(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B25F5/00 H
B25F5/00 C
(21)【出願番号】P 2020178980
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 均
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-151919(JP,A)
【文献】特開2016-015793(JP,A)
【文献】特開2012-205492(JP,A)
【文献】特開2017-184463(JP,A)
【文献】特開2016-087696(JP,A)
【文献】特開2013-027217(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158133(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0312902(US,A1)
【文献】米国特許第10307841(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
H02M7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動作業機であって、
バッテリから電力の供給を受けて駆動するように構成されたモータと、
前記バッテリの正極から前記モータに至る電源ラインと、前記バッテリの負極から前記モータに至るグランドラインとの間で、前記モータに対して並列接続されるサージキラーコンデンサと、
前記サージキラーコンデンサに対して直列接続されるダイオードと、
前記ダイオードに対して並列接続され、前記サージキラーコンデンサに蓄積された電荷を放出するように構成された放電路と
を備
え、
前記ダイオードが前記サージキラーコンデンサと前記グランドラインとの間で直列接続される場合には、前記ダイオードのアノードが前記サージキラーコンデンサに接続され、
前記ダイオードが前記電源ラインと前記サージキラーコンデンサとの間で直列接続される場合には、前記ダイオードのカソードが前記サージキラーコンデンサに接続される電動作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記放電路は抵抗器を含む電動作業機。
【請求項3】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記放電路はコンデンサを含む電動作業機。
【請求項4】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記ダイオードおよび前記放電路が電界効果トランジスタにより形成さ
れ、
前記ダイオードは、前記電界効果トランジスタの寄生ダイオードであり、
前記寄生ダイオードが前記サージキラーコンデンサと前記グランドラインとの間で直列接続される場合には、前記寄生ダイオードのアノードが前記サージキラーコンデンサに接続されるようにして、前記電界効果トランジスタが前記サージキラーコンデンサに対して直列接続され、
前記寄生ダイオードが前記電源ラインと前記サージキラーコンデンサとの間で直列接続される場合には、前記寄生ダイオードのカソードが前記サージキラーコンデンサに接続されるようにして、前記電界効果トランジスタが前記サージキラーコンデンサに対して直列接続され、
前記電界効果トランジスタがオン状態になることにより、前記放電路が形成される電動作業機。
【請求項5】
請求項2に記載の電動作業機であって、
前記バッテリから前記モータへの通電を、所定のPWM周波数にてPWM制御するように構成された通電制御部を備え、
前記サージキラーコンデンサと前記抵抗器とにより形成される回路のカットオフ周波数は、前記PWM周波数より高い電動作業機。
【請求項6】
請求項3に記載の電動作業機であって、
前記放電路として機能する前記コンデンサの静電容量は、前記サージキラーコンデンサの静電容量より小さい電動作業機。
【請求項7】
請求項4に記載の電動作業機であって、
前記バッテリから前記モータへの通電を、所定のPWM周波数にてPWM制御するように構成された通電制御部と、
前記電界効果トランジスタのオン状態とオフ状態とを切り替える切替制御を実行するように構成されたトランジスタ制御部とを備え、
前記トランジスタ制御部は、
前記通電制御部がPWMデューティに従って前記バッテリから前記モータへの通電を遮断するPWMオフ動作を実行する直前、または、前記PWMオフ動作の直後に、前記電界効果トランジスタをオン状態にするように構成され、
前記通電制御部が前記PWMデューティに従って前記バッテリから前記モータへ通電させるPWMオン動作を実行する前に、前記電界効果トランジスタをオフ状態にするように構成される電動作業機。
【請求項8】
請求項4に記載の電動作業機であって、
前記バッテリから前記モータへの通電を、所定のPWM周波数にてPWM制御するように構成された通電制御部と、
前記電界効果トランジスタのオン状態とオフ状態とを切り替える切替制御を実行するように構成されたトランジスタ制御部とを備え、
前記トランジスタ制御部は、
前記通電制御部がPWMデューティに従って前記バッテリから前記モータへ通電させるPWMオン動作を実行する前、または、前記PWMオン動作の実行と同時に、前記電界効果トランジスタをオン状態にするように構成され、
前記電界効果トランジスタをオン状態にした後に、前記電界効果トランジスタをオフ状態にするように構成される電動作業機。
【請求項9】
請求項1~
請求項8の何れか1項に記載の電動作業機であって、
前記モータが駆動を停止しているときに、前記電源ラインと前記グランドラインと間に生じるサージ電圧と、前記バッテリの電圧であるバッテリ電圧とを測定するように構成された停止時電圧測定部と、
前記停止時電圧測定部により測定された前記サージ電圧または前記バッテリ電圧が、予め設定された第1異常判断値以上であるか、前記第1異常判断値より小さくなるように設定された第2異常判断値以下である場合に、当該電動作業機で異常が発生していると判断するように構成された電圧異常判断部とを備える電動作業機。
【請求項10】
請求項1~
請求項9の何れか1項に記載の電動作業機であって、
前記モータが駆動しているときに、前記電源ラインと前記グランドラインと間に生じるサージ電圧と、前記バッテリの電圧であるバッテリ電圧とを測定するように構成された駆動時電圧測定部と、
前記駆動時電圧測定部により測定された前記サージ電圧と前記バッテリ電圧との電圧差が予め設定された許容範囲外である場合に、当該電動作業機で異常が発生していると判断するように構成された電圧差異常判断部とを備える電動作業機。
【請求項11】
請求項1~
請求項10の何れか1項に記載の電動作業機であって、
前記電源ラインと前記グランドラインと間に生じるサージ電圧の大きさに応じた値のサージ電圧検出信号が入力されるように構成されたサージ電圧読込ポートと、
前記バッテリの電圧であるバッテリ電圧の大きさに応じた値のバッテリ電圧検出信号が入力されるように構成されたバッテリ電圧読込ポートと、
前記サージ電圧読込ポートまたは前記バッテリ電圧読込ポートの電圧レベルをハイレベルまたはローレベルに設定するように構成された出力設定部と、
前記サージ電圧読込ポートおよび前記バッテリ電圧読込ポートのうち、前記出力設定部が前記電圧レベルをハイレベルまたはローレベルに設定したポートを設定ポートとし、前記出力設定部が前記電圧レベルをハイレベルまたはローレベルに設定しなかったポートを非設定ポートとして、前記設定ポートの前記電圧レベルをハイレベルまたはローレベルに設定する前と後とで前記非設定ポートの電圧が変化した場合に、当該電動作業機で異常が発生していると判断するように構成されたポート異常判断部とを備える電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電動作業機は、バッテリの内部インダクタンスに流れる電流が急速に減少することにより発生するサージ電圧を低減するために、サージキラーコンデンサを備えている。サージキラーコンデンサは、バッテリの正極側からモータに至る電源ラインと、バッテリの負極側からモータに至るグランドラインとの間に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サージキラーコンデンサには、ラインインダクタンスによるサージ電流だけではなく、PWM制御時においてバッテリ電圧を平滑化するための充放電電流(以下、リプル電流)も流れる。
【0005】
ここで、PWM制御によりサージキラーコンデンサに流れるリプル電流を考える。バッテリ電流をPWM制御により所定値(例えば、40A)に制限する電流制限機能の作動時に、サージキラーコンデンサに連続して流れるリプル電流は最大となる。そして、サージキラーコンデンサの静電容量が十分大きい場合に、リプル電流は、PWMデューティが50%の時に、バッテリ電流と同じ値(例えば、40A)となる。
【0006】
