(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240610BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240610BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
G02F1/13 505
(21)【出願番号】P 2020171844
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小村 真一
(72)【発明者】
【氏名】奥田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小野田 憲
(72)【発明者】
【氏名】雉嶋 裕明
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0018255(US,A1)
【文献】特表2019-510267(JP,A)
【文献】特開2016-071078(JP,A)
【文献】特開2019-053152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0107000(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0049872(US,A1)
【文献】特表2017-528741(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189675(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
H04N 5/64
H04N 13/344
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光の表示光を出射する表示パネルと、
前記表示パネルに対向する第1位相差板と、
前記第1位相差板から離間した第2位相差板と、
第1直線偏光を透過し、前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光を反射する反射偏光板と、
前記第1位相差板と前記第2位相差板との間に配置され、前記第2位相差板から離間し、前記第2位相差板と対向する凹面を有する半透過層と、
前記半透過層と前記反射偏光板との間に配置され、屈折率異方性がほぼゼロの透明固体と、を備え、
前記第1位相差板及び前記第2位相差板は、1/4波長板であり、
前記透明固体は、前記凹面に対向する側の凸状の第1面と、前記反射偏光板に対向する側の第2面と、を有し
、
前記第2位相差板は、前記凹面に接し、
前記透明固体は、前記第2位相差板と前記反射偏光板との間に配置され、
前記第1面は、前記第2位相差板に接し、
前記第2面は、前記反射偏光板に接している、表示装置。
【請求項2】
前記透明固体は、等方的な屈折率を有し、
前記屈折率は、前記第2位相差板の屈折率とほぼ同等である、請求項
1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記透明固体は、ポリマーによって形成されている、請求項
2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記透明固体の前記第1面及び前記第2面は、前記表示パネルの表示領域より広い範囲に亘って延在している、請求項
1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ユーザの頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイを用いて、例えば仮想現実(VR:VirtualReality)を提供する技術が注目されている。ヘッドマウントディスプレイは、ユーザの眼前に設けられたディスプレイに画像が表示されるように構成されている。これにより、ヘッドマウントディスプレイを装着したユーザは、臨場感のある仮想現実空間を体験することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2003-504663号公報
【文献】特表2003-529795号公報
【文献】特開2018-106160号公報
【文献】特開2019-53152号公報
【文献】特開2019-148626号公報
【文献】特開2019-148627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、表示品位の低下を抑制することが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の表示装置は、
直線偏光の表示光を出射する表示パネルと、前記表示パネルに対向する第1位相差板と、前記第1位相差板から離間した第2位相差板と、第1直線偏光を透過し、前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光を反射する反射偏光板と、前記第1位相差板と前記第2位相差板との間に配置され、前記第2位相差板から離間し、前記第2位相差板と対向する凹面を有する半透過層と、前記半透過層と前記反射偏光板との間に配置され、屈折率異方性がほぼゼロの透明固体と、を備え、前記第1位相差板及び前記第2位相差板は、1/4波長板であり、前記透明固体は、前記凹面に対向する側の凸状の第1面と、前記反射偏光板に対向する側の第2面と、を有している。
【0006】
本実施形態の表示装置は、
