(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】薬液回路用開閉ユニット駆動機構および薬液注入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20240610BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20240610BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A61M5/168 506
A61M5/14 510
A61M5/145 500
(21)【出願番号】P 2020569701
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2020003277
(87)【国際公開番号】W WO2020158830
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019013683
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518234173
【氏名又は名称】株式会社サーキュラス
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
(72)【発明者】
【氏名】吹越 由美子
(72)【発明者】
【氏名】植木 潤
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康史
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181270(WO,A1)
【文献】特開平10-071202(JP,A)
【文献】特開2004-024874(JP,A)
【文献】特開平09-154937(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104338(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/141202(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/14
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジに充填された薬液を、前記薬液の流路を有するハウジングと
、前記流路を開閉するように前記ハウジング内に移動可能に保持された少なくとも1つのピストンと、を有する開閉ユニットを備えた薬液回路
を介して、被検者に注入する薬液注入装置であって、
前記シリンジが搭載されるヘッド本体と、
前記開閉ユニットを駆動して前記開閉ユニット内の前記流路を開閉する開閉ユニット駆動機構を有する薬液回路動作ユニットと、
を有し、
前記開閉ユニット駆動機構は、
前記開閉ユニットを着脱自在に保持する開閉ユニットホルダと、
前記開閉ユニットホルダと間隔をあけて配置された、前記ピストンと係合する係合部と、
前記係合部を進退移動させる直動機構と、
を有
し、
前記薬液回路動作ユニットは、連結部材を介して前記ヘッド本体と離れた位置で前記ヘッド本体に固定されている、
薬液注入装置。
【請求項2】
前記開閉ユニットホルダは、前記ピストンが前記係合部と係合する第1の位置と、前記ピストンが前記係合部と係合しない第2の位置との間で移動可能に支持され、前記ピストンが突出する前記ハウジングの端部と反対側の端部を受け入れる凹部を有する請求項1に記載の
薬液注入装置。
【請求項3】
前記開閉ユニットホルダと前記係合部とは対向配置され、前記開閉ユニットホルダは、前記第1の位置では前記凹部が前記係合部を向くように回動可能に支持されている請求項2に記載の
薬液注入装置。
【請求項4】
前記直動機構は、前記係合部と連結されたボールねじ機構を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の
薬液注入装置。
【請求項5】
前記直動機構は、前記係合部と連結されたリニアアクチュエータを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の
薬液注入装置。
【請求項6】
前記開閉ユニットホルダが前記第1の位置にあることを検出するユニットホルダ位置検出センサをさらに有する請求項2または3に記載の
薬液注入装置。
【請求項7】
前記開閉ユニットホルダに装着された前記開閉ユニットを検出する開閉ユニット検出センサをさらに有する請求項1から6のいずれか一項に記載の
薬液注入装置。
【請求項8】
前記開閉ユニットを照明する照明モジュールをさらに有する請求項1から6のいずれか一項に記載の
薬液注入装置。
【請求項9】
前記開閉ユニットを照明する照明モジュールをさらに有し、前記照明モジュールは、前記開閉ユニット検出センサによって前記開閉ユニットの存在が検出された場合に前記開閉ユニットを照明する請求項7に記載の
薬液注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチューブ等を含む薬液回路が装着される開閉ユニット駆動機構および該開閉ユニット駆動装置を備えた薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者に薬液を注入するのに薬液注入装置が用いられることが多い。多くの薬液注入装置は、所望の注入速度での注入が容易である観点から、シリンジを着脱自在に装着し、シリンジと被験者とを流体的に接続する薬液回路を介して、シリンジに充填された薬液を注入するように構成されている。
【0003】
シリンジは、原則的には単数回しか使用されないが、ボトルからシリンジへ薬液を再充填して複数回使用されることも多い。その場合、注入回路は、シリンジから被験者へ通じる被験者ラインと、被験者ラインから分岐してボトルへ通じるボトルラインとを有する。薬液の注入時にはボトルラインは閉鎖されるが、薬液の充填時には、ボトルラインの分岐部より下流側で被験者ラインが閉鎖された後、ボトルラインが開かれる。この際、被験者ラインを逆流する被験者の血液(逆血)が被験者ラインの閉鎖部よりも上流側に到達しないようにすることが重要である。
【0004】
そのような血液の逆流をよりより確実に防止できる薬液回路として、例えば特許文献1(国際公開第2018/181270号)には、上記の閉鎖部が、流路を有する第1移動部材と、流路を有し前記第1移動部材よりも被験者ラインの下流側に位置する第2移動部材と、前記第1移動部材および前記第2移動部材を摺動可能に収容するハウジングとを備え、前記第1移動部材の流路を開放した後に、前記第2移動部材の流路が開放されるように構成されている薬液回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:国際公開第2018/181270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、薬液注入装置の機能が向上し、また、使用する器具も多種多様になることにより、例えば、注入動作と吸引動作の切り替えに応じて薬液回路を切り替えるなど、ユーザには様々な作業が求められる。その結果、複数のチューブ、バルブおよびコネクタ等、様々な構成要素を含む薬液回路を間違えることなく接続したり、処置の邪魔にならないように配置したり、多くの煩雑な作業が伴う。
【0007】
本発明の目的の一つは、様々な構成要素を有する薬液回路を、安全かつ簡易に取り扱うことのできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開閉ユニット駆動機構は、薬液の流路を有するハウジングと、一端部を前記ハウジングから突出させて、前記流路を開閉するように前記ハウジング内に移動可能に保持された少なくとも1つのピストンと、前記ピストンを移動可能に保持するハウジングと、を有する開閉ユニットを備えた薬液回路が着脱自在に搭載される開閉ユニット駆動機構であって、
前記開閉ユニットを着脱自在に保持する開閉ユニットホルダと、
前記開閉ユニットホルダと間隔をあけて配置された、前記ピストンと係合する係合部と、
前記係合部を進退移動させる直動機構と、
を有し、
前記開閉ユニットホルダは、前記ピストンが前記係合部と係合する第1の位置と、前記ピストンが前記係合部と係合しない第2の位置との間で移動可能に支持されている。
【0009】
本発明の薬液注入装置は、上記本発明の開閉ユニット駆動機構を有する。
【0010】
(用語の定義)
本明細書において、「上流」および「下流」は、薬液の注入時の薬液の流れ方向に対する「上流」および「下流」を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、様々な構成要素を有する薬液回路を、安全かつ簡易に取り扱うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による医用画像撮像システムの概略図である。
【
図3】
図1に示す薬液注入装置に使用できるシリンジの一形態の分解斜視図である。
【
図4】
図2に示す第1開閉ユニットの一形態の斜視図である。
【
図4A】
図4に示す第1開閉ユニットのハウジングの斜視図である。
【
図4B】
図4に示す第1開閉ユニットの、流路を閉鎖した状態を示す縦断面図である。
【
図4C】
図4に示す第1開閉ユニットの、流路の開放と閉鎖との間の状態を示す断面図である。
【
図4D】
図4に示す第1開閉ユニットの、流路を開放した状態を示す縦断面図である。
【
図5】
図2に示す第2開閉ユニットの一形態の斜視図である。
【
図5A】
図5に示す第2開閉ユニットの、流路を閉鎖した状態を示す縦断面図である。
【
図5B】
図5に示す第
2開閉ユニットの、流路を開放した状態を示す縦断面図である。
【
図8】
図6Aおよび
図6Bに示す注入ヘッドの薬液回路動作ユニットの斜視図である。
【
図9】
図8に示す薬液回路動作ユニット102が備える各種機構の斜視図である。
【
図9A】
図9に示す押しつぶし機構の斜視図である。
【
図9B】
図9に示す第1開閉ユニット駆動機構の斜視図である。
【
図9C】
図9Bに示すホルダの、第1の位置における側面図である。
【
図9D】
図9Bに示すホルダの、第2の位置における側面図である。
【
図9E】
図9Bに示すフックおよびスライダアセンブリの斜視図である。
【
図9F】
図9に示す第2開閉ユニット駆動機構の斜視図である。
【
図9G】
図9に示す第2開閉ユニット駆動機構の、フックの位置検出のあめのセンサを示す斜視図である。
【
図10A】第1開閉ユニットおよび第2開閉ユニットが装着された状態での薬液回路動作ユニットの斜視図である。
【
図10B】第1開閉ユニットおよび第2開閉ユニットがそれぞれ第2の位置にあるホルダに挿入された状態での薬液回路動作ユニットの斜視図である。
【
図11A】第1開閉ユニット用の照明モジュールを示す斜視図である。
【
図11B】第2開閉ユニット用の照明モジュールを示す斜視図である。
【
図11C】ライトガイドを有する照明モジュールの一例の斜視図である。
【
図12】