これに対し、サージキラーコンデンサに流れる、電源ラインに存在するバッテリインダクタンスを含むラインインダクタンスにより生じるサージ電流値は、PWM制御の1周期で発生するサージ電流の平均値に基づいて、以下のようにして算出される。
【0007】
例えば、バッテリ電流を100A、バッテリ電流が100Aから0Aに減少する電流遮断時間を1μs、PWM制御の1周期を50μs、電流遮断時にサージキラーコンデンサに流れる電流(すなわち、サージ電流)をIc[A]とすると、「Ic=(100[A]-0[A])×1[μs]/50[μs]」となり、サージ電流の平均値は2Aとなる。
【0008】
従って、サージキラーコンデンサの静電容量が、サージ吸収に必要な容量より十分に大きく、PWMデューティが50%である場合には、サージキラーコンデンサに流れる電流のうち、サージ吸収のために流れる電流は全体の5%であり、95%は目的外の電流が流れているということが分かる。
【0009】
サージキラーコンデンサによってサージエネルギーを十分に吸収することができないと、バッテリの正極と負極とを接続する電源入力端子間に過大なサージ電圧が発生し、サージ電圧により回路が高電圧破壊に至ることが予想される。
また、サージエネルギーのバラツキ要因は多々存在する。このため、サージキラーコンデンサの静電容量を、サージ吸収に必要な最小容量に対し十分なマージンを持った値としなければ、故障リスクを低減できないという制約がある。
【0010】
ここで、サージキラーコンデンサの静電容量を、最小容量より増加させていく場合を考えると、バッテリ内部インピーダンスよりサージキラーコンデンサの内部インピーダンスの方が小さいことから、PWMオフからPWMオンへ変化した時にサージキラーコンデンサに流れる電流は、電源ラインの電流よりも多くなる。従って、サージキラーコンデンサの静電容量を増加させると、サージキラーコンデンサの放電量(すなわち、放電電流)も増加し、サージキラーコンデンサの発熱量が、増加した電流の2乗に比例して増大していくことになる。
【0011】
この発熱対策のために、コンデンサのESR低下、および、コンデンサ放熱面積の拡大等が現実策として考えられる。しかし、これらは共に、コンデンサを大型化(すなわち、高容量化)しなければ達成することができない。つまり、現実的な発熱対策を行えば、「コンデンサの高容量化」→「コンデンサの電流増加」→「発熱の増加」→「更なる大型化」となり、サージキラーコンデンサの大型化および大容量化が避けられないことが課題となる。
【0012】
本開示の一態様は、サージキラーコンデンサの発熱劣化を抑制し、この発熱劣化(すなわち、静電容量の低下)に伴い上昇するサージ電圧による過電圧故障の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様は、電動作業機であって、モータと、サージキラーコンデンサと、ダイオードと、放電路とを備える。
モータは、バッテリから電力の供給を受けて駆動するように構成される。サージキラーコンデンサは、バッテリの正極からモータに至る電源ラインと、バッテリの負極からモータに至るグランドラインとの間で、モータに対して並列接続される。
【0014】
ダイオードは、サージキラーコンデンサに対して直列接続される。放電路は、ダイオードに対して並列接続され、サージキラーコンデンサに蓄積された電荷を放出するように構成される。
【0015】
このように構成された本開示の電動作業機は、サージキラーコンデンサに対して直列接続されたダイオードによって、サージキラーコンデンサの放電が抑制され、バッテリの電圧よりサージキラーコンデンサの電圧の方が低くなりにくいことから、バッテリからの充電も抑制される。これにより、本開示の電動作業機は、サージキラーコンデンサにリプル電流が流れるのを抑制し、サージキラーコンデンサの静電容量を大きくすることなく、サージキラーコンデンサにリプル電流が流れることによるサージキラーコンデンサの発熱劣化を抑制することができる。そして、本開示の電動作業機は、サージキラーコンデンサの発熱劣化の抑制によって、この発熱劣化(すなわち、静電容量の低下)に伴い上昇するサージ電圧による過電圧故障の発生を抑制することができる。
【0016】
放電路は抵抗器を含んでもよい。これにより、本開示の電動作業機は、サージキラーコンデンサで吸収したサージエネルギーの放出路を確保するととともに、放電電流を制御することができる。また、放電路の制限よって、バッテリの電圧よりサージキラーコンデンサの電圧を高くし、サージ以外の充電をされ難くすることができる。
【0017】
放電路はコンデンサを含んでもよい。これにより、本開示の電動作業機は、モータがバッテリからの電力供給を受けていない状態から電力供給を受ける状態へ切り替わったときの放電路が確保され、バッテリの瞬停時間を短くすることができる。
【0018】
ダイオードおよび放電路が電界効果トランジスタにより形成されてもよい。すなわち、本開示の電動作業機は、電界効果トランジスタの寄生ダイオードを、サージキラーコンデンサに対して直列接続されるダイオードとして利用し、電界効果トランジスタをオン状態とすることにより電界効果トランジスタを放電路として確保することができる。
【0019】
電動作業機は、バッテリからモータへの通電を、所定のPWM周波数にてPWM制御するように構成された通電制御部を備え、サージキラーコンデンサと抵抗器とにより形成される回路のカットオフ周波数は、PWM周波数より高くてもよい。これにより、本開示の電動作業機は、通電制御部によるPWM制御の1周期内に、サージキラーコンデンサの放電を完了させることができる。
【0020】
放電路として機能するコンデンサの静電容量は、サージキラーコンデンサの静電容量より小さくてもよい。
電動作業機は、バッテリからモータへの通電を、所定のPWM周波数にてPWM制御するように構成された通電制御部と、電界効果トランジスタのオン状態とオフ状態とを切り替える切替制御を実行するように構成されたトランジスタ制御部とを備えてもよい。またトランジスタ制御部は、通電制御部がPWMデューティに従ってバッテリからモータへの通電を遮断するPWMオフ動作を実行する直前、または、PWMオフ動作の直後に、電界効果トランジスタをオン状態にしてもよい。またトランジスタ制御部は、通電制御部がPWMデューティに従ってバッテリからモータへ通電させるPWMオン動作を実行する前に、電界効果トランジスタをオフ状態にしてもよい。これにより、本開示の電動作業機は、サージ発生中にダイオードを短絡することができ、サージ電流によるダイオードの発熱を低減することができる。
【0021】
電動作業機は、バッテリからモータへの通電を、所定のPWM周波数にてPWM制御するように構成された通電制御部と、電界効果トランジスタのオン状態とオフ状態とを切り替える切替制御を実行するように構成されたトランジスタ制御部とを備えてもよい。またトランジスタ制御部は、通電制御部がPWMデューティに従ってバッテリからモータへ通電させるPWMオン動作を実行する前、または、PWMオン動作の実行と同時に、電界効果トランジスタをオン状態にしてもよい。またトランジスタ制御部は、電界効果トランジスタをオン状態にした後に、電界効果トランジスタをオフ状態にしてもよい。これにより、本開示の電動作業機は、PWMオン動作時にモータへ向かって電源ラインに流れるラッシュ電流を、サージキラーコンデンサから供給可能にすることができる。
ダイオードは、サージキラーコンデンサと、グランドラインとの間で、アノードがサージキラーコンデンサに接続されてもよいし、電源ラインと、サージキラーコンデンサとの間で、カソードがサージキラーコンデンサに接続されてもよい。
【0022】
電動作業機は、停止時電圧測定部と、電圧異常判断部とを備えてもよい。停止時電圧測定部は、モータが駆動を停止しているときに、電源ラインとグランドラインと間に生じるサージ電圧と、バッテリの電圧であるバッテリ電圧とを測定するように構成される。電圧異常判断部は、停止時電圧測定部により測定されたサージ電圧またはバッテリ電圧が、予め設定された第1異常判断値以上であるか、第1異常判断値より小さくなるように設定された第2異常判断値以下である場合に、当該電動作業機で異常が発生していると判断するように構成される。これにより、本開示の電動作業機は、サージ電圧およびバッテリ電圧に基づいて、停止時電圧測定部の異常を検出することができる。
【0023】
電動作業機は、駆動時電圧測定部と、電圧差異常判断部とを備えてもよい。駆動時電圧測定部は、モータが駆動しているときに、電源ラインとグランドラインと間に生じるサージ電圧と、バッテリの電圧であるバッテリ電圧とを測定するように構成される。電圧差異常判断部は、駆動時電圧測定部により測定されたサージ電圧とバッテリ電圧との電圧差が予め設定された許容範囲外である場合に、当該電動作業機で異常が発生していると判断するように構成される。これにより、本開示の電動作業機は、サージ電圧およびバッテリ電圧に基づいて、駆動時電圧測定部およびサージキラーコンデンサの異常を検出することができる。
【0024】
電動作業機は、サージ電圧読込ポートと、バッテリ電圧読込ポートと、出力設定部と、ポート異常判断部とを備えてもよい。
