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▶ ビトロ フラット グラス エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】高アルミナ低ソーダガラス組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/087 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
C03C3/087
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020573023
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019039261
(87)【国際公開番号】W WO2020006088
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】62/690,663
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518301590
【氏名又は名称】ビトロ フラット グラス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リッチ、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、アラン
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-230449(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022508(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/093284(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/073566(WO,A1)
【文献】特開2000-143284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成物であって、
68~74重量%のSiOと、
8.1~8.6重量%のCaOと、
4.5~5重量%のMgOと、
0~5重量%のKOと、
13~13.5重量%のNaOと、
1~1.4重量%のAlと、
を含むベースガラス部分を含み、
Alに対するNaOの比が9.5~12.5重量%/重量%の範囲である、ガラス組成物であって、
前記ベースガラス部分が、0.1~0.5重量%のK Oを含む、
ガラス組成物
【請求項2】
前記ベースガラス部分が、1.5~2.2重量%/重量%の範囲のMgOに対するCaOの比を有する、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
前記ガラス組成物中の全鉄が、0.01~0.30重量%の範囲である、請求項1~2のいずれか一項に記載のガラス組成物
【請求項4】
さらに酸化鉄を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラス組成物であって、0.10~0.35のレドックス比を有する、ガラス組成物
【請求項5】
着色剤部分を更に含み、前記着色剤部分が、
CoOを30~120ppmの範囲の量で、及び/又は
Seを7.5ppm以下の量で、
含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラス組成物
【請求項6】
前記ガラス組成物が、ガラスシートに成形されるとき、80%以下の可視光透過率を有する、請求項5に記載のガラス組成物
【請求項7】
前記ガラス組成物中の全鉄が、0.2~0.8重量%の範囲である、請求項1~2のいずれか一項に記載のガラス組成物
【請求項8】
さらに酸化鉄を含む、請求項1~2及び7のいずれか一項に記載のガラス組成物であって、0.47~0.60の範囲のレドックス比を有する、ガラス組成物
【請求項9】
CoOを20ppm以下の量で、及び/又は
Seを3ppm以下の量で含む、
着色剤部分を更に含む、請求項1~2及び7~8のいずれか一項に記載のガラス組成物
【請求項10】
前記ガラス組成物が、ガラスシートに成形されるとき、80%以下の可視光透過率を有する、請求項9に記載のガラス組成物
【請求項11】
前記着色剤部分が、マンガン、スズ、セリウム、モリブデン、バナジウム、銅、亜鉛、タングステン及びランタンの酸化物、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1種を含む、請求項5又は9に記載のガラス組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月27日に出願された米国仮特許出願第62/690,663号に対する優先権を主張するものであり、その開示全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【0002】
