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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/13 20060101AFI20240610BHJP
   B62D 21/18 20060101ALI20240610BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B60R21/13 B
B62D21/18 B
B62D25/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020190826
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022079941
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】松井 浩
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320463(JP,A)
【文献】特開平11-255055(JP,A)
【文献】特開2020-059447(JP,A)
【文献】特開2020-104754(JP,A)
【文献】米国特許第05779272(US,A)
【文献】特開2001-355723(JP,A)
【文献】特開2019-052455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0281722(US,A1)
【文献】特開2008-062743(JP,A)
【文献】特開2012-030648(JP,A)
【文献】米国特許第08528924(US,B1)
【文献】特開2014-043219(JP,A)
【文献】特開平01-136845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/13
B62D 21/18
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームと、
前記機体フレームよりも上方に設けられ、運転者が着座可能な運転席と、
前記運転席の前方でかつ少なくとも側方に設けられ、トラクタの転倒時に運転者を保護する転倒保護フレームと、
前記運転席の前方であって前記転倒保護フレームよりも後方に設けられたステアリングハンドルと、
を備え、
前記転倒保護フレームは、
前記機体フレームの左右両側にそれぞれ取り付けられた左下部フレーム及び右下部フレームと、
回動支点を有し、前記左下部フレーム及び前記右下部フレームにそれぞれ設けられた左支持ブラケット及び右支持ブラケットと、
を有するトラクタにおいて、
前記左支持ブラケットと前記右支持ブラケットとを連結する連結部材を備え
前記連結部材は、前後方向において、前記転倒保護フレームと、前記ステアリングハンドルと、の間に配置されていることを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のトラクタであって、
前記転倒保護フレームは、上部フレームを有し、
前記上部フレームは、アーチ形状を有し、前記左下部フレーム及び前記右下部フレームよりも上方に配置され、
前記上部フレームは、前記左下部フレーム及び前記右下部フレームにそれぞれ前記左支持ブラケット及び前記右支持ブラケットを介して、前記回動支点を中心として回動可能に支持されることを特徴とするトラクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトラクタであって
前記連結部材は、
当該連結部材の上端位置が前記ステアリングハンドルの上端位置に対して同じ上下位置又は下方に位置するように配置されることを特徴とするトラクタ。
【請求項4】
請求項2に記載のトラクタであって、
前記転倒保護フレームは、
前記上部フレームが前記左下部フレーム及び前記右下部フレームに対して回動操作されることで、前記上部フレームが前記左下部フレーム及び前記右下部フレームに対して上方へ延びた状態となる起立姿勢、又は、前記上部フレームが前記左下部フレーム及び前記右下部フレームに対して前方へ延びる倒れ姿勢をとることができるように構成されるとともに、
前記左下部フレーム又は前記右下部フレームと前記上部フレームとに対して向き合うように前方に配置され、当該転倒保護フレームが前記倒れ姿勢から前記起立姿勢に変更される際に収縮状態から伸びる方向に作動するダンパー部材が設けられることを特徴とするトラクタ。
【請求項5】
請求項2又は4に記載のトラクタであって、
前記転倒保護フレームは、
前記上部フレームに取り付けられ、前記上部フレームの回動操作が行われる際に握られる握り部が設けられることを特徴とするトラクタ。
【請求項6】
請求項5に記載のトラクタであって、
前記上部フレームは、
上下方向に延び、下端部で前記左支持ブラケットに回動可能に支持される左延長部と、
上下方向に延び、下端部で前記右支持ブラケットに回動可能に支持される右延長部と、
前記左延長部の上端部と、前記右延長部の上端部と、を繋ぐ繋ぎ部と、
を有し、
前記握り部は、
前記左延長部及び前記右延長部の少なくとも一方に取り付けられ、取り付けられた前記左延長部又は前記右延長部の車幅方向の最内側端よりも車幅方向の外側に位置することを特徴とするトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、転倒時に運転者を保護する転倒保護フレームが運転席の前方に設けられたトラクタが知られている。特許文献1,2は、この種のトラクタを開示する。
