(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】口腔用圧力センサシート
(51)【国際特許分類】
A61C 19/05 20060101AFI20240610BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A61C19/05 110
A61B5/00 101M
(21)【出願番号】P 2020216651
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509111744
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】小久保 陽太
(72)【発明者】
【氏名】上野 哲司
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳知
(72)【発明者】
【氏名】高橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】平野 浩彦
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-068892(JP,A)
【文献】特開2015-144695(JP,A)
【文献】国際公開第2020/079437(WO,A1)
【文献】特開2012-075733(JP,A)
【文献】特開2020-014773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/04-19/05
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔に挿入される測定部分の全体が柔軟なシート状とされた口腔用圧力センサシートであって、
前記測定部分には、
歯列に対応した略U字状の領域に設けられて咬合力を電気信号として検出する咬合力感圧部と、
該咬合力感圧部における略U字状の内方領域に設けられて舌圧を電気信号として検出する舌圧感圧部と
が、シート面方向における相互の位置を規定されて設けられている口腔用圧力センサシート。
【請求項2】
前記舌圧感圧部は、シート厚さ方向で弾性変形可能な弾性層を有している請求項1に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項3】
前記舌圧感圧部の前記弾性層は、シート厚さ寸法がシート面方向において全体に亘って同じか部分的に異ならされている請求項2に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項4】
前記舌圧感圧部を構成する前記弾性層が誘電体からなる舌圧用誘電層であり、該舌圧用誘電層におけるシート厚さ方向の両側には柔軟な一対の舌圧用電極が配されており、該一対の舌圧用電極における対向距離の変化による静電容量の変化に基づいて舌圧が電気信号として検出される請求項2又は3に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項5】
前記咬合力感圧部は、厚さ方向で弾性変形可能な誘電体からなる咬合力用誘電層を有しており、該咬合力用誘電層におけるシート厚さ方向の両側には柔軟な一対の咬合力用電極が配されており、該一対の咬合力用電極における対向距離の変化による静電容量の変化に基づいて咬合力が電気信号として検出される請求項1~4の何れか一項に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項6】
請求項4に記載の舌圧感圧部を備えており、該舌圧感圧部を構成する前記舌圧用誘電層が、前記咬合力感圧部を構成する前記咬合力用誘電層に比して、感圧感度が高くされている請求項5に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項7】
請求項4に記載の舌圧感圧部を備えており、該舌圧感圧部を構成する前記舌圧用誘電層が、前記咬合力感圧部を構成する前記咬合力用誘電層に比して、厚さ寸法が大きくされている請求項5又は6に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項8】
請求項4に記載の舌圧感圧部を備えており、請求項4に記載の舌圧感圧部を構成する前記舌圧用誘電層が、前記咬合力感圧部を構成する前記咬合力用誘電層に比して、弾性反発力が小さくされている請求項5~7の何れか一項に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項9】
前記咬合力感圧部に対して前記舌圧感圧部が、口腔への装用状態で舌側となる面側に位置するように、シート厚さ方向で相互にずれて配設されている請求項1~8の何れか一項に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項10】
前記咬合力感圧部と前記舌圧感圧部とが、共通の基準面上に設けられることで一つのシート面方向に広がって並設されている請求項1~8の何れか一項に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項11】
前記咬合力感圧部が、シート厚さ方向で対向配置されて咬合力を電気信号として検出する一対の咬合力用電極を有していると共に、
前記舌圧感圧部が、シート厚さ方向で対向配置されて舌圧を電気信号として検出する一対の舌圧用電極を有しており、且つ、
該一対の該咬合力用電極と該一対の舌圧用電極とが、シート厚さ方向の少なくとも一方の側において共通の基材に対して積層形成されている請求項1~10の何れか一項に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項12】
前記咬合力感圧部が、シート厚さ方向で対向配置されて咬合力を電気信号として検出する一対の咬合力用電極を有していると共に、
前記舌圧感圧部が、シート厚さ方向で対向配置されて舌圧を電気信号として検出する一対の舌圧用電極を有しており、且つ、
該一対の該咬合力用電極と該一対の舌圧用電極とが、何れも同じ材質からなる導電性の柔軟材によって形成されている請求項1~11の何れか一項に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項13】
前記測定部分には、口腔への装用状態で舌側となる面側に位置して、前記咬合力感圧部と前記舌圧感圧部との各領域をシート厚さ方向で重なるようにして覆うガード電極が設けられている請求項1~12の何れか一項に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項14】
前記咬合力感圧部と前記舌圧感圧部との両方を覆う防水性のカバー部材が着脱可能に設けられている請求項1~13の何れか一項に記載の口腔用圧力センサシート。
【請求項15】
前記測定部分には、口腔内における位置決め用のガイドが設けられている請求項1~14の何れか一項に記載の口腔用圧力センサシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内で咬合力や舌圧を検出するために用いられる口腔用圧力センサシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食物を十分に咀嚼可能な強い咬合力を維持することが、健康を維持する上で重要であると考えられており、昨今では、咬合力の低下によるオーラルフレイルや口腔機能低下症の予防乃至は改善が注目されている。また、舌は、食物を口腔から食道に送り込んだり食物を奥歯上に押し上げたりする機能を有しており、咬合力だけでなく、舌圧も口腔機能に影響を与えることが知られている。
【0003】
そこで、咬合力の検出について、本出願人は、例えば特開2020-68892号公報(特許文献1)において、口腔に挿入される測定部分の全体が柔軟なシート状とされた咬合力センサシートを提案している。
【0004】
また、舌圧の検出については、例えば特開2012-75733号公報(特許文献2)において、バルーン付きの圧力測定プローブが提案されている。更に、例えば特開2015-144695号公報(特許文献3)には、マウスピースと一体型で舌圧を測定することのできる圧力測定用デバイスも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-68892号公報
【文献】特開2012-75733号公報
【文献】特開2015-144695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の咬合力センサシートは、舌圧の検出を考慮していなかった。舌圧の検出には、特許文献2に記載の舌圧センサを採用することが考えられるものの、特許文献2に記載の舌圧センサは、かさばるので取扱いやストックに不便であり、口腔への出し入れも難しく、被測定者が違和感を感じたりする等、測定者の労力と被測定者の負担も大きかった。また、膨らんだバルーンの口腔内での安定性が悪く、舌圧測定時にずれる等して、良好な測定精度を得難かった。
【0007】
一方、特許文献3に記載の圧力測定デバイスは、咬合力と舌圧の両方の測定が考慮されているものの、マウスピース型を特徴としており、歯列を内側から覆う壁部があり、当該内側の壁部が舌圧測定時に舌の周囲に配されることから、舌が周囲を拘束されて違和感が避けられず、舌圧測定に悪影響を及ぼすおそれがあった。また、特許文献3の
図1にも示されるように、特許文献3に記載の圧力測定デバイスは溝型であり、患者に応じて複数種類のものを準備しておいて適宜に使用する必要があり、保存や取扱い及び使用が面倒であって、十分な実用性が得られないおそれがあった。
【0008】
本発明は、本発明者による上述の如き従来技術の検討結果に基づいて為されたものであって、その解決課題は、測定者や被測定者の負担等の軽減を図りつつ、咬合力と舌圧を精度良く測定することを可能となし得る、新規な構造の口腔用圧力センサシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0010】
第一の態様は、口腔に挿入される測定部分の全体が柔軟なシート状とされた口腔用圧力センサシートであって、前記測定部分には、歯列に対応した略U字状の領域に設けられて咬合力を電気信号として検出する咬合力感圧部と、該咬合力感圧部における略U字状の内方領域に設けられて舌圧を電気信号として検出する舌圧感圧部とが、シート面方向における相互の位置を規定されて設けられているものである。
【0011】
本態様の口腔用圧力センサシートによれば、咬合力感圧部と舌圧感圧部は、何れも、柔軟な、即ち可撓性をもって湾曲可能なシート状(後述するように、例えば咬合力感圧部と舌圧感圧部とでシート厚さが異なるなど、部分的に厚さ寸法が変化する態様等も含む)とされて、全体が口腔の平面内形状に略対応して広がる。それ故、口腔への挿入や取出しも容易であることに加えて、口内の損傷等も回避され得て、患者の負担軽減が図られ得る。また、口腔への出し入れや測定時において患者に対する過度な大きさの開口要求も軽減されることとなり、特に特許文献2のようなプローブタイプに比して違和感を押さえることもできる。
【0012】
さらに、測定部分の全体がシート状とされることで、口腔では横に広がった状態で安定して位置決めされ得る。特に舌圧測定に際しては、舌圧測定部分だけでなく、そこから外周に広がった咬合力感圧部が存在することにより、大きく位置ずれすることが防止されることとなり、従来のプローブタイプに比して、位置合わせが容易で、且つ舌圧作用時における大きな位置ずれも防止されることから、測定不良の防止や測定精度の向上が図られる。
