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特許7500392制御装置、レンズ装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特許-制御装置、レンズ装置、制御方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】制御装置、レンズ装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240610BHJP
   G02B 7/04 20210101ALN20240610BHJP
   G03B 17/14 20210101ALN20240610BHJP
   G03B 9/02 20210101ALN20240610BHJP
【FI】
G02B7/02 H
G02B7/04 E
G03B17/14
G03B9/02 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020185248
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074851
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0310867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G02B 7/04
G03B 17/14
G03B 9/00-9/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズ群を含む光学系を通過する光束を制限する絞り部を、前記フォーカスレンズ群の位置に応じて制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記フォーカスレンズ群が所定位置よりも無限側に移動する場合、前記絞り部の開口径が、前記絞り部が開口を形成する面内において前記絞り部を前記光学系の光路から退避させた状態における第1の光束径以下である第1の状態から前記第1の光束径よりも所定量だけ開放側となる第2の状態になるように、前記絞り部を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記フォーカスレンズ群が前記所定位置よりも無限側に位置する場合、前記第1の光束径に対応するF値と前記第1の状態の前記開口径に対応するF値との差分値が所定値以下であることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記フォーカスレンズ群の位置と絞り開放値との関係を示す第1の情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1の情報を記憶する記憶部を更に有することを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記フォーカスレンズ群と絞り位置との関係を示す第2の情報を取得することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第2の情報を記憶する記憶部を更に有することを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第2の情報のうち、前記所定位置よりも無限側に位置する前記フォーカスレンズ群に対応する前記絞り位置の情報は、前記第2の状態となる前記絞り部の位置であることを特徴とする請求項5又は6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記所定量は、前記絞り部の位置決め精度に基づいて決定されることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記所定量は、前記絞り部の駆動速度及び開放からの絞り込み動作において光量が変化し始めるまでの時間に基づいて決定されることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の制御装置と、
フォーカスレンズ群を含む光学系を通過する光束を制限する絞り部とを有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項11】
フォーカスレンズ群を含む光学系を通過する光束を制限する絞り部を、前記フォーカスレンズ群の位置に応じて制御する制御装置の制御方法であって、
前記フォーカスレンズ群が所定位置よりも無限側に移動するステップと、
