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特許7500405電動アクチュエータ及びこれを備えた操舵装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ及びこれを備えた操舵装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20240610BHJP
   B64C 13/50 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
B64C13/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020198238
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086303
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】畠山 大樹
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-137281(JP,A)
【文献】特開2004-216868(JP,A)
【文献】特開2019-176613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
B64C 13/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加によって変形する高分子材料を有し、該高分子材料の変形によって軸線方向に伸縮する複数のアクチュエータ部と、
舵面側に接続される舵面側端部と、各前記アクチュエータ部に接続されたアクチュエータ側端部と、を有し、各前記アクチュエータ部の伸縮によって前記軸線方向に移動されるロッド部と、
を備え、
各前記アクチュエータ部は、前記軸線方向に沿って前記ロッド部の前記アクチュエータ側端部を挟んで対向して配置され
前記アクチュエータ部は、前記高分子材料に対して前記軸線方向に沿った所定の剛性を付与する剛性付与部材を有している電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記剛性付与部材は、金属メッシュとされ、
前記金属メッシュは、前記高分子材料に組み込まれている請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記剛性付与部材は、前記軸線方向に沿って複数の屈曲部が形成された金属箔とされ、
前記金属箔は、前記高分子材料に組み込まれている請求項1又はに記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記金属箔は、前記高分子材料に電圧を印加する電極を兼ねている請求項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記剛性付与部材は、前記軸線方向に延在するスプリングとされ、
前記スプリングは、前記高分子材料に組み込まれている請求項1から4のいずれかに記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記アクチュエータ部及び前記ロッド部の前記アクチュエータ側端部を収容する収容部を備え、
前記アクチュエータ部は、前記軸線方向の一端が前記収容部に対して接続され、前記軸線方向の他端が前記ロッド部の前記アクチュエータ側端部に接続されている請求項1からのいずれかに記載の電動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の電動アクチュエータと、
前記ロッド部に接続され、前記電動アクチュエータによって駆動される前記舵面と、
を備えている操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動アクチュエータ及びこれを備えた操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の舵面の位置や角度を変化させるアクチュエータには、モータの回転運動をボールスクリュー機構によって直線運動に変換してロッドを移動させる形式の電動アクチュエータがある。この形式の電動アクチュエータが、近年、見られるようになってきた。
しかし、ボールスクリュー機構においては、回転するスクリュー上でボールナットが固着する、いわゆる機械的ジャミングが発生する可能性がある。機械的ジャミングが発生した場合、舵面が意図しない位置で固定され航空機の飛行に支障を来たす可能性がある。
したがって、意図しない位置で固定された舵面を機械的ジャミングから解放するために、駆動側と舵面側とを切り離すクラッチ等を備えることがある。しかしながら、この方法ではアクチュエータの重量が増加してしまい有効な解決方法とは言えない。
【0003】
