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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】トルクリミッタ
(51)【国際特許分類】
   F16D 7/02 20060101AFI20240610BHJP
   F16D 43/21 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
F16D7/02 A
F16D43/21
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020214433
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100454
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】594079143
【氏名又は名称】株式会社アイシン福井
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 徹郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 嘉寛
(72)【発明者】
【氏名】竹下 仁人
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-108024(JP,U)
【文献】米国特許第01373810(US,A)
【文献】特開平10-213152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 7/02
F16D 43/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から動力が伝達される第1回転部材と、前記第1回転部材から動力が伝達される第2回転部材との間に配置されるトルクリミッタにおいて、
前記第1および第2回転部材の一方と一体に回転すると共に、回転軸の延在方向において互い逆方向に傾斜する一対の第1環状テーパ面を有する第1伝達部材と、
前記第1および第2回転部材の他方と一体に回転すると共に、前記第1伝達部材の前記一対の第1環状テーパ面の一方に当接可能な第2環状テーパ面を有する第2伝達部材と、
前記第1および第2回転部材の前記他方と一体に回転すると共に、前記第1伝達部材の前記一対の第1環状テーパ面の他方に当接可能な第3環状テーパ面を有する第3伝達部材と、
前記一対の第1環状テーパ面の前記一方に前記第2環状テーパ面が当接すると共に、前記一対の第1環状テーパ面の前記他方に前記第3環状テーパ面が当接するように、前記第2および第3伝達部材を締め付ける締め付け機構と、
を備え
前記締め付け機構は、押圧部材と、前記押圧部材を介して前記第2および第3伝達部材を締め付けるボルトと、弾性部材とを含み、
前記押圧部材は、前記第2伝達部材に突き当てられ、
前記弾性部材は、前記押圧部材と前記第2伝達部材との突き当て部の径方向外側または径方向内側に位置するように前記第3伝達部材と前記押圧部材との間に配置されるトルクリミッタ。
【請求項2】
請求項1に記載のトルクリミッタにおいて、
前記第1および第2伝達部材は、前記一対の第1環状テーパ面の前記一方と前記第2環状テーパ面との接触部の外周または内周に沿って延びる環状空間を画成し、
前記第1および第3伝達部材は、前記一対の第1環状テーパ面の前記他方と前記第3環状テーパ面との接触部の外周または内周に沿って延びる環状空間を画成するトルクリミッタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトルクリミッタにおいて、
前記一対の環状テーパ面と、前記第2および第3環状テーパ面とは、互いに異なる硬度を有し、
前記一対の環状テーパ面と、前記第2および第3環状テーパ面とのうちの硬度が低い一方の面積は、硬度が高い他方の面積よりも小さいトルクリミッタ。
【請求項4】
請求項1からの何れか一項に記載のトルクリミッタにおいて、
前記第1伝達部材は、前記第2および第3伝達部材を少なくとも部分的に包囲する筒状体であり、
前記第2および第3伝達部材の一方は、他方により一体に回転するように支持されるトルクリミッタ。
【請求項5】
請求項1からの何れか一項に記載のトルクリミッタにおいて、
前記第2および第3伝達部材は、前記第1伝達部材を少なくとも部分的に包囲する筒状体であり、それぞれ前記第1伝達部材により径方向内側から支持されるトルクリミッタ。
【請求項6】
請求項1からの何れか一項に記載のトルクリミッタにおいて、
前記一対の第1環状テーパ面は、互いに逆方向に傾斜する逆円錐面であり、前記第2および第3環状テーパ面は、円錐面であるトルクリミッタ。
【請求項7】
請求項1からの何れか一項に記載のトルクリミッタにおいて、
前記一対の第1環状テーパ面は、互いに逆方向に傾斜する円錐面であり、前記第2および第3環状テーパ面は、逆円錐面であるトルクリミッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動源から動力が伝達される第1回転部材と、当該第1回転部材から動力が伝達される第2回転部材との間に配置されるトルクリミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンに連結される入力軸と、第1の電動機(発電機)の出力軸である電動機軸と、カウンタドライブギヤと一体化されたカウンタ出力軸と、入力軸、電動機軸およびカウンタ出力軸とを相互に動力伝達可能に連結するプラネタリギヤセットと、カウンタドライブギヤに噛合するカウンタドリブンギヤおよびデフドライブピニオンギヤを含むカウンタ軸と、デフドライブピニオンギヤに噛合するデフリングギヤを含むデファレンシャル装置と、ドライブギヤを介してカウンタドリブンギヤに連結される第2の電動機とを含む駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この駆動装置において、入力軸の先端は、予め定められた範囲内のトルクの伝達を許容するトルクリミッタを含むダンパ装置を介してエンジンのクランク軸に連結される。トルクリミッタは、乾式摩擦材を含むものであり、ダンパ装置(トルクリミッタ)は、摩擦材の摩耗により生じる摩耗粉が第1および第2の電動機やプラネタリギヤ等に飛散しないようにフロントカバーの外側に配置される。
【0003】
また、従来、エンジンに連結される入力軸と、第1および第2の電動機と、プラネタリギヤとを含む駆動装置として、第1の電動機のロータシャフトと、プラネタリギヤのサンギヤとの間に配置されたトルクリミッタを含むものも知られている(例えば、特許文献2参照)。この駆動装置のトルクリミッタは、複数のディスクプレートを有する湿式の摩擦係合装置であり、第1および第2の電動機やプラネタリギヤと共に、ケースの内部に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-191760号公報
【文献】特許第5252122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたような乾式のトルクリミッタを含む駆動装置では、摩耗粉の発生に対処するために、トルクリミッタと駆動機構とを仕切る部材(フロントカバー)が必要となり、当該駆動装置の大型化を抑制することが困難となる。一方、上記特許文献2に記載されたような湿式のトルクリミッタがオイルにより潤滑・冷却される電動機やギヤ類と共にケース内に配置される場合、フロントカバーのような仕切部材は不要となる。しかしながら、湿式のトルクリミッタのリミットトルクを充分に大きくするためには、ディスクプレートの径や枚数を増加させることが必要となり、トルクリミッタひいてはそれを含む駆動装置全体の大型化を抑制することが困難となる。