本発明は、日射吸収性が低い青色ガラス(low-solar-absorbing blue glass)に関し、より詳細には高アルミナ、低ソーダガラス組成物及びガラス基板に関する。
【背景技術】
【0003】
技術的考察
断熱ガラス(IG)ユニットは、窓を介したエネルギー透過率を低減させるため、居住用建築物及び商用建築物において好適な窓である。当業者によって理解されるように、IGユニットを介してエネルギー透過率を低減させると、冬の間には建築物室内からの熱損失が低下し、夏の間には建築物室内への熱の移動が減少する。例えば、優れた光学特性を提供する特定のガラス組成物のいくつかが、米国特許第8,268,741号明細書、同6,313,053号明細書及び同4,792,536号明細書に記載され、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0004】
しかし、現在利用可能な一部のIGユニットは、長期間蓄積されると、化学的損傷をうけやすくなり得る。例えば、このようなガラス基板は、水及び/又は大気への曝露のために「着色」又は腐食し得るが、それにより、特に建築用途又は外観が重要になり得るその他の用途では、ガラスの品質及び価値が低下する場合がある。
【0005】
従って、ここで当業者によって理解されるように、ガラスの目標とされる色、日射吸収性、溶融特性並びにその他の光学特性及び/又は物理的特性を維持又は向上させると共に、断熱ガラスの化学的耐久性を高め得る、改善したガラス組成物を提供することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当該技術分野における上記の欠陥の一部又は全てに対処するために、本開示は高アルミナ、低ソーダガラス組成物を提供する。この組成物は、日射吸収性が低い青色ガラス基板中(例えば、連続的な板ガラス製造方法を用いて作製されるガラスリボンから切断されるガラスシート)で用いられるとき、目標とされる溶融特性及び光学特性を実質的に維持することを可能にすると共に、化学的耐久性が高められた日射吸収性が低い青色ガラス基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、ガラス組成物であって、65~75重量%のSiOと、5~15重量%のCaOと、0~5重量%のMgOと、0~5重量%のKOと、10~14重量%のNaOと、1~5重量%のAlと、を含むベースガラス部分(base glass portion)を含み、Alに対するNaOの比が9.5~12.5重量%/重量%の範囲であるガラス組成物が、本明細書にて提供される。ベースガラス部分は、MgOに対するCaOの比が1.5~2.2重量%/重量%の範囲であってもよい。ベースガラス部分は、0.1~0.5重量%のKOを更に含んでもよい。ベースガラス部分は、68~74重量%のSiOと、13~13.5重量%のNaOと、1~1.4重量%のAlと、8.1~8.6重量%のCaOと、4.5~5重量%のMgOと、を含んでもよい。
【0008】
ガラス組成物中の全鉄は、0.01~0.60重量%の範囲であってよい。ガラス組成物は、0.6以下のレドックス比を有してもよい。ガラス組成物は、30~120ppmの範囲の量のCoO及び/又は7.5ppm以下の量のSeを含む着色剤部分(colorant portion)を、更に含んでもよい。ガラス組成物は、ガラスシートに成形されるとき、以下の色度座標、-4~+4の範囲のa及び0~-20の範囲のbによって表現される色を有してもよい。ガラス組成物は、ガラスシートとして成形されるとき、80%以下の可視光透過率を有してもよい。
【0009】
ガラス組成物中の全鉄は、0.2~0.8重量%の範囲であってよい。ガラス組成物は、0.4~0.6の範囲のレドックス比を有してもよい。ガラス組成物は、20ppm以下の量のCoO及び/又は3ppm以下の量のSeを含む着色剤部分を、更に含んでもよい。ガラス組成物は、ガラスシートに成形されるとき、以下の色度座標、-8~-16の範囲のa及び+3~-17の範囲のbによって表現される色を有してもよい。ガラス組成物は、ガラスシートに成形されるとき、80%以下の可視光透過率を有してもよい。
【0010】
着色剤部分は、マンガン、スズ、セリウム、モリブデン、バナジウム、銅、亜鉛、タングステン及びランタンの酸化物、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1種を含んでもよい。
【0011】