また、これまでの航空機に採用されてきた一般的なアクチュエータの例として、例えば特許文献1に開示されているように、伸長用の作動油シリンダ室と収縮用の作動油シリンダ室とを備えている油圧アクチュエータがある。この油圧アクチュエータは、何らかの故障が原因で油圧の制御が不能になった場合において舵面が意図しない位置で固定されないように、伸長用の作動油シリンダ室と収縮用の作動油シリンダ室とを油路によって連通させることで舵面に接続されたロッドの拘束を解除することとしている。
【0004】
しかしながら、ロッドの拘束を解除して完全にフリーな状態にすると、舵面に作用する空力負荷や慣性負荷によって舵面がはためく、いわゆるフラッタ現象が生じてしまう可能性がある。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されている構成では、2つの作動油シリンダ室を連通する油路にオリフィスを設けて流路抵抗を増大させ、オイルダンパのように作用させている。これによって、ロッドに所定の拘束力を付与してフラッタ現象の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-40199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、航空機の電動化に伴って、舵面用のアクチュエータを電動化する試みがなされている。電動化されたアクチュエータの一例として、モータの回転運動をボールスクリュー機構によって直線運動に変換してロッドを移動させる形式のもがある。
【0008】
しかしながら、ボールスクリュー機構においては、上述したように、機械的ジャミングが発生や装置の重量の増加が懸念される。そこで、ボールスクリュー機構を採用した電動アクチュエータに代替可能な電動アクチュエータであって、油路にオリフィスを設けた油圧アクチュエータのようにフラッタ現象を抑制できる電動アクチュエータが模索されている。
【0009】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、舵面が意図しない位置で固定されず、かつ、フラッタ現象の発生を抑制できる電動アクチュエータ及びこれを備えた操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の電動アクチュエータ及びこれを備えた操舵装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係る電動アクチュエータは、電圧の印加によって変形する高分子材料を有し、該高分子材料の変形によって軸線方向に伸縮するアクチュエータ部と、舵面側に接続される舵面側端部と、前記アクチュエータ部に接続されたアクチュエータ側端部と、を有し、前記アクチュエータ部の伸縮によって前記軸線方向に移動されるロッド部と、を備え、前記アクチュエータ部は、前記高分子材料に対して前記軸線方向に沿った所定の剛性を付与する剛性付与部材を有している。
【0011】
また、本開示の一態様に係る電動アクチュエータは、電圧の印加によって変形する高分子材料を有し、該高分子材料の変形によって軸線方向に伸縮する複数のアクチュエータ部と、舵面側に接続される舵面側端部と、各前記アクチュエータ部に接続されたアクチュエータ側端部と、を有し、各前記アクチュエータ部の伸縮によって前記軸線方向に移動されるロッド部と、を備え、各前記アクチュエータ部は、前記軸線方向に沿って前記ロッド部の前記アクチュエータ側端部を挟んで対向して配置されている。
【0012】
また、本開示の一態様に係る操舵装置は、上記の電動アクチュエータと、前記ロッド部に接続され、前記電動アクチュエータによって駆動される前記舵面と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、舵面が意図しない位置で固定されず、かつフラッタ現象の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第1実施形態に係る舵面装置及び電動アクチュエータの側面図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る舵面装置及び電動アクチュエータの側面図である。
図3】実施例1に係るアクチュエータ部が収縮した状態を示した構成図である。
図4】電圧を印加した際の高分子材料の変形を示した図である。
図5】実施例1に係るアクチュエータ部が伸長した状態を示した構成図である。
図6】実施例2に係るアクチュエータ部が収縮した状態を示した構成図である。
図7】実施例2に係るアクチュエータ部が伸長した状態を示した構成図である。
図8】実施例3に係るアクチュエータ部が収縮した状態を示した構成図である。
図9】電圧を印加した際の高分子材料の変形を示した図である。
図10】実施例3に係るアクチュエータ部が伸長した状態を示した構成図である。
図11】第1実施形態に係る剛性付与部材が組み込まれた電動アクチュエータを示した図である。
図12】第1実施形態に係る剛性付与部材が組み込まれた電動アクチュエータを示した図である。
図13】舵面に作用する空力負荷及び慣性負荷を示した図である。
図14】第2実施形態に係る剛性付与部材を示した図である。