図6Bに示す注入ヘッドの薬液容器ホルダの斜視図である。
【
図12A】
図12に示す薬液容器ホルダの、連結アームへの取り付け側から見た斜視図である。
【
図12B】
図12に示す薬液容器ホルダを取り外して示す、注入ヘッドの斜視図である。
【
図12D】
図12に示す薬液容器ホルダのエアセンサアセンブリの斜視図である。
【
図12E】
図12Dに示すエアセンサアセンブリの、エアセンサストッパを取り外した斜視図である。
【
図13】シリンジの先端が上を向くように注入ヘッドを上向きとしたときの注入ヘッドの斜視図である。
【
図14】薬液注入装置の他の形態のブロック図である。
【
図15A】薬液回路動作ユニットの他の形態の斜視図であり、押さえレバーが第1の位置にある状態を示す。
【
図15B】
図15Aに示す薬液回路
動作ユニットの他の形態において、押さえレバーが第2の位置にある状態を示す斜視図である。
【
図16】エアセンサアセンブリの他の形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、冠動脈造影による心臓カテーテル検査などに好ましく用いられるアンギオ撮像システムを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、CT(Computed Tomography)撮像システム、MRI(Magnetic Resonance Imaging)システム、PET(Positron Emission Tomography)システムなどにも適用可能である。
【0014】
[A]全体構成
図1を参照すると、注入薬液注入装置10と、薬液回路30と、医用画像撮像装置50と、を有する本発明の一実施形態による医用画像撮像システムの概略図が示されている。薬液注入装置10は、注入ヘッド10aとコンソール10bとを有する。薬液回路30は、注入ヘッド10aと被験者とを流体的に接続する。薬液注入装置10と医用画像撮像装置50とは、相互間でデータの送受信を行うことができるように互いに接続されることができる。両者の接続は、有線接続であってもよいし無線接続であってもよい。
【0015】
医用画像撮像装置50は、撮像動作を実行する撮像動作ユニット52と、撮像動作ユニット52の動作を制御する撮像制御ユニット51と、を有しており、薬液注入装置10によって薬液が注入された被験者の断層画像および/または三次元画像を含む医用画像を取得することができる。撮像動作ユニット52は、通常、被験者用の寝台、寝台上の所定の空間に電磁波を照射する電磁波照射ユニット等を有する。撮像制御ユニット51は、撮像条件を決定したり、決定した撮像条件に従って撮像動作ユニット52の動作を制御したりする等、医用画像撮像装置全体の動作を制御する。撮像制御ユニット51は、いわゆるマイクロコンピュータを含んで構成することができ、CPU、ROM、RAM、他の機器とのインターフェースを有することができる。ROMには、医用画像撮像装置50の制御用のコンピュータプログラムが実装されている。CPUは、このコンピュータプログラムに対応して各種機能を実行することで、医用画像撮像装置50の各部の動作を制御する。
【0016】
医用画像撮像装置50は、撮像条件や取得した医用画像などを表示できる液晶ディスプレイなどの表示デバイス54、および撮像条件などを入力するための入力デバイス53をさらに含むことができる。入力デバイス53としては、各種ボタン、キーボードおよびマウスなど公知の入力デバイスの少なくとも1種を用いることができる。撮像条件を決定するのに用いられるデータの少なくとも一部は入力デバイス53から入力され、撮像制御ユニット51に送信される。表示デバイス54に表示されるデータは撮像制御ユニット51から送信される。また、表示デバイスであるディスプレイ上に入力デバイスとしてタッチスクリーンを配置したタッチパネルを入力デバイス53および表示デバイス54として用いることもできる。入力デバイス53の一部、表示デバイス54および撮像制御ユニット51は、医用画像撮像装置用のコンソールとして一つの筐体に組み込むことができる。
【0017】
薬液注入装置10は、シリンジに充填された薬液を、薬液回路30を介して被験者の血管内に注入するのに使用される装置である。シリンジは注入ヘッド10aに着脱自在に搭載され、シリンジのプランジャ(またはピストン)を操作する少なくとも1つのシリンジ駆動機構が注入ヘッド10aに内蔵されている。本形態では、注入ヘッド10aは、例えば造影剤および生理食塩水といった2種類の薬液を別々にまたは同時に注入できるように、2つのシリンジ20A、20Bを搭載できるように構成され、また、各シリンジ20A、20Bを独立して操作する2つのシリンジ駆動機構を有している。しかし、一方の薬液注入のためのシリンジ駆動機構および他方の薬液注入のためのシリンジ駆動機構の少なくとも一方が複数であってもよい。
【0018】
ここで、本形態で用いることのできるシリンジの一形態について
図3を参照して説明する。図示したシリンジは、一般にロッドレスシリンジと呼ばれるものであり、末端および先端にそれぞれフランジ22aおよびノズル部22bが形成されたシリンダ22と、シリンダ22内に進退移動可能に挿入されたプランジャ23とを有している。プランジャ23の末端には、注入ヘッド10aのシリンジ駆動機構と係合するフランジ状の凸部(不図示)が一体に形成されている。シリンジは、薬液が充填された状態でメーカーから提供されるプレフィルドタイプのシリンジであってもよいし、医療現場で薬液を充填した現場充填タイプのシリンジであってもよい。
【0019】
シリンジは、保護カバー21に挿入されて注入ヘッド10aに装着される。保護カバー21は、薬液注入中のシリンダ22の内圧上昇による膨張を抑制するために、シリンダ22の外周面と保護カバー21の内周面との間に実質的に隙間が生じない寸法で円筒状に構成された部品である。保護カバー21がこの役割を果たすために、保護カバー21は、薬液注入中にシリンダ22に作用する内圧に十分に耐え得る機械的強度を有する肉厚で形成されている。
【0020】
保護カバー21の先端には開口部が形成されており、シリンダ22は、この開口部からノズル部22bを突出させた状態で保護カバー21に挿入される。保護カバー21の末端には、シリンダ22のフランジ22aを受け入れるリング状の凹部が形成されたカバーフランジ21aが形成されている。本形態では、シリンジが保護カバー21に挿入されて使用されるが、保護カバー21は本発明においては必須ではなく、シリンジが注入ヘッド10aに直接装着されてもよい。
【0021】
再び
図1を参照すると、コンソール10bは、注入制御ユニット11、入力デバイス12および表示デバイス13を有する。注入制御ユニット11は、入力デバイス12から入力されたデータの少なくとも一部を用いて薬液の注入量および注入速度等の注入条件を決定したり、決定した注入条件に従って薬液が注入されるように注入ヘッド10aの動作を制御したり、表示デバイス13の表示を制御したりするなど、薬液注入装置全体の動作を制御する。注入制御ユニット11は、いわゆるマイクロコンピュータを含んで構成することができ、CPU、ROM、RAM、他の機器とのインターフェースを有することができる。ROMには、薬液注入装置10の制御用のコンピュータプログラムが実装されている。CPUは、このコンピュータプログラムに対応して各種機能を実行することで、薬液注入装置10の各部の動作を制御することができる。
【0022】
入力デバイス12は、注入制御ユニット11で薬液の注入条件を決定するのに用いられるデータなどを入力するのに用いられるデバイスである。入力デバイス12としては、例えば、各種ボタン、キーボードおよびマウスなど公知の入力デバイスの少なくとも1種を用いることができる。入力デバイス12から入力されたデータは注入制御ユニット11に送信され、表示デバイス13に表示されるデータは注入制御ユニット11から送信される。表示デバイス13は、注入制御ユニット11によって制御されて、薬液の注入条件の決定に必要なデータ等の表示、注入プロトコルの表示、注入動作の表示、各種ガイダンスの表示、および各種警告の表示などを行う。
【0023】
注入プロトコルとは、どのような薬液を、どれだけの量、どれくらいの速度で注入するかを示すものである。注入速度は、一定であってもよいし、時間とともに変化するものであってもよい。また、複数種の薬液、例えば造影剤と生理食塩水とを注入する場合、それらの薬液をどのような順序で注入するかといった情報も注入プロトコルに含まれる。注入プロトコルは、公知の任意の注入プロトコルを用いることができる。また、注入プロトコルの設定手順についても、公知の手順を用いることができる。また、注入プロトコルは、注入圧力の許容最大値(圧力リミット)を含むこともある。圧力リミットが設定された場合は、注入動作中、注入圧力が監視され、注入圧力が、設定された圧力リミットを超えないように注入ヘッド10aの動作が制御される。
【0024】
表示デバイス13としては、例えば液晶ディスプレイ装置等、公知の表示装置であってよい。また、表示デバイスであるディスプレイ上に入力デバイスとしてタッチスクリーンを配置したタッチパネルを入力デバイス12および表示デバイス13として用いることもできる。入力デバイス12の一部は、コンソールとは別に設けられてもよい。
【0025】
薬液回路30は、シリンジと被験者とを連絡する液体の流路構成し、少なくとも1本のチューブ、少なくとも1つのコネクタおよび少なくとも1つのバルブを有することができる。
【0026】
[B]薬液回路の構成
図1に示す薬液注入装置10に好適に用いることのできる薬液回路30の一形態を
図2に示す。
図2に示す薬液回路30は、シリンジ20A、20Bが接続され、各シリンジ20A、20Bにそれぞれ収容されている第1薬液および第2薬液を被験者に注入する際に用いられる。また、薬液回路30は、それぞれ第1薬液および第2薬液を収容する第1容器40Aおよび第2容器40Bも接続することができ、第1容器40Aおよび第2容器40Bから各シリンジ20A、20Bにそれぞれ第1薬液および第2薬液を吸引することもできる。第1薬液および第2薬液は、医療用の薬液であり、以下では第1薬液が造影剤であり、第2薬液が生理食塩水である場合について説明する。
【0027】
薬液回路30は、造影剤が収容されるシリンジ20Aと接続される第1メインライン301a、生理食塩水が収容されるシリンジ20Bと接続される第2メインライン302a、造影剤が収容される第1容器40Aと接続される第1サブライン301b、生理食塩水が収容される第2容器40Bと接続される第2サブライン302b、第1メインライン301aの下流に位置する被験者ライン303およびトランスデューサと接続されるトランスデューサライン304を有する。
【0028】
ここで「ライン」とは、液体が流れる流路を意味し、液体が流れる各部材(例えば、各種チューブ、T字菅、各種流体コネクタ、各種バルブ、ミキシングデバイスなど)を備える。また、
図2では、各ラインは図示のために便宜的に表されており、各ラインの相対的な長さは、実際のラインの相対的な長さを表すものではない。
【0029】