直線偏光の表示光を出射する表示パネルと、前記表示パネルに対向する第1位相差板と、前記第1位相差板に接する半透過層と、第2位相差板と、第1直線偏光を透過し、前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光を反射する反射偏光板と、第1円偏光を集光するレンズ作用を有する素子と、前記反射偏光板と前記素子との間に配置された第3位相差板と、前記半透過層と前記反射偏光板との間に配置され、屈折率異方性がほぼゼロの透明固体と、を備え、前記第1位相差板、前記第2位相差板、及び、前記第3位相差板は、1/4波長板であり、前記透明固体は、前記半透過層に対向する側の第1面と、前記反射偏光板に対向する側の第2面と、を有している。
【0007】
本実施形態の表示装置は、
直線偏光の表示光を出射する表示パネルと、前記表示パネルに対向する第1位相差板と、前記第1位相差板に接するホログラフィック光学素子と、第2位相差板と、第1直線偏光を透過し、前記第1直線偏光と直交する第2直線偏光を反射する反射偏光板と、前記ホログラフィック光学素子と前記反射偏光板との間に配置され、屈折率異方性がほぼゼロの透明固体と、を備え、前記第1位相差板及び前記第2位相差板は、1/4波長板であり、前記透明固体は、前記ホログラフィック光学素子に対向する側の第1面と、前記反射偏光板に対向する側の第2面と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る表示装置を適用したヘッドマウントディスプレイ1の外観の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したヘッドマウントディスプレイ1の構成の概要を説明するための図である。
【
図3】
図3は、表示装置DSPの第1構成例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
【
図5】
図5は、表示装置DSPの第2構成例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した液晶素子10の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示した液晶層LC1における配向パターンの一例を示す平面図である。
【
図8】
図8は、表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
【
図9】
図9は、表示装置DSPの第2構成例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の表示装置DSPに適用可能な照明装置3の一構成例を示す平面図である。
【
図12】
図12は、表示装置DSPの変形例を示す断面図である。
【
図13】
図13は、表示装置DSPの変形例を示す断面図である。
【
図14】
図14は、表示装置DSPの変形例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、表示装置DSPの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X-Y平面を見ることを平面視という。
【0011】
図1は、本実施形態に係る表示装置を適用したヘッドマウントディスプレイ1の外観の一例を示す斜視図である。ヘッドマウントディスプレイ1は、例えば、右眼用の表示装置DSPRと、左眼用の表示装置DSPLと、を備えている。ユーザがヘッドマウントディスプレイ1を頭部に装着した状態では、表示装置DSPRは当該ユーザの右眼の眼前に位置するように配置され、また、表示装置DSPLは当該ユーザの左眼の眼前に位置するように配置されている。
【0012】
図2は、
図1に示したヘッドマウントディスプレイ1の構成の概要を説明するための図である。表示装置DSPRは、表示装置DSPLと実質的に同様に構成されている。
【0013】
表示装置DSPRは、表示パネル2Rと、照明装置3Rと、点線で示した光学システム4Rと、を備えている。照明装置3Rは、表示パネル2Rの背面に配置され、表示パネル2Rを照明するように構成されている。光学システム4Rは、表示パネル2Rの前面(あるいはユーザの右眼ERと表示パネル2Rとの間)に配置され、表示パネル2Rからの表示光を右眼ERに導くように構成されている。
【0014】
表示パネル2Rは、例えば、液晶パネルである。表示パネル2Rは、照明装置3Rと光学システム4Rとの間に配置されている。表示パネル2Rには、例えば、ドライバICチップ5R及びフレキシブルプリント回路基板6Rが接続されている。ドライバICチップ5Rは、表示パネル2Rの駆動を制御する(特に、表示パネル2Rの表示動作を制御する)。
【0015】
表示装置DSPLは、表示パネル2Lと、照明装置3Lと、点線で示した光学システム4Lと、を備えている。照明装置3Lは、表示パネル2Lの背面に配置され、表示パネル2Lを照明するように構成されている。光学システム4Lは、表示パネル2Lの前面(あるいはユーザの左眼ELと表示パネル2Lとの間)に配置され、表示パネル2Lからの表示光を左眼ELに導くように構成されている。
【0016】
表示パネル2Lは、例えば、液晶パネルである。表示パネル2Lは、照明装置3Lと光学システム4Lとの間に配置されている。表示パネル2Lには、例えば、ドライバICチップ5L及びフレキシブルプリント回路基板6Lが接続されている。ドライバICチップ5Lは、表示パネル2Lの駆動を制御する(特に、表示パネル2Lの表示動作を制御する)。
【0017】
表示装置DSPRを構成する表示パネル2R、照明装置3R、及び、光学システム4Rは、それぞれ表示装置DSPLを構成する表示パネル2L、照明装置3L、及び、光学システム4Lと同様に構成されている。
【0018】
本実施形態に係る表示装置DSPにおいては、表示パネル2R及び2Lは、液晶パネルに限らず、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、マイクロLED、ミニLEDなどの自発光型の発光素子を備えた表示パネルであってもよい。表示パネル2R及び2Lが発光素子を備えた表示パネルである場合、照明装置3R及び3Lは省略される。
