(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
H01L 27/144 20060101AFI20240610BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240610BHJP
H04N 5/33 20230101ALI20240610BHJP
【FI】
H01L27/144 K
H01L27/146 A
H01L27/146 D
H04N5/33
(21)【出願番号】P 2020547476
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 IB2019057958
(87)【国際公開番号】W WO2020058919
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018177347
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】掛端 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 亮
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-041943(JP,A)
【文献】特開2011-096851(JP,A)
【文献】特開2013-182923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/144
H01L 27/146
H04N 5/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層と、が当該順序で積層された撮像装置であって、
前記第1乃至前記第3の層は、前記第4の層の上方に位置し、
前記第1の層、前記第2の層、前記第3の層および前記第4の層は、それぞれが互いに重なる領域を有し、
前記第1の層は、光学フィルタ層を有し、
前記第2の層は、単結晶シリコンを光吸収層とする光電変換デバイスを有し、
前記第3の層は、デバイス形成層を有し、
前記第4の層は、支持基板を有し、
前記デバイス形成層は、画素回路を有し、
前記画素回路は、金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタを有し、
前記光電変換デバイスの上方に開口部を有する絶縁層を有し、
前記絶縁層の上方及び前記開口部の上方に透光性を有する導電層を有し、
前記透光性を有する導電層は、前記第
1の層の下方に位置し、且つ前記光電変換デバイスの電極としての機能と、前記画素回路の配線としての機能と、を有し、
前記光電変換デバイスと前記トランジスタは電気的に接続され、
前記光電変換デバイスは、前記光学フィルタ層を透過した光を受光する撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、前記光学フィルタ層は、可視光を遮蔽し赤外光を透過する層である撮像装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記デバイス形成層は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、
第4のトランジスタと、キャパシタと、を有し、
前記光電変換デバイスの一方の電極は、前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記キャパシタの一方の電極と電気的に接続され、
前記キャパシタの一方の電極は、前記第3のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続される撮像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記金属酸化物は、Inと、Znと、M(MはAl、Ti、Ga、Ge、Sn、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)と、を有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、撮像装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。トランジスタ、半導体回路は半導体装置の一態様である。また、記憶装置、表示装置、撮像装置、電子機器は、半導体装置を有する場合がある。
【背景技術】
【0004】
基板上に形成された酸化物半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。例えば、酸化物半導体を有するオフ電流が極めて低いトランジスタを画素回路に用いる構成の撮像装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
撮像装置は、可視光を画像化する手段として用いられるだけでなく、様々な用途に用いられている。例えば、個人認証、不良解析、医療診断、セキュリティ用途などに用いられている。これらの用途では、可視光の他、X線などの短波長の光、赤外光などの長波長の光などを用途に応じて使い分けている。
【0007】
本発明の一態様では、赤外光の検出に適した撮像装置を提供することを目的の一つとする。または。生体認証に適した撮像装置を提供することを目的の一つとする。または、動体の撮像に適した撮像装置を提供することを目的の一つとする。または、上記撮像装置の作製方法を提供することを目的の一つとする。
【0008】
または、低消費電力の撮像装置を提供することを目的の一つとする。または、信頼性の高い撮像装置を提供することを目的の一つとする。または、小型の撮像装置を提供することを目的の一つとする。または、新規な撮像装置を提供することを目的の一つとする。または、上記撮像装置の動作方法を提供することを目的の一つとする。または、新規な半導体装置などを提供することを目的の一つとする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、撮像デバイスに単結晶シリコンを有し、回路を構成するトランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を有する撮像装置およびその作製方法に関する。
【0011】
本発明の一態様は、単結晶シリコン基板と、支持基板と、を有する撮像装置の作製方法であって、単結晶シリコン基板の第1の面側に単結晶シリコン基板の導電型とは逆の導電型の領域を設けて光電変換デバイスを形成し、光電変換デバイス上に金属酸化物をチャネル形成領域に有し、かつ光電変換デバイスと電気的に接続するトランジスタを形成し、トランジスタ上に第1の絶縁層を形成し、支持基板上に第2の絶縁層を形成し、第1の絶縁層の表面および第2の絶縁層の表面との結合を行い、単結晶シリコン基板の第1の面と対向する面を研削および研磨して光電変換デバイスの光吸収層を薄層化する撮像装置の作製方法である。
【0012】
本発明の他の一態様は、単結晶シリコン基板と、支持基板と、を有する撮像装置の作製方法であって、単結晶シリコン基板の第1の面側に単結晶シリコン基板の導電型とは逆の導電型の領域を設けて光電変換デバイスを形成し、光電変換デバイス上に第1の絶縁層および光電変換デバイスと電気的に接続する第1の導電層を形成し、支持基板上に金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタを形成し、トランジスタ上に第2の絶縁層およびトランジスタと電気的に接続する第2の導電層を形成し、第1の絶縁層の表面と第2の絶縁層の表面との結合、および第1の導電層の表面と第2の導電層の表面との結合を行い、単結晶シリコン基板の第1の面と対向する面を研削および研磨して光電変換デバイスの光吸収層を薄層化する撮像装置の作製方法である。
【0013】
さらに、単結晶シリコン基板の研磨した面側に単結晶シリコン基板と同じ導電型であって、単結晶シリコン基板よりもキャリア濃度の高い領域を設けて光電変換デバイスを形成してもよい。
【0014】