【0013】
更にまた、本態様の口腔用圧力センサシートは、全体がシート状で、且つ全体が柔軟であることから、相互の影響を可及的に回避しつつ、咬合力と舌圧を測定することが可能になる。更に、本態様の口腔用圧力センサシートは、特許文献3に記載のマウスピース型等に比して、患者毎に相違する歯列の状態に正確に合致させる必要もないことから、多様な歯列態様に対応して多種類のセンサシートを準備する煩わしさも回避され得ると共に、重ねることで容易に、且つより小さなスペースで保存することができる。
【0014】
なお、本態様の口腔用圧力センサシートにおいて、咬合力感圧部及び/又は舌圧感圧部は、柔軟なシート状とされて咬合力や舌圧を電気信号として検出し得る感圧部を備えるものであれば良く、後述するように一対の電極の対向面間に弾性変形可能な誘電層が配されて静電容量の変化に基づく電気信号として咬合力や舌圧を検出する静電容量タイプの他、例えば一対の電極の対向面間に圧電層が配されて電圧の変化に基づく電気信号として咬合力や舌圧を検出する圧電タイプや、一対の電極の対向面間に導電性ゴム等の弾性変形可能な抵抗層が配されて電気抵抗の変化に基づく電気信号として咬合力や舌圧を検出する抵抗タイプなど、公知の各種タイプの感圧部を備えた口腔用圧力センサシートに対して、本発明を適用することができる。
【0015】
第二の態様は、前記第一の態様に係る口腔用圧力センサシートであって、前記舌圧感圧部は、シート厚さ方向で弾性変形可能な弾性層を有しているものである。
【0016】
本態様の口腔用圧力センサシートでは、弾性層を有することで、舌圧測定時において、上顎内面の形状や舌上面の形状に、より精度良く沿わせることができる。その結果、患者の違和感がより軽減されると共に、圧力の測定精度の向上も図られ得る。
【0017】
第三の態様は、前記第二の態様に係る口腔用圧力センサシートであって、前記舌圧感圧部の前記弾性層は、シート厚さ寸法がシート面方向において全体に亘って同じか部分的に異ならされているものである。
【0018】
本態様の口腔用圧力センサシートでは、舌圧感圧部の弾性層を、例えば口腔の形状に適した形状や舌圧の検出に適した形状等に設定することが容易となる。なお、弾性層の具体的形状は限定されるものでなく、例えば平板形状や半球状であってもよいし、凹凸が設けられてもよい。例えば、舌に当たる部分が凹状になっていて舌を捉えやすくなっていたり、舌に当たる部分が凸状になっていて舌で包み込みやすくなっていてもよい。また、例えば面方向中央部をくり抜いて低圧から弾性層が変形できるようになっていてもよいし、厚み方向中央が空洞とされてもよい。
【0019】
第四の態様は、前記第二又は三の態様に係る口腔用圧力センサシートであって、前記舌圧感圧部を構成する前記弾性層が誘電体からなる舌圧用誘電層であり、該舌圧用誘電層におけるシート厚さ方向の両側には柔軟な一対の舌圧用電極が配されており、該一対の舌圧用電極における対向距離の変化による静電容量の変化に基づいて舌圧が電気信号として検出されるものである。
【0020】
本態様の口腔用圧力センサシートでは、静電容量タイプの舌圧感圧部を採用したことで、舌圧の測定精度を確保しつつ、公知の一般的な圧電タイプの舌圧感圧部に比して、例えばシート厚さ方向で弾性変形し易い特性を実現したり、厚さ寸法を確保したり、形状設定を容易とさせるなど、舌圧感圧部における設計自由度の向上が図られ得る。
【0021】
第五の態様は、前記第一~四の何れかの態様に係る口腔用圧力センサシートにおいて、前記咬合力感圧部は、厚さ方向で弾性変形可能な誘電体からなる咬合力用誘電層を有しており、該咬合力用誘電層におけるシート厚さ方向の両側には柔軟な一対の咬合力用電極が配されており、該一対の咬合力用電極における対向距離の変化による静電容量の変化に基づいて咬合力が電気信号として検出されるものである。
【0022】
本態様の口腔用圧力センサシートでは、厚さ方向で弾性変形可能な誘電体を備えた静電容量タイプの咬合力感圧部を採用したことで、前記特許文献3に記載のマウスピースタイプの圧力測定デバイスよりも、咬合力測定時における患者の違和感を軽減させることが容易となる。また、咬合力作用方向の弾性変形量を十分に確保することで、咬合力の増減に伴う上下歯の咬合力作用面積の増減も、容易に且つ精度良く検出することもできる。
【0023】
第六の態様は、前記第五の態様に係る口腔用圧力センサシートにおいて、前記第四の態様に記載の舌圧感圧部を備えており、該舌圧感圧部を構成する前記舌圧用誘電層が、前記咬合力感圧部を構成する前記咬合力用誘電層に比して、感圧感度が高くされているものである。
【0024】
本態様の口腔用圧力センサシートでは、咬合力と舌圧との大きさの相対差を考慮して、例えばそれぞれが対象とする測定レンジでの圧力検出精度の向上を図ることが容易となる。
【0025】
第七の態様は、前記第五又は六の態様に係る口腔用圧力センサシートにおいて、前記第四の態様に記載の舌圧感圧部を備えており、該舌圧感圧部を構成する前記舌圧用誘電層が、前記咬合力感圧部を構成する前記咬合力用誘電層に比して、厚さ寸法が大きくされているものである。
【0026】
本態様の口腔用圧力センサシートでは、咬合力と舌圧の各測定精度を確保しつつ、咬合力の測定と、舌圧の測定とに、それぞれ一層適合した各感圧部の厚さ寸法を設定することも可能になる。これにより、例えば測定時における患者の違和感や負担の更なる軽減も図られ得る。
【0027】
第八の態様は、前記第五~七の何れかの態様に係る口腔用圧力センサシートであって、前記第四の態様に記載の舌圧感圧部を備えており、前記第四の態様に記載の舌圧感圧部を構成する前記舌圧用誘電層が、前記咬合力感圧部を構成する前記咬合力用誘電層に比して、弾性反発力が小さくされているものである。
【0028】
本態様の口腔用圧力センサシートでは、咬合力と舌圧との大きさの相対差を考慮して、例えばそれぞれが対象とする測定レンジでの圧力検出精度の向上を図ったり、測定時における患者の違和感や負担の更なる軽減を図ることもできる。
【0029】
第九の態様は、前記第一~八の何れかの態様に係る口腔用圧力センサシートにおいて、前記咬合力感圧部に対して前記舌圧感圧部が、口腔への装用状態で舌側となる面側に位置するように、シート厚さ方向で相互にずれて配設されているものである。
【0030】
本態様の口腔用圧力センサシートでは、例えば舌圧感圧部の全体(外周縁を含む)を、咬合力感圧部よりも下側に位置させることで、舌圧測定時に患者の舌が、咬合力感圧部に邪魔等されることなく、舌圧感圧部の全体に対して有効に作用し易くすることができる。その結果、患者の違和感が軽減されると共に、舌圧の測定精度の向上も図られ得る。
【0031】
なお、本態様において、舌圧感圧部は、咬合力感圧部に対して舌側となる下面側に配置されていればよく、例えば咬合力感圧部に対して上顎側となる上面側にも加えて舌圧感圧部が配置されていてもよい。
【0032】
第十の態様は、前記第一~八の何れかの態様に係る口腔用圧力センサシートにおいて、前記咬合力感圧部と前記舌圧感圧部とが、共通の基準面上に設けられることで一つのシート面方向に広がって並設されているものである。
【0033】
本態様の口腔用圧力センサシートによれば、感圧部の全体形状を更にシンプルにして、取扱いや製造の容易化や、ストックに際してのスペース効率の更なる向上などを図ることができる。また、例えば全体のシート厚さを小さくして口腔への出し入れを一層容易にしたり患者の違和感の更なる軽減を図ることも容易となる。
【0034】
第十一の態様は、前記第一~十の何れかの態様に係る口腔用圧力センサシートにおいて、前記咬合力感圧部が、シート厚さ方向で対向配置されて咬合力を電気信号として検出する一対の咬合力用電極を有していると共に、前記舌圧感圧部が、シート厚さ方向で対向配置されて舌圧を電気信号として検出する一対の舌圧用電極を有しており、且つ、該一対の該咬合力用電極と該一対の舌圧用電極とが、シート厚さ方向の少なくとも一方の側において共通の基材に対して積層形成されているものである。
【0035】
本態様の口腔用圧力センサシートによれば、咬合力感圧部と舌圧感圧部における基材の共通化による構造の簡略化や製造の容易化が可能になる。
【0036】
第十二の態様は、前記第一~十一の何れかの態様に係る口腔用圧力センサシートにおいて、前記咬合力感圧部が、シート厚さ方向で対向配置されて咬合力を電気信号として検出する一対の咬合力用電極を有していると共に、前記舌圧感圧部が、シート厚さ方向で対向配置されて舌圧を電気信号として検出する一対の舌圧用電極を有しており、且つ、該一対の該咬合力用電極と該一対の舌圧用電極とが、何れも同じ材質からなる導電性の柔軟材によって形成されているものである。
【0037】
本態様の口腔用圧力センサシートによれば、咬合力感圧部と舌圧感圧部において共通の材質からなる電極が採用されることから、構造の簡略化や製造の容易化が可能となる。特に、一方の咬合力用電極と一方の舌圧用電極とを共通の電極とすることで、更なる構造の簡略化が図られる。
【0038】
第十三の態様は、前記第一~十二の何れかの態様に係る口腔用圧力センサシートにおいて、前記測定部分には、口腔への装用状態で舌側となる面側に位置して、前記咬合力感圧部と前記舌圧感圧部との各領域をシート厚さ方向で重なるようにして覆うガード電極が設けられているものである。
【0039】
本態様の口腔用圧力センサシートによれば、ガード電極を咬合力感圧部及び舌圧感圧部と検出対象者の舌との間に配することで、咬合力感圧部及び舌圧感圧部と舌との直接的な接触によるノイズを防いで、検出精度の向上を図ることができる。なお、咬合力感圧部を覆うガード電極と舌圧感圧部を覆うガード電極とは共通のガード電極であることが好ましく、これにより、構造の簡略化が図られる。
【0040】
第十四の態様は、前記第一~十三の何れかの態様に係る口腔用圧力センサシートにおいて、前記咬合力感圧部と前記舌圧感圧部との両方を覆う防水性のカバー部材が着脱可能に設けられているものである。
【0041】
本態様の口腔用圧力センサシートによれば、咬合力感圧部と舌圧感圧部が検出対象者の口腔内で唾液に直接接触するのを防ぐことができて、検出精度の低下や故障が防止される。しかも、着脱可能とされた防水カバーを交換することによって、口腔用圧力センサシートを簡単に再使用することができる。
【0042】
第十五の態様は、前記第一~十四の何れかの態様に係る口腔用圧力センサシートにおいて、前記測定部分には、口腔内における位置決め用のガイドが設けられているものである。
【0043】
本態様の口腔用圧力センサシートによれば、位置決め用のガイドによって、咬合力感圧部を患者の歯列に対して精度良く位置合わせしたり、舌圧用感圧部を患者の舌に対して精度良く位置合わせすることが容易となる。それ故、咬合力や舌圧の測定に際して、各感圧部を外れた位置へ咬合力や舌圧が及ぼされることを容易に回避することができて、測定精度の向上が図られる。特に本態様では、位置決め用のガイドが、口腔用圧力センサシートの測定部分に対して直接に設けられることから、別部材にガイドを設ける場合等に比して、優れた位置決め精度が実現可能になる。
【0044】