【0006】
そこで、本開示は、トルクリミッタひいてはそれを含む装置の大型化を抑制しつつ、トルクリミッタのリミットトルクを充分に確保することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のトルクリミッタは、駆動源から動力が伝達される第1回転部材と、前記第1回転部材から動力が伝達される第2回転部材との間に配置されるトルクリミッタにおいて、前記第1および第2回転部材の一方と一体に回転すると共に、回転軸の延在方向において互い逆方向に傾斜する一対の第1環状テーパ面を有する第1伝達部材と、前記第1および第2回転部材の他方と一体に回転すると共に、前記第1伝達部材の前記一対の第1環状テーパ面の一方に当接可能な第2環状テーパ面を有する第2伝達部材と、前記第1および第2回転部材の前記他方と一体に回転すると共に、前記第1伝達部材の前記一対の第1環状テーパ面の他方に当接可能な第3環状テーパ面を有する第3伝達部材と、前記一対の第1環状テーパ面の前記一方に前記第2環状テーパ面が当接すると共に、前記一対の第1環状テーパ面の前記他方に前記第3環状テーパ面が当接するように、前記第2および第3伝達部材を締め付ける締め付け機構とを含むものである。
【0008】
本開示のトルクリミッタは、駆動源から動力が伝達される第1回転部材と、第1回転部材から動力が伝達される第2回転部材との間に配置されるものであり、第1、第2および第3伝達部材と、締め付け機構とを含む。第1伝達部材は、第1および第2回転部材の一方と一体に回転すると共に、回転軸の延在方向において互い逆方向に傾斜する一対の第1環状テーパ面を有する。第2伝達部材は、第1および第2回転部材の他方と一体に回転すると共に、第1伝達部材の一対の第1環状テーパ面の一方に当接可能な第2環状テーパ面を有する。第3伝達部材は、第1および第2回転部材の他方と一体に回転すると共に、第1伝達部材の一対の第1環状テーパ面の他方に当接可能な第3環状テーパ面を有する。締め付け機構は、一対の第1環状テーパ面の一方に第2環状テーパ面が当接すると共に、一対の第1環状テーパ面の他方に第3環状テーパ面が当接するように、第2および第3伝達部材を締め付ける。これにより、第1、第2および第3伝達部材の外径の増加を抑えつつ、一対の第1環状テーパ面と第2および第3環状テーパ面との接触面積を充分に確保することが可能となる。従って、第2および第3伝達部材に対して充分な締め付け力を付与することで、一対の第1環状テーパ面と第2および第3環状テーパ面との滑りを生じさせないトルクの上限値であるリミットトルクを充分に確保することができる。この結果、本開示のトルクリミッタによれば、当該トルクリミッタひいてはそれを含む装置の大型化を抑制しつつ、リミットトルクを充分に確保することが可能となる。なお、本開示のトルクリミッタは、オイルが供給される空間内に配置されてもよく、オイルが供給される空間の外に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のトルクリミッタを含む駆動装置を搭載した車両を例示する概略構成図である。
図2】本開示のトルクリミッタを示す断面図である。
図3】本開示の他のトルクリミッタを示す断面図である。
図4】本開示の更に他のトルクリミッタを示す断面図である。
図5】本開示の他のトルクリミッタを示す断面図である。
図6】本開示の更に他のトルクリミッタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示のトルクリミッタ10を含む駆動装置1を搭載した車両Vを示す概略構成図である。車両Vは、モータジェネレータ(回転電機)MGを駆動源とする電気自動車であり、駆動装置1は、モータジェネレータMGから車両Vの左右一対の駆動輪DWに連結される一対のドライブシャフト(出力シャフト)DSに動力を出力するものである。図1に示すように、駆動装置1は、モータジェネレータMGに加えて、当該モータジェネレータMGと一対のドライブシャフトDSとの間で動力(トルク)を伝達するギヤ列2と、モータジェネレータMGおよびギヤ列2を収容するケース3とを含む。
【0012】
モータジェネレータMGは、ステータSおよびロータRを含む同期発電電動機(三相交流電動機)であり、図示しないインバータを介して蓄電装置(バッテリ、図示省略)と電力をやり取りする。モータジェネレータMGは、当該蓄電装置からの電力により駆動されて駆動トルクを発生する電動機として作動すると共に、車両Vの制動に際して回生制動トルクを出力する。
【0013】
ステータSは、環状のステータコアと、当該ステータコアに巻回される3つ(三相)のステータコイルとを含み、図示しない複数のボルトを介してケース3に対して締結(固定)される。ロータRは、環状のロータコアや、当該ロータコアの軸方向における両側に配置されるエンドプレート等を含み、中空円筒状のロータシャフトRSの一端に固定される。ロータシャフトRSは、図示しない軸受を介してケース3により一対のドライブシャフトDSと平行かつ回転自在に支持され、トルクリミッタ10を介して中空円筒状の入力シャフトISに同軸に連結される。
【0014】
ギヤ列2は、カウンタドライブギヤ21と、カウンタドリブンギヤ22と、ドライブピニオンギヤ(ファイナルドライブギヤ)23と、デフリングギヤ(ファイナルドリブンギヤ)24を有するデファレンシャルギヤ25とを含む。カウンタドライブギヤ21は、上記入力シャフトISと一体に回転する外歯ギヤである。カウンタドライブギヤ21は、入力シャフトISと一体に成形されてもよく、入力シャフトISとは別体のカウンタドライブギヤ21が当該入力シャフトISに固定されてもよい。
【0015】
カウンタドリブンギヤ22は、カウンタドライブギヤ21に噛合する当該カウンタドライブギヤ21より大径の外歯ギヤである。カウンタドリブンギヤ22は、ケース3によりロータシャフトRS、入力シャフトISおよび一対のドライブシャフトDSと平行かつ回転自在に支持されるカウンタシャフトCSと一体に回転する。ドライブピニオンギヤ23は、カウンタドリブンギヤ22とは反対側に位置するように例えばカウンタシャフトCSと一体に成形された当該カウンタドリブンギヤ22よりも小径の外歯ギヤである。これにより、ドライブピニオンギヤ23は、カウンタドリブンギヤ22およびカウンタシャフトCSと同軸かつ一体に回転する。ただし、カウンタシャフトCSとは別体のドライブピニオンギヤ23が当該カウンタシャフトCSに固定されてもよい。
【0016】
デフリングギヤ24は、ドライブピニオンギヤ23に噛合する外歯歯車である。デファレンシャルギヤ25は、一対(2個)のピニオンギヤと、それぞれドライブシャフトDSに固定されると共に一対のピニオンギヤに噛合する一対(2個)のサイドギヤと、一対のピニオンギヤを支持するピニオンシャフトと、一対のピニオンギヤおよび一対のサイドギヤを収容すると共に上記デフリングギヤ24が連結(固定)されるデフケース(何れも図示省略)とを含む。
【0017】
ケース3は、例えばハウジング、ケース本体およびカバーを締結することにより構成される。本実施形態において、ハウジング、ケース本体およびカバーは、何れもアルミ合金製の鋳造品である。また、ケース3内に収容されるモータジェネレータMG、ギヤ列2、図示しない軸受等には、潤滑・冷却用のオイルが供給される。すなわち、ケース3の内部は、オイルが供給される空間となる。
【0018】
