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特許7500436半透膜支持体及び半透膜支持体の製造方法
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  • 特許-半透膜支持体及び半透膜支持体の製造方法 図1
  • 特許-半透膜支持体及び半透膜支持体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】半透膜支持体及び半透膜支持体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/10 20060101AFI20240610BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20240610BHJP
【FI】
B01D69/10
D04H1/541
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020565145
(86)(22)【出願日】2020-01-06
(86)【国際出願番号】 JP2020000065
(87)【国際公開番号】W WO2020145240
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2019001609
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(72)【発明者】
【氏名】落合 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】志水 祐介
(72)【発明者】
【氏名】増田 敬生
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/129610(WO,A1)
【文献】特開2013-220382(JP,A)
【文献】特開2013-188712(JP,A)
【文献】特開2016-159197(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174224(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/049231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-58、63/00-16、69/00-14、71/00-82
D04H 1/00-76
D21H 13/00-50、15/00-12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透膜を設けて用いる半透膜支持体において、該半透膜支持体が合成繊維からなる主体繊維及びバインダー繊維を含む湿式不織布であり、上記合繊繊維の繊維径が1~30μm且つ繊維長が1~20mmであり、上記半透膜支持体の一枚当たりの坪量が20~150g/mであり、上記半透膜支持体の厚みが40~300μmであり、上記半透膜支持体の通気度が0.5~25.0cc/cm・secであり、
上記半透膜支持体の0.80N/cm条件での測定厚みと1.27N/cm条件での測定厚みとの差異が、上記0.80N/cm条件での測定厚みに対し1.0%以上5.0%以下であることを特徴とする半透膜支持体。
【請求項2】
該半透膜支持体の0.80N/cm条件での測定厚みと1.27N/cm条件での測定厚みとの差異が、上記0.80N/cm条件での測定厚みに対し1.4%以上3.0%以下であることを特徴とする請求項1記載の半透膜支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透膜支持体及び半透膜支持体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で、半透膜が広く用いられている。半透膜の分離機能層としては、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂等の多孔質性樹脂で構成されている。しかし、これら多孔質性樹脂単体では機械的強度に劣るため、不織布や織布などの繊維基材からなる半透膜支持体の片面に半透膜が設けられた複合体の形態である「濾過膜」が使用されている。半透膜支持体において、半透膜が設けられる面を「塗布面」と称し、半透膜が設けられない面を「非塗布面」と称する。
【0003】
半透膜支持体に半透膜が設けられた形態である「濾過膜」は、上述したポリスルホン系樹脂等の合成樹脂を有機溶媒に溶解して半透膜溶液を調製した後、この半透膜溶液を半透膜支持体上に塗布する方法が広く用いられている。そして、半透膜と半透膜支持体の接着性が高いことが求められている。
【0004】
また、濾過膜はモジュール化されて使用される。シート状の濾過膜における代表的なモジュールは、スパイラル型モジュールと平膜型モジュールである。管状の濾過膜における代表的なモジュールは、管型/チューブラー型モジュールである(非特許文献1参照)。スパイラル型モジュールは、原水供給側流路材(以下、「原水供給側流路材」を「原水スペーサー」と称する場合がある)と濾過膜と処理水透過側流路材(以下、「処理水透過側流路材」を「透過水スペーサー」と称する場合がある)とを一緒に巻き上げた構造を有している(特許文献1参照)。また、平膜型モジュールでは、ポリプロピレンやアクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン(Butadiene)・スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)等の樹脂からなるフレーム材に、濾過膜を接着・固定して用いられる。フレーム材への接着・固定には加熱融着処理、超音波融着処理等が行われるのが一般的である。