第1メインライン301aは、上流側から順に、コネクタ310a、T字菅311a、第1チューブ312a、回転高圧アダプタ313a、雌ルアーロックコネクタ314aおよび第2チューブ315aを有する。コネクタ310aは、シリンジ20Aに接続される。回転高圧アダプタ313aおよび雌ルアーロックコネクタ314aは、着脱自在に接続される。これによって、第1メインライン301aは、第1チューブ312aと第2チューブ315aとの間で分離可能である。
【0030】
第1サブライン301bは、第1容器40Aと第1メインライン301aとを接続する。第1サブライン301bは、第1容器40A側から順に、スパイク310b、第3チューブ311b、ドリップチャンバー312b、第4チューブ313bおよび一方弁314bを有する。スパイク310bは、第1容器40Aと接続される。一方弁314bは、第1容器40Aから第1メインライン301aへ向かう方向のみへの液体の流れを許容する向きで取り付けられ、第1メインライン301aのT字菅311aと接続される。第1容器40Aは、例えばボトル状の容器であり、第1容器40Aから流れ出た造影剤は、ドリップチャンバー312b内に滴下した後、第1メインライン301aに供給される。
【0031】
以上のように、第1サブライン301b一方弁314bを配置することで、第1メインライン301aから第1サブライン301bへ薬液が流入することが防止される。
【0032】
第2メインライン302aは、上流側から順に、コネクタ320a、T字菅321a、第1チューブ322a、回転高圧アダプタ323a、雌ルアーロックコネクタ324aおよび第2チューブ325aを有する。コネクタ320aは、シリンジ20Bに接続される。回転高圧アダプタ323aおよび雌ルアーロックコネクタ324aは、着脱自在に接続される。これによって、第2メインライン302aは、第1チューブ322aと第2チューブ325aとの間で分離可能である。
【0033】
第2サブライン302bは、第2容器40Bと第2メインライン302aとを接続する。第2サブライン302bは、第2容器40B側から順に、スパイク320b、第3チューブ321b、ドリップチャンバー322b、第4チューブ323bおよび一方弁324bを有する。スパイク320bは、第2容器40Bと接続される。一方弁324bは、第2容器40Aから第2メインライン302aへ向かう方向のみへの液体の流れを許容する向きで取り付けられ、第2メインライン302aのT字菅321aと接続される。第2容器40Bは、例えばバッグ状の容器であり、第2容器40Bから根枯れで他生理食塩水は、ドリップチャンバー322b内に滴下した後、第2メインライン302aに供給される。
【0034】
以上のように、第2サブライン302bに一方弁324a、324bを配置することで、第2メインライン301aから第2サブライン301bへ薬液が流入することが防止される。
【0035】
被験者ライン303は、上流側から順に、ミキシングデバイス330、第5チューブ331、第1開閉ユニット332、一方弁333、T字菅334、第6チューブ335およびコネクタ336を有する。ミキシングデバイス330は、2つの流入口および1つの流出口を有し、各流入口から流入した液体を混合して流出口から流出するように構成される。ミキシングデバイス330の各流入口はそれぞれ第1メインライン301aの第2チューブ315aおよび第2メインライン302aの第2チューブ325aに接続される。ミキシングデバイス330の流出口は、第5チューブ331に接続される。ミキシングデバイス330としては、例えば、株式会社根本杏林堂製の「SPIRAL FLOW」(登録商標)を用いることができる。また、ミキシングデバイス330の代わりにT字コネクタを用いることもできる。
【0036】
第1開閉ユニット332は、薬液の注入時に下流から上流への薬液の逆流を防止するように、流路の開放および閉鎖を制御可能に構成されたユニットである。第1開閉ユニット332について詳しくは後述する。
【0037】
一方弁333は、上流から下流へ向かう方向のみへ液体の流れを許容する向きで取り付けられる。コネクタ336は被験者ライン303の下流端に配置されており、被験者ライン303は、コネクタ336を介して、被験者に穿刺または挿入されるカテーテルなどに接続される。
【0038】
トランスデューサライン304は、被験者ライン303から分岐するように被験者ライン303のT字菅324に接続されたラインであり、T字菅324側から順に、第7チューブ340、第2開閉ユニット341、第8チューブ342およびコネクタ343を有する。コネクタ343には、被験者の血圧を検出して脈をモニタリングするために、トランスデューサ70が接続される。第2開閉ユニット341は、トランスデューサ70を高圧から保護するために流路の開放および閉鎖を制御可能に構成されたユニットである。第2開閉ユニット341について詳しくは後述する。トランスデューサ70には、被験者の脈の波形を表示するディスプレイ(不図示)が接続される。
【0039】
上述のとおり構成された薬液回路30は、下流側の単数回使用部300Aと上流側の複数回使用部300Bとに分けることができる。単数回使用部300Aとは、1回のみ使用できる、いわゆる使い捨てとされる部分である。複数回使用部300Bとは、複数回繰り返し使用できる部分である。具体的には、単数回使用部300Aは、第1メインライン301aの雌ルアーロックコネクタ314aで分離される下流側の部分、第2メインライン302aの雌ルアーロックコネクタ324aで分離される下流側の部分、被験者ライン303およびトランスデューサライン304で構成される。複数回使用部300Bは、薬液回路30の単数回使用部300A以外の部分、すなわち、第1メインライン301aの回転高圧アダプタ313aで分離される上流側の部分、第1サブライン301b、第2メインライン302aの回転高圧アダプタ323aで分離される上流側の部分および第2サブライン302bで構成される。
【0040】
なお、薬液回路30は、付属回路350をさらに有することができる。付属回路350は、一方弁付きの雌ルアーロックコネクタ351と、第9チューブ352と、第9チューブ352を介して雌ルアーロックコネクタ351と接続された雄ルアーロックコネクタ353とを有する。雌ルアーロックコネクタ351の一方弁は、雌ルアーロックコネクタ351から雄ルアーロックコネクタへ向かう方向のみへの液体の流れを許容する。複数回使用部300Bは、シリンジ20A、20Bおよび薬液容器40A、40Bと接続された後、エア抜きが行われる。付属回路350は、エア抜きが終了するまで、雌ルアーロックコネクタ351が、第1メインライン301aの回転高圧アダプタ313aおよび第2メインライン302aの回転高圧アダプタ323aそれぞれに接続されている。
【0041】
エア抜きの終了後、第1メインライン301aおよび第2メインライン302aから付属回路350が取り外されて、各回転高圧コネクタ313a、323aにはそれぞれ単数回使用部300Aの雌ルアーロックコネクタ314a、324aが接続される。
【0042】
(B-a)第1開閉ユニット
図4に示すように、第1開閉ユニット332は、ハウジング501と、ハウジング501内に移動可能に収容された2つのピストン502、503と、ボトムキャップ504と、トップキャップ505と、を有する。以下、第1開閉ユニット332について、ハウジング501の断面斜視図である
図4A、第1開閉ユニット332の縦断面図である
図4B-4Dも参照しつつ説明する。
【0043】
ハウジング501は、各ピストン502、503をそれぞれスライド自在に収容する2つのシリンダ部501c、501dを有する。各シリンダ部501c、501dは、互いに横並びに配置される。シリンダ部501c、501dの軸方向両端は開放されている。また、ハウジング501には、各シリンダ部501c、501dのそれぞれに隣接してシリンダ部501c、501dの軸方向に直交する方向にハウジング501の外壁から延びる導管部501a、501bが設けられている。一方の導管部501aは、被験者ライン303の第6チューブ(
図2参照)に接続される。他方の導管部501bは、被験者ライン303の一方弁333(
図2参照)に接続される。したがって、図示した形態では、上流から下流に向かってピストン502、ピストン503の順に配置される。
【0044】
さらに、ハウジング501には、一方の導管部501aとそれに隣接するシリンダ部501cとを連通する連通流路501e、2つのシリンダ部501c、501dとを連通する連通流路501f、他方の導管部501bとそれに隣接するシリンダ部501dとを連通する連通流路501gが形成される。これら導管部501a、501b、連通流路501e、501f、501gは、直線上に整列して配置される。
【0045】
上流側のピストン502は、柱状の部材であり、その一端に、半径方向外側に広がるフランジ状のヘッド502aを有する。ピストン502の長手方向中間部には、流路502bが、ピストン502の長手方向に直交する方向にピストン502を横断して形成されている。ピストン502の外周面には、ピストン502の長手方向において流路502bの両側にそれぞれOリングなどの封止リング506が装着されている。下流側のピストン503も同様、ヘッド503aを有し、流路503bが形成され、封止リング506が装着されている。
【0046】
ただし、上流側のピストン502と下流側のピストン503とは、ピストン502、503のスライド方向Sでの流路502b、503bの寸法が異なっている。詳しくは、上流側のピストン502の流路502bのスライド方向Sにおける寸法は、下流側のピストン503の流路503bのスライド方向における寸法よりも大きい。例えば、上流側のピストン502の流路502bは、スライド方向Sに長い長円形の横断面を有する形状とし、下流側のピストン503の流路503bは、円形の横断面を有する形状とすることができる。
【0047】
ボトムキャップ504およびトップキャップ505は、ハウジング501の両端でシリンダ部501c、501dの開放端を塞ぐ。ボトムキャップ504は、ピストン502、503のヘッド502a、503aを有する側と反対側においてハウジング501の端部に装着される。トップキャップ505は、ピストン502、503のヘッド502a、503aを有する側において、ヘッド502a、503aをトップキャップ505から突出させて、ハウジング501の端部に装着される。そのため、トップキャップ505は、ピストン502、503が貫通する2つの開口部を有する。トップキャップ505は、シリンダ部501c、501dにピストン502、503が挿入され、かつ、ヘッド502a、503aをトップキャップ505から突出させた状態でハウジング501に装着できるように、複数の部品を組み合わせて構成することができる。
【0048】
第1開閉ユニット332がボトムキャップ504およびトップキャップ505を有することで、シリンダ部501c、501d内への塵埃の侵入を防止るすことができる。この効果をより効果的に達成するため、トップキャップ505のピストン504、504が貫通する開口部とピストン504、505との間のクリアランスはできるだけ小さいことが好ましい。
【0049】
