64、66、68、70の材料は、固体電解質に限定されるものではない。例えば、スペーサ層68が絶縁体層等であってもよい。絶縁体層の材料としては、例えばアルミナ等が挙げられ得る。
【0023】
センサ素子12の内部には、被測定ガスが流通する被測定ガス流路79、即ち、被測定ガス流通部が形成されている。被測定ガス流路79における被測定ガスの流通方向は、被測定ガス流路79の長手方向である。被測定ガス流路79は、スペーサ層68に形成されている。即ち、被測定ガス流路79は、スペーサ層68の一部をくり抜いた態様によって構成されている。被測定ガス流路79の側面は、スペーサ層68によって区画されている。被測定ガス流路79の底面、即ち、下面は、固体電解質層66の上面によって区画されている。被測定ガス流路79の天面、即ち、上面は、固体電解質層70の下面によって区画されている。被測定ガス流路79の一端、即ち、図2の左側の部分は、被測定ガスが導入される導入口、即ち、ガス導入口80である。ガス導入口80は、センサ素子12の長手方向の一方の側である前端側、即ち、積層体13の長手方向の一方の側である前端側に位置している。
【0024】
被測定ガス流路79においては、ガス導入口80の後段に、第1拡散律速部82が備えられている。第1拡散律速部82には、例えば2本のスリットが備えられている。当該スリットの長手方向は、例えば、図2における紙面垂直方向である。第1拡散律速部82の後段には、緩衝空間84が備えられている。緩衝空間84の後段には、第2拡散律速部86が備えられている。第2拡散律速部86には、例えば2本のスリットが備えられている。当該スリットの長手方向は、例えば、図2における紙面垂直方向である。第2拡散律速部86の後段には、第1内部空所88が備えられている。第1内部空所88は、第2拡散律速部86を介して緩衝空間84に連通している。第1内部空所88の後段には、第3拡散律速部90が備えられている。第3拡散律速部90には、例えば2本のスリットが備えられている。当該スリットの長手方向は、例えば、図2における紙面垂直方向である。第3拡散律速部90の後段には、第2内部空所92が備えられている。第2内部空所92は、第3拡散律速部90を介して第1内部空所88に連通している。第2内部空所92の後段には、第4拡散律速部94が備えられている。第4拡散律速部94には、例えば1本のスリットが備えられている。当該スリットの長手方向は、例えば、図2における紙面垂直方向である。第4拡散律速部94の後段には、第3内部空所96が備えられている。第3内部空所96は、第4拡散律速部94を介して第2内部空所92に連通している。なお、第1拡散律速部82、第2拡散律速部86、第3拡散律速部90、及び、第4拡散律速部94のうちの少なくともいずれかを、多孔質体によって構成するようにしてもよい。
【0025】
センサ素子12の内部には、基準ガス導入空間98が形成されている。上述した被測定ガス流路79は、センサ素子12の長手方向における一方の側に位置しており、基準ガス導入空間98は、センサ素子12の長手方向における他方の側に位置している。即ち、被測定ガス流路79は、センサ素子12の前端側に位置しており、基準ガス導入空間98は、センサ素子12の後端側に位置している。基準ガス導入空間98は、固体電解質層66の一部をくり抜いた態様によって構成されている。基準ガス導入空間98の側面は、固体電解質層66によって区画されている。基準ガス導入空間98の下面は、第3基板層64の上面によって区画されている。基準ガス導入空間98の上面は、スペーサ層68の下面によって区画されている。基準ガス導入空間98には、基準ガスが導入され得る。空間50(図1参照)内の雰囲気が、基準ガスとなり得る。窒素酸化物の濃度を測定する際の基準ガスは、例えば大気である。
【0026】
センサ素子12の内部には、大気導入層100が備えられている。大気導入層100は、例えば、第3基板層64と固体電解質層66との間に備えられている。大気導入層100の材料としては、多孔質材料が用いられている。より具体的には、例えば、多孔質アルミナ等の多孔質セラミックスが大気導入層100の材料として用いられ得る。大気導入層100の一部は、基準ガス導入空間98内に露出している。大気導入層100には、基準ガス導入空間98を介して基準ガスが導入され得る。大気導入層100は、後述する基準電極102を被覆するように形成されている。大気導入層100は、基準ガス導入空間98内の基準ガスに対して所定の拡散抵抗を付与しつつ、当該基準ガスを基準電極102に到達させる。大気導入層100のうちの後端部は、基準ガス導入空間98内に露出している。大気導入層100のうちの基準電極102を被覆している部分は、基準ガス導入空間98内に露出していない。
【0027】
第3基板層64の上面には、基準電極102が形成されている。基準電極102は、第3基板層64上に直接形成されている。基準電極102の周囲には、基準ガス導入空間98につながる大気導入層100が形成されている。基準電極102のうちの第3基板層64に接する部分以外の部分は、大気導入層100によって覆われている。後述するように、第1内部空所88内の酸素濃度(酸素分圧)、第2内部空所92内の酸素濃度、及び、第3内部空所96内の酸素濃度は、基準電極102を用いて測定され得る。基準電極102の材料としては、例えば、多孔質のサーメット(Cermet)が用いられ得る。サーメットは、セラミックスと金属とを複合させた材料である。例えば、白金とジルコニアとのサーメットが基準電極102の材料として用いられ得る。
【0028】
ガス導入口80は、外部空間に対して開口している。ガス導入口80を介して外部空間からセンサ素子12内に被測定ガスが取り込まれ得る。第1拡散律速部82は、ガス導入口80から取り込まれる被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する。緩衝空間84は、第1拡散律速部82より導入された被測定ガスを第2拡散律速部86へと導く。第2拡散律速部86は、緩衝空間84から第1内部空所88に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する。ガス導入口80を介してセンサ素子12の内部に取り込まれる被測定ガスは、第1拡散律速部82、緩衝空間84、及び、第2拡散律速部86を介して、第1内部空所88に導入される。外部空間における圧力変動によって被測定ガスがセンサ素子12の内部に急激に取り込まれる場合がある。被測定ガスが自動車の排気ガスである場合には、排気圧の脈動がかかる圧力変動に対応する。外部空間における圧力変動によって被測定ガスがセンサ素子12の内部に急激に取り込まれた場合であっても、被測定ガスの濃度変動は、第1拡散律速部82、緩衝空間84、及び、第2拡散律速部86を通過する際に打ち消される。濃度変動が打ち消された被測定ガスが第1内部空所88に導入されるため、第1内部空所88に導入される被測定ガスの濃度変動は殆ど無視し得る程度となる。第1内部空所88は、第2拡散律速部86を介して導入される被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間である。かかる酸素分圧は、後述する主ポンプセル110が作動することによって調整され得る。
【0029】
センサ素子12には、主ポンプセル110が更に備えられている。主ポンプセル110は、ポンプ電極112と、外側ポンプ電極114と、ポンプ電極112と外側ポンプ電極114との間に挟み込まれた固体電解質層70とによって構成された電気化学的ポンプセルである。ポンプ電極112は、被測定ガス流路79における被測定ガスの流通方向に沿うように被測定ガス流路79内に配されている。外側ポンプ電極114は、積層体13の外側に配されている。ポンプ電極112は、第1内部空所88の内面に形成されている。外側ポンプ電極114は、固体電解質層70の上面に形成されている。外側ポンプ電極114は、ポンプ電極112が形成された領域に対応する領域に形成されている。外側ポンプ電極114は、外部空間、即ち、図1におけるセンサ素子室28内に露出している。
【0030】
ポンプ電極112の平面形状は、例えば矩形である。ポンプ電極112は、第1内部空所88の底面と天面とにそれぞれ形成された複数の電極によって構成され得る。即ち、ポンプ電極112は、天面側ポンプ電極112aと、底面側ポンプ電極112bとによって構成され得る。天面側ポンプ電極112aと、底面側ポンプ電極112bとは、不図示のパターン等によって電気的に接続されている。ポンプ電極112の長手方向の中心線CL(図4A参照)は、第1内部空所88の長手方向の中心軸と平面視において一致している。天面側ポンプ電極112aは、第1内部空所88の天面、即ち、固体電解質層70の下面に形成されている。底面側ポンプ電極112bは、第1内部空所88の底面、即ち、固体電解質層66の上面に形成されている。
【0031】
ポンプ電極112及び外側ポンプ電極114の材料としては、例えば、多孔質のサーメットが用いられ得る。例えば、金(Au)を1%含む白金とジルコニアとのサーメットがポンプ電極112及び外側ポンプ電極114の材料として用いられ得る。なお、被測定ガスに接触するポンプ電極112としては、被測定ガス中の窒素酸化物に対する還元力が弱められた材料が用いられることが好ましい。金を1%含む白金とジルコニアとのサーメットは、被測定ガス中の窒素酸化物に対する還元力が弱められた材料である。
【0032】
主ポンプセル110においては、ポンプ電極112と外側ポンプ電極114との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加すると、ポンプ電極112と外側ポンプ電極114との間に正方向又は負方向のポンプ電流Ip0が流れる。これに伴い、第1内部空所88内の酸素が外部空間に汲み出され、又は、外部空間の酸素が第1内部空所88内に汲み入れられ得る。
【0033】
センサ素子12には、酸素分圧検出センサセル120、即ち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセルが更に備えられている。酸素分圧検出センサセル120は、第1内部空所88内の雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するための電気化学的センサセルである。酸素分圧検出センサセル120は、ポンプ電極112と、固体電解質層66、70と、スペーサ層68と、基準電極102とによって構成されている。
【0034】