前記絞り部の開口径が、前記絞り部が開口を形成する面内において前記絞り部を前記光学系の光路から退避させた状態における第1の光束径以下である第1の状態から前記第1の光束径よりも所定量だけ開放側となる第2の状態になるように、前記絞り部を制御するステップとを有することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の制御方法を制御装置のコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、レンズ装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ装置では、フォーカスレンズ群の移動に伴い開放F値が変化することが知られている。マクロレンズでは撮影画像の高品質化を目的としてゴースト等の原因となる周辺光を絞り羽根で遮光するものがあり、このようなレンズではフォーカス至近付近で顕著に開放F値が暗くなる。特許文献1には、小型軽量化及び開放径の形成における自由度を高めるために、副絞りを使用することなく、主絞りを用いてフォーカスレンズ群の位置に応じて開放径を制御する光学機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6739979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の光学機器は、開放から小絞りまでの広い絞り込み段数に対応する主絞りによって開放径を形成するため、美しい玉ボケを得られる真円度の高い開放径を形成する点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、主絞りによってフォーカスレンズ群の位置に応じて開口を形成する際に、真円度の高い開口を優先して形成可能な制御装置、レンズ装置、制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての制御装置は、フォーカスレンズ群を含む光学系を通過する光束を制限する絞り部を、フォーカスレンズ群の位置に応じて制御する制御部を有し、制御部は、フォーカスレンズ群が所定位置よりも無限側に移動する場合、絞り部の開口径が、絞り部が開口を形成する面内において絞り部を光学系の光路から退避させた状態における第1の光束径以下である第1の状態から第1の光束径よりも所定量だけ開放側となる第2の状態になるように、絞り部を制御することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他の側面としての制御方法は、フォーカスレンズ群を含む光学系を通過する光束を制限する絞り部を、フォーカスレンズ群の位置に応じて制御する制御装置の制御方法であって、フォーカスレンズ群が所定位置よりも無限側に移動するステップと、絞り部の開口径が、絞り部が開口を形成する面内において絞り部を光学系の光路から退避させた状態における第1の光束径以下である第1の状態から第1の光束径よりも所定量だけ開放側となる第2の状態になるように、絞り部を制御するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、主絞りによってフォーカスレンズ群の位置に応じて開口を形成する際に、真円度の高い開口を優先して形成可能な制御装置、レンズ装置、制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るカメラシステムのブロック図である。
図2】第1の実施形態の第1の情報及び第2の情報の説明図である。
図3】第1の実施形態の絞り羽根の駆動制御を示すフローチャートである。
図4】第2の実施形態の絞り羽根の駆動制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るカメラシステム1のブロック図である。カメラシステム1は、交換レンズ(レンズ装置)2及びカメラ本体3を有する。交換レンズ2は、カメラ本体3に着脱可能に構成されている。なお、本実施形態では、本発明をレンズ交換式の一眼カメラに適用する場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、二眼カメラ及びレンズ一体型のカメラ等の他の撮像装置や、双眼鏡、顕微鏡、及び望遠鏡等の光学機器にも適用可能である。
【0012】
交換レンズ2とカメラ本体3とは、不図示のマウントを介して機械的に接続されると共に、マウントに設けられたコネクタを介して電気的に接続される。コネクタには通信ユニット27,33が設けられており、交換レンズ2とカメラ本体3とは通信ユニット27,33を介して通信可能である。また、交換レンズ2は、通信ユニット27,33を介してカメラ本体3から電力を供給される。
【0013】
交換レンズ2は、レンズCPU(制御部)20、撮像光学系21、フォーカスレンズ駆動回路22、絞り羽根(絞り部)23、絞り開放位置検出センサ24、ステッピングモータ25、絞り駆動回路26、及び通信ユニット27を有する。
【0014】
レンズCPU20は、マイクロコンピュータ等を備え、交換レンズ2の各部の全ての制御を司る。また、レンズCPU20は、RAM、ROM、及びEEPROM等のメモリ(記憶部)20aを備える。なお、本実施形態では、レンズCPU20は、交換レンズ2内に設けられているが、交換レンズ2とは別の制御装置として構成されていてもよい。
【0015】
絞り羽根23は、開口径を変化させることで、撮像光学系21を通過する光束を制限する。
【0016】