サージ電圧読込ポートは、電源ラインとグランドラインと間に生じるサージ電圧の大きさに応じた値のサージ電圧検出信号が入力されるように構成される。バッテリ電圧読込ポートは、バッテリの電圧であるバッテリ電圧の大きさに応じた値のバッテリ電圧検出信号が入力されるように構成される。
【0025】
出力設定部は、サージ電圧読込ポートまたはバッテリ電圧読込ポートの電圧レベルをハイレベルまたはローレベルに設定するように構成される。
ポート異常判断部は、設定ポートの電圧レベルをハイレベルまたはローレベルに設定する前と後とで非設定ポートの電圧が変化した場合に、当該電動作業機で異常が発生していると判断するように構成される。設定ポートは、サージ電圧読込ポートおよびバッテリ電圧読込ポートのうち、出力設定部が電圧レベルをハイレベルまたはローレベルに設定したポートである。非設定ポートは、サージ電圧読込ポートおよびバッテリ電圧読込ポートのうち、出力設定部が電圧レベルをハイレベルまたはローレベルに設定しなかったポートである。
【0026】
これにより、本開示の電動作業機は、サージ電圧およびバッテリ電圧に基づいて、サージ電圧およびバッテリ電圧の電圧測定ラインにおける短絡故障を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】第1実施形態の電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態における各種電流および各種電圧の時間変化を示す図である。
【
図4】第1比較例の電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】第1比較例における各種電流および各種電圧の時間変化を示す図である。
【
図6】第2比較例の電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】第2比較例における各種電流および各種電圧の時間変化を示す図である。
【
図8】第3比較例の電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図9】第3比較例における各種電流および各種電圧の時間変化を示す図である。
【
図10】第2実施形態の電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図11】第2実施形態における各種電流および各種電圧の時間変化を示す図である。
【
図12】第3実施形態の電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図13】PWMタイマ割込処理を示すフローチャートである。
【
図14】FETタイマ割込処理を示すフローチャートである。
【
図15】第1バッテリ電圧チェック処理を示すフローチャートである。
【
図16】第2バッテリ電圧チェック処理を示すフローチャートである。
【
図17】第3実施形態における各種電流および各種電圧の時間変化を示す図である。
【
図18】別の実施形態の電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図19】更に別の実施形態の電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
以下に本開示の例示的な第1実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態の電動作業機1は、
図1に示すように、被加工部材を切断するために使用されるマルノコである。
【0029】
電動作業機1は、ベース2と、本体部3とを備える。ベース2は、被加工部材の切断作業を行う際に切断対象の被加工部材の上面に接触する略矩形状の部材である。本体部3は、ベース2の上面側に配置されている。
【0030】
本体部3は、円形のノコ刃4と、ノコ刃ケース5と、カバー6とを備える。ノコ刃4は、本体部3における切断進行方向の右側に配置されている。ノコ刃ケース5は、ノコ刃4の上側における略半周の範囲の周縁を内部に収容して覆うように形成されている。
【0031】
カバー6は、ノコ刃4の下側における略半周の範囲の周縁を覆うように形成されている。カバー6は開閉式であり、
図1はカバー6が閉じられた状態を示している。カバー6は、被加工部材の切断時に電動作業機1を切断進行方向に移動させることにより、ノコ刃4の回転中心を中心として
図1における
時計回り方向に回転して徐々に開かれていく。これにより、ノコ刃4が露出され、その露出部分が被加工部材に切り込まれて行く。
【0032】
本体部3における左側には、略円筒状のモータケース7が設置されている。このモータケース7の内部に、電動作業機1の駆動源であるモータ11が収容されている。なお、モータ11は、
図1に示されておらず、
図2に示されている。
【0033】
モータケース7とノコ刃4との間には、図示しないギヤ機構が収容されている。モータ11が回転すると、その回転がギヤ機構を介してノコ刃4へ伝達され、ノコ刃4が回転する。
【0034】
本体部3における上側には、電動作業機1の使用者により把持されるハンドル8が配置されている。ハンドル8は、本体部3の上側においてアーチ状に取り付けられている。すなわち、ハンドル8は、第1端が本体部3における切断進行方向の後端側に固定され、第2端がその後端よりも切断進行方向の前方側に固定されている。
【0035】
ハンドル8には、トリガスイッチ9が取り付けられている。電動作業機1の使用者は、ハンドル8を握った状態で、トリガスイッチ9に対して引き操作および戻し操作をすることができる。なお、電動作業機1の使用者は、トリガスイッチ9の付近においてハンドル8の左右方向に突出しているロックオフレバーを操作した状態で、トリガスイッチ9を引くことができる。具体的には、電動作業機1の使用者は、左側または右側からロックオフレバーを押すことで、トリガスイッチ9を引くことができる。以下、トリガスイッチ9に対して引き操作された状態をオン状態、トリガスイッチ9に対して戻し操作された状態をオフ状態という。
【0036】
本体部3の後端には、充電可能なバッテリ12を収容したバッテリパック10が、着脱自在に装着されている。本体部3にバッテリパック10が装着されている状態で、トリガスイッチ9が引き操作されると、バッテリ12の電力により本体部3内のモータ11が回転する。なお、バッテリ12は、
図1に示されておらず、
図2に示されている。
【0037】
図2に示すように、電動作業機1は、制御ユニット20を備える。制御ユニット20は、電源端子20aおよびグランド端子20bを備える。本体部3にバッテリパック10が装着されると、電源端子20aおよびグランド端子20bはそれぞれ、バッテリパック10の電源端子10aおよびグランド端子10bに接続される。
【0038】
バッテリパック10の電源端子10aは、バッテリ12の正極PEに接続されている。バッテリパック10のグランド端子10bは、バッテリ12の負極NEに接続されている。
図2では、バッテリ12の内部抵抗および内部インダクタンスをそれぞれ、バッテリ12に直列に接続された抵抗器RbおよびインダクタンスLbで示している。
【0039】
制御ユニット20は、バッテリパック10内のバッテリ12から電力供給を受けてモータ11を駆動制御する。本実施形態では、モータ11は、3相ブラシレスモータである。
制御ユニット20は、モータドライバ21、制御回路22、レギュレータ23、電源ライン24、グランドライン25、サージキラーコンデンサC1、ダイオードD1,D2、抵抗器R1およびコンデンサC2を備える。
【0040】
モータドライバ21は、制御回路22から出力された制御信号に従い、モータドライバ21内の各スイッチング素子をオン状態またはオフ状態にすることで、モータ11の各相巻線に電流を流し、モータ11を回転させる。なお、モータドライバ21内の各スイッチング素子は
図2において図示されていない。
【0041】
制御回路22は、CPU22a、ROM22bおよびRAM22c等を備えたマイクロコンピュータを含んでいる。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU22aが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM22bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU22aが実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御回路22は複数のマイコンを備えてもよい。
【0042】
レギュレータ23は、電源端子20aおよびダイオードD2を介してバッテリ12から電力供給を受けて、制御回路22を動作させるための5V電圧を生成する。コンデンサC2の第1端は、ダイオードD2とレギュレータ23との接続点に接続される。コンデンサC2の第2端はグランド端子20bを介してバッテリ12の負極NEに接続される。
【0043】
電源ライン24は、電源端子20aからモータドライバ21を通ってモータ11に至る電流経路である。