光電変換デバイスと接する第3の絶縁層を形成し、第3の絶縁層を介して光電変換デバイスと重なるように、光学フィルタ層を形成してもよい。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層と、が当該順序で積層された撮像装置であって、第1の層、第2の層、第3の層および第4の層は、それぞれが互いに重なる領域を有し、第1の層は、光学フィルタ層を有し、第2の層は、単結晶シリコンを有し、第3の層は、デバイス形成層を有し、第4の層は、支持基板を有し、第2の層は、単結晶シリコンを光吸収層とする光電変換デバイスを有し、第3の層は、金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタを有し、光電変換デバイスとトランジスタは電気的に接続され、光電変換デバイスは、光学フィルタ層を透過した光を受光する撮像装置である。
【0016】
デバイス形成層は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、キャパシタと、を有し、光電変換デバイスの一方の電極は、第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、キャパシタの一方の電極と電気的に接続され、キャパシタの一方の電極は、第3のトランジスタのゲートと電気的に接続され、第3のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続することができる。
【0017】
光学フィルタ層としては、可視光を遮蔽し赤外光を透過する層を用いることができる。
【0018】
トランジスタのチャネル形成領域が有する金属酸化物は、Inと、Znと、M(MはAl、Ti、Ga、Ge、Sn、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様を用いることで、赤外光の検出に適した撮像装置を提供することができる。または。生体認証に適した撮像装置を提供することができる。または、動体の撮像に適した撮像装置を提供することができる。または、上記撮像装置の作製方法を提供することができる。
【0020】
または、低消費電力の撮像装置を提供することができる。または、信頼性の高い撮像装置を提供することができる。または、小型の撮像装置を提供することができる。または、新規な撮像装置を提供することができる。または、上記撮像装置の動作方法を提供することができる。または、新規な半導体装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略することがある。なお、図を構成する同じ要素のハッチングを異なる図面間で適宜省略または変更する場合もある。
【0023】
また、回路図上では単一の要素として図示されている場合であっても、機能的に不都合がなければ、当該要素が複数で構成されてもよい。例えば、スイッチとして動作するトランジスタは、複数が直列または並列に接続されてもよい場合がある。また、キャパシタを分割して複数の位置に配置する場合もある。
【0024】
また、一つの導電体が、配線、電極および端子などの複数の機能を併せ持っている場合があり、本明細書においては、同一の要素に対して複数の呼称を用いる場合がある。また、回路図上で要素間が直接接続されているように図示されている場合であっても、実際には当該要素間が複数の導電体を介して接続されている場合があり、本明細書ではこのような構成でも直接接続の範疇に含める。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である撮像装置およびその作製方法について、図面を参照して説明する。
【0026】
本発明の一態様は、赤外光に対応した撮像装置である。受光した赤外光を画像データ化することで生体認証、工業製品の不良解析、良品選別などの用途に用いることができる。また、グローバルシャッタ方式での撮像が可能な画素回路を用いることで、動きのある被写体であっても歪のない画像を得ることができる。
【0027】
<撮像装置>
図1は、本発明の一態様の撮像装置を説明する図である。撮像装置は、層11、層12、層13、および層14を有する。
【0028】
層11は、光学フィルタ層を有する。光学フィルタ層としては、例えば、可視光を遮蔽し、赤外光を透過する層(以下、赤外光透過フィルタ)を用いることができる。本明細書において赤外光透過フィルタとは、主に近赤外光より波長の短い光(主に可視光)を遮蔽するフィルタを指す。ノイズとなる可視光を遮蔽することで鮮明な赤外光画像を取得することができる。なお、光学フィルタ層として、他の特定の波長の光を透過する層を用い、当該光を用いた撮像に特化した撮像装置とすることもできる。
【0029】
層12は、光電変換デバイス(光電変換素子ともいう)を有する。光電変換デバイスとしては、フォトダイオードを用いることができる。本発明の一態様では赤外光を用いた撮像を行うため、赤外光を光電変換できるフォトダイオードを用いる。例えば、単結晶シリコンを光電変換部に用いたpn接合型フォトダイオード、多結晶シリコンまたは微結晶シリコンを光電変換層に用いたpin接合型フォトダイオードなどを用いることができる。または、化合物半導体など、赤外領域の光を光電変換できる材料を用いてもよい。本実施の形態では、光電変換デバイスとして、単結晶シリコンを用いたpn接合型フォトダイオードを用いた例を説明する。また、受光面は層11側とする。
【0030】
層13は、デバイス形成層を有する。デバイス形成層は、画素回路を構成するトランジスタ等を有する。当該トランジスタとしては、チャネル形成領域に金属酸化物を用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタ)を用いることが好ましい。OSトランジスタは、オフ電流が極めて低い特性を有し、画素回路で長時間データ保持が可能になるなど、画素回路の構成要素として適している。
【0031】
層14は、支持基板を有する。本発明の一態様では、単結晶シリコン基板の第1の面側に当該単結晶シリコン基板の導電型とは逆の導電型の領域を形成してフォトダイオードを作り込む。このとき、単結晶シリコン基板は支持体としても機能する厚さ(例えば、数百μm)が必要である。
【0032】
しかし、フォトダイオードの光吸収層として機能する領域が光の侵入方向に対して厚すぎると、空乏層からの距離が拡散長を超えた領域で発生する光キャリアは再結合し、外部に取り出すことができない。したがって、単結晶シリコン基板を薄層化し、光吸収層が適切な厚さになるように調整する必要がある。支持基板は当該薄層化の工程(研削、研磨)で必要な要素となる。また、完成した撮像装置の支持基板ともなる。
【0033】
<画素回路>
図2Aは、層11が有する光電変換デバイスおよび層12のデバイス形成層が有するトランジスタ等で構成される画素回路の一例を説明する回路図である。画素回路は、光電変換デバイス101と、トランジスタ103と、トランジスタ104と、トランジスタ105と、トランジスタ106と、キャパシタ108を有することができる。なお、キャパシタ108を設けない構成としてもよい。
【0034】
光電変換デバイス101の一方の電極(カソード)は、トランジスタ103のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ103のソースまたはドレインの他方は、トランジスタ104のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ104のソースまたはドレインの一方は、キャパシタ108の一方の電極と電気的に接続される。キャパシタ108の一方の電極は、トランジスタ105のゲートと電気的に接続される。トランジスタ105のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ106のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。
【0035】
ここで、トランジスタ103のソースまたはドレインの他方、キャパシタ108の一方の電極、トランジスタ105のゲートを接続する配線をノードFDとする。ノードFDは電荷蓄積部として機能させることができる。
【0036】
光電変換デバイス101の他方の電極(アノード)は、配線121と電気的に接続される。トランジスタ103のゲートは、配線127と電気的に接続される。トランジスタ104のソースまたはドレインの他方は、配線122と電気的に接続される。トランジスタ105のソースまたはドレインの他方は、配線123に電気的に接続される。トランジスタ104のゲートは、配線126と電気的に接続される。トランジスタ106のゲートは、配線128と電気的に接続される。キャパシタ108の他方の電極は、例えばGND配線などの基準電位線と電気的に接続される。トランジスタ106のソースまたはドレインの他方は、配線129と電気的に接続される。