本発明のこれらの、そしてまた他の特徴及び特性、並びに作業方法、及び構造体の要素に関連する機能、及びパーツの組合せ、及び製造の経済性は、その全てが本明細書の一部を形成する、包含される例を参照して、以下の記載及び添付の請求項について検討することでより明らかになるだろう。しかし、例は例示及び説明のみを目的とし、本発明の範囲を定義することは意図しないと、明白に理解されたい。本明細書及び請求項において使用される場合、単数形を表す「a」、「an」及び「the」は、他に明確に記されない限り、複数形で言及されるものも包含する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び本特許請求の範囲で使用される全ての数は、全ての場合において、用語「約」により修飾されるものとして理解される。「約」とは、示された値のプラスマイナス10%の範囲を意味する。
【0013】
本明細書にて開示される全ての範囲は、範囲の始まり及び終わりの値、並びにその中に組み込まれる任意の及び全ての部分的な範囲を包含する。本明細書にて開示される範囲は、特定の範囲にわたる平均値を表す。
【0014】
本明細書にて引用される全ての文書は、その全体が「参照として」組み込まれる。
【0015】
「少なくとも」(原文:at least)は、「以上」(原文:greater than or equal to)を意味する。「超えない」(原文:not greater than)又は「最大でも」(原文:at most)は、「以下」(原文:less than or equal to)を意味する。
【0016】
特に指定がない限り、量への言及は「重量%の単位」(重量%)(原文:by wt% (wt%))である。
【0017】
用語「含有する」(原文:includes)は、「含む」(原文:comprises)と同義である。
【0018】
本発明の議論では、ある種の特徴は、一定の限定内において、「特に」(原文:particularly)又は「好ましくは」(原文:preferably)(例えば、一定の限定内において「好ましくは」(原文:preferably)、「より好ましくは」(原文:more preferably)又は「更により好ましくは」)(原文:even more preferably)として表現され得る。本発明はこれらの特定の、又は好ましい限定に制限されず、本開示の範囲全体を含むと理解すべきである。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語、可視光透過率(「Tvis」)は、CIE標準イルミナント「D65」及びCIE1931測色標準観察者(2°)を使用して、380~770ナノメートルの波長範囲にわたって10ナノメートル間隔で測定された、透過率データに基づく算出値を意味する。
【0020】
本明細書で使用する場合、色は色度座標a及びbによって表現される。これはCIE標準イルミナント「D65」及びCIE1964測色補助標準観測者(10°)を使用して測定された、透過率データに基づく算出値を表す。透過データは、スペクトラロン(Spectralon)を並べたラボスフィア(Labsphere)社製、150mmの積分球を用いて、パーキンエルマー(Perkin Elmer)社製、ラムダ9分光光度計によって、ASTM E903-96の方法「積分球を使用した材料の日射吸収率、反射率及び透過率の標準試験法(Standard Test Method for Solar Absorptance,Reflectance,and Transmittance of Materials using Integrating Spheres)」に従って収集される。
【0021】
Tvis(三刺激値「Y」としても知られる)及び色度座標の算出は、ASTM E308-90「CIEシステムを用いて対象物の色を計算するための標準試験法(Standard Test Method for Computing the Colors of Objects Using the CIE System)」に基づく方法に従う。
【0022】
色値(例えば、L、a、b、C及び色相角度)は、国際照明委員会によって規定されるCIE1976LAB色空間に準拠する。明細書及び請求項中のL、a及びbの値は、色センターポイント値(color center point values)を表す。業界の標準的慣習としてされるように、全てのTvis及び色度座標は、5.66mm(0.223インチ)の参照厚を有する板ガラスシートを用いて決定される。
【0023】