なお、本態様における位置決め用のガイドは、咬合力測定者が目視等で認識可能なものであっても良いし、咬合力被測定者が触覚等で認識可能なものであっても良い。具体的には、例えば測定部分の上側表面において、前歯が当接されるべきセンター位置を示す目印を印刷などで表示しても良いし、或いは測定部分の上側表面や下側表面において特定の歯や歯列などの位置を触覚で示す凹凸などを設けても良い。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、口腔内に挿入される柔軟なシート状の圧力センサによって咬合力を検出しつつ、測定不良の防止や測定精度の向上を図ると共に、保存や取扱い及び使用を容易に行うことのできる口腔用圧力センサシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の第一の実施形態としての口腔用圧力センサシートを装着した口腔用圧力検出装置の一例を示す平面図
【
図2】
図1におけるII-II断面の要部を拡大して示す縦断面図
【
図3】
図1におけるIII-III断面の要部を拡大して示す縦断面図
【
図4】
図1に示された口腔用圧力センサシートを構成する咬合力センサシートを示す平面図
【
図5】
図1に示された口腔用圧力センサシートを構成する舌圧センサシート示す平面図
【
図6】
図4に示された咬合力センサシートを構成する咬合力用第一の電極シートを示す平面図
【
図7】
図4に示された咬合力センサシートを構成する咬合力用第二の電極シートを示す平面図
【
図8】
図4に示された咬合力センサシートを構成する咬合力用誘電層を示す平面図
【
図9】
図4に示された咬合力センサシートを構成する咬合力用ガード電極層を示す平面図
【
図10】
図5に示された舌圧センサシートを構成する舌圧用第一の電極シートを示す平面図
【
図11】
図5に示された舌圧センサシートを構成する舌圧用第二の電極シートを示す平面図
【
図12】
図5に示された舌圧センサシートを構成する舌圧用誘電層を示す平面図
【
図13】
図5に示された舌圧センサシートを構成する舌圧用ガード電極層を示す平面図
【
図14】本発明の別の態様における口腔用圧力センサシートの要部を示す縦断面図であって、
図2に対応する図
【
図15】本発明の更に別の態様における口腔用圧力センサシートの要部を示す縦断面図であって、
図2に対応する図
【
図16】本発明の更に別の態様における口腔用圧力センサシートの要部を示す縦断面図であって、
図2に対応する図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0048】
図1~3には、口腔用圧力検出装置10の一例が示されている。かかる口腔用圧力検出装置10は、本発明の第一の実施形態としての口腔用圧力センサシート12と制御装置14を備えている。口腔用圧力センサシート12は、
図4に示される咬合力センサシート16と
図5に示される舌圧センサシート18とが、積層状態で重ね合わされており、咬合力センサシート16によって、検出対象者(患者)の上下の歯の噛み合わせによる咬合力が検出されると共に、舌圧センサシート18によって、患者の舌と上顎との接触する力である舌圧が検出される。なお、以下の説明では、原則として、上下方向とはセンサ厚さ方向であって咬合力センサシート16と舌圧センサシート18の重ね合わせ方向である
図1中の紙面直交方向をいう。また、同様に、前後方向とは測定時における患者の略前後方向となる
図1中の上下方向をいい、左右方向とは測定時における患者の略右左方向となる
図1中の左右方向をいう。
【0049】
より詳細には、口腔用圧力センサシート12は、検出対象者の口腔に差し入れられる測定部分19aと、該測定部分19aから口腔外へ延び出される接続部分19bとを備えている。口腔用圧力センサシート12は、少なくとも測定部分19aの全体が柔軟なシート状とされている。そして、咬合力センサシート16には、測定部分19aを構成する咬合力用測定シート部分20が設けられていると共に、接続部分19bを構成する咬合力用接続シート部分22が設けられている。また、舌圧センサシート18には、測定部分19aを構成する後述する舌圧用測定部分92が設けられていると共に、接続部分19bを構成する後述する舌圧用接続シート部分94が設けられている。
【0050】
咬合力センサシート16は、
図4にも示されるように、全体として柔軟で薄肉のシート状とされており、本実施形態では全体が略一定の厚さで平面的に広がった形状とされている。そして、咬合力センサシート16における咬合力用測定シート部分20は、口腔に差し入れられて平面状に広がって配置されるように、口腔の平面形状に略対応した略弓形乃至は略幅広馬蹄形の如き平面形状とされている。一方、咬合力用接続シート部分22は、患者の口先から患者の前方外部へ突出するように、咬合力用測定シート部分20の後側の湾曲頂部から所定幅で外方に延びだした略短冊形状とされている。
【0051】
そして、咬合力用測定シート部分20は、口腔に差し入れられて上下の歯間で噛み合わされることにより、噛み合わせによって及ぼされる圧力を咬合力として、電気信号をもって検出する領域としての咬合力感圧部24を有している。かかる咬合力感圧部24は、
図2に示されるように、柔軟な一対の咬合力用電極である咬合力用第一電極26と咬合力用第二電極28とが、シート厚さ方向で、誘電体からなる咬合力用誘電層30を挟んで対向配置されて構成されている。なお、
図2,3では、見易さのために、厚さを誇張して図示してある。即ち、本態様において咬合力感圧部24は、
図1,4中にグレーの網かけで示す領域であり、後述するセル状の咬合力検出素子78の配列領域をいい、隣り合う咬合力検出素子78,78間の隙間を含む。
【0052】
咬合力用測定シート部分20において、咬合力感圧部24の周りには、咬合力用第一電極26と咬合力用第二電極28が対向配置されていない周辺領域があり、かかる周辺領域は、咬合力用第一電極26に導通された咬合力用第一導電線32や咬合力用第二電極28に導通された咬合力用第二導電線34が設けられた咬合力用配線部36とされている。
【0053】
咬合力用測定シート部分20に設けられた咬合力用第一及び第二導電線32,34は、咬合力用測定シート部分20から咬合力用接続シート部分22にまで連続して延びている。咬合力用接続シート部分22は、前後に延びる長さ方向の一方の端部において、咬合力用測定シート部分20につながっていると共に、長さ方向の他方の端部には、制御装置14側の電気回路に接続されるコネクタ部38が設けられている。要するに、咬合力用接続シート部分22は、コネクタ部38と、咬合力用測定シート部分20とコネクタ部38とを接続する咬合力用接続部40とを有しており、コネクタ部38は咬合力用接続部40に比べて、幅広に形成されている。
【0054】
すなわち、咬合力用接続シート部分22には、咬合力用第一及び第二導電線32,34が、長さ方向の略全長に亘って延びて設けられている。そして、コネクタ部38では、咬合力用測定シート部分20から延びる咬合力用第一及び第二導電線32,34の接続端部が露出されており、制御装置14側のコネクタ部に対して着脱可能に接続されることで、外部の電気回路である制御装置14の側の電気回路に導通されて電気接続されるようになっている。
【0055】
ここにおいて、本実施形態では、上述の咬合力用測定シート部分20及び咬合力用接続シート部分22は、全体に亘って、複数の積層構造とされている。具体的には、咬合力用第一の電極シート42(
図6参照)と、咬合力用第二の電極シート44(
図7参照)と、咬合力用誘電層30(
図8参照)と、咬合力用ガード電極層46(
図9参照)とを、互いにシート厚さ方向で重ね合わせて一体化した積層シート構造をもって、咬合力センサシート16が形成されている。なお、本実施形態では、咬合力用第一の電極シート42や咬合力用第二の電極シート44において、後述する咬合力用第一基体48や咬合力用第二基体62が透明な部材とされており、例えば
図1や
図4,
図7においては、咬合力用第一及び第二電極26,28や咬合力用第一及び第二導電線32,34が咬合力用第二基体62を透過して示されている。したがって、咬合力用第一の電極シート42と咬合力用第二の電極シート44とを、シート厚さ方向で重ね合わせる際には、咬合力用第一及び第二の電極シート42,44は、それぞれ
図6,7に示される向きで重ね合わされる。咬合力用第一の電極シート42と咬合力用第二の電極シート44とは、例えばそれぞれシルクスクリーン印刷等の従来公知の印刷方法により形成される。
【0056】
咬合力用第一の電極シート42は、
図6に示されるように、電気絶縁性を有する咬合力用第一基体48の上面に一対の咬合力用電極(咬合力用第一及び第二電極26,28)の一方である咬合力用第一電極26が形成された構造を有している。
【0057】
咬合力用第一基体48は、ゴムや合成樹脂、エラストマなどで形成された柔軟なシート状であって、咬合力用測定シート部分20を構成する前側部分50が平面視において歯列に応じた弓形乃至は馬蹄形とされていると共に、咬合力用接続シート部分22を構成する後側部分52が前側部分50の左右中央において、所定幅でストレートに後方へ延び出した構造を有している。
【0058】
咬合力用第一電極26は、ゴム材料や合成樹脂材料にカーボンや銀などの導電性材料を混合した導電性塗料(導電性の柔軟材)などによって咬合力用第一基体48の表面に形成されており、咬合力用第一基体48の変形に追従して変形可能な柔軟性を有している。また、咬合力用第一電極26は、平面視で略長方形とされて、左右方向に長手となるように配されている。本実施形態では、咬合力用第一電極26が複数設けられており、9個の咬合力用第一電極26が前後方向で並列的に配されている。以下の説明では、咬合力用第一電極26を後側から順に26a,26b・・・26iと称するが、特に区別する必要がない場合には、単に咬合力用第一電極26と称する。
【0059】
前側の5列の咬合力用第一電極26e~26iは、それぞれ咬合力用第一基体48の前端に設けられた凹部54を挟んだ左右両側において幅寸法が略一定とされた部分を有していると共に、これら左右両側において幅寸法が略一定とされた部分は、幅寸法が小さくされた連結部56によって連結されている。各連結部56は、凹部54を迂回するように設けられている。これにより、前側の5列の咬合力用第一電極26e~26iは、左右両側に略長方形とされた部分を分かれて有しつつも、左右両側の部分が連結部56によって連結されることで、何れも一つの電極として形成されている。また、後側の4列の咬合力用第一電極26a~26dは、連結部56が設けられることなく、一定幅で左右方向に略ストレートに延びている。
【0060】
咬合力用第一電極26(咬合力用第一電極26e~26iについては左右両側において略長方形とされた部分)の幅寸法は、特に限定されないが、例えば一般的な歯の咬合面の大きさなどに基づいて設定されており、幅寸法が2mm以上且つ30mm以下であることが望ましい。更に、幅方向で隣り合う咬合力用第一電極26,26の間隔は、測定誤差や製造誤差等を考慮してできるだけ小さくすることが好ましく、例えば0.025mm以上且つ5mm以下とされることが望ましい。
【0061】
さらに、咬合力用第一電極26には、咬合力用第一導電線32が電気的に接続されている。咬合力用第一導電線32は、導電性塗料などによって咬合力用第一基体48に重ねて積層状態で形成されており、咬合力用第一電極26よりも狭幅とされている。かかる咬合力用第一導電線32は、咬合力用第一電極26の幅方向略中央を実質的に全長に亘って延びていることで咬合力用第一電極26に電気的に接続されている。また、咬合力用第一導電線32は、咬合力用第一電極26と同様の柔軟性を有しており、咬合力用第一基体48の変形に追従可能とされている。なお、咬合力用第一電極26の幾つかにおいては、咬合力用第一導電線32が引き出された方向に向かって、咬合力用第一電極26の外周縁から外方に向かって延び出す突出部が先細状に形成されており、咬合力用第一電極26の端縁部における咬合力用第一導電線32への応力集中の軽減等が図られている。また、