絞り駆動回路26は、レンズCPU20からの命令に従ってステッピングモータ25を駆動して、絞り羽根23の開口径を変更することにより絞り値(F値)を変更し、光量を調整する。絞り羽根検出センサ24は、フォトインタラプタ等のセンサ(検出手段)を備え、絞り羽根23が所定の基準位置にあるか否かを検出し、その検出結果をレンズCPU20に送信する。ステッピングモータ25は本実施形態ではA相およびB相の2相モータであるが、相数はこれに限定されない。なお、ステッピングモータ25の代わりに、DCモータやACモータ等の他の種類の電磁モータを用いて絞り羽根23の開口径を変更してもよい。
【0017】
フォーカスレンズ駆動回路22は、レンズCPU20からの命令に従ってアクチュエータを駆動して、撮像光学系21に含まれるフォーカスレンズ群を光軸方向へ移動させる。
【0018】
通信ユニット27は、カメラCPU30との通信を行うための複数の通信端子を備え、焦点検出情報、測光情報、及びID情報等を送受信する。
【0019】
カメラ本体3は、カメラCPU30、制御系電源31、駆動系電源32、通信ユニット33、レンズ装着検出部34、焦点検出ユニット35、及び撮像素子36を有する。
【0020】
カメラCPU30は、マイクロコンピュータ等を備え、カメラ本体3の各部の全ての制御を司る。また、カメラCPU30は、RAM、ROM、及びEEPROM等のメモリ30aを備える。なお、カメラCPU30は、レンズCPU20の代わりにステッピングモータ25の駆動を制御するように構成されてもよい。
【0021】
制御系電源31は、焦点検出ユニット35や不図示の測光部等の電力消費量が比較的少なく安定した出力電圧を必要とする制御系回路に電力を供給する。駆動系電源32は、制御系電源31の電圧や電力を検出し、交換レンズ2や電力消費量が比較的多い駆動系回路に電力を供給する。
【0022】
通信ユニット33は、レンズCPU20との通信を行うための複数の通信端子を備え、焦点検出情報、測光情報、及びID情報等を送受信する。
【0023】
レンズ装着検出部34は、交換レンズ2がカメラ本体3に装着されたことを検出する。
【0024】
撮像素子36は、CMOSセンサやCCDセンサであり、撮像光学系21を介して形成された光学像(被写体像)を光電変換して画像データを出力する。
【0025】
本実施形態では、レンズCPU20及び絞り駆動回路26からなる絞り制御部は、カメラCPU30から通信ユニット27を介して受信した絞り駆動命令に基づいて、絞り羽根23を駆動する。絞り駆動命令は要求絞り値及び駆動速度を指定する形式となっており、メモリ20aはこれらをそれぞれ目標絞り値及び要求速度として記憶する。絞り制御部は、目標絞り値に対応する絞り位置まで絞り羽根23を要求速度で駆動する。レンズCPU20は、絞り駆動回路26に指示したモータ励磁パターン数をカウントしており、その積算数を絞り位置としてメモリ20aに格納し、管理している。
[第1の実施形態]
以下、本実施形態における開口径の決定方法について説明する。
【0026】
フォーカスレンズ群は、レンズCPU20からの命令によりフォーカスレンズ駆動回路22を介して光軸方向へ移動する。フォーカスレンズ群の位置は、不図示のエンコーダによって検出され、無限から至近までのストロークを所定の分割数で切り出すことで管理されている。フォーカスレンズ群の位置を所定の分割数で切り出した情報を、フォーカスゾーンと呼ぶ。本実施形態では、無限から至近までのストロークを48分割する。このとき、フォーカスゾーン0を無限端、フォーカスゾーン47を至近端とする。
(第1の情報の説明)
図2(a)は、フォーカスゾーンごとにおける、開放狙い値と基準開放値を示している。開放狙い値は、黒丸でプロットされたポイントで、絞り羽根23が設計上狙った開放径となるように絞り込まれている状態である場合の開放絞り値(開放AV値)である。本実施形態では、フォーカスゾーンごとに開放径を変化させる。基準開放値は、黒三角でプロットされたポイントで、フォーカスレンズ群の位置が無限であるときに形成された開放径を維持した状態でフォーカスレンズ群の位置だけが変化した場合の開放絞り値である。図2(a)に示されるように、開放径を不変としたままでも開放絞り値は変化するが、開放径を開閉調節すると、開放絞り値は大きく変化する。本実施形態では、フォーカスゾーンごとに、開口を開閉調節した結果の開放狙い値となる開放絞り値が第1の情報として格納される。図2(b)は、第1の情報を格納したテーブルを示している。なお、本実施形態では、第1の情報は、開放絞り値であるが、F値であってもよい。
(第2の情報の説明)
図2(c)は、フォーカスレンズ群21の位置と絞り位置との関係を示す第2の情報を示している。フォーカスレンズ群21の位置としてのフォーカスゾーンNoと各フォーカスゾーンにおける絞り位置としてのAV値差分量とが格納されている。以下、AV値差分量について説明する。
【0027】