グランドライン25は、グランド端子20bからモータドライバ21を通ってモータ11に至る電流経路である。
【0044】
サージキラーコンデンサC1の第1端は、電源ライン24上に接続される。サージキラーコンデンサC1の第2端はダイオードD1のアノードに接続される。
サージキラーコンデンサC1は、バッテリ12の内部インダクタンスのエネルギーを吸収し、サージ電圧の上昇を抑制する。
【0045】
サージキラーコンデンサの最小容量を、サージによる電圧上昇を所定値以下とするための容量とする。この場合に、サージキラーコンデンサC1の最小容量は、バッテリ12からサージキラーコンデンサC1までの通電経路におけるラインインダクタンスに蓄積されたエネルギー全てがサージキラーコンデンサC1に移送された時のサージキラーコンデンサC1の電圧上昇値が許容範囲内に収められる静電容量である。
【0046】
具体的に、ラインインダクタンスに蓄積されたエネルギーと、サージキラーコンデンサC1の許容電圧上昇値とから最小容量を求める。
ラインインダクタンスを1uH、ラインインダクタンスに流れる電流を100A、ラインインダクタンスに蓄えられたエネルギー全てが、サージキラーコンデンサC1に移送された時の、サージキラーコンデンサC1において許容される電圧上昇の最大値を20Vとすると、式(1)に示すように、サージキラーコンデンサC1の最小容量は25μFとなる。
【0047】
【0048】
本実施形態では、サージキラーコンデンサC1の静電容量は100μFである。
ダイオードD1のカソードはグランドライン25に接続される。抵抗器R1は、ダイオードD1に対して並列に接続される。そして抵抗器R1の抵抗値は、サージキラーコンデンサC1と抵抗器R1とにより形成される回路のカットオフ周波数がモータドライバ21のPWM周波数より高くなるように設定される。
【0049】
図3は、第1実施形態の電動作業機1がPWM制御を行っている時のモータ電流、ドライバ電流、バッテリ電流、コンデンサ電流、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧の時間変化を示す図である。
モータ電流は、モータ11の巻線(以下、モータ巻線)に流れる電流である。PWMオン動作期間にモータ巻線に流れた電流は、PWMオンからPWMオフへ変化しても、巻線インダクタンスとモータドライバ21内に形成される還流路により、PWMオフ動作期間も還流される。このため、モータ巻線には一定電流が流れ続ける。
【0050】
ドライバ電流は、モータドライバ21に電源ライン24から流れる電流である。PWMオン動作期間におけるバッテリ12とモータ巻線との接続は、バッテリ12の正極PEと負極NEとの間に、モータドライバ21内のオン状態のハイサイドスイッチング素子、モータ巻線、および、モータドライバ21内のオン状態のローサイドスイッチング素子が直列に接続される構成と見做せるため、PWMオン動作期間におけるドライバ電流の電流値は、モータ電流の電流値に等しい。PWMオフ動作期間では、モータドライバ21内の全てのハイサイドスイッチング素子、および、モータドライバ21内の全てのローサイドスイッチング素子の何れか一方がオフ状態となる。このため、PWMオフ動作期間におけるドライバ電流の電流値は0Aである。なお、モータドライバ21内のハイサイドスイッチング素子およびローサイドスイッチング素子は
図2において図示されていない。
【0051】
バッテリ電流は、バッテリ12から制御ユニット20へ供給される電流である。コンデンサ電流は、サージキラーコンデンサC1に流れる電流である。バッテリ電圧は、バッテリパック10が装着される電源端子20aとグランド端子20bとの間の電圧である。コンデンサ電圧は、サージキラーコンデンサC1の電圧である。
【0052】
サージ電圧は、バッテリパック10の内部インダクタンスを含む電源ラインの寄生インダクタンスに流れる電流変化により生じる電圧である。電源ラインインダクタンスをL、電源ライン24に流れる電流をIとすると、バッテリパック10に接続される電源端子20aとグランド端子20bとの間に発生するサージ電圧は(-L×dI/dt)となる。
【0053】
図3に示すように、時刻t0~時刻t1はPWMオフ動作期間、時刻t1~時刻t2はPWMオン動作期間、時刻t2~時刻t3はPWMオフ動作期間、時刻t3~時刻t4はオン動作期間、時刻t4~はPWMオフ動作期間である。
【0054】
線L1は、モータ電流の時間変化を示す。線L2は、ドライバ電流の時間変化を示す。線L3は、バッテリ電流の時間変化を示す。線L4は、コンデンサ電流の時間変化を示す。線L5は、バッテリ電圧の時間変化を示す。線L6は、コンデンサ電圧の時間変化を示す。
【0055】
時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると、バッテリ電流が0Aから急激に増加する。また、バッテリ電流が急激に増加するため、バッテリ電圧が急激に減少して、バッテリ電圧の瞬停が発生する。サージキラーコンデンサC1は、サージキラーコンデンサC1に対して直列に接続されたダイオードD1のために放電しない。
【0056】
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると、バッテリ電流が0Aまで減少する。但し、バッテリ電流の立ち下がり時間は、ドライバ電流よりも遅い。
また、時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると同時に、モータ電流と同じ大きさのコンデンサ充電電流が流れた後、急速に0Aに収束する。すなわち、時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わる直前にバッテリ電流として流れていたモータ電流は、PWMオフと同時にサージキラーコンデンサC1の充電電流として同じ大きさの電流がバッテリ電流として流れるため、バッテリ電流の急激な変化は発生せず、過大なサージ電圧は発生しない。換言すれば、サージエネルギーがサージキラーコンデンサC1に吸収(すなわち、充電)される。これにより、コンデンサ電圧が増加する。その後、ダイオードD1に対して並列に接続された抵抗器R1を介してサージキラーコンデンサC1が放電されるため、コンデンサ電圧が徐々に減少していく。なお、サージ電圧吸収により、コンデンサ電圧がバッテリ電圧より高くなるため、サージキラーコンデンサC1がバッテリ12から充電されることはない。
【0057】
また、バッテリ電流増加方向の時間微分値が大きく、減少方向の時間微分値が小さいことから、バッテリ電圧は急減するが、サージ電圧は低く抑えられる。
PWMオン動作と同時に発生するバッテリ電圧の瞬停を許容できれば、サージキラーコンデンサC1の静電容量によらず、サージキラーコンデンサC1に流れる充電電流をサージ電流だけに制限することができる。なお、制御回路22の電源はレギュレータ23とダイオードD2とコンデンサC2によりバックアップされており、バッテリ電圧の瞬停が発生しても、現実的な問題はない。
【0058】
図4は、第1比較例の電動作業機101の電気的構成を示すブロック図である。電動作業機101は、ダイオードD1および抵抗器R1が省略された点と、サージキラーコンデンサC1の代わりにサージキラーコンデンサC10を備える点とが電動作業機1と異なる。
【0059】
サージキラーコンデンサC10の第1端は電源ライン24に接続される。サージキラーコンデンサC10の第2端はグランドライン25に接続される。
サージキラーコンデンサC10の静電容量は、サージキラーコンデンサとして十分な容量であり、数100μFである。
【0060】
図5は、電動作業機101におけるモータ電流、ドライバ電流、バッテリ電流、コンデンサ電流、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧の時間変化を示す図である。
時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると、バッテリ電流が0Aから増加する。但し、バッテリ電流の立ち上がり時間は、電動作業機1のバッテリ電流よりも遅い。また、PWMオンと同時に、モータ電流と同じ大きさのコンデンサ放電電流が流れ、その後、徐々に0Aに収束する。また、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧は、瞬間的に減少する。
【0061】
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると、バッテリ電流が0Aまで減少する。但し、バッテリ電流の立ち下がり時間は、電動作業機1のバッテリ電流よりも遅い。また、PWMオフと同時に、モータ電流と同じ大きさのコンデンサ充電電流が流れ、その後、徐々に0Aに収束する。また、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧は、瞬間的に増加する。
【0062】