図2にも示されるように、本実施形態では、咬合力用第一導電線32がそれぞれ咬合力用第一電極26の下面に設けられているが、咬合力用第一電極26の上面に形成してもよい。
【0062】
各咬合力用第一導電線32は、咬合力用第一電極26の長さ方向一方の端部から長さ方向他方の端部まで連続して延びており、長さ方向他方の端部において後側に折れ曲がり、咬合力用第一の電極シート42において咬合力用測定シート部分20を構成する前側部分50の側縁部に沿って、湾曲しつつ後方に延びている。特に、咬合力用第一電極26e~26iの長さ方向中間部分には連結部56が設けられており、咬合力用第一導電線32は、咬合力用第一電極26e~26iにおける長さ方向一方の端部から長さ方向他方の端部まで、連結部56上を通過して延びている。各咬合力用第一導電線32は、咬合力用第一の電極シート42において咬合力用接続シート部分22を構成する後側部分52では後方に略ストレートに延びており、接続端部である後端部において咬合力用第一端子58に接続されている。即ち、本実施形態では、一つの咬合力用第一電極26に対して、それぞれ一つの咬合力用第一導電線32が設けられており、それら複数本の咬合力用第一導電線32が、各咬合力用第一電極26から各咬合力用第一端子58に至るまで、略並列的に並んで延びるように形成されている。
【0063】
各咬合力用第一端子58は、咬合力用接続シート部分22のコネクタ部38において外部に露出しており、口腔用圧力センサシート12を制御装置14に接続した際に、制御装置14の側の電気回路に導通接続されるようになっている。なお、各咬合力用第一電極26a~26iから咬合力用第一導電線32が延び出す側は、前後方向に並んだ咬合力用第一電極26a~26iにおいて、左右交互に設定されている。これにより、左右両側において、咬合力感圧部24の周囲に設けられて咬合力用第一導電線32が配線された周辺領域である咬合力用配線部36において隣り合う咬合力用第一導電線32の配線間距離を確保しつつ、咬合力用配線部36の幅寸法を小さく設定できるようになっている。また、咬合力用第一端子58の外部への露出は、例えば咬合力用第一基体48の上面に露出させてもよいし、咬合力用第一基体48に設けた貫通孔を通じて露出させることもできる。
【0064】
咬合力用第一電極26と咬合力用第一導電線32は、同一の材料で形成されていても良いが、本実施形態では、咬合力用第一電極26がカーボンフィラーを用いた導電性塗料で形成されていると共に、咬合力用第一導電線32が銀ペーストを用いた導電性塗料で形成されている。これにより、幅広とされた咬合力用第一電極26が安価な材料で形成されていると共に、幅狭とされた咬合力用第一導電線32がより電気抵抗の小さい材料で形成されている。
【0065】
また、咬合力用第一の電極シート42の表面(上面)には、絶縁性を有する合成樹脂からなるレジスト層60が設けられている。このレジスト層60は、咬合力用第一電極26と咬合力用第一導電線32を覆うように設けられており、本実施形態では、咬合力用第一の電極シート42の上面において、全面に亘ってレジスト層60が設けられている。レジスト層60は、例えば透明又は不透明な層として形成され得る。このレジスト層60としては、例えば一般にプリント基板に設けられるソルダーレジストを採用することができる。特に、咬合力用第一の電極シート42は柔軟で変形可能であることから、レジスト層60も柔軟に形成されて咬合力用第一の電極シート42の変形に追従して変形可能である。
【0066】
一方、咬合力用第二の電極シート44は、
図7に示すように、ゴムや合成樹脂、エラストマなどで形成された電気絶縁性を有する柔軟な咬合力用第二基体62の下面に、一対の咬合力用電極(咬合力用第一及び第二電極26,28)の他方である咬合力用第二電極28が配された構造を有している。
【0067】
咬合力用第二基体62は、全体として咬合力用第一基体48と略同じ形状とされており、咬合力用測定シート部分20を構成する前側部分64が平面視において歯列に応じた弓形乃至は馬蹄形とされていると共に、咬合力用接続シート部分22を構成する後側部分66が前側部分64の左右中央において後方へ延び出した構造を有している。
【0068】
咬合力用第二電極28は、咬合力用第一電極26と同様に、ゴム材料や合成樹脂材料にカーボンや銀などの導電性材料を混合した導電性塗料(導電性の柔軟材)などによって咬合力用第二基体62の表面に形成されており、咬合力用第二基体62の変形に追従可能な柔軟性を備えている。更に、咬合力用第二電極28は、平面視で略長方形とされて、前後方向に長手となるように配されている。本実施形態では、咬合力用第二電極28が複数設けられており、10個の咬合力用第二電極28が左右方向で並列的に配されている。以下の説明では、咬合力用第二電極28を左側から順に28a,28b・・・28jと称するが、特に区別する必要がない場合には、単に咬合力用第二電極28と称する。なお、咬合力用第二電極28の幅寸法や間隔は、例えば、咬合力用第一電極26と同様に設定される。
【0069】
さらに、咬合力用第二電極28には、咬合力用第二導電線34が電気的に接続されている。咬合力用第二導電線34は、咬合力用第一導電線32と同様に、導電性塗料などによって咬合力用第二基体62の表面に形成されており、咬合力用第二基体62の変形に追従可能な柔軟性を備えている。本実施形態の咬合力用第二導電線34は、咬合力用第二電極28よりも狭幅とされていると共に、咬合力用第二電極28に重ねて積層状態で延びていることで咬合力用第二電極28に電気的に接続されている。本実施形態では、咬合力用第二電極28が咬合力用第一電極26と同様にカーボンフィラーを用いた導電性塗料で形成されていると共に、咬合力用第二導電線34が咬合力用第一導電線32と同様に銀ペーストを用いた導電性塗料で形成されている。特に、本実施形態では、咬合力用第二導電線34がそれぞれ咬合力用第二電極28の上面に設けられているが、咬合力用第二電極28の下面に形成してもよい。
【0070】
本実施形態では、合計10本の咬合力用第二電極28a~28jが、略一定の幅寸法をもって前後方向に延びる態様で、隣り合う左右方向で互いに所定距離を隔てて並列的に設けられている。なお、左右両側の4個ずつの咬合力用第二電極28a~28d,28g~28jは、中央の凹部54を左右に避けるようにして、咬合力用第二の電極シート44において咬合力用測定シート部分20を構成する前側部分64の側縁部に沿って、後方になるにつれて左右方向中央側に傾斜していると共に、左右方向中央の2個の咬合力用第二電極28e,28fが後方にストレートに延びている。咬合力用第二導電線34は、各咬合力用第二電極28a~28jの幅方向(左右方向)の略中央に位置して長さ方向の全長に亘って延びており、各咬合力用第二電極28の前端から後方に延び出し、周辺部を外周縁に沿って咬合力用接続シート部分22を構成する後側部分66に延びている。かかる咬合力用接続シート部分22を構成する後側部分66では、複数本の咬合力用第二導電線34が互いに平行とされて後方にストレートに延びている。各咬合力用第二導電線34の接続端部である後端部には、咬合力用第二端子68が接続されており、咬合力用接続シート部分22のコネクタ部38において外部に露出している。また、咬合力用第二端子68の外部への露出は、例えば咬合力用第二基体62の下面に露出させてもよいし、咬合力用第二基体62に設けた貫通孔を通じて露出させることもできる。これにより、口腔用圧力センサシート12を制御装置14に接続した際に、各咬合力用第二端子68が、制御装置14側の電気回路に導通接続されるようになっている。
【0071】
また、咬合力用第二の電極シート44の表面(下面)には、絶縁性を有する合成樹脂からなるレジスト層70が設けられている。このレジスト層70は、咬合力用第一の電極シート42におけるレジスト層60と同様に、咬合力用第二電極28と咬合力用第二導電線34を覆うように設けられており、本実施形態では、咬合力用第二の電極シート44の下面において、全面に亘ってレジスト層70が設けられている。レジスト層70は、例えば透明又は不透明な層として形成され得る。
【0072】
さらに、本実施形態では、口腔用圧力センサシート12の測定部分19aにおいて、口腔内で口腔用圧力センサシート12を位置決めするためのガイド72が設けられている。このガイド72は、例えば咬合力センサシート16の外面から上下方向の少なくとも一方で外方に突出して設けられており、本実施形態では、咬合力用第二の電極シート44の上面から上方に突出している。特に、本実施形態では、ガイド72が、咬合力用第二の電極シート44の左右方向中央において、咬合力用第二電極28よりも後方に設けられている。ガイド72の形状は限定されるものではないが、例えばある程度の高さ寸法を有するブロック状に形成される。このようなガイド72が設けられることで、口腔用圧力センサシート12を患者の口腔内に差し入れた際に、患者の上側の前歯、又は上唇とガイド72とが当接して、それ以上の口腔用圧力センサシート12の挿入が制限されると共に、略中央位置が触覚や視覚を通じて認識可能となる。その結果、患者が自覚的に又は測定者などによって他覚的に、口腔用圧力センサシート12を口腔において適切な位置に位置合わせすることが可能となる。これにより、咬合力及び舌圧の検出時に、咬合力感圧部24に咬合力をより確実に及ぼすことができると共に、後述する舌圧感圧部100に舌圧をより確実に及ぼすことができる。
【0073】
上記の如き咬合力用第一の電極シート42と咬合力用第二の電極シート44の対向面間には、
図2に示されるように咬合力用誘電層30が配されており、咬合力用第一の電極シート42と咬合力用第二の電極シート44とが、咬合力用誘電層30を挟んでシート厚さ方向に重ね合わされている。咬合力用誘電層30は、ゴムや合成樹脂などの電気絶縁性の材料で形成されたシート状とされており、厚さ方向である上下方向において弾性的な圧縮変形が許容されている。本実施形態の咬合力用誘電層30は、
図8に示されるように、平面視において咬合力用第一の電極シート42や咬合力用第二の電極シート44と略対応した外周形状と大きさを有しており、咬合力用測定シート部分20を構成する前側部分74が弓形乃至は馬蹄形とされていると共に、咬合力用接続シート部分22を構成する後側部分76が前側部分74の左右中央において後方へ延び出した構造を有している。また、本実施形態の咬合力用誘電層30は、シート面方向(水平方向であって、上下方向に直交する方向)に広がる平板形状であり、シート厚さ寸法(上下方向寸法)が全体に亘って略一定である。
【0074】
特に、本実施形態では、咬合力用第一の電極シート42と咬合力用第二の電極シート44と咬合力用誘電層30とが、咬合力用測定シート部分20を構成する前側部分50,64,74においてそれぞれ略全面に亘って重ね合わされている。また、咬合力用誘電層30の後端は、咬合力用測定シート部分20よりも後方、具体的には咬合力用接続シート部分22における咬合力用接続部40の前後方向中間部分においてコネクタ部38の近くに位置している。なお、
図3において、咬合力用誘電層30よりも後方の部分では、咬合力用第一の電極シート42と咬合力用第二の電極シート44とが、上下方向で相互に離隔しているが、
図2や
図3は口腔用圧力センサシート12の縦断面をモデル的に示すものであり、例えば咬合力用第一の電極シート42と咬合力用第二の電極シート44とが後端部において相互に固着されることで、咬合力用第一の電極シート42と咬合力用第二の電極シート44とは相互に離隔していなくてもよい。
【0075】