図15】第2実施形態に係る剛性付与部材が組み込まれた電動アクチュエータを示した図である。
図16】第2実施形態に係る剛性付与部材が組み込まれた電動アクチュエータを示した図である。
図17】第2実施形態に係る他の剛性付与部材を示した図である。
図18】第2実施形態に係る剛性付与部材と他の剛性付与部材が組み込まれた電動アクチュエータを示した図である。
図19】第3実施形態に係る剛性付与部材が組み込まれた電動アクチュエータを示した図である。
図20】第3実施形態に係る剛性付与部材が組み込まれた電動アクチュエータを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態に係る電動アクチュエータ及びこれを備えた操舵装置について図を用いて説明する。
【0016】
図1に示すように、電動アクチュエータ1は、航空機の舵面61を駆動するための装置であり、舵面61とともに操舵装置60を構成している。舵面61としては、例えば、航空機のエルロン、エレベータ、ラダー等が挙げられるが、これらに限定されない。
なお、図1において、アクチュエータ部10の一部は縦断面図で示されている。
【0017】
電動アクチュエータ1は、アクチュエータ部10と、ロッド部30と、収容部40と、電力供給部50と、を備えている。
【0018】
収容部40は軸線方向に沿って延びる筒状のケーシングとされ、内部にアクチュエータ部10及びロッド部30の一部を収容している。
【0019】
ロッド部30は、フランジ(アクチュエータ側端部)31とロッドエンド(舵面側端部)32と有する、軸線方向に延びた棒状部材とされている。ロッド部30は、アクチュエータ部10によって軸線方向に移動可能とされている。
【0020】
フランジ31は、軸線方向に直交する平面が形成された板状部分とされている。フランジ31は収容部40の内部に収容されており、収容部40の内部空間を2つの空間に分割している。
【0021】
ロッドエンド32は、舵面61の接続支点63に対して回動可能に接続された部分である。ロッドエンド32は、収容部40から突出しており、ロッド部30の移動に伴って突出量が変化する。これによって、舵面61が回動支点62を中心に回動するので舵面61の角度を変化させることができる。
【0022】
アクチュエータ部10は、収容部40に収容されるとともに、フランジ31及びフランジ31に面対向する収容部40の内壁に接続されている。アクチュエータ部10は、電力供給部50から印加された電圧によって変形する高分子材料11を有しており、高分子材料11の変形を利用してアクチュエータ部10自体が軸線方向に伸縮するように構成されている。これによって、アクチュエータ部10と接続されたフランジ31が軸線方向に移動することになる。すなわち、ロッド部30が軸線方向に移動することになる。アクチュエータ部10の詳細な構成については後述する。
【0023】
なお、高分子材料11は、温度変化によって性能が変化する可能性がある。例えば、航空機が航行する上空は外気温が低いので、高分子材料11の伸縮性が低下する可能性がある。このため、高分子材料11を加熱するヒータ装置を適切な位置(例えば、収容部40の外部)に設けることが好ましい。
【0024】
電圧の制御やロッド部30の位置の把握は、図示しない制御部によって実行される。
【0025】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0026】
アクチュエータ部10は、図1に示すように、フランジ31を挟んで対向するように、すなわち、フランジ31によって分割された収容部40の各空間に1つずつ設けてもよいし、図2に示すように、フランジ31によって分割された収容部40の一方の空間にのみ設けてもよい。
【0027】
以下、アクチュエータ部10の詳細な構成について説明する。
[実施例1]
図3に示すように、アクチュエータ部10は、複数の高分子材料11と複数の電極12とを有している。
【0028】
高分子材料11は、例えば、導電性高分子材料や誘電エラストマーとされ、無印加時において所定の弾性や粘性をもつ素材である。
高分材料は、例えば、炭素等の導電性素材を含有させたポリアセチレン、ポリ塩化ビニル等の高分子を含む材料とされる。
【0029】
高分子材料11は軸線方向に延在しており、一端がフランジ31に接続され、他端がフランジ31に面対向する収容部40の内壁に接続されている。
本実施例の場合、高分子材料11は複数本設けられ、軸線方向に直交する方向(以下、「軸線直交方向」という。)に並列している。
【0030】
軸線直交方向における高分子材料11の両側面には電極12が設けられており、電極12を介して電力供給部50(図1及び図2参照)から高分子材料11に電圧が印加されるように構成されている。
【0031】
図4に示すように、電圧が印加された高分子材料11は、所定の方向(例えば、図4に示す第1方向)に伸長するとともに第1方向に直交する第2方向に収縮する。電圧の印加を解除すると、元の形状に戻る。
【0032】