酸素分圧検出センサセル120における起電力V0を検出することで、第1内部空所88内の雰囲気中の酸素濃度を把握し得る。更に、当該起電力V0が一定となるように可変電源122のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することで、ポンプ電流Ip0が制御され得る。これにより、第1内部空所88内の酸素濃度が所定の一定値に保持され得る。
【0035】
第3拡散律速部90は、第1内部空所88から第2内部空所92に導入される被測定ガスに対して所定の拡散抵抗を付与するとともに、当該被測定ガスを第2内部空所92に導く。上述したように、第1内部空所88の雰囲気中の酸素濃度は、主ポンプセル110によって制御され得る。第3拡散律速部90は、主ポンプセル110によって酸素濃度が制御された被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する。
【0036】
第2内部空所92は、第1内部空所88において酸素濃度が予め調整された被測定ガスに対して酸素濃度の更なる調整を行うための空間である。即ち、第3拡散律速部90を介して第2内部空所92に導入される被測定ガスに対して、更なる酸素濃度の調整が行われる。第2内部空所92において行われる更なる酸素濃度の調整は、後述する補助ポンプセル124によって行われ得る。第2内部空所92内の酸素濃度が高精度に一定に保たれ得るため、ガスセンサ10は、窒素酸化物の濃度を高精度に測定し得る。
【0037】
センサ素子12には、補助ポンプセル124が更に備えられている。補助ポンプセル124は、補助的な電気化学的ポンプセルである。補助ポンプセル124は、補助ポンプ電極126と、外側ポンプ電極114と、固体電解質層70とによって構成されている。補助ポンプ電極126は、第2内部空所92の内面に形成されている。なお、外側ポンプ電極114と別個に設けられた外側電極が補助ポンプセル124に用いられるようにしてもよい。
【0038】
補助ポンプ電極126は、筒状に形成されている。補助ポンプ電極126の長手方向の中心線は、第2内部空所92の長手方向の中心軸と平面視において一致している。補助ポンプ電極126は、天面側電極部126aと、底面側電極部126bと、不図示の側面側電極部とが一体的に形成されることによって構成されている。天面側電極部126aは、第2内部空所92の天面、即ち、固体電解質層70の下面に形成されている。底面側電極部126bは、第2内部空所92の底面、即ち、固体電解質層66の上面に形成されている。側面側電極部は、第2内部空所92の両側の側壁部、即ち、スペーサ層68の側壁面、即ち、内面に形成されている。なお、補助ポンプ電極126には、ポンプ電極112と同様に、被測定ガス中の窒素酸化物に対する還元力が弱められた材料が用いられることが好ましい。
【0039】
補助ポンプセル124においては、可変電源132によって補助ポンプ電極126と外側ポンプ電極114との間に電圧Vp1が印加されると、補助ポンプ電極126と外側ポンプ電極114との間に正方向又は負方向のポンプ電流Ip1が流れる。これに伴い、第2内部空所92内の酸素が外部空間に汲み出され、又は、外部空間の酸素が第2内部空所92内に汲み入れられ得る。
【0040】
センサ素子12には、酸素分圧検出センサセル130、即ち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセルが更に備えられている。酸素分圧検出センサセル130は、第2内部空所92内の雰囲気中の酸素濃度を制御するための電気化学的センサセルである。酸素分圧検出センサセル130は、補助ポンプ電極126と、基準電極102と、固体電解質層66、70と、スペーサ層68とによって構成されている。
【0041】
酸素分圧検出センサセル130によって検出される起電力V1に基づいて、電圧Vp1が制御される。上述したように、補助ポンプセル124においては、補助ポンプ電極126と外側ポンプ電極114との間に印加される電圧Vp1に応じて、補助ポンプ電極126と外側ポンプ電極114との間にポンプ電流Ip1が流れる。こうして、酸素のポンピングが行われ得る。第2内部空所92内の雰囲気中の酸素分圧は、窒素酸化物の濃度の測定に実質的に影響がない程度にまで低く制御され得る。
【0042】
ポンプ電流Ip1を示す信号は、酸素分圧検出センサセル120に入力され得る。酸素分圧検出センサセル120は、起電力V0を示す信号を、ポンプ電流Ip1を示す信号に基づいて制御する。第3拡散律速部90を介して第2内部空所92内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるような制御が、このようにして行われ得る。ガスセンサ10が窒素酸化物の濃度を測定するガスセンサである場合、第2内部空所92内の雰囲気中における酸素濃度は、主ポンプセル110及び補助ポンプセル124の働きによって、例えば約0.001ppm程度の一定の値に設定され得る。
【0043】
第4拡散律速部94は、第2内部空所92から第3内部空所96に導入される被測定ガスに対して所定の拡散抵抗を付与するとともに、当該被測定ガスを第3内部空所96に導く。上述したように、第2内部空所92の雰囲気中の酸素濃度は、補助ポンプセル124によって制御され得る。第4拡散律速部94は、補助ポンプセル124によって酸素濃度が制御された被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する。第4拡散律速部94は、第3内部空所96に流入する窒素酸化物の量を制限する役割をも担う。
【0044】
第3内部空所96には、第2内部空所92において酸素濃度が予め調整された被測定ガスが、第4拡散律速部94を介して導入される。第3内部空所96は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度、即ち、窒素酸化物の濃度を検出するための空間である。窒素酸化物の濃度の測定は、後述する測定用ポンプセル140を動作させることによって行われ得る。
【0045】
センサ素子12には、測定用ポンプセル140が更に備えられている。測定用ポンプセル140は、第3内部空所96内に導入された被測定ガス中の窒素酸化物の濃度の測定を行うための電気化学的ポンプセルである。測定用ポンプセル140は、測定電極134と、外側ポンプ電極114と、固体電解質層66、70と、スペーサ層68とによって構成されている。測定電極134は、固体電解質層66の上面に形成されている。測定電極134の材料としては、例えば多孔質のサーメットが用いられ得る。測定電極134は、第3内部空所96内の雰囲気中に存在する窒素酸化物を還元する触媒として機能する。
【0046】
測定用ポンプセル140は、測定電極134の周囲の雰囲気中における窒素酸化物を分解することによって生じる酸素を汲み出す。測定用ポンプセル140によって汲み出される酸素量に応じたポンプ電流Ip2が検出され得る。
【0047】
センサ素子12には、酸素分圧検出センサセル142、即ち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセルが更に備えられている。酸素分圧検出センサセル142は、測定電極134の周囲の酸素分圧を検出するための電気化学的センサセルである。酸素分圧検出センサセル142は、固体電解質層66と、測定電極134と、基準電極102とによって構成されている。酸素分圧検出センサセル142によって検出される起電力V2に基づいて可変電源144が制御され得る。
【0048】
第2内部空所92内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で、第4拡散律速部94を通じて第3内部空所96の測定電極134に到達する。測定電極134の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物が測定電極134によって還元され(2NO→N+O)、測定電極134の周囲において酸素が発生する。発生した酸素は、測定用ポンプセル140によってポンピングされる。この際、酸素分圧検出センサセル142によって検出される起電力V2が一定となるように、可変電源144の電圧Vp2が制御される。測定電極134の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例する。このため、測定用ポンプセル140におけるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度が算出され得る。
【0049】
センサ素子12には、センサセル146が更に備えられている。センサセル146は、第3基板層64と、固体電解質層66、70と、スペーサ層68と、外側ポンプ電極114と、基準電極102とによって構成された電気化学的なセンサセルである。センサセル146によって得られる起電力Vrefに基づいて、センサ素子12の外部における被測定ガス中の酸素分圧が検出され得る。
【0050】
センサ素子12には、基準ガス調整ポンプセル150が更に備えられている。基準ガス調整ポンプセル150は、第3基板層64と、固体電解質層66、70と、スペーサ層68と、外側ポンプ電極114と、基準電極102とによって構成された電気化学的なポンプセルである。基準ガス調整ポンプセル150は、外側ポンプ電極114と基準電極102との間に接続された可変電源152によって印加される電圧Vp3によって制御電流Ip3が流れることで、ポンピングを行う。基準ガス調整ポンプセル150は、外側ポンプ電極114の周囲に位置するセンサ素子室28(図1参照)から基準電極102の周囲に位置する大気導入層100に酸素の汲み入れを行い得る。可変電源152の電圧Vp3は、制御電流Ip3が所定の値、即ち、一定値の直流電流となるような直流電圧として、予め定められている。
【0051】
このようなガスセンサ10においては、主ポンプセル110と補助ポンプセル124とが作動することによって、酸素分圧が一定の低い値に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル140に与えられる。即ち、窒素酸化物の濃度の測定に実質的に影響がない値に酸素分圧が保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル140に与えられる。そして、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度にほぼ比例する量の酸素が、窒素酸化物の還元によって発生する。こうして発生する酸素は、測定用ポンプセル140より汲み出される。測定用ポンプセル140によって汲み出された酸素の量に応じてポンプ電流Ip2が流れるため、当該ポンプ電流Ip2に基づいて被測定ガス中の窒素酸化物の濃度を検出することが可能である。