【0003】
特許文献1のトラクタは、エンジンをカバーするエンジンボンネットと、エンジンボンネットの後方に配置されたハンドルポストと、エンジンボンネットとハンドルポストとの隣接する部位に対応して配置された前転倒保護フレームと、を備える。前転倒保護フレームは、可倒式のフレームであり、取付ブラケットに取り付け固定された下部フレームと、下部フレームに揺動可能に取り付けられたアーチ状の上部フレームとで構成されている。取付ブラケットは、ミッションケース、及び機体フレーム等を含む機体固定部に取り付け固定されている。下部フレームと上部フレームとはブラケットを介して連結されている。上部フレームは、これとブラケットとを貫通する支持ピンの軸芯回りで下部フレームに対して上下揺動自在に支持されている。
【0004】
特許文献2のトラクタは、機体中間部に配備された機体操向用の回転ハンドルと、機体後部に配備された操縦座席と、操縦者の回りを保護する安全フレーム(転倒保護フレーム)と、を備える。安全フレームは、パイプを逆U字状に屈曲成形したものであり、機枠に連結支持されて、回転ハンドルの前部に設けられている。安全フレームの内の左右一対の上下方向に向かうフレーム部分にわたって小物載置枠が連結されている。この小物載置枠が、安全フレームの補強フレームを兼ねるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-62743号公報
【文献】実開昭53-33111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1,2の構成において、トラクタが転倒したとき、転倒により生じた衝撃力が、転倒保護フレーム(安全フレーム)を介してトラクタの機体固定部(機枠)の左右両側に均等に分配して伝えられずに、転倒保護フレーム(安全フレーム)の一部に集中して作用し易い。また、上記の衝撃力が、転倒保護フレーム(安全フレーム)とトラクタの機体固定部(機枠)との連結部分に集中して作用し易い。そのため、転倒保護フレーム(安全フレーム)や、これとトラクタの機体固定部(機枠)との連結部分が破損してしまうおそれがあった。
【0007】
上記特許文献2については、安全フレームに補強フレームを兼ねる小物載置枠が設けられていることから、前述の問題の緩和が図られ得ると考えられる。しかし、小物載置枠がタバコ及び飲み物等の小物を載置可能なものに過ぎないので、十分な補強を得ることができず、改善の余地があった。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、転倒時における転倒保護フレームの破損を防止することができるトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成のトラクタが提供される。即ち、このトラクタは、機体フレームと、運転席と、転倒保護フレームと、ステアリングハンドルと、を備える。前記運転席は、前記機体フレームよりも上方に設けられ、運転者が着座可能なものである。前記転倒保護フレームは、前記運転席の前方でかつ少なくとも側方に設けられ、トラクタの転倒時に運転者を保護する。前記転倒保護フレームは、左下部フレーム及び右下部フレームと、左支持ブラケット及び右支持ブラケットと、を有する。前記ステアリングハンドルは、前記運転席の前方であって転倒保護フレームよりも後方に設けられる。前記左下部フレーム及び前記右下部フレームは、それぞれ、前記機体フレームの左右両側に取り付けられる。前記左支持ブラケット及び前記右支持ブラケットは、それぞれ、回動支点を有し、前記左下部フレーム及び前記右下部フレームのそれぞれに設けられる。そして、このトラクタが、前記左支持ブラケットと前記右支持ブラケットとを連結する連結部材を備える。前記連結部材は、前後方向において、前記転倒保護フレームと、前記ステアリングハンドルと、の間に配置される。
【0011】
これにより、トラクタが転倒して転倒保護フレームが衝撃を受けたとき、連結部材の存在により、この衝撃に起因する衝撃力を、トラクタの機体フレームの左右両側に均等に分配して伝えることができる。そのため、衝撃力が転倒保護フレームの一部に集中して伝わることを回避することが可能となる。従って、転倒保護フレームが破損することを防止することができる。また、連結部材を、トラクタへの運転者の乗降時に、運転者が握ることができる握り部として利用することができ、この際の安全性を高めることができる。
【0012】
前記のトラクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記転倒保護フレームは、上部フレームを有する。前記上部フレームは、アーチ形状を有する。前記上部フレームは、前記左下部フレーム及び前記右下部フレームよりも上方に配置される。前記上部フレームは、前記左下部フレーム及び前記右下部フレームのそれぞれに前記左支持ブラケット及び前記右支持ブラケットを介して、前記回動支点を中心として回動可能に支持される。
【0013】
これにより、転倒保護フレームの機能性を高めることができる。
【0014】
前記のトラクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち前記連結部材は、当該連結部材の上端位置が前記ステアリングハンドルの上端位置に対して同じ上下位置又は下方に位置するように配置される。
【0015】
これにより、連結部材を、運転席に着座した運転者の前方視界に入りにくくすることができる。従って、運転者の前方視界が連結部材により損なわれることを抑制することができる。
