(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】グラウト材の注入方法及び注入支援装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240610BHJP
E02B 7/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
E02D3/12 101
E02B7/00 Z
(21)【出願番号】P 2020191842
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 啓丞
(72)【発明者】
【氏名】升元 一彦
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴子
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082443(JP,A)
【文献】特開2016-117996(JP,A)
【文献】特開2013-221298(JP,A)
【文献】特開2019-167704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎地盤にグラウト材を注入する注入方法であって、
前記基礎地盤に互いに間隔を空けて形成された第1及び第2一次ボーリング穴の内壁における亀裂に関する情報を取得する亀裂情報取得工程と、
前記亀裂情報取得工程にて取得された前記亀裂に関する情報に基づいて、前記第1及び第2一次ボーリング穴の間での前記亀裂の連続性を評価する評価工程と、
前記第1及び第2一次ボーリング穴における
ルジオン値を取得する透水性情報取得工程と、
前記評価工程にて評価された前記亀裂の連続性と、前記透水性情報取得工程にて取得された前記
ルジオン値と、に基づいて、前記第1及び第2一次ボーリング穴の間への前記グラウト材の注入要否を判断する判断工程と、
前記判断工程にて前記グラウト材の注入が必要であると判断した場合に、前記第1及び第2一次ボーリング穴の間に二次ボーリング穴を形成し前記二次ボーリング穴に前記グラウト材を注入する注入工程と、を備え
、
前記亀裂情報取得工程では、前記第1及び第2一次ボーリング穴での前記亀裂の深度をそれぞれ第1及び第2深度として少なくとも取得し、
前記透水性情報取得工程では、前記第1深度での前記第1一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、前記第2深度での前記第2一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、を取得し、
前記判断工程では、
前記評価工程にて前記第1及び第2一次ボーリング穴における前記亀裂が連続すると評価されており、かつ、前記第1深度での前記第1一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、前記第2深度での前記第2一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、の少なくとも一方が予め定められた閾値以上である場合に、前記第1及び第2一次ボーリング穴の間への前記グラウト材の注入が必要であると判断し、
前記評価工程にて前記第1及び第2一次ボーリング穴における前記亀裂が連続しないと評価されている、または、前記第1深度での前記第1一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、前記第2深度での前記第2一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、の両方が前記閾値未満である場合に、前記第1及び第2一次ボーリング穴の間への前記グラウト材の注入が不要であると判断する、
グラウト材の注入方法。
【請求項2】
前記判断工程にて前記グラウト材の注入が必要であると判断した場合に、前記亀裂情報取得工程にて取得された前記第1及び第2深度に基づいて、前記第1及び第2一次ボーリング穴の間での前記亀裂の深度を推定する推定工程を更に備え、
前記注入工程では、前記推定工程にて推定された前記深度まで前記二次ボーリング穴を形成する、
請求項
1に記載のグラウト材の注入方法。
【請求項3】
基礎地盤へのグラウト材の注入を支援する注入支援装置であって、
前記基礎地盤に互いに間隔を空けて形成された第1及び第2一次ボーリング穴の内壁における亀裂に関する情報を取得する亀裂情報取得部と、
前記亀裂情報取得部にて取得された前記亀裂に関する情報に基づいて、前記第1及び第2一次ボーリング穴の間での前記亀裂の連続性を評価する評価部と、
前記第1及び第2一次ボーリング穴における
ルジオン値を取得する透水性情報取得部と、
前記評価部にて評価された前記亀裂の連続性と、前記透水性情報取得部にて取得された前記
ルジオン値と、に基づいて、前記第1及び第2一次ボーリング穴の間への前記グラウト材の注入要否を判断する判断部と、を備え
、