【0005】
半透膜支持体としては、一般に、パルプ繊維を抄紙して得られる紙、ポリエステル繊維やポリプロピレン繊維から形成した不織布が用いられる(特許文献2及び特許文献3参照)。また、湿式抄造法により製造されたシートに、昇温機構を備えた金属ロールや弾性ロールを任意に組み合わせて、温度、圧力、ロール硬度等を調整して熱圧加工処理を施すことによって、半透膜支持体の強度、密度等の性能を変化させることができる(特許文献4参照)。
【0006】
近年、シート状の濾過膜を用いたスパイラル型モジュールにて、設計時に算出された透水性が、モジュール化後に発揮されないといった問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-252543号公報
【文献】特開昭56-152705号公報
【文献】特開2002-95937号公報
【文献】特開2004-100047号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】下水道膜処理技術会議編、「下水道への膜処理技術導入のためのガイドライン」、第2版、[online]、平成23年3月、[平成28年1月6日検索]、インターネット<URL:http://www.mlit.go.jp/common/000146906.pdf> 発明者は、スパイラル型モジュールに用いられる半透膜支持体において、モジュール化後に設計時に算出された透水性が発揮されない原因を検討したところ、原水スペーサーと半透膜との密着性が低いことがわかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、半透膜と半透膜支持体との接着性に優れると共に、原水スペーサーと半透膜との密着性にも優れており、これらの性能から、モジュール化後の透水性を良好に維持することが期待できる半透膜支持体を提供することである。
本発明の他の目的は、本発明の上記半透膜支持体を製造するための、工業的に有利な製造法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的及び利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記発明を見出した。
【0011】
(1)半透膜を設けて用いる半透膜支持体において、該半透膜支持体が合成繊維からなる主体繊維及びバインダー繊維を含む湿式不織布であり、上記合繊維の繊維径が1~30μm且つ繊維長が1~20mmであり、上記半透膜支持体の一枚当たりの坪量が20~150g/m であり、上記半透膜支持体の厚みが40~300μmであり、上記半透膜支持体の通気度が0.5~25.0cc/cm ・secであり、上記半透膜支持体の0.80N/cm条件での測定厚みと1.27N/cm条件での測定厚みとの差異が、上記0.80N/cm条件での測定厚みに対し1.0%以上5.0%以下であることを特徴とする半透膜支持体。
【0012】
(2)該半透膜支持体の0.80N/cm条件での測定厚みと1.27N/cm条件での測定厚みとの差異が、上記0.80N/cm条件での測定厚みに対し1.4%以上3.0%以下であることを特徴とする(1)記載の半透膜支持体。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半透膜支持体によれば、半透膜と半透膜支持体との接着性に優れると共に、原水スペーサーと半透膜との密着性にも優れていることから、モジュール化後の透水性を良好に維持することが期待できる。また、本発明の半透膜支持体の製造方法によれば、半透膜と半透膜支持体との接着性により優れた半透膜支持体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明において、熱圧加工で使用されるロールの組み合わせ及び配置並びにシートの通紙状態を表した概略図である。
図2】本発明において、熱圧加工で使用されるロールの組み合わせ及び配置並びにシートの通紙状態を表した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の半透膜支持体は、主体合成繊維とバインダー合成繊維とを少なくとも含有してなる湿式不織布であることが好ましい。本発明の半透膜支持体は、一方の面に半透膜を設けて用いる半透膜支持体であり、該半透膜支持体の0.80N/cm条件での測定厚みと1.27N/cm条件での測定厚みとの差異が、上記0.80N/cm条件での測定厚みに対し1.0%以上5.0%以下であることを特徴とする。
【0018】
より好ましくは、該半透膜支持体の0.80N/cm条件での測定厚みと1.27N/cm条件での測定厚みとの差異が、上記0.80N/cm条件での測定厚みに対し1.4%以上3.0%以下である半透膜支持体である。
【0019】