【0016】
前記のトラクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記転倒保護フレームは、前記上部フレームが前記左下部フレーム及び前記右下部フレームに対して回動操作されることで、起立姿勢、又は、倒れ姿勢をとることができるように構成される。前記起立姿勢は、前記上部フレームが前記左下部フレーム及び前記右下部フレームに対して上方へ延びた状態となる姿勢である。前記倒れ姿勢は、前記上部フレームが前記左下部フレーム及び前記右下部フレームに対して前方へ延びる姿勢である。前記倒保護フレームには、ダンパー部材が設けられる。前記ダンパー部材は、前記左下部フレーム又は前記右下部フレームと前記上部フレームとに対して向き合うように前方に配置され、当該転倒保護フレームが前記倒れ姿勢から前記起立姿勢に変更される際に収縮状態から伸びる方向に作動する。
【0017】
これにより、転倒保護フレームを回動操作する場合の操作性の向上を図ることができる。また、ダンパー部材を、運転席に着座した運転者の視界に入りにくくすることができる。従って、運転者の前方視界がダンパー部材により損なわれることを抑制することができる。
【0018】
前記のトラクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記転倒保護フレームに、握り部が設けられる。前記握り部は、前記上部フレームに取り付けられ、前記上部フレームの回動操作が行われる際に握られる。
【0019】
これにより、握り部を用いて、上部フレームの回動操作を行うことができる。従って、転倒保護フレームの操作性の向上を図ることができる。
【0020】
前記のトラクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記上部フレームは、左延長部と、右延長部と、繋ぎ部と、を有する。前記左延長部は、上下方向に延び、下端部で前記左支持ブラケットに回動可能に支持される。前記右延長部は、上下方向に延び、下端部で前記右支持ブラケットに回動可能に支持される。前記繋ぎ部は、前記左延長部の上端部と、前記右延長部の上端部と、を繋ぐ。前記握り部は、前記左延長部及び前記右延長部の少なくとも一方に取り付けられ、取り付けられた前記左延長部又は前記右延長部の車幅方向の最内側端よりも車幅方向の外側に位置する。
【0021】
これにより、握り部が運転席に着座した運転者の前方視界を妨げにくくなるように、握り部を配置することができる。従って、運転者の前方視界が前記握り部により損なわれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの側面図。
図2】トラクタの斜視図。
図3】トラクタの一部拡大斜視図。
図4】トラクタにおける転倒保護フレームの側面図。
図5】トラクタにおける転倒保護フレームの正面図。
図6】トラクタにおける転倒保護フレームの背面図。
図7】トラクタにおける転倒保護フレームの左側の一部拡大斜視図。
図8】(a)転倒保護フレームが起立姿勢である状態を示す側面図。(b)ダンパー部材の転倒保護フレームへの組付作業時における転倒保護フレームの一状態を示す側面図。
図9】転倒保護フレームの倒れ姿勢を示す側面図。
図10】トラクタにおける転倒保護フレームの右側の一部拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るトラクタ1の側面図である。図2は、トラクタ1の斜視図である。図3は、トラクタ1の一部拡大斜視図である。なお、以下の説明では、トラクタ1が前進する方向に対して左側を「左」と呼び、右側を「右」と呼ぶ。左右方向は、トラクタ1の車幅方向に相当する。
【0024】
図1及び図2に示すように、トラクタ1は、機体フレーム2等で構成された走行機体を備えている。走行機体は、走行車輪としての左右1対の前輪3及び左右1対の後輪4により支持されている。走行機体は、その後部に作業機を着脱可能に構成されている。作業機としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機を選択することができる。
【0025】
走行機体の前部に、ボンネット5が配置されている。ボンネット5は、その内部を露出することができるように開閉可能に設けられている。ボンネット5の内部には、駆動源としてのエンジン等が配置されている。本実施形態においてエンジンはディーゼルエンジンから構成されているが、他の形式のエンジンであっても良い。
【0026】
ボンネット5の後方に、トラクタ1の運転部7が配置されている。図3にも示すように、運転部7は、運転席8及びステアリングハンドル9を備える。運転席8には、運転者が座ることができる。ステアリングハンドル9は、運転席8の前方に配置されている。また、運転部7では、ステアリングハンドル9の前方に、ダッシュボード10が配置されている。
【0027】
ダッシュボード10は、ボンネット5と前後方向で隣り合うように設けられている。ダッシュボード10には、トラクタ1の運転者がトラクタ1等を操作するための操作具、及び、走行速度等の各種の情報を表示する計器類等が配置されている。運転者は、ステアリングハンドル9及び前記の操作具等を用いて、トラクタ1の走行操作等を行うことができる。
【0028】
トラクタ1においては、運転者による走行操作に応じて、ボンネット5内のエンジンで発生した動力が、図略のクラッチハウジング及びミッションケース等を介して後輪4に伝達される。これにより、トラクタ1を走行させることができる。