【0019】
外部に設けられたホストコンピュータHは、表示パネル2L及び2Rとそれぞれ接続されている。ホストコンピュータHは、表示パネル2L及び2Rに表示される画像に対応した画像データを出力する。表示パネル2Lに表示される画像は、左眼用の画像(あるいはユーザの左眼ELで視認される画像)である。また、表示パネル2Rに表示される画像は、右眼用の画像(あるいはユーザの右眼ERで視認される画像)である。
【0020】
例えば、ヘッドマウントディスプレイ1がVR用として利用される場合、左眼用の画像及び右眼用の画像は、両目の視差を再現した互いに類似する画像である。表示パネル2Lに表示された左眼用の画像がユーザの左眼ELで視認され、また、表示パネル2Rに表示された右眼用の画像がユーザの右眼ERで視認された場合には、ユーザは仮想現実空間として立体的な空間(3次元空間)を把握することができる。
【0021】
次に、本実施形態に係る表示装置DSPの第1構成例について説明する。
【0022】
《第1構成例》
図3は、表示装置DSPの第1構成例を示す断面図である。
表示装置DSPは、表示パネル2と、光学システム4と、を備えている。ここで説明する表示装置DSPは、上記の表示装置DSPR及びDSPLの各々に適用することができる。また、表示パネル2は、上記の表示パネル2R及び2Lの各々に適用することができる。また、光学システム4は、上記の光学システム4R及び4Lの各々に適用することができる。
【0023】
表示パネル2は、X-Y平面に亘って延在した平板状に形成されている。表示パネル2は、第1基板SUB1と、第2基板SUB2と、液晶層LCと、第1偏光板PL1と、第2偏光板PL2と、を備えている。液晶層LCは、第1基板SUB1と第2基板SUB2との間に保持され、シールSEによって封止されている。第1偏光板PL1は、照明装置3と第1基板SUB1との間に配置されている。第2偏光板PL2は、第2基板SUB2と光学システム4との間に配置されている。
【0024】
表示パネル2は、直線偏光の表示光DLを出射するように構成された表示領域DAを有している。表示領域DAは、照明装置3からの照明光を選択的に変調するように構成されている。照明光の一部は、第2偏光板PL2を透過し、直線偏光の表示光DLに変換される。
ここで説明する第1構成例に限らず、他の構成例においても同様に、表示パネル2は、液晶パネルに限らない。表示パネル2が自発光型の発光素子を備えた表示パネルである場合、上記の通り照明装置3は省略される。また、この場合、発光素子から出射された表示光DLは、第2偏光板PL2を透過して直線偏光の表示光DLに変換される。
【0025】
光学システム4は、第1位相差板R1と、半透過層HMと、透明固体TSと、第2位相差板R2と、反射偏光板PRと、を備えている。
【0026】
第1位相差板R1及び第2位相差板R2は、1/4波長板であり、透過する光に対して1/4波長の位相差を付与するものである。第1位相差板R1は、X-Y平面において、少なくとも表示領域DAと対向するように配置されている。第1位相差板R1は、表示パネル2に接している。
図3に示す例では、第1位相差板R1は、第2偏光板PL2に接している。第2位相差板R2は、第1位相差板R1から離間し、第3方向Zにおいて、間隔をおいて対向している。
【0027】
半透過層HM、透明固体TS、第2位相差板R2、及び、反射偏光板PRは、この順に、第3方向Zに沿って積層されている。つまり、透明固体TSは半透過層HMに接し、第2位相差板R2は透明固体TSに接し、反射偏光板PRは第2位相差板R2に接している。
【0028】
半透過層HMは、第1位相差板R1と第2位相差板R2との間に配置され、第2位相差板R2から離間している。また、
図3に示す例では、半透過層HMは、第1位相差板R1からも離間しており、第3方向Zにおいて、空気層4Cを介して第1位相差板R1と対向している。半透過層HMは、第2位相差板R2と対向する凹面CCを有している。半透過層HMは、入射光のうちの一部の光を透過し、その他の光を反射するものである。
【0029】
一例として、半透過層HMは、アルミニウムや銀などの金属材料で形成された薄膜である。このような半透過層HMは、例えば、凹面CCを有する透明な基材の表面に形成されてもよいし、後述する透明固体TSの第1面TSAに形成されてもよい。半透過層HMの透過率は、約50%である。
【0030】
反射偏光板PRは、入射光のうち、第1直線偏光を透過し、第1直線偏光と直交する第2直線偏光を反射するものである。一例として、反射偏光板PRは、多層薄膜型のものや、ワイヤグリッド型のものなどである。
【0031】
透明固体TSは、半透過層HMと反射偏光板PRとの間に配置され、半透過層HMに対向する側の第1面TSAと、反射偏光板PRに対向する側の第2面TSBと、を有している。
図3に示す例では、第2位相差板R2は、反射偏光板PRに接し、透明固体TSは、半透過層HMと第2位相差板R2との間に配置されている。透明固体TSは、半透過層HMの凹面CCに接する凸状の第1面TSAと、第2位相差板R2に接する平坦な第2面TSBと、を有している。つまり、透明固体TSは、半透過層HMと第2位相差板R2との間の空間に充填されている。透明固体TSの第3方向Zに沿った最大の厚さは、1~10mmであり、一例では、約5mmである。
【0032】
この透明固体TSは、屈折率異方性がほぼゼロの透明な媒質によって形成されている。つまり、透明固体TSは、等方的な屈折率を有している。すなわち、透明固体TSにおいては、延伸配向による配向複屈折がほぼゼロであり、且つ、応力変形による光弾性複屈折がほぼゼロである。
【0033】
