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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】タイヤ製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 73/20 20060101AFI20240610BHJP
   B29D 30/08 20060101ALI20240610BHJP
   B60C 19/12 20060101ALI20240610BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B29C73/20
B29D30/08
B60C19/12 A
B05C13/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020187540
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076890
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝野 寿治
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-217953(JP,A)
【文献】特開昭58-093612(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123201(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0248084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 73/20
B29D 30/08
B60C 19/12
B05C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤをタイヤ回転軸の周りに回転可能に支持する保持装置と、前記保持装置に支持されたタイヤの内面に密封剤を塗布して密封層を設ける塗布装置とを備え、
前記保持装置が支持するタイヤのタイヤ回転軸の方向を変更させながら、前記塗布装置がタイヤの内面に密封剤を塗布するタイヤ製造装置。
【請求項2】
前記塗布装置は、密封剤をタイヤの内面へ向けて突出するノズルを備え、
前記塗布装置がタイヤの内面に密封剤を塗布している間、前記ノズルが停止している請求項1に記載されたタイヤ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤ内面にシーラント剤と呼ばれるパンク防止用の密封剤を塗布するタイヤの製造装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
下記特許文献1に記載された製造装置では、供給装置から密封剤が可撓性を有する配管を介して吐出口へ供給されるようになっており、タイヤを回転させた状態で、吐出口から密封剤を吐出する位置及び方向をタイヤの子午線方向に沿って移動させつつ、密封剤を吐出口からタイヤ内面へ吐出することで、タイヤ内面に密封層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-217953号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、密封剤が高粘度の物性を有しているため、上記の製造装置では、吐出口から密封剤を吐出する方向を、タイヤ内面の子午線方向の曲面形状に合わせてタイヤ径方向に対して傾斜させると、配管の屈曲部分が圧迫を受けて狭くなり、当該屈曲部分において密封剤が詰まり密封層の形成不良が発生することがある。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、供給装置から吐出口へ密封剤を供給する配管における密封剤の詰まりを抑え、密封層の形成不良を抑えることができるタイヤ製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るタイヤ製造装置は、タイヤをタイヤ回転軸の周りに回転可能に支持する保持装置と、前記保持装置に支持されたタイヤの内面に密封剤を塗布して密封層を設ける塗布装置とを備え、前記保持装置が支持するタイヤのタイヤ回転軸の方向を変更させながら、前記塗布装置がタイヤの内面に密封剤を塗布するものである。
【発明の効果】
【0008】
上記タイヤ製造装置では、供給装置から吐出口へ密封剤を供給する配管における密封剤の詰まりを抑え、密封層の形成不良を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のタイヤ製造装置を概略構成で示す図
図2】(a)~(f)は図1のタイヤ製造装置の動作を示す図
図3図1に示すタイヤ製造装置で製造されるタイヤの一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、一実施形態に係るタイヤ製造装置10を示した図である。このタイヤ製造装置10は、加硫成型された空気入りタイヤ(以下、タイヤということもある)Tの内面に密封剤を塗布して密封層を形成する装置である。
【0011】
ここで、タイヤTは、図3に示すように、接地面をなすトレッド1と、トレッド1の幅方向両端からタイヤ径方向内側に延びる一対のショルダ2、2、サイドウォール3,3及びビード4,4と、タイヤ内面のうちトレッド1及び一対のショルダ2、2の内側に位置する部分に設けられた密封層5とを備える。タイヤ内面に設けられた密封層5を除いて一般的な各種タイヤ構造を採用することができる。なお、本明細書では、密封層5が設けられていない加硫済みのタイヤについてもタイヤTと表すことがある。