【0029】
次に、図1から図10を参照して、トラクタ1が転倒したときに、運転部7にいる運転者を保護するための転倒保護フレーム11について説明する。図4は、転倒保護フレーム11の側面図である。図5は、転倒保護フレーム11の正面図である。図6は、転倒保護フレーム11の背面図である。図7は、転倒保護フレーム11の左側の一部拡大斜視図である。図8(a)は、転倒保護フレーム11が起立姿勢である状態を示す側面図である。図8(b)は、ダンパー部材41の転倒保護フレーム11への組付作業時における転倒保護フレーム11の一状態を示す側面図である。図9は、転倒保護フレーム11の倒れ姿勢を示す側面図である。図10は、転倒保護フレーム11の右側の一部拡大斜視図である。
【0030】
図1図2図3及び図4に示すように、転倒保護フレーム11は、走行機体の前後途中部のうち運転部7よりも前側の部分に設けられている。転倒保護フレーム11は、その一部を図1に示す矢印12の方向に移動させ得るように、可倒式に構成されている。転倒保護フレーム11は、例えば、図1の実線で示す起立姿勢、又は、起立姿勢から走行機体の前側に向かって倒れた、図1の2点鎖線で示す倒れ姿勢をとることができる。以下の説明では、原則として、転倒保護フレーム11が起立姿勢となっている状態で、各部の構成を説明する。
【0031】
転倒保護フレーム11は、運転席8の前方でかつ少なくとも側方に設けられている。本実施形態では、転倒保護フレーム11は、運転席8の前方でかつ側方及び上方に設けられている。転倒保護フレーム11は、ボンネット5のうち運転部7に近い後端部の左右の側方及び上方に配置されている。なお、転倒保護フレーム11は、前後方向で隣り合うボンネット5とダッシュボード10とが前後方向で連続する部分付近に配置されるものであれば良い。
【0032】
図5及び図6に示すように、転倒保護フレーム11は、左下部フレーム13及び右下部フレーム14と、左支持ブラケット15及び右支持ブラケット16と、上部フレーム17と、を備える。左下部フレーム13及び左支持ブラケット15はトラクタ1の走行機体の左側に配置され、右下部フレーム14及び右支持ブラケット16はトラクタ1の走行機体の右側に配置されている。
【0033】
転倒保護フレーム11において、左下部フレーム13と右下部フレーム14とは、互いに略左右対称に構成されている。また、左支持ブラケット15と右支持ブラケット16とは、互いに略左右対称に構成されている。そこで、以下では、転倒保護フレーム11のうち、左右の下部フレーム13,14と、左右の支持ブラケット15,16については、主として左側の構成を説明する。
【0034】
左下部フレーム13は、機体フレーム2の左側に取り付けられている。本実施形態において、左下部フレーム13は、取付ブラケット21を介して、機体フレーム2の左側に取り付けられている。機体フレーム2は、左右方向に所定幅を有し、前後方向に延びるように設けられている。機体フレーム2は、エンジン等を支持した状態で、ボンネット5の下方に配置されている。
【0035】
取付ブラケット21は、機体フレーム2に対し左右方向外側(走行機体から離れる方向である左側)へ突出するように設けられている。取付ブラケット21は、機体フレーム2に固定されている。取付ブラケット21の突出側の端部(左側端部)は、前輪3よりも機体フレーム2に対し左右方向内側(走行機体に近づく方向である右側)に配置されている。
【0036】
左下部フレーム13は、取付ブラケット21から上方へ延びるように設けられている。左下部フレーム13の下端部は、取付ブラケット21に固定されている。こうして、左下部フレーム13は、機体フレーム2に対して不動となっている。左下部フレーム13の上端部は、ボンネット5の後端部であって上下途中部の左側方に配置されている。左下部フレーム13の上端部に、左支持ブラケット15が設けられている。
【0037】
図7にも示すように、左支持ブラケット15は、上下方向に延び、かつ、前方が開放された平面視U字状に形成されている。左支持ブラケット15は、左下部フレーム13の上端部から上方へ突出するように配置されている。左支持ブラケット15は、その下部に左下部フレーム13の上端部を嵌め込んだ状態で、左下部フレーム13の上端部に固定されている。これにより、左支持ブラケット15は、左下部フレーム13、ひいては機体フレーム2に対して不動となっている。
【0038】
左支持ブラケット15は、その上部に上部フレーム17の下端部を嵌め込んだ状態で、この上部フレーム17の下端部を回動可能に支持している。具体的には、左支持ブラケット15と上部フレーム17の下端部とが重なり合う部分にロックピン23が左右方向に貫通するように設けられて、左支持ブラケット15に対して上部フレーム17が位置決めされるように連結されている。
【0039】
そして、左支持ブラケット15と上部フレーム17の下端部とが重なり合う部分のうち、ロックピン23よりも下側の部分に、支持ピン25が左右方向に貫通するように設けられる。この支持ピン25によって、左支持ブラケット15に上部フレーム17の回動支点26が構成されている。上部フレーム17は、回動支点26(支持ピン25)を中心として回動することができる。
【0040】
上部フレーム17は、当該上部フレーム17が左支持ブラケット15(左下部フレーム13)及び右支持ブラケット16(右下部フレーム14)のそれぞれに対して、回動支点26を中心として回動することができる。この回動は、後述の回動操作により実現される。回動操作に応じた上部フレーム17の回動により、転倒保護フレーム11は、上部フレーム17を移動させて、当該転倒保護フレーム11の姿勢を変更することができる。