AV値差分量は、図2(a)の任意のフォーカスゾーンXにおける開放狙い値AVRxと基準開放値AVIxとの差分段数AVdxである。本実施形態では、ステッピングモータ25の1ステップ当たりのAV値変化量が分かっているので、AV値差分量AVdxから、フォーカスゾーンXにおいて、開放狙い値AVRxに調節するための絞り羽根23の駆動量を換算することができる。このように、フォーカスゾーンごとに開放狙い値と基準開放値との差分段数を求めて格納したものが、フォーカスレンズ群21の位置と絞り位置との関係を示す第2の情報である。
【0028】
なお、第2の情報は、本実施形態では基準開放値からの差分段数であるが、フォーカスレンズ群の位置ごとに絞り羽根23をどこに駆動すればよいかを設定可能な情報であればよい。すなわち、第2の情報は、ステッピングモータ25の差分駆動量や絞り羽根23の絶対座標位置であってもよい。
(絞りの駆動制御の説明)
以下、本実施形態の絞り羽根23の駆動制御について説明する。レンズCPU20は、通信ユニット27を介してカメラCPU30から絞り羽根23の絞り駆動命令を受信する。レンズCPU20は、カメラCPU30から受信した要求絞り値を目標絞り値としてメモリ20aに格納し、絞り羽根23の駆動制御を開始する。図3は、絞り羽根23の駆動制御を示すフローチャートである。
【0029】
ステップS100では、レンズCPU20は、現在のフォーカスゾーンを取得する。
【0030】
ステップS101では、レンズCPU20は、現在の開放絞り値を取得する。具体的には、レンズCPU20は、現在のフォーカスゾーン及び第1の情報を参照し、現在の開放絞り値を取得する。
【0031】
ステップS102では、レンズCPU20は、ステップS201で取得した現在の開放絞り値が目標絞り値以上であるかを判定する。現在の開放絞り値が目標絞り値以上である、すなわち目標絞り値が現在の開放絞り値以上に明るい値である場合、ステップS103に進む。現在の開放絞り値が目標絞り値より小さい、すなわち目標絞り値が現在の開放絞り値より暗い値である場合、ステップS107に進む。
【0032】
ステップS103では、レンズCPU20は、開放絞り位置を取得する。具体的には、レンズCPU20は、現在のフォーカスゾーン及び第2の情報を参照し、開放絞り位置を取得する。本実施形態では、開放絞り位置は、開放絞り値の差分段数であるため、絞り羽根23の位置に変換する必要がある。本実施形態の絞り羽根23はステッピングモータ25の1ステップ駆動につき1/32段光量が変化するように設計されており、光量変化量はAV値換算で1ステップ当たり0.03125段に相当する。上記関係を用いて、レンズCPU20は、差分段数を駆動量に変換することができる。本実施形態では、第2の情報は、無限時の開放径に対応する開放絞り値と開放狙い値との差分光量である。すなわち、無限における開放絞り位置をOステップとするとき、フォーカスゾーンXにおける開放絞り位置Opxは、以下の式(1)で算出される。
【0033】
Opx=O+AVdx/0.03125 (1)
ステップS104では、レンズCPU20は、フォーカスレンズ群の位置が所定位置より無限側であるかどうかを判定する。所定位置は、本実施形態では、第1の光束径に対応するF値と現在のフォーカスゾーンに対応する開放径に対応するF値との差分値が所定値以下となる位置である。所定値は例えば、絞り羽根23が開口を形成する面内において絞り羽根23を撮像光学系21の光路から退避させた状態における第1の光束径に対応するF値を基準値としてF値の差分が5%以内となる値である。第1の光束径とは、絞り羽根23が光路から退避した状態において、絞り羽根23を支持する絞りユニット(不図示)の開口によって規定される光束径又は各レンズの有効径によって規定される光束径である。フォーカスレンズ群の位置が所定位置より無限側である場合、ステップS105に進み、そうでない場合、ステップS106に進む。
【0034】
なお、ステップS104において、開放絞り位置Opxと第1の光束径とを比較してもよいし、明るさの情報を比較してもよい。例えば、開放絞り位置Opxが第1の光束径以上であるか否かで判定してもよいし、現在のフォーカスゾーンにおける開放狙い値AVRxが第1の光束径により決定されるAV値(AV1)より開放側か否かで判定してもよい。
【0035】
ステップS105では、レンズCPU20は、開口径が第1の光束径以下である第1の状態から第1の光束径よりも所定量だけ開放側となる第2の状態になるように絞り羽根23を退避させる。すなわち開放径が第1の光束径となるように、絞り羽根23を退避させる。第1の光束径は、設計値であってもよいし、絞り羽根23を絞り込みながら、光量が変化し始める位置を実測した結果であってもよい。第1の光束径は、開放絞り位置と比較するので、絞り込みステップ数に換算した値であることが好ましい。
【0036】
ここで、ステップS105において開放径を形成する際の絞り羽根23の退避量(所定量)について説明する。本実施形態では、開放絞り位置が第1の光束径よりも小さい場合、第1の光束径は絞り羽根23による多角形状の開口に比べて真円度が高い形状で形成されるため、第1の光束径を開放径として使用することが好ましい。このとき、絞り羽根23を含む絞り機構の製造誤差、及び絞り駆動の繰り返し再現性や位置決め精度を考慮し、第1の光束径よりも絞り込み側に出ないように絞り羽根23を制御する必要がある。そのため、第1の光束径よりも絞り羽根23が開放側に位置するように、事前実験結果や想定誤差の積み上げで求めた絞り羽根23の退避量を設計値としてメモリ20aに格納しておくことが好ましい。