透明固体TSの屈折率は、空気の屈折率より大きく、第2位相差板R2の屈折率とほぼ同等である。一例では、透明固体TSの屈折率と第2位相差板R2の常光屈折率noとの差、あるいは、透明固体TSの屈折率と第2位相差板R2の異常光屈折率neとの差は、0.1未満である。
【0034】
例えば、透明固体TSは、ポリマーによって形成されている。さらには、透明固体TSは、複数のモノマーの重合によって得られる共重合体として形成されている。なお、透明固体TSは、ガラスによって形成されてもよいが、軽量化、加工性等の観点を考慮すると、ポリマーによって形成されることが望ましい。
【0035】
半透過層HM、透明固体TS、第2位相差板R2、及び、反射偏光板PRは、X-Y平面において、表示領域DAよりも広い範囲に亘って延在している。つまり、透明固体TSの第1面TSA及び第2面TSBは、いずれも表示領域DAよりも広い範囲に亘って延在している。
【0036】
表示パネル2(あるいは第2偏光板PL2)及び第1位相差板R1は、空気層を介することなく互いに密着していることが望ましい。また、半透過層HM、透明固体TS、第2位相差板R2、及び、反射偏光板PRは、空気層を介することなく互いに密着していることが望ましい。これにより、部材間の界面での不所望な反射あるいは屈折を抑制することができる。
【0037】
第1位相差板R1及び第2位相差板R2は、例えば、少なくとも緑波長の光に対して1/4波長の位相差を付与するものであるが、これに限らない。例えば、第1位相差板R1及び第2位相差板R2としては、赤波長、緑波長、及び、青波長の各々の光に対しても略1/4波長の位相差を付与する広帯域型の位相差板を適用することができる。このような広帯域型の位相差板としては、例えば、1/4波長板の遅相軸と1/2波長板の遅相軸とが所定の角度をなす状態で、1/4波長板と1/2波長板とを貼り合わせたものなどを適用することができる。これにより、第1位相差板R1及び第2位相差板R2における波長依存性を緩和することができる。
【0038】
図4は、表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
【0039】
まず、表示パネル2は、第1直線偏光LP1の表示光DLを出射する。ここでの第1直線偏光LP1とは、例えば紙面に垂直な方向に振動する直線偏光である。表示光DLは、第1位相差板R1を透過する際に、1/4波長の位相差が付与される。これにより、表示光DLは、第1位相差板R1を透過した後に、第1円偏光CP1に変換される。ここでの第1円偏光CP1とは、例えば左回りの円偏光である。
【0040】
第1位相差板R1を透過した第1円偏光CP1のうち、一部の第1円偏光CP1は半透過層HMを透過し、他の第1円偏光CP1は半透過層HMで反射される。半透過層HMを透過した第1円偏光CP1は、透明固体TSを透過する。透明固体TSは、上記の通り、複屈折を有していないため、第1円偏光CP1が透明固体TSを透過する際にその偏光状態が維持される。
【0041】
透明固体TSを透過した第1円偏光CP1は、第2位相差板R2を透過する際に、1/4波長の位相差が付与され、第2直線偏光LP2に変換される。ここでの第2直線偏光LP2とは、第1直線偏光LP1とは直交する方向、つまり紙面に平行な方向に振動する直線偏光である。
【0042】
なお、第1円偏光CP1が半透過層HMで反射された際には、第1円偏光CP1とは逆回りの第2円偏光CP2に変換される。ここでの第2円偏光CP2とは、例えば右回りの円偏光である。半透過層HMで反射された第2円偏光CP2は、第1位相差板R1を透過して第2直線偏光LP2に変換され、表示パネル2において吸収される。
【0043】
第2位相差板R2を透過した第2直線偏光LP2は、反射偏光板PRで反射される。反射偏光板PRで反射された第2直線偏光LP2は、第2位相差板R2を透過して第1円偏光CP1に変換される。第2位相差板R2を透過した第1円偏光CP1は、透明固体TSを透過し、その際の偏光状態は維持される。
【0044】
透明固体TSを透過した第1円偏光CP1のうち、一部の第1円偏光CP1は半透過層HMで反射され、他の第1円偏光CP1は半透過層HMを透過する。第1円偏光CP1が半透過層HMで反射された際には、第2円偏光CP2に変換される。半透過層HMで反射された第2円偏光CP2は、透明固体TSを透過した後に、第2位相差板R2を透過して第1直線偏光LP1に変換される。
なお、半透過層HMを透過した第1円偏光CP1は、第1位相差板R1を透過して第1直線偏光LP1に変換される。
【0045】
第2位相差板R2を透過した第1直線偏光LP1は、反射偏光板PRを透過する。反射偏光板PRの透過光は、半透過層HMからの反射光であり、凹面鏡の効果により、ユーザの瞳Eに集光される。
【0046】
このような表示装置DSPによれば、光学システム4は、半透過層HMと反射偏光板PRとの間を3回通る光路を有している。つまり、光学システム4において、半透過層HMと反射偏光板PRとの間の光学的な距離は、実際の半透過層HMと反射偏光板PRとの間隔(あるいは透明固体TSの厚さ)の約3倍となる。半透過層HMが反射面である凹面CCを有しているため、半透過層HMでの反射光がユーザの瞳Eに集光される。これにより、ユーザは、拡大された虚像を観察することができる。
【0047】
図4に示した透明固体TSが空気層に置換された場合には、第2位相差板R2と空気層との界面での不所望な反射光は、多重画像(いわゆるゴースト)の原因となり、表示品位の低下を招く。これに対して、第1構成例によれば、第2位相差板R2と透明固体TSとが密着しており、しかも、第2位相差板R2の屈折率と透明固体TSの屈折率とがほぼ同等である。このため、不所望な反射光が発生せず、表示品位の低下を抑制することができる。
【0048】
また、透明固体TSの屈折率異方性がほぼゼロであるため、透明固体TSを透過する光の偏光状態が維持される。このため、表示品位の低下を抑制できるとともに、光の利用効率の低下を抑制することができる。