本明細書では、「0.80N/cm条件での測定厚み」を「測定厚み(0.80)」と略記する場合がある。また、「1.27N/cm条件での測定厚み」を「測定厚み(1.27)」と略記する場合がある。また、「0.80N/cm条件での測定厚みと1.27N/cm条件での測定厚みとの差異」を「測定厚みの差異」と略記する場合がある。「測定厚みの差異」は、「{測定厚み(0.80)-測定厚み(1.27)}/測定厚み(0.80)×100」であり、単位は「%」である。
【0020】
本発明の検討の結果、測定厚みの差異が、5.0%以下であることにより、スパイラル型モジュールを形成して使用する際に、原水スペーサーと半透膜が良好に接触して密着し、半透膜面上で良好な乱流が発生することで、透水性を良好に維持することができる。測定厚みの差異が5.0%より大きい場合、スパイラル型モジュールを使用する際に半透膜支持体にかかる圧力により、原水スペーサーと半透膜との界面に隙間が生じ、良好な乱流が発生しなくなることで、透水性が低下してしまう。また、測定厚みの差異が、1.0%以上であることにより、スパイラル型モジュールを作製する際に、原水スペーサー及び透過水スペーサーと半透膜及び半透膜支持体を良好に密着させることができ、透水性を良好に維持することができる。測定厚みの差異が1.0%より小さい場合、スパイラル型モジュールを作製する際に、原水スペーサー又は透過水スペーサーと濾過膜との密着性が低下し、隙間が生じ易くなり、透水性が低下する。
【0021】
本発明において、測定厚みの差異が3.0%以下であることがより好ましい。測定厚みの差異が3.0%以下である場合、スパイラル型モジュールを形成して使用する際に、半透膜支持体に圧力がかかっても原水スペーサーと半透膜との界面に隙間がより生じ難く、より良好な乱流が発生することで、透水性をより良好に維持することができる。また、測定厚みの差異が、1.4%以上であることがより好ましい。測定厚みの差異が1.4%以上である場合、スパイラル型モジュールを作製する際に、原水スペーサー及び透過水スペーサーと半透膜及び半透膜支持体をより良好に密着させることができ、透水性をより良好に維持することができる。
【0022】
本発明の半透膜支持体は、主体繊維及びバインダー繊維を含有してなることが好ましい。主体繊維は、半透膜支持体の骨格を形成する繊維である。主体繊維としては、主として合成繊維を用いる。例えば、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ベンゾエート系、ポリクラール系、フェノール系などの繊維が挙げられ、特に限定されないが、耐熱性の高いポリエステル系の繊維がより好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)系の繊維がさらに好ましい。また、半合成繊維のアセテート、トリアセテート、プロミックスや、再生繊維のレーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等を併用しても良い。
【0023】
バインダー繊維としては、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維等の複合繊維、未延伸繊維等が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、半透膜支持体の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。より具体的には、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ、ポリエステル等の未延伸繊維が挙げられる。また、ポリエチレンやポリプロピレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール系のような熱水可溶性バインダーは、半透膜支持体の乾燥工程で皮膜を形成しやすいが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。本発明においては、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ及びポリエステルの未延伸繊維が好ましく、PET系の未延伸繊維がより好ましい。
【0024】
本発明の半透膜支持体は、主体繊維として、繊維径の異なる2種類以上の繊維を併用しても良く、これらの平均繊維径は特に限定されない。繊維径の異なる2種類以上の主体繊維を任意に併用することで、繊維ネットワークに変化を与えることができ、測定厚みの差異、測定厚み(0.80)及び測定厚み(1.27)を調整することができる。
【0025】
本発明の半透膜支持体で使用される繊維の繊維径、繊維長は特に限定されないが、不織布強度と製造性等から、繊維径は、1μm以上30μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以上25μm以下であり、特に好ましくは5μm以上20μm以下である。繊維長は、1mm以上20mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以上12mm以下であり、特に好ましくは3mm以上10mm以下である。繊維の断面形状は円形が好ましいが、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止、表面平滑性のために、繊維分散性等の他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。また、分割性複合繊維を水流交絡やリファイナーにより細分化して使用することもできる。