第1開閉ユニット332の動作について以下に説明する。
【0050】
図4Bに示す、ピストン502、503がハウジング501から引き出された状態では、両方のピストン502、503の流路502b、503bは、導管部501a、501bと連通していない。また、各ピストン502、503の流路502b、503b同士も連通していない。すなわち、第1開閉ユニット332は閉じている。
【0051】
この状態から、両方のピストン502、503を、同時にかつ同じ速度でハウジング501内に押し込んでいくと、
図4Cに示すように、まず、上流側のピストン502の流路502bが、上流側の導管部501aと連通する。この段階では、下流側のピストン503の流路503bは、上流側のピストン502の流路502bとも下流側導管部501bとも連通していない。
【0052】
この状態からさらに両方のピストン502、503をハウジング501内に押し込んでいくと、
図4Dに示すように、上流側のピストン502の流路502bは導管部501aとの連通を維持したままであるが、下流側のピストン503の流路503bは、下流側の導管部50
1bと連通し、かつ、各ピストン502、503の流路502b、503b同士も連通する。すなわち、第1開閉ユニット322が開かれる。
【0053】
開いた第1開閉ユニット332を閉じる際は、各ピストン502、503は、同時に、かつ互いに同じ速度でハウジング501から引き出される。これにより、下流側の導管部501bが下流側のピストン503によって先に遮断された後、上流側の導管部501aがさらに上流側のピストン502によって遮断される。
【0054】
以上説明したように、第1開閉ユニット332は、閉じた状態から開くまでの間の過程で、上流側のピストン502のみが連通する状態をとる。これにより、仮に下流側の導管部501bに逆血が到達していても、第1開閉ユニット332の開放時には、上流側からの薬液によって血液は押し戻され、血液が下流側のピストン503より上流へ流入することはない。また、第1開閉ユニット332が閉じる際は、逆血は上流側のピストン502の流路502bに流入せず、結果的に、第1開閉ユニット332より上流側への液体の逆流をより効果的に防止できる。
【0055】
第1開閉ユニット332は、開いた状態と閉じた状態との間でのピストン502、503の移動範囲を制限するストッパー構造を有することができる。例えば、ピストン502、503の引き出し位置を制限するストッパー構造として、ピストン502、503には突出部502c、503c(
図4B参照)を設ける一方、ハウジング501の内面には、ピストン502、503の引き出し限位置で突出部502c、503cと当接するストッパとして段差部501h(
図4A参照)を形成することができる。また、ピストン502、503の押し込み位置を制限するストッパー構造としては、ピストン502、503の流路502b、503bが完全に導管部501b、501cと連通する位置においてピストン502、503のヘッド502a、503aと反対側の端面がボトムキャップ504の内面に当接するように、ピストン502、503およびボトムキャップ504を設計することができる。
【0056】
ここでは、ピストン502、503を同時にかつ同じ速度で移動させる場合を例に挙げて説明したが、第1開閉ユニット332の開閉に際して上述した順番でピストン502、503の流路502b、503bを導管部501a、501bと連通させることができれば、各ピストン502、503は別々に移動させてもよいし、各ピストン502、503を互いに異なる速度で移動させてもよい。あるいは、ピストン502、503をその長手方向軸を中心に回転させることによって、流路502b、503bと導管部501a、501bとを連通したり遮断したりしてもよい。これらの場合、上流側のピストン502の流路502bと下流側のピストン503の流路503bは、形状、大きさおよび位置が互いに同じであってよい。
【0057】
(B-b)第2開閉ユニット
図5に示すように、第2開閉ユニット341は、第1開閉ユニット332と同様、ハウジング601と、ピストン602と、ボトムキャップ604と、トップキャップ605と、を有する。ただし、
図5Aおよび
図5Bから明らかなように、第2開閉ユニット341は、ピストン602の数、およびハウジング601のシリンダ部の数がそれぞれ1つずつである点を除いて、第1開閉ユニット332と同様に構成することができる。また、ピストン602の流路602bが導管部601a、601bを遮断する位置にピストン602が移動することによって第2開閉ユニット341が閉じ(
図5A)、流路602bが導管部601a、6
01bと連通する位置にピストン602が移動することによって第2開閉ユニット341が開く(
図5B)という、第2開閉ユニット341の開閉動作についても、第1開閉ユニット332と同様である。
【0058】
(B-c)その他
上述した例では、被験者ライン303に設けられる第1開閉ユニット332として、
図4に示したような、ハウジング501と2つのピストン502、503とを有するダブルピストン構造のユニットを用い、トランスデューサライン304に設けられる第2開閉ユニット341として、図
5に示したような、ハウジング605と、単一のピストン602とを有する単一ピストン構造を有するユニットを用いた。しかし、第1開閉ユニット332として、単一ピストン構造を有するユニットを用いてもよい。また、第2開閉ユニット341として、ダブルピストン構造を有するユニットを用いたり、第1開閉ユニット332および第2開閉ユニット341の両方をダブルピストン構造のユニットとしたりしてもよい。
【0059】
[C]注入ヘッドの構成
次に、
図1に示した注入ヘッド10aについて、
図6A、
図6Bなどを参照して説明する。注入ヘッド10aは、シリンジが搭載されるヘッド本体101、ヘッド本体101の前方(シリンジが搭載される側)に配置された薬液回路動作ユニット102および薬液容器40A、40B(
図1参照)を保持する薬液容器ホルダ103を有する。
【0060】
(C-a)ヘッド本体
ヘッド本体101の主な機能は、シリンジを搭載し、搭載したシリンジを操作することである。そのためヘッド本体101は、
図7に示すように、2つのシリンジ20A、20B(
図1参照)を着脱可能に固定するクランパ111と、プレッサ112と、操作部113とを有する。
【0061】
クランパ111は、第1保持構造111aと、第1保持構造111aと協働してシリンジを保持する2つの第2保持構造111bとを有することができる。第1保持構造111aは、2つのシリンジの末端のフランジ部分(
図3に示す形態では、保護カバー21のカバーフランジ21a)の周方向の一部を受け入れる2つの凹部を有する。第2保持構造111bは、第1保持構造111aの各凹部に対応して配置され、各凹部に受け入れられたフランジ部分の残りの少なくとも一部を受け入れることができる凹部を有して構成される。
【0062】
第2保持構造111bは、第1保持構造111aに対する開放位置と閉止位置との間を移動可能に支持され、閉止位置において、第1保持構造111aと協働してシリンジのフランジ部分を、シリンジの長手方向へは移動不能に保持する。ここで、「移動不能」とは、対象となる構造体が全く動かないことのみならず、設計上の寸法公差等により生じるクリアランスの範囲内で移動することも含む。
【0063】
プレッサ112は、モータ等の駆動源によって進退移動可能とされ、シリンジ駆動機構の一部を構成する。プレッサ112の先端部には、シリンジのプランジャ(またはピストン)と係合する係合部を有する。この係合部がプランジャ(またはピストン)に係合し、かつ、クランパ111によってシリンジが保持された状態でプレッサ112を前進および後退させることで、プランジャ(またはピストン)がシリンダに対して前進および後退する。これによって、シリンジから薬液を注入したり、シリンジ内に薬液を吸引したりすることができる。
【0064】
操作部113は、プレッサ112を動作させるための、スタートボタン、前進ボタン、後退ボタンなど複数のボタンを有し、注入制御ユニット11(
図1参照)で設定された条件とは別にユーザが所望に応じてプレッサ112を動作させることができる。
【0065】
また、ヘッド本体101は、搭載されるシリンジの長手方向に直角な方向に延びるサポートシャフト114を有することができる。ヘッド本体101は、サポートシャフト114を介して、スタンド(不図示)または天井から延びる旋回アーム(不図示)に、サポートシャフト114を中心として回動自在に支持されることができる。サポートシャフト114を略水平方向に向けた状態でヘッド本体101を支持することによって、ヘッド本体101は、シリンジの先端を天井側へ向けた姿勢(上向き姿勢)にと、シリンジの先端を床面側へ向けた姿勢(下向き姿勢)との間で回動自在に支持することができる。
【0066】
(C-b)薬液回路動作ユニット
図8に、薬液回路動作ユニット102の斜視図を示す。
図9に、
図8に示した薬液回路動作ユニット102が備える各種機構の斜視図を示す。
図8および
図9に示すように、薬液回路動作ユニット102は、薬液回路30の単数回使用部300A(
図2参照)が着脱自在に装着され、この単数回使用部300Aの各流路を制御する複数の機構を有する。これらの機構は、電気的に駆動されるものであり、これらの機構に薬液がかからないように、これらの機構は、薬液回路30を引き回すために必要な部分を除いて、アッパーカバー102aおよびロアカバー102bを有して構成されるケーシング内に収容されている。
【0067】
薬液回路動作ユニット102は、ヘッド本体101と連結される連結アーム102c、102dを有し、これによって薬液回路動作ユニット102をヘッド本体101に固定することができる。薬液回路動作ユニット102をヘッド本体101に固定することで、薬液回路30を構成するチューブが折れ曲がったりすることなく薬液回路30を整然と配置することができる。
【0068】
薬液回路動作ユニット102は、これを使用しない場合はヘッド本体101の前方から退避できるように、例えばサポートシャフト114と平行な軸Ra周り(矢印A方向)に回動自在にヒンジ連結によってヘッド本体101に支持されていてもよい。また、薬液回路動作ユニット102は、ヘッド本体101に着脱可能に取りつけられてもよい。
【0069】
薬液回路動作ユニット102が備える機構としては、エアセンサ710、780、2つの押しつぶし機構720、第1開閉ユニット駆動機構740および第2開閉ユニット駆動機構760を挙げることができる。
【0070】
(C-b1)エアセンサ
エアセンサ710、780は、それらが配置されている流路の部分で、流路内のエアを検出する。2つのエアセンサ710は、それぞれ薬液回路30の第1および第2メインライン301a、302aの第3チューブ317a、327b(
図2参照)内でのエアの存在を検出する。エアセンサ780は、薬液回路30のトランスデューサライン304の第8チューブ340(
図2参照)内でのエアの存在を検出する。これらエアセンサ710、780としては、チューブ内のエアを検出できるものであれば、公知の任意のセンサを用いることができる。本形態では、チューブを間において対向配置された送信器および受信器を有する超音波式のセンサを用いている。