前記亀裂情報取得部は、前記第1及び第2一次ボーリング穴での前記亀裂の深度をそれぞれ第1及び第2深度として少なくとも取得し、
前記透水性情報取得部は、前記第1深度での前記第1一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、前記第2深度での前記第2一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、を取得し、
前記判断部は、
前記評価部にて前記第1及び第2一次ボーリング穴における前記亀裂が連続すると評価されており、かつ、前記第1深度での前記第1一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、前記第2深度での前記第2一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、の少なくとも一方が予め定められた閾値以上である場合に、前記第1及び第2一次ボーリング穴の間への前記グラウト材の注入が必要であると判断し、
前記評価部にて前記第1及び第2一次ボーリング穴における前記亀裂が連続しないと評価されている、または、前記第1深度での前記第1一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、前記第2深度での前記第2一次ボーリング穴における前記ルジオン値と、の両方が前記閾値未満である場合に、前記第1及び第2一次ボーリング穴の間への前記グラウト材の注入が不要であると判断する、
グラウト材の注入支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウト材の注入方法及び注入支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム工事では、基礎地盤にグラウト材を注入して基礎地盤の遮水性を高める補強(「グラウチング改良」とも呼ばれる)が行われる。特許文献1に開示されたグラウト材の注入方法では、まず、基礎地盤のルジオン値を測定し、ルジオン値に基づいて、グラウト材の注入位置を複数決定する。次に、決定された複数の注入位置にボーリング穴を形成し、ボーリング穴にグラウト材を注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ルジオン値に基づいて決定された注入位置にのみボーリング穴を形成しグラウト材を注入するだけでは、隣り合うボーリング穴の間に水みちとなる透水性亀裂が残り、基礎地盤の遮水性が不足するおそれがある。そのため、必要に応じて、ルジオン値に基づいて決定された注入位置の間に二次ボーリング穴を追加で形成し二次ボーリング穴にグラウト材を注入している。しかしながら、グラウト材の追加注入が必要であるか否かを判断する手法は確立されておらず、必要以上に二次ボーリング穴を形成し二次ボーリング穴にグラウト材を注入しているのが現状である。
【0005】
本発明は、基礎地盤にグラウト材を適切に注入することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基礎地盤にグラウト材を注入する注入方法であって、基礎地盤に互いに間隔を空けて形成された第1及び第2一次ボーリング穴の内壁における亀裂に関する情報を取得する亀裂情報取得工程と、亀裂情報取得工程にて取得された亀裂に関する情報に基づいて、第1及び第2一次ボーリング穴の間での亀裂の連続性を評価する評価工程と、第1及び第2一次ボーリング穴におけるルジオン値を取得する透水性情報取得工程と、評価工程にて評価された亀裂の連続性と、透水性情報取得工程にて取得されたルジオン値と、に基づいて、第1及び第2一次ボーリング穴の間へのグラウト材の注入要否を判断する判断工程と、判断工程にてグラウト材の注入が必要であると判断した場合に、第1及び第2一次ボーリング穴の間に二次ボーリング穴を形成し二次ボーリング穴にグラウト材を注入する注入工程と、を備え、亀裂情報取得工程では、第1及び第2一次ボーリング穴での亀裂の深度をそれぞれ第1及び第2深度として少なくとも取得し、透水性情報取得工程では、第1深度での第1一次ボーリング穴におけるルジオン値と、第2深度での第2一次ボーリング穴におけるルジオン値と、を取得し、判断工程では、評価工程にて第1及び第2一次ボーリング穴における亀裂が連続すると評価されており、かつ、第1深度での第1一次ボーリング穴におけるルジオン値と、第2深度での第2一次ボーリング穴におけるルジオン値と、の少なくとも一方が予め定められた閾値以上である場合に、第1及び第2一次ボーリング穴の間へのグラウト材の注入が必要であると判断し、評価工程にて第1及び第2一次ボーリング穴における亀裂が連続しないと評価されている、または、第1深度での第1一次ボーリング穴におけるルジオン値と、第2深度での第2一次ボーリング穴におけるルジオン値と、の両方が閾値未満である場合に、第1及び第2一次ボーリング穴の間へのグラウト材の注入が不要であると判断する。
【0007】