図2は、駆動装置1に含まれるトルクリミッタ10を示す断面図である。本実施形態において、トルクリミッタ10は、駆動源としてのモータジェネレータMGから動力が伝達される第1回転部材としてのロータシャフトRSと、当該ロータシャフトRSから動力が伝達される第2回転部材としての入力シャフトISとの間に配置される。トルクリミッタ10は、ロータシャフトRSと入力シャフトISとの間で予め定められたリミットトルクTlim以下のトルクの伝達を許容すると共に、ロータシャフトRSまたは入力シャフトISに伝達されるトルクの増加に応じてロータシャフトRSと入力シャフトISとの滑りを生じさせるものである。
【0019】
図2に示すように、トルクリミッタ10は、第1伝達部材11と、第2伝達部材12と、第3伝達部材13と、締め付け機構15とを含む。第1伝達部材11は、鋼材等の金属により形成された筒状体であり、図2に示すように、略円筒状の筒状部110と、筒状部110の内周面から径方向内側に突出する環状の突起部111とを含む。筒状部110の外周部には、スプラインが形成されており、第1伝達部材11は、当該スプラインを介して第1回転部材としてのロータシャフトRSに一体回転するように連結される。
【0020】
また、突起部111には、第1伝達部材11の回転軸(図2における一点鎖線参照)の延在方向において互い逆方向に傾斜する一対の第1環状テーパ面111a,111bが形成されている。第1環状テーパ面111aは、入力シャフトIS側の端部(図2における左端)からロータシャフトRS側の端部(図2における右端)に向かうにつれて縮径する上記回転軸を中心軸とした逆円錐面(逆テーパ面)である。また、第1環状テーパ面111bは、ロータシャフトRS側の端部(図2における右端)から入力シャフトIS側の端部(図2における左端)に向かうにつれて縮径する上記回転軸を中心軸とした逆円錐面である。
【0021】
一対の第1環状テーパ面111a,111bは、突起部111の軸方向における中央を通ると共に上記回転軸と直交する平面に関して対称に形成されている。すなわち、第1環状テーパ面111aを規定する円錐の頂角と第1環状テーパ面111bを規定する円錐の頂角とは、同一であり、第1環状テーパ面111aの軸長と第1環状テーパ面111bの軸長とは、同一の値L1となる。更に、第1伝達部材11(筒状部110)には、第1環状テーパ面111aの外周縁に沿って延びる環状の凹部112aと、第1環状テーパ面111bの外周縁に沿って延びる環状の凹部112bとが形成されている。
【0022】
第2伝達部材12は、鋼材等の金属により形成された筒状体であり、図2に示すように、略円筒状の筒状部120と、筒状部120の端部に形成された当該筒状部120よりも小径の縮径部121とを含む。筒状部120の縮径部121とは反対側の端部の外周部には、図示しないスプラインが形成されており、第2伝達部材12は、当該スプラインを介して第2回転部材としての入力シャフトISに一体回転するように構成(連結または一体成形)される。また、筒状部120および縮径部121には、貫通孔12hが形成されている。更に、筒状部120のロータシャフトRS側の端部(図2における右端)の外周面には、第2環状テーパ面122が形成されている。
【0023】
第2環状テーパ面122は、入力シャフトIS側の端部(図2における左端)からロータシャフトRS側の端部(図2における右端)に向かうにつれて縮径する第2伝達部材12の回転軸(図2における一点鎖線参照)を中心軸とした円錐面である。第2環状テーパ面122を規定する円錐の頂角は、第1伝達部材11の第1環状テーパ面111aを規定する円錐の頂角と同一である。また、図2に示すように、第2環状テーパ面122の軸長L2は、第1伝達部材11の第1環状テーパ面111aの軸長L1よりも長く、第2環状テーパ面122の面積は、第1環状テーパ面111aの面積よりも大きい。
【0024】
更に、本実施形態において、第2環状テーパ面122の硬度は、第1環状テーパ面111aと第2環状テーパ面122とで施工される熱処理を変化させたり、あるいは第1伝達部材11の素材と第2伝達部材12との素材とを異ならせたりすることにより、第1環状テーパ面111aの硬度よりも高められている。加えて、第2伝達部材12の筒状部120の外周面には、シールリングあるいはOリングといったのシール部材16が配置されるシール溝が第2環状テーパ面122よりも入力シャフトIS側(図2における左側)に位置するように形成されている。
【0025】
第3伝達部材13は、鋼材等の金属により形成された筒状体であり、図2に示すように、略円筒状の筒状部130と、筒状部130のロータシャフトRS側(図2における右端)の端面の外周部から軸方向に延出された延出筒状部131とを含む。第3伝達部材13の筒状部130は、第2伝達部材12の縮径部121の外径よりも僅かに大きい内径を有する。延出筒状部131は、筒状部130の外径と同一の外径を有すると共に、筒状部130の内径よりも大きい内径を有する。
【0026】
更に、筒状部130の入力シャフトIS側の端部(図2における左端)の外周面には、第3環状テーパ面133が形成されている。第3環状テーパ面133は、ロータシャフトRS側の端部(図2における右端)から入力シャフトIS側の端部(図2における左端)に向かうにつれて縮径する第3伝達部材13の回転軸(図2における一点鎖線参照)を中心軸とした円錐面である。第3環状テーパ面133を規定する円錐の頂角は、第1伝達部材11の第1環状テーパ面111bを規定する円錐の頂角と同一である。
【0027】
また、図2に示すように、第3環状テーパ面133の軸長L3は、第1伝達部材11の第1環状テーパ面111bの軸長L1よりも長く、第3環状テーパ面133の面積は、第1環状テーパ面111bの面積よりも大きい。更に、本実施形態において、第3環状テーパ面133の硬度は、第1環状テーパ面111bと第3環状テーパ面133とで施工される熱処理を変化させたり、あるいは第1伝達部材11の素材と第3伝達部材13との素材とを変化させたりすることにより、第1環状テーパ面111bの硬度よりも高められている。加えて、第3伝達部材13の筒状部130の外周面には、シールリングあるいはOリングといったシール部材16が配置されるシール溝が第3環状テーパ面133よりもロータシャフトRS側(図2における右側)に位置するように形成されている。
【0028】
第2伝達部材12の縮径部121側の端部は、第2環状テーパ面122が突起部111の第1環状テーパ面111aに当接すると共に、縮径部121が突起部111の第1環状テーパ面111bの径方向内側に位置するように第1伝達部材11の内部に挿入される。また、第3伝達部材13の第3環状テーパ面133側の端部は、当該第3環状テーパ面133が突起部111の第1環状テーパ面111bに当接するように第1伝達部材11の内部に挿入される。これにより、第1伝達部材11は、第2伝達部材12の一部および第3伝達部材の一部を包囲する。
【0029】
更に、第3伝達部材13の筒状部130内には、第2伝達部材12の縮径部121が嵌合され、当該筒状部130は、縮径部121により保持される回り止めとしてのキー14と係合する。これにより、第3伝達部材13の第2伝達部材12に対する回転が規制され、第3伝達部材13は、第2伝達部材12により一体に回転するように支持されると共に、入力シャフトISに一体回転するように連結される。ただし、第2伝達部材12と第3伝達部材13とは、スプラインを介して一体に回転するように連結されてもよい。そして、第2および第3伝達部材12,13は、第1伝達部材11の第1環状テーパ面111aに第2環状テーパ面122が密接すると共に、第1環状テーパ面111bに第3環状テーパ面133が密接するように締め付け機構15により締め付けられる。
【0030】