【0026】
本発明の半透膜支持体の通気度は、好ましくは0.5~25.0cc/cm・secであり、より好ましくは1.0~20.0cc/cm・secであり、さらに好ましくは1.5~16.0cc/cm・secであり、特に好ましくは2.0~15.0cc/cm・secである。この範囲である場合、半透膜と半透膜支持体との接着性が良くなり、また、半透膜溶液を塗布した際に裏抜けが発生し難く、塗布面の平滑性も良好になり易い。
【0027】
本発明の半透膜支持体は、2層以上を積層した多層不織布でもよい。2層以上の構成は同一配合であってもよいし、異なる配合であってもよい。
【0028】
本発明の半透膜支持体の製造方法では、湿式抄造法により製造されたシートに熱圧加工処理が施される。
【0029】
本発明では、湿式抄造法により製造されたシートに熱圧加工処理を施す半透膜支持体の製造方法において、金属ロール及び弾性ロールとの組み合わせを有する熱圧加工処理装置を用いて熱圧加工処理を施す。弾性ロールは、タイプAデュロメータ硬さが60以上、タイプDデュロメータ硬さが95以下であり、ニップ圧力は30kN/m以上250kN/m以下であり、加工速度は20m/min以上100m/min以下であることが好ましく、半透膜と半透膜支持体との接着性により優れた半透膜支持体を製造することができる。
【0030】
本発明において、繊維配合以外に、各寄与割合は定かではないものの、湿式抄造法における湿紙の抄造条件、湿紙の乾燥条件、熱圧加工処理条件を適宜調整することで、測定厚みの差異を1.0%以上5.0%以下の範囲に調整することができる。
【0031】
湿式抄造法では、まず、繊維を均一に水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を経て、最終の繊維濃度を0.01~0.50質量%に調製されたスラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。繊維の分散性を均一にするために、工程中で分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
【0032】
抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網が単独で設置されている抄紙機、同種又は異種の2種以上の抄紙網がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等を使用することができる。本発明の半透膜支持体が多層不織布である場合、その製造方法としては、各抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する「抄き合わせ法」や、先に形成した一層上に繊維を分散したスラリーを流延して、他の層を形成して積層していく「流延法」等が挙げられる。流延法において、先に形成した一層は湿紙状態であっても良いし、乾燥状態であっても良い。また、2枚以上の乾燥状態の層を熱融着させて、多層不織布とすることもできる。
【0033】
また、抄紙機で湿紙を得る際、抄造速度や繊維濃度等を調整することで、同じ繊維配合であっても測定厚みの差異を調整することができる。例えば、抄造速度を上げると、相対的に測定厚みの差異は小さくなる傾向がある。スラリーの繊維濃度を下げると、相対的に測定厚みの差異は大きくなる傾向がある。これらの組み合わせ及びその他の手法を併用することで、測定厚みの差異を1.0%以上5.0%以下に調整することができる。その他の手法は、特に限定されるものではないが、例えばスラリーの投入速度、抄紙網の振動方向、振動速度、振幅の調整等が挙げられる。
【0034】
抄紙機で製造された湿紙を、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥することにより、シートを得る。湿紙の乾燥の際に、ヤンキードライヤー等の熱ロールに密着させて熱圧乾燥させることによって、密着させた面の平滑性が向上する。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押しつけて乾燥させることを言う。
【0035】
熱圧乾燥における熱ロールの表面温度は、100~180℃が好ましく、100~160℃がより好ましく、110~160℃がさらに好ましい。熱ロールの表面温度が100℃を下回る場合、抄紙機で製造された湿紙の水分が十分に蒸発せず、シートの厚み均一性が悪くなる場合があり、且つ測定厚みの差異が5.0%より大きくなる場合があり、熱ロールの表面温度が180℃を超える場合、抄紙機で製造された湿紙が熱ロールに貼り付いて、シートの地合が悪くなり、且つ測定厚みの差異が1.0%よりも小さくなる場合がある。圧力は、好ましくは5~100kN/mであり、より好ましくは10~80kN/mである。圧力が5kN/mを下回る場合、抄紙機で製造された湿紙の水分が十分に抜けず、シートの厚み均一性が悪くなる場合があり、且つ測定厚みの差異が5.0%より大きくなる場合があり、100kN/mを超える場合、抄紙機で製造された湿紙が熱ロールに貼り付いて、シートの地合が悪くなり、且つ測定厚みの差異が1.0%よりも小さくなる場合がある。
【0036】