【0037】
また、所定量は、下記の観点も考慮して決定されることが好ましい。絞り羽根23が退避した状態から絞り込み動作を行う場合に実際の光線を遮って光量変化するまでに、退避量の駆動分だけ時間差が発生する。特に動画撮影時等ではユーザ操作により絞り込み操作がリアルタイムに行われることから、上記時間差はユーザの違和感を覚えない程度であることが求められる。例えば、ライブビュー更新又は録画フレームレートが30fpsである場合、仮にユーザに気づかれないディレイを1V以内とすると33.3ms以内に退避量の駆動を完了させる必要がある。絞り羽根23の駆動上限速度も考慮することで、設定可能な退避量の目安を算出することができる。
【0038】
ステップS106では、レンズCPU20は、絞り羽根23をステップS103で取得した開放絞り位置に駆動する。
【0039】
ステップS107では、レンズCPU20は、絞り羽根23を小絞り側に駆動する。
【0040】
本実施形態では、絞り羽根23が第1の光束径よりも小絞りとなる絞り開放位置に位置した状態で、フォーカスレンズ群が無限側に移動すると、開放絞り位置が第1の光束径よりも明るくなる場合がある。この場合、本実施形態では、絞り羽根23を第1の光束径よりも退避量だけ開放側に位置するように移動させる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、開放絞り位置が第1の光束径以上である場合、開放径を第1の光束径とすることで、真円度の高い開口を形成可能である。
[第2の実施形態]
本実施形態では、第2の情報が第1の実施形態とは異なる。他の構成については第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
第1の光束径及び各フォーカスゾーンにおける絞り開放位置は、設計値として事前に算出可能である。第1の光束径が絞り開放位置以上となるフォーカスゾーンはあらかじめ把握できるので、該当するフォーカスゾーンにおける第2の情報を第1の光束径から所定量だけ開放側の位置としておけばよい。本実施形態の所定量は、第1の実施形態で説明した方法で求めたものである。このような構成により、本実施形態における絞り開放駆動シーケンスが非常に簡潔になる。
【0043】
図4は、本実施形態の絞り羽根23の駆動制御を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS200では、レンズCPU20は、現在のフォーカスゾーンを取得する。
【0045】
ステップS201では、レンズCPU20は、現在の開放絞り値を取得する。具体的には、レンズCPU20は、現在のフォーカスゾーン及び第1の情報を参照し、現在の開放絞り値を取得する。
【0046】
ステップS202では、レンズCPU20は、ステップS201で取得した現在の開放絞り値が目標絞り値以上であるかを判定する。現在の開放絞り値が目標絞り値以上である、すなわち目標絞り値が現在の開放絞り値以上に明るい値である場合、ステップS203に進む。現在の開放絞り値が目標絞り値より小さい、すなわち目標絞り値が現在の開放絞り値より暗い値である場合、ステップS205に進む。
【0047】
ステップS203では、レンズCPU20は、開放絞り位置を取得する。具体的には、レンズCPU20は、現在のフォーカスゾーン及び第2の情報を参照し、開放絞り位置を取得する。開放絞り位置は、第1の実施形態と同じ方法で求められる。
【0048】
ステップS204では、レンズCPU20は、ステップS203で取得した開放絞り位置に絞り羽根203を駆動する。
【0049】
ステップS205では、レンズCPU20は、絞り羽根23を小絞り側に駆動する。
【0050】
フォーカスゾーンごとの第1の光束径が設計上分かっている場合や、実測に基づいて個別調整値としなくても設計値との誤差が充分と判明している場合、本実施形態のように、第2の情報に設定する値を工夫することで、制御シーケンスを簡略化できる。そのため、本実施形態では、第1の実施形態の図3のステップS104における絞り羽根23を退避させるか否かの判定や絞り羽根23を退避させる際の開放絞り位置の再計算も必要ない。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、開放絞り位置が第1の光束径以上である場合、開放径を第1の光束径とすることで、真円度の高い開口を形成可能である。
[その他の実施例]
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
2 交換レンズ(レンズ装置)
20 レンズCPU(制御部、制御装置)
21 撮像光学系(光学系)
23 絞り羽根(絞り部)
26 絞り駆動回路(制御部)
図1
図2
図3
図4