締め付け機構15は、図2に示すように、ボルト151と、ナット152と、ワッシャ153と、環状の押圧部材154と、弾性部材としての環状の皿ばね155とを含む。ボルト151は、第2伝達部材12の筒状部120の内部を介して貫通孔12hに挿通され、当該ボルト151の頭部は、筒状部120内で貫通孔12hを包囲する縮径部121の端面に当接する。また、第3伝達部材13の延出筒状部131内には、縮径部121の先端を包囲して筒状部130の端面に当接するように皿ばね155が配置されると共に、皿ばね155に当接するように押圧部材154が配置される。第2伝達部材12の縮径部121の先端は、皿ばね155と干渉しないように縮径されており、押圧部材154は、当該縮径部121の先端面に当接する。すなわち、皿ばね155は、押圧部材154と第2伝達部材12の縮径部121との突き当て部の径方向外側に位置するように第3伝達部材13と押圧部材154との間に配置される。
【0031】
ボルト151の先端は、縮径部121および押圧部材154からロータシャフトRS側(図2における右側)に突出する。また、ボルト151の先端には、押圧部材154に当接するようにワッシャ153が通されると共にナット152が螺合され、第2および第3伝達部材12,13は、押圧部材154および皿ばね155を介してボルト151の軸力により締め付けられる。更に、第3伝達部材13は、皿ばね155によって付勢される。
【0032】
ここで、トルクリミッタ10のリミットトルクTlimは、ロータシャフトRSと入力シャフトISとの間で伝達されるトルクであって、一対の第1環状テーパ面111a,111bと第2および第3環状テーパ面122,133との滑りを生じさせないトルクの上限値である。トルクリミッタ10において、リミットトルクTlimは、ボルト151およびナット152の締め付けトルクや、皿ばね155の剛性、第1環状テーパ面111aと第2環状テーパ面122との接触面積および摩擦係数、第1環状テーパ面111bと第3環状テーパ面133との接触面積および摩擦係数等から定まる。
【0033】
また、図2に示すように、ボルト151にナット152が螺合されると、第1伝達部材11の凹部112aと、第2伝達部材12の外周面および第2環状テーパ面122の一部とは、第1環状テーパ面111aと第2環状テーパ面122との接触部の外周に沿って延びる環状空間17aを画成する。更に、第2伝達部材12の筒状部120のシール溝に配置されたシール部材16は、当該環状空間17aの入力シャフトIS側(図2における左側)で第1伝達部材11の筒状部110と第2伝達部材12の筒状部120との隙間を封止する。また、第1伝達部材11の凹部112bと、第3伝達部材13の外周面および第3環状テーパ面133の一部とは、第1環状テーパ面111bと第3環状テーパ面133との接触部の外周に沿って延びる環状空間17bを画成する。更に、第3伝達部材13の筒状部130のシール溝に配置されたシール部材16は、当該環状空間17bのロータシャフトRS側(図2における右側)で第1伝達部材11の筒状部110と第3伝達部材13の筒状部130との隙間を封止する。
【0034】
上述のように構成されるトルクリミッタ10では、第1伝達部材11が、駆動側のロータシャフトRSと一体に回転すると共に、回転軸の延在方向において互い逆方向に傾斜する一対の第1環状テーパ面111a,111bを有する。また、第2および第3伝達部材12,13は、被駆動側の入力シャフトISと一体に回転すると共に、第1伝達部材11の第1環状テーパ面111aまたは111bに当接可能な第2または第3環状テーパ面122,133を有する。更に、第2および第3伝達部材12,13は、第2および第3環状テーパ面122,133が第1環状テーパ面111aまたは111bに当接するように締め付け機構15により締め付けられる。
【0035】
従って、車両Vが走行する間に、モータジェネレータMGからロータシャフトRSに出力されるトルクや駆動輪DW側から入力シャフトISに伝達されるトルクが上記リミットトルクTlim以下となる場合、第1環状テーパ面111aおよび第2環状テーパ面122は互いに滑ることなく摩擦係合し、第1環状テーパ面111bおよび第3環状テーパ面133も互いに滑ることなく摩擦係合する。これにより、第1、第2および第3伝達部材11,12,13が一体に回転し、ロータシャフトRSと入力シャフトISとの間でリミットトルクTlim以下のトルクの伝達が許容されることになる。
【0036】
そして、トルクリミッタ10では、第1、第2および第3伝達部材11,12,13の外径の増加を抑えつつ、一対の第1環状テーパ面111a,111bと第2および第3環状テーパ面122,133との接触面積を充分に確保することが可能となる。従って、第2および第3伝達部材12,13に対して締め付け機構15により充分な締め付け力を付与することで、一対の第1環状テーパ面111a,111bと第2および第3環状テーパ面122,133との滑りを生じさせないトルクの上限値であるリミットトルクTlimを充分に確保することができる。この結果、トルクリミッタ10によれば、当該トルクリミッタ10ひいてはそれを含む駆動装置1の大型化を抑制しつつ、リミットトルクTlimを充分に確保することが可能となる。
【0037】
また、モータジェネレータMGからロータシャフトRSに出力されるトルクあるいは駆動輪DW側から入力シャフトISに伝達されるトルクが上記リミットトルクTlimを上回ると、第1環状テーパ面111aおよび第2環状テーパ面122との間と、第1環状テーパ面111bおよび第3環状テーパ面133との間とで滑りが発生する。これにより、モータジェネレータMGから入力シャフトIS側に過大なトルクが伝達されたり、駆動輪DW側からモータジェネレータMG側に過大なトルクが伝達されたりするのを良好に抑制することが可能となる。
【0038】
更に、トルクリミッタ10において、第1および第2伝達部材11,12は、第1環状テーパ面111aと第2環状テーパ面122との接触部の外周に沿って延びる環状空間17aを画成する。また、第1および第3伝達部材11,13は、第1環状テーパ面111bと第3環状テーパ面133との接触部の外周に沿って延びる環状空間17bを画成する。これにより、第1環状テーパ面111aと第2環状テーパ面122との間で発生する摩耗粉を遠心力により環状空間17a内に回収して外部への排出を抑制すると共に、第1環状テーパ面111bと第3環状テーパ面133との間で発生する摩耗粉を遠心力により環状空間17b内に回収して外部への排出を抑制することが可能となる。また、トルクリミッタ10では、第2伝達部材12(筒状部120)と第3伝達部材13(筒状部130)との軸方向における間に形成される隙間内に摩耗粉を回収して外部への排出を抑制することもできる。
【0039】
加えて、環状空間17aの入力シャフトIS側(図2における左側)には、第1伝達部材11の筒状部110と第2伝達部材12の筒状部120との隙間を封止するシール部材16が配置される。更に、環状空間17bのロータシャフトRS側(図2における右側)には、第1伝達部材11の筒状部110と第3伝達部材13の筒状部130との隙間を封止するシール部材16が配置される。これにより、環状空間17a,17bから外部への摩耗粉の排出を極めて良好に抑制することが可能となる。従って、トルクリミッタ10がモータジェネレータMGやギヤ列2等と同一の空間内すなわちケース3内に配置される駆動装置1では、摩耗粉がモータジェネレータMG周辺やギヤ同士の噛合部に混入するのを良好に抑制することができる。ただし、トルクリミッタ10から2つのシール部材16の一方または双方が省略されてもよい。
【0040】
また、トルクリミッタ10において、一対の第1環状テーパ面111a,111bの硬度は、第2および第3環状テーパ面122,133の硬度よりも低く定められる。更に、第1環状テーパ面111aの面積は、第2環状テーパ面122の面積よりも小さく定められ、第1環状テーパ面111bの面積は、第3環状テーパ面133の面積よりも小さく定められる。これにより、面積が小さい第1環状テーパ面111a,111bが第2または第3環状テーパ面122,133との接触により摩耗することから、面積が大きい第2環状テーパ面122の第1環状テーパ面111aとの接触部と、面積が大きい第3環状テーパ面133の第1環状テーパ面111bとの接触部とに窪みが形成されて当該窪みに摩耗粉が溜まってしまうのを良好に抑制することができる。