【0037】
配線127、126、128は、各トランジスタの導通を制御する信号線としての機能を有することができる。配線129は出力線としての機能を有することができる。
【0038】
配線121、122、123は、電源線としての機能を有することができる。
図2Aに示す構成では光電変換デバイス101のカソード側がトランジスタ103と電気的に接続する構成であり、ノードFDを高電位にリセットして動作させる構成であるため、配線122は高電位(配線121よりも高い電位)とする。
【0039】
図2Aでは、光電変換デバイス101のカソードがノードFDと電気的に接続する構成を示したが、
図2Bに示すように光電変換デバイス101のアノード側がトランジスタ103のソースまたはドレインの一方と電気的に接続する構成としてもよい。
【0040】
当該構成では、ノードFDを低電位にリセットして動作させる構成であるため、配線122は低電位(配線121よりも低い電位)とする。
【0041】
トランジスタ103は、ノードFDの電位を制御する機能を有する。トランジスタ104は、ノードFDの電位をリセットする機能を有する。トランジスタ105はソースフォロア回路として機能し、ノードFDの電位を画像データとして配線129に出力することができる。トランジスタ106は画像データを出力する画素を選択する機能を有する。
【0042】
トランジスタ103およびトランジスタ104には、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタは、オフ電流が極めて低い特性を有する。トランジスタ103、104にOSトランジスタを用いることによって、ノードFDで電荷を保持できる期間を極めて長くすることができる。そのため、回路構成や動作方法を複雑にすることなく、全画素で同時に電荷の蓄積動作を行うグローバルシャッタ方式を適用することができる。
【0043】
<撮像装置の動作方式>
図3Aはローリングシャッタ方式の動作方法を模式化した図であり、
図3Bはグローバルシャッタ方式を模式化した図である。Enはn列目(nは自然数)の露光(蓄積動作)、Rnはn列目の読み出し動作を表している。
図3A、
図3Bでは、1行目からM行目(Mは自然数)までの動作を示している。
【0044】
ローリングシャッタ方式は、露光とデータの読み出しを順次行う動作方法であり、ある行の読み出し期間と他の行の露光期間を重ねる方式である。露光後すぐに読み出し動作を行うため、データの保持期間が比較的短い回路構成であっても撮像を行うことができる。しかしながら、撮像の同時性がないデータで1フレームの画像が構成されるため、動体の撮像においては画像に歪が生じてしまう。
【0045】
一方で、グローバルシャッタ方式は、全画素で同時に露光を行って各画素にデータを保持し、行毎にデータを読み出す動作方法である。したがって、動体の撮像であっても歪のない画像を得ることができる。
【0046】
画素回路にチャネル形成領域にSiを用いたトランジスタ(以下、Siトランジスタ)などの比較的オフ電流の高いトランジスタを用いた場合は、電荷蓄積部からデータ電位が流出しやすいためローリングシャッタ方式が多く用いられる。Siトランジスタを用いてグローバルシャッタ方式を実現するには、別途メモリ回路などを設ける必要があり、さらに複雑な動作を高速で行わなければならない。一方で、画素回路にOSトランジスタを用いた場合は、電荷蓄積部からのデータ電位の流出がほとんどないため、容易にグローバルシャッタ方式を実現することができる。なお、本発明の一態様の撮像装置をローリングシャッタ方式で動作させることもできる。
【0047】
なお、トランジスタ105、106にもOSトランジスタを適用してもよい。また、OSトランジスタおよびSiトランジスタを任意に組み合わせて適用してもよい。また、全てのトランジスタをOSトランジスタまたはSiトランジスタとしてもよい。Siトランジスタとしては、アモルファスシリコンを有するトランジスタ、結晶性のシリコン(代表的には、低温ポリシリコン、単結晶シリコンなど)を有するトランジスタなどが挙げられる。
【0048】
<作製方法>
次に、本発明の一態様の撮像装置の作製方法について説明を行う。作製方法は第1の方法と第2の方法があり、いずれも貼り合わせ工法を用いる。
【0049】
<第1の方法>
第1の方法は、単結晶シリコン基板に設けた光電変換デバイス上にトランジスタ等を作製し、支持基板を貼り合わせる方法である。
【0050】
まず、単結晶シリコン基板21の第1の面側に光電変換デバイス101を形成する(
図4A参照)。なお、本明細書における撮像装置の作製方法を説明する図では、全体の一部を示す斜視図、およびさらにその一部の断面を図示している。また、図中に示すトランジスタおよびダイオードの記号は、デバイスの位置を簡易的に示すものであり、電気的な接続や回路構成を反映するものではない。
図4Aでは、複数の画素のそれぞれに対応する複数の光電変換デバイス101を図示している。
【0051】
光電変換デバイス101は、単結晶シリコン基板21の一部の領域と、単結晶シリコン基板に設けられた領域22との接合により形成することができる。領域22は、単結晶シリコン基板21とは逆の導電型を有する領域である。ここでは、単結晶シリコン基板21の導電型をp型とし、領域22の導電型をn型とする。すなわち、光電変換デバイス101は、pn接合型フォトダイオードである。
【0052】
領域22は、単結晶シリコン基板21の第1の面にn型のドーパント(リン、ヒ素など)をイオンドーピングやイオン注入などの工法を用いて添加し、形成することができる。
【0053】
次に、光電変換デバイス101上にデバイス形成層23を形成する(
図5A参照)。デバイス形成層23には、画素回路が有するトランジスタやキャパシタのほか、必要に応じて複数の絶縁膜が設けられる。なお、光電変換デバイス101と当該トランジスタは電気的に接続される。
【0054】
トランジスタやキャパシタは立体構造を有するため、デバイス形成層23の上部には凹凸が生じる。当該凹凸は後工程に影響するため、絶縁層24を設け表面の凹凸を平坦化する(
図5B参照)。なお、絶縁層24は単層に限らず、複数の層の積層であってもよい。例えば、酸化シリコン膜などの無機膜、アクリル樹脂またはポリイミドなどの有機膜を用いることができる。なお、次の工程では無機膜同士を貼り合わせる接合を行うため、少なくとも最表面は無機膜とする。また、必要に応じてCMP(chemical mechanical polishing)等を用いて表面を平坦化してもよい。
【0055】
次に、支持基板25上に絶縁層26を形成し、絶縁層26の表面と絶縁層24の表面を密着させ、貼り合わせ処理を行う(
図5C参照)。
【0056】
支持基板25には、ガラス基板、セラミックス基板、半導体基板、金属基板などの平坦性の高い硬質材料を用いることが好ましい。絶縁層26には酸化シリコン膜などの無機膜を用いることが好ましく、少なくとも、絶縁層24の最表面と絶縁層26の最表面は同じ材料で形成されていることが好ましい。
【0057】
なお、貼り合わせ直前に、絶縁層26の表面および絶縁層24の表面を親水性化することが好ましい。貼り合わせ面を親水性化させることで原子レベルの強固な接着力を得ることができる。また、必要に応じて加熱処理や加圧処理を行ってもよい。
【0058】
次に、研削研磨ツール27を用いて単結晶シリコン基板21の第1の面と対向する面を研削および研磨し、単結晶シリコン基板21を薄層化する(
図6A参照)。研削研磨ツール27としては、グラインディング装置、ラッピング装置、ポリッシング装置、CMP装置などを必要に応じて適宜使い分ければよい。また、ウエットエッチングを併用してもよい。
【0059】
単結晶シリコン基板21の厚さは、光の侵入長、拡散長、空乏層厚などを考慮して決定すればよい。例えば、近赤外光を撮像の対象とする場合は、3μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上25μm以下とする。
【0060】
単結晶シリコン基板21を所望の厚さに薄層化した後、単結晶シリコン基板21の第1面と対向する面側にp
+型の導電型を有する領域28を形成してもよい(
図6B参照)。領域28は単結晶シリコン基板21よりもキャリア濃度が高く低抵抗の領域であり、光電変換デバイス101のキャリア取り出し電極(コモン電極)として作用する。また、画素回路においては、配線121またはその一部としても作用する。なお、領域28を設けない構成としてもよい。