本発明の半透膜支持体の製造方法では、熱圧加工処理装置のロール間をニップしながら、湿式抄造法で製造されたシートを通過させて熱圧加工処理を行う。ロールの組み合わせとしては、2本の金属ロール、金属ロールと樹脂ロール、金属ロールとコットンロール等が挙げられる。また、一方又は両方のロールを加熱する。さらに、必要に応じて、シートの表裏を逆にして、ニップへの通過回数を2回以上にしても良い。以下、「樹脂ロール」と「コットンロール」等を総称して「弾性ロール」と呼称する場合もある。中でも、金属ロールと弾性ロールの組み合わせが好ましい。
【0037】
図1及び図2は、本発明において、熱圧加工処理で使用されるロールの組み合わせ及び配置並びにシートの通紙状態を表した概略図である。図1及び図2は、一例であり、これらに限定されるものではない。図1及び図2において、符号1は金属ロールであり、符号2は弾性ロールである。金属ロール、弾性ロールのいずれも熱ロールとして使用できるが、好ましくは、金属ロール、弾性ロールを熱ロールとして使用する。より好ましくは、金属ロールを熱ロールとして使用する。図1は、1本の金属ロール1と1本の弾性ロール2からなる第一ロールニップ及び1本の金属ロール1と1本の弾性ロール2からなる第二ロールニップが連続して設置されている熱圧加工処理装置である。図2は、2本の金属ロール1からなる第一ロールニップ及び1本の金属ロール1と1本の弾性ロール2からなる第二ロールニップが連続して設置されている熱圧加工処理装置である。
【0038】
熱圧加工処理に用いるロールの表面温度は、示差熱分析(DSC)によって測定した繊維の融点又は軟化点に対して-60℃~+10℃であることが好ましく、-40℃~±0℃がより好ましい。ロール温度の表面温度を、シートに含まれる繊維の融点又は軟化温度より60℃を超えて低くすると、毛羽立ちが発生しやすくなる場合があり、均一な厚みの半透膜が得難くなる。一方、ロールの表面温度を、10℃を超えて高くすると、金属ロールに繊維の溶融分が付着して、半透膜支持体が不均一になる場合があり、均一な厚みの半透膜が得難くなると共に、半透膜支持体内の溶融分が過剰になることによって、クッション性が低下し、測定厚みの差異が1.0%よりも小さくなる場合がある。
【0039】
熱圧加工処理のニップ圧力は、30~250kN/mであることが好ましく、40~200kN/mであることがより好ましい。ニップ圧力が30kN/m未満である場合、十分な圧力がかかっておらず、半透膜支持体の表面平滑性が低下し、半透膜を設ける際に塗布ムラや欠陥を生じ易くなる。一方、ニップ圧力が250kN/mを超えると、圧力が高過ぎて、シートに皺が発生する場合がある。また、半透膜支持体の表面平滑性が高くなり過ぎ、半透膜を設ける際に半透膜の接着性が低下する場合がある。
【0040】
熱圧加工処理の加工速度は、20~100m/minであることが好ましく、より好ましくは30~60m/minである。加工速度が20m/min未満である場合、理由は定かではないが、厚みの上昇や通気度の上昇を招き、測定厚みの差異が5.0%より大きくなる場合がある。恐らくニップ前の余熱時間が増加することによって、バインダー合成繊維が失活していると推測される。一方、加工速度が100m/minを超えると、ニップ出口近傍で熱ロール側にシートが貼り付き易くなり、安定した操業が困難になる。
【0041】
ロールニップを構成する2本のロールの半径は同一でも、異なっていても良い。ロール半径は50~2000mmが好ましく、より好ましくは100~1500mmである。ロール半径が50mm未満である場合、所望の厚みが得られにくくなり、一方、ロール半径が2000mmを超えた場合、表面温度のコントロールが困難になる。
【0042】
金属ロールと弾性ロールとの組み合わせにおいて、弾性ロール及び金属ロールの材質等は特に限定されないが、硬さには好ましい範囲がある。弾性ロールのタイプAデュロメータ硬さは60以上であることが好ましく、より好ましくは70以上である。また、弾性ロールのタイプDデュロメータ硬さは95以下であることが好ましく、より好ましくは、タイプAデュロメータ硬さが80以下である。金属ロールは、特に限定されるものではないが、JIS Z2246:2000に規定する方法で測定されるショア硬さがHS60以上HS95以下であり、タングステンカーバイド溶射皮膜を有するロールであることが好ましい。
【0043】
弾性ロールのタイプAデュロメータ硬さが60未満である場合、弾性ロール表面が変形して所望の厚みが得られにくくなり、且つ、測定厚みの差異が5.0%より大きくなる場合がある。弾性ロールのタイプDデュロメータ硬さが95を超えると、金属ロールとニップした際に弾性ロールの表面に亀裂が入り易くなり、ロールを頻繁に交換する必要が生じ、安定操業が難くなる場合がある。一方、ショア硬さがHS95を越える金属ロールの表面は硬過ぎることから、シートに皺が発生する場合がある。ショア硬さがHS60未満の金属ロールでは、ニップ時に歪を生じ易くなり、皺の発生や半透膜支持体の均一性が悪化し易くなる。
【0044】
デュロメータ硬さは、JIS K6253-3:2012に規定する方法のデュロメータ硬さ試験に準拠して測定したものである。硬さは、タイプAデュロメータ~タイプDデュロメータで測定し、弾性ロール組み立て後の弾性ロール表面硬さを測定している。デュロメータの加圧面が弾性ロール表面に密着してから1/sec以内の見掛け硬さを読み、5点測定での中央値を「弾性ロールのデュロメータ硬さ」とした。
【0045】