【0052】
センサ素子12には、センサ素子12を加熱して保温するヒータ部160が更に備えられている。ヒータ部160は、センサ素子12の温度調整の役割を担う。センサ素子12に備えられた固体電解質を加熱することにより、当該固体電解質における酸素イオン伝導性を高め得る。ヒータ部160には、ヒータコネクタ電極162と、ヒータ164と、スルーホール166と、ヒータ絶縁層168と、圧力放散孔170と、リード線172とが備えられている。
【0053】
ヒータコネクタ電極162は、例えば、第1基板層60の下面に形成されている。ヒータコネクタ電極162を外部電源に電気的に接続することによって、外部電源からヒータ部160に対して給電が行われ得る。
【0054】
ヒータ164は、第2基板層62と第3基板層64とによって上下から挟み込まれている。ヒータ164は、例えば電気抵抗体によって形成されている。ヒータ164は、リード線172及びスルーホール166を介してヒータコネクタ電極162に接続されている。ヒータ164は、ヒータコネクタ電極162を介して外部から給電されることにより発熱する。ヒータ164は、センサ素子12を形成する固体電解質に対して加熱及び保温を行い得る。
【0055】
第1内部空所88から第3内部空所96に至る領域は、ヒータ164が形成された領域と平面視において重なり合っている。このため、センサ素子12に備えられた固体電解質のうちの活性化を要する部分が、ヒータ164によって充分に活性化され得る。
【0056】
ヒータ絶縁層168は、ヒータ164の上面、下面及び側面を覆うように形成されている。ヒータ絶縁層168の材料としては、例えば絶縁体が用いられ得る。より具体的には、ヒータ絶縁層168の材料として、例えば多孔質アルミナ等が用いられ得る。ヒータ絶縁層168は、第2基板層62とヒータ164との間の電気的絶縁性、及び、第3基板層64とヒータ164との間の電気的絶縁性を確保するために備えられている。
【0057】
圧力放散孔170は、第3基板層64及び大気導入層100を貫通し、基準ガス導入空間98に連通している。圧力放散孔170は、ヒータ絶縁層168の温度上昇に伴う内圧の上昇を緩和する目的で形成されている。
【0058】
なお、可変電源122、132、144、152等は、実際には、センサ素子12内に形成された不図示のリード線、コネクタ24(図1参照)及びリード線54(図1参照)を介して、各電極に接続されている。
【0059】
図3A及び図3Bは、本実施形態によるセンサ素子の一部の例を示す断面図である。図3Aは、図2のIIIA-IIIA断面に対応している。図3Bには、センサ素子12の長手方向に沿った断面が示されている。図4Aは、後述する被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
【0060】
図3A及び図3Bに示すように、第1内部空所88の天面には、天面側ポンプ電極112aが形成されている。第1内部空所88の底面には、底面側ポンプ電極112bが形成されている。天面側ポンプ電極112aと底面側ポンプ電極112bとによってポンプ電極112が構成されている。天面側ポンプ電極112a及び底面側ポンプ電極112bの長手方向の中心線、即ち、ポンプ電極112の長手方向の中心線CLは、第1内部空所88の長手方向の中心軸と平面視において一致している。なお、第1内部空所88の長手方向の中心軸は、被測定ガス流路79の長手方向の中心軸と一致している。
【0061】
被測定ガス流路79の長手方向に交差する仮想の線VL、より具体的には、被測定ガス流路79の長手方向に直交する仮想の線VLによってポンプ電極112を2等分した際、ポンプ電極112は、以下のようになる。即ち、かかる際、ポンプ電極112は、図4Aに示すように、前端側に位置する前端側領域112Fと、前端側の反対である後端側に位置する後端側領域112Rとに区分けされる。換言すれば、ポンプ電極112は、ポンプ電極112の中心に対して前端側に位置する前端側領域112Fと、ポンプ電極112の中心に対して後端側に位置する後端側領域112Rとを有する。上述したように、ポンプ電極112は、天面側ポンプ電極112aと、底面側ポンプ電極112bとによって構成され得る。天面側ポンプ電極112aは、前端側領域112aFと、後端側領域112aRとを有する。底面側ポンプ電極112bは、前端側領域112bFと、後端側領域112bRとを有する。
【0062】
ポンプ電極112の少なくとも一部は、図3A及び図3Bに示すように、積層体13(図2参照)に埋め込まれている。即ち、ポンプ電極112の少なくとも一部は、図3A及び図3Bに示すように、スペーサ層68と固体電解質層66、70とによって挟み込まれている。より具体的には、図3Bに示すように、ポンプ電極112が、後端側領域112Rの一部で、スペーサ層68と固体電解質層66、70とによって挟み込まれている。即ち、天面側ポンプ電極112aが、後端側領域112aR(図4A参照)の一部で、スペーサ層68と固体電解質層70とによって挟み込まれている。また、底面側ポンプ電極112bが、後端側領域112bR(図4A参照)の一部で、スペーサ層68と固体電解質層66とによって挟み込まれている。ポンプ電極112のうちの積層体13によって挟み込まれた部分は、被挟持部と称される。本実施形態において、ポンプ電極112の一部をスペーサ層68と固体電解質層66、70とによって挟み込んでいるのは、以下のような理由によるものである。即ち、ポンプ電極112を長期間に亘って繰り返し使用すると、ポンプ電極112に含まれている白金が酸化され、酸化白金が生成される場合がある。高温等の過酷な使用環境においては、白金はより酸化されやすく、従って、酸化白金はより生成されやすい。酸化白金は白金に比べて昇華しやすいため、ポンプ電極112において酸化白金が生成されると、当該酸化白金が昇華し、ポンプ電極112と固体電解質層66、70との境界面において剥離が生じる場合がある。そこで、本実施形態では、ポンプ電極112の剥離を防止すべく、ポンプ電極112の一部をスペーサ層68と固体電解質層66、70とによって挟み込んでいる。
【0063】
図4Aに示す例においては、被挟持部180、即ち、被挟持部180a、180bが、ポンプ電極112の中心線CLを中心として、ポンプ電極112の両側に位置している。被挟持部一般について説明する際には、符号180を用い、個々の被挟持部について説明する際には、符号180a、180b等を用いる。被挟持部180a、180bの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に沿う方向である。図4Aに示す例においては、被挟持部180a、180bの前端は、ポンプ電極112を2等分する仮想の線VLと一致している。図4Aに示す例においては、被挟持部180a、180bの後端は、ポンプ電極112の後端と一致している。図4Aに示す例においては、ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rにのみ被挟持部180が配されている。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rにのみ被挟持部180が配されているこのようなレイアウトを、タイプAのレイアウトと称することとする。
【0064】
ポンプ電極112の剥離を防止するためには、被挟持部180の面積をある程度確保することが好ましい。具体的には、被挟持部180の面積のポンプ電極112の総面積に対する比率は、5%以上であることが好ましい。更には、被挟持部180の面積のポンプ電極112の総面積に対する比率は、10%以上であることがより好ましい。
【0065】
被挟持部180の面積を過度に大きくすると、ポンプ電極112と固体電解質層66、70との熱膨張率の差に起因するクラックがポンプ電極112に生じるため、被挟持部180の面積を過度に大きく設定しないことが好ましい。具体的には、被挟持部180の面積を50%以下とすることが好ましい。
【0066】
このような理由により、被挟持部180の面積のポンプ電極112の総面積に対する比率は、5~50%であることが好ましく、10~50%であることがより好ましい。即ち、ポンプ電極112のうちの被測定ガス流路79内に露出していない部分の面積のポンプ電極112の総面積に対する比率は、5~50%であることが好ましく、10~50%であることがより好ましい。
【0067】
また、本実施形態では、充分なポンプ能力を得るべく、ポンプ電極112のうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積を、4mm以上としている。上述したように、ポンプ電極112は、天面側ポンプ電極112aと底面側ポンプ電極112bとによって構成されている。従って、天面側ポンプ電極112aのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積を例えば2mm以上とするとともに、底面側ポンプ電極112bのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積を例えば2mm以上としている。
【0068】
また、本実施形態では、前端側領域112Fのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積を、後端側領域112Rのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積より大きくしている。これは、以下のような理由によるものである。即ち、前端側領域112Fにおける被測定ガスの酸素濃度は、後端側領域112Rにおける酸素濃度より高い。酸素濃度のより高い部位においてポンプ電極112の露出面積を大きく確保することは、ポンプ能力の充分な確保に資する。一方、前端側領域112Fのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積が、後端側領域112Rのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積に対して著しく小さい場合には、以下のようになる。即ち、このような場合、第1内部空所88内の雰囲気中の酸素濃度を的確に反映した起電力V0が得られず、ポンプ電圧Vp0の過度の上昇を招いてしまう。ポンプ電圧Vp0が過度に上昇してしまうと、第1内部空所88内の雰囲気中の酸素濃度が的確に制御されず、窒素酸化物の分解を招いてしまい、窒素酸化物の濃度を正確に検出し得ない。このような理由から、本実施形態では、前端側領域112Fのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積を、後端側領域112Rのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積より大きくしている。