【0041】
この結果、一対の第1環状テーパ面111a,111bと第2または第3環状テーパ面122,133との接触部から摩耗粉を良好に排出させることが可能となる。ただし、トルクリミッタ10において、第2および第3環状テーパ面122,133の硬度が一対の第1環状テーパ面111a,111bの硬度よりも低く定められてもよい。この場合、第2環状テーパ面122の面積が第1環状テーパ面111aの面積よりも小さく定められると共に、第3環状テーパ面133の面積が第1環状テーパ面111bの面積よりも小さく定められてもよい。
【0042】
更に、トルクリミッタ10において、締め付け機構15は、押圧部材154と、当該押圧部材154を介して第2および第3伝達部材12,13を締め付けるボルト151およびナット152と、第3伝達部材13と押圧部材154との間に配置される弾性部材としての皿ばね155とを含む。これにより、ボルト151の軸力により第2および第3伝達部材12,13を締め付けて充分なリミットトルクTlimを確保することが可能となる。ただし、押圧部材154は、第2伝達部材12側に配置されてもよく、皿ばね155は、第2伝達部材12(例えば、縮径部121)と押圧部材154との間に配置されてもよい。
【0043】
また、トルクリミッタ10において、皿ばね155は、第3伝達部材13と押圧部材154との間に配置され、押圧部材154は、第2伝達部材12に突き当てられる。これにより、同一構造を有する複数のトルクリミッタ10間で、皿ばね155から第2および第3伝達部材12,13に付与される付勢力、すなわちリミットトルクTlimのばらつきを小さくすることが可能となる。更に、第2伝達部材12は、押圧部材154に突き当てられず、隙間を介して当該押圧部材154と対向するものであってもよい。また、締め付け機構15から皿ばね155を省略してもよく、この場合、押圧部材154は第3伝達部材13のみに当接すると共に、第2伝達部材12と隙間を介して対向するものであってもよい。
【0044】
図3は、本開示の他のトルクリミッタ10Bを示す断面図である。なお、トルクリミッタ10Bの構成要素のうち、上記トルクリミッタ10と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0045】
図3に示すトルクリミッタ10Bは、金属製の第1、第2および第3伝達部材11B,12B,13Bと、締め付け機構15Bとを含むものである。かかるトルクリミッタ10Bでは、第1伝達部材11Bの突起部111Bに形成された一対の第1環状テーパ面111a,111bが、回転軸の延在方向において互いに逆方向に傾斜する円錐面とされている。また、トルクリミッタ10Bの第2伝達部材12Bの第2環状テーパ面122と、第3伝達部材13Bの第3環状テーパ面133とは、第1環状テーパ面111aまたは111bに当接可能な逆円錐面とされている。更に、第1伝達部材11Bの凹部112aと、第2伝達部材12Bの外周面および第2環状テーパ面122の一部とは、第1環状テーパ面111aと第2環状テーパ面122との接触部の外周に沿って延びる環状空間17aを画成する。また、第1伝達部材11Bの凹部112bと、第3伝達部材13Bの外周面および第3環状テーパ面133の一部とは、第1環状テーパ面111bと第3環状テーパ面133との接触部の外周に沿って延びる環状空間17bを画成する。加えて、トルクリミッタ10Bにおいても、第2伝達部材12B(筒状部120)と第3伝達部材13(筒状部130)との軸方向における間に摩耗粉を回収可能な隙間が形成される。このように構成されるトルクリミッタ10Bにおいても、上記トルクリミッタ10と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【0046】
また、トルクリミッタ10Bでは、第1環状テーパ面111aの面積が第2環状テーパ面122の面積よりも小さく定められ、かつ第1環状テーパ面111bの面積が第3環状テーパ面133の面積よりも小さく定められる。従って、一対の第1環状テーパ面111a,111bの硬度は、第2および第3環状テーパ面122,133の硬度よりも低く定められる。ただし、トルクリミッタ10Bにおいて、第2環状テーパ面122の面積が第1環状テーパ面111aの面積よりも小さく定められると共に、第3環状テーパ面133の面積が第1環状テーパ面111bの面積よりも小さく定められてもよい。この場合、第2および第3環状テーパ面122,133の硬度が、一対の第1環状テーパ面111a,111bの硬度よりも低く定められてもよい。
【0047】
図4は、本開示の更に他のトルクリミッタ10Cを示す断面図である。なお、トルクリミッタ10Cの構成要素のうち、上記トルクリミッタ10等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0048】
図4に示すトルクリミッタ10Cも、モータジェネレータMGから動力が伝達される駆動装置1の第1回転部材としてのロータシャフトRSと、当該ロータシャフトRSから動力が伝達される第2回転部材としての入力シャフトISとの間に配置され得るものである。図4に示すように、トルクリミッタ10Cは、第1伝達部材11Cと、第2伝達部材12Cと、第3伝達部材13Cと、締め付け機構15Cとを含む。第1伝達部材11Cは、鋼材等の金属により形成された筒状体であり、スプラインを介してロータシャフトRSに一体回転するように連結される。第1伝達部材11Cは、図4に示すように、略円筒状の筒状部110と、筒状部110の外周面から径方向外側に突出する環状の突起部111Cとを含む。
【0049】
突起部111Cには、第1伝達部材11Cの回転軸(図4における一点鎖線参照)の延在方向において互い逆方向に傾斜する一対の第1環状テーパ面111a,111bが形成されている。第1伝達部材11Cの第1環状テーパ面111aは、入力シャフトIS側の端部(図4における左端)からロータシャフトRS側の端部(図4における右端)に向かうにつれて拡径する当該回転軸を中心軸とした円錐面である。また、第1伝達部材11Cの第1環状テーパ面111bは、ロータシャフトRS側の端部(図4における右端)から入力シャフトIS側の端部(図4における左端)に向かうにつれて拡径する上記回転軸を中心軸とした円錐面である。第1伝達部材11Cの第1環状テーパ面111a,111bも、突起部111Cの軸方向における中央を通ると共に上記回転軸と直交する平面に関して対称に形成されている。更に、第1伝達部材11Cには、第1環状テーパ面111aの内周縁に沿って延びる環状の凹部112aと、第1環状テーパ面111bの内周縁に沿って延びる環状の凹部112bとが形成されている。
【0050】
第2伝達部材12Cは、鋼材等の金属により形成された筒状体であり、入力シャフトISに一体回転するように連結される。第2伝達部材12Cは、図4に示すように、略円筒状の筒状部120と、筒状部120の端部に形成された当該筒状部120よりも大きい外径および内径を有する拡径部125とを含む。筒状部120のロータシャフトRS側の端部(図4における右端)の内周面には、拡径部125の端面よりも入力シャフトIS側に位置するように第2環状テーパ面122が形成されている。第2伝達部材12Cの第2環状テーパ面122は、入力シャフトIS側の端部(図4における左端)からロータシャフトRS側の端部(図4における右端)に向かうにつれて拡径する第2伝達部材12Cの回転軸(図4における一点鎖線参照)を中心軸とした逆円錐面である。また、第2伝達部材12Cの第2環状テーパ面122を規定する円錐の頂角は、第1伝達部材11Cの第1環状テーパ面111aを規定する円錐の頂角と同一である。