本発明の半透膜支持体が多層不織布であって、湿式抄造法によって多層不織布を製造する場合、各層の坪量が下がることにより、スラリーの繊維濃度を下げることができるため、シートの地合が良くなり、その結果、塗布面の平滑性や均一性が向上する。また、各層の地合が不均一であった場合でも、積層することで補填できる。さらに、抄紙速度を上げることができ、操業性が向上する。
【0046】
半透膜支持体の1枚当たりの坪量は、好ましくは20~150g/mであり、より好ましくは30~110g/mであり、さらに好ましくは40~90g/mである。20g/m未満の場合は、十分な引張強度が得られず、また半透膜溶液が裏抜けしてしまい、半透膜の接着性が弱くなる場合がある。また、150g/mを超えた場合、製造工程で乾燥負荷が大きくなり、製造安定性が低下し易くなる。
【0047】
本発明の半透膜支持体は、2枚以上の不織布を該熱加工処理と同様の方法を用いて張り合わせてなる多層不織布であっても良い。各不織布の坪量は同一であっても良いし、異なっていても良い。この場合、製造工程での乾燥負荷を抑えつつ、坪量が20~300g/mの半透膜支持体を得ることができる。300g/mを超えた場合、張り合わせる工程での負荷が大きくなり、製造安定性が低下し易くなる。
【0048】
半透膜支持体の厚みは、好ましくは40~300μmであり、より好ましくは60~200μmであり、さらに好ましくは、80~150μmである。半透膜支持体の厚みが300μmを超えると、ユニットに組み込める濾過膜の面積が小さくなる場合やユニットに組み込める濾過膜の枚数が少なくなってしまう場合があり、結果として、濾過膜のライフが短くなってしまうことがある。一方、40μm未満の場合、十分な引張強度が得られない場合や通液性が低くなって、濾過膜のライフが短くなる場合がある。
【実施例
【0049】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0050】
(実施例1)
<シ―トの作製>
主体繊維として、繊維径7.7μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル系繊維を70質量%、バインダー繊維として、繊維径10.9μm、繊維長5mm、融点260℃の未延伸ポリエステル系バインダー繊維30質量%を、パルパーの水中で離解、分散させ、撹拌することで均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを傾斜ワイヤーと円網とのコンビネーションマシンを用いて、60m/minの抄造速度で、乾燥質量で各層とも37.5g/mの抄合わせ湿紙を形成した後、塗布面を表面温度130℃のヤンキードライヤーに接触させ、タッチロールの圧力を100kN/mで熱圧乾燥し、抄合わせ坪量75g/mのシートを得た。
【0051】
<熱圧加工処理>
図1に示すような、1本の金属ロール(半径450mm)と1本の弾性ロールからなる第一ロールニップ及び1本の金属ロール(半径450mm)と1本の弾性ロールからなる第二ロールニップが連続して設置されている熱圧加工処理装置を用いて、得られたシートに熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。熱圧加工処理の条件を表1に示した。
【0052】
(実施例2)
<シートの作製>
実施例1の<シ―トの作製>において、繊維配合を主体繊維80質量%、バインダー繊維20質量%に変更し、乾燥質量で各層とも40g/mになるように変更し、抄造速度を45m/minに変更し、タッチロールの圧力を5kN/mに変更した以外は同様にして、抄合わせ坪量80g/mのシートを得た。
【0053】
<熱圧加工処理>
実施例1の<熱圧加工処理>において、表1記載の熱圧加工処理の条件に変更した以外は同様にして、得られたシートに熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。
【0054】
(実施例3)
<シ―トの作製>
実施例2の<シ―トの作製>において、繊維配合を、主体繊維として、繊維径7.9μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル系繊維を20質量%、繊維径12.1μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル系繊維を30質量%、繊維径17.5μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル系繊維を20質量%、バインダー繊維として、繊維径10.5μm、繊維長5mm、融点260℃の未延伸ポリエステル系バインダー繊維30質量%に変更し、抄造速度を50m/minに変更し、タッチロールの圧力を80kN/mに変更した以外は同様にして、抄合わせ坪量80g/mのシートを得た。
【0055】
<熱圧加工処理>
図2に示すような、2本の金属ロール(半径450mm)からなる第一ロールニップ及び1本の金属ロール(半径450mm)と1本の弾性ロールからなる第二ロールニップが連続して設置されている熱圧加工処理装置を用いて、得られたシートに熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。熱圧加工処理の条件を表1に示した。
【0056】
(実施例4)
<シ―トの作製>