【0049】
さらに、光学システム4を構成する各部材の波長依存性が小さいため、光学システム4の構成を簡素化することができ、表示領域DAに表示されるカラー画像をユーザの瞳Eに効率よく集光することができる。
【0050】
なお、
図4を参照して説明した第1直線偏光LP1を第2直線偏光LP2に置換してもよいし、第1円偏光CP1を第2円偏光CP2に置換してもよい。
【0051】
次に、本実施形態に係る表示装置DSPの第2構成例について説明する。なお、以下の説明では、第1構成例と同一の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0052】
《第2構成例》
図5は、表示装置DSPの第2構成例を示す断面図である。
図5に示す第2構成例は、
図3に示した第1構成例と比較して、光学システム4の構成が相違している。
【0053】
すなわち、表示装置DSPは、表示パネル2と、光学システム4と、を備えている。表示パネル2の詳細については省略するが、表示領域DAにおいて直線偏光の表示光DLを出射するように構成されている。
【0054】
光学システム4は、第1位相差板R1と、半透過層HMと、第2位相差板R2と、透明固体TSと、反射偏光板PRと、第3位相差板R3と、液晶素子10と、を備えている。第1位相差板R1、第2位相差板R2、及び、第3位相差板R3は、1/4波長板であり、透過する光に対して1/4波長の位相差を付与するものである。なお、第2構成例における第1位相差板R1、第2位相差板R2、及び、第3位相差板R3は、第1構成例の第1位相差板R1などと同様に、広帯域型の位相差板を適用することができる。
【0055】
半透過層HMは、入射光のうちの一部の光を透過し、その他の光を反射するものである。第2構成例における半透過層HMは、X-Y平面に沿った平板状に形成されている。透明固体TSは、屈折率異方性がほぼゼロであり、詳細については第1構成例で説明した通りである。
【0056】
反射偏光板PRは、入射光のうち、第1直線偏光を透過し、第1直線偏光と直交する第2直線偏光を反射するものである。液晶素子10は、特定波長の光に対して1/2波長の位相差を付与するとともに、第1円偏光を集光するレンズ作用を有するものである。なお、ここでは、円偏光を集光するレンズ作用を有する素子の一例として、液晶素子10を挙げたが、同等のレンズ作用を有するものであれば、液晶を利用した素子に限定されるものではない。
【0057】
第1位相差板R1、半透過層HM、第2位相差板R2、透明固体TS、反射偏光板PR、第3位相差板R3、及び、液晶素子10は、X-Y平面において、表示領域DAよりも広い範囲に亘って延在している。また、第1位相差板R1、半透過層HM、第2位相差板R2、透明固体TS、反射偏光板PR、第3位相差板R3、及び、液晶素子10は、この順に、第3方向Zに沿って積層されている。
【0058】
つまり、第1位相差板R1は表示パネル2(あるいは第2偏光板PL2)に接し、半透過層HMは第1位相差板R1に接し、第2位相差板R2は半透過層HMに接し、半透過層HMは第1位相差板R1と第2位相差板R2との間に位置している。また、第3位相差板R3は反射偏光板PRに接し、液晶素子10は第3位相差板R3に接し、第3位相差板R3は反射偏光板PRと液晶素子10との間に位置している。
【0059】
透明固体TSは、半透過層HMと反射偏光板PRとの間に配置され、半透過層HMに対向する側の第1面TSAと、反射偏光板PRに対向する側の第2面TSBと、を有している。
図5に示す例では、第2位相差板R2は、半透過層HMに接し、透明固体TSは、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に配置され、第2位相差板R2に接する平坦な第1面TSAと、反射偏光板PRに接する平坦な第2面TSBと、を有している。透明固体TSの第1面TSA及び第2面TSBは、いずれも表示領域DAよりも広い範囲に亘って延在している。
【0060】
図6は、
図5に示した液晶素子10の一例を示す断面図である。液晶素子10は、基板11と、配向膜AL11と、液晶層(第1液晶層)LC1と、配向膜AL12と、基板12と、を備えている。
【0061】
基板11及び12は、光を透過する透明基板であり、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。基板11は、例えば、
図5に示した第3位相差板R3と接着されるが、第3位相差板R3と置換してもよい。
【0062】
配向膜AL11は、基板11の内面11Aに配置されている。
図6に示す例では、配向膜AL11は、基板11に接しているが、配向膜AL11と基板11との間に他の薄膜が介在していてもよい。
配向膜AL12は、基板12の内面12Aに配置されている。
図6に示す例では、配向膜AL12は、基板12に接しているが、配向膜AL12と基板12との間に他の薄膜が介在していてもよい。配向膜AL12は、第3方向Zにおいて、配向膜AL11と対向している。
配向膜AL11及びAL12は、例えば、ポリイミドによって形成され、いずれもX-Y平面に沿った配向規制力を有する水平配向膜である。
【0063】
液晶層LC1は、配向膜AL11及びAL12の間に配置され、配向膜AL11及びAL12に接している。液晶層LC1は、第3方向Zに沿った厚さd1を有している。液晶層LC1は、第3方向Zに沿った配向方向が揃ったネマティック液晶を有している。
【0064】