また、本発明は、基礎地盤へのグラウト材の注入を支援する注入支援装置であって、基礎地盤に互いに間隔を空けて形成された第1及び第2一次ボーリング穴の内壁における亀裂に関する情報を取得する亀裂情報取得部と、亀裂情報取得部にて取得された亀裂に関する情報に基づいて、第1及び第2一次ボーリング穴の間での亀裂の連続性を評価する評価部と、第1及び第2一次ボーリング穴におけるルジオン値を取得する透水性情報取得部と、評価部にて評価された亀裂の連続性と、透水性情報取得部にて取得されたルジオン値と、に基づいて、第1及び第2一次ボーリング穴の間へのグラウト材の注入要否を判断する判断部と、を備え、亀裂情報取得部は、第1及び第2一次ボーリング穴での亀裂の深度をそれぞれ第1及び第2深度として少なくとも取得し、透水性情報取得部は、第1深度での第1一次ボーリング穴におけるルジオン値と、第2深度での第2一次ボーリング穴におけるルジオン値と、を取得し、判断部は、評価部にて第1及び第2一次ボーリング穴における亀裂が連続すると評価されており、かつ、第1深度での第1一次ボーリング穴におけるルジオン値と、第2深度での第2一次ボーリング穴におけるルジオン値と、の少なくとも一方が予め定められた閾値以上である場合に、第1及び第2一次ボーリング穴の間へのグラウト材の注入が必要であると判断し、評価部にて第1及び第2一次ボーリング穴における亀裂が連続しないと評価されている、または、第1深度での第1一次ボーリング穴におけるルジオン値と、第2深度での第2一次ボーリング穴におけるルジオン値と、の両方が閾値未満である場合に、第1及び第2一次ボーリング穴の間へのグラウト材の注入が不要であると判断する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基礎地盤にグラウト材を適切に注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るグラウト材の注入方法の概略を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るグラウト材の注入支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】(a)は、一次ボーリング穴の一例を示す斜視図であり、(b)は、
図3(a)に示す一次ボーリング穴における内壁を展開したときの概略図であり、(c)は、亀裂検出装置の概略図である。
【
図4】(a)は、隣り合う一次ボーリング穴の間での亀裂の連続性を評価する方法を説明するための図であり、(b)は、評価部における処理を示すフローチャートである。
【
図6】判断部における処理を示すフローチャートである。
【
図8】(a)は、本発明の実施形態における変形例に係るグラウト材の注入支援装置の構成を示すブロック図であり、(b)は、表示部に表示される画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るグラウト材の注入方法及びグラウト材の注入支援装置について説明する。ダム工事において、基礎地盤の亀裂を塞いで遮水性を高めるために基礎地盤にグラウト材が注入される。
【0012】
まず、
図1を参照して、基礎地盤1にグラウト材2を注入する手順の概略を説明する。ここでは、
図1に例示するように、4つの亀裂3a、3b、3c、3dが存在する基礎地盤1にグラウト材2を注入する場合について説明する。以下において、亀裂3a,3b,3c,3dを総称する場合には、単に「亀裂3」とする。
【0013】
グラウト材2の注入方法では、まず、
図1(a)に示すように、基礎地盤1に互いに間隔を空けて複数の一次ボーリング穴10を形成し、一次ボーリング穴10にグラウト材2を注入する。
図1(a)では、基礎地盤1に4つの一次ボーリング穴10を形成した例が示されている。以下において、4つの一次ボーリング穴10を
図1(a)における左側から順に一次ボーリング穴11,12,13,14とも称する。
【0014】
次に、
図1(b)に示すように、隣り合う一次ボーリング穴10の間に二次ボーリング穴20を形成し、二次ボーリング穴20にグラウト材2を追加で注入する。
図1(b)では、一次ボーリング穴11,12の間に二次ボーリング穴20を形成してグラウト材2を追加で注入した例が示されている。
【0015】
遮水性が足りる領域に二次ボーリング穴20を形成しグラウト材2を追加で注入した場合には、基礎地盤1へグラウト材2を必要以上に注入することになり、ダムの構築費用が増加する。そのため、グラウト材2の追加注入は、一次ボーリング穴10へグラウト材2を注入するだけでは遮水性が不足する領域に行われることが好ましい。
【0016】
遮水性の不足は、一次ボーリング穴10へグラウト材2を注入するだけでは亀裂3の全体にグラウト材2が行き渡らず亀裂3の一部が塞がれないまま基礎地盤1に残り、かつ残った亀裂3における透水性の度合いが許容できない程度に高い場合に生じ得る。
【0017】
グラウト材2は、亀裂3が隣り合う一次ボーリング穴10の間で連続している場合には、亀裂3の全体に行き渡り難い。そのため、亀裂3が隣り合う一次ボーリング穴10の間で連続しておりかつ透水性亀裂である場合に、隣り合う一次ボーリング穴10の間で遮水性が不足し得る。