PWMオン動作とPWMオフ動作との切り替えによって生成されるパルス状のドライバ電流に対し、サージキラーコンデンサC11が充放電することによってバッテリ電流を急変させないため、サージ電圧は発生しない。
【0063】
サージキラーコンデンサC10には、サージ電流以外にPWMによるリプル電流も流れる。その結果として生じるコンデンサESRによる発熱に対し、コンデンサの大型化で対応しているため、コンデンサ容量が必要以上に大きくなってしまう。
【0064】
図6は、第2比較例の電動作業機111の電気的構成を示すブロック図である。電動作業機111は、サージキラーコンデンサC10の代わりにサージキラーコンデンサC11を備える点が電動作業機101と異なる。
【0065】
サージキラーコンデンサC11の第1端は電源ライン24に接続される。サージキラーコンデンサC11の第2端はグランドライン25に接続される。サージキラーコンデンサC11の静電容量は、1000μFを超える。サージキラーコンデンサC11は、2つの大型コンデンサを並列に接続することにより形成されている。
【0066】
図7は、電動作業機111におけるモータ電流、ドライバ電流、バッテリ電流、コンデンサ電流、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧の時間変化を示す図である。
バッテリ電流は、PWMオフ動作およびPWMオン動作に関わらず、モータ電流より小さい一定電流値を維持する。
【0067】
コンデンサ電流は、PWMオフ動作期間には一定の充電電流値、PWMオン動作期間には一定の放電電流値となる。
バッテリ電圧およびコンデンサ電圧は、PWMオフ動作およびPWMオン動作に関わらず、一定電圧値を維持する。
【0068】
電動作業機111は、2つの大型コンデンサの並列化による低ESR化と、コンデンサ一個当たりのリプル電流の低減と、コンデンサ体積(すなわち、放熱面積)の拡大により、サージキラーコンデンサC11の温度を低下させている。しかし、コンデンサの大型化により、コンデンサの収納方法が課題となる。
【0069】
図8は、第3比較例の電動作業機121の電気的構成を示すブロック図である。電動作業機121は、サージキラーコンデンサC10の代わりにサージキラーコンデンサC12を備える点が電動作業機101と異なる。
【0070】
サージキラーコンデンサC12の第1端は電源ライン24に接続される。サージキラーコンデンサC12の第2端はグランドライン25に接続される。サージキラーコンデンサC12の静電容量は、10μF以下である。
【0071】
図9は、電動作業機121におけるモータ電流、ドライバ電流、バッテリ電流、コンデンサ電流、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧の時間変化を示す図である。
時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると、バッテリ電流は、0Aからモータ電流の電流値を超えて急速に増加する。増加が止まると、バッテリ電流は、モータ電流の電流値に急速に収束する。
【0072】
時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると同時に、モータ電流と同じ大きさのコンデンサ放電電流が流れ、急速に0Aに収束する。このようにコンデンサ放電電流が急速に減少するのは、サージキラーコンデンサC12の蓄電荷が少ないからである。またコンデンサ放電電流が急速に減少し、0Aを超えて充電電流になる。充電電流のピークを迎えた後、急速に減少して、0Aに収束する。このように、コンデンサ電流が0Aを超えた後に再び0Aに戻るのは、バッテリインダクタンスとサージキラーコンデンサC12との間で電流共振が発生するためである。
【0073】
時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧は、急速に減少し、減少が止まると、PWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わる前の一定電圧値を超えて急速に増加する。バッテリ電圧およびコンデンサ電圧は、増加が止まると一定電圧値に収束する。
【0074】
PWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わった瞬間は、バッテリインダクタンスのためにバッテリパック10から電流が供給されない。モータ電流を変化させないために、バッテリパック10から供給されない不足した電流を、サージキラーコンデンサC12が供給する。しかし、サージキラーコンデンサC12の静電容量が小さいため、サージキラーコンデンサC12のコンデンサ電圧が急速に減少する。なお、サージキラーコンデンサC12は、コンデンサ電圧が0Vになるまで電流を供給する。コンデンサ電圧が0Vになってもバッテリパック10から電流供給がされないと、モータ電流はモータドライバ21内で還流モードになり、モータ電流は変化しない。その後、バッテリパック10から電流供給されると、サージキラーコンデンサC12はバッテリ電圧まで充電される。
【0075】
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると、バッテリ電流は急速に減少し、0Aを超えピークを迎えた後、0Aへ収束する。このように、バッテリ電流が0Aを超えて減少して再び0Aに戻るのは、バッテリインダクタンスとサージキラーコンデンサC12との間で電流共振が発生するためである。
【0076】
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると同時に、モータ電流と同じ大きさのコンデンサ充電電流が流れた後、急速に減少し、0Aを超えて放電電流となり、放電電流のピークを迎えた後、急速に減少して、0Aに収束する。このように、コンデンサ電流が0Aを超えて増加して再び0Aに戻るのは、バッテリインダクタンスとサージキラーコンデンサC12との間で電流共振が発生するためである。
【0077】
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧は、急速に増加し、増加が止まると、PWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わる前の一定電圧値を超えて急速に減少する。バッテリ電圧およびコンデンサ電圧は、減少が止まると、一定電圧値に収束する。PWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わるときにおけるバッテリインダクタンスからサージキラーコンデンサC12へのエネルギー移送時間(すなわち、バッテリ電流の減少時間)が短いため、その分、サージ電圧が高くなる。
【0078】
サージキラーコンデンサC12の静電容量が小さいため、リプル電流を低減(すなわち、発熱を低減)することができる。しかし、PWMオン動作と同時に、容量が小さいサージキラーコンデンサC12からモータドライバ21へドライバ電流(すなわち、放電電流)が流れるため、サージキラーコンデンサC12の電圧が急速に減少する。その後、バッテリ電流が、時定数遅れて立上るため、サージキラーコンデンサC12が充電される。
【0079】
電動作業機1は、モータ11と、サージキラーコンデンサC1と、ダイオードD1と、抵抗器R1とを備える。
モータ11は、バッテリ12から電力の供給を受けて駆動する。サージキラーコンデンサC1は、バッテリ12の正極PEからモータ11に至る電源ライン24と、バッテリ12の負極NEからモータ11に至るグランドライン25との間で、モータ11に対して並列接続される。
【0080】
ダイオードD1は、サージキラーコンデンサC1と、グランドライン25との間で、アノードがサージキラーコンデンサC1に接続されるようにして、サージキラーコンデンサC1に対して直列接続される。抵抗器R1は、ダイオードD1に対して並列接続され、サージキラーコンデンサC1に蓄積された電荷を放出する。
【0081】
このように電動作業機1は、アノードがサージキラーコンデンサC1に接続されるようにしてサージキラーコンデンサC1に対して直列接続されたダイオードD1によって、サージキラーコンデンサC1の放電が抑制される。これにより、電動作業機1は、サージキラーコンデンサC1に放電電流が流れるのを抑制し、バッテリ電圧よりサージキラーコンデンサC1の電圧が低くなりにくいことから、バッテリ12からの充電も抑制される。サージキラーコンデンサC1の静電容量を大きくすることなく、サージキラーコンデンサC1にリプル電流が流れることによる発熱を抑制することができる。
【0082】
また、放電路は抵抗器R1である。これにより、電動作業機1は、サージキラーコンデンサC1で吸収したサージエネルギーの放出路を確保するととともに、放電電流を制御することができる。また、放電路の制限よって、バッテリ12の電圧よりサージキラーコンデンサC1の電圧を高くし、サージ以外の充電をされ難くすることができる。
【0083】