鉄は、酸化鉄(III)(Fe)及び酸化鉄(II)(FeO)としてガラス組成物中に存在できる。当該技術分野において周知のように、Feは強力な紫外線吸収体かつ黄色の着色剤であり、FeOは強力な赤外線吸収体かつ青色の着色剤である。業界の標準的慣習としてされるように、本発明のガラス組成物中において2価鉄状態(Fe++)で存在する鉄の量は、ガラス組成物中に存在する「FeO」の重量%換算で表される。当業者によって理解されるように、2価鉄状態(Fe++)の鉄の量はFeOとして表されるが、2価鉄状態(Fe++)の鉄の全量が、実際にFeOとしてガラス中に存在するわけではない。
【0024】
業界の標準的慣習としてされるように、本発明のガラス組成物中に存在する「全鉄」の量は、ガラス組成物中に存在する「Fe」の重量%換算で表される。これはガラス組成物中に存在する鉄の全てが、Feの形態であることを意味するわけではない。本明細書で使用する場合、用語「レドックス比」は、全鉄の量(「Fe」として表される)で割った2価鉄状態の鉄の量(「FeO」として表される)を示す。
【0025】
本発明は、任意の組合せで、以下の本発明の態様を含む、それらからなる、又はそれらから本質的になる。本発明の多様な態様は、個別の例において例示される。しかし、これは単に例示及び議論の容易さのためであると理解すべきである。本発明の実施に際して、一例にて論じられる本発明の1つ以上の態様は、1つ以上のその他の例で論じられる本発明の1つ以上の態様と組み合わせることができる。
【0026】
本発明は、ベースガラス部分を含有するガラス組成物に関する。非限定的な実施形態において、ベースガラス部分は、当該技術分野で「ソーダ石灰シリカ」ガラス組成物と称される種類のものである。いくつかの非限定的な実施形態において、ガラス組成物は着色剤部分を更に含んでよい。目標とされる光学特性を伴うガラス組成物で形成されるガラス基板又はガラスシートを提供するように、着色剤部分は、本明細書で更に詳細に記載されるように、選択された量の着色剤を含む。例えば、着色剤部分は、酸化鉄(酸化鉄(III)(Fe)及び酸化鉄(II)(FeO))、酸化コバルト(CoO)、セレン(Se)、酸化クロム(Cr)、酸化ネオジム(Nd)、酸化チタン(TiO)、酸化エルビウム(Er)並びに酸化ニッケル(NiO)などの着色剤を含んでもよいが、これらに限定されない。特に指示がない限り、ベースガラス部分の成分及びガラス組成物のガラス着色剤部分の重量%は、ガラス組成物の総重量、即ちベースガラス部分の総重量に着色剤部分の総重量を加えたものを基準とする。
【0027】
本開示によれば、本明細書に記載されるようなベースガラス組成物を提供することで、ガラスの化学的耐久性を改善することができ、かつ目標とする光学特性(例えば、本明細書に記載されるような色及び光透過率)を維持又は向上できると見出された。例えば、いくつかの非限定的な実施形態において、ベースガラス部分は、68~74重量%のSiO、より好ましくは70~73重量%のSiO、より好ましくは71.75~72.25重量%のSiO、最も好ましくは71.762~71.905重量%のSiOを含有し得る。ベースガラス部分は、8.1~8.6重量%のCaO、より好ましくは8.2~8.5重量%のCaO、より好ましくは8.3~8.4重量%のCaO、最も好ましくは8.335~8.355重量%のCaOを更に含有し得る。ベースガラス部分は、13~13.5重量%のNaO、好ましくは13.1~13.4重量%のNaO、より好ましくは13.15~13.3重量%のNaO、最も好ましくは13.19~13.25重量%のNaOを更に含有し得る。ベースガラス部分は、1~1.4重量%のAl、より好ましくは1.1~1.3重量%のAl、より好ましくは1.15~1.25重量%のAl、最も好ましくは1.21~1.23重量%のAlを更に含有し得る。ベースガラス部分は、4.5~5重量%のMgO、好ましくは4.6~4.9重量%のMgO、より好ましくは4.7~4.8重量%のMgO、最も好ましくは4.71~4.73重量%のMgOを更に含有し得る。ベースガラス部分は、0.1~0.5重量%のKO、好ましくは0.2~0.4重量%のKO、より好ましくは0.30~0.35重量%のKO、最も好ましくは0.32~0.34重量%のKOを更に含有し得る。更にベースガラス部分は、例えばSrO、ZrO、Cl及びBaOなどの有効性がない混入物質(tramp materials)を、通常1重量%未満の濃度で含有し得る。
【0028】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、ベースガラス部分は最も好ましくは、71.99~72.11重量%のSiO、8.10~8.26重量%のCaO、13.22~13.32重量%のNaO、1.18~1.26重量%のAl、4.71~4.73重量%のMgO、及び/又は0.316~0.336重量%のKOを含有し得る。