すなわち、液晶層LC1は、複数の液晶構造体LMS1を有している。1つの液晶構造体LMS1に着目すると、液晶構造体LMS1は、その一端側に位置する液晶分子LM11と、その他端側に位置する液晶分子LM12と、を有している。液晶分子LM11は配向膜AL11に近接し、液晶分子LM12は配向膜AL12に近接している。液晶分子LM11の配向方向、及び、液晶分子LM12の配向方向は、ほぼ一致している。また、液晶分子LM11と液晶分子LM12との間の他の液晶分子LM1の配向方向も、液晶分子LM11の配向方向とほぼ一致している。なお、ここでの液晶分子LM1の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子の長軸の方向に相当する。
【0065】
また、液晶層LC1において、第1方向Xに沿って隣接する複数の液晶構造体LMS1は、互いに配向方向が異なっている。同様に、第2方向Yに沿って隣接する複数の液晶構造体LMS1についても、互いに配向方向が異なっている。配向膜AL11に沿って並んだ複数の液晶分子LM11の配向方向、及び、配向膜AL12に沿って並んだ複数の液晶分子LM12の配向方向は、連続的(あるいは線形)に変化している。
【0066】
このような液晶層LC1は、液晶分子LM11及び液晶分子LM12を含む液晶分子LM1の配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LM1の配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、液晶素子10は、配向制御のための電極を備えていない。
【0067】
液晶層LC1の屈折率異方性あるいは複屈折性(液晶層LC1の異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)をΔnとしたとき、液晶層LC1のリタデーション(位相差)Δn・d1は、特定波長λの1/2に設定されている。
【0068】
図7は、
図6に示した液晶層LC1における配向パターンの一例を示す平面図である。
図7には、液晶層LC1のX-Y平面における空間位相の一例が示されている。ここに示す空間位相は、液晶構造体LMS1に含まれる液晶分子LM1のうち、配向膜AL11に近接する液晶分子LM11の配向方向として示している。
【0069】
図中の点線で示した同心円では、空間位相が揃っている。あるいは、隣接する2つの同心円で囲まれた環状領域では、液晶分子LM11の配向方向が揃っている。但し、隣接する環状領域の液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なっている。
【0070】
例えば、液晶層LC1は、平面視において、第1環状領域C1と、第2環状領域C2と、を有している。第2環状領域C2は、第1環状領域C1の外側に位置している。第1環状領域C1は、同一方向に配向した第1液晶分子LM111によって構成されている。また、第2環状領域C2は、同一方向に配向した第2液晶分子LM112によって構成されている。第1液晶分子LM111の配向方向は、第2液晶分子LM112の配向方向とは異なっている。
【0071】
同様に、同心円の中心の領域から、径方向に沿って並んだ液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なり、連続的に変化している。つまり、図示したX-Y平面内において、液晶層LC1の空間位相は、径方向に沿って異なり、連続的に変化している。
【0072】
このような構成の液晶素子10に第1円偏光が入射した場合、第1円偏光は、同心円の中心に向かって集光され、しかも、液晶素子10の透過光は、第1円偏光とは逆回りの第2円偏光に変換される。
【0073】
図8は、表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
【0074】
まず、表示パネル2は、第1直線偏光LP1の表示光DLを出射する。ここでの表示光DLとは、特定波長λの光である。表示光DLは、第1位相差板R1を透過して第1円偏光CP1に変換される。
【0075】
第1位相差板R1を透過した第1円偏光CP1のうち、一部の第1円偏光CP1は半透過層HMを透過し、他の第1円偏光CP1は半透過層HMで反射される。半透過層HMを透過した第1円偏光CP1は、第2位相差板R2を透過して第2直線偏光LP2に変換される。
【0076】
なお、第1円偏光CP1が半透過層HMで反射された際には、第1円偏光CP1とは逆回りの第2円偏光CP2に変換される。半透過層HMで反射された第2円偏光CP2は、第1位相差板R1を透過して第2直線偏光LP2に変換され、表示パネル2において吸収される。
【0077】
第2位相差板R2を透過した第2直線偏光LP2は、透明固体TSを透過した後、反射偏光板PRで反射される。反射偏光板PRで反射された第2直線偏光LP2は、透明固体TSを透過した後、第2位相差板R2を透過して第1円偏光CP1に変換される。
【0078】
第2位相差板R2を透過した第1円偏光CP1のうち、一部の第1円偏光CP1は半透過層HMで反射され、他の第1円偏光CP1は半透過層HMを透過する。第1円偏光CP1が半透過層HMで反射された際には、第2円偏光CP2に変換される。半透過層HMで反射された第2円偏光CP2は、第2位相差板R2を透過して第1直線偏光LP1に変換される。
なお、半透過層HMを透過した第1円偏光CP1は、第1位相差板R1を透過して第1直線偏光LP1に変換される。
【0079】
第2位相差板R2を透過した第1直線偏光LP1は、透明固体TSを透過した後、反射偏光板PRを透過し、さらに、第3位相差板R3を透過して第1円偏光CP1に変換される。第3位相差板R3を透過した第1円偏光CP1は、液晶素子10において、第2円偏光CP2に変換されるとともにレンズ作用を受けてユーザの瞳Eに集光される。
【0080】
このような第2構成例においても、上記の第1構成例と同様の効果が得られる。
【0081】
なお、
図8を参照して説明した第1直線偏光LP1を第2直線偏光LP2に置換してもよいし、第1円偏光CP1を第2円偏光CP2に置換してもよい。