【0071】
(C-b2)押しつぶし機構
押しつぶし機構720は、それら配置されている流路の部分で、流体の流れを遮断する。押しつぶし機構720は、エアセンサ710の下流側に配置することができ、
図9Aに示すように、チューブがその半径方向に挿入される凹部721aが形成されたベース721と、ベース721にスライド可能に支持された押し部材722と、押し部材722の駆動源であるモータ723と、回転伝達機構724を介して回転駆動される円筒カム725とを有する。押し部材722は、円筒カム725の回転に連動して、押し部材722の先端がベース721の凹部721aから引き込まれた第1位置と、凹部721aを横断する第2位置との間を往復移動するように構成される。
【0072】
凹部721aにチューブを配置した状態で、押し部材722が凹部721aから引き込まれた第1の位置にあるときは、流体はチューブ内を流れることができる。一方、凹部721aにチューブを配置した状態で、押し部材722が凹部721aを横断する位置にあるときは、チューブが押し部材722によって押しつぶされ、チューブ内での流体の流れは遮断される。モータ723の駆動による押し部材722の移動は、予め決められた手順およびユーザの操作に従った注入制御ユニット11(
図1参照))からの指令によって制御することができる。
【0073】
(C-b3)第1開閉ユニット駆動機構
第1開閉ユニット駆動機構740は、第1開閉ユニット332(
図4参照)を装着し、第1開閉ユニット332を駆動することによって、第1開閉ユニット332内の流路を開放したり閉鎖したりする。以下、第1開閉ユニット駆動機構740について、
図9B-
図9Eを参照して説明する。
【0074】
第1開閉ユニット駆動機構740は、
図9Bに示すように、ホルダ741と、第1開閉ユニット332の2つのピストン502、503(
図4参照)と係合する係合部であるフック742と、フック742を移動させる直動機構743とを有する。
【0075】
ホルダ741は、第1開閉ユニット332の底部が挿入される凹部741aを有し、この凹部741aに第1開閉ユニット332に底部が挿入されることで、ホルダ741は第1開閉ユニット332を着脱自在に保持する。また、ホルダ741は、その両側に配置された一対の支持プレート744によって支持されている。各支持プレート744は、それぞれ回動軸745を備え、これによって、ホルダ741は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能に支持されている。
【0076】
第1の位置では、
図9Cに示すように、ホルダ741は、凹部741aがフック742と対向するように凹部741aを横に向けた姿勢をとり、第2の位置では、
図9Dに示すように、凹部741aがフック742と向き合わないように、第1の位置から回動軸745を中心に90度回転した、凹部741aを上に向けた姿勢をとる。
【0077】
ホルダ741が第1の位置にあることを検出するために、第1開閉ユニット駆動機構740はホルダ位置検出センサ751(
図9Cおよび
図9D参照)を有することができる。ホルダ位置検出センサ751としては、光学センサ、近接センサ、機械的スイッチなど任意のセンサを用いることができる。
【0078】
本形態では、ホルダ位置検出センサ751として近接センサを用いている。近接センサは、磁気を検出媒体として物体の有無や位置を検出する。近接センサの例としては、ホールセンサなどが挙げられる。また、近接センサが検出する被検出子であるマグネット753をホルダ741の外周面に配置している。
【0079】
ホルダ位置検出センサ751は、ホルダ741が第1の位置にあるときにマグネット753を検出できる位置に配置され、これによって、ホルダ741が第1の位置にあることがホルダ位置検出センサ751によって検出される。ホルダ位置検出センサ751からの出力は、注入制御ユニット11(
図1参照)に送信され、注入制御ユニット11において、ホルダ741が第1の位置にあることか判断される。
【0080】
また、第1開閉ユニット駆動機構740は、ホルダ741の移動範囲を第1の位置と第2の位置との間に制限する制限構造を有することができる。制限構造の一例として、
図9Cおよび
図9Dに示すような、第1の位置から第2の位置までの移動範囲に対応する所定の長さを有するガイド溝741bと、このガイド溝741b内を移動するピン744aとの組み合わせが挙げられる。ガイド溝741bはホルダ741の端面に形成することができ、ピン744aは、ガイド溝741bが形成されたホルダ741の端面と対向する支持プレート744に、支持プレート744から突出して設けることができる。あるいは、ガイド溝741bを支持プレート744に形成し、ピン744aをホルダ741に設けてもよい。
【0081】
再び
図9Bを参照すると、直動機構743は、第1開閉ユニット駆動機構740の駆動源であるモータ746と、スライダアセンブリ747と、ピストン748とを有する。
【0082】
モータか746からの出力である回転運動は、プーリおよびタイミングベルトなどの適宜の伝達機構を介して伝達される。スライダアセンブリ747は、伝達機構を介して伝達された回転運動を直線運動に変換する運動変換機構および運動変換機構によって直進運動をする構造を含む。運動変換機構としては、ラックを利用したリニアアクチュエータ、ボールねじ機構など、任意の機構を用いることができる。
本形態では、スライダアセンブリ747は、ボール軸およびボールナットを含んでいる。スライダアセンブリ747にはピストン748が固定され、そのピストンの先端部にフック742が固定されている。
【0083】
フック742には、
図9Eに示すように、第1開閉ユニット332のピストン502、503のヘッド502a、503a(
図4参照)が係合する受け入れ部742aが形成されている。
【0084】
第1の位置にあるホルダ741の凹部741aに第1開閉ユニット332の底部を挿入し、そのままホルダ741を第2の位置まで回動させると、第1開閉ユニット332のピストン502、503のヘッド502a、503aは、フック742の受け入れ部742aに受け入れられる。これによって、第1開閉ユニット332のピストン502、503がフック742に係合し、第1開閉ユニット332は第1開閉ユニット駆動機構740に固定される。よって、ホルダ741の位置について、第1の位置は、ピストン502、503がフック742と係合する位置であり、第2の位置は、ピストン502、503がフック742と係合しない位置であるということができる。
【0085】
スライダアセンブリ747の動作によって、フック742は、前進位置と後退位置との間で移動する。前進位置では、フック742は、第1開閉ユニット332のピストン502、503をハウジング501内に押し込み、これによって第1開閉ユニット332の流路が開放する。後退位置では、フック742は、第1開閉ユニット332のピストン502、503をハウジング501から引き出し、これによって、第1開閉ユニット332の流路が閉鎖する。
【0086】
第1開閉ユニット駆動機構740は、フック742が前進位置にあるか後退位置にあるかを検出するセンサをさらに備えることができる。そのようなセンサの一例として、
図9Bに示すように、2つのセンサ755、756をスライダアセンブリ747に隣接して配置することができる。これらのセンサ755、756によってスライダアセンブリ747の位置を検出することによって、フック742が前進位置にあるか後退位置にあるかを検出することができる。
【0087】
センサ755、756は特に限定されず、スライダアセンブリ747の位置を検出できる任意のセンサを用いることができる。本形態では、センサ755、756として、発光部および受光部を有する透過型の光学センサを用い、これらセンサ755、756によって、スライダアセンブリ747から突出して設けられた遮光板747a(
図9E参照)が検出される。センサ755、756は、フック742の移動方向に沿って配置される。フック742の後退位置では、ホルダ741から離れた側に配置されたセンサ756によって遮光板747aが検出され、フック742の前進位置では、ホルダ741に近い側に配置されたセンサ755によって遮光板747aが検出される。センサ755、756からの出力は注入制御ユニット11(
図1参照)に送信され、注入制御ユニット11において、フック742が前進位置にあるか後退位置にあるかが判断される。
【0088】
第1開閉ユニット駆動機構740は、第1開閉ユニット駆動機構740に第1開閉ユニット332が装着されているか否かを検出するセンサをさらに備えることができる。そのようなセンサとしては、特に限定されず、第1開閉ユニット駆動機構740に装着された第1開閉ユニット332が装着されていることを検出できる任意のセンサを用いることができる。
【0089】
本形態では、一例として、
図9Bに示すように、発光部および受光部を有する反射型の光学センサである開閉ユニット検出センサ749をホルダ741とフック742との間に配置している。この形態によれば、ホルダ741に第1開閉ユニット332を保持した状態でホルダ741を第2の位置に回動させると、開閉ユニット検出センサ749と対向する位置に第1開閉ユニット332が位置し、これによって第1開閉ユニット332が検出される。一方、ホルダ741に何も保持しない状態でホルダ741を第2の位置に回動させると、開閉ユニット検出センサ749と対向する位置には何も存在せず、開閉ユニット検出センサ749は何も検出しない。開閉ユニット検出センサ749からの出力は注入制御ユニット11に送信され、注入制御ユニット11において、第1開閉ユニット332が第1開閉ユニット駆動機構740に装着されているか否かが判断される。
【0090】
ホルダ位置検出センサ751および開閉ユニット検出センサ749による検出結果は、例えば、ホルダ位置検出センサ751によりホルダ741が第1の位置にあることが検出され、かつ開閉ユニット検出センサ749により第1開閉ユニット332が検出されなければ薬液の注入動作を行わないなど、薬液注入装置10の動作の制御に利用することができる。
【0091】
(C-b4)第2開閉ユニット駆動機構
第2開閉ユニット駆動機構760は、第2開閉ユニット341(
図5参照)を装着し、第2開閉ユニット341を駆動することによって、第2開閉ユニット341内の流路を開放したり閉鎖したりする。以下、第2開閉ユニット駆動機構760について、
図9F-
図9Gを参照して説明する。
【0092】
第2開閉ユニット駆動機構760は、基本的には第1開閉ユニット駆動機構740と同様に構成されており、第
図9Fに示すように、ホルダ761と、第2開閉ユニット341のピストン602(
図5参照)と係合する係合部であるフック762と、フック762を移動させる直動機構763とを有する。
【0093】