実施例2の<シ―トの作製>において、繊維配合を主体繊維75質量%、バインダー繊維25質量%に変更し、タッチロールの圧力を10kN/mに変更し、乾燥質量で各層とも37.5g/mになるように変更することで、抄合わせ坪量を75g/mに変更した以外は同様にしてシートを得た。
【0057】
<熱圧加工処理>
実施例2の<熱圧加工処理>と同様にして、得られたシートに熱圧加工処理を施し、半透膜支持体を得た。
【0058】
(実施例5)
<シ―トの作製>
実施例4の<シートの作製>において、抄造速度を50m/minに変更し、タッチロールの圧力を30kN/mに変更した以外は同様にして、抄合わせ坪量75g/mのシートを得た。
【0059】
<シ―トの作製>
実施例4の<熱圧加工処理>において、表1記載の熱圧加工処理の条件に変更した以外は同様にして、得られたシートに熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。
【0060】
(実施例6~8)
実施例1の<シ―トの作製>において得られたシートに、表1記載の各熱圧加工処理条件に変更した以外は実施例1の<熱圧加工処理>と同様にして熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。
【0061】
(比較例1)
実施例3の<シ―トの作製>において、繊維配合を、主体繊維として、繊維径7.9μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル系繊維を20質量%、繊維径12.1μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル系繊維を30質量%、繊維径17.5μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル系繊維を10質量%、バインダー繊維として、繊維径10.5μm、繊維長5mm、融点260℃の未延伸ポリエステル系バインダー繊維40質量%に変更し、タッチロールの圧力を110kN/mに変更し、各層の乾燥質量を45g/mに変更した以外は同様に、抄合わせ坪量90g/mのシートを得た。
【0062】
<熱圧加工処理>
実施例3の<熱圧加工処理>において、表1記載の熱圧加工処理の条件に変更した以外は同様にして、得られたシートに熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。
【0063】
(比較例2)
<シ―トの作製>
実施例2の<シ―トの作製>において、タッチロールの圧力を4kN/mに変更し、各層の乾燥質量を30g/mに変更した以外は同様にして、抄合わせ坪量60g/mのシートを得た。
【0064】
<熱圧加工処理>
実施例2の<熱圧加工処理>において、表1記載の熱圧加工処理の条件に変更した以外は同様にして、得られたシートに熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。
【0065】
(比較例3)
<シ―トの作製>
実施例1の<シ―トの作製>において、主体繊維として、繊維径17.5μm、繊維長5mmの延伸ポリエステル系繊維を35質量%、バインダー繊維として、繊維径10.5μm、繊維長5mm、融点256℃の未延伸ポリエステル系バインダー繊維65質量%を用いて、30m/minの抄造速度で、各層の乾燥質量を50.0g/mに変更した以外は同様にして、抄合わせ坪量100g/mのシートを得た。
【0066】
<熱圧加工処理>
実施例1の<熱圧加工処理>において、表1記載の熱圧加工処理の条件に変更した以外は同様にして、得られたシートに熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。
【0067】
(比較例4)
<シートの作製>
比較例3の<シートの作製>において、主体繊維を50質量%、バインダー繊維を50質量%に変更した以外は同様にして、抄合わせ坪量100g/mのシートを得た。
【0068】
<熱圧加工処理>
実施例1の<熱圧加工処理>において、表1記載の熱圧加工処理の条件に変更した以外は同様にして、得られたシートに熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。
【0069】
(比較例5)
<シートの作製>
比較例3の<シートの作製>において、主体繊維を65質量%、バインダー繊維を35質量%に変更した以外は同様して、抄合わせ坪量100g/mのシートを得た。
【0070】
<熱圧加工処理>
実施例1の<熱圧加工処理>において、表1記載の熱圧加工処理の条件に変更した以外は同様にして、得られたシートに熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。
【0071】
(比較例6~7)
実施例1の<シ―トの作製>において得られたシートに、表1記載の各熱圧加工処理条件に変更した以外は実施例1の<熱圧加工処理>と同様にして熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。
【0072】
上記比較例3~5は、先行技術文献4(特開2004-100047号公報)に開示されている実施例4~6を参考にした例である。
【0073】
実施例及び比較例で得られた半透膜支持体に対して、以下の測定及び評価を行い、結果を表1に示した。
【0074】
測定1(測定厚み(1.27))