【0061】
領域28は、単結晶シリコン基板21の第1の面と対向する面にp型のドーパント(ホウ素、アルミニウムなど)をイオンドーピング、イオン注入、気相拡散、固相拡散などの工法を用いて添加し、形成することができる。以上が第1の方法である。
【0062】
<第2の方法>
第2の方法は、単結晶シリコン基板に設けた光電変換デバイスと、支持基板上に設けたトランジスタ等とを貼り合わせる方法である。なお、以下の説明において、第1の方法と重複する説明は省略する。
【0063】
まず、第1の方法と同様に光電変換デバイス101を形成する(
図4A参照)。そして、光電変換デバイス101上に絶縁層31および導電層32を形成する(
図4B参照)。絶縁層31は、絶縁層26と同じ材料で構成することができる。導電層32は光電変換デバイス101とトランジスタとを電気的に接続するためのプラグであり、一端は光電変換デバイス101と電気的に接続されている。
【0064】
導電層32は、絶縁層31に開口部を設けた後、チタン、タングステン、タンタル、およびそれらの窒化物などの導電物のいずれか、または当該導電物の複数を当該開口部が充填されるように設け、余分な導電物をCMP等で取り除くことで形成することができる。導電層32は絶縁層31に埋設されており、表面は絶縁層31の表面と連続した平面となっている。
【0065】
次に、支持基板25上にデバイス形成層23を形成する(
図7A参照)。デバイス形成層23には、画素回路が有するトランジスタやキャパシタのほか、必要に応じて複数の絶縁膜が設けられる。そして、絶縁層33および導電層34を形成する(
図7B参照)。絶縁層33は、絶縁層24と同じ材料で構成することができる。導電層34は光電変換デバイス101とトランジスタとを電気的に接続するためのプラグであり、一端はトランジスタと電気的に接続されている。
【0066】
導電層34は、絶縁層33に開口部を設けた後、チタン、タングステン、タンタル、およびそれらの窒化物などの導電物のいずれか、または当該導電物の複数を当該開口部が充填されるように設け、余分な導電物をCMP等で取り除くことで形成することができる。導電層34は絶縁層33に埋設されており、表面は絶縁層33の表面と連続して平面となっている。
【0067】
次に、絶縁層31の表面および絶縁層33の表面、ならびに導電層32および導電層34の表面を密着させ、貼り合わせ処理を行う(
図7C参照)。
【0068】
なお、貼り合わせ直前に、絶縁層31の表面および絶縁層33の表面の親水性化、ならびに導電層32の表面および導電層34の表面の活性化を行うことが好ましい。貼り合わせ面に上記処理を行うことで原子レベルの強固な接着力を得ることができる。また、必要に応じて加熱処理や加圧処理を行ってもよい。
【0069】
次に、研削研磨ツール27を用いて単結晶シリコン基板21の第1の面と対向する面を研削および研磨し、単結晶シリコン基板21を薄層化する(
図8A参照)。
【0070】
単結晶シリコン基板21を所望の厚さに薄層化した後、単結晶シリコン基板21の第1面と対向する面側にp
+型の導電型を有する領域28を形成してもよい(
図8B参照)。以上が第2の方法である。
【0071】
<変形例1>
第1の方法または第2の方法で作製した光電変換デバイス101にさらに加工を行ってもよい。例えば、
図9A乃至
図9Dに示すように、光電変換デバイス101の領域28および光吸収層となる領域を画素ごとに分断してもよい。
【0072】
まず、領域28を含む単結晶シリコン基板21を画素ごとに分断する溝を設ける(
図9A参照)。次に、当該溝および領域28上に酸化シリコンなどの絶縁層35を設ける(
図9B参照)。次に、絶縁層35に領域28に達する開口部36を設ける(
図9C参照)。そして、絶縁層35および開口部36上に対象となる波長の光に対して透光性を有する導電層37を設ける(
図9D参照)。
【0073】
導電層37は、光電変換デバイス101のキャリア取り出し電極(コモン電極)として作用する。また、画素回路においては、配線121またはその一部としても作用する。なお、導電層37としては、インジウム錫酸化物などの導電性酸化物のほか、導電性有機膜、メタルメッシュ、領域28と同じ導電型を有する半導体膜などを用いることができる。
【0074】
また、画素間に設けた溝に絶縁層35を設けることで、隣接する画素から侵入する迷光を抑制することでき、より鮮明な画像を取得することができる。
【0075】
<変形例2>
第1の方法、第2の方法で作製した構成および変形例として示した構成に対して、さらに構成要素を付加してもよい。例えば、
図10Aに示すように、領域28上に保護層として絶縁層38を設けることができる。絶縁層38には、広い波長範囲の光に対して透光性を有する酸化シリコン膜などを用いることができる。また、パッシベーション膜として作用する窒化シリコン膜を積層する構成としてもよい。また、反射防止膜として、酸化ハフニウムなどの誘電体膜を積層する構成としてもよい。
【0076】
絶縁層38上には、遮光層39が形成されてもよい。遮光層30は、斜め方向からの光の侵入を抑制する機能を有する。遮光層39には、アルミニウム、タングステンなどの金属層を用いることができる。または、当該金属層と反射防止膜としての機能を有する誘電体膜を積層する構成とすることができる。または、金属層に替えて樹脂層を用いてもよい。
【0077】
絶縁層38および遮光層39上には平坦化膜として絶縁層40を設ける構成とすることができる。絶縁層40としては、有機樹脂膜などを用いることができる。
【0078】
さらに、絶縁層40上に光学フィルタ層41を設けてもよい。光学フィルタ層41としては、目的に応じた光が透過する材料を選択して形成すればよい。光学フィルタ層としては、例えば、赤外光透過フィルタを用いることができる。赤外光透過フィルタを用いることで、赤外光のみに感度を有する撮像装置とすることができる。
【0079】
赤外光透過フィルタとしては、例えば、ガラスや樹脂などの赤外光を透過するベース材料に、赤外光を透過し可視光を吸収する材料を分散させて形成した層を用いることができる。透過する赤外光の波長は、ベース材料に分散する材料を適宜選択することにより調整することができる。例えば、生体認証などに用いられる静脈の撮像を目的とする場合は、少なくともヘモグロビンに吸収のある近赤外光が透過する材料を選べばよい。
【0080】
さらに、マイクロレンズアレイ42を設け、一つのレンズで集光した光が一つの画素で受光される構成としてもよい。マイクロレンズアレイ42を設けることで、遮光層39が設けられた構成であっても効率良く光を受光することができる。
【0081】
なお、
図10A乃至
図10Cに示した構成要素のいずれかが省かれた構成であってもよい。または、その他の構成要素がさらに設けられた構成であってもよい。
【0082】
<画素回路の動作>
【0083】
次に、
図2Aに示す画素回路の動作の一例を
図11Aのタイミングチャートを用いて説明する。なお、本明細書におけるタイミングチャートの説明においては、高電位を“H”、低電位を“L”で表す。配線121には常時“L”が供給され、配線122、123には常時“H”が供給されている状態とする。
【0084】
期間T1において、配線126の電位を“H”、配線127の電位を“H”、配線128の電位を“L”とすると、トランジスタ103、104が導通し、ノードFDには配線123の電位“H”が供給される(リセット動作)。
【0085】
期間T2において、配線126の電位を“L”、配線127の電位を“H”、配線128の電位を“L”とすると、トランジスタ104が非導通となってリセット電位の供給が遮断される。また、光電変換デバイス101の動作に応じてノードFDの電位が低下する(蓄積動作)。
【0086】
期間T3において、配線126の電位を“L”、配線127の電位を“L”、配線128の電位を“L”とすると、トランジスタ103が非導通となり、ノードFDの電位は確定し、保持される(保持動作)。このとき、ノードFDに接続されるトランジスタ103およびトランジスタ104にオフ電流の低いOSトランジスタを用いることによって、ノードFDからの不必要な電荷の流出を抑えることができ、データの保持時間の延ばすことができる。
【0087】
期間T4において、配線126の電位を“L”、配線127の電位を“L”、配線128の電位を“H”とすると、トランジスタ106が導通し、トランジスタ105のソースフォロア動作によりノードFDの電位が配線129に読み出される(読み出し動作)。