【0069】
図5A及び図5Bは、本実施形態によるセンサ素子の一部の例を示す断面図である。図5Aは、図2のIIIA-IIIA断面に対応している。図5Bには、センサ素子12の長手方向に沿った断面が示されている。
【0070】
図5A及び図5Bに示す例においては、ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの一部が、被測定ガス流路79(図2参照)の内面に形成された被覆層182の一部によって被覆されている。ポンプ電極112のうちの被覆層182によって被覆された部分は、固体電解質層66、70と被覆層182とによって挟み込まれている。即ち、図5A及び図5Bに示す例においては、ポンプ電極112のうちの被覆層182によって被覆された部分が、被挟持部180(図4A参照)となる。図5A及び図5Bに示す例においても、図3A及び図3Bに示す例と同様に、図4Aに示すようなレイアウトで被挟持部180を配し得る。
【0071】
図4Bは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
【0072】
図4Bに示す例においては、被挟持部180、即ち、被挟持部180c、180dは、ポンプ電極112の中心線CLを中心として、ポンプ電極112の両側に位置している。被挟持部180c、180dの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に沿う方向である。図4Bに示す例においては、被挟持部180c、180dの前端は、ポンプ電極112を2等分する仮想の線VLに対して後端側に位置している。図4Bに示す例においては、被挟持部180c、180dの後端は、ポンプ電極112の後端に対して前端側に位置している。図4Bに示す例においては、ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rにのみ被挟持部180が配されている。従って、図4Bに示すレイアウトは、タイプAに属する。
【0073】
図4Cは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
【0074】
図4Cに示す例においては、被挟持部180、即ち、被挟持部180e、180fが、ポンプ電極112の中心線CLを中心として、ポンプ電極112の両側に位置している。当該被挟持部180e、180fの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に沿う方向である。また、図4Cに示す例においては、ポンプ電極112のうちの後端側の端部に被挟持部180、即ち、被挟持部180gが更に位置している。当該被挟持部180gの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に対して直交する方向である。ポンプ電極112の長手方向に直交する方向における当該被挟持部180gの寸法は、ポンプ電極112の長手方向に直交する方向におけるポンプ電極112の寸法と同等になっている。図4Cに示す例においては、被挟持部180e、180fの後端は、被挟持部180gが配されている部位に平面視において達している。図4Cに示す例においては、被挟持部180e、180fの前端は、ポンプ電極112を2等分する仮想の線VLと一致している。図4Cに示す例においては、ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rにのみ被挟持部180が配されている。従って、図4Cに示すレイアウトは、タイプAに属する。
【0075】
図4Dは、被挟持部のレイアウトを示す平面図である。
【0076】
図4Dに示す例においては、被挟持部180、即ち、被挟持部180h、180iが、ポンプ電極112の中心線CLを中心として、ポンプ電極112の両側に位置している。被挟持部180h、180iの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に沿う方向である。図4Dに示す例においては、被挟持部180h、180iの平面形状は三角形状になっている。図4Dに示す例においては、センサ素子12の前端側から後端側に向かって被挟持部180h、180iの幅が徐々に広くなっている。図4Dに示す例においては、被挟持部180hと被挟持部180iとの間隔は、センサ素子12の前端側から後端側に向かって小さくなっている。図4Dに示す例においては、ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rにのみ被挟持部180が配されている。従って、図4Dに示すレイアウトは、タイプAに属する。
【0077】
図4Eは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
【0078】
図4Eに示す例においては、被挟持部180、即ち、被挟持部180j、180kが、ポンプ電極112の中心線CLを中心として、ポンプ電極112の両側に位置している。被挟持部180j、180kの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に沿う方向である。図4Eに示す例においては、被挟持部180j、180kの後端は、ポンプ電極112の後端よりも前端側に位置している。また、図4Eに示す例においては、ポンプ電極112のうちの後端側の端部に被挟持部180、即ち、被挟持部180lが更に位置している。被挟持部180lの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に対して直交する方向である。ポンプ電極112の長手方向に直交する方向における被挟持部180lの寸法は、ポンプ電極112の長手方向に直交する方向におけるポンプ電極112の寸法より小さくなっている。図4Eに示す例においては、被挟持部180jと被挟持部180kと被挟持部180lとが互いに離間している。図4Eに示す例においては、被挟持部180j、180kの前端は、ポンプ電極112を2等分する仮想の線VLと一致している。図4Eに示す例においては、ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rにのみ被挟持部180が配されている。従って、図4Eに示すレイアウトは、タイプAに属する。
【0079】
図4Fは、被挟持部のレイアウトを示す平面図である。
【0080】
図4Fに示す例においても、被挟持部180、即ち、被挟持部180m、180nが、ポンプ電極112の中心線CLを中心として、ポンプ電極112の両側に位置している。被挟持部180m、180nの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に沿う方向である。図4Fに示す例においては、前端側から後端側に向かって被挟持部180m、180nの幅が徐々に広くなっている。図4Fに示す例においては、被挟持部180m、180nのうちの一部の形状が曲線状になっている。当該被挟持部180m、180nのうちの曲線状の部分は、ポンプ電極112の中心線CL側に位置している。図4Fに示す例においては、被挟持部180mと被挟持部180nとの間隔は、センサ素子12の前端側から後端側に向かって小さくなっている。図4Fに示す例においては、ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rにのみ被挟持部180が配されている。従って、図4Fに示すレイアウトは、タイプAに属する。
【0081】
図6Aは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
【0082】
図6Aに示す例においては、被挟持部180、即ち、被挟持部180o、180pは、ポンプ電極112の中心線CLを中心として、ポンプ電極112の両側に位置している。被挟持部180o、180pの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に沿う方向である。図6Aに示す例においては、被挟持部180o、180pの前端は、ポンプ電極112を2等分する仮想の線VLに対して前端側に位置している。図6Aに示す例においては、被挟持部180o、180pの後端は、ポンプ電極112の後端と一致している。図6Aに示す例においては、後端側領域112Rに配された被挟持部180o、180pが前端側領域112Fの一部にまで延在している。後端側領域112Rに配された被挟持部180o、180pが前端側領域112F内にまで延在しているレイアウトを、タイプBと称することとする。
【0083】
図6Bは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
【0084】
図6Bに示す例においては、図6Aに示す例と同様に、被挟持部180、即ち、被挟持部180o、180pが配されている。図6Bに示す例においては、ポンプ電極112の後端側の端部に被挟持部180、即ち、被挟持部180qが更に位置している。当該被挟持部180qの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に直交する方向である。図6Bに示す例においては、被挟持部180o、180pの前端は、ポンプ電極112を2等分する仮想の線VLに対して前端側に位置している。図6Bに示す例においては、被挟持部180o、180pの後端は、ポンプ電極112の後端と一致している。図6Bに示す例においては、被挟持部180qの長手方向の両端は、被挟持部180o、180pが配された部位に平面視において達している。図6Bに示す例においては、後端側領域112Rに配された被挟持部180、即ち、被挟持部180o、180qが前端側領域112F内にまで延在している。従って、図6Bに示すレイアウトは、タイプBに属する。
【0085】
図7Aは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
【0086】
図7Aに示す例においては、図4Aに示す例と同様に、被挟持部180a、180bが配されている。また、図7Aに示す例においては、ポンプ電極112の前端側の端部に被挟持部180、即ち、被挟持部180rが更に位置している。当該被挟持部180rの長手方向は、ポンプ電極112の長手方向に直交する方向である。ポンプ電極112の長手方向に直交する方向における被挟持部180rの寸法は、ポンプ電極112の長手方向に直交する方向におけるポンプ電極112の寸法と同等になっている。図7Aに示す例においては、後端側領域112Rに配された被挟持部180a、180bと別個の被挟持部180rが前端側領域112Fに配されている。後端側領域112Rに配された被挟持部180a、180bと別個の被挟持部180rが前端側領域112Fに配されているレイアウトを、タイプCと称することとする。