ホルダ761は、第2開閉ユニット341の底部が挿入される凹部の形状が第2開閉ユニット341の底部に適合した形状であることを除いて第1開閉ユニット駆動機構740のホルダ741と同様に構成することができ、ホルダ761は第1の位置と第2の位置との間で移動可能に支持されている。第1の位置および第2の位置については、第1開閉ユニットと同様である。フック762についても、第2開閉ユニット341のヘッド602aを受け入れる受け入れ部762aが第2開閉ユニット341に適合した形状であることを除いて第1開閉ユニット駆動機構740のフック742と同様に構成することができる。
【0094】
直動機構763は、第1開閉ユニット駆動機構740の直動機構743と同様に構成することができるが、図示した形態では、直動機構763は、リニアアクチュエータ766と、理にアクチュエータ766のロッドとフック762とを連結するシャフト768とを有する。
【0095】
第2開閉ユニット駆動機構760は、フック762が前進位置にあるか後退位置にあるかを検出するセンサをさらに備えることができる。センサとしては特に限定されず、その一例として、
図9Gに示すように、2つのセンサ775、776を配置することができる。センサ775、776としては任意のセンサを用いることができ、例えば、第1開閉ユニット駆動機構740で用いたのと同様の透過型の光学センサを用いることができる。
【0096】
これらセンサ775、776でフック762の位置を検出するため、本形態では、遮光板767aが突出して設けられたスライダ767をシャフト768に固定し、各センサ775、776によって遮光板767aが検出されるようにしている。センサ775、776は、フック762の移動方向に沿って配置される。フック762の後退位置では、ホルダ761から離れた側に配置されたセンサ776によって遮光板767aが検出され、フック762の前進位置では、ホルダ761に近い側に配置されたセンサ775によって遮光板767aが検出される。センサ775、776からの出力は注入制御ユニット11(
図1参照)に送信され、注入制御ユニット11において、フック762が前進位置にあるか後退位置にあるかが判断される。
【0097】
第2開閉ユニット駆動機構760は、第2開閉ユニット駆動機構760に第2開閉ユニット341が装着されているか否かを検出する開閉ユニット検出センサ、およびホルダ761が第1の位置にあることを検出するホルダ位置検出センサをさらに備えることができる。これらのセンサは任意のセンサであってよく、本形態では、第1開閉ユニット駆動機構740で用いたのと同様の開閉ユニット検出センサ769およびホルダ位置検出センサ(不図示)を第1開閉ユニット駆動機構740と同様に配置している。また、これらの検出結果を利用した薬液注入装置10の動作の制御も第1開閉ユニット駆動機構740と同様であってよい。
【0098】
図10Aに、第1開閉ユニット駆動機構740のホルダ741および第2開閉ユニット駆動機構760のホルダ761がそれぞれ第1の位置にあり、第1開閉ユニット332および第2開閉ユニット341がそれぞれ第1開閉ユニット駆動機構740および第2開閉ユニット駆動機構760に装着された状態を示す。この状態では、第1開閉ユニット332および第2開閉ユニット341は、それぞれ第1開閉ユニット駆動機構740のフック742および第2開閉ユニット駆動機構760のフック762と係合している。また、
図10Bに、第1開閉ユニット332および第2開閉ユニット341は、それぞれ第1開閉ユニット駆動機構740のホルダ741および第2開閉ユニット駆動機構760のホルダ761に挿入されているが、各ホルダ741、761が第2の位置にあるため、第1開閉ユニット332および第2開閉ユニット341はそれぞれ第1開閉ユニット駆動機構および第2開閉ユニット駆動機構760に装着されていない状態を示す。この状態では、第1開閉ユニット332および第2開閉ユニット341は、それぞれ第1開閉ユニット駆動機構740のフック742および第2開閉ユニット駆動機構760のフック762と
フック742、762に係合していない。
【0099】
(C-b5)開閉ユニットの照明
薬液回路動作ユニット102は、第1開閉ユニット駆動機構740に装着された第1開閉ユニット332を照明する第1照明モジュール、および第2開閉ユニット駆動機構760に装着された第2開閉ユニット341を照明する第2照明モジュールを有することができる。これにより、薬液回路動作ユニット102に装着された第1開閉ユニット332および第2開閉ユニット341が視認し易くなる。照明モジュールは、光源を含み、照明モジュールによる照明方式は任意であってよい。光源としては、例えば発光ダイオードなど任意の光源を用いることができる。
【0100】
例えば、第1開閉ユニット332の照明用として、
図11Aに示すように、第1開閉ユニット駆動機構740の近傍においてアッパーカバー102aに開口部を形成し、その開口部から第1開閉ユニット332を照明するように、光源である発光ダイオード731を開口部内に配置した第1照明モジュールを備えることができる。
【0101】
また、第2開閉ユニット341の照明用として、
図11Bに示すように、第2開閉ユニット駆動機構760の近傍においてアッパーカバー102aに開口部を形成し、その開口部から第2開閉ユニット341を照明するように、光源である発光ダイオード732を開口部内に配置した第2照明モジュールを備えることができる。
【0102】
第1照明モジュールおよび第2照明モジュールのいずれにおいても、光源を開口部とは別の位置に配置し、光源からの光が適宜のライトガイド735(
図11C参照)を介して開口部へ導かれるように構成してもよい。また、光源として発光ダイオード731、732を用いる場合、発光ダイオードとしては、砲弾型およびチップ型のいずれも用いることができる。ただし、開閉ユニットを周囲からより際立たせて照明するためには、砲弾型の発光ダイオードを用いることが好ましい。
【0103】
これらの照明モジュールは、開閉ユニットが開閉ユニット駆動機構に装着されているときのみ開閉ユニットを照明するようにすることが好ましい。これにより、開閉ユニットが開閉ユニット駆動機構に装着されていることをユーザが視覚的に容易に認識できる。
【0104】
(C-c)薬液容器ホルダ
図12に、薬液容器ホルダ103の斜視図を示す。薬液容器ホルダ103は、吊り下げ支柱810と、支持部820と、ホルダ本体アセンブリ830とを有することができる。また、薬液容器ホルダ103は、エアセンサアセンブリ840を必要に応じてさらに有することができる。
【0105】
吊り下げ支柱810は、長手方向を有する部材である。支持部820は吊り下げ支柱810の一端部に配置され、エアセンサアセンブリ840は吊り下げ支柱810の他端部に配置される。ホルダ本体アセンブリ830は、支持部820とエアセンサアセンブリ840との間で吊り下げ支柱810に固定される。
【0106】
支持部820は、
図12Aに示すように、円形の回転プレート821と、回転プレート821の周方向に回転プレート821と相対回転するように回転プレート821と組み合わせられたキャップ822とを有する。吊り下げ支柱810の一端部はキャップ822に固定されている。回転プレート821には、キャップ822との相対回転の中心軸Cを通る支持穴821aが形成されている。
【0107】
一方、
図12Bに示すように、注入ヘッド10a(ただし薬液容器ホルダは不図示)は、その連結アーム102cから延びた支持シャフト104を有し、この支持シャフト104が回転プレート821の支持穴821aに嵌合される。これによって、薬液容器ホルダ103は支持シャフト104を中心に回動自在に吊り下げられた状態で支持される。この支持シャフト104は、注入ヘッド10a自身の支持のためのサポートシャフト114(
図7参照)と実質的に平行である。したがって、注入ヘッド10aの使用時には、支持シャフト104も略水平方向に延びている。
【0108】
ホルダ本体アセンブリ830は、注入ヘッド10aが同時に2つのシリンジを装着できることに対応して、それぞれ薬液容器を支持する2つの受け部831、832を有することができる。通常、薬液容器は、収容されている薬液の排出時にスパイク310b、320b(
図2参照)が貫通される栓で封止された開口部を有する。受け部831、832は、その開口部を鉛直方向に下向きとした姿勢で薬液容器を下方から支持することができるように、薬液容器の形態に応じて構成することができる。
【0109】
例えば、一方の受け部831は、薬液ボトルを支持するのに適合するように、周方向の一部が除去された略円形の筒状の側壁を有する形状で構成されている。薬液ボトルは、造影剤用の薬液容器として一般に用いられる。他方の受け部832は、可撓性フィルムで形成された薬液バッグを支持するのに適合するように、略楕円形の筒状の側壁を有する形状で構成されている。薬液バッグは、生理食塩水用の薬液容器として一般に用いられる。また、薬液容器ホルダ103の上面図である
図12Cからも明らかなように、各受け部831、832は、薬液容器の開口部周りを支持するために、受け部831、832の内側に延びた支持部831a、832aを有している。なお、薬液バッグを支持するのに適合した受け部832は、使用中に薬液バッグが倒れないように、薬液ボトルを支持するのに適合した受け部831よりも側壁の高さが高いことが好ましい。
【0110】
各受け部831、832の側壁は、その周方向において一部が除去された形状(その形状は
図12および
図12Cに明確に示されている)であることが好ましい。これにより、薬液容器内の薬液の残量が少なくなった場合でも容易に目視で確認することができる。
【0111】
エアセンサアセンブリ840は、
図12および
図12Aに示すように、エアセンサホルダ850を介して吊り下げ支柱810に固定されている。以下、
図12Dおよび
図12Eを参照してエアセンサアセンブリ840について説明する。
【0112】
エアセンサアセンブリ840は、ベース部材843と、ベース部材843に取り付けられた2つのエアセンサ841と、各エアセンサ841がエアを検出するチューブを保持する2つのチューブクリップ842とを有する。
【0113】
ベース部材843は、薬液容器に接続されるチューブ(
図2に示す形態においては、各サブラインの第4チューブ311b、321b)が挿入される2つの凹部を有し、各エアセンサ841はそれぞれ、これら各凹部に挿入されたチューブ内のエアを検出する。チューブクリップ842は、凹部に挿入されたチューブの浮き上がりを防止する。また、チューブの着脱ができるように、チューブクリップ842は、ピンによって、ベース部材843に回動可能に支持されている。エアセンサ841としては任意のセンサを用いることができる。本形態では、超音波式のエアセンサを用いている。
【0114】
上述したとおり、薬液容器ホルダ103は、軸周りに回動可能な支持部820を有し、この支持部820に吊り下げ支柱810を介してホルダ本体アセンブリ830が連結されている。そして、支持部820は、使用時には略水平方向に注入ヘッド10aから延びる支持シャフト104に支持される。このように、薬液容器ホルダ103が注入ヘッド10
aを構成する機械的構造の1つとして回動自在に支持されることにより、注入ヘッド10aが、例えば