【0088】
【0089】
図2Bに示す画素回路は、
図11Bのタイミングチャートに従って動作させることができる。なお、配線121、123には常時“H”が供給され、配線122には常時“L”が供給されている状態とする。基本的な動作は、上記の
図11Aのタイミングチャートの説明と同様である。
【0090】
本発明の一態様においては、
図12A、
図12Bに例示するように、トランジスタにバックゲートを設けた構成としてもよい。
図12Aは、バックゲートがフロントゲートと電気的に接続された構成を示しており、オン電流を高める効果を有する。
図12Bは、バックゲートが定電位を供給できる配線と電気的に接続された構成を示しており、トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。
【0091】
また、
図12A、
図12Bを組み合わせるなど、それぞれのトランジスタが適切な動作が行えるような構成としてもよい。また、バックゲートが設けられないトランジスタを画素回路が有していてもよい。
【0092】
図13は、本発明の一態様の撮像装置を説明するブロック図である。当該撮像装置は、マトリクス状に配列された本発明の一態様の画素回路50を有する画素アレイ51と、画素アレイ51の行を選択する機能を有する回路52(ロードライバ)と、画素回路50からデータを読み出す機能を有する回路53と、電源電位を供給する回路58を有する。
【0093】
回路53は、画素アレイ51の列を選択する機能を有する回路54(カラムドライバ)と、画素回路50の出力データに対して相関二重サンプリング処理を行うための回路55(CDS回路)と、回路55から出力されたアナログデータをデジタルデータに変換する機能を有する回路56(A/D変換回路等)などを有することができる。
【0094】
回路52、54には、シフトレジスタ回路やデコーダ回路を用いることができる。回路52、53、58の一部または全ては、
図1に示す層13に設けられたOSトランジスタで形成されていてもよい。または、回路52、53、58の一部は、層12に設けられたSiトランジスタで形成されていてもよい。
【0095】
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
【0096】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の撮像装置の構造例などについて詳細を説明する。
【0097】
図14Aは、第1の方法で作製することのできる画素の断面の一例を説明する図である。
図14Bは、第2の方法で作製することのできる画素の断面の一例を説明する図である。
【0098】
層12には光電変換デバイス101として、n型の導電型を有する領域22、p型の導電型を有する領域(単結晶シリコン基板21)およびp
+型の導電型を有する領域28を有するpn接合型フォトダイオードが設けられる。層13にはOSトランジスタが設けられる。
図14A、
図14Bでは
図2Aに示す回路構成を例として、トランジスタ103、105、106を例示する。層14には支持基板25などが設けられる。
【0099】
なお、
図14Aにおける層13では、絶縁層24は絶縁層63および絶縁層64の2層である例を示している。絶縁層63には、例えばアクリル樹脂やポリイミドなどの有機膜を用いることができる。絶縁層64には酸化シリコン膜などの無機膜を用いることができる。
【0100】
また、
図14Bにおける層13では、絶縁層31は絶縁層63、絶縁層65および絶縁層64の3層である例を示している。
【0101】
絶縁層65は水素の拡散を防止する機能を有し、OSトランジスタが形成される領域と光電変換デバイス101等のSiデバイスが形成される領域との間に設けられる。光電変換デバイス101近傍に設けられる絶縁層中の水素は、シリコンのダングリングボンドを終端する。一方、トランジスタ102、105、106のチャネル形成領域の近傍に設けられる絶縁層中の水素は、酸化物半導体層中にキャリアを生成する要因の一つとなる。
【0102】
絶縁層65により、一方の層に水素を閉じ込めることでSiデバイスの信頼性を向上させることができる。また、一方の層から他方の層への水素の拡散が抑制されることでトランジスタ102、105、106の信頼性も向上させることができる。
【0103】
絶縁層65としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等を用いることができる。
【0104】
なお、絶縁層65は上記の効果が得られる位置であれば、その他の位置に設けられていてもよい。例えば、絶縁層63と絶縁層65を入れ替えてもよい。
【0105】
図15AにOSトランジスタの詳細を示す。
図15Aに示すOSトランジスタは、酸化物半導体層および導電層の積層上に絶縁層を設け、当該半導体層に達する溝を設けることでソース電極205およびドレイン電極206を形成するセルフアライン型の構成である。
【0106】
OSトランジスタは、酸化物半導体層207に形成されるチャネル形成領域、ソース領域203およびドレイン領域204のほか、ゲート電極201、ゲート絶縁膜202を有する構成とすることができる。当該溝には少なくともゲート絶縁膜202およびゲート電極201が設けられる。当該溝には、さらに酸化物半導体層208が設けられていてもよい。
【0107】
OSトランジスタは、
図15Bに示すように、ゲート電極201をマスクとして半導体層にソース領域203およびドレイン領域204を形成するセルフアライン型の構成としてもよい。
【0108】
または、
図15Cに示すように、ソース電極205またはドレイン電極206とゲート電極201とが重なる領域を有するノンセルフアライン型のトップゲート型トランジスタであってもよい。
【0109】
トランジスタ103、105、106はバックゲート535を有する構造を示しているが、バックゲートを有さない構造であってもよい。バックゲート535は、
図15Dに示すトランジスタのチャネル幅方向の断面図のように、対向して設けられるトランジスタのフロントゲートと電気的に接続してもよい。なお、
図15Dは
図15AのトランジスタのA1-A2断面を示しているが、その他の構造のトランジスタも同様である。また、バックゲート535にフロントゲートとは異なる固定電位を供給することができる構成であってもよい。
【0110】
OSトランジスタに用いる半導体材料としては、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である金属酸化物を用いることができる。代表的には、インジウムを含む酸化物半導体などであり、例えば、後述するCAAC-OSまたはCAC-OSなどを用いることができる。CAAC-OSは結晶を構成する原子が安定であり、信頼性を重視するトランジスタなどに適する。また、CAC-OSは、高移動度特性を示すため、高速駆動を行うトランジスタなどに適する。
【0111】
OSトランジスタは半導体層のエネルギーギャップが大きいため、数yA/μm(チャネル幅1μmあたりの電流値)という極めて低いオフ電流特性を示す。また、OSトランジスタは、インパクトイオン化、アバランシェ降伏、および短チャネル効果などが生じないなどSiトランジスタとは異なる特徴を有し、高耐圧で信頼性の高い回路を形成することができる。また、Siトランジスタでは問題となる結晶性の不均一性に起因する電気特性のばらつきもOSトランジスタでは生じにくい。
【0112】
OSトランジスタが有する半導体層は、例えばインジウム、亜鉛およびM(アルミニウム、チタン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、スズ、ネオジムまたはハフニウム等の金属)を含むIn-M-Zn系酸化物で表記される膜とすることができる。In-M-Zn系酸化物は、例えば、スパッタリング法、ALD(Atomic layer deposition)法、またはMOCVD(Metal organic chemical vapor deposition)法などを用いて形成することができる。
【0113】
In-M-Zn系酸化物をスパッタリング法で成膜する場合、スパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8等が好ましい。なお、成膜される半導体層の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0114】