【0041】
例えば、転倒保護フレーム11は、上部フレーム17が左支持ブラケット15及び右支持ブラケット16に対して回動操作されることで、図8(a)に示すように、上部フレーム17が左右の支持ブラケット15,16(左右の下部フレーム13,14)に対して上方へ延びた状態となる起立姿勢、又は、図9に示すように、上部フレーム17が左右の支持ブラケット15,16(左右の下部フレーム13,14)に対して前方へ延びる倒れ姿勢をとることができる。転倒保護フレーム11は、多くの場合、トラクタ1の走行時に起立姿勢をとり、トラクタ1の格納時に倒れ姿勢をとる。
【0042】
詳細には、上部フレーム17は、アーチ形状(正面視逆U字形状)を有する。上部フレーム17は、左右の下部フレーム13,14よりも上方に配置され、開放側に位置する左右の下端部で左右の下部フレーム13,14にそれぞれ左右の支持ブラケット15,16を介して、回動支点26を中心として回動可能に支持されている。
【0043】
上部フレーム17は、左延長部31と、右延長部32と、繋ぎ部33とを有する。左右の延長部31,32は、それぞれ、上下方向に延び、下端部で左支持ブラケット15及び右支持ブラケット16に支持ピン25により回動可能に支持されている。繋ぎ部33は左延長部31の上端部と、右延長部32の上端部と、の間に配置され、これら両者を繋ぐ。
【0044】
転倒保護フレーム11が起立姿勢をとるとき、繋ぎ部33は、運転席8に座る運転者の保護を図ることができるように、ボンネット5及び運転部7に対して所定距離だけ上方に位置する。転倒保護フレーム11が倒れ姿勢となるとき、繋ぎ部33は、ボンネット5に設けられている前照灯34付近に位置する(図1を参照)。
【0045】
図7に示すように、左支持ブラケット15には、上下方向に所定距離をあけて配置された上孔35及び下孔36が設けられている。上孔35又は下孔36と、上部フレーム17の左延長部31の下端部に設けられた孔と、にロックピン23を差し込んで固定することによって、上部フレーム17を左支持ブラケット15(左下部フレーム13)に対してロックすることができる。これにより、転倒保護フレーム11の姿勢が維持される。
【0046】
具体的には、左右の支持ブラケット15,16のそれぞれの上孔35と、上部フレーム17の左延長部31の孔と、にロックピン23を差し込んで固定することで、上部フレーム17を左下部フレーム13に対して上方へ延びた状態に保ち、転倒保護フレーム11の姿勢を起立姿勢に維持することができる。ここで、ロックピン23は、左支持ブラケット15に対して着脱可能に構成されている。
【0047】
転倒保護フレーム11を起立姿勢から倒れ姿勢に変更したい場合は、ロックピン23を上孔35等から抜いて上部フレーム17を前方へ回動させる。その後に、左支持ブラケット15の下孔36と上部フレーム17の左延長部31の孔とにロックピン23を差し込んで固定する。これによって、上部フレーム17を傾いた状態に保ち、転倒保護フレーム11の姿勢を倒れ姿勢に維持することができる。
【0048】
また、図5に示すように、転倒保護フレーム11においては、左側部分(左支持ブラケット15等)及び右側部分(右支持ブラケット16等)の一方に対してダンパー部材41が設けられ、他方に対して規制部材42が設けられている。本実施形態では、転倒保護フレーム11の左側部分にダンパー部材41が設けられ、転倒保護フレーム11の右側部分に規制部材42が設けられている。
【0049】
ダンパー部材41は、左下部フレーム13と上部フレーム17とに対して向き合うように前方に配置されている。本実施形態では、ダンパー部材41は、ガスダンパーから構成されている。図7にも示すように、ダンパー部材41は、その長手方向が左下部フレーム13及び上部フレーム17の左延長部31のそれぞれが延びる方向に沿うように設けられている。
【0050】
ダンパー部材41は、左下部フレーム13と上部フレーム17の左延長部31とのそれぞれよりも小さい左右幅を有し、トラクタ1の背面視でこれらのフレームと重なり合うように配置されている。こうして、ダンパー部材41は、運転席8に座る運転者にとって、左下部フレーム13と上部フレーム17とにより、当該運転者の前方視界に入らないようになっている。
【0051】
ダンパー部材41は、左下部フレーム13と上部フレーム17の左延長部31との間に配置されている。ダンパー部材41の長手方向一端部が左下部フレーム13に連結され、長手方向他端部が上部フレーム17の左延長部31に連結されている。そして、ダンパー部材41は、その長手方向に伸縮することができるようになっている。
【0052】
ダンパー部材41は、図7及び図8(a)に示すように、転倒保護フレーム11が起立姿勢をとる場合、伸長状態となる。ダンパー部材41は、上部フレーム17の回動により、転倒保護フレーム11の姿勢が起立姿勢から倒れ姿勢に変更される際に伸長状態から縮む方向に作動する。一方、ダンパー部材41は、転倒保護フレーム11の姿勢が倒れ姿勢から起立姿勢に変更される際に収縮状態から伸びる方向に作動する。
【0053】
ダンパー部材41は、転倒保護フレーム11が倒れ姿勢をとるように上部フレーム17が回動する際に、この上部フレーム17に抵抗を付与することができる。よって、転倒保護フレーム11の姿勢を起立姿勢から倒れ姿勢に変更するために上部フレーム17の回動操作を行うとき、上部フレーム17が急速に回動して倒れることを防止することができる。従って、上部フレーム17の回動操作の操作性を向上させることができる。