【0029】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、ベースガラス部分は最も好ましくは、71.69~71.75重量%のSiO、8.06~8.14重量%のCaO、13.18~13.23重量%のNaO、1.22~1.25重量%のAl、4.63~4.68重量%のMgO、及び/又は0.323~0.331重量%のKOを含有し得る。
【0030】
更に、本開示によれば、Alに対するNaOの比が、9.5~12.5重量%/重量%の範囲、好ましくは10.0~11.5重量%/重量%の範囲、より好ましくは10.5~11.0重量%/重量%の範囲、最も好ましくは10.55~10.90重量%/重量%の範囲であるベースガラス組成物を提供することで、ガラスの化学的耐久性を改善することができ、かつ目標とする光学特性(例えば、本明細書に記載されるような色及び光透過率)を維持又は向上できると見出された。
【0031】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、ベースガラス部分は最も好ましくは、10.540~11.220重量%/重量%の範囲の、Alに対するNaOの比を含有し得る。
【0032】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、ベースガラス部分は最も好ましくは、10.552~10.884重量%/重量%の範囲の、Alに対するNaOの比を含有し得る。
【0033】
その上、本開示によれば、MgOに対するCaOの比が、1.5~2.2重量%/重量%の範囲、より好ましくは1.6~2.1重量%/重量%の範囲、より好ましくは1.65~1.85重量%/重量%の範囲、最も好ましくは1.7~1.8重量%/重量%の範囲であるベースガラス組成物を提供することで、ガラスの化学的耐久性を改善することができ、かつ目標とする光学特性(例えば、本明細書に記載されるような色及び光透過率)を維持又は向上できると見出された。
【0034】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、ベースガラス部分は最も好ましくは、1.76~1.80重量%/重量%の範囲の、MgOに対するCaOの比を含有し得る。
【0035】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、ベースガラス部分は最も好ましくは、1.72~1.75重量%/重量%の範囲の、MgOに対するCaOの比を含有し得る。
【0036】
また、本開示によれば、Alに対するNaOの比を上記の範囲内で提供することで、依然として目標とする光学特性(例えば、本明細書に記載されるような色及び光透過率)を維持又は向上させながら、ベースガラス組成物が上記で議論される範囲内のKOを含有し得るように、既存の組成物と比較してKOの量を増加させることが可能となることが見出された。
【0037】
いくつかの非限定的な実施形態において、ガラス組成物がガラスシート又はガラス基板として成形されるとき、所望の用途に従って、一定の色及び光透過率要件を満たすことが望ましい場合がある。
【0038】
例えば、いくつかの非限定的な実施形態において、以下の色度座標、-4~+4の範囲のa及び0~-20の範囲のb、好ましくは-3~+1の範囲のa及び-2~-12の範囲のb、より好ましくは-2.5~0の範囲のa及び-4~-9の範囲のb、最も好ましくは-1.8~-0.5のa及び-5~-8のbの範囲を有する、色を有するガラスシートを作製するのが望ましい場合がある。これらの色座標を有するガラスは、青から青紫色と考えられる。またガラスシート又はガラス基板が、80%以下、好ましくは40%~80%、より好ましくは50%~76%、より好ましくは55%~72%、最も好ましくは58~70%の範囲の可視光透過率(「Tvis」)を有し得るのが、更に望ましい場合がある。
【0039】
本開示によれば、本明細書に記載のベースガラス部分を含有し、ガラス組成物中の全鉄が0.01~0.60重量%の範囲、好ましくは0.08~0.26重量%の範囲、より好ましくは0.15~0.25重量%の範囲、最も好ましくは0.16~0.17重量%の範囲であるガラス組成物を提供することによって、上記の色及び光透過率を達成できると見出された。ガラス組成物は、0.6以下、好ましくは0.10~0.35の範囲、より好ましくは0.2~0.35の範囲、最も好ましくは0.20~0.31の範囲のレドックス比を有し得る。
【0040】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、ベースガラス部分は最も好ましくは、0.155~0.210重量%の範囲の全鉄含有量及び0.221~0.311の範囲のレドックス比を有し得る。
【0041】