本実施例の場合、図3及び図5に示すように、アクチュエータ部10の軸線方向と高分子材料11の第1方向が一致しており、高分子材料11の第1方向における伸縮(変形)を利用して、アクチュエータ部10自体が軸線方向に伸縮するように構成されている。これによって、アクチュエータ部10と接続されたフランジ31(ロッド部30)が軸線方向に移動することになる。
【0033】
なお、電圧の印加を解除した無印加時において、高分子材料11は、ロッド部30を軸線方向に固定・拘束する程の力を発生させない。
【0034】
[実施例2]
図6及び図7に示すように、高分子材料11は、アクチュエータ部10の軸線方向と高分子材料11の第2方向が一致するように積層されている。そして、積層方向(軸線方向に一致)の一端にある高分子材料11がフランジ31に接続され、他端にある高分子材料11がフランジ31に面対向する収容部40の内壁に接続されている。
【0035】
本実施例の場合、アクチュエータ部10の軸線方向と高分子材料11の第2方向が一致しており、高分子材料11の第2方向における伸縮(変形)を利用して、アクチュエータ部10自体が軸線方向に伸縮するように構成されている。
【0036】
[実施例3]
図8に示すように、高分子材料11は、アクチュエータ部10の軸線方向に積層されている(実施例2と同様の配置)。そして、積層方向(軸線方向に一致)の一端にある高分子材料11がフランジ31に接続され、他端にある高分子材料11がフランジ31に面対向する収容部40の内壁に接続されている。
【0037】
図9に示すように、電圧が印加された高分子材料11は、図9に示す第2方向において凸状(あるいは凹状)に反るように変形する。
【0038】
本実施例の場合、図8及び図10に示すように、アクチュエータ部10の軸線方向と高分子材料11の第2方向が一致しており、高分子材料11の第2方向における反り(変形)を利用して、アクチュエータ部10自体が軸線方向に伸縮するように構成されている。
【0039】
以上の通り説明したアクチュエータ部10には、剛性付与部材20が設けられてもよい。剛性付与部材20は、高分子材料11に対して軸線方向に沿った所定の剛性を与えるための部材である。
【0040】
剛性付与部材20としては、次のようなものが例示される。すなわち、図11及び図12に示すように、剛性付与部材20は、例えば線状の金属が編み込まれて立体的に構成された金属メッシュ21とされている。剛性付与部材20は、高分子材料11に組み込まれている。これによって、高分子材料11に剛性が付与される。
【0041】
金属メッシュ21の組み込みは、例えば次のように行われる。すなわち、立体形状の金属メッシュ21が入った型に高分子材料11の材料を流し込んで高分子材料11を形成することで、金属メッシュ21が組み込まれた状態の高分子材料11が完成する。
【0042】
金属メッシュ21によって付与される所定の剛性は、図13に示すように、電圧の無印加時において舵面61に作用する空力負荷及び慣性負荷を考慮して決定される。
具体的には、所定の剛性は、電圧の印加によって発生する高分子材料11の伸長力を除いた状態で、舵面61に作用する空力負荷及び慣性負荷の合力に打ち勝つ程度の拘束力が発生すように設定される。これによって、舵面61のフラッタ現象の発生を抑制できる。
【0043】
ここで、電圧の印加によって発生する高分子材料11の伸長力を除いた状態とは、何らかの故障によって高分子材料11に電圧が印加できない状態を想定している。
【0044】
なお、図1に示すように、アクチュエータ部10が複数設けられている場合、アクチュエータ部10が1つだけ設けられている形態と比較して(図2参照)、高分子材料11自体が発生させる弾性や粘性が大きいので、剛性を付与するための剛性付与部材20を敢えて省略することもできる。
【0045】
本実施形態によれば以下の効果を奏する。
電圧の印加によって変形する高分子材料11によって軸線方向に伸縮するアクチュエータ部10と、アクチュエータ部10の伸縮によって軸線方向に移動されるロッド部30と、を備えているので、電圧が印加できない状態に陥ったとしても高分子材料11は伸縮力を失うだけなのでロッド部30が所定の位置で固定されない。このため、ロッド部30に接続される舵面61が意図しない位置で固定される現象を回避できる。
【0046】
また、アクチュエータ部10は、高分子材料11に対して軸線方向に沿った所定の剛性を付与する金属メッシュ21を有しているので、電圧の無印加時であってもロッド部30に所定の拘束力を付与することができる。このため、ロッド部30に接続された舵面61がはためく、いわゆるフラッタ現象の発生を抑制できる。
【0047】
なお、アクチュエータ部10が複数設けられている場合、高分子材料11の弾性や粘性によって、電圧の無印加時であってもロッド部30に所定の拘束力を付与することができる。このため、ロッド部30に接続された舵面61がはためく、いわゆるフラッタ現象の発生を抑制できる。
【0048】