電動作業機1は、バッテリ12からモータ11への通電を、所定のPWM周波数にてPWM制御するモータドライバ21を備える。そして、サージキラーコンデンサC1と抵抗器R1とにより形成される回路のカットオフ周波数は、PWM周波数より高い。これにより、電動作業機1は、モータドライバ21によるPWM制御の1周期内に、サージキラーコンデンサC1の放電を完了させることができる。
【0084】
以上説明した実施形態において、サージキラーコンデンサC1は本開示におけるサージキラーコンデンサの一例に相当し、ダイオードD1は本開示におけるダイオードの一例に相当し、抵抗器R1は本開示における放電路の一例に相当し、モータドライバ21は本開示における通電制御部の一例に相当する。
【0085】
[第2実施形態]
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0086】
第2実施形態の電動作業機1は、
図10に示すように、抵抗器R1の代わりにコンデンサC3を備える点が第1実施形態と異なる。
コンデンサC3は、ダイオードD1に対して並列に接続される。コンデンサC3の静電容量は、サージキラーコンデンサC1の静電容量より小さい。
【0087】
PWMオン動作と同時にサージキラーコンデンサC1からモータドライバ21へ流れる電流を100A、バッテリ内部インダクタンスを1μH、バッテリ内部抵抗を0.1Ω、瞬停時間を1μs、瞬停によるコンデンサの電圧降下を10Vとすると、式(2)からコンデンサ容量が10μFとなる。従って、サージキラーコンデンサC1とコンデンサC3との合成容量が10μFであれば、1μsの瞬停における電圧降下を10V以下にすることができる。
【0088】
【0089】
図11は、第2実施形態の電動作業機1におけるモータ電流、ドライバ電流、バッテリ電流、コンデンサ電流、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧の時間変化を示す図である。
図11に示すように、時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると、バッテリ電流が0Aから増加する。但し、バッテリ電流の立ち上がり時間は、ドライバ電流よりも遅い。
【0090】
時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると同時に、モータ電流と同じ大きさのコンデンサ放電電流が流れた後、急速に0Aに収束する。
時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧は、瞬間的に減少し、その後、PWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わる前におけるバッテリ電圧の一定電圧値に収束する。このように、PWMオン動作と同時に、直列接続されたサージキラーコンデンサC1とコンデンサC3との合成コンデンサが放電し、コンデンサ電圧が減少する。なお、PWMオン動作時にモータドライバ21へ流れるラッシュ電流は合成コンデンサから供給されるので、瞬停するまでの電圧降下は発生しない。
【0091】
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると、バッテリ電流が0Aまで減少する。但し、バッテリ電流の立ち下がり時間は、ドライバ電流よりも遅い。
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると同時に、モータ電流と同じ大きさのコンデンサ充電電流が流れた後、0Aに収束する。
【0092】
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると、バッテリ電圧は、瞬間的に増加し、その後、PWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わる前におけるバッテリ電圧の一定電圧値まで急速に収束する。
【0093】
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると、コンデンサ電圧は、瞬間的に増加し、その後、変動後の電圧値を維持する。PWMオフ動作と同時に発生するサージ電圧は、サージキラーコンデンサC1に吸収される。サージ電圧吸収により、コンデンサ電圧がバッテリ電圧より高くなるため、バッテリ12からサージキラーコンデンサC1が充電されることはない。
【0094】
電動作業機1は、モータ11と、サージキラーコンデンサC1と、ダイオードD1と、コンデンサC3とを備える。
コンデンサC3は、ダイオードD1に対して並列接続され、サージキラーコンデンサC1に蓄積された電荷を放出する。
【0095】
このように電動作業機1は、アノードがサージキラーコンデンサC1に接続されるようにしてサージキラーコンデンサC1に対して直列接続されたダイオードD1によって、サージキラーコンデンサC1の放電が抑制される。これにより、電動作業機1は、サージキラーコンデンサC1に放電電流が流れるのを抑制し、サージキラーコンデンサC1の静電容量を大きくすることなく、サージキラーコンデンサC1に電流が流れることによる発熱を抑制することができる。
【0096】
また、放電路はコンデンサC3である。これにより、電動作業機1は、PWMオフ動作からPWMオン動作へ切り替わったときにおけるバッテリ12の瞬停時間を短くすることができる。
[第3実施形態]
以下に本開示の第3実施形態を図面とともに説明する。なお第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0097】
第3実施形態の電動作業機1は、
図12に示すように、ダイオードD1および抵抗器R1の代わりにPNP型トランジスタT1、抵抗器R2,R3、ツェナーダイオードZD1およびNチャネル型電界効果トランジスタM1を備える点と、バッテリ電圧センサ26およびサージ電圧センサ27が追加された点とが第1実施形態と異なる。
【0098】
PNP型トランジスタT1のベースは制御回路22の出力ポートP0に接続される。PNP型トランジスタT1のエミッタには5V電圧が印加される。PNP型トランジスタT1のコレクタは抵抗器R2の第1端に接続される。
【0099】
抵抗器R2の第2端は、抵抗器R3の第1端、ツェナーダイオードZD1のカソード、および、Nチャネル型電界効果トランジスタM1のゲートに接続される。
抵抗器R3の第2端は、サージキラーコンデンサC1の第2端に接続される。Nチャネル型電界効果トランジスタM1のソースは、サージキラーコンデンサC1の第2端、および、ツェナーダイオードZD1のアノードに接続される。Nチャネル型電界効果トランジスタM1のドレインはグランドライン25に接続される。
【0100】
PNP型トランジスタT1のベースに接続された出力ポートP0の電圧がローレベルに設定されると、PNP型トランジスタT1がオン状態となる。これにより、Nチャネル型電界効果トランジスタM1のゲートにハイレベルの電圧が印加され、Nチャネル型電界効果トランジスタM1がオン状態となる。なお、Nチャネル型電界効果トランジスタM1のソースにおいて負電圧が発生する恐れがある。このため、制御回路22の出力ポートP0は、Nチャネル型電界効果トランジスタM1のゲートに直接接続されず、PNP型トランジスタT1を介して接続されている。
【0101】
バッテリ電圧センサ26は、バッテリ12の電圧(すなわち、バッテリ電圧)を検出し、バッテリ電圧の大きさに応じた電圧値のバッテリ電圧検出信号を制御回路22のバッテリ電圧読込ポートP1へ出力する。
【0102】
サージ電圧センサ27は、電源端子20aとグランド端子20bとの間の電圧(すなわち、サージ電圧)を検出し、サージ電圧の大きさに応じた電圧値のサージ電圧検出信号を制御回路22のサージ電圧読込ポートP2へ出力する。
制御回路22のCPU22aは、PWMタイマ割込処理を実行する。PWMタイマ割込処理は、後述するPWMタイマに設定された時間が経過したときに実行される。
【0103】
PWMタイマ割込処理が実行されると、CPU22aは、
図13に示すように、まずS10にて、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオン状態にする。またCPU22aは、S20にて、予め設定されたM1FETオン時間を、M1FETタイマ割込を発生させるためのM1FETタイマに設定する。これにより、M1FETオン時間が経過するとM1FETタイマ割込が発生する。
【0104】
そしてCPU22aは、S30にて、RAM22cに設けられたM1FETオン動作フラグがセットされているか否かを判断する。なお、フラグをセットするとは、そのフラグの値を1にすることを示し、フラグをクリアするとは、そのフラグの値を0にすることを示す。
【0105】
ここで、M1FETオン動作フラグがセットされている場合には、CPU22aは、S40にて、現時点のPWMデューティをRAM22cから読み込む。そしてCPU22aは、S50にて、読み込んだPWMデューティに基づいてオフ動作時間を算出し、算出されたオフ動作時間をPWMタイマに設定する。これにより、オフ動作時間が経過するとPWMタイマ割込が発生する。