更に、ガラス組成物は、青色の着色剤である、酸化コバルト(CoO)を含む着色剤部分を伴って提供され得る。例えば、着色剤はCoOを、30~120百万分率(「ppm」)の範囲、好ましくは32~90ppmの範囲、より好ましくは45~60ppmの範囲、最も好ましくは37~50ppmの範囲の量で含有し得る。
【0042】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、着色剤部分は最も好ましくは、49~57ppmの範囲の量でCoOを含有し得る。
【0043】
また、着色剤部分はセレン(Se)を、7.5ppm以下、好ましくは1~6ppm、より好ましくは2~5.5ppm、最も好ましくは3~5ppmの量で含有し得る。セレンは4つの酸化状態でガラス中に存在でき、Se+4及びSe+2ではガラスに色が付かず、Seはガラス中でピンク色の着色剤であり、Se-2は鉄の存在下でブロンズ色の着色剤であることに留意されたい。業界の標準的慣習のように、総セレンは、ガラス中のセレンが元素状態でない場合であってもSeの重量分率として表現される。
【0044】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、着色剤部分は最も好ましくは、2~7ppmの範囲の量でSeを含有し得る。
【0045】
その他の非限定的な実施形態において、以下の色度座標、-8~-16の範囲のa及び+3~-17の範囲のb、好ましくは-11~-13の範囲のa及び-6~-8の範囲のb、より好ましくは-11.5~-12.5の範囲のa及び-6.5~-7.5の範囲のb、最も好ましくは-11.75~-12.25の範囲のa及び-6.75~-7.25の範囲のbを有する、ガラス基板又はガラスシートを作製するのが望ましい場合がある。ガラス基板又はガラスシートが、80%以下、好ましくは40%~80%、より好ましくは60%~75%、最も好ましくは66%~70%の範囲のTvisを有することが更に望ましい場合がある。
【0046】
本開示によれば、本明細書に記載のベースガラス部分を含有し、ガラス組成物中の全鉄が0.2~0.8重量%の範囲、好ましくは0.3~0.7重量%の範囲、より好ましくは0.42~0.62重量%の範囲、最も好ましくは0.46~0.58重量%の範囲であるガラス組成物を提供することによって、上記の色及び光透過率を達成できると見出された。いくつかの非限定的な実施形態において、ガラス組成物は0.4~0.6の範囲、好ましくは0.47~0.60の範囲、より好ましくは0.52~0.58の範囲、最も好ましくは0.54~0.56の範囲のレドックス比を有し得る。
【0047】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、ベースガラス部分は最も好ましくは、0.49~0.58重量%の範囲の全鉄含有量、0.47~0.54の範囲のレドックス比を有し得る。
【0048】
更に、ガラス組成物はCoOを、20ppm以下、好ましくは2~15ppmの範囲、より好ましくは4~12ppmの範囲、最も好ましくは6~10ppmの範囲の量で含む着色剤部分を伴って提供され得る。
【0049】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、着色剤部分は最も好ましくは、7.1~12.1ppmの範囲の量でCoOを含有し得る。
【0050】
また着色剤部分はSeを、3ppm以下、好ましくは0.25~2ppmの範囲、最も好ましくは0.5~1.75ppmの範囲の量で含有し得る。
【0051】
あるいは、いくつかの非限定的な実施形態において、着色剤部分は最も好ましくは、3ppm以下の量でSeを含有し得る。
【0052】
本発明によるガラス組成物は、着色剤の上記の組合せ及びその量に限定されないことが当業者によって理解されるであろう。例えば、Seに対するCoOの比が上昇し、かつガラス組成物中のその他の着色剤の量が一定のままであるとき、ガラスの色はより青くなり、Seに対するCoOの比が低下し、かつガラス組成物中のその他の着色剤の量が一定のままであるとき、ガラスの色は青色が薄くなり、より黄色くなることが見出された。従って、いくつかの非限定的な実施形態において、本発明のガラス組成物は、5以上、より好ましくは7~18の範囲、最も好ましくは10~13の範囲の、Seに対するCoOの重量%比を有し得る。あるいは、更なる非限定的な実施形態において、Seに対するCoOの重量%比は、好ましくは少なくとも6、より好ましくは少なくとも7、最も好ましくは少なくとも8であり得る。
【0053】
更に、非限定的な実施形態において、特定種類の着色剤の代わりにその他の着色剤を使用して、依然として許容できる結果を達成してもよい。例えば、ガラス着色剤部分は、酸化クロムと酸化コバルトとの混合物を含有して酸化鉄の重量%を減らすと共に、依然として許容できる結果を達成できると見出された。例えば、また本発明に限定されず、100ppmのFeの削減を補填するように、6ppmのCrと0.4ppmのCoOとの混合物を添加し、依然として許容できる光学特性を達成することができる。