【0054】
なお、ダンパー部材41の転倒保護フレーム11への組付作業時には、図8(b)に示すように、まず上部フレーム17を転倒保護フレーム11が起立姿勢となる場合における回動位置よりも若干後方へ回動させる。図8(b)の状態は、ダンパー部材41が最長(自然長)である状態に相当する。次に、この状態でダンパー部材41を上部フレーム17の左延長部31と左下部フレーム13とのそれぞれに連結する。次に、上部フレーム17を、転倒保護フレーム11が起立姿勢となる、図8(a)の回動位置に戻す。こうして、組付作業を完了させる。
【0055】
仮にダンパー部材41が図8(a)で最長となっていると、図8(a)の起立姿勢において上部フレーム17のガタつきが生じる原因となる。そこで、上部フレーム17が図8(a)の起立姿勢と図9の倒れ姿勢との間で切り換えられるのに伴って、ダンパー部材41が最長よりも短い範囲で伸縮するように構成されている。
【0056】
図8(a)の起立姿勢は、ダンパー部材41が自然長から少し圧縮された状態に相当する。従って、仮に図8(a)の状態でダンパー部材41を上部フレーム17に組み付けようとすると、ダンパー部材41のバネを圧縮させるように力を加えながら組み付けざるを得ず、組立性が低下する。この点、本実施形態では図8(b)の状態で自然長のダンパー部材41を上部フレーム17に組み付けているので、組立作業性が良好である。
【0057】
規制部材42は、ピン状の部材であり、転倒保護フレーム11の回動操作時における上部フレーム17の回動量(傾く度合い)を規制することができる。規制部材42は、転倒保護フレーム11においてダンパー部材41と左右逆側に位置する。図10にも示すように、規制部材42は、右支持ブラケット16において、回動支点26(支持ピン25)よりも前方に、即ち開放側に配置されている。規制部材42は、開放側に位置する左右の部分45,46の間に設けられている。規制部材42は、本実施形態では、左右方の部分45,46に架け渡されるように設けられている。
【0058】
これにより、転倒保護フレーム11の姿勢が起立姿勢から倒れ姿勢に変わる場合に、上部フレーム17が回動支点26を中心として前方へ回動するとき、規制部材42が移動中の上部フレーム17に下側から接触して、この上部フレーム17の回動を規制することができる。よって、転倒保護フレーム11の倒れ姿勢を規定し、ダンパー部材41の保護を図ることができる。
【0059】
また、転倒保護フレーム11においては、上部フレーム17に、握り部48が設けられている。握り部48は、転倒保護フレーム11が起立姿勢をとる状態で、運転部7から降りた運転者等がトラクタ1の外部から握り易い位置に配置されている。本実施形態では、握り部48は、上部フレーム17の左延長部31であって、ボンネット5の上端位置付近に設けられている。
【0060】
握り部48は、長手方向の途中で曲げられた棒状部材から構成されている。握り部48は、上部フレーム17の左延長部31からボンネット5の後端位置付近まで後方(運転部7側)へ突出するように配置されている。こうして、握り部48は、転倒保護フレーム11が回動して起立姿勢から倒れ姿勢へ姿勢を変更するとき、上部フレーム17の左延長部31に対してその上側に常時位置するようになっている。
【0061】
また、図3図4及び図5に示すように、握り部48は、上部フレーム17の左延長部31の左右方向の最内側端(右端)よりも左右方向の外側(左側)に位置する。握り部48は、できるだけ上部フレーム17の左延長部31の近くに配置されている。これにより、運転部7の運転席8に座る運転者にとって、握り部48が、上部フレーム17(左延長部31)と重なり合って見えるようになっており、当該運転者の前方視界を狭めることを抑制することができる。
【0062】
このように構成される転倒保護フレーム11に対して、連結部材50が設けられている。次に、図1から図7、及び図10を参照して、この連結部材50について説明する。
【0063】
図5及び図6に示すように、連結部材50は、転倒保護フレーム11の左支持ブラケット15と右支持ブラケット16とを連結する。連結部材50は、機体フレーム2に対して不動である左支持ブラケット15(左下部フレーム13)及び右支持ブラケット16(右下部フレーム14)に固定されている。連結部材50は、転倒保護フレーム11の補強部材として機能することができる。
【0064】
本実施形態において、連結部材50は、左支持ブラケット15と右支持ブラケット16との間に設けられている。連結部材50は、転倒保護フレーム11の左右幅と略同じ左右幅を有する。図1図2図3及び図4に示すように、連結部材50は、前後方向において、転倒保護フレーム11とステアリングハンドル9との間に配置されている。
【0065】
連結部材50は、ボンネット5(その外観形状)に沿うように配置されている。連結部材50は、長手方向途中部で曲げ部分を有する棒状部材から構成され、U字状に形成されている。連結部材50は、開放側を下方に向けた状態でボンネット5(ダッシュボード10)を迂回して囲むように配置され、開放側の左右の端部でそれぞれ左支持ブラケット15及び右支持ブラケット16に固定されている。
【0066】
具体的には、連結部材50は、ボンネット5の後端部(ボンネット5とダッシュボード10とが前後方向に連続する連続部分)付近の左右の側方及び上方に配置されている。連結部材50は、ボンネット5の後端部に対して所定の間隔をあけて配置されている。この間隔は任意に設定することができる。なお、連結部材50は、運転席8に座る運転者の前方視界を狭めないために、できるだけボンネット5の近くに位置することが好ましい。