【0018】
例えば、
図1(a)に例示する基礎地盤1では、亀裂3aが一次ボーリング穴11,12の間で連続し、亀裂3dが一次ボーリング穴13,14の間で連続している。そのため、亀裂3a,3dが透水性の高い亀裂であるとすると、一次ボーリング穴11,12の間、及び一次ボーリング穴13,14の間では遮水性が不足し得る。一次ボーリング穴12,13の間で連続する亀裂3はないため、一次ボーリング穴12,13の間では遮水性は足りることになる。
【0019】
このように、一次ボーリング穴10へのグラウト材2の注入だけでは遮水性が不足するか否かは、亀裂3の連続性と、亀裂3の透水性と、に依存する。亀裂3の連続性は、一次ボーリング穴10の内壁における亀裂3に関する情報から評価可能である。また、亀裂3の透水性が高いほど、亀裂3を横切る一次ボーリング穴10の透水性は高くなる。
【0020】
そこで、本実施形態では、隣り合う一次ボーリング穴10の内壁における亀裂3に関する情報を取得し(亀裂情報取得工程)、亀裂3に関する情報に基づいて隣り合う一次ボーリング穴10の間での亀裂3の連続性を評価し(評価工程)、隣り合う一次ボーリング穴10における透水性に関する情報を取得し(透水性情報取得工程)、亀裂3の連続性と透水性に関する情報とに基づいて隣り合う一次ボーリング穴10の間へのグラウト材2の注入要否を判断し(判断工程)、グラウト材2の注入が必要であると判断した場合に隣り合う一次ボーリング穴10の間に二次ボーリング穴20を形成し二次ボーリング穴20にグラウト材2を注入する(注入工程)。そのため、亀裂3が隣り合う一次ボーリング穴10の間に残りかつ透水性亀裂である場合に、隣り合う一次ボーリング穴10の間にグラウト材2を追加で注入することになる。したがって、基礎地盤1にグラウト材2を適切に注入することができる。
【0021】
図2は、グラウト材2の注入支援装置100の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、注入支援装置100は、亀裂3に関する情報及び基礎地盤1の透水性に関する情報を解析するコントローラ30と、コントローラ30による解析の結果を表示する表示部40と、を備えている。コントローラ30には、亀裂3を検出する亀裂検出装置50と、一次ボーリング穴10における透水性を測定する透水性測定装置60と、が接続される。
【0022】
亀裂情報取得工程及び透水性情報取得工程は、亀裂検出装置50及び透水性測定装置60を用いてそれぞれ行われる。評価工程及び判断工程は、注入支援装置100を用いて行われる。注入工程は、注入支援装置100を用いて行われた判断工程の結果を作業者が確認し、作業者が不図示の削孔機及び注入機を操作することにより行われる。
【0023】
コントローラ30は、制御プログラム等を実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行される制御プログラムを記憶するROM(Read-Only Memory)と、CPUの演算結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)と、を備えるマイクロコンピュータである。コントローラ30は、1つのマイクロコンピュータによって構成されていてもよいし、複数のマイクロコンピュータによって構成されていてもよい。
【0024】
コントローラ30は、機能的には、一次ボーリング穴10の内壁における亀裂3に関する情報を取得する亀裂情報取得部31と、亀裂3に関する情報に基づいて、隣り合う一次ボーリング穴10の間での亀裂3の連続性を評価する評価部32と、一次ボーリング穴10における透水性に関する情報を取得する透水性情報取得部33と、亀裂3の連続性及び透水性に関する情報に基づいて、隣り合う一次ボーリング穴10の間へのグラウト材2の注入要否を判断する判断部34と、を備えている。亀裂情報取得部31、評価部32、透水性情報取得部33及び判断部34は、コントローラ30の機能を仮想的なユニットとしたものである。
【0025】
以下では、亀裂3に関する情報が亀裂3の走向、傾斜及び深度であり、透水性に関する情報がルジオン値である場合について説明する。なお、亀裂3の走向は、亀裂3と仮想水平面との交差によりできる交線が延びる方向であり、亀裂3の傾斜は、仮想水平面に対する亀裂3の傾きの度合いである。また、一次ボーリング穴10における亀裂3の深度は、一次ボーリング穴10の中心軸線と亀裂3との交点から地表までの距離である。ルジオン値は、一次ボーリング穴10に水を注入したときの注入圧力と注入流量とに基づいて算定される値であり、ルジオン値が高いほど一次ボーリング穴10の透水性が高いことを意味する。
【0026】
まず、亀裂情報取得部31による亀裂3の走向、傾斜及び深度の取得について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図3(a)は、一次ボーリング穴10の一例を示す斜視図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示す一次ボーリング穴10における内壁を展開したときの概略図である。