半導体層としては、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いる。例えば、半導体層は、キャリア密度が1×1017/cm3以下、好ましくは1×1015/cm3以下、さらに好ましくは1×1013/cm3以下、より好ましくは1×1011/cm3以下、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10-9/cm3以上の酸化物半導体を用いることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。当該酸化物半導体は欠陥準位密度が低く、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
【0115】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性および電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、半導体層のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0116】
半導体層を構成する酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、半導体層におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0117】
また、アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため、半導体層におけるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
【0118】
また、半導体層を構成する酸化物半導体に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じてキャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため半導体層における窒素濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
【0119】
また、半導体層を構成する酸化物半導体に水素が含まれていると、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸化物半導体中に酸素欠損を形成する場合がある。酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。したがって、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0120】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、酸化物半導体のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、酸化物半導体においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、酸化物半導体のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0121】
よって、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0122】
また、酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(C-Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0123】
非晶質構造の酸化物半導体膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物膜は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
【0124】
なお、半導体層が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のうち、二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば上述した領域のうち、いずれか二種以上の領域を含む単層構造、または積層構造を有する場合がある。
【0125】
以下では、非単結晶の半導体層の一態様であるCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0126】
CAC-OSとは、例えば、酸化物半導体を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、酸化物半導体において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0127】
なお、酸化物半導体は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0128】
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OS(CAC-OSの中でもIn-Ga-Zn酸化物を、特にCAC-IGZOと呼称してもよい。)とは、インジウム酸化物(以下、InOX1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、InX2ZnY2OZ2(X2、Y2、およびZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、ガリウム酸化物(以下、GaOX3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、またはガリウム亜鉛酸化物(以下、GaX4ZnY4OZ4(X4、Y4、およびZ4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInOX1、またはInX2ZnY2OZ2が、膜中に均一に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
【0129】
つまり、CAC-OSは、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合酸化物半導体である。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0130】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO3(ZnO)m1(m1は自然数)、またはIn(1+x0)Ga(1-x0)O3(ZnO)m0(-1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。
【0131】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa-b面においては配向せずに連結した結晶構造である。
【0132】
一方、CAC-OSは、酸化物半導体の材料構成に関する。CAC-OSとは、In、Ga、Zn、およびOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。したがって、CAC-OSにおいて、結晶構造は副次的な要素である。
【0133】
なお、CAC-OSは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない。
【0134】
なお、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0135】
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれている場合、CAC-OSは、一部に該金属元素を主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。
【0136】