【0012】
密封層5は、タイヤ周方向に延びる細長い帯状に形成した密封剤6を、タイヤ幅方向の一部が重なるようにタイヤ幅方向に位置を変えながらタイヤ周方向に沿って貼り付けることにより形成されている。
【0013】
密封層5は、高い粘着性を有する密封剤を細長い帯状に形成した複数の帯状の密封剤6から構成されており、釘踏み等によりタイヤTのトレッド1を貫通する孔ができると、この孔を自動的に封止して空気の漏れ出しを防ぎ、タイヤTのパンクを抑制する。つまり、タイヤTはセルフシールタイプの空気入りタイヤとなっている。
【0014】
密封層5を構成する密封剤6は、例えば、未加硫または半加硫状態のブチルゴムに、ポリイソブチレン、ポリブテン等の可塑剤と、熱可塑性オレフィン/ジオレフィン共重合体等の粘着性付与剤と、カーボンブラックやシリカ等の充填材を配合したものを使用することができる。なお、密封剤6は、これに制限されることなく、従来から使用されている他の公知の密封剤を用いることもできる。
【0015】
次に、タイヤTの内面に密封層5を形成するタイヤ製造装置10について、図1を参照して説明する。
【0016】
タイヤ製造装置10は、タイヤTをタイヤ回転軸Lの周りに回転可能に保持する保持装置20と、保持装置20に保持されたタイヤTの内面に密封剤6を塗布して密封層5を形成する塗布装置50とを備える。
【0017】
保持装置20は、加硫成型されたタイヤTを回転させながら保持するとともに、塗布装置50に対するタイヤTの位置及び角度を変更する。
【0018】
保持装置20は、タイヤTを径方向外側から挟持する挟持部21と、挟持部21を支持する回転プレート22と、挟持部21を移動させるとともに回転プレート22を回転させる駆動部23と、回転プレート22及び駆動部23を移動させる移動機構24とを備える。
【0019】
挟持部21は、タイヤTのトレッド1を挟持するトレッド挟持部21aと、サイドウォール3を挟持するサイド挟持部21bとを備える略L字形状をなしている。挟持部21は、回転プレート22の回転軸Mを中心とする円周上に間隔をあけて複数(例えば、4つ)設けられている。挟持部21は、スライダ25を介して回転プレート22に設けられている。スライダ25は、回転プレート22の回転軸Mを中心とする径方向に移動可能に挟持部21を支持する。
【0020】
タイヤTのタイヤ回転軸Lが回転プレートの法線方向と一致するようにタイヤTのサイドウォール3をサイド挟持部21bに載置すると、トレッド挟持部21aは、タイヤTのトレッド1に径方向外側から当接してタイヤTを回転プレート22上において保持する。
【0021】
また、本実施形態の挟持部21は、タイヤTのサイドウォール3と当接するストッパ26と、ストッパ26を回転プレート22の法線方向へ移動させるエアーシリンダなどストッパ駆動部27とを備える。ストッパ駆動部27は、ストッパ26を回転プレート22の法線方向へ移動させ、タイヤTをサイド挟持部21bとストッパ26との間で保持することで、タイヤ回転軸Lに平行な方向へのタイヤTの移動を規制する。
【0022】
駆動部23は、回転プレート22をその回転軸Mの周りに回転させるモータと、回転プレート22の回転軸Mを中心とする径方向に回転プレート22に設けられた複数の挟持部21を同期して移動させるチャック機構とを備える。駆動部23は、複数の挟持部21が互いに径方向に広がった状態で、タイヤTがサイド挟持部21bに載置されると、挟持部21を径方向内方へ移動させてトレッド挟持部21aでタイヤTを挟持する。
【0023】
移動機構24は、例えば3軸の自由度を持つ産業用ロボットを用いることができる。この移動機構24が有するアーム24aの先端部には、回転プレート22及び駆動部23が固定されている。これにより、移動機構24は、回転プレート22及び駆動部23とともに挟持部21に挟持されたタイヤTの位置及び角度を変更する。
【0024】
塗布装置50は、密封剤6を圧送する供給部51と、供給部51から圧送された密封剤6が供給されるノズル52とを備える。供給部51は、ギアポンプを備え、ギアポンプの動作中は一定量の密封剤6をノズル52へ圧送し、ギアポンプの停止中はノズル52へ密封剤6の供給を遮断する。ノズル52の先端に設けられた吐出口52aは、タイヤTの内面と対向するように配置され、供給部51から供給された密封剤6をタイヤTの内面へ吐出する。吐出口52aは、幅方向(タイヤ幅方向に平行な方向)の寸法が2~20mm程度で、厚み方向の寸法が2~10mm程度の略矩形状の開口形状をなしており、タイヤTの幅寸法に比べて細幅の帯状に密封剤6を成型しながら吐出する。なお、吐出口52aの開口形状は、上記のような矩形状以外にも、丸形状や扁平な三角形状など任意の形状に設定することができる。
【0025】
上記した保持装置20及び塗布装置50は、それぞれ不図示の制御装置に接続され、その作動が制御装置により制御されるようになっている。
【0026】
次に、タイヤ製造装置10の動作について、図2を参照して説明する。
【0027】
まず、挟持部21を設けた面が上方を向くように、移動機構24が回転プレート22を配置する。また、タイヤTをサイド挟持部21bに載置する際にストッパ26がタイヤTと接触しないように、駆動部23が挟持部21を径方向外方へ移動させる。その後、図2(a)に示すように、加硫工程において加硫成型されたタイヤTを、サイド挟持部21bにサイドウォール3が当接するように挟持部21に載置する。
【0028】