図3(a)及び(b)において、E、W、S及びNは、方角(東、西、南及び北)である。
【0027】
図3(a)に示すように、一次ボーリング穴10の内壁では、亀裂3がある部分と亀裂3がない部分とで色が異なり、一次ボーリング穴10の内壁には亀裂3によって略楕円形状が描かれる。
図3(b)に示すように、一次ボーリング穴10における内壁の展開図では、亀裂3は、正弦曲線に似た形状を描く。展開図における亀裂3の形状(正弦曲線の振幅及び位相)及び位置は、亀裂3の走向、傾斜及び深度に基づいて決まる。
【0028】
本実施形態では、
図3(c)に示す亀裂検出装置50を用いて一次ボーリング穴10の内壁の展開画像を生成し正弦曲線を抽出することにより、一次ボーリング穴10の内壁における亀裂3の走向、傾斜及び深度を検出する。亀裂検出装置50による亀裂3の走向、傾斜及び深度の検出は、一次ボーリング穴10にグラウト材2を注入する前に行われる。
【0029】
図3(c)は、亀裂検出装置50の概略図である。
図3(c)では、亀裂3の図示を省略している。
【0030】
図3(c)に示すように、亀裂検出装置50は、一次ボーリング穴10の内壁を周方向に360度撮影し展開画像を生成するカメラ51と、カメラ51を吊り上げるウインチ52と、カメラ51により生成された展開画像を解析するマイクロコンピュータ53と、を備えている。ウインチ52を用いてカメラ51を一次ボーリング穴10内で上下に移動させることにより、一次ボーリング穴10の全深度に渡る内壁の展開画像を得ることができる。マイクロコンピュータ53は、カメラ51により生成された展開画像に画像処理を施して亀裂3を正弦曲線として抽出し、正弦曲線の振幅、位相及び位置を亀裂3の走行、傾斜及び深度として導出する。亀裂検出装置50による亀裂3の走向、傾斜及び深度の検出は、複数の一次ボーリング穴10に対して行われる。
【0031】
図2に示すように、亀裂検出装置50は、検出した亀裂3の走向、傾斜及び深度をコントローラ30に入力する。亀裂検出装置50を用いて検出された亀裂3の走向、傾斜及び深度を作業者がコントローラ30に入力してもよい。亀裂情報取得部31は、入力された亀裂3の走向、傾斜及び深度を記憶する。以上により、亀裂情報取得部31による亀裂3の走向、傾斜及び深度の取得が完了する。
【0032】
次に、評価部32による亀裂3の連続性の評価について、
図2及び
図4を参照して説明する。評価部32は、亀裂情報取得部31により取得された亀裂3の走向、傾斜及び深度に基づいて、隣り合う一次ボーリング穴10の間での亀裂3の連続性を評価する。
【0033】
図4(a)は、
図1(a)に例示する一次ボーリング穴11,12の間での亀裂3の連続性を亀裂3の走向、傾斜及び深度に基づいて評価する方法を説明するための模式図である。
図4(a)では、
図1(a)に例示する亀裂3b,3cの図示を省略している。ここでは、一次ボーリング穴11,12の内壁における亀裂3aをそれぞれ第1及び第2亀裂3a1,3a2とする。また、亀裂情報取得部31(
図2参照)は、第1及び第2亀裂3a1,3a2の深度をそれぞれ第1及び第2深度D1,D2として取得しているとする。
【0034】
亀裂3aは、基礎地盤1内で略平面的に延びていると考えられる。そのため、第1亀裂3a1と第2亀裂3a2とが連続する場合には、第1亀裂3a1の走向及び傾斜と第2亀裂3a2の走向及び傾斜とは略一致することになる。また、第1亀裂3a1と第2亀裂3a2とが連続する場合には、
図4(a)に二点鎖線で示すように第1亀裂3a1を仮想的に延長したときに一次ボーリング穴12の内壁に現れる仮想亀裂3a1’の深度D1’は、第2亀裂3a2の第2深度D2と略一致することになる。評価部32は、第1亀裂3a1の走向、傾斜及び深度D1’と、第2亀裂3a2の走向、傾斜及び深度D2と、を比較することにより、一次ボーリング穴11,12の間での第1及び第2亀裂3a1,3a2の連続性を評価する。
【0035】
図4(b)は、評価部32における処理を示すフローチャートである。
図4(b)に示すように、ステップS401では、第1亀裂3a1の走向と第2亀裂3a2の走向との差が予め定められた第1閾値以下であるか否かを判断する。第1亀裂3a1と第2亀裂3a2との走向差が第1閾値以下である場合には、ステップS402に進み、第1亀裂3a1と第2亀裂3a2との走向差が第1閾値を超える場合には、ステップS405に進む。
【0036】
ステップS402では、第1亀裂3a1の傾斜と第2亀裂3a2の傾斜との差が予め定められた第2閾値以下であるか否かを判断する。第1亀裂3a1と第2亀裂3a2との傾斜差が第2閾値以下である場合には、ステップS403に進み、第1亀裂3a1と第2亀裂3a2との傾斜差が第2閾値を超える場合には、ステップS405に進む。
【0037】