【0082】
次に、本実施形態に係る表示装置DSPの第3構成例について説明する。
【0083】
《第3構成例》
図9は、表示装置DSPの第2構成例を示す断面図である。
図9に示す第2構成例は、
図3に示した第1構成例と比較して、光学システム4の構成が相違している。
【0084】
すなわち、表示装置DSPは、表示パネル2と、光学システム4と、を備えている。表示パネル2の詳細については省略するが、表示領域DAにおいて直線偏光の表示光DLを出射するように構成されている。
【0085】
光学システム4は、第1位相差板R1と、ホログラフィック光学素子20と、第2位相差板R2と、透明固体TSと、反射偏光板PRと、を備えている。第1位相差板R1及び第2位相差板R2は、1/4波長板であり、透過する光に対して1/4波長の位相差を付与するものである。なお、第3構成例における第1位相差板R1及び第2位相差板R2は、第1構成例の第1位相差板R1などと同様に、広帯域型の位相差板を適用することができる。
【0086】
ホログラフィック光学素子20は、入射光のうちの一部の光を反射・回折するとともに、集光するレンズ作用を有するものである。ホログラフィック光学素子20は、干渉縞のパターンを有し、入射光を所定の方向に回折するものである。
【0087】
透明固体TSは、屈折率異方性がほぼゼロであり、詳細については第1構成例で説明した通りである。反射偏光板PRは、入射光のうち、第1直線偏光を透過し、第1直線偏光と直交する第2直線偏光を反射するものである。
【0088】
第1位相差板R1、ホログラフィック光学素子20、第2位相差板R2、透明固体TS、及び、反射偏光板PRは、X-Y平面において、表示領域DAよりも広い範囲に亘って延在している。また、第1位相差板R1、ホログラフィック光学素子20、第2位相差板R2、透明固体TS、及び、反射偏光板PRは、この順に、第3方向Zに沿って積層されている。
【0089】
つまり、第1位相差板R1は表示パネル2(あるいは第2偏光板PL2)に接し、ホログラフィック光学素子20は第1位相差板R1に接し、第2位相差板R2はホログラフィック光学素子20に接し、ホログラフィック光学素子20は第1位相差板R1と第2位相差板R2との間に位置している。
透明固体TSは、ホログラフィック光学素子20と反射偏光板PRとの間に配置され、ホログラフィック光学素子20に対向する側の第1面TSAと、反射偏光板PRに対向する側の第2面TSBと、を有している。
図9に示す例では、第2位相差板R2は、ホログラフィック光学素子20に接し、また、透明固体TSは、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に配置され、第2位相差板R2に接する平坦な第1面TSAと、反射偏光板PRに接する平坦な第2面TSBと、を有している。透明固体TSの第1面TSA及び第2面TSBは、いずれも表示領域DAよりも広い範囲に亘って延在している。
【0090】
図10は、表示装置DSPの光学作用を説明するための図である。
【0091】
まず、表示パネル2は、第1直線偏光LP1の表示光DLを出射する。表示光DLは、第1位相差板R1を透過して第1円偏光CP1に変換される。
【0092】
第1位相差板R1を透過した第1円偏光CP1のうち、一部の第1円偏光CP1はホログラフィック光学素子20を透過し、他の第1円偏光CP1はホログラフィック光学素子20で反射される。ホログラフィック光学素子20を透過した第1円偏光CP1は、第2位相差板R2を透過して第2直線偏光LP2に変換される。
【0093】
なお、第1円偏光CP1がホログラフィック光学素子20で反射された際には、第1円偏光CP1とは逆回りの第2円偏光CP2に変換される。ホログラフィック光学素子20で反射された第2円偏光CP2は、第1位相差板R1を透過して第2直線偏光LP2に変換され、表示パネル2において吸収される。
【0094】
第2位相差板R2を透過した第2直線偏光LP2は、透明固体TSを透過した後、反射偏光板PRで反射される。反射偏光板PRで反射された第2直線偏光LP2は、透明固体TSを透過した後、第2位相差板R2を透過して第1円偏光CP1に変換される。
【0095】
第2位相差板R2を透過した第1円偏光CP1のうち、一部の第1円偏光CP1はホログラフィック光学素子20反射・回折され、他の第1円偏光CP1はホログラフィック光学素子20を透過する。第1円偏光CP1がホログラフィック光学素子20で反射・回折された際には、第2円偏光CP2に変換される。ホログラフィック光学素子20で反射された第2円偏光CP2は、第2位相差板R2を透過して第1直線偏光LP1に変換される。
なお、ホログラフィック光学素子20を透過した第1円偏光CP1は、第1位相差板R1を透過して第1直線偏光LP1に変換される。
【0096】
第2位相差板R2を透過した第1直線偏光LP1は、透明固体TSを透過した後、反射偏光板PRを透過し、ホログラフィック光学素子20のレンズ作用を受けてユーザの瞳Eに集光される。
【0097】
このような第3構成例においても、上記の第1構成例と同様の効果が得られる。
【0098】
なお、
図10を参照して説明した第1直線偏光LP1を第2直線偏光LP2に置換してもよいし、第1円偏光CP1を第2円偏光CP2に置換してもよい。
【0099】
上記の第1構成例、第2構成例、及び、第3構成例において、照明装置3は、導光板の側面に沿って複数の発光素子を備えた構成であってもよいし、表示パネルの直下に複数の発光素子LDが配置される構成であってもよい。例えば、
図11には、照明装置3の主要部のみを示している。
【0100】