【0067】
また、連結部材50は、転倒保護フレーム11の後方に配置されている。連結部材50の閉塞側部分(上側部分)は、握り部48よりも後方に位置するように、転倒保護フレーム11の上部フレーム17よりも後方に配置されている。連結部材50の左右の開放側部分(下側部分)は、それぞれ、左支持ブラケット15及び右支持ブラケット16の後方に配置されている。
【0068】
詳細には、連結部材50は、左上延部51と,右上延部52と、横延部53と、を有する。左上延部51は走行機体の左側で転倒保護フレーム11の左延長部31の後方付近に配置され、右上延部52は走行機体の右側で転倒保護フレーム11の右延長部32の後方付近に配置されている。左上延部51と,右上延部52とは、互いに略左右対称に構成されている。
【0069】
左上延部51は、左支持ブラケット15からボンネット5に沿って概ね上方へ延びている。左上延部51は、概ねボンネット5の後端部(ボンネット5とダッシュボード10の連続部)の左側方に配置されている。図7にも示すように、左上延部51の一部は、左支持ブラケット15に沿って延び、この左支持ブラケット15にボルト又は溶接等を用いた適宜の締結手段により固定されている。これにより、左上延部51は、左支持ブラケット15を介して、左下部フレーム13、ひいては機体フレーム2に対して固定された状態となっている。
【0070】
図1図2及び図3に示すように、左上延部51は、運転部7の乗降口61に臨むように設けられている。左上延部51は、運転部7に乗降する運転者が握ることができる形状を有する。左上延部51は、乗降口61よりも前方に配置されている。乗降口61の後方には、運転席8の左側方に設けられたフェンダ63に固定されたグリップ64が配置されている。これにより、運転者は、運転部7へ乗降口61から乗降するとき、乗降口61に対して設けられたステップ66に足を置いたうえで、グリップ64を右手で握るとともに、左上延部51を左手で握って体を支えることができる。従って、運転者は運転部7に対し安定して乗降することができる。
【0071】
右上延部52は、右支持ブラケット16からボンネット5に沿って概ね上方へ延びている。右上延部52は、概ねボンネット5の後端部(ボンネット5とダッシュボード10の連続部)の右側方に配置されている。図10にも示すように、右上延部52の一部は、右支持ブラケット16に沿って延び、この右支持ブラケット16にボルト又は溶接等を用いた適宜の締結手段により固定されている。これにより、右上延部52は、右支持ブラケット16を介して、右下部フレーム14、ひいては機体フレーム2に対して固定された状態となっている。
【0072】
横延部53は、左右の上延部51,52の上端部を繋ぐ。横延部53は、左右の上延部51,52の上端部間に配置されるとともに、ボンネット5の後端部(ボンネット5とダッシュボード10の連続部)付近の上方に配置されている。横延部53は、左右方向に延びるように設けられており、長手方向一端部で左上延部51の上端部に連結され、長手方向他端部で右上延部52の上端部に連結されている。
【0073】
図5及び図6に示すように、横延部53の上端位置は、ステアリングハンドル9の上端位置に対して略同じ上下位置に位置する。これにより、連結部材50を、運転席8に着座した運転者の前方視界に入りにくくすることができる。また、横延部53の上端位置は、握り部48の上端位置に対して略同じ上下位置に位置する。即ち、握り部48の上端位置は、ステアリングハンドル9の上端位置に対して略同じ上下位置に位置する。
【0074】
このような構成により、転倒保護フレーム11が起立姿勢をとる場合に、トラクタ1が転倒したとき、転倒保護フレーム11が衝撃を受ける。このとき、連結部材50により、転倒保護フレーム11が受けた衝撃に起因する衝撃力を機体フレーム2の左右両側にできるだけ均等に分配して伝えることができる。しかも、連結部材50により、転倒保護フレーム11の強度を向上させることができる。従って、転倒保護フレーム11が衝撃力により破損することを回避することができる。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態のトラクタ1は、機体フレーム2と、運転席8と、転倒保護フレーム11と、を備える。運転席8は、機体フレーム2よりも上方に設けられ、運転者が着座可能なものである。転倒保護フレーム11は、運転席8の前方でかつ少なくとも側方に設けられ、トラクタ1の転倒時に運転者を保護する。転倒保護フレーム11は、左下部フレーム13及び右下部フレーム14と、左支持ブラケット15及び右支持ブラケット16と、を有する。左下部フレーム13及び右下部フレーム14は、それぞれ、機体フレーム2の左右両側に取り付けられる。左支持ブラケット15及び右支持ブラケット16は、それぞれ、回動支点26を有し、左下部フレーム13及び右下部フレーム14のそれぞれに設けられる。そして、このトラクタ1が、左支持ブラケット15と右支持ブラケット16とを連結する連結部材50を備える。
【0076】
これにより、トラクタ1が転倒して転倒保護フレーム11が衝撃を受けたとき、連結部材50の存在により、この衝撃に起因する衝撃力を、トラクタ1の機体フレーム2の左右両側に均等に分配して伝えることができる。そのため、衝撃力が転倒保護フレーム11の一部に集中して伝わることを回避することが可能となる。従って、転倒保護フレーム11が破損することを防止することができる。また、連結部材50を、トラクタ1への運転者の乗降時に、運転者が握ることができる握り部として利用することができ、この際の安全性を高めることができる。