【0051】
第3伝達部材13Cは、鋼材等の金属により形成された筒状体であり、図4に示すように、略円筒状の筒状部130と、筒状部130のロータシャフトRS側(図4における右端)の端面の内周部から軸方向に延出された延出筒状部131とを含む。第3伝達部材13Cの筒状部130および延出筒状部131は、第1伝達部材11Cの筒状部110の外径よりも僅かに大きい内径を有する。更に、筒状部130の入力シャフトIS側の端部(図4における左端)の内周面には、第3環状テーパ面133が形成されている。第3環状テーパ面133は、ロータシャフトRS側の端部(図2における右端)から入力シャフトIS側の端部(図2における左端)に向かうにつれて拡径する第3伝達部材13の回転軸(図4における一点鎖線参照)を中心軸とした逆円錐面である。また、第3環状テーパ面133を規定する円錐の頂角は、第1伝達部材11の第1環状テーパ面111bを規定する円錐の頂角と同一である。
【0052】
トルクリミッタ10Cにおいて、第2伝達部材12Cの第2環状テーパ面122の面積は、第1伝達部材11Cの第1環状テーパ面111aの面積よりも大きい。また、第2伝達部材12Cの第2環状テーパ面122の硬度は、第1伝達部材11Cの第1環状テーパ面111aの硬度よりも高められている。更に、第3伝達部材13Cの第3環状テーパ面133の面積は、第1伝達部材11Cの第1環状テーパ面111bの面積よりも大きい。また、第3伝達部材13Cの第3環状テーパ面133の硬度は、第1伝達部材11Cの第1環状テーパ面111bの硬度よりも高められている。
【0053】
第1伝達部材11Cの入力シャフトIS側の端部(図4における左端)は、突起部111Cの第1環状テーパ面111aが第2環状テーパ面122に当接すると共に、突起部111Cの第1環状テーパ面111bが拡径部125により包囲されるように第2伝達部材12Cの内部に挿入される。また、第3伝達部材13Cの第3環状テーパ面133側の端部は、当該第3環状テーパ面133が突起部111Cの第1環状テーパ面111bに当接するように第2伝達部材12Cの内部に挿入される。これにより、第2および第3伝達部材12C,13Cは、第1伝達部材11Cを部分的に包囲する。
【0054】
更に、第3伝達部材13Cの筒状部130は、第2伝達部材12Cの拡径部125内に嵌合され、当該筒状部130は、拡径部125により保持される回り止めとしてのキー14と係合する。これにより、第3伝達部材13Cの第2伝達部材12Cに対する回転が規制され、第3伝達部材13Cは、第2伝達部材12Cにより一体に回転するように支持されると共に、入力シャフトISに一体回転するように連結される。ただし、第2伝達部材12Cと第3伝達部材13Cとは、スプラインを介して一体に回転するように連結されてもよい。そして、第2および第3伝達部材12C,13Cは、第1伝達部材11Cの第1環状テーパ面111aに第2環状テーパ面122が密接すると共に、第1環状テーパ面111bに第3環状テーパ面133が密接するように締め付け機構15Cにより締め付けられる。
【0055】
締め付け機構15Cは、図4に示すように、複数のボルト151と、環状の押圧部材154と、弾性部材としての環状の皿ばね155とを含む。皿ばね155は、第3伝達部材13Cの筒状部130の端面に当接するように当該第3伝達部材13Cの延出筒状部131の周囲であって第2伝達部材12Cの拡径部125の先端の径方向内側に配置される。また、押圧部材154は、第2伝達部材12Cの拡径部125の端面および皿ばね155に当接するように第3伝達部材13Cの延出筒状部131の周囲に配置される。すなわち、皿ばね155は、押圧部材154と第2伝達部材12Cの拡径部125との突き当て部の径方向内側に位置するように第3伝達部材13Cと押圧部材154との間に配置される。更に、複数のボルト151は、頭部が押圧部材154に当接するように当該押圧部材154に形成された対応する貫通孔に挿通されると共に、第2伝達部材12Cの拡径部125に形成された対応するネジ孔に螺合される。これにより、第2および第3伝達部材12C,13Cは、押圧部材154および皿ばね155を介して複数のボルト151の軸力により締め付けられる。更に、第3伝達部材13Cは、皿ばね155によって付勢される。
【0056】
また、図4に示すように、複数のボルト151が第2伝達部材12Cの拡径部125に螺合されると、第1伝達部材11Cの凹部112aと、第2伝達部材12Cの内周面および第2環状テーパ面122の一部とは、第1環状テーパ面111aと第2環状テーパ面122との接触部の内周に沿って延びる環状空間17aを画成する。更に、第1伝達部材11Cの凹部112bと、第3伝達部材13Cの内周面および第3環状テーパ面133の一部とは、第1環状テーパ面111bと第3環状テーパ面133との接触部の内周に沿って延びる環状空間17bを画成する。
【0057】
上述のように、トルクリミッタ10Cでは、第1伝達部材11Cの一対の第1環状テーパ面111a,111bが径方向外側で第2および第3環状テーパ面122,133により保持される。かかるトルクリミッタ10Cによっても、一対の第1環状テーパ面111a,111bが径方向内側で第2および第3環状テーパ面122,133により保持される上記トルクリミッタ10と同様の作用効果を得ることが可能となる。また、トルクリミッタ10Cでは、第1環状テーパ面111aと第2環状テーパ面122との間で発生する摩耗粉を径方向内側の環状空間17a内に回収して外部への排出を抑制すると共に、第1環状テーパ面111bと第3環状テーパ面133との間で発生する摩耗粉を径方向内側の環状空間17b内に回収して外部への排出を抑制することができる。更に、トルクリミッタ10Cにおいても、第2伝達部材12C(筒状部120)と第3伝達部材13C(筒状部130)との軸方向における間に形成される隙間内に摩耗粉を回収して外部への排出を抑制することができる。
【0058】
図5は、本開示の他のトルクリミッタ10Dを示す断面図である。なお、トルクリミッタ10Dの構成要素のうち、上記トルクリミッタ10C等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0059】
図5に示すトルクリミッタ10Dは、金属製の第1、第2および第3伝達部材11D,12D,13Dと、締め付け機構15Dとを含むものである。かかるトルクリミッタ10Dでは、第1伝達部材11Dの突起部111Dに形成された一対の第1環状テーパ面111a,111bが、回転軸の延在方向において互いに逆方向に傾斜する逆円錐面とされている。また、トルクリミッタ10Dの第2伝達部材12Dの第2環状テーパ面122と、第3伝達部材13Dの第3環状テーパ面133とは、第1環状テーパ面111aまたは111bに当接可能な円錐面とされている。更に、トルクリミッタ10Dは、第1環状テーパ面111aと第2環状テーパ面122との接触部の外周に沿って延びる環状空間17aおよび第1環状テーパ面111bと第3環状テーパ面133との接触部の外周に沿って延びる環状空間17bに加えて、第1環状テーパ面111aと第2環状テーパ面122との接触部の内周に沿って延びる環状空間17cおよび第1環状テーパ面111bと第3環状テーパ面133との接触部の内周に沿って延びる環状空間17dを含む。加えて、トルクリミッタ10Dにおいても、第2伝達部材12D(筒状部120)と第3伝達部材13D(筒状部130)との軸方向における間に摩耗粉を回収可能な隙間が形成される。かかるトルクリミッタ10Dにおいても、上記トルクリミッタ10Cと同様の作用効果を得ることが可能となる。