照明装置3は、導光板LGと、複数の発光素子LDと、を備えている。複数の発光素子LDは、それぞれ導光板LGの側面LGSと対向している。発光素子LDは、青波長(第1波長)の光を出射する第1発光素子LDBと、緑波長(第2波長)の光を出射する第2発光素子LDGと、赤波長(第3波長)の光を出射する第3発光素子LDRと、を含んでいる。第1発光素子LDB、第2発光素子LDG、及び、第3発光素子LDRは、間隔をおいて並んでいる。
【0101】
発光素子LDからの出射光は、スペクトル幅が狭い(あるいは、色純度が高い)ことが望ましい。このため、発光素子LDとしては、レーザー光源を適用することが望ましい。第1発光素子(第1レーザー素子)LDBから出射される青レーザー光の中心波長をλbとし、第2発光素子(第2レーザー素子)LDGから出射される緑レーザー光の中心波長をλgとし、第3発光素子(第3レーザー素子)LDRから出射される赤レーザー光の中心波長をλrとする。
【0102】
図12は、表示装置DSPの変形例を示す断面図である。ここに示す変形例は、
図5に示した第2構成例と比較して、表示装置DSPが複数の液晶素子を備えた点で相違している。例えば、
図12に示した第1発光素子LDBと、第2発光素子LDGと、第3発光素子LDRと、を備える照明装置3が適用される場合、表示装置DSPは、第1液晶素子10Bと、第2液晶素子10Gと、第3液晶素子10Rと、を備えている。第1液晶素子10B、第2液晶素子10G、及び、第3液晶素子10Rは、第3方向Zに積層されるが、積層順は問わない。
【0103】
第1液晶素子10Bは、青波長(第1波長)λbの光に対して1/2波長の位相差を付与するとともに、青波長λbの第1円偏光を集光するレンズ作用を有するものである。つまり、第1液晶素子10Bのリタデーションは、第1発光素子LDBから出射される青レーザー光の中心波長λbに対応するように最適化されている。
【0104】
また、第2液晶素子10Gは、緑波長(第2波長)λgの光に対して1/2波長の位相差を付与するとともに、緑波長λgの第1円偏光を集光するレンズ作用を有するものである。つまり、第2液晶素子10Gのリタデーションは、第2発光素子LDGから出射される緑レーザー光の中心波長λgに対応するように最適化されている。このため、第2液晶素子10Gのリタデーションは、第1液晶素子10Bのリタデーションより大きい。
【0105】
さらに、第3液晶素子10Rは、赤波長(第3波長)λrの光に対して1/2波長の位相差を付与するとともに、赤波長λrの第1円偏光を集光するレンズ作用を有するものである。つまり、第3液晶素子10Rのリタデーションは、第3発光素子LDRから出射される赤レーザー光の中心波長λrに対応するように最適化されている。このため、第3液晶素子10Rのリタデーションは、第2液晶素子10Gのリタデーションより大きい。
【0106】
このような変形例によれば、表示装置DSPが照明装置3の発光素子LDの発光波長に合わせた複数の液晶素子10B、10G、10Rを備えることにより、カラー画像を効率よく瞳に集光することができる。
【0107】
以下に、その他の変形例について説明する。
【0108】
図13は、表示装置DSPの変形例を示す断面図である。ここに示す変形例は、
図3に示した第1構成例と比較して、透明固体TSと第2位相差板R2とが入れ替わっている。つまり、第2位相差板R2は、半透過層HMの凹面CCに配置されている。
図13に示す例では、第2位相差板R2は、凹面CCに接し、透明固体TSは、第2位相差板R2と反射偏光板PRとの間に配置されている。透明固体TSは、凹面CCに対向し第2位相差板R2に接する凸状の第1面TSAと、反射偏光板PRに接する平坦な第2面TSBと、を有している。要するに、第1構成例においては、透明固体TSは、半透過層HMと反射偏光板PRとの間に配置されていればよい。
このような変形例においても、第1構成例と同様の効果が得られる。
【0109】
図14は、表示装置DSPの変形例を示す断面図である。ここに示す変形例は、
図5に示した第2構成例と比較して、透明固体TSと第2位相差板R2とが入れ替わっている。つまり、第2位相差板R2は、反射偏光板PRと透明固体TSとの間に配置されている。
図14に示す例では、第2位相差板R2は、反射偏光板PRに接し、透明固体TSは、半透過層HMと第2位相差板R2との間に配置され、半透過層HMに接する平坦な第1面TSAと、第2位相差板R2に接する平坦な第2面TSBと、を有している。要するに、第2構成例においては、透明固体TSは、半透過層HMと反射偏光板PRとの間に配置されていればよい。
このような変形例においても、第2構成例と同様の効果が得られる。
【0110】
図15は、表示装置DSPの変形例を示す断面図である。ここに示す変形例は、
図9に示した第3構成例と比較して、透明固体TSと第2位相差板R2とが入れ替わっている。つまり、第2位相差板R2は、反射偏光板PRと透明固体TSとの間に配置されている。
図15に示す例では、第2位相差板R2は、反射偏光板PRに接し、透明固体TSは、ホログラフィック光学素子20と第2位相差板R2との間に配置され、ホログラフィック光学素子20に接する平坦な第1面TSAと、第2位相差板R2に接する平坦な第2面TSBと、を有している。要するに、第3構成例においては、透明固体TSは、ホログラフィック光学素子20と反射偏光板PRとの間に配置されていればよい。
このような変形例においても、第3構成例と同様の効果が得られる。
【0111】
以上説明したように、本実施形態によれば、表示品位の低下を抑制することができる。
【0112】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1…ヘッドマウントディスプレイ 2…表示パネル 3…照明装置 4…光学システム
DSP…表示装置
R1…第1位相差板 R2…第2位相差板 R3…第3位相差板
HM…半透過層 PR…反射偏光板
TS…透明固体 TSA…第1面 TSB…第2面
10…液晶素子 20…ホログラフィック光学素子