ステップS403では、第1亀裂3a1を仮想的に延長したときに一次ボーリング穴12の内壁に現れる仮想亀裂3a1’の深度D1’と、第2亀裂3a2の第2深度D2と、の差が予め定められた第3閾値以下であるか否かを判断する。仮想亀裂3a1’と第2亀裂3a2との深度差が第3閾値以下である場合には、ステップS404に進み、仮想亀裂3a1’と第2亀裂3a2との深度差が第3閾値を超える場合には、ステップS405に進む。
【0038】
ステップS404に進むのは、第1亀裂3a1と第2亀裂3a2との間で走向、傾斜及び深度D1’,D2が全て略一致する場合である。そのため、ステップS404では、第1亀裂3a1と第2亀裂3a2とが連続すると評価する。
【0039】
ステップS405に進むのは、第1亀裂3a1と第2亀裂3a2との間で走向、傾斜及び深度D1’,D2の少なくとも1つが略一致しない場合である。そのため、ステップS405では、第1亀裂3a1と第2亀裂3a2とは連続しないと評価する。
【0040】
以上により、評価部32における処理を終了する。
【0041】
次に、透水性情報取得部33によるルジオン値の取得について、
図2及び
図5を参照して説明する。透水性情報取得部33が取得するルジオン値は、
図5に示される透水性測定装置60を用いて測定される。
図5は、透水性測定装置60の概略図である。
図5では、亀裂3の図示を省略している。透水性測定装置60によるルジオン値の測定は、一次ボーリング穴10にグラウト材2を注入する前に行われる。
【0042】
図5に示すように、透水性測定装置60は、一次ボーリング穴10に挿入可能に形成された注水管61と、注水管61の外周に注水管61の軸方向に間隔を空けて設けられた上側パッカー62及び下側パッカー63と、上側パッカー62及び下側パッカー63を拡縮させる拡縮部64と、貯水槽66から注水管61に水を供給するポンプ65と、注水圧力と注水流量とに基づいてルジオン値を算定するマイクロコンピュータ67と、を備えている。
【0043】
注水管61を一次ボーリング穴10に挿入した状態で上側パッカー62と下側パッカー63とを拡張させると、上側パッカー62と下側パッカー63とによって一次ボーリング穴10に試験区間Lが画定される。試験区間Lは、上側パッカー62と下側パッカー63との間隔に相当する。
【0044】
注水管61の端部は閉塞されており、注水管61の外周には試験区間Lに水を注入するための孔61aが形成されている。また、注水管61には、試験区間Lにおける水圧を測定する圧力計68と、注水管61から試験区間Lに注入される水の流量を測定する流量計69と、が設けられている。
【0045】
ポンプ65を駆動して注水管61から試験区間Lに水を注入すると、試験区間Lに注水された水は、一次ボーリング穴10の内壁から基礎地盤1に浸透する。試験区間Lにおける水圧が一定になるように試験区間Lに水を注入すると、試験区間Lでの透水性が高いほど、基礎地盤1に浸透する水の流量が多くなり、注水管61から試験区間Lに注入される流量は多くなる。マイクロコンピュータ67は、圧力計68により測定される水圧と、流量計69により測定される流量と、に基づいて、ルジオン値を算定する。
【0046】
注水管61を一次ボーリング穴10内で上下に移動させて試験区間Lの深度を変更することにより、複数の深度でのルジオン値を測定することができる。透水性測定装置60による複数の深度でのルジオン値の測定は、複数の一次ボーリング穴10に対して行われる。
【0047】
図2に示すように、透水性測定装置60は、測定したルジオン値をコントローラ30に入力する。透水性測定装置60を用いて測定されたルジオン値を作業者がコントローラ30に入力してもよい。透水性情報取得部33は、入力されたルジオン値を記憶する。以上により、透水性情報取得部33によるルジオン値の取得が完了する。
【0048】
次に、判断部34によるグラウト材2の追加注入要否判断について、
図6を参照して説明する。ここでは、
図4(a)に例示される一次ボーリング穴11と一次ボーリング穴12との間へグラウト材2の追加注入が必要であるか否かを判断する場合について説明する。
図6は、判断部34における処理を示すフローチャートである。
【0049】
グラウト材2の追加注入は、亀裂3が一次ボーリング穴11,12の間で連続しており亀裂3の全体にグラウト材2が行き渡り難く、かつ亀裂3が透水性亀裂である場合に必要となる。そこで、判断部34は、評価部32により評価された亀裂3の連続性と、透水性情報取得部33により取得されたルジオン値と、に基づいて、グラウト材2の追加注入要否を判断する。ここでは、透水性情報取得部33は、第1深度D1での一次ボーリング穴11におけるルジオン値と、第2深度D2での一次ボーリング穴12におけるルジオン値と、を取得しているとする。
【0050】
図6に示すように、ステップS601では、第1亀裂3a1と第2亀裂3a2とが連続するとの評価であるか否かを判断する。第1及び第2亀裂3a1,3a2が連続するとの評価の場合には、ステップS602に進み、第1及び第2亀裂3a1,3a2が連続しないとの評価の場合には、ステップS604に進む。
【0051】