CAC-OSは、例えば基板を意図的に加熱しない条件で、スパッタリング法により形成することができる。また、CAC-OSをスパッタリング法で形成する場合、成膜ガスとして、不活性ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、および窒素ガスの中から選ばれたいずれか一つまたは複数を用いればよい。また、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガスの流量比は低いほど好ましく、例えば酸素ガスの流量比を0%以上30%未満、好ましくは0%以上10%以下とすることが好ましい。
【0137】
CAC-OSは、X線回折(XRD:X-ray diffraction)測定法のひとつであるOut-of-plane法によるθ/2θスキャンを用いて測定したときに、明確なピークが観察されないという特徴を有する。すなわち、X線回折測定から、測定領域のa-b面方向、およびc軸方向の配向は見られないことが分かる。
【0138】
また、CAC-OSは、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで得られる電子線回折パターンにおいて、リング状に輝度の高い領域(リング領域)と、該リング領域に複数の輝点が観測される。したがって、電子線回折パターンから、CAC-OSの結晶構造が、平面方向、および断面方向において、配向性を有さないnc(nano-crystal)構造を有することがわかる。
【0139】
また、例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0140】
CAC-OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC-OSは、GaOX3などが主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0141】
ここで、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域は、GaOX3などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、酸化物半導体としての導電性が発現する。したがって、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域が、酸化物半導体中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
【0142】
一方、GaOX3などが主成分である領域は、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaOX3などが主成分である領域が、酸化物半導体中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
【0143】
したがって、CAC-OSを半導体デバイスに用いた場合、GaOX3などに起因する絶縁性と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、および高い電界効果移動度(μ)を実現することができる。
【0144】
また、CAC-OSを用いた半導体デバイスは、信頼性が高い。したがって、CAC-OSは、様々な半導体装置の構成材料として適している。
【0145】
図14Aでは、層13と層14の機械的な接続を貼り合わせ技術で得る構成例を示している。また、
図14Bでは、層12と層13の機械的な接続および電気的な接続を貼り合わせ技術で得る構成例を示している。以下に、
図14Bを例として貼り合わせ技術の説明を行う。
【0146】
層12には、絶縁層33および導電層34が設けられる。導電層34は、絶縁層33に埋設された領域を有する。導電層34は、領域22と電気的に接続される。また、絶縁層33、導電層34の表面は、それぞれ高さが一致するように平坦化されている。
【0147】
層13には、絶縁層31および導電層32が設けられる。導電層32は、絶縁層31に埋設された領域を有する。導電層32は、トランジスタ103と電気的に接続される。また、絶縁層31および導電層32の表面は、それぞれ高さが一致するように平坦化されている。
【0148】
ここで、導電層32および導電層34は、主成分が同一の金属元素であることが好ましい。また、絶縁層31および絶縁層33の表面は、同一の成分で構成されていることが好ましい。
【0149】
例えば、導電層32、34には、Cu、Al、Sn、Zn、W、Ag、PtまたはAuなどを用いることができる。接合のしやすさから、好ましくはCu、Al、W、またはAuを用いる。また、絶縁層31、33の表面には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、窒化チタンなどを用いることができる。
【0150】
つまり、導電層32および導電層34の組み合わせに、上記に示す同一の金属材料を用いることが好ましい。また、絶縁層31および絶縁層33のそれぞれに、上記に示す同一の絶縁材料を用いることが好ましい。当該構成とすることで、層12と層13の境を接合位置とする、貼り合わせを行うことができる。
【0151】
当該貼り合わせによって、導電層32および導電層34の電気的な接続を得ることができる。また、絶縁層31および絶縁層33の機械的な強度を有する接続を得ることができる。
【0152】
金属層同士の接合には、表面の酸化膜および不純物の吸着層などをスパッタリング処理などで除去し、清浄化および活性化した表面同士を接触させて接合する表面活性化接合法を用いることができる。または、温度と圧力を併用して表面同士を接合する拡散接合法などを用いることができる。どちらも原子レベルでの結合が起こるため、電気的だけでなく機械的にも優れた接合を得ることができる。
【0153】
また、絶縁層同士の接合には、研磨などによって高い平坦性を得たのち、酸素プラズマ等で親水性処理をした表面同士を接触させて仮接合し、熱処理による脱水で本接合を行う親水性接合法などを用いることができる。親水性接合法も原子レベルでの結合が起こるため、機械的に優れた接合を得ることができる。
【0154】
層12と、層13を貼り合わせる場合、それぞれの接合面には絶縁層と金属層が混在するため、例えば、表面活性化接合法および親水性接合法を組み合わせて行えばよい。
【0155】
例えば、研磨後に表面を清浄化し、金属層の表面に酸化防止処理を行ったのちに親水性処理を行って接合する方法などを用いることができる。また、金属層の表面をAuなどの難酸化性金属とし、親水性処理を行ってもよい。なお、上述した方法以外の接合方法を用いてもよい。
【0156】
以下では、イメージセンサチップを収めたパッケージおよびカメラモジュールの一例について説明する。当該イメージセンサチップには、上記撮像装置の構成を用いることができる。
【0157】
図16A1は、イメージセンサチップを収めたパッケージの上面側の外観斜視図である。当該パッケージは、イメージセンサチップ650を固定するパッケージ基板610、カバーガラス620および両者を接着する接着剤630等を有する。
【0158】
図16A2は、当該パッケージの下面側の外観斜視図である。パッケージの下面には、半田ボールをバンプ640としたBGA(Ball grid array)を有する。なお、BGAに限らず、LGA(Land grid array)やPGA(Pin Grid Array)などを有していてもよい。
【0159】
図16A3は、カバーガラス620および接着剤630の一部を省いて図示したパッケージの斜視図である。パッケージ基板610上には電極パッド660が形成され、電極パッド660およびバンプ640はスルーホールを介して電気的に接続されている。電極パッド660は、イメージセンサチップ650とワイヤ670によって電気的に接続されている。
【0160】
また、
図16B1は、イメージセンサチップをレンズ一体型のパッケージに収めたカメラモジュールの上面側の外観斜視図である。当該カメラモジュールは、イメージセンサチップ651を固定するパッケージ基板611、レンズカバー621、およびレンズ635等を有する。また、パッケージ基板611およびイメージセンサチップ651の間には撮像装置の駆動回路および信号変換回路などの機能を有するICチップ690も設けられており、SiP(System in package)としての構成を有している。
【0161】
図16B2は、当該カメラモジュールの下面側の外観斜視図である。パッケージ基板611の下面および側面には、実装用のランド641が設けられたQFN(Quad flat no-lead package)の構成を有する。なお、当該構成は一例であり、QFP(Quad flat package)や前述したBGAが設けられていてもよい。