【0087】
図7Bは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
【0088】
図7Bに示す例においては、図4Aに示す例と同様に、被挟持部180a、180bが配されている。また、図7Bに示す例においては、ポンプ電極112の前端側の端部に被挟持部180、即ち、被挟持部180s、180tが更に位置している。より具体的には、ポンプ電極112の前端部の両側の角部に被挟持部180s、180tが位置している。当該被挟持部180s、180tの平面形状は、三角形状になっている。図7Bに示す例においては、前端側から後端側に向かって被挟持部180s、180tの幅が徐々に狭くなっている。図7Bに示す例においては、被挟持部180sと被挟持部180tとの間隔は、前端側から後端側に向かって大きくなっている。図7Bに示す例においては、被挟持部180a、180bの前端は、ポンプ電極112を2等分する仮想の線VLと一致している。図7Bに示す例においては、被挟持部180s、180tの前端は、ポンプ電極112の前端と一致している。図7Bに示す例においては、後端側領域112Rに配された被挟持部180a、180bと別個の被挟持部180s、180tが前端側領域112Fに配されている。従って、図7Bに示すレイアウトは、タイプCに属する。
【0089】
図7Cは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
【0090】
図7Cに示す例においては、図4Aに示す例と同様に、被挟持部180a、180bが配されている。また、図7Cに示す例においては、ポンプ電極112のうちの前端側の端部に被挟持部180、即ち、被挟持部180uが更に位置している。当該被挟持部180uの長手方向はポンプ電極112の長手方向に直交する方向である。ポンプ電極112の長手方向に直交する方向における被挟持部180uの寸法は、ポンプ電極112の長手方向に直交する方向におけるポンプ電極112の寸法より小さい。被挟持部180uの長手方向における両端部は、ポンプ電極112の長手方向に沿った辺に対して内側に位置している。図7Cに示す例においては、後端側領域112Rに配された被挟持部180a、180bと別個の被挟持部180uが前端側領域112Fに配されている。従って、図7Cに示すレイアウトは、タイプCに属する。
【0091】
図7Dは、被挟持部のレイアウトの例を示す平面図である。
【0092】
図7Dに示す例においては、図6Aに示す例と同様に、被挟持部180o、180pが配されている。また、図7Dに示す例においては、図7Aに示す例と同様に、被挟持部180rが更に位置している。図7Dに示す例においては、後端側領域112Rに配された被挟持部180o、180pと別個の被挟持部180rが前端側領域112Fに配されている。従って、図7Dに示すレイアウトは、タイプCに属する。
【0093】
図8A図8Cは、本実施形態によるセンサ素子の一部の例を示す断面図である。図8A図8Cには、センサ素子12の長手方向に沿った断面が示されている。図8A図8Cは、図7A図7Dに示すレイアウトに対応している。
【0094】
図8Aに示す例においては、後端側領域112R内に位置する被挟持部180においても、前端側領域112F内に位置する被挟持部180においても、スペーサ層68と固体電解質層66、70との間にポンプ電極112の一部が挟み込まれている。
【0095】
図8Bに示す例においては、後端側領域112R内に位置する被挟持部180においても、前端側領域112F内に位置する被挟持部180においても、被覆層182の一部によってポンプ電極112の一部が被覆されている。
【0096】
図8Cに示す例においては、後端側領域112R内に位置する被挟持部180においては、スペーサ層68と固体電解質層66、70との間にポンプ電極112の一部が挟み込まれている。一方、前端側領域112F内に位置する被挟持部180においては、被覆層182の一部によってポンプ電極112の一部が被覆されている。なお、後端側領域112R内に位置する被挟持部180において、被覆層182の一部によってポンプ電極112の一部が被覆されるようにしてもよい。そして、前端側領域112F内に位置する被挟持部180において、スペーサ層68と固体電解質層66、70との間にポンプ電極112の一部が挟み込まれるようにしてもよい。
【実施例
【0097】
実施例1~16及び比較例1~5について、ポンプ電極112に対する剥離試験、及び、ポンプ能力試験を行った。試験結果を図9及び図10に示す。図9及び図10は、試験結果を示す表を示す図である。
【0098】
ポンプ電極112に対する剥離試験は、以下のようにして実行した。即ち、室温の大気雰囲気下にガスセンサ10を配置し、70秒間のオン状態と、当該オン状態に続く50秒間のオフ状態とを1つの試験サイクルとして、100000回の試験サイクルを繰り返した。オン状態においては、ガスセンサ10の各部に所定の電圧を印加した。オフ状態においては、ガスセンサ10の各部に電圧を印加しなかった。オン状態においては、ヒータ164に対する電力供給を行った。また、オン状態においては、ガスセンサ10に対する信号の送受信を行った。オフ状態においては、ヒータ164に対する電力供給を停止した。また、オフ状態においては、ガスセンサ10に対する信号の送受信を停止した。剥離試験の最中において、主ポンプセル110は作動させ続けた。即ち、ポンプ電流Ip0を15μAに維持し続けた。剥離試験が完了した後、ポンプ電極112に対する観察を行った。ポンプ電極112に対する観察の際には、X線CTを用いた。また、ポンプ電極112の観察の際には、必要に応じて、ポンプ電極112を切断した。
【0099】
ポンプ電極112に対する剥離試験の結果の評価基準は、以下の通りである。
A:ポンプ電極112のうちの100%の部分が剥離することなく維持されている。
B:剥離することなく維持されている部分の面積がポンプ電極112の面積の50%以上である。
C:剥離することなく維持されている部分の面積がポンプ電極112の面積の50%未満である。
【0100】
ポンプ能力の評価基準は、以下の通りである。
A:充分に良好なポンプ能力が得られている。
B:ある程度良好なポンプ能力が得られている。
C:ポンプ能力が充分に得られていない。
【0101】
[実施例1]
実施例1において、被挟持部180のレイアウトは、タイプAとした。即ち、ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rにのみ被挟持部180を配した。ポンプ電極112の総面積は、7.1mmとした。実施例1においては、被挟持部180の面積は0.4mmとした。即ち、被挟持部180の面積は比較的小さく設定した。実施例1においては、ポンプ電極112の有効面積、即ち、ポンプ電極112のうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積は、6.7mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積、即ち、前端側領域112Fのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積は、3.55mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積、即ち、後端側領域112Rのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積は、3.15mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、6%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Bであった。また、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、53.0%であった。即ち、前端側領域112Fのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積は、後端側領域112Rのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積より大きかった。
【0102】
[実施例2]
実施例2においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプAとした。即ち、ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rにのみ被挟持部180を配した。ポンプ電極112の総面積は、7.4mmとした。被挟持部180の面積は2.2mmとした。即ち、被挟持部180の面積は比較的大きく設定した。ポンプ電極112の有効面積は、5.2mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、3.70mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、1.50mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、30%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、ポンプ能力試験の評価結果は、Bであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、71.2%であった。
【0103】
[実施例3]
実施例3においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させた。ポンプ電極112の総面積は、7.4mmとした。実施例3においては、被挟持部180の面積は0.7mmとした。即ち、被挟持部180の面積は比較的小さく設定した。実施例3においては、ポンプ電極112の有効面積は、6.7mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、3.60mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、3.10mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、9%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Bであった。また、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、53.7%であった。