図13に示すようにシリンジの先端を上側に向けた姿勢とされたり、またはその逆の姿勢とされたりするなど、注入ヘッド10aの姿勢がどのように変化しても、薬液容器ホルダ103は、薬液容器を、注入ヘッド10aより高い位置に位置させることなく、その開口部を下に向けた一定の姿勢で保持し続ける。
【0115】
注入ヘッド10aの姿勢にかかわらず、薬液容器ホルダ103が薬液容器を一定の姿勢で保持できることにより、薬液容器に収容された薬液を安定して排出させることができる。
【0116】
また、注入ヘッド10aの姿勢にかかわらず、薬液容器ホルダ103が薬液容器を注入ヘッド10aより高い位置に位置させることなく保持できることで、例えば、薬液注入装置が外科手術などの外科的な処置とともに用いられる場合であっても、薬液容器が外科的な処置の邪魔にならない。
【0117】
一般的には、薬液容器の1種である薬液バッグは、注入ヘッド10aよりも高い位置に設置されたフックに吊り下げられて使用される。また、外科手術などの外科的な処置の間、処置が現在行われている処置部位を撮影し、撮影された画像を処置室内に設置された大型のディスプレイ装置に表示させることが多く行われている。ディスプレイ装置は、処置室内の他の機器の配置の邪魔にならないように、比較的高い位置に設置される。処置室内の処置スタッフはディスプレイ装置に表示された画像を見て、現在行われている処置内容を確認しながら施術する。このような場合、薬液容器が高い位置にあると、ディスプレイ装置に表示されている画像の一部が薬液容器によって遮られて見えなくなってしまうことがある。
【0118】
そこで本形態のように、注入ヘッド10aの機械的構造の1つとして薬液容器ホルダ103を構成することで、ディスプレイ装置の邪魔にならない位置に薬液容器を配置することができる。本形態においては、薬液容器からの薬液の排出は、注入ヘッド10aに装着されたシリンジ内へ薬液を強制的に吸引することによるものであるので、薬液容器が高い位置に配置されていなくても薬液の排出は良好に行える。
【0119】
以上説明したように、薬液容器ホルダに着目すれば、本形態の薬液注入装置は、
注入ヘッドを有する薬液注入装置であって、
軸周りに回動可能な支持部と、
少なくとも1つの薬液容器を受ける受け部材と、
支持部と受け部とを連結する連結部材と、
を有し、
支持部が、略水平な軸を中心に支持されて使用されることを特徴とする薬液注入装置、
であるということができる。
【0120】
[D]薬液注入装置の動作
次に、上述した薬液注入装置の動作について、第1開閉ユニット332、第2開閉ユニット341、および押しつぶし機構720の動作を中心に説明する。これらの動作は、注入制御ユニット11によって制御される。以下の説明では、第1メインライン301aおよび第1サブライン301bが造影剤(A)のライン、第2メインライン302aおよび第2サブライン302bが生理食塩水(B)のラインである場合について説明する。また、説明の簡略化のため、造影剤を「A」、生理食塩水を「B」と表記する。また、「注入」および「プライミング」はプレッサ112(
図7参照)の前進動作により行われ、「吸引」はプレッサ112の後退動作により行われる。さらに、以下の説明において、「開かれる」とは、その上流側と下流側との間で流路が開放されるように、その機構またはユニットが駆動されることを意味する。同様に、「閉じられる」とは、その上流側と下流側との間で流路が閉鎖されるように、その機構またはユニットが駆動されることを意味する。
【0121】
(D-a)電源ON
薬液注入装置の電源ON時は、押しつぶし機構(A側、B側)720、第1開閉ユニット740駆動機構および第2開閉ユニット駆動機構760は、開いている。
【0122】
(D-b)セルフチェック
電源ON後に、薬液注入装置10の各センサなどが正常に動作するかが自動的にチェッされる。セルフチェックでは、押しつぶし機構(A側、B側)720、第1開閉ユニット駆動機構740および第2開閉ユニット駆動機構760は、開→閉→開と動作され、正常に動作するかの確認が行われる。
【0123】
(D-c)セットアップ
セルフチェックが終了すると、セットアップが可能となる。セットアップとは、薬液回路30を薬液回路動作ユニット102に装着する操作であり、これは操作者によって行われる。セットアップは、マルチキット(複数回使用部300B)のセットアップと、シングルキット(単数回使用部300A)のセットアップとを含む。セットアップ時には、セットアップのガイダンス画面を表示デバイス13に表示させてもよい。
【0124】
(c1)マルチキット(複数回使用部300B)
薬液回路30の複数回使用部300Bのセットアップ時は、押しつぶし機構(A側およびB側)720、第1開閉ユニット駆動機構740および第2開閉ユニット駆動機構760は、いずれも開いた状態のままとされる。
【0125】
(c2)シングルキット(単数回使用部300A)
薬液回路30の単数回使用部300Bのセットアップ時は、第1開閉ユニット駆動機構740、第2開閉ユニット駆動機構760および押しつぶし機構(A側およびB側)は開いた状態とされる。ただし、単回数使用部300Aの装着後は、操作者の所定の操作によりチューブ押しつぶし機構(A側およびB側)720は閉じられる。
【0126】
(D-d)注入条件設定画面(チェック、スタンバイ、スタートOK)
注入条件設定時には、押しつぶし機構(A側およびB側)720は閉じられる。開閉ユニットについては、第1開閉ユニット駆動機構740は閉じられ、第2開閉ユニット駆動機構760は開かれる。
【0127】
(D-e)注入、プライミング、マニュアル前進(前進ボタン)
(e1)A注入またはAプライミング
造影剤の注入中または造影剤ライン(第1メインラインおよび被験者ライン)のプライミング中は、A側の押しつぶし機構720は開かれ、B側の押しつぶし機構720は閉じられる。開閉ユニットについては、第1開閉ユニット駆動機構740は開かれ、第2開閉ユニット駆動機構760は閉じられる。
【0128】
(e2)B注入またはBプライミング
生理食塩水の注入中または生理食塩水ライン(第2メインラインおよび被験者ライン)のプライミング中は、A側の押しつぶし機構720は閉じられ、B側の押しつぶし機構720は開かれる。開閉ユニットについては、第1開閉ユニット駆動機構740は開かれ、第2開閉ユニット駆動機構760は閉じられる。
【0129】
(e3)A+B注入またはA+Bプライミング
造影剤および生理食塩水の同時注入中、またはその場合の注入ライン(第1メインライン、第2メインラインおよび被験者ライン)のプライミング中は、押しつぶし機構(A側およびB側)が開かれる。開閉ユニットについては、第1開閉ユニット駆動機構740は開かれ、第2開閉ユニット駆動機構760は閉じられる。
【0130】
このように、薬液の注入中は、第1開閉ユニット駆動機構740は開かれるが、前述したとおり、第1開閉ユニット駆動機構740は、その開放動作の過程において上流側から段階的に流路を開放する。そのため、流路は第1開閉ユニット駆動機構740の上流側に与圧が作用した状態で開放されるので、下流側からの血液の逆流を効果的に防止できる。第1開閉ユニット駆動機構740による流路の開放動作の開始タイミングは、第1開閉ユニット駆動機構740の上流側に与圧が作用した状態で流路を開放することができれば、注入動作開始と同時であってもよいし、注入動作開始から時間の経過後であってもよい。第1開閉ユニット駆動機構740の上流側により効果的に与圧を作用させるためには、注入動作開始から時間をおいて第1開閉ユニット駆動機構740を動作させることが好ましいが、第1開閉ユニット駆動機構740は上流側から段階的に流路を開放するように構成されるので、注入動作の開始と同時に第1開閉ユニット駆動機構740を動作させても与圧を作用させることができる。しかも、第1開閉ユニット駆動機構740は直動機構763によって動作されるので、流路の開閉動作をより高速で行うことができ、このことによっても、下流側からの血液の逆流を効果的に防止できる。
【0131】
注入動作の終了後、第1開閉ユニット駆動機構740は閉鎖される。本形態の第1開閉ユニット駆動機構740は上記のように高速で流路を閉鎖できることにより、下流側より上流側を高圧とした状態で流路を閉鎖し、血液の逆流を良好に防止できる。第1開閉ユニット駆動機構740による流路の閉鎖動作の開始タイミングは、上流側からの与圧を作用させた状態で流路を閉鎖することができれば、注入動作終了より少し前であってもよいし、注入終了と同時であってもよい。残圧があるときは、注入終了から時間の経過後(例えば、2~5秒後)に第1開閉ユニット駆動機構740の閉鎖動作を開始してもよい。注入動作終了から時間をおいて第1開閉ユニット駆動機構740の閉鎖動作を開始して上流側の残圧を低減することで、与圧を最小限とすることができる。これにより、次回の注入開始時に高すぎる与圧により許容外の初期吐出が生じるなど、次回の注入時に生じる不具合を押えることができる。
【0132】
第2開閉ユニット駆動機構760の開閉タイミングについては、トランスデューサが保護される圧力範囲で、例えば注入前または注入と同時に閉鎖することが好ましい。注入後の残圧がある場合は、残圧による影響を避けるため、注入後の所定の時間後に開放してもよい。
【0133】
ここで、開閉ユニットによるプリチャージ動作について、開閉ユニットがダブルピストン構造である場合を例に説明する。プリチャージ動作とは、開閉ユニットの上流側に与圧を作用させるための動作、より詳しくは、開閉ユニット開放時の薬液の逆流を防止するために、例えば、開閉ユニットの下流側(被験者側)の圧力が2psiである場合に上流側(シリンジ側)の圧力を20psiとして下流側より高くなるように、プレッサ112を前進させる動作である。開閉ユニットがダブルピストン構造である場合、開放ユニットの開放動作は、プレッサ112の前進動作と同時またはプレッサ112の前進動作開始直後(例えば0.01sec)後に行うことができる。開閉ユニットは、動作が開始されてから開ききるまでに所定の時間(例えば0.1~0.2sec)を要するため、開閉ユニットの開放動作をプレッサ112の前進動作と同時に行っても上流側の圧力を下流側より高くすることができる。その一例では、速度2.0ml/secおよび時間0.15secでプレッサ112を前進させる(薬液の注入量0.3ml相当)。プリチャージ動作の他の例では、開閉ユニットを閉じた状態で、速度8.0ml/secおよび時間0.15secプレッサ112を前進させる(薬液の注入量1.2ml相当)。いずれの例においても、開閉ユニットが開ききる前に開閉ユニットの上流側に所定の圧力が作用するように、薬液の注入動作および開閉ユニットの開放動作のタイミングが制御されることが好ましい。
【0134】
(e4)A前進
注入ヘッド10aのA側の前進ボタンが操作された場合(すなわち、A側のシリンジのプランジャのマニュアルによる前進操作が行われた場合)、その操作がなされている間、A側の押しつぶし機構720は開かれ、B側の押しつぶし機構720は、閉じられる。開閉ユニットについては、第1開閉ユニット駆動機構740は開かれ、第2開閉ユニット駆動機構760は閉じられる。
【0135】
(e5)B前進