咬合力用誘電層30は、好適には、多数の気泡を有する多孔質の弾性体とされており、後述する咬合力検出素子78における静電容量を大きく得ることが可能とされていると共に、厚さ方向のヤング率が小さくされている。咬合力用誘電層30は、具体的には、例えば、ポリウレタンやポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種合成樹脂の発泡体によって形成される。
【0076】
そして、咬合力用第一の電極シート42と咬合力用第二の電極シート44とが咬合力用誘電層30を挟んで相互に重ね合わされることにより、
図1,2,4に示すように、咬合力用第一電極26と咬合力用第二電極28が咬合力用誘電層30を挟んで交差対向するように配されており、それら咬合力用第一電極26(咬合力用第一電極26e~26iは、連結部56を除く左右両側部分)と咬合力用第二電極28の各交差対向部分が咬合力検出素子78とされている。本実施形態では、各咬合力用第一電極26a~26iが略左右方向に延びると共に、各咬合力用第二電極28a~28jが略前後方向に延びており、且つ各咬合力用第一電極26a~26iと各咬合力用第二電極28a~28jがそれぞれ略等しい幅寸法とされていることから、咬合力検出素子78が、平面視において略正方形や略菱形の形状をもって複数形成されている。
【0077】
各咬合力検出素子78は、何れも、導電体である咬合力用第一電極26と咬合力用第二電極28の対向間に誘電率の大きな咬合力用誘電層30が配されて、それぞれコンデンサを構成している。また、咬合力用誘電層30の厚さ方向両面に咬合力用第一電極26と咬合力用第二電極28の各一方が重ね合わされていることから、咬合力用誘電層30が咬合力用第一電極26と咬合力用第二電極28の対向方向において弾性的な圧縮変形を許容されている。そして、咬合力検出素子78において、咬合力用第一電極26と咬合力用第二電極28の間に検出用電圧を印加した状態で咬合力用第一電極26と咬合力用第二電極28の対向間距離が変化することにより、咬合力検出素子78の静電容量が変化せしめられるようになっている。本実施形態では、複数の咬合力検出素子78が、歯列に略対応する略幅広のU字状に配されている。
【0078】
好適には、咬合力検出素子78は、前後寸法と左右寸法がそれぞれ4mm~10mmとされていることが望ましい。また、咬合力検出素子78は、好適には全体として4~256個が設けられる。さらに、歯列直交方向において特に中央の前歯対応部分における前後方向と両側の奥歯対応部分における左右方向とにおいては、咬合力検出素子78が、それぞれ4つ以上並んで配されることが好ましく、咬合力検出素子78が配置された検出領域の有効幅寸法が、それら中央の前後方向と両側の左右方向において何れも20mm以上とされることが好ましい。
【0079】
また、咬合力用第一の電極シート42における咬合力用誘電層30への重ね合わせ面と反対側の面(下面)、即ち口腔への装用状態で舌側となる面側(下側)には、咬合力用ガード電極層46が重ね合わされている。咬合力用ガード電極層46は、
図9に示されるように、咬合力用第一及び第二基体48,62と同様の形状、且つ同様の材料で形成された柔軟な咬合力用第三基体80の上面にガード電極82が形成された構造を有している。ガード電極82は、咬合力用第一及び第二電極26,28と同様に導電性材料で形成されて柔軟性を備えており、上下方向の投影において複数の咬合力検出素子78(咬合力感圧部24)の略全体を覆う形状とされている。すなわち、本実施形態では、ガード電極82が略U字状である。
【0080】
さらに、咬合力用ガード電極層46には、ガード電極82に接続される接地配線84が重ね合わされた積層状態で形成されている。この接地配線84は、ガード電極82に電気的に接続されていると共に、ガード電極82から後方へ延び出しており、咬合力用第三基体80の後端部に設けられた接地端子86に接続されている。なお、接地配線84は、好適には、ガード電極82よりも電気抵抗が小さい材料で形成されて、ガード電極82上にも形成されている。本実施形態では、咬合力用ガード電極層46上にもレジスト層88が設けられており、特に本実施形態では、咬合力用ガード電極層46の表面(上面)の全面に亘ってレジスト層88が設けられている。レジスト層88は、例えば透明又は不透明な層として形成され得る。
【0081】
更にまた、咬合力センサシート16のコネクタ部38には、補強シート90が重ね合わされて固着されている。本実施形態では、
図3に示されるように、補強シート90が、咬合力用第二基体62の後端部における外面(上面)に重ね合わされて固着されており、平面視において咬合力用第一端子58、咬合力用第二端子68、接地端子86をそれぞれ覆うと共に、咬合力用誘電層30と前後方向で部分的に重なっている。補強シート90は、咬合力用第一及び第二の電極シート42,44の後端部と略同様の形状とされており、好適には、咬合力用第一及び第二基体48,62等よりも大きな強度を有する硬質の合成樹脂により形成される。本実施形態では、コネクタ部38に制御装置14が接続されることから、補強シート90が絶縁性を有する合成樹脂により形成されている。
【0082】
かかる補強シート90が設けられることにより、咬合力用接続シート部分22のコネクタ部38において、咬合力用第二の電極シート44に設けられた咬合力用第二導電線34を補強することができる。また、補強シート90は、前後方向において咬合力用誘電層30とオーバーラップしており、補強シート90は、咬合力用誘電層30を介して、咬合力用第一の電極シート42に設けられた咬合力用第一導電線32を補強している。そして、これら相互にオーバーラップする咬合力用誘電層30と補強シート90によって、咬合力センサシート16の全長に亘って咬合力用第一及び第二導電線32,34を補強することができる。また、咬合力用誘電層30と補強シート90との境界部分における歪や応力の集中緩和も図られている。
【0083】
舌圧センサシート18は、
図5にも示されるように、全体として柔軟で薄肉のシート状とされている。舌圧センサシート18の前方部分には、口腔用圧力センサシート12の測定部分19aを構成する舌圧用測定部分92が設けられていると共に、舌圧センサシート18の後方部分には、口腔用圧力センサシート12の接続部分19bを構成する舌圧用接続シート部分94が設けられている。そして、これら舌圧用測定部分92と舌圧用接続シート部分94とが、左右両側において一対の連結部96,96によって連結されている。
【0084】
舌圧センサシート18における舌圧用測定部分92は、平面視において略角丸の矩形状とされている。また、舌圧用接続シート部分94は、平面視において咬合力用接続シート部分22と同様の形状とされており、前後方向にストレートに延びている。具体的には、舌圧用接続シート部分94は、幅寸法(左右方向寸法)が略一定とされた舌圧用接続部97と、当該舌圧用接続部97よりも幅広とされたコネクタ部98を備えている。また、連結部96,96は、咬合力センサシート16における咬合力用測定シート部分20の左右両側縁部に対応する形状とされており、舌圧用接続シート部分94の前端からある程度の幅寸法をもって左右方向外方に湾曲しながら前方に延出して、連結部96,96の前端において左右方向内方に折れ曲がり舌圧用測定部分92の前端に接続している。
【0085】
そして、舌圧用測定部分92は、口腔に差し入れられて舌を上顎に押し付けるようにして舌と上顎との間で挟まれることにより及ぼされる圧力を舌圧として、電気信号をもって検出する領域としての舌圧感圧部100を有している。かかる舌圧感圧部100は、
図2に示されるように、柔軟な一対の舌圧用電極である舌圧用第一電極102と舌圧用第二電極104とが、シート厚さ方向で、誘電体からなる弾性層としての舌圧用誘電層106を挟んで対向配置されることで構成されている。
【0086】
舌圧用第一電極102に接続された舌圧用第一導電線108と、舌圧用第二電極104に接続された舌圧用第二導電線110は、連結部96,96上を経由して、舌圧用接続シート部分94にまで連続して延びている。舌圧用接続シート部分94には、舌圧用第一及び第二導電線108,110が、長さ方向の略全長に亘って延びている。そして、コネクタ部98では、舌圧用測定部分92から延びる舌圧用第一及び第二導電線108,110の接続端部が露出されており、制御装置14側のコネクタ部に対して着脱可能に接続されることで、外部の制御装置14の側に電気回路に導通されて電気接続されるようになっている。
【0087】
本実施形態では、舌圧用測定部分92及び舌圧用接続シート部分94は、複数の層による積層構造とされている。具体的には、舌圧用第一の電極シート112(
図10参照)と、舌圧用第二の電極シート114(
図11参照)と、舌圧用誘電層106(
図12参照)と、舌圧用ガード電極層116(
図13参照)とを、互いにシート厚さ方向で重ね合わせて一体化した積層シート構造をもって、舌圧センサシート18が形成されている。舌圧用第一の電極シート112や舌圧用第二の電極シート114において、後述する舌圧用第一基体118や舌圧用第二基体128は、咬合力用第一基体48や咬合力用第二基体62と同様に、透明な部材とされている。舌圧用第一の電極シート112と舌圧用第二の電極シート114とは、例えばそれぞれシルクスクリーン印刷等の従来公知の印刷方法により形成される。
【0088】
舌圧用第一の電極シート112は、
図10に示されるように、電気絶縁性を有する舌圧用第一基体118の上面に一対の舌圧用電極(舌圧用第一及び第二電極102,104)の一方である舌圧用第一電極102が形成された構造を有している。舌圧用第一基体118は、例えば咬合力用第一基体48や咬合力用第二基体62と同様の材質により形成され得る。また、舌圧用第一電極102及び舌圧用第一導電線108は、例えばそれぞれ咬合力用第一電極26及び咬合力用第一導電線32と同様の材質により形成され得る。
【0089】
舌圧用第一基体118は、舌圧用測定部分92を構成する前側部分120と、舌圧用接続シート部分94を構成する後側部分122とが、一方(左方)の連結部96(第一連結部96a)で連結された構造を有している。前側部分120には、舌圧用第一電極102が重ね合わされて固着されている。
【0090】
舌圧用第一電極102は、咬合力用第一電極26や咬合力用第二電極28と同様の材質により形成されており、舌圧用第一基体118の表面(上面)に形成されている。本実施形態では、舌圧用第一電極102は、略角丸の矩形状とされており、一つの電極により構成されている。また、舌圧用第一導電線108は、舌圧用第一電極102から延びて、第一連結部96a上を通過して舌圧用第一基体118の後端部に至っている。舌圧用第一導電線108は、舌圧用第一基体118の後側部分122において略ストレートに延びており、接続端部である後端部において舌圧用第一端子124に接続されている。舌圧用第一端子124は、舌圧用接続シート部分94のコネクタ部98において外部に露出しており、口腔用圧力センサシート12を制御装置14に接続した際に、制御装置14の側の電気回路に導通接続されるようになっている。
【0091】
また、舌圧用第一の電極シート112の表面(上面)には、絶縁性を有する合成樹脂からなるレジスト層126が設けられている。このレジスト層126は、舌圧用第一電極102と舌圧用第一導電線108を覆うように設けられており、本実施形態では、舌圧用第一の電極シート112の上面において、全面に亘ってレジスト層126が設けられている。レジスト層126は、例えば透明又は不透明な層として形成され得る。
【0092】
舌圧用第二の電極シート114は、