精密厚さ測定器(Swiss Instruments社製、商品名:Tesa Micro-Hite100)を用いて、測定圧1.27N/cm設定にて厚さを測定した。試験片の調整、試験片の測定位置、測定回数は、JIS P8118:2014に準じ、測定をしたものの平均値を、JIS Z8401:1999に規定する方法で有効数字3桁にしたものを、測定厚み(1.27)とした。
【0075】
測定2(測定厚み(0.80))
測定1において、測定圧を0.80N/cm設定に変更した以外は同様に測定したものを、測定厚み(0.80)とした。
【0076】
測定3(坪量)
JIS P8124:2011に準拠して、坪量を測定した。
【0077】
測定4(通気度)
通気性試験機(カトーテック株式会社製、商品名:KES-F8-AP1)を使用して、JIS L1096:2010に示す方法で測定した。
【0078】
評価1(密着性)
一定のクリアランスを有するコンマコーターを用いて、半透膜支持体の塗布面にポリスルホン樹脂(SOLVAY社製、商品名:ユーデル Udel(登録商標)P-3500 LCD MB3、分子量78000~84000g/mol(カタログ値))のDMF溶液(濃度:21質量%)を塗布し、水洗、乾燥を行い、半透膜支持体の表面にポリスルホン膜を形成させた。
【0079】
得られたポリスルホン膜上に、m-フェニレンジアミン2.0質量%及びラウリル硫酸ナトリウム0.15質量%を含有した水溶液を塗布し、ポリスルホン膜と該水溶液を数秒間接触させた後、余分な該水溶液を除去することで、ポリスルホン膜上に該水溶液の被覆層を形成した。
【0080】
得られた該被覆層上に、トリメシン酸クロライド0.10質量%及びアセトン2質量%を含有したヘキサン溶液を塗布し、該被覆層と該ヘキサン溶液を数秒間接触させた後、該ヘキサン溶液を除去、その後空気中で10分間保持することで、ポリスルホン膜上にポリアミド層を形成させることで、半透膜を得た。
【0081】
得られた該半透膜上に、0.71mmの原水スペーサーを設置し、透過流束の圧力依存性を評価した。
【0082】
◎(Very Good):圧力の増加に伴い、透過流束が一定の増加率を示し、圧力増加による減損が見られず良好なレベル。原水スペーサーとの密着性が良好。
○(Good):低圧から中圧にかけて透過流束が一定の増加率を示すが、高圧で透過流束の増加率が低下し、圧力増加による減損が見られるが、実用上良好なレベル。高圧化で原水スペーサーとの密着性が低下。
△(Satisfactory):低圧から高圧にかけて透過流束の増加率が低下し、圧力増加による減損が大きく見られる。実用可能レベル。原水スペーサーとの密着性が低い。
×(Unsatisfactory):低圧から高圧にかけて透過流束の増加率が大きく低下し、圧力増加による減損が非常に大きく見られ、実用限界レベル。原水スペーサーとの密着性が悪い。
【0083】
評価2(ポリスルホン膜接着性)
評価1で作製したポリスルホン膜について、作製1日後、ポリスルホン膜と半透膜支持体とをその界面で剥がれるようにゆっくりと引き剥がし、剥離するときの抵抗度合いで判断した。
【0084】
◎(Excellent):ポリスルホン膜と半透膜支持体の接着性が非常に高く、剥離できない。非常に良好なレベル。
○(Very Good):ポリスルホン膜と半透膜支持体の接着性が高く、剥離するのに強い力を必要とする。良好なレベル。
○△(Good):部分的に剥離しやすい所が存在する。実用上、問題無いレベル。
△(Satisfactory):ポリスルホン膜と半透膜支持体とが接着はしているが、全体的に剥離しやすい。実用上、下限レベル。
×(Unsatisfactory):ポリスルホン膜塗布後の水洗又は乾燥工程でポリスルホン膜の剥離が発生するか、又は半透膜支持体に破れが発生する。使用不可レベル。
【0085】
【表1】
【0086】
実施例1~8の半透膜支持体は、測定厚みの差異が、1.0%以上5.0%以下であることを特徴とする半透膜支持体であり、原水スペーサーと半透膜との密着性が良好なレベルを達成した。
【0087】
これに対して、比較例1及び比較例6及び7の半透膜支持体は測定厚みの差異が1.0%より小さい半透膜支持体であり、比較例2~5の半透膜支持体は測定厚みの差異が5.0%より大きい半透膜支持体であり、両方とも、原水スペーサーと半透膜との密着性が悪く、実用上限界レベルであった。
【0088】
測定厚みの差異が1.4%以上3.0%以下である実施例3~8の半透膜支持体は、測定厚みの差異が1.4%より小さい実施例1の半透膜支持体及び測定厚みの差異が3.0%より大きい実施例2の半透膜支持体と比較して、原水スペーサーと半透膜との密着性がより良好なレベルを達成した。
【0089】
金属ロール及び弾性ロールとの組み合わせを有する熱圧加工処理装置を用いて熱圧加工処理を施し、弾性ロールにおけるタイプAデュロメータ硬さが60以上80以下であり、ニップ圧力が30kN/m以上250kN/m以下であり、加工速度が20m/min以上100m/min以下である半透膜支持体の製造方法によって製造された実施例6~8の半透膜支持体は、実施例1~5の半透膜支持体と比較して、ポリスルホン膜接着性がより良好なレベルを達成した。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の半透膜支持体は、海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 金属ロール
2 弾性ロール
図1
図2