ステップS602では、第1深度D1での一次ボーリング穴11のルジオン値と、第2深度D2での一次ボーリング穴12のルジオン値と、の少なくとも一方が予め定められた第4閾値以上であるか否かを判断する。第4閾値は、透水性の度合いが許容できるか否かの境となるルジオン値である。ルジオン値の少なくとも一方が第4閾値以上である場合には、ステップS603に進み、ルジオン値の両方が第4閾値未満である場合には、ステップS604に進む。
【0052】
ステップS603に進むのは、第1及び第2亀裂3a1,3a2が連続しかつ透水性亀裂である場合である。そのため、ステップS603では、一次ボーリング穴11,12の間へのグラウト材2の追加注入が必要であると判断する。
【0053】
ステップS604に進むのは、第1及び第2亀裂3a1,3a2が連続しない場合、又は第1及び第2亀裂3a1,3a2が透水性亀裂でない場合である。そのため、ステップS604では、一次ボーリング穴11,12の間へのグラウト材2の追加注入が不要であると判断する。
【0054】
以上により、判断部34における処理を終了する。
【0055】
図2に示すように、判断部34における処理の結果は、表示部40に出力され表示される。
図7は、表示部40に表示される画像の一例であり、
図1に例示される基礎地盤1に対して注入支援装置100を用いてグラウト材2の追加注入の要否を判断した結果を示す。
【0056】
図7に示すように、表示部40は、一次ボーリング穴10を実線で表示し、二次ボーリング穴20をグラウト材2の追加注入が必要な場所(
図7に示す例では、一次ボーリング穴11,12の間)に破線で表示する。そのため、作業者は、グラウト材2の追加注入が必要な場所を容易に視認することができる。したがって、注入工程において、グラウト材2の追加注入が必要な場所に二次ボーリング穴20(
図1参照)を形成してグラウト材2を追加で注入することができ、基礎地盤1にグラウト材2を適切に注入することができる。
【0057】
また、表示部40は、評価部32により評価された亀裂3の連続性と、透水性情報取得部33により取得されたルジオン値と、を表示する。具体的には、亀裂3a,3dの連続性を表示するために、一次ボーリング穴11,12を示す実線と交差する円板4aと、一次ボーリング穴13,14を示す実線と交差する円板4dと、を表示する。亀裂3b,3cの連続性を表示するために、一次ボーリング穴11を示す実線とのみ交差する円板4bと、一次ボーリング穴12を示す実線とのみ交差する円板4cと、を表示する。また、一次ボーリング穴10におけるルジオン値を表示するために、一次ボーリング穴10を示す実線上にルジオン値に対応する色で着色されかつ大きさを有する円5を表示する。したがって、作業者は、表示部40を確認することにより、グラウト材2の追加注入が必要な場所に加えて、亀裂3の連続性とルジオン値とを一目で把握することができる。
【0058】
このように、本実施形態では、隣り合う一次ボーリング穴10の間での亀裂3の連続性と、一次ボーリング穴10におけるルジオン値と、に基づいて、隣り合う一次ボーリング穴10の間へのグラウト材2の注入要否を判断する。そのため、作業者は、亀裂3が隣り合う一次ボーリング穴10の間に残りかつ透水性亀裂である場合に、隣り合う一次ボーリング穴10の間に二次ボーリング穴20を形成し二次ボーリング穴20にグラウト材2を追加で注入することになる。したがって、基礎地盤1にグラウト材2を適切に注入することができる。
【0059】
図1に例示される基礎地盤1では、亀裂3aの下方には、一次ボーリング穴11,12の間で連続する透水性亀裂は存在しない。そのため、グラウト材2の追加注入では、二次ボーリング穴20を亀裂3aまで形成すれば十分である。
【0060】
本実施形態では、亀裂情報取得部31によって取得された亀裂3aの深度に基づいて、一次ボーリング穴11,12の間での亀裂3aの深度を推定し(推定工程)、注入工程では、推定工程にて推定された深度まで二次ボーリング穴20を形成する。そのため、二次ボーリング穴20は、亀裂3aに到達するのに必要な深さで形成される。したがって、基礎地盤1にグラウト材2をより適切に注入することができる。
【0061】
推定工程は、
図2に示す注入支援装置100を用いて行われる。
図2に示すように、注入支援装置100のコントローラ30は、判断部34がグラウト材2の注入が必要であると判断した場合に、亀裂情報取得部31によって取得された第1及び第2深度D1,D2(
図4参照)に基づいて、一次ボーリング穴11,12の間での亀裂3aの深度を推定する推定部35を更に備えている。
【0062】
推定部35は、亀裂3aが一次ボーリング穴11,12の間で平面的に延びていると仮定し、比例配分により一次ボーリング穴11,12の間での亀裂3aの深度を推定する。具体的には、一次ボーリング穴11,12の間の中央での亀裂3aの深度Dc(
図4(a)参照)を、推定するときには、次の式(1)を用いる。
Dc=(D2+D1)/2 ・・・・・・・(1)
【0063】
推定部35による処理の結果は、表示部40に出力される。