【0104】
[実施例4]
実施例4においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させた。ポンプ電極112の総面積は、7.3mmとした。実施例4においては、被挟持部180の面積は3.2mmとした。即ち、被挟持部180の面積は比較的大きく設定した。ポンプ電極112の有効面積は、4.1mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、2.45mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、1.65mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、44%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、ポンプ能力試験の評価結果は、Bであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、59.8%であった。
【0105】
[実施例5]
実施例5においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させた。ポンプ電極112の総面積は、7.5mmとした。被挟持部180の面積は1.2mmとした。ポンプ電極112の有効面積、即ち、ポンプ電極112のうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積は、6.3mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、3.35mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、2.95mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、16%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、53.2%であった。
【0106】
[実施例6]
実施例6においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させた。ポンプ電極112の総面積は、7.5mmとした。実施例6においては、被挟持部180の面積は3.4mmとした。ポンプ電極112の有効面積は、4.1mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、2.55mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、1.55mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、45%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、実施例6においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Bであった。実施例6においては、ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、62.2%であった。
【0107】
[実施例7]
実施例7においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させた。ポンプ電極112の総面積は、9.0mmとした。被挟持部180の面積は1.4mmとした。ポンプ電極112の有効面積は、7.6mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、4.10mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、3.50mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、16%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、実施例7においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。実施例7においては、ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、53.9%であった。
【0108】
[実施例8]
実施例8においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させた。ポンプ電極112の総面積は、9.9mmとした。実施例8においては、被挟持部180の面積は1.4mmとした。ポンプ電極112の有効面積は、8.5mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、4.45mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、4.05mmとした。実施例8においては、ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、14%とした。実施例8においては、ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、実施例8においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。実施例8においては、ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、52.4%であった。
【0109】
[実施例9]
実施例9においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させた。ポンプ電極112の総面積は、10.6mmとした。被挟持部180の面積は1.5mmとした。ポンプ電極112の有効面積は、9.1mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、4.70mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、4.40mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、14%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、実施例9においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。実施例9においては、ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、51.6%であった。
【0110】
[実施例10]
実施例10においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させた。ポンプ電極112の総面積は、12.3mmとした。被挟持部180の面積は1.8mmとした。ポンプ電極112の有効面積は、10.5mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、5.75mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、4.75mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、15%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、実施例10においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、54.8%であった。
【0111】
[実施例11]
実施例11においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させた。ポンプ電極112の総面積は、15.0mmとした。被挟持部180の面積は4.0mmとした。ポンプ電極112の有効面積は、11.0mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、6.50mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、4.50mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、27%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、実施例11においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。実施例11においては、ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、59.1%であった。
【0112】
[実施例12]
実施例12においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させた。ポンプ電極112の総面積は、15.0mmとした。被挟持部180の面積は7.4mmとした。ポンプ電極112の有効面積は、7.6mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、5.00mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、2.60mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、49%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、65.8%であった。
【0113】
[実施例13]