【0060】
また、図5に示すように、トルクリミッタ10Dでは、第2環状テーパ面122の面積が第1環状テーパ面111aの面積よりも小さく定められると共に、第3環状テーパ面133の面積が第1環状テーパ面111bの面積よりも小さく定められる。従って、第2および第3環状テーパ面122,133の硬度は、一対の第1環状テーパ面111a,111bの硬度よりも低く定められる。ただし、トルクリミッタ10Dにおいて、第1環状テーパ面111aの面積が第2環状テーパ面122の面積よりも小さく定められると共に、第1環状テーパ面111bの面積が第3環状テーパ面133の面積よりも小さく定められてもよい。この場合、一対の第1環状テーパ面111a,111bの硬度が第2および第3環状テーパ面122,133の硬度よりも低く定められてもよい。
【0061】
図6は、本開示の更に他のトルクリミッタ10Eを示す断面図である。なお、トルクリミッタ10Eの構成要素のうち、上記トルクリミッタ10C等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0062】
図6に示すトルクリミッタ10Eは、金属製の第1、第2および第3伝達部材11E,12E,13Eと、締め付け機構15Eとを含むものであり、第1伝達部材11E(突起部111E)の一対の第1環状テーパ面111a,111bは、径方向外側で第2および第3環状テーパ面122,133により保持される。トルクリミッタ10Eの締め付け機構15Eは、図示するように、皿ばね155と、押圧部材156と、スナップリング157とを含む。押圧部材156は、第2伝達部材12Eの拡径部125を包囲する筒状部156cと、当該筒状部156cのロータシャフトRS側の端部(図6における右端)から径方向内側に延出された環状のフランジ部156fとを含む。押圧部材156の筒状部156c内には、第2伝達部材12Eの拡径部125が嵌合される。また、フランジ部156fの内面は、皿ばね155に当接し、当該フランジ部156fの孔部には、第3伝達部材13Eの延出筒状部131が嵌合される。更に、押圧部材156は、第3伝達部材13Eと共に皿ばね155を圧縮する状態で、スナップリング157を介して第2伝達部材12Eの拡径部125に固定される。かかる締め付け機構15Eによっても、第2および第3伝達部材12E,13Eを締め付けて充分なリミットトルクTlimを確保することが可能となる。また、トルクリミッタ10Eにおいても、環状空間17a,17b内や、第2伝達部材12E(筒状部120)と第3伝達部材13E(筒状部130)との軸方向における間に形成される隙間内に摩耗粉を回収して外部への排出を抑制することができる。
【0063】
なお、トルクリミッタ10B,10C,10D,10Eにおいても、皿ばね155が第2伝達部材12B-12Eと押圧部材154との間に配置されてもよく、押圧部材154が第3伝達部材13B-13Eに突き当てられてもよい。また、締め付け機構15B,15C,15D,15Eから皿ばね155が省略されてもよく、押圧部材154は、第2および第3伝達部材12B-12E,13B-13Eの双方に当接するものであってもよい。更に、トルクリミッタ10B,10C,10D,10Eは、環状空間17aの入力シャフトIS側(図3図6における左側)で第1伝達部材11B-11Eの筒状部110と第2伝達部材12B-12Eの筒状部120との隙間を封止するシール部材と、環状空間17bのロータシャフトRS側(図3図6における右側)で第1伝達部材11B-11Eの筒状部110と第3伝達部材13B-13Eの筒状部130との隙間を封止するシール部材とを含むものであってもよい。
【0064】
また、トルクリミッタ10,10B,10C,10D,10Eにおいて、第1伝達部材11-11E、第2伝達部材12-12E、および第3伝達部材13-13Eは、金属により形成されるが、これに限られるものではない。すなわち、第1、第2および第3伝達部材11-11E,12-12E,13-13Eは、例えば樹脂といった2つの部材間での摩擦係合可能にする金属以外の材料により形成されてもよい。
【0065】
更に、第1伝達部材11-11Eが入力シャフトISに一体回転するように連結されると共に、第2伝達部材12-12EがロータシャフトRSに一体回転するように連結されてもよい。また、駆動装置1において、カウンタシャフトCSが2分割されてもよく、トルクリミッタ10-10Eが、カウンタドリブンギヤ22とドライブピニオンギヤ23との間に配置されてもよい。更に、トルクリミッタ10-10Eは、特許文献1および2に記載されたような第1および第2の電動機とプラネタリギヤとを含む駆動装置に適用されてもよい。この場合、トルクリミッタ10-10Eは、エンジン(内燃機関)とダンパ機構との間、エンジンおよびダンパ機構とプラネタリギヤ(キャリヤ)との間、第1電動機とプラネタリギヤ(サンギヤ)との間、カウンタドライブギヤとカウンタドリブンギヤとの間、および第2の電動機とドライブギヤ(カウンタドリブンギヤ)の少なくとも何れか1箇所に配置されてもよい。
【0066】
また、トルクリミッタ10-10Eは、ガソリンや軽油、LPGといった炭化水素系の燃料と空気との混合気を爆発燃焼させて動力を発生するエンジン(内燃機関)と、当該エンジンからの動力(トルク)を車輪(駆動輪)に伝達するトランスミッションとの間に配置されてもよい。この場合、トランスミッションは、流体伝動装置(トルクコンバータ)、ロックアップクラッチおよび有段式あるいは無段式の変速機構を含むものであってもよく、発進クラッチおよび有段式あるいは無段式の変速機構を含むものであってもよく、1つのモータジェネレータ、少なくとも1つのクラッチおよび変速機構を含むものであってもよい。
【0067】
更に、トルクリミッタ10-10Eは、潤滑・冷却用のオイルが供給される空間である駆動装置1のケース3内に配置されるものとして説明されたが、これに限られるものではない。すなわち、トルクリミッタ10-10Eは、潤滑・冷却用のオイルやクラッチ等を係合させるための作動油が供給される空間の外に配置されてもよい。
【0068】
以上説明したように、本開示のトルクリミッタは、駆動源(MG)から動力が伝達される第1回転部材(RS)と、前記第1回転部材(RS)から動力が伝達される第2回転部材(IS)との間に配置されるトルクリミッタ(10,10B,10C,10D,10E)において、前記第1および第2回転部材(RS,IS)の一方と一体に回転すると共に、回転軸の延在方向において互い逆方向に傾斜する一対の第1環状テーパ面(111a,111b)を有する第1伝達部材(11,11B,11C,11D,11E)と、前記第1および第2回転部材(RS,IS)の他方と一体に回転すると共に、前記第1伝達部材(11,11B,11C,11D,11E)の前記一対の第1環状テーパ面(111a,111b)の一方に当接可能な第2環状テーパ面(122)を有する第2伝達部材(12,12B,12C,12D,12E)と、前記第1および第2回転部材(RS,IS)の前記他方と一体に回転すると共に、前記第1伝達部材(11,11B,11C,11D,11E)の前記一対の第1環状テーパ面(111a,111b)の他方に当接可能な第3環状テーパ面(133)を有する第3伝達部材(13,13B,13C,13D,13E)と、前記一対の第1環状テーパ面(111a,111b)の前記一方に前記第2環状テーパ面(122)が当接すると共に、前記一対の第1環状テーパ面(111a,111b)の前記他方に前記第3環状テーパ面(133)が当接するように、前記第2および第3伝達部材(12,12B,12C,12D,12E,13,13B,13C,13D,13E)を締め付ける締め付け機構(15,15B,15C,15D,15E)と、を含むものである。
【0069】