【0162】
図16B3は、レンズカバー621およびレンズ635の一部を省いて図示したモジュールの斜視図である。ランド641は電極パッド661と電気的に接続され、電極パッド661はイメージセンサチップ651またはICチップ690とワイヤ671によって電気的に接続されている。
【0163】
イメージセンサチップを上述したような形態のパッケージに収めることでプリント基板等への実装が容易になり、イメージセンサチップを様々な半導体装置、電子機器に組み込むことができる。
【0164】
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
【0165】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る撮像装置を用いることができる電子機器の一例を説明する。本発明の一態様の撮像装置は赤外光透過フィルタを不要とする構成とすることもでき、薄型化が容易で、様々な機器に組み込みやすくなる。なお、赤外光透過フィルタは、撮像装置に組み込まず、電子機器の光路に組み込んでもよい。
【0166】
図17Aは指の静脈を対象とした生体認証機器であり、筐体911、光源912、検知ステージ913等を有する。検知ステージ913に指を載せることにより静脈の形状を撮像することができる。検知ステージ913の上部には光源912が設置され、下部には撮像装置914が設置される。検知ステージ913は赤外光を透過する材料で構成されており、光源912から照射され、指を透過した赤外光を撮像装置914で撮像することができる。なお、検知ステージ913と撮像装置914の間に光学系が設けられていてもよい。上記機器の構成は、手のひらの静脈を対象とした生体認証機器に利用することもできる。
【0167】
光源912は、薄型のELデバイスで形成することができる。当該ELデバイスは、湾曲した形状に設置することができ、対象物に対して均一性よく光を照射することができる。特に波長700nm以上1200nm以下にピークを有する近赤外光を発するELデバイスであることが好ましい。例えば、波長760nmおよびその近傍の光は静脈中のヘモグロビンに吸収されやすいため、指や手のひらなどを透過した光を受光して画像化することで静脈の位置を検出することができる。当該作用は生体認証として利用することができる。また、グローバルシャッタ方式と組み合わせることで、被写体に動きがあっても精度の高いセンシングが可能となる。
【0168】
また、光源912は、
図17Bに示す発光部915、916、917のように、複数の発光部を有することができる。発光部915、916、917のそれぞれは、発光する波長が異なっていてもよい、また、それぞれを別のタイミングで照射することもできる。したがって、照射する光の波長や角度を変えることにより異なる画像を連続して撮像することができるため、複数の画像を認証に利用し、高いセキュリティ実現することができる。
【0169】
図17Cは手のひらの静脈を対象とした生体認証機器であり、筐体921、操作ボタン922、検知部923、光源924等を有する。検知部923上に手をかざすことにより手のひらの静脈の形状を認識することができる。また、操作ボタンにより暗証番号などを入力することもできる。検知部923の周囲には光源924が配置され対象物(手)を照射する。そして、対象物からの反射光が検知部923に入射される。光源924には、近赤外光を発する薄型のELデバイスで形成されている。検知部923直下には撮像装置925が配置され、対象物の像(手の全体像)を取り込むことができる。なお、検知部923と撮像装置925の間に光学系が設けられていてもよい。上記機器の構成は、指の静脈を対象とした生体認証機器に利用することもできる。
【0170】
図18Aは非破壊検査機器であり、筐体931、操作パネル932、搬送機構933、モニタ934、検知ユニット935、光源938等を有する。被検査部材936は搬送機構933で検知ユニット935の直下に運搬される。被検査部材936には光源938から赤外光が照射され、その透過光を検知ユニット935内に設けられた本発明の一態様の撮像装置937で撮像する。撮像された画像は、モニタ934に映し出される。その後、筐体931の出口まで運搬され、不良品が分別されて回収される。近赤外光を用いた撮像により、非検査部材内部の欠陥や異物などの不良要素を非破壊で高速に検出することができる。
【0171】
図18Bは監視カメラであり、筐体951、レンズ952、光源953、支持部954等を有する。光源953から射出された赤外光を照射された被写体を本発明の一態様の撮像装置955で撮像することができる。また、当該監視カメラは、ストラクチャードライトの構成を有していてもよい。ストラクチャードライトでは、光源953から線状または点状などの指向性のある光を被写体に照射し、別角度から当該光の撮像を行う。被写体に照射された光は被写体の形状によって歪むため、この光を画像として取得し、その画像から被写体の形や奥行などの情報を得ることができる。また、当該監視カメラは、ToF(Time of Flight)センサの構成を有していてもよい。ToFセンサでは、光源953から発した光が被写体で反射してセンサ(撮像装置955)に届くまでの時間を検出する。当該時間を撮像装置955の画素ごとに検出することにより被写体までの距離の情報を詳細に得ることができる。すなわち、被写体の表面形状や数を認識することができる。
【0172】
図18Cは携帯電話機であり、筐体981、表示部982、操作ボタン983、外部接続ポート984、スピーカ985、マイク986、第1のカメラ987、第2のカメラ988等を有する。当該携帯電話機は、表示部982にタッチセンサを備える。筐体981および表示部982は可撓性を有する。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部982に触れることで行うことができる。第1のカメラでは可視光画像を取得することができ、第2のカメラでは赤外光画像を取得することができる。当該携帯電話機における赤外光画像取得のための要素に本発明の一態様の撮像装置を適用することができる。
【0173】
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0174】
11:層、12:層、13:層、14:層、21:単結晶シリコン基板、22:領域、23:デバイス形成層、24:絶縁層、25:支持基板、26:絶縁層、27:研削研磨ツール、28:領域、30:遮光層、31:絶縁層、32:導電層、33:絶縁層、34:導電層、35:絶縁層、36:開口部、37:導電層、38:絶縁層、39:遮光層、40:絶縁層、41:光学フィルタ層、42:マイクロレンズアレイ、50:画素回路、51:画素アレイ、52:回路、53:回路、54:回路、55:回路、56:回路、58:回路、63:絶縁層、64:絶縁層、65:絶縁層、101:光電変換デバイス、102:トランジスタ、103:トランジスタ、104:トランジスタ、105:トランジスタ、106:トランジスタ、108:キャパシタ、121:配線、122:配線、123:配線、126:配線、127:配線、128:配線、129:配線、201:ゲート電極、202:ゲート絶縁膜、203:ソース領域、204:ドレイン領域、205:ソース電極、206:ドレイン電極、207:酸化物半導体層、208:酸化物半導体層、535:バックゲート、610:パッケージ基板、611:パッケージ基板、620:カバーガラス、621:レンズカバー、630:接着剤、635:レンズ、640:バンプ、641:ランド、650:イメージセンサチップ、651:イメージセンサチップ、660:電極パッド、661:電極パッド、670:ワイヤ、671:ワイヤ、690:ICチップ、911:筐体、912:光源、913:検知ステージ、914:撮像装置、915:発光部、916:発光部、917:発光部、921:筐体、922:操作ボタン、923:検知部、924:光源、925:撮像装置、931:筐体、932:操作パネル、933:搬送機構、934:モニタ、935:検知ユニット、936:被検査部材、937:撮像装置、938:光源、951:筐体、952:レンズ、953:光源、954:支持部、955:撮像装置、981:筐体、982:表示部、983:操作ボタン、984:外部接続ポート、985:スピーカ、986:マイク、987:カメラ、988:カメラ