【0077】
本実施形態のトラクタ1において、転倒保護フレーム11は、上部フレーム17を有する。上部フレーム17は、アーチ形状を有する。上部フレーム17は、左下部フレーム13及び右下部フレーム14よりも上方に配置される。上部フレーム17は、左下部フレーム13及び右下部フレーム14にそれぞれ左支持ブラケット15及び右支持ブラケット16を介して、回動支点26を中心として回動可能に支持される。
【0078】
これにより、転倒保護フレーム11の機能性を高めることができる。
【0079】
本実施形態のトラクタ1は、ステアリングハンドル9を備える。ステアリングハンドル9は、運転席8の前方であって転倒保護フレーム11よりも後方に設けられる。連結部材50は、当該連結部材50の上端位置がステアリングハンドル9の上端位置に対して同じ上下位置に位置するように配置される。
【0080】
これにより、連結部材50を、運転席8に着座した運転者の前方視界に入りにくくすることができる。従って、運転者の前方視界が連結部材50により損なわれることを抑制することができる。
【0081】
本実施形態のトラクタ1において、転倒保護フレーム11は、上部フレーム17が左下部フレーム13及び右下部フレーム14に対して回動操作されることで、起立姿勢、又は、倒れ姿勢をとることができるように構成される。起立姿勢は、上部フレーム17が左下部フレーム13及び右下部フレーム14に対して上方へ延びた状態となる姿勢である。倒れ姿勢は、上部フレーム17が左下部フレーム13及び右下部フレーム14に対して前方へ延びる姿勢である。転倒保護フレーム11には、ダンパー部材41が設けられる。ダンパー部材41は、左下部フレーム13と上部フレーム17とに対して向き合うように前方に配置され、当該転倒保護フレーム11が倒れ姿勢から起立姿勢に変更される際に収縮状態から伸びる方向に作動する。
【0082】
これにより、転倒保護フレーム11を回動操作する場合の操作性の向上を図ることができる。また、ダンパー部材41を、運転席8に着座した運転者の視界に入りにくくすることができる。従って、運転者の前方視界がダンパー部材41により損なわれることを抑制することができる。
【0083】
本実施形態のトラクタ1において、転倒保護フレーム11に、握り部48が設けられる。握り部48は、上部フレーム17に取り付けられ、上部フレーム17の回動操作が行われる際に握られる。
【0084】
これにより、握り部48を用いて、上部フレーム17の回動操作を行うことができる。従って、転倒保護フレームの操作性の向上を図ることができる。
【0085】
本実施形態のトラクタ1において、上部フレーム17は、左延長部31と、右延長部32と、繋ぎ部33と、を有する。左延長部31は、上下方向に延び、下端部で左支持ブラケット15に回動可能に支持される。右延長部32は、上下方向に延び、下端部で右支持ブラケット16に回動可能に支持される。繋ぎ部33は、左延長部31の上端部と、右延長部32の上端部と、を繋ぐ。握り部48は、左延長部31に取り付けられ、取り付けられた左延長部31の左右方向の最内側端(右端)よりも左右方向の外側(左側)に位置する。
【0086】
これにより、運転席8に着座した運転者の前方視界を妨げにくくなるように、握り部48を配置することができる。従って、運転者の前方視界が握り部48により損なわれることを抑制することができる。
【0087】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0088】
連結部材50の構成及び位置は、特に限定されない。例えば、連結部材50は、当該連結部材50の上端位置がステアリングハンドル9の上端位置に対して下方に配置されても良い。なお、連結部材50は、運転席8に座る運転者の前方視界をできるだけ損なわないように、ボンネット(ダッシュボード10)のできるだけ近くに設けられることが好ましい。
【0089】
ダンパー部材41の構成及び位置は、特に限定されない。例えば、ダンパー部材41は、右下部フレーム14と上部フレーム17とに対して向き合うように前方に配置されても良い。この場合、規制部材42は、ダンパー部材41に対して左右逆側に位置する左支持ブラケット15に設けられる。なお、ダンパー部材41は、運転席8に座る運転者の前方視界をできるだけ損なわないように、転倒保護フレーム11に設けられることが好ましい。
【0090】
握り部48の構成及び位置は、特に限定されない。なお、握り部48は、運転席8に座る運転者の前方視界をできるだけ損なわないように、転倒保護フレーム11に設けられることが好ましい。
【0091】
また、握り部48は、左延長部31及び右延長部32の少なくとも一方に取り付けられるものであれば良い。例えば、握り部48は、右延長部32に取り付けられても良い。この場合、握り部48は、左右方向の最内側端(左端)よりも左右方向の外側(右側)に位置するように、右延長部32に取り付けられる。
【0092】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0093】
1 トラクタ
2 機体フレーム
8 運転席
9 ステアリングハンドル
11 転倒保護フレーム
13 左下部フレーム
14 右下部フレーム
15 左支持ブラケット
16 右支持ブラケット
17 上部フレーム
31 左延長部
32 右延長部
33 繋ぎ部
41 ダンパー部材
48 握り部
50 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10