【0106】
次にCPU22aは、S60にて、M1FETオン動作フラグをクリアする。さらにCPU22aは、S70にて、モータドライバ21を構成する複数のスイッチング素子の中から、PWMオン状態からPWMオフ状態に切り替えるスイッチング素子(以下、PWMオフ対象スイッチング素子)を確認する。
【0107】
そしてCPU22aは、S80にて、PWMオフ対象スイッチング素子をオフ状態にして、PWMタイマ割込処理を終了する。
またS30にて、M1FETオン動作フラグがクリアされている場合には、CPU22aは、S90にて、現時点のPWMデューティをRAM22cから読み込む。そしてCPU22aは、S100にて、読み込んだPWMデューティに基づいてオン動作時間を算出し、算出されたオン動作時間をPWMタイマに設定する。これにより、オン動作時間が経過するとPWMタイマ割込が発生する。
【0108】
次にCPU22aは、S110にて、M1FETオン動作フラグをセットする。さらにCPU22aは、S120にて、モータドライバ21を構成する複数のスイッチング素子の中から、PWMオフ状態からPWMオン状態に切り替えるスイッチング素子(以下、PWMオン対象スイッチング素子)を確認する。
【0109】
そしてCPU22aは、S130にて、PWMオン対象スイッチング素子をオン状態にして、PWMタイマ割込処理を終了する。
また制御回路22のCPU22aは、M1FETタイマ割込処理を実行する。M1FETタイマ割込処理は、M1FETタイマに設定された時間が経過してM1FETタイマ割込が発生したときに実行される。
【0110】
M1FETタイマ割込処理が実行されると、CPU22aは、
図14に示すように、S210にて、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオフ状態にして、M1FETタイマ割込処理を終了する。
【0111】
また制御回路22のCPU22aは、第1バッテリ電圧チェック処理を実行する。第1バッテリ電圧チェック処理は、モータ11が駆動停止しているときに繰り返し実行される処理である。
【0112】
第1バッテリ電圧チェック処理が実行されると、CPU22aは、
図15に示すように、まずS310にて、バッテリ電圧センサ26からバッテリ電圧読込ポートP1に入力されるバッテリ電圧検出信号を読み込む。またCPU22aは、S320にて、サージ電圧センサ27からサージ電圧読込ポートP2に入力されるサージ電圧検出信号を読み込む。
【0113】
さらにCPU22aは、S330にて、S320で読み込んだサージ電圧検出信号の電圧に基づいてサージ電圧値を算出し、算出したサージ電圧値をRAM22cに記憶する。
そしてCPU22aは、S340にて、S310で読み込んだバッテリ電圧検出信号の電圧に基づいて算出したバッテリ電圧値、または、S320で読み込んだサージ電圧検出信号の電圧に基づいて算出したサージ電圧値が0.5V以下であるか否かを判断する。すなわち、CPU22aは、S340にて、地絡故障チェックを行う。ここで、0.5Vは通常のバッテリではとり得ることのない電圧値である。
【0114】
ここで、バッテリ電圧値またはサージ電圧値が0.5V以下である場合には、CPU22aは、S410に移行する。一方、バッテリ電圧値とサージ電圧値との両方が0.5Vを超えている場合には、CPU22aは、S350にて、バッテリ電圧値またはサージ電圧値が4.5V以上であるか否かを判断する。すなわち、CPU22aは、S350にて、天絡故障チェックを行う。ここで、4.5Vは通常のバッテリではとり得ることのない電圧値である。
【0115】
ここで、バッテリ電圧値またはサージ電圧値が4.5V以上である場合には、CPU22aは、S410に移行する。一方、バッテリ電圧値とサージ電圧値との両方が4.5V未満である場合には、CPU22aは、S360にて、バッテリ電圧値とサージ電圧値との電圧差が1V以下であるか否かを判断する。
【0116】
ここで、バッテリ電圧値とサージ電圧値との電圧差が1Vを超えている場合には、CPU22aは、S410に移行する。一方、バッテリ電圧値とサージ電圧値との電圧差が1V以下である場合には、CPU22aは、S370へ移行する。ここで、サージ電圧センサ27はピークホールド回路で構成されるため、ピークホールド回路内のダイオードによる電圧降下の最大値が1Vである。CPU22aは、S370にて、バッテリ電圧読込ポートP1を出力設定に切り替える。これにより、バッテリ電圧読込ポートP1の電圧レベルがハイレベルに設定される。
【0117】
次にCPU22aは、S380にて、サージ電圧センサ27からサージ電圧読込ポートP2に入力されるサージ電圧検出信号を読み込む。そしてCPU22aは、S390にて、S380で読み込んだサージ電圧検出信号の電圧に基づいて算出したサージ電圧値と、S330で記憶したサージ電圧値とが一致しているか否かを判断する。すなわち、CPU22aは、S390にて、バッテリ電圧読込ポートP1とサージ電圧読込ポートP2との間の短絡チェックを行う。
【0118】
ここで、S380で読み込んだサージ電圧検出信号の電圧に基づいて算出したサージ電圧値と、S330で記憶したサージ電圧値とが一致している場合には、CPU22aは、S400にて、バッテリ電圧読込ポートP1をAD入力設定に切り替え、第1バッテリ電圧チェック処理を終了する。一方、S380で読み込んだサージ電圧検出信号の電圧に基づいて算出したサージ電圧値と、S330で記憶したサージ電圧値とが一致していない場合には、CPU22aは、S410に移行する。
【0119】
S410に移行すると、CPU22aは、RAM22cに設けられているバッテリ電圧エラーフラグをセットして、第1バッテリ電圧チェック処理を終了する。
また制御回路22のCPU22aは、第2バッテリ電圧チェック処理を実行する。第2バッテリ電圧チェック処理は、モータ11が駆動しているときに繰り返し実行される処理である。
【0120】
第2バッテリ電圧チェック処理が実行されると、CPU22aは、
図16に示すように、まずS510にて、バッテリ電圧センサ26から出力されるバッテリ電圧検出信号を読み込む。またCPU22aは、S520にて、サージ電圧センサ27から出力されるサージ電圧検出信号を読み込む。
【0121】
そしてCPU22aは、S530にて、S510で読み込んだバッテリ電圧検出信号の電圧に基づいて算出したバッテリ電圧値と、S520で読み込んだサージ電圧検出信号の電圧に基づいて算出したサージ電圧値との電圧差が予め設定された許容範囲内であるか否かを判断する。ここで、電圧差とは、サージキラーコンデンサC1で吸収しきれなかったサージ電圧のことである。
【0122】
ここで、電圧差が許容範囲内である場合には、CPU22aは、第2バッテリ電圧チェック処理を終了する。一方、電圧差が許容範囲外である場合には、CPU22aは、S540にて、バッテリ電圧エラーフラグをセットして、第1バッテリ電圧チェック処理を終了する。
【0123】
図17は、第3実施形態の電動作業機1におけるモータ電流、ドライバ電流、バッテリ電流、コンデンサ電流、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧の時間変化を示す図である。
図17に示すように、時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると、バッテリ電流が0Aから増加する。但し、バッテリ電流の立ち上がり時間は、ドライバ電流よりも遅い。
【0124】
時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると同時に、モータ電流と同じ大きさのコンデンサ放電電流が流れた後、急速に0Aに収束する。なお、PWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わる前にNチャネル型電界効果トランジスタM1がオン状態になっているため、サージキラーコンデンサC1は放電することができる。このため、バッテリパック10の瞬停は発生しない。そして、PWMオン動作期間中にNチャネル型電界効果トランジスタM1がオフ状態に切り替わる。サージキラーコンデンサC1は、Nチャネル型電界効果トランジスタM1がオフ状態に切り替わると、放電することができなくなる。
【0125】
時刻t1および時刻t3でPWMオフ動作からPWMオン動作に切り替わると、バッテリ電圧およびコンデンサ電圧は、瞬間的に減少する。
時刻t2および時刻t4でオン動作からオフ動作に切り替わると、バッテリ電流が0Aまで減少する。但し、バッテリ電流の立ち下がり時間は、ドライバ電流よりも遅い。
【0126】
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると同時に、モータ電流と同じ大きさのコンデンサ充電電流が流れた後、急速に0Aに収束する。
時刻t2および時刻t4でPWMオン動作からPWMオフ動作に切り替わると、バッテリ電圧は、瞬間的に増加する。このときにNチャネル型電界効果トランジスタM1がオン状態になっているため、PWMオフ動作と同時に発生するサージ電流は、Nチャネル型電界効果トランジスタM1の寄生ダイオードPD1には流れず、ダイオード損失は発生しない。