次いで、図2(b)に示すように、駆動部23が挟持部21を径方向内方へ移動させてトレッド挟持部21aでタイヤTを挟持する。その際、複数の挟持部21が、回転プレート22の回転軸Mを中心とする径方向へ同期して移動するため、トレッド挟持部21aがタイヤTを保持すると、タイヤ回転軸Lが回転プレート22の回転軸Mに一致する。また、ストッパ駆動部27が、ストッパ26とサイド挟持部21bとの間でタイヤTを保持するようにストッパ26を移動させ、タイヤ回転軸Lに平行な方向へのタイヤTの移動を規制する。
【0029】
次いで、図2(c)に示すように、移動機構24が回転プレート22及び駆動部23とともにタイヤTを移動させ、タイヤTのビード4の内側からタイヤ内側へノズル52を挿入する。
【0030】
次いで、図2(d)に示すように、移動機構24が回転プレート22及び駆動部23とともにタイヤTを移動させ、ノズル52の吐出口52aを一方のショルダ2の内側の所定位置と対向させる。
【0031】
その後、駆動部23が、回転プレート22を回転させてタイヤTをタイヤ回転軸Lの周りに回転させるとともに、塗布装置50が動作して一定量の密封剤6をノズル52へ圧送する。これにより、吐出口52aの開口形状に対応した帯状の密封剤6が吐出口52aからタイヤ内面へ向けて吐出され、タイヤ内面に対して密封剤6の塗布を開始する。
【0032】
そして、図2(d)~(f)に示すように、駆動部23による回転プレート22の回転と、塗布装置50による密封剤6の吐出とを継続した状態で、吐出口52aがタイヤ内面の子午線方向の曲面形状に沿ってタイヤ幅方向一方側から他方側へ相対的に移動するように、移動機構24がタイヤTをタイヤ幅方向へ移動させながらタイヤ回転軸Lの方向を変更する。つまり、移動機構24は、吐出口52aから密封剤6を吐出する方向が、密封剤6を塗布する位置におけるタイヤ内面の法線方向と一致するように、タイヤTの位置とタイヤ回転軸Lの方向を調整する。
【0033】
本実施形態では、図2(d)に示す密封剤6の塗布開始時に、タイヤTのノズル52を挿入する側が斜め上方を向くようにタイヤ回転軸Lを斜め上方に傾斜させる。そして、図2(e)、(f)に示すようにタイヤTをタイヤ幅方向一方側から他方側へ移動させて密封剤6をタイヤTの内面に塗布するに従って、タイヤTのノズル52を挿入する側が斜め下方を向くようにタイヤ回転軸Lを徐々に斜め下方に傾斜させる。これにより、タイヤTの内面には、帯状の密封剤6が螺旋状に塗布され密封層5が形成される。
【0034】
そして、図2(f)に示すように、ノズル52の吐出口52aが、他方のショルダ2の内側に到達すると、駆動部23による回転プレート22の回転を停止し、また、供給部51のギアポンプを停止して塗布装置50による密封剤6の吐出を停止する。
【0035】
そして、移動機構24が回転プレート22及び駆動部23とともにタイヤTを移動させ、ビード4の内側からノズル52を抜き取った後、図2(b)に示すように、タイヤ回転軸Lが上方を向くように回転プレート22を配置する。
【0036】
そして、トレッド挟持部21aによるタイヤTの挟持と、ストッパ26及びサイド挟持部21bによるタイヤTの挟持とを解除した後、密封層5が形成されたタイヤTを取り出す。
【0037】
本実施形態のタイヤ製造装置10では、タイヤTの内面に密封剤6を塗布する際に、移動機構24がタイヤTを移動させてタイヤ回転軸Lの方向を変更させるため、ノズル52をタイヤ径方向に対して傾斜させる必要が無く、ノズル52内の密封剤の流路が圧迫を受けることがない。そのため、ノズル52内における密封剤6の詰まりを抑え、密封層5の形成不良を抑えることができる。
【0038】
特に、本実施形態では、ノズル52が供給部51に固定され、タイヤTの内面に密封剤6を塗布する間、ノズル52が停止しておりノズル52の位置が変化しないため、より確実にノズル52内における密封剤6の詰まりを抑え、密封層5の形成不良を抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態では、密封剤6の塗布中にタイヤTがサイド挟持部21bとストッパ26との間で保持されタイヤ回転軸Lに平行な方向へ移動することがないため、タイヤTの所望位置に密封剤6を塗布することができる。
【0040】
(変更例)
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0041】
例えば、上記した実施形態では、ノズル52が供給部51に固定されている場合について説明したが、例えば、塗布装置50を水平方向及び上下方向に移動可能に設け、タイヤTの内面に密封剤6を塗布する間、移動機構24がタイヤTのタイヤ回転軸Lの方向を変更させつつ、塗布装置50がタイヤTを水平方向及び上下方向に移動させてもよい。
【0042】
また、上記した実施形態では、帯状の密封剤6を螺旋状に塗布することでタイヤTの内面に密封層5を形成したが、例えば、帯状の密封剤6をタイヤ周方向に平行に塗布し、タイヤを1回転させる毎にタイヤ幅方向における密封剤6の貼り付け位置を、密封剤6の幅寸法より小さい寸法だけタイヤ幅方向へずらすことで、タイヤTの内面に密封層5を形成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…トレッド、2…ショルダ、3…サイドウォール、4…ビード、5…密封層、6…密封剤、10…タイヤ製造装置、20…保持装置、21…挟持部、21a…トレッド挟持部、21b…サイド挟持部、22…回転プレート、23…駆動部、24…移動機構、25…スライダ、26…ストッパ、27…ストッパ挟持部、50…塗布装置、51…供給部、52…ノズル、52a…吐出口
図1
図2
図3