図7に示すように、表示部40は、二次ボーリング穴20を示す破線を、推定部35により推定された深度Dcに対応する長さで表示する。そのため、作業者は、二次ボーリング穴20を亀裂3aに到達させるのに必要な長さを容易に視認することができる。したがって、基礎地盤1にグラウト材2をより適切に注入することができる。
【0064】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0065】
本実施形態では、隣り合う一次ボーリング穴10の間での亀裂3の連続性と一次ボーリング穴10におけるルジオン値とに基づいて隣り合う一次ボーリング穴10の間へのグラウト材2の注入要否を判断する。そのため、亀裂3が隣り合う一次ボーリング穴10の間に残りかつ透水性亀裂である場合に、隣り合う一次ボーリング穴10の間にグラウト材2を追加で注入することになる。したがって、基礎地盤1にグラウト材2を適切に注入することができる。
【0066】
また、本実施形態では、一次ボーリング穴11,12間にグラウト材2の注入が必要であると判断した場合に、一次ボーリング穴11,12における第1及び第2深度D1,D2に基づいて、一次ボーリング穴11,12の間での亀裂3の深度Dcを推定し、推定された深度Dcまで二次ボーリング穴20を形成する。そのため、二次ボーリング穴20は、亀裂3に到達するのに必要な深さで形成される。したがって、基礎地盤1にグラウト材2をより適切に注入することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0068】
上記実施形態では、透水性情報取得部33が第1及び第2深度D1,D2でのルジオン値を取得し、判断部34が第1及び第2深度D1,D2でのルジオン値を用いているが、本発明はこの形態に限られない。例えば、ルジオン値の測定において試験区間Lを一次ボーリング穴10の全深度に渡って設定し、一次ボーリング穴10における全深度でのルジオン値を測定し、判断部34が全深度でのルジオン値を用いてもよい。
【0069】
上記実施形態のように判断部34が第1及び第2深度D1,D2でのルジオン値を用いてグラウト材2の追加注入の要否を判断する場合には、亀裂3が透水性亀裂であるか否かをより高い精度で判断することができ、グラウト材2の追加注入の要否をより正確に判断することができる。したがって、基礎地盤1にグラウト材2をより適切に注入することができる。
【0070】
上記実施形態では、評価部32が亀裂3の走向、傾斜及び深度を用いて亀裂3の連続性を評価しているが、本発明はこの形態に限られない。評価部32は、例えば、亀裂3の隙間の大きさ、亀裂3の色等に基づいて亀裂3の連続性を評価してもよい。
【0071】
上記実施形態では、一次ボーリング穴10にグラウト材2を注入しているが、一次ボーリング穴10は、グラウト材2が注入されない調査穴であってもよい。
【0072】
上記実施形態では、表示部40は、判断部34及び推定部35による処理の結果を表示するが、
図8に示すように、表示部40は、判断部34及び推定部35による処理の結果を表示しなくてもよい。本実施形態の変形例に係るグラウト材2の注入支援装置101について、
図8を参照して説明する。
【0073】
図8(a)は、注入支援装置101の構成を示すブロック図であり、
図8(b)は、表示部40に表示される画像の一例であり、
図1に例示される基礎地盤1に対して注入支援装置101を用いた結果を示す。
図8(a)に示すように、コントローラ130が
図2に示す判断部34及び推定部35を備えていない点において、注入支援装置101は注入支援装置100と相違する。また、
図8(b)に示すように、表示部40が
図7において破線で表示される二次ボーリング穴20を表示しない点において、注入支援装置101は注入支援装置100と相違する。
【0074】
注入支援装置101では、作業者が表示部40に表示される亀裂3の連続性とルジオン値と視認して、一次ボーリング穴10の間へのグラウト材2の注入要否を判断し、グラウト材2の注入が必要であると判断した場合に、一次ボーリング穴10の間での亀裂3の深度を推定すると共に、一次ボーリング穴10の間に二次ボーリング穴20を推定した深度まで形成し二次ボーリング穴20にグラウト材2を注入する。つまり、注入支援装置101を用いる場合には、注入支援装置100における判断部34及び推定部35による判断を作業者が行うことになる。
【0075】
注入支援装置101においても、作業者が亀裂3の連続性と透水性に関する情報とを同時に視認することができるため、一次ボーリング穴10の間へのグラウト材2の注入要否を適切に判断することができる。したがって、基礎地盤1にグラウト材2を適切に注入することができる。
【符号の説明】
【0076】
100,101・・・注入支援装置
1・・・基礎地盤
2・・・グラウト材
3,3a,3b,3c,3d・・・亀裂
3a1・・・第1亀裂
3a2・・・第2亀裂
10,11,12,13,14・・・一次ボーリング穴
31・・・亀裂情報取得部
32・・・評価部
33・・・透水性情報取得部
34・・・判断部
40・・・表示部
D1・・・第1深度
D2・・・第2深度
Dc・・・深度