【0127】
サージ発生時間は1μs以下と非常に短時間であるため、サージキラーコンデンサC1がサージエネルギーを吸収した直後にNチャネル型電界効果トランジスタM1をオフ状態にすることができず、Nチャネル型電界効果トランジスタM1はオン状態を維持している。このため、サージキラーコンデンサC1に吸収されたサージエネルギーは、バッテリ12へ回生する。サージ発生後にNチャネル型電界効果トランジスタM1がオフ状態になると、それ以降にサージキラーコンデンサC1は放電することはできない。
【0128】
電動作業機1は、モータ11と、サージキラーコンデンサC1と、Nチャネル型電界効果トランジスタM1とを備える。そして、ダイオードおよび放電路がNチャネル型電界効果トランジスタM1により形成されている。
【0129】
すなわち、電動作業機1は、Nチャネル型電界効果トランジスタM1の寄生ダイオードPD1を、サージキラーコンデンサC1に対して直列接続されるダイオードとして利用し、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオン状態とすることにより電界効果トランジスタを放電路として確保する。
【0130】
これにより、電動作業機1は、アノードがサージキラーコンデンサC1に接続されるようにしてサージキラーコンデンサC1に対して直列接続された寄生ダイオードPD1によって、サージキラーコンデンサC1の放電が抑制される。これにより、電動作業機1は、サージキラーコンデンサC1に放電電流が流れるのを抑制し、サージキラーコンデンサC1の静電容量を大きくすることなく、サージキラーコンデンサC1に電流が流れることによる発熱を抑制することができる。
【0131】
また制御回路22は、Nチャネル型電界効果トランジスタM1のオン状態とオフ状態とを切り替える切替制御を実行する。そして制御回路22は、モータドライバ21がPWMデューティに従ってバッテリ12からモータ11へ通電させるPWMオン動作を実行する前に、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオン状態にする。また制御回路22は、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオン状態にした後に、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオフ状態にする。これにより、電動作業機1は、PWMオン動作時にモータ11へ向かって電源ライン24に流れるラッシュ電流を、サージキラーコンデンサC1から供給可能にすることができる。
【0132】
また制御回路22は、モータ11が駆動を停止しているときに、バッテリ電圧センサ26を用いてバッテリ電圧を測定し、サージ電圧センサ27を用いてサージ電圧を測定する。そして制御回路22は、サージ電圧またはバッテリ電圧が4.5V以上であるか、0.5V以下である場合に、電動作業機1で異常が発生していると判断する。これにより、電動作業機1は、サージ電圧およびバッテリ電圧に基づいて、バッテリ電圧センサ26およびサージ電圧センサ27の異常を検出することができる。
【0133】
また制御回路22は、モータ11が駆動しているときに、バッテリ電圧センサ26を用いてバッテリ電圧を測定し、サージ電圧センサ27を用いてサージ電圧を測定する。そして制御回路22は、サージ電圧とバッテリ電圧との電圧差が許容範囲外である場合に、電動作業機1で異常が発生していると判断する。これにより、電動作業機1は、サージ電圧およびバッテリ電圧に基づいて、バッテリ電圧センサ26およびサージ電圧センサ27、または、サージキラーコンデンサC1の異常を検出することができる。
【0134】
また制御回路22は、バッテリ電圧読込ポートP1をハイレベルに設定する。そして制御回路22は、バッテリ電圧読込ポートP1の電圧レベルをハイレベルに設定する前と後とでサージ電圧読込ポートP2の電圧が変化した場合に、電動作業機1で異常が発生していると判断する。これにより、電動作業機1は、サージ電圧およびバッテリ電圧に基づいて、サージ電圧およびバッテリ電圧の電圧測定ラインにおける短絡故障を検出することができる。
【0135】
以上説明した実施形態において、Nチャネル型電界効果トランジスタM1は本開示における電界効果トランジスタの一例に相当し、制御回路22は本開示におけるトランジスタ制御部の一例に相当する。
【0136】
また、S310,S320は本開示における停止時電圧測定部の一例としての処理に相当し、S340,S350は本開示における電圧異常判断部の一例としての処理に相当し、S350における4.5Vは本開示における第1異常判断値の一例に相当し、S340における0.5Vは本開示における第2異常判断値の一例に相当する。
【0137】
また、S510,S520は本開示における駆動時電圧測定部の一例としての処理に相当し、S530は本開示における電圧差異常判断部の一例としての処理に相当する。
また、S370は本開示における出力設定部の一例としての処理に相当し、S390は本開示における異常判断部の一例としての処理に相当し、バッテリ電圧読込ポートP1は本開示における設定ポートの一例に相当し、サージ電圧読込ポートP2は本開示における非設定ポートの一例に相当する。
【0138】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
例えば上記実施形態では、PWMオン動作を実行する前にNチャネル型電界効果トランジスタM1をオン状態にする形態を示した。しかし、PWMオン動作の実行と同時に、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオン状態にしてもよい。
【0139】
また上記実施形態では、PWMオン動作を実行する前にNチャネル型電界効果トランジスタM1をオン状態にし、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオン状態にした後に、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオフ状態にする形態を示した。しかし、PWMオフ動作を実行する直前、または、PWMオフ動作の直後に、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオン状態にしてもよい。さらに、PWMオン動作を実行する前に、Nチャネル型電界効果トランジスタM1をオフ状態にしてもよい。これにより、電動作業機1は、サージ発生中に寄生ダイオードPD1を短絡することができ、サージ電流による寄生ダイオードPD1の発熱を低減することができる。
【0140】
また上記第1,2実施形態では、ダイオードD1が、サージキラーコンデンサC1とグランドライン25との間でサージキラーコンデンサC1に対して直列接続されて、ダイオードD1のアノードがサージキラーコンデンサC1に接続される形態を示した。しかし、
図18および
図19に示すように、ダイオードD1が、電源ライン24とサージキラーコンデンサC1との間でサージキラーコンデンサC1に対して直列接続されて、ダイオードD1のカソードがサージキラーコンデンサC1に接続されるようにしてもよい。
【0141】
また上記第3実施形態では、バッテリ電圧読込ポートP1の電圧レベルをハイレベルに設定する前と後とでサージ電圧読込ポートP2の電圧が変化した場合に、電動作業機1で異常が発生していると判断する形態を示した。しかし、バッテリ電圧読込ポートP1の電圧レベルをローレベルに設定する前と後とでサージ電圧読込ポートP2の電圧が変化した場合に、電動作業機1で異常が発生していると判断するようにしてもよい。
【0142】
本開示の技術は、例えば電動ハンマ、電動ハンマドリル、電動ドリル、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ、電動マルノコ、電動レシプロソー、電動ジグソー、電動カッター、電動チェンソー、電動カンナ、電動釘打ち機(鋲打ち機を含む)、電動ヘッジトリマ、電動芝刈り機、電動芝生バリカン、電動刈払機、電動クリーナ、電動ブロア、電動噴霧器、電動散布機、電動集塵機といった各種電動作業機に適用することができる。
【0143】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0144】
上述した電動作業機1の他、制御ユニット20としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、電動作業機制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0145】
1…電動作業機、11…モータ、24…電源ライン、25…グランドライン、C1…サージキラーコンデンサ、C3…コンデンサ、D1…ダイオード、M1…Nチャネル型電界効果トランジスタ、NE…負極、PE…正極、R1…抵抗器