注入ヘッド10aのB側の前進ボタンが操作された場合(すなわち、B側のシリンジのプランジャのマニュアルによる前進操作が行われた場合)、その操作がなされている間、A側の押しつぶし機構720は閉じられ、B側の押しつぶし機構720は、開かれる。開閉ユニットについては、第1開閉ユニット駆動機構740は開かれ、第2開閉ユニット駆動機構760は閉じられる。
【0136】
(e6)トランスデューサ―ラインのプライミング
トランスデューサ―ラインのプライミング中は、A側の押しつぶし機構720は閉じられ、、B側の押しつぶし機構720、第1の開閉ユニット駆動機構740および第2の開閉ユニット駆動機構760は開かれる。
【0137】
(e7)開閉ユニットのプライミング
開閉ユニットのプライミングは、被験者ライン303の下流側を陰圧にした状態で行うことが好ましい。開閉ユニットのプライミングは、第1開閉ユニット駆動機構740および第2開閉ユニット駆動機構760の開閉動作を繰り返すことによって行うことができる。
【0138】
(D-f)フラッシュ
生理食塩水によるフラッシュの間は、B側の押しつぶし機構720および第1開閉ユニット駆動機構740は開かれ、A側の押しつぶし機構720および第2開閉ユニット駆動機構760は閉じられる。
【0139】
(D-g)吸引
薬液容器からシリンジへの薬液の吸引の間、押しつぶし機構(A側およびB側)は閉じられている。開閉ユニットについては、第1開閉ユニット332は閉じられているが、第2開閉ユニット341は開かれている。薬液の吸引時に開閉ユニットや押しつぶし機構の上流側の与圧が低減する可能性がある場合は、吸引終了後にプリチャージ動作を行ってもよい。吸引後のプリチャージ動作は、押しつぶし機構(A側)が開かれた状態で行う。吸引後のプリチャージ動作の一例では、速度5.0ml/secおよび時間0.5secでプレッサ112(A側およびB側)を前進させる(薬液の注入量2.5ml相当)。
【0140】
(D-h)終了-シングルキット取り外し
各種動作が終了し、シングルキットが取り外される際は、押しつぶし機構(A側およびB側)720、第1開閉ユニット駆動機構740および第2開閉ユニット駆動機構760は、開かれる。
【0141】
(D-i)エア検出
エアセンサによってエアの存在が検出されると、押しつぶし機構(A側およびB側)720、第1開閉ユニット駆動機構740および第2開閉ユニット駆動機構760は、閉じられる。
【0142】
表1に、上記の各タイミングにおける押しつぶし機構720の開閉状態を示す。
【0143】
【0144】
表2に、上記の各タイミングにおける第1開閉ユニット駆動機構740および第2開閉ユニット駆動機構760の開閉状態を示す。
【0145】
【0146】
[E]他の形態
(E-a)薬液注入装置全体の構成
図14に、薬液注入装置の他の形態を示す。
図14に示すように、薬液注入装置10は複数のコンソール10b1、10b2を有していてもよい。各コンソール10b1、10b2は、それぞれが注入条件の設定および設定された注入条件に従った注入ヘッド10aの動作を制御できるよう、注入制御ユニット、入力デバイスおよび表示デバイスを有する。注入制御ユニット、入力デバイスおよび表示デバイスは、
図1を参照して前述したとおり構成することができる。各コンソール10b1、10b2は同一のものであってもよいし、(形状および/または機能が)異なるものであってもよい。各コンソール10bは、病院施設の異なる部屋(例えば、検査室および制御室など)に配置されてもよい。また、各コンソール10b1、10b2は、各コンソール10b1、10b2間で通信可能に接続されてもよい。
【0147】
複数のコンソール10b1、10b2は、1つ、例えばコンソール10b1をマスターとして機能させることができる。その場合、他の残りのコンソール10b2はスレーブとして機能させることができる。マスター側のコンソール10b1は、入力デバイスを通じてユーザから入力されたデータ、注入ヘッド10aから出力されたデータ/信号、およびコンソール10b1または注入ヘッド10aに接続されたデバイス(例えばハンドスイッチ14)から出力されたデータ/信号を受け付け、受け付けたデータ/信号に従って所定の動作を実行することができる。スレーブ側のコンソール10b2は、基本的にはこれらのデータ/信号を受け付けない。しかし、表示デバイスへの表示は、メイン側のコンソール10b1の表示デバイスと同期させてもよい。
【0148】
複数のコンソール10b1、10b2は、マスター側とスレーブ側とが切り替え可能であってもよい。この場合、複数のコンソール10b1、10b2のいずれか1つに、マスター/スレーブ切り替えボタン(不図示)を設け、ユーザがこのマスター/スレーブ切り替えボタンを操作することによってマスター側とスレーブ側とを切り替えられるようにすることができる。マスター/スレーブ切り替えボタンを有するコンソールは、それがマスター側であるかスレーブ側であるかに関係なく、マスター/スレーブ切り替えボタンの操作を受け入れる。マスター/スレーブ切り替えボタンは、機械的な押しボタンスイッチであってもよいし、コンソール10b1、10b2が有する表示デバイスにアイコンとして表示させたものであってもよい。マスター/スレーブ切り替えボタンがアイコンである場合、マスター/スレーブ切り替えボタンは、マスター側のコンソールのみに表示させてもよい。
【0149】
薬液注入装置10は、少なくとも1つのハンドスイッチ14をさらに有していてもよい。ハンドスイッチ14は、注入制御ユニットで設定された注入プロトコルに従った注入とは別に、ユーザが任意の注入速度および注入時間で薬液を注入できるようにするための入力デバイスの一種である。図示した形態では、ハンドスイッチ14はコンソール10b1との間で通信可能に接続されているが、注入ヘッド10aとの間で通信可能に接続されてもよい。薬液注入装置10が複数のハンドスイッチ14を有する場合、各ハンドスイッチ14は、別々のコンソール10b1、10b2に接続されてもよいし、1つは注入ヘッド10aに接続されてもよい。
【0150】
(E-b)薬液回路動作ユニット
薬液回路動作ユニットの他の形態を、
図15Aおよび
図15Bを参照して説明する。
図15Aおよび
図15Bに示す薬液回路動作ユニット102は、薬液回路が薬液回路動作ユニット102から浮き上がらないように保持する注入回路押さえ部材として複数の押さえレバー771をさらに有する。押えレバー771は、薬液回路を保持する第1の位置(
図15A参照)と、薬液回路を解放する第2の位置(
図15B参照)との間で旋回自在にケーシング(例えばアッパーカバー102a)に支持されている。押さえレバー771の先端部には、薬液回路をより良好に保持するために、突起を有することができる。押えレバー771の位置および数は任意であってよい。図示した形態では、2つのエアセンサ710によりエアの有無が検出されるチューブの部分をそれぞれ押える位置、エアセンサ780によりエアの有無が検出されるチューブの部分を押える位置、第1開閉ユニット駆動機構740に装着された第1開閉ユニットを押える位置、および第2開閉ユニット駆動機構760に装着された第2開閉ユニットを押える位置に、それぞれ押さえレバー771が配置されている。
【0151】
押さえレバー771が第1の位置にあることを検出する薬液回路保持検出センサをさらに有していてもよい。薬液回路保持検出センサとしては、光学センサ、近接センサ、機械的スイッチなど任意のセンサを用いることができる。薬液回路保持検出センサの検出結果は、例えば、全ての押さえレバー771が第1の位置にあることが検出されないと薬液注入動作を行わないなど、薬液注入装置10の動作の制御に利用することができる。
【0152】
(E-c)薬液容器ホルダのエアセンサアセンブリ
図16を参照して薬液容器ホルダのエアセンサアセンブリの他の形態を説明する。前述したとおり、エアセンサアセンブリ840は、2つのエアセンサ841(
図12E参照)を有している。
図16に示す形態では、エアセンサアセンブリ840は、それぞれエアセンサ841を1つずつ有する第1センサ部845aおよび第2センサ部845bに分離できるように構成されている。第1センサ部845aおよび第2センサ部845bはそれぞれ、ベース部材843、エアセンサ841(
図12E参照)およびチューブクリップ842を有する。
【0153】
第1センサ部845aおよび第2センサ部845bは、互いに分離および結合を可能とする連結構造を有することができる。連結構造としては、互いに係脱可能な係合構造など任意の構造を用いることができる。
図16に示した構成では、連結構造としてマグネット848を用いている。また、第1センサ部845aおよび第2センサ部845bは、互いの結合時の位置合わせ構造を有することができる。位置合わせ構造としては、例えば、互いに嵌合する凸部846および凹部847で構成することができる。
図16に示した形態では、第1センサ部845aの第2センサ部845bとの対向面に、凸部846および凹部847を形成し、第2センサ部845bの第1センサ部845aとの対向面に、第1センサ部845aの凸部846および凹部847と嵌合する凹部および凸部を形成している。
【0154】
薬液容器に接続されるチューブ内のエアを検出するとき、チューブが鉛直方向に垂れ下がった状態で検出することが、良好な検出のために好ましい。よって、前述したように、薬液容器ホルダが2つの薬液容器を保持する構造である場合、エアセンサアセンブリ840における2つのエアセンサ841の間隔は、薬液容器が保持する2つの容器の間隔、具体的には2つの薬液容器に接続されるチューブの間隔に依存する。そのため、より大容量の薬液容器を保持する薬液容器ホルダにおいては、薬液容器の間隔、すなわちそれらに接続されるチューブの間隔が大きく、それに応じてエアセンサアセンブリ840のサイズも増大する。
【0155】
そこで、
図16に示す形態のようにエアセンサアセンブリ840を第1センサ部845aと第2センサ部845bに分離可能とすることで、エアセンサアセンブリ840をコンパクトに構成しつつ、使用時には第2センサ部845aと第2センサ部845bとを分離してチューブをクリップすることによって、チューブが鉛直方向に垂れ下がった状態でエアを検出することができる。
【符号の説明】
【0156】
10 薬液注入装置
10a 注入ヘッド
10b コンソール
30 薬液回路
101 ヘッド本体
102 薬液回路動作ユニット
103 薬液容器ホルダ
301a 第1メインライン
301b 第1サブライン
302a 第2メインライン
302b 第2サブライン
303 被験者ライン
304 トランスデューサライン
332 第1開閉ユニット
341 第2開閉ユニット
501、601 ハウジング
501a、501b、601a、601b 導管部
502、503、602 ピストン
502a、503a、602a ヘッド
502b、503b、602b 流路
504、604 ボトムキャップ
505、605 トップキャップ
740 第1開閉ユニット駆動機構
741 ホルダ
742 フック
743 直動機構
760 第2開閉ユニット駆動機構
761 ホルダ
762 フック
763 直動機構
810 吊り下げ支柱
820 支持部
830 ホルダ本体アセンブリ