実施例13においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプBとした。より具体的には、図6Bに対応するレイアウトとした。即ち、後端側領域112Rに配された被挟持部180を前端側領域112Fの一部にまで延在させるとともに、ポンプ電極112のうちの後端側の端部に被挟持部180を更に位置させた。ポンプ電極112の総面積は、9.9mmとした。被挟持部180の面積は2.0mmとした。実施例13においては、ポンプ電極112の有効面積は、7.9mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、4.25mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、3.65mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、20%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、実施例13においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。実施例13においては、ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、53.8%であった。
【0114】
[実施例14]
実施例14においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプCとした。即ち、後端側領域112Rに配した被挟持部180と別個の被挟持部180を前端側領域112Fに配した。ポンプ電極112の総面積は、9.5mmとした。被挟持部180の面積は2.3mmとした。ポンプ電極112の有効面積は、7.2mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、3.69mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、3.50mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、24%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、実施例14においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、51.3%であった。
【0115】
[実施例15]
実施例15においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプCとした。即ち、後端側領域112Rに配した被挟持部180と別個の被挟持部180を前端側領域112Fに配した。ポンプ電極112の総面積は、9.8mmとした。被挟持部180の面積は2.4mmとした。ポンプ電極112の有効面積は、7.4mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、3.80mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、3.60mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、24%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、実施例15においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、51.4%であった。
【0116】
[実施例16]
実施例16においては、被挟持部180のレイアウトは、タイプCとした。即ち、後端側領域112Rに配した被挟持部180と別個の被挟持部180を前端側領域112Fに配した。ポンプ電極112の総面積は、9.9mmとした。被挟持部180の面積は2.9mmとした。ポンプ電極112の有効面積は、7.0mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、3.95mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、3.05mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、29%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Aであった。また、実施例16においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、56.4%であった。
【0117】
[比較例1]
比較例1においては、ポンプ電極112の総面積は、7.5mmとした。被挟持部180の面積は0mmとした。即ち、被挟持部180を設けなかった。ポンプ電極112の有効面積は、7.5mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、3.75mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、3.75mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、0%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Cであった。また、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、50.0%であった。
【0118】
[比較例2]
比較例2においては、ポンプ電極112の総面積は、9.9mmとした。被挟持部180の面積は0mmとした。即ち、被挟持部180を設けなかった。ポンプ電極112の有効面積は、9.9mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、4.95mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、4.95mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、0%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Cであった。また、比較例2においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。比較例2においては、ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、50.0%であった。
【0119】
[比較例3]
比較例3においては、ポンプ電極112の総面積は、12.3mmとした。被挟持部180の面積は0mmとした。即ち、被挟持部180を設けなかった。ポンプ電極112の有効面積は、12.3mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、6.15mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、6.15mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、0%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Cであった。また、比較例3においては、ポンプ能力試験の評価結果は、Aであった。比較例3においては、ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、50.0%であった。
【0120】
[比較例4]
比較例4においては、ポンプ電極112の総面積は、9.8mmとした。被挟持部180の面積は6.5mmとした。即ち、被挟持部180の面積を過剰に大きく設定した。ポンプ電極112の周縁部全体に被挟持部180を配した。ポンプ電極112の有効面積は、3.3mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、1.65mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、1.65mmとした。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、66%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Bであった。ポンプ電極112と固体電解質層66、70等との熱膨張率の差に起因するクラックがポンプ電極112に生じた。また、ポンプ能力試験の評価結果は、Cであった。ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、50.0%であった。
【0121】
[比較例5]
比較例5においては、ポンプ電極112の総面積は、9.8mmとした。被挟持部180の面積は6.5mmとした。即ち、被挟持部180の面積を過剰に大きく設定した。ポンプ電極112の周縁部全体に被挟持部180を配した。ポンプ電極112の有効面積は、3.3mmとした。ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積は、1.60mmとした。ポンプ電極112のうちの後端側領域112Rの有効面積は、1.70mmとした。即ち、前端側領域112Fにおける被挟持部180の面積を大きめに設定することにより、ポンプ電極112のうちの前端側領域112Fの有効面積を小さめに設定した。ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率は、66%とした。ポンプ電極112の剥離試験の評価結果は、Bであった。ポンプ電極112と固体電解質層66、70等との熱膨張率の差に起因するクラックがポンプ電極112に生じた。また、ポンプ能力試験の評価結果は、Cであった。比較例5においては、ポンプ電極112の有効面積に対する前端側領域112Fの有効面積の比率Qは、48.5%であった。
【0122】
このように、ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率を5~50%の範囲内とすることにより、ポンプ電極112の剥離を防止し得る。また、ポンプ電極112の総面積に対する被挟持部180の面積の比率を10~50%の範囲内とすることにより、ポンプ電極112の剥離をより確実に防止し得る。
【0123】
また、ポンプ電極112の有効面積を4.0mm以上とすることにより、良好なポンプ能力が得られる。
【0124】