図11に示されるように、電気絶縁性を有する舌圧用第二基体128の上面に一対の舌圧用電極(舌圧用第一及び第二電極102,104)の他方である舌圧用第二電極104が形成された構造を有している。舌圧用第二基体128は、例えば舌圧用第一基体118と同様の材質により形成され得る。また、舌圧用第二電極104及び舌圧用第二導電線110は、例えばそれぞれ舌圧用第一電極102及び舌圧用第一導電線108と同様の材質により形成され得る。
【0093】
舌圧用第二基体128は、平面視において舌圧用第一基体118を左右反転した形状であり、舌圧用測定部分92を構成する前側部分130と、舌圧用接続シート部分94を構成する後側部分132とが、他方(右方)の連結部96(第二連結部96b)で連結された構造を有している。前側部分130には、舌圧用第二電極104が重ね合わされて固着されている。
【0094】
舌圧用第二電極104は、舌圧用第一電極102と同様の形状及び大きさで形成されており、且つ舌圧用第一電極102と同様の材質により形成されている。舌圧用第二電極104は、舌圧用第二基体128の表面(下面)に形成されている。本実施形態では、舌圧用第二電極104が、一つの電極により構成されている。また、舌圧用第二導電線110は、舌圧用第二電極104から延びて、第二連結部96b上を通過して舌圧用第二基体128の後端部に至っている。舌圧用第二導電線110は、舌圧用第二基体128の後側部分132において略ストレートに延びており、接続端部である後端部において舌圧用第二端子134に接続されている。舌圧用第二端子134は、舌圧用接続シート部分94のコネクタ部98において外部に露出しており、口腔用圧力センサシート12を制御装置14に接続した際に、制御装置14の側の電気回路に導通接続されるようになっている。
【0095】
また、舌圧用第二の電極シート114の表面(下面)には、絶縁性を有する合成樹脂からなるレジスト層136が設けられている。このレジスト層136は、舌圧用第二電極104と舌圧用第二導電線110を覆うように設けられており、本実施形態では、舌圧用第二の電極シート114の上面において、全面に亘ってレジスト層136が設けられている。レジスト層136は、例えば透明又は不透明な層として形成され得る。
【0096】
上記の如き舌圧用第一の電極シート112と舌圧用第二の電極シート114の対向面間には、
図2に示されるように舌圧用誘電層106が配されており、舌圧用第一の電極シート112と舌圧用第二の電極シート114とが、舌圧用誘電層106を挟んでシート厚さ方向に重ね合わされている。舌圧用誘電層106は、咬合力用誘電層30と同様の材質により形成されており、シート厚さ方向である上下方向において弾性的な圧縮変形が可能とされている。本実施形態の舌圧用誘電層106は、
図12に示されるように、平面視において後方の角部が丸められた矩形状とされており、舌圧用第一及び第二電極102,104と略対応した大きさで、シート面方向(水平方向であって、上下方向に直交する方向)に広がっている。また、本実施形態の舌圧用誘電層106は平板形状であり、シート厚さ寸法(上下方向寸法)が全体に亘って略一定とされている。
【0097】
本実施形態では、舌圧用誘電層106が、上下両面において、それぞれ舌圧用第一の電極シート112の前側部分120と舌圧用第二の電極シート114の前側部分130と、略全面に亘って重ね合わされて固着されており、舌圧センサシート18における舌圧用測定部分92(舌圧感圧部100)が構成されている。また、舌圧用第一の電極シート112の後側部分122と舌圧用第二の電極シート114の後側部分132とが、略全面に亘って重ね合わされて固着されている。
【0098】
本実施形態の舌圧用誘電層106は、咬合力用誘電層30と同様に、合成樹脂の発泡体によって形成されているが、舌圧用誘電層106の感圧感度が、咬合力用誘電層30の感圧感度に比して高くされている。舌圧用誘電層106の感圧感度を咬合力用誘電層30の感圧感度に比して高くする方法は限定されるものではないが、本実施形態では、舌圧用誘電層106の厚さ寸法T
1(
図2参照)が、咬合力用誘電層30の厚さ寸法T
2(
図2参照)よりも大きくされている。また、本実施形態では、舌圧用誘電層106の弾性反発力が、咬合力用誘電層30の弾性反発力に比べて小さくされており、例えば舌圧用誘電層106の発泡率が、咬合力用誘電層30の発泡率に比べて大きくされている。これらによって、舌圧用誘電層106の感圧感度が、咬合力用誘電層30の感圧感度に比して高くされている。
【0099】
そして、舌圧用第一の電極シート112と舌圧用第二の電極シート114とが舌圧用誘電層106を挟んで相互に重ね合わされることにより、
図2に示すように、舌圧用第一電極102と舌圧用第二電極104とが舌圧用誘電層106を挟んで対向するように配されており、舌圧用第一電極102と舌圧用第二電極104との対向部分が舌圧検出素子138とされている。即ち、本実施形態では、略矩形状とされた舌圧検出素子138が一つのセンシング領域(セル状)をもって形成されている。
【0100】
舌圧検出素子138は、咬合力検出素子78と同様に、導電体である舌圧用第一電極102と舌圧用第二電極104の対向間に誘電率の大きな舌圧用誘電層106が配されていることから、静電容量型の舌圧感圧部100が構成されている。
【0101】
また、舌圧用第一の電極シート112における舌圧用誘電層106への重ね合わせ面と反対側の面(下面)、即ち口腔への装用状態で舌側となる面側(下側)には、舌圧用ガード電極層116が重ね合わされている。舌圧用ガード電極層116は、
図13に示されるように、舌圧用第一基体118と同様の形状、且つ同様の材料で形成された柔軟な舌圧用第三基体140の上面において、舌圧用第一電極102と略等しい位置にガード電極142が設けられている。ガード電極142は、舌圧用第一及び第二電極102,104と同様に導電性材料で形成されて柔軟性を有しており、上下方向の投影において舌圧検出素子138(舌圧感圧部100)の略全体を覆う形状とされている。
【0102】
さらに、舌圧用ガード電極層116には、ガード電極142に接続される接地配線144が重ね合わされた積層状態で形成されている。この接地配線144は、ガード電極142に電気的に接続されていると共に、ガード電極142から後方へ延び出しており、舌圧用第三基体140の後端部に設けられた接地端子146に接続されている。なお、接地配線144は、好適には、ガード電極142よりも電気抵抗が小さい材料で形成されて、ガード電極142上にも形成されている。本実施形態では、舌圧用ガード電極層116上にもレジスト層148が設けられており、特に本実施形態では、舌圧用ガード電極層116の表面(上面)の全面に亘ってレジスト層148が設けられている。レジスト層148は、例えば透明又は不透明な層として形成され得る。
【0103】
更にまた、舌圧センサシート18のコネクタ部98には、補強シート150が重ね合わされて固着されている。この補強シート150は、咬合力センサシート16のコネクタ部38に重ね合わされる補強シート90と略同じ形状、且つ略同じ大きさで形成されており、
図3に示されるように、舌圧用ガード電極層116の後端部における外面(下面)に重ね合わされて固着されている。また、補強シート150は、平面視において舌圧用第一端子124、舌圧用第二端子134、接地端子146をそれぞれ覆うと共に、補強シート90と略同じ形状、且つ略同じ大きさで形成されていることから、咬合力用誘電層30と前後方向で部分的に重なっている。かかる補強シート150は、咬合力センサシート16における補強シート90と同様の材質により形成され得る。
【0104】
上記の如き咬合力用第一の電極シート42、咬合力用第二の電極シート44、咬合力用誘電層30、咬合力用ガード電極層46、補強シート90が重ね合わされて固着されることで、本実施形態の咬合力センサシート16が構成されている。また、舌圧用第一の電極シート112、舌圧用第二の電極シート114、舌圧用誘電層106、舌圧用ガード電極層116、補強シート150が重ね合わされて固着されることで、本実施形態の舌圧センサシート18が構成されている。そして、これら咬合力センサシート16と舌圧センサシート18とが重ね合わされて固着されることで、本実施形態の口腔用圧力センサシート12が構成されている。本実施形態では、
図2にも示されるように、咬合力センサシート16の下方に舌圧センサシート18が位置しており、咬合力センサシート16の下面と舌圧センサシート18の上面とが相互に重ね合わされて固着されるようになっている。なお、口腔用圧力センサシート12を構成する各層及び/又は各シートは、接着や溶着等、従来公知の方法で固着され得る。
【0105】
特に、本実施形態では、咬合力センサシート16の凹部54と対応する位置に、舌圧センサシート18の舌圧用測定部分92が位置している。具体的には、略U字状の領域とされた咬合力感圧部24(複数の咬合力検出素子78)の内方領域に舌圧用測定部分92(舌圧感圧部100)が位置しており、咬合力感圧部24と舌圧感圧部100が、平面視において相互に重ならないようにシート面方向(水平方向であって、上下方向に直交する方向)における相互の位置関係を規定されて設けられている。また、
図1,2にも示されるように、平面視において、舌圧用測定部分92の左右両側部分が、咬合力センサシート16において凹部54の左右両側に位置する咬合力用配線部36と重なっている。要するに、舌圧用測定部分92の左右両側部分が、咬合力用ガード電極層46を有する咬合力センサシート16によって上方から覆われている。これにより、咬合力感圧部24に対して舌圧感圧部100が、口腔への装用状態で舌側となる面側(下側)に位置するように、シート厚さ方向でずれて配設されている。なお、例えば咬合力センサシート16の咬合力用ガード電極層46において、前方部分の凹部54を設けないことで、舌圧用測定部分92の上面を全面に亘って咬合力用ガード電極層46に重ね合わせて、舌圧用測定部分92の全体を咬合力用ガード電極層46で覆ってもよい。
【0106】
また、本実施形態では、口腔用圧力センサシート12の後端部において、咬合力センサシート16におけるコネクタ部38と舌圧センサシート18におけるコネクタ部98とを上下両側から挟み込んで固着する硬質の保持部材152が取り付けられ得る。この保持部材152を制御装置14に接続することによって、コネクタ部38における咬合力用第一端子58、咬合力用第二端子68、接地端子86、コネクタ部98における舌圧用第一端子124、舌圧用第二端子134、接地端子146が制御装置14に対して電気的に接続されるようになっている。例えば、
図3において咬合力用誘電層30よりも後方に位置して上下のレジスト層60,70の対向面間に形成された内部空間を、コネクタ部38において後方に開口させると共に、各レジスト層60,70に設けた貫通窓を通じて当該内部空間へ、例えば咬合力用第一及び第二導電線32,34や接地端子86を露出させることにより、制御装置14側のコネクタ部分に形成された接続端子を当該内部空間へ差し入れて、咬合力用第一及び第二導電線32,34や接地端子86へ導通させるようにしてもよい。
【0107】