また、剛性付与部材20は、金属メッシュ21とされ、金属メッシュ21は、高分子材料11に組み込まれているので、金属メッシュ21の弾性によって高分子材料11に所定の剛性を付与することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態に係る電動アクチュエータ及びこれを備えた操舵装置について図を用いて説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態に対して剛性付与部材20の形態が異なり、その他の構成は同一である。このため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図14に示すように、剛性付与部材20は、軸線方向に沿って蛇腹状に形成された金属箔22とされている。
金属箔22は、軸線方向に沿って複数の屈曲部22Aを有しており、各屈曲部22Aが接続板22Bによって接続されて蛇腹状を形成している。
金属箔22は、屈曲部22Aが弾性変形することで軸線方向に沿って伸縮可能であり、屈曲部22Aの弾性変形によって所定の剛性が発生する。
【0051】
図15図16に示すように、金属箔22は、接続板22Bが高分子材料11に組み込まれた形態でアクチュエータ部10に設けられている。このとき、アクチュエータ部10の伸縮方向と金属箔22の伸縮方向とは一致している。
【0052】
以上の構成によれば、屈曲部22Aが発生させる弾性によって高分子材料11に所定の剛性を付与することができる。
【0053】
なお、図17に示すように、図14に示した金属箔22を軸線方向周りに90°回転させた他の金属箔23を用意して、図18に示すように、金属箔22及び金属箔23をアクチュエータ部10に設けてもよい。この場合、金属箔22及び金属箔23は、電極12に組み込まれる。すなわち、金属箔22及び金属箔23が電極12を兼ねることも可能である。
【0054】
[第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態に係る電動アクチュエータ及びこれを備えた操舵装置について図を用いて説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態に対して剛性付与部材20の形態が異なり、その他の構成は同一である。このため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図19図20に示すように、剛性付与部材20は、軸線方向に沿って延びたスプリング24とされている。
スプリング24は、高分子材料11に組み込まれた形態でアクチュエータ部10に設けられている。このとき、アクチュエータ部10の伸縮方向とスプリング24の伸縮方向とは一致している。
【0056】
以上の構成によれば、スプリング24の弾性によって高分子材料11に所定の剛性を付与することができる。
【0057】
以上の通り説明した各実施形態は、例えば、以下のように把握される。
すなわち、本開示の第1態様に係る電動アクチュエータ(1)は、電圧の印加によって変形する高分子材料(11)を有し、該高分子材料の変形によって軸線方向に伸縮するアクチュエータ部(10)と、舵面(61)側に接続される舵面側端部(32)と、前記アクチュエータ部に接続されたアクチュエータ側端部(31)と、を有し、前記アクチュエータ部の伸縮によって前記軸線方向に移動されるロッド部(30)と、を備え、前記アクチュエータ部は、前記高分子材料に対して前記軸線方向に沿った所定の剛性を付与する剛性付与部材(20)を有している。
【0058】
本態様に係る電動アクチュエータは、電圧の印加によって変形する電性高分子材料によって軸線方向に伸縮するアクチュエータ部と、アクチュエータ部の伸縮によって軸線方向に移動されるロッド部と、を備えているので、電圧が印加できない状態に陥ったとしても高分子材料は伸縮力を失うだけなのでロッド部が所定の位置で固定されない。このため、ロッド部に接続される舵面が意図しない位置で固定される現象を回避できる。
また、アクチュエータ部は、高分子材料に対して軸線方向に沿った所定の剛性を付与する剛性付与部材を有しているので、電圧の無印加時であってもロッド部に所定の拘束力を付与することができる。このため、ロッド部に接続された舵面がはためく、いわゆるフラッタ現象の発生を抑制できる。
なお、ここでいう「所定の剛性」は、無印加時において舵面に作用する空力負荷及び慣性負荷を考慮して決定される。
【0059】
また、本開示の第2態様に係る電動アクチュエータは、電圧の印加によって変形する高分子材料を有し、該高分子材料の変形によって軸線方向に伸縮する複数のアクチュエータ部と、舵面側に接続される舵面側端部と、各前記アクチュエータ部に接続されたアクチュエータ側端部と、を有し、各前記アクチュエータ部の伸縮によって前記軸線方向に移動されるロッド部と、を備え、各前記アクチュエータ部は、前記軸線方向に沿って前記ロッド部の前記アクチュエータ側端部を挟んで対向して配置されている。
【0060】