本開示のトルクリミッタは、駆動源から動力が伝達される第1回転部材と、第1回転部材から動力が伝達される第2回転部材との間に配置されるものであり、金属製の第1、第2および第3伝達部材と、締め付け機構とを含む。第1伝達部材は、第1および第2回転部材の一方と一体に回転すると共に、回転軸の延在方向において互い逆方向に傾斜する一対の第1環状テーパ面を有する。第2伝達部材は、第1および第2回転部材の他方と一体に回転すると共に、第1伝達部材の一対の第1環状テーパ面の一方に当接可能な第2環状テーパ面を有する。第3伝達部材は、第1および第2回転部材の他方と一体に回転すると共に、第1伝達部材の一対の第1環状テーパ面の他方に当接可能な第3環状テーパ面を有する。締め付け機構は、一対の第1環状テーパ面の一方に第2環状テーパ面が当接すると共に、一対の第1環状テーパ面の他方に第3環状テーパ面が当接するように、第2および第3伝達部材を締め付ける。これにより、第1、第2および第3伝達部材の外径の増加を抑えつつ、一対の第1環状テーパ面と第2および第3環状テーパ面との接触面積を充分に確保することが可能となる。従って、第2および第3伝達部材に対して充分な締め付け力を付与することで、一対の第1環状テーパ面と第2および第3環状テーパ面との滑りを生じさせないトルクの上限値であるリミットトルクを充分に確保することができる。この結果、本開示のトルクリミッタによれば、当該トルクリミッタひいてはそれを含む装置の大型化を抑制しつつ、リミットトルクを充分に確保することが可能となる。なお、本開示のトルクリミッタは、オイルが供給される空間内に配置されてもよく、オイルが供給される空間の外に配置されてもよい。
【0070】
また、前記第1および第2伝達部材(11,11B,11C,11D,11E,12,12B,12C,12D,12E)は、前記一対の第1環状テーパ面(111a,111b)の前記一方と前記第2環状テーパ面(122)との接触部の外周または内周に沿って延びる環状空間(17a)を画成してもよく、前記第1および第3伝達部材(11,11B,11C,11D,11E,13,13B,13C,13D,13E)は、前記一対の第1環状テーパ面(111a,111b)の前記他方と前記第3環状テーパ面(133)との接触部の外周または内周に沿って延びる環状空間(17b)を画成してもよい。これにより、第1環状テーパ面の一方と第2環状テーパ面との間で発生する摩耗粉を第1および第2伝達部材により画成される環状空間内に回収して外部への排出を抑制すると共に、第1環状テーパ面の他方と第3環状テーパ面との間で発生する摩耗粉を第1および第3伝達部材により画成される環状空間内に回収して外部への排出を抑制することが可能となる。この結果、トルクリミッタが電動機やギヤ類等と同一の空間内に配置される場合に、摩耗粉が電動機やギヤ同士の噛合部に混入するのを抑制することができる。
【0071】
更に、前記一対の環状テーパ面(111a,111b)と、前記第2および第3環状テーパ面(122,133)とは、互いに異なる硬度を有してもよく、前記一対の環状テーパ面(111a,111b)と、前記第2および第3環状テーパ面(122,133)とのうちの硬度が低い一方の面積は、硬度が高い他方の面積よりも小さくてもよい。これにより、一対の環状テーパ面と第2および第3環状テーパ面とのうちの硬度が低い一方が他方との接触により摩耗することで、第1環状テーパ面の一方と第2環状テーパ面との接触部、および第1環状テーパ面の他方と第3環状テーパ面との接触部に窪みが形成されて当該窪みに摩耗粉が溜まってしまうのを良好に抑制することができる。この結果、一対の第1環状テーパ面と第2または第3環状テーパ面との接触部から摩耗粉を良好に排出させることが可能となる。
【0072】
また、前記締め付け機構(15,15B,15C,15D)は、押圧部材(154)と、前記押圧部材(154)を介して前記第2および第3伝達部材(12,12B,12C,12D,13,13B,13C,13D)を締め付けるボルト(151)とを含むものであってもよい。これにより、ボルトの軸力により第2および第3伝達部材を締め付けて充分なリミットトルクを確保することが可能となる。
【0073】
更に、前記締め付け機構(15,15B,15C,15D)は、前記第2および第3伝達部材(12,12B,12C,12D,13,13B,13C,13D)の一方と、前記押圧部材(154)との間に配置される弾性部材(155)を含むものであってもよい。
【0074】
また、前記押圧部材(154)は、前記第2伝達部材(12,12B,12C,12D)に突き当てられてもよく、前記弾性部材(155)は、前記押圧部材(154)と前記第2伝達部材(12,12B,12C,12D)との突き当て部の径方向外側または径方向内側に位置するように前記第3伝達部材(13,13B,13C,13D)と前記押圧部材(154)との間に配置されてもよい。これにより、同一構造を有する複数のトルクリミッタ間で、弾性部材から第2および第3伝達部材に付与される付勢力、すなわちリミットトルクのばらつきを小さくすることが可能となる。
【0075】
更に、前記第1伝達部材(11,11B)は、前記第2および第3伝達部材(12,12B,13,13B)を少なくとも部分的に包囲する筒状体であってもよく、前記第2および第3伝達部材(12,12B,13,13B)の一方は、他方により一体に回転するように支持されてもよい。
【0076】
また、前記第2および第3伝達部材(12C,12D,12E,13C,13D,13E)は、前記第1伝達部材(11C,11D,11E)を少なくとも部分的に包囲する筒状体であってもよく、それぞれ前記第1伝達部材(11C,11D,11E)により径方向内側から支持されてもよい。
【0077】
更に、前記一対の第1環状テーパ面(111a,111b)は、互いに逆方向に傾斜する逆円錐面であってもよく、前記第2および第3環状テーパ面(122,133)は、円錐面であってもよい。
【0078】
また、前記一対の第1環状テーパ面(111a,111b)は、互いに逆方向に傾斜する円錐面であってもよく、前記第2および第3環状テーパ面(122,133)は、逆円錐面であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示の発明は、トルクリミッタの製造分野等において利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 駆動装置、2 ギヤ列、21 カウンタドライブギヤ、22 カウンタドリブンギヤ、23 ドライブピニオンギヤ、24 デフリングギヤ、25 デファレンシャルギヤ、3 ケース、10,10B,10C,10D,10E トルクリミッタ、11,11B,11C,11D,11E 第1伝達部材、110 筒状部、111、111B,111C,111D,111E 突起部、111a,111b 第1環状テーパ面、112a,112b 凹部、12,12B,12C,12D,12E 第2伝達部材、12h 貫通孔、120 筒状部、121 縮径部、122 第2環状テーパ面、125 拡径部、13,13B,13C,13D,13E 第3伝達部材、130 筒状部、131 延出筒状部、133 第3環状テーパ面、14 キー、15,15B,15C,15D,15E 締め付け機構、151 ボルト、152 ナット、153 ワッシャ、154,156 押圧部材、155 皿ばね、156c 筒状部、156f フランジ部、157 スナップリング、16 シール部材、17a,17b,17c,17d 環状空間、CS カウンタシャフト、DS ドライブシャフト、DW 駆動輪、IS 入力シャフト、MG モータジェネレータ、R ロータ、RS ロータシャフト、S ステータ、V 車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6