なお、口腔用圧力センサシート12において咬合力感圧部24と舌圧感圧部100を含む測定部分19aは、例えば防水カバー154によって覆われる。防水カバー154は、水の通過を防ぐ耐水性や口腔内環境に対する耐食性などを有するとともに口腔内に入れても人体に害がない合成樹脂材料などで形成されている。具体的には、例えば、防水カバー154は、略四角形とされた上下のプラスチックフィルムを外周の3辺において相互に溶着して袋状としたものであって、測定部分19aに前側から着脱可能に被せられるようになっている。本実施形態の防水カバー154は、測定部分19aの全体を覆うようになっているが、例えば、測定部分19aだけでなく、接続部分19bの略全体まで覆う構造としても良い。また、防水カバー154は、測定部分19aに対して容易に着脱可能とされており、例えば、防水カバー154で覆われた測定部分19aを検出対象者の口腔から取り出した後で、防水カバー154を新しいものと交換すれば、測定部分19aの清潔さを保ちながら口腔用圧力センサシート12を簡単に再使用することができる。
【0108】
また、口腔用圧力センサシート12におけるコネクタ部38,98は、
図1に示すように、制御装置14に接続される。制御装置14には、例えばコネクタ部38に位置する咬合力用第一端子58、咬合力用第二端子68、接地端子86や、コネクタ部98に位置する舌圧用第一端子124、舌圧用第二端子134、接地端子146が接続される。接地端子86,146が制御装置14に接続されることで、ガード電極82,142が接地されて、ガード電極82,142が基準電位、又は重ね合わされた咬合力用及び舌圧用第一電極26,102と同一電位に保たれるようになっていてもよい。
【0109】
さらに、制御装置14は、咬合力用第一及び第二導電線32,34と舌圧用第一及び第二導電線108,110によって咬合力用第一及び第二電極26,28や舌圧用第一及び第二電極102,104と接続されており、咬合力用第一電極26と咬合力用第二電極28との間、及び舌圧用第一電極102と舌圧用第二電極104との間に静電容量測定用の電圧を印加する電源装置と、咬合力検出素子78及び舌圧検出素子138における静電容量の変化量を検出する検出手段と、検出手段による静電容量の検出結果に基づいて咬合力及び舌圧を算出する算出手段とを備えていてもよい。なお、咬合力検出素子78において検出された検出結果から咬合力を算出する手段と、舌圧検出素子138において検出された検出結果から舌圧を算出する手段とは、相互に異なっていてもよい。或いは、咬合力検出素子78における静電容量の変化量を検出する検出手段と、舌圧検出素子138における静電容量の変化量を検出する検出手段とが、相互に異なっていてもよい。
【0110】
以下に、本実施形態の口腔用圧力センサシート12を備える口腔用圧力検出装置10を用いた検出対象者における咬合力及び舌圧の検出方法の具体的な一例について説明する。なお、咬合力及び舌圧の検出方法は、以下に記載の方法に限定されるものではない。
【0111】
まず、咬合力センサシート16及び舌圧センサシート18のコネクタ部38,98を制御装置14に接続すると共に、測定部分19aに対して防水カバー154を装着する。そして、口腔用圧力センサシート12の測定部分19aを検出対象者の口腔内における上下の歯の間に差し入れて、U字状に配された複数の咬合力検出素子78を検出対象者の歯列に対応する位置に保持すると共に、舌圧感圧部100(舌圧検出素子138)を検出対象者の舌の上方に配置する。かかる口腔用圧力センサシート12の位置決めは、例えば測定部分19aに設けられたガイド72によって達成される。なお、ガイド72は、前述のような口腔用圧力センサシート12の外方に突出する突部の他、例えば咬合力用第二基体62の上面に印刷される目盛やマーク等によって構成されてもよい。
【0112】
口腔用圧力センサシート12は、咬合力用ガード電極層46及び舌圧用ガード電極層116が検出対象者の舌側となる向きで検出対象者の口腔内に差し入れられる。これにより、検出対象者の舌が測定部分19aに接触することによるノイズが、ガード電極82,142によって低減されて、検出精度の向上が図られる。
【0113】
次に、制御装置14の電源を入れて、制御装置14の電源装置による咬合力用第一及び第二電極26,28間と舌圧用第一及び第二電極102,104間への検出用電圧の印加を開始すると共に、患者に対して咬合や舌圧の運動を適宜に指示しつつ、制御装置14の検出手段による咬合力検出素子78及び舌圧検出素子138の静電容量の検出と、検出手段が検出した静電容量値に基づいた算出手段による咬合力及び舌圧の算出とを、開始する。なお、咬合力用第一及び第二電極26,28間への検出用電圧の印加から咬合力の算出までと、舌圧用第一及び第二電極102,104間への検出用電圧の印加から舌圧の算出までとは、同時に行われてもよいし、何れか任意の一方から順次行われるようになっていてもよく、また、複数回の繰り返しの測定を行うことで精度の向上を図ることも可能である。
【0114】
咬合力の測定に際しては、検出対象者に口腔用圧力センサシート12を噛むように指示をして、検出対象者の咬合力を咬合力センサシート16の咬合力感圧部24に作用させる。そして、検出対象者が咬合力センサシート16の咬合力感圧部24を噛むことにより、咬合力感圧部24の咬合力用誘電層30が検出対象者の上下の歯の間で上下に圧縮されると共に、咬合力用誘電層30を挟んで上下各一方側に設けられた咬合力用第一電極26と咬合力用第二電極28が、作用した咬合力に応じて相互に接近変位せしめられる。これにより、咬合力が作用した咬合力検出素子78において、静電容量が大きくなる。
【0115】
同様に、舌圧の検出に際しては、検出対象者に口腔用圧力センサシート12に舌を押し付けるように指示をして、検出対象者の舌圧を舌圧センサシート18の舌圧感圧部100に作用させる。そして、検出対象者が舌圧センサシート18の舌圧感圧部100に舌を押し付けることにより、舌圧感圧部100の舌圧用誘電層106が検出対象者の舌と上顎の間で上下に圧縮されると共に、舌圧用誘電層106を挟んで上下各一方側に設けられた舌圧用第一電極102と舌圧用第二電極104が、作用した咬合力に応じて相互に接近変位せしめられる。これにより、舌圧が作用した舌圧検出素子138において、静電容量が大きくなる。
【0116】
かかる静電容量の変化を制御装置14における検出手段によって検出すると共に、検出手段によって検出された静電容量の変化を、制御装置14における咬合力算出手段や舌圧算出手段により、咬合力検出素子78及び舌圧検出素子138に作用した咬合力及び舌圧として算出する。このように算出された咬合力や舌圧を、例えば制御装置14に接続されたモニタ等に表示したり印刷等して外部に出力することで、口腔用圧力検出装置10により咬合力や舌圧を検出することができる。即ち、一対の咬合力用電極(咬合力用第一及び第二電極26,28)の対向方向に及ぼされる咬合力が、一対の咬合力用電極(咬合力用第一及び第二電極26,28)の対向距離の変化による静電容量の変化に基づいて電気信号として検出されるようになっている。また、一対の舌圧用電極(舌圧用第一及び第二電極102,104)の対向方に及ぼされる舌圧が、一対の舌圧用電極(舌圧用第一及び第二電極102,104)の対向距離の変化による静電容量の変化に基づいて電気信号として検出されるようになっている。
【0117】
なお、対をなす咬合力用電極によって検出される咬合力の出力信号と、対を為す舌圧用電極によって検出される舌圧の出力信号は、各別の出力端子から取り出され、制御装置14において互いに異なる処理回路に入力されることが望ましい。そして、咬合力の出力信号は咬合力の処理回路によって、舌圧の出力信号は舌圧の処理回路によって、互いに異なる演算処理を施す互いに異なる算出手段を経て、咬合力と舌圧が算出されることが望ましい。これにより、測定値の単位が異なる程に大きさが相違する咬合力と舌圧とを、それぞれに適した演算式で処理することで精度や効率の向上などが図られ得る。
【0118】
以上の如き構造とされた本実施形態の口腔用圧力センサシート12によれば、測定部分19aの全体が柔軟なシート状とされていることから、測定部分19aを噛んだり測定部分19aに舌を押し付けることにより、咬合力と舌圧の両方を容易に測定することができる。特に、舌圧の測定に際して位置ずれ等のおそれが少なく、測定不良の防止や測定精度の向上が図られる。また、かさばることもなく、口腔内への挿入や取外しも容易とされることから、保存や取扱い及び使用等の効率を向上させることができる。
【0119】
さらに、舌圧感圧部100は、シート厚さ方向で弾性変形可能な舌圧用誘電層106を有していることから、口腔内の形状に対応して変形することが可能であり、これにより、患者の違和感を軽減したり、舌圧の測定精度の向上を図ることができる。更にまた、舌圧用誘電層106がシート面方向に広がる平板形状であることから、舌をより広い領域に亘って接触させることができて、舌圧の測定精度の更なる向上を図ることができる。
【0120】
また、本実施形態では、咬合力を検出する咬合力感圧部24と舌圧を検出する舌圧感圧部100の何れもが、静電容量型とされている。これにより、咬合力感圧部24と舌圧感圧部100をそれぞれ咬合力と舌圧の検出に適した形状としつつ、咬合力と舌圧とを精度良く検出することができる。換言すれば、咬合力感圧部24と舌圧感圧部100をそれぞれ静電容量型とすることで、咬合力と舌圧とを精度良く検出することができるように、咬合力感圧部24及び舌圧感圧部100の形状を適切に設定することができる。
【0121】
なお、一般に、舌圧は咬合力に比して十分に小さい。したがって、咬合力及び舌圧を同時に又は順次に測定する場合において、咬合力用誘電層30の感圧感度に比して、舌圧用誘電層106の感圧感度を高くすることで、咬合力を検出する際に高感度になり過ぎてノイズの影響が大きくなったり、舌圧を検出する際に低感度になり過ぎて十分にシグナルが得られないというおそれが低減され得る。なお、かかる咬合力用誘電層30及び舌圧用誘電層106における感度の設定は、例えば舌圧用誘電層106の厚さ寸法T1を、咬合力用誘電層30の厚さ寸法T2より大きくしたり、舌圧用誘電層106の弾性反発力を咬合力用誘電層30の弾性反発力より小さくする(舌圧用誘電層106の発泡率を咬合力用誘電層30の発泡率よりも大きくする)ことなどによって、実現することができる。
【0122】
また、本実施形態では、測定部分19aを口腔内に差し入れた状態において、舌圧感圧部100が、咬合力感圧部24に対して舌側(下方)に位置するようになっている。これにより、咬合力及び舌圧の測定時において、咬合力と舌圧を同時に又は順次に測定する際にも、患者の舌と舌圧感圧部が接触し易くなって、舌圧測定の際の効率や精度の向上が図られる。
【0123】
さらに、本実施形態の口腔用圧力センサシート12には、防水カバー154が着脱可能とされており、口腔用圧力センサシート12の使用時には、測定部分19a(咬合力感圧部24及び舌圧感圧部100)が防水カバー154で覆われるようになっている。これにより、口腔用圧力センサシート12が汚れることが防止されて、防水カバー154を交換することで、複数の患者に対して口腔用圧力センサシート12を繰り返し使用することも可能となる。
【0124】
更にまた、本実施形態では、口腔用圧力センサシート12を口腔内で位置決めするガイド72が設けられている。これにより、咬合力感圧部24をより確実に噛むことができたり、舌圧感圧部100に舌をより確実に押し付けることができる。また、咬合力を測定する際に、咬合力感圧部24を外れて咬合力用配線部36を噛んで咬合力用第一及び第二導電線32,34や舌圧用第一及び第二導電線108,110が損傷したり断線したりするおそれが低減され得る。
【0125】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。
【0126】
前記実施形態では、咬合力センサシート16と舌圧センサシート18が別個に構成されて相互に重ね合わされていたが、