本態様に係る電動アクチュエータは、電圧の印加によって変形する電性高分子材料によって軸線方向に伸縮する複数のアクチュエータ部と、各アクチュエータ部の伸縮によって軸線方向に移動されるロッド部と、を備えているので、電圧が印加できない状態に陥ったとしても導電性高分子は伸縮力を失うだけなのでロッド部が所定の位置で固定されない。このため、ロッド部に接続される舵面が意図しない位置で固定される現象を回避できる。
また、各アクチュエータ部は、軸線方向に沿ってロッド部のアクチュエータ側端部を挟んで対向して配置されているので、複数のアクチュエータ部が有する高分子材料の弾性や粘性によって、電圧の無印加時であってもロッド部に所定の拘束力を付与することができる。このため、ロッド部に接続された舵面がはためく、いわゆるフラッタ現象の発生を抑制できる。
【0061】
また、本開示の第2態様に係る電動アクチュエータにおいて、前記アクチュエータ部は、前記高分子材料に対して前記軸線方向に沿った所定の剛性を付与する剛性付与部材を有している。
【0062】
本態様に係る電動アクチュエータにおいて、アクチュエータ部は、高分子材料に対して前記軸線方向に沿った所定の剛性を付与する剛性付与部材を有しているので、電圧の無印加時であってもロッド部に所定の拘束力を付与することができる。このため、ロッド部に接続された舵面がはためく、いわゆるフラッタ現象の発生を更に抑制できる。
【0063】
また、本開示の第1態様及び第2態様に係る電動アクチュエータにおいて、前記剛性付与部材は、金属メッシュ(21)とされ、前記金属メッシュは、前記高分子材料に組み込まれている。
【0064】
本態様に係る電動アクチュエータにおいて、剛性付与部材は、金属メッシュとされ、金属メッシュは、高分子材料に組み込まれているので、金属メッシュの弾性によって高分子材料に所定の剛性を付与することができる。
【0065】
また、本開示の第1態様及び第2態様に係る電動アクチュエータにおいて、前記剛性付与部材は、前記軸線方向に沿って複数の屈曲部(22A)が形成された金属箔(22)とされ、前記金属箔は、前記高分子材料に組み込まれている。
【0066】
本態様に係る電動アクチュエータにおいて、剛性付与部材は、軸線方向に沿って複数の屈曲部が形成された金属箔とされ、金属箔は、高分子材料に組み込まれているので、屈曲部が発生させる弾性によって高分子材料に所定の剛性を付与することができる。
【0067】
また、上記の電動アクチュエータにおいて、前記金属箔(22,23)は、前記高分子材料に電圧を印加する電極(12)を兼ねている。
【0068】
本態様に係る電動アクチュエータにおいて、金属箔は、高分子材料に電圧を印加する電極を兼ねているので、電極を別途に設ける必要がなく低コスト化を実現できる。
【0069】
また、本開示の第1態様及び第2態様に係る電動アクチュエータにおいて、前記剛性付与部材は、前記軸線方向に延在するスプリング(24)とされ、前記スプリングは、前記高分子材料に組み込まれている。
【0070】
本態様に係る電動アクチュエータにおいて、剛性付与部材は、軸線方向に延在するスプリングとされ、スプリングは、高分子材料に組み込まれているので、スプリングの弾性によって高分子材料に所定の剛性を付与することができる。
【0071】
また、本開示の第1態様及び第2態様に係る電動アクチュエータにおいて、前記アクチュエータ部及び前記ロッド部の前記アクチュエータ側端部を収容する収容部(40)を備え、前記アクチュエータ部は、前記軸線方向の一端が前記収容部に対して接続され、前記軸線方向の他端が前記ロッド部の前記アクチュエータ側端部に接続されている。
【0072】
本態様に係る電動アクチュエータは、アクチュエータ部及びアクチュエータ側端部を収容する収容部を備え、アクチュエータ部は、軸線方向の一端が収容部に対して接続され、軸線方向の他端がアクチュエータ側端部に接続されているので、アクチュエータ部は、収容部とロッド部との間において伸縮力を発生させる。このため、ロッド部を収容部に対して移動させることができる。
【0073】
また、本開示の第3態様に係る操舵装置(60)は、上記の電動アクチュエータと、前記ロッド部に接続され、前記電動アクチュエータによって駆動される前記舵面と、を備えている。
【0074】
本態様に係る操舵装置は、上記の電動アクチュエータと、ロッド部に接続され、電動アクチュエータによって駆動される舵面と、を備えているので、電動アクチュエータに何らかの故障が生じてアクチュエータ部に電圧が印加できない状態に陥ったとしても、舵面が意図しない位置で固定される現象を回避でき、かつフラッタ現象の発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0075】
1 電動アクチュエータ
10 アクチュエータ部
11 高分子材料
12 電極
20 剛性付与部材
21 金属メッシュ
22 金属箔
22A 屈曲部
22B 接続板
23 金属箔
24 スプリング
30 ロッド部
31 フランジ(アクチュエータ側端部)
32 ロッドエンド(舵面側端部)
40 収容部
50 電力供給部
60 操舵装置
61 舵面
62 回動支点
63 接続支点
図1
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