このように、本実施形態によれば、ポンプ電極112のうちの少なくとも一部がスペーサ層68と固体電解質層66、70とによって挟み込まれ、又は、被測定ガス流路79の内面に形成された被覆層182によって被覆されているため、ポンプ電極112が剥がれるのを抑制することができる。また、ポンプ電極112のうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積が4mm以上であるため、良好なポンプ能力を確保することができる。また、本実施形態によれば、前端側領域112Fのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積が、後端側領域112Rのうちの被測定ガス流路79内に露出している部分の面積より大きいため、酸素濃度のより高い部位においてポンプ電極112の露出面積を大きく確保し得る。酸素濃度のより高い部位においてポンプ電極112の露出面積を大きく確保することは、ポンプ能力の充分な確保に資するとともに、センサ素子12の正確な動作に寄与する。このように、本実施形態によれば、良好な性能を確保しつつポンプ電極112の剥離を抑制し得るガスセンサ10を提供することができる。
【0125】
[変形実施形態]
本発明についての好適な実施形態を上述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0126】
例えば、上記実施形態では、天面側ポンプ電極112aと底面側ポンプ電極112bとによってポンプ電極112が構成されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、天面側ポンプ電極112aのみによってポンプ電極112が構成されていてもよい。図11は、変形実施形態によるガスセンサの一部を示す断面図である。図11に示す例においては、天面側ポンプ電極112aのみによってポンプ電極112が構成されている。また、底面側ポンプ電極112bのみによってポンプ電極112が構成されていてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、第2内部空所92と第3内部空所96との間に第4拡散律速部94が備えられている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。第2内部空所92と第3内部空所96との間に第4拡散律速部94を備えなくてもよい。この場合には、第2内部空所92と第3内部空所96とを一体化してもよい。この場合には、補助ポンプ電極126と測定電極134とが同じ内部空所内に位置することとなる。
【0128】
上記実施形態をまとめると以下のようになる。
【0129】
ガスセンサ(10)は、固体電解質から成る層を少なくとも一つ以上含む積層体(13)と、前記積層体内に形成され、前記積層体の長手方向の一方である前端側に位置するガス導入口(80)を介して導入される被測定ガスが流通する被測定ガス流路(79)と、前記被測定ガス流路の長手方向に沿うように形成され、前記被測定ガス流路内に露出するポンプ電極(112)と、を備え、前記ポンプ電極は、前記ポンプ電極の中心に対して前記前端側に位置する前端側領域(112F)と、前記ポンプ電極の中心に対して前記前端側の反対である後端側に位置する後端側領域(112R)とを有し、前記ポンプ電極は、前記後端側領域の一部で、前記積層体を構成する複数の層のうちの第1層(66、70)と、前記第1層に隣接する第2層(68)との間に少なくとも挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層(182)によって被覆され、前記ポンプ電極のうちの前記被測定ガス流路内に露出している部分の面積は、4mm以上であり、前記前端側領域のうちの前記被測定ガス流路内に露出している部分の面積は、前記後端側領域のうちの前記被測定ガス流路内に露出している部分の面積より大きい。このような構成によれば、ポンプ電極のうちの少なくとも一部が第1層と第2層との間に少なくとも挟み込まれ、又は、被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって被覆されているため、ポンプ電極が剥がれるのを抑制することができる。また、ポンプ電極のうちの被測定ガス流路内に露出している部分の面積が4mm以上であるため、良好なポンプ能力を確保することができる。また、このような構成によれば、前端側領域のうちの被測定ガス流路内に露出している部分の面積が、後端側領域のうちの被測定ガス流路内に露出している部分の面積より大きいため、酸素濃度のより高い部位においてポンプ電極の露出面積を大きく確保し得る。酸素濃度のより高い部位においてポンプ電極の露出面積を大きく確保することは、ポンプ能力の充分な確保に資するとともに、センサ素子の正確な動作に寄与する。このように、このような構成によれば、良好な性能を確保しつつポンプ電極の剥離を抑制し得るガスセンサを提供することができる。
【0130】
前記積層体は、前記第2層に隣接する第3層(70)を更に含み、前記被測定ガス流路は、前記第2層に形成されており、前記被測定ガス流路の底面と天面とは、前記第1層(66)と前記第3層とによって区画されており、前記被測定ガス流路の側面は、前記第2層によって区画されており、前記ポンプ電極は、前記被測定ガス流路の底面に形成された底面側ポンプ電極(112b)と、前記被測定ガス流路の天面に形成された天面側ポンプ電極(112a)とを含み、前記底面側ポンプ電極及び前記天面側ポンプ電極のうちの一方は、前記後端側領域のうちの一部で、前記第1層と前記第2層との間に挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって被覆され、前記底面側ポンプ電極及び前記天面側ポンプ電極のうちの他方は、前記後端側領域のうちの一部で、前記第2層と前記第3層との間に挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって被覆されているようにしてもよい。
【0131】
前記ポンプ電極のうちの前記被測定ガス流路内に露出していない部分の面積の、前記ポンプ電極の総面積に対する比率は、5~50%であるようにしてもよい。このような構成によれば、ポンプ電極にクラックが発生するのを防止しつつ、ポンプ電極の剥離を抑制することができる。
【0132】
前記ポンプ電極のうちの前記被測定ガス流路内に露出していない部分の面積の、前記ポンプ電極の総面積に対する比率は、10~50%であるようにしてもよい。このような構成によれば、ポンプ電極にクラックが発生するのを防止しつつ、ポンプ電極の剥離をより確実に抑制することができる。
【0133】
前記ポンプ電極の平面形状は矩形であり、前記ポンプ電極のうちの前記第1層と前記第2層との間に挟み込まれた部分、又は、前記ポンプ電極のうちの前記被覆層によって被覆された部分は、前記被測定ガス流路の前記長手方向に沿った前記ポンプ電極の中心線(CL)を中心として、前記ポンプ電極の両側に少なくとも位置しているようにしてもよい。このような構成によれば、ポンプ電極の剥離の抑制に資することができる。
【0134】
前記ポンプ電極は、前記前端側領域のうちの少なくとも一部で、前記第1層と前記第2層との間に更に挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって更に被覆されているようにしてもよい。このような構成によれば、ポンプ電極の剥離をより確実に抑制することができる。
【0135】
前記ポンプ電極のうちの前記前端側の端部が、前記第1層と前記第2層との間に挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の内面に形成された被覆層によって更に被覆されているようにしてもよい。このような構成によれば、ポンプ電極の剥離をより確実に抑制することができる。
【0136】
前記ポンプ電極のうちの前記後端側の端部が、前記第1層と前記第2層との間に更に挟み込まれ、又は、前記被測定ガス流路の前記内面に形成された被覆層によって更に被覆されているようにしてもよい。このような構成によれば、ポンプ電極の剥離をより確実に抑制することができる。
【0137】
前記第1層及び前記第2層は、固体電解質から成るようにしてもよい。
【0138】
前記第1層は、固体電解質から成り、前記第2層は、絶縁体から成るようにしてもよい。
【0139】
前記第3層は、固体電解質から成るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0140】
10:ガスセンサ 12:センサ素子
13:積層体 14:保護カバー
14a:内側保護カバー 14b:外側保護カバー
16:セラミックハウジング 18:金属端子
20:センサ組立体 24:コネクタ
26:配管 28:センサ素子室
30:素子封止体 32:ナット
34:外筒 40:主体金具
42:内筒 42a、42b:縮径部
44a~44c:セラミックスサポータ
46a、46b:圧粉体 48:メタルリング
50:空間 52:固定用部材
54、172:リード線 56:弾性絶縁部材
60:第1基板層 62:第2基板層
64:第3基板層 66、70:固体電解質層
68:スペーサ層 79:被測定ガス流路
80:ガス導入口 82:第1拡散律速部
84:緩衝空間 86:第2拡散律速部
88:第1内部空所 90:第3拡散律速部
92:第2内部空所 94:第4拡散律速部
96:第3内部空所 98:基準ガス導入空間
100:大気導入層 102:基準電極
110:主ポンプセル 112:ポンプ電極
112aF、112bF、112F:前端側領域
112aR、112bR、112R:後端側領域
112a:天面側ポンプ電極 112b:底面側ポンプ電極
114:外側ポンプ電極
120:主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、酸素分圧検出センサセル
122、132、144、152:可変電源
124:補助ポンプセル 126:補助ポンプ電極
126a:天面側電極部 126b:底面側電極部
130:補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、酸素分圧検出センサセル
134:測定電極 140:測定用ポンプセル
142:測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル、酸素分圧検出センサセル
146:センサセル 150:基準ガス調整ポンプセル
160:ヒータ部 162:ヒータコネクタ電極
164:ヒータ 166:スルーホール
168:ヒータ絶縁層 170:圧力放散孔
180、180a~180u:被挟持部
182:被覆層 CL:中心線
Ip0、Ip1、Ip2:ポンプ電流 Ip3:制御電流
V0、V1、V2、Vref:起電力 VL:仮想の線
Vp0:ポンプ電圧 Vp1、Vp2、Vp3:電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11