図14~16に示される口腔用圧力センサシート160,162,164のように、部材の一部が共通化されていてもよい。なお、
図14~16に示される態様は、少なくとも二つが組み合わされて採用されてもよい。
【0127】
例えば、
図14に示される口腔用圧力センサシート160では、前記実施形態における咬合力用第二基体62と舌圧用第二基体128が共通の基材としての第二基体166として構成されている。具体的には、
図14に示される態様では、第二基体166が、前記実施形態における咬合力用第二基体62の前端において凹部54を設けないような形状とされて、当該第二基体166の下面に、咬合力用第二電極28及び舌圧用第二電極104が重ね合わされて固着されている。即ち、前記実施形態では、咬合力感圧部24と舌圧感圧部100とがシート厚さ方向(上下方向)で相互にずれて配設されていたが、例えば
図14に示される口腔用圧力センサシート160のように、第二基体166の下面を共通の基準面168として、咬合力感圧部170と舌圧感圧部172とが一つのシート面方向(水平方向であり、上下方向に直交する方向)に広がって並設されていてもよい。要するに、
図14に示される態様では、第二基体166におけるシート厚さ方向の一方の側(下側)に、咬合力感圧部170を構成する一対の咬合力用電極(咬合力用第一及び第二電極26,28)と舌圧感圧部172を構成する一対の舌圧用電極(舌圧用第一及び第二電極102,104)が、共通の基材である第二基体166に対して積層状態で形成されている。本態様のように、共通の第二基体166を採用することで、部品点数を削減することができて、製造効率の向上を図ることができる。
【0128】
また、
図15に示される口腔用圧力センサシート162では、前記実施形態における咬合力用ガード電極層46と舌圧用ガード電極層116とが共通のガード電極層174により構成されている。即ち、ガード電極層174が、前記実施形態における咬合力用第三基体80の前端において凹部54を設けないような形状とされた第三基体176と、咬合力感圧部24及び舌圧感圧部100を覆い得る形状とされたガード電極178と、第三基体176の上面を全面に亘って覆うレジスト層180とを含んで構成されている。本態様においても、共通のガード電極層174を採用することで、部品点数を削減することができて、製造効率の向上を図ることができる。
【0129】
さらに、
図16に示される口腔用圧力センサシート164では、
図14と同様の第二基体166が設けられていると共に、当該第二基体166の下面には、咬合力感圧部182と舌圧感圧部184とで共通の複数の第二電極186が、互いに等しい材質や形成方法、厚さ寸法などをもって設けられている。この複数の第二電極186は、例えば何れも前後方向にストレートに延びて形成され得る。そして、例えば前記実施形態と同様の咬合力用第一電極26や舌圧用第一電極102を採用することが可能であり、咬合力用第一電極26と第二電極186との対向位置に咬合力検出素子188及び咬合力感圧部182が構成されると共に、舌圧用第一電極102と第二電極186との対向位置に舌圧検出素子190及び舌圧感圧部184が構成される。本態様においても、共通の第二電極186を採用することで、部品点数を削減することができて、製造効率の向上を図ることができる。
【0130】
また、前記実施形態では、舌圧感圧部100において舌圧用第一電極102と舌圧用第二電極104がそれぞれ一つずつ設けられることで一つの舌圧検出素子138が設けられていたが、例えば咬合力用第一電極26や咬合力用第二電極28と同様に、複数の舌圧用第一電極や舌圧用第二電極が設けられることで、複数の舌圧検出素子が形成されるようになっていてもよい。なお、複数の舌圧検出素子が形成される場合、当該複数の舌圧検出素子をシート面方向に並べて配置して、舌圧の分布状態や最大舌圧位置などを検出可能とすることなども可能であるが、例えば誘電層及び一対の舌圧用電極の積層構造をシート厚さ方向で複数設けることで、複数の舌圧検出素子をシート厚さ方向に電気絶縁層を挟んで積層状態で配置したり、積層方向の一方と他方の舌圧検出素子間において一つの電極を共用してもよい。特に、シート厚さ方向で積層された複数の舌圧検出素子を直列的に接続することで、センサ検出特性や出力信号レベルなどを調節等することも可能である。なお、同様に、複数の咬合力検出素子においても、同様に、シート面方向だけでなくシート厚さ方向において積層状態で配置されてもよい。また、咬合力感圧部と舌圧感圧部とにおいて、それら両方の領域に亘って広がる誘電層等を採用することで、一つの弾性層を共用することも可能である。その場合に、一つの弾性層について、咬合力感圧部と舌圧感圧部とにおいて厚さ寸法を相互に異ならせてもよい。
【0131】
更にまた、前記実施形態では、口腔用圧力センサシート12を構成する咬合力センサシート16と舌圧センサシート18が何れも静電容量型とされていたが、この態様に限定されるものではない。咬合力センサシートと舌圧センサシートは、それぞれ柔軟なシート状とされて咬合力や舌圧を電気信号として検出し得る感圧部を備えるものであればよく、前記実施形態の如き静電容量型の他、例えば一対の電極の対向面間に圧電層が配されて電圧の変化に基づく電気信号として咬合力を検出する圧電型や、一対の電極の対向面間に導電性ゴム等の弾性変形可能な抵抗層が配されて電気抵抗の変化に基づく電気信号として咬合力を検出する抵抗型とされてもよい。
【0132】
さらに、前記実施形態では、口腔用圧力センサシート12を口腔内において位置決めするガイド72が咬合力用第二の電極シート44から上方に突出して設けられて、例えば上側の前歯や上唇に当接することで位置決め効果が発揮されていたが、咬合力用第一の電極シートや咬合力用ガード電極層、舌圧センサシート等から下方に突出して設けられて、例えば下側の前歯や下唇に当接することで位置決め効果が発揮されるようになっていてもよい。なお、このようなガイドは、上下方向外方に突出するものに限定されず、口腔内における口腔用圧力センサシートの位置を示す目盛や目印、印刷等であってもよい。また、ガイドは口腔用圧力センサシートの上下両側に設けられてもよく、例えば上記に例示したガイドのうちの二つを組み合わせて採用してもよい。
【0133】
咬合力用第一の電極や咬合力用第二の電極の配設態様は、前記実施形態に例示のものに限定されない。例えば、咬合力の分布などを把握する必要がなければ、咬合力感圧部に設けられる咬合力検出素子は一つだけでもよい。この場合には、咬合力用第一及び第二電極を歯列に対応するように湾曲した略U字状とすることで、咬合力感圧部(咬合力検出素子)が略U字状とされる。
【0134】
また、複数の咬合力用第一電極が設けられる場合に、それら複数の咬合力用第一電極は、必ずしも同じ幅寸法でなくても良く、例えば、当接が予定される歯の大きさなどに応じて幅寸法が異なっていてもよい。更に、咬合力用第二電極についても同様に、幅寸法が異なる複数種類が採用され得る。加えて、咬合力用第一電極と咬合力用第二電極は、必ずしも同じ幅寸法である必要はない。複数の舌圧用第一電極と舌圧用第二電極が設けられる場合も同様である。
【0135】
更にまた、咬合力用第一電極と咬合力用第二電極、舌圧用第一電極と舌圧用第二電極は、例えば、平面視においてスポット的に設けられる円形や正方形などであってもよい。同様に、咬合力検出素子や舌圧検出素子の形状も前記実施形態に例示のものに限定されない。
【0136】
前記実施形態では、咬合力用第一電極26e~26iにおいて、左右方向中間部分に連結部56が設けられて左右方向両側部分が連結部56により連結されており、これにより咬合力用第一電極26e~26iが何れも一つの電極として形成されていたが、かかる態様に限定されるものではない。即ち、咬合力用第一電極26e~26iにおいて連結部56を設けることなく、左右両側部分を咬合力用第一電極26e~26i上に設けられる咬合力用第一導電線32によって接続することで、咬合力用第一電極26e~26iが一つの電極として形成されるようになっていてもよい。
【0137】
前記実施形態では、舌圧用測定部分92(舌圧感圧部100)を構成する舌圧用第一及び第二電極102,104や舌圧用誘電層106等が何れも平板形状とされていたが、例えば舌圧用誘電層は、半球状であってもよいし、凹凸が設けられてもよい。また、舌圧用誘電層において舌に接触する部分が凹状になっていて舌を捉えやすくなっていたり、舌に接触する部分が凸状になっていて舌で包み込みやすくなっていてもよい。更に、舌圧用誘電層の面方向中央部をくり抜いて低圧から舌圧用誘電層が変形できるようになっていてもよいし、厚み方向中央が空洞とされてもよい。即ち、舌圧用誘電層のシート厚さ寸法や中実/中空の構造などは、全体に亘って同じであってもよいし、部分的に異ならされてもよい。これにより、患者の口腔の形状に合わせて舌圧用誘電層の形状を適切に設定したり、作用する外力としての舌圧の大きさと採用する誘電体の物性を考慮して舌圧用誘電層の変形のし易さなどを一層大きな範囲で調節することも可能となる。そして、舌圧用第一及び第二電極は、舌圧用誘電層の外面形状に対応した任意の形状とされ得る。
【符号の説明】
【0138】
10 口腔用圧力検出装置
12 口腔用圧力センサシート(実施形態1)
14 制御装置
16 咬合力センサシート
18 舌圧センサシート
19a 測定部分
19b 接続部分
20 咬合力用測定シート部分
22 咬合力用接続シート部分
24 咬合力感圧部
26,26a~26i 咬合力用第一電極(咬合力用電極)
28,28a~28j 咬合力用第二電極(咬合力用電極)
30 咬合力用誘電層
32 咬合力用第一導電線
34 咬合力用第二導電線
36 咬合力用配線部
38 コネクタ部
40 咬合力用接続部
42 咬合力用第一の電極シート
44 咬合力用第二の電極シート
46 咬合力用ガード電極層
48 咬合力用第一基体
50 前側部分
52 後側部分
54 凹部
56 連結部
58 咬合力用第一端子
60 レジスト層
62 咬合力用第二基体
64 前側部分
66 後側部分
68 咬合力用第二端子
70 レジスト層
72 ガイド
74 前側部分
76 後側部分
78 咬合力検出素子
80 咬合力用第三基体
82 ガード電極
84 接地配線
86 接地端子
88 レジスト層
90 補強シート
92 舌圧用測定部分
94 舌圧用接続シート部分
96 連結部
96a 第一連結部
96b 第二連結部
97 舌圧用接続部
98 コネクタ部
100 舌圧感圧部
102 舌圧用第一電極(舌圧用電極)
104 舌圧用第二電極(舌圧用電極)
106 舌圧用誘電層(弾性層)
108 舌圧用第一導電線
110 舌圧用第二導電線
112 舌圧用第一の電極シート
114 舌圧用第二の電極シート
116 舌圧用ガード電極層
118 舌圧用第一基体
120 前側部分
122 後側部分
124 舌圧用第一端子
126 レジスト層
128 舌圧用第二基体
130 前側部分
132 後側部分
134 舌圧用第二端子
136 レジスト層
138 舌圧検出素子
140 舌圧用第三基体
142 ガード電極
144 接地配線
146 接地端子
148 レジスト層
150 補強シート
152 保持部材
160 口腔用圧力センサシート(
図14)
162 口腔用圧力センサシート(
図15)
164 口腔用圧力センサシート(
図16)
166 第二基体
168 基準面
170 咬合力感圧部
172 舌圧感圧部
174 ガード電極層
176 第三基体
178 ガード電極
180 レジスト層
182 咬合力感圧部
184 舌圧感圧部
186 第二電極
188 咬合力検出素子
190 舌圧検出素子