【0054】
同様に、いくつかの非限定的な実施形態において、青色の着色剤である酸化ネオジムを組成物中に含有して、酸化コバルトの重量%を減らすことができる。例えば、また本発明に限定されず、CoOの1ppm毎の削減を補填するために、Ndで表される酸化ネオジム180ppmを添加し、依然として許容できる光学特性を達成することができる。例えば、非限定的な実施形態において、180ppmの酸化ネオジムを含有するガラス組成物は、CoOを19ppm以下、好ましくは1~14ppmの範囲、より好ましくは3~11ppmの範囲、最も好ましくは5~9ppmの範囲の量で含む、着色剤部分を有し得る。
【0055】
同様に、本発明の別の非限定的な実施形態において、ピンク色の着色剤である、4000ppmのErとしての酸化エルビウムと、1200ppmのFeとの混合物は、1ppmのSeと6ppmのCoOとの混合物に置き換えることができる。その上、黄色の着色剤である、1600ppmのTiOとしての酸化チタンと、4ppmのCoOとの混合物は、1ppmのSeと600ppmのFeとの混合物に置き換えることができる。
【0056】
本発明の実施において使用できるその他の着色剤には、マンガン、スズ、セリウム、モリブデン、バナジウム、銅、亜鉛、タングステン及びランタンの酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、非限定的な一実施形態において、ガラス中で黄色の着色剤である、1000ppmのMnOは、1ppmのSeと200ppmのFeとの混合物に置き換わり、依然として許容できる光学特性を達成することができる。
【0057】
本発明に限定されないが、本発明の好ましい実施において、酸化ニッケルはガラス組成物から除外される。硫化ニッケル石に関連する欠陥が生ずる傾向があり、それによって強化ガラスの自然破損が引き起こされる可能性があるためである。しかし環境的懸念材料によりセレンの使用が制限される場合には、酸化ニッケル、酸化チタン、更に高価なガラス着色剤である酸化エルビウムを用いて、セレンの重量%を減らすことができる。例えば、また本発明に限定されず、ガラス中で黄色の着色剤である、35ppmのNiOとしての酸化ニッケルと1ppmのCoOとの混合物は、1ppmのSeと700ppmのFeとの混合物に置き換えることができる。
【0058】
本発明の非限定的な実施形態において、記載されるガラス組成物は、当該技術分野において周知の、任意の従来のガラス製造方法を用いて、好ましくは連続的な板ガラス製造方法を用いて、ガラス基板に成形される。例えば、本発明に限定されないが、ガラス組成物は、るつぼでの溶融、シート延伸プロセス、フロート法などを介してバッチ材料から形成できる。例えば、いくつかの非限定的な実施形態において、記載されるガラス組成物は、容器(例えば、るつぼ)にバッチ材料としての原材料を供給する工程と、容器中のバッチ材料を溶解して溶融ガラス組成物を形成する工程と、容器から、溶融金属(例えば、スズ)のプールに溶融ガラス組成物を通過させ、その結果、溶融ガラス組成物が溶融金属のプールに浮き、プール上で溶融ガラス組成物を板ガラス製品の形状に成形する工程と、溶融ガラス組成物を冷やして板ガラス製品を成形する工程と、を含む方法によって成形され得る。本発明の好ましい実施において、ガラスは、連続的かつ大規模な商業用のガラス溶解操作において、溶解し清澄され、溶融ガラスが溶融金属、通常スズのプール上に保持され、それがリボン形状となり、当該技術分野において周知の方法で冷やされるフロート法によって、様々な厚み、本発明に限定されないが、例えば最大25ミリメートル(「mm」)の板ガラスシートへと成形される。
【0059】
いくつかの非限定的な実施形態において、本明細書に記載のガラス組成物は、バッチ材料として以下の原材料、霞石閃長岩、石灰岩、ドロマイト、ソーダ灰、弁柄、グラファイト、芒硝、アルミナ、及びカレット(即ち、再利用ガラス)の1種以上を用いて得られてもよい。
【0060】
当該技術分野において周知のように、本明細書に記載のガラスは、従来の連続的なオーバーヘッドファイアード(overhead fired)溶解操作を用いて作製されるのが好ましいが、ガラスはまた、Kunkleらの米国特許第4,381,934号明細書、Pecoraroらの米国特許第4,792,536号明細書、及びCeruttiらの米国特許第4,886,539号明細書に記載されるような多段階溶解操作を用いても、生成され得る。ガラスの光学品質を高めるために、ガラス製造作業の溶解及び/又は成形段階中に、必要に応じて撹拌装置を使用し、ガラスを均質化することができる。
【0061】
溶解操作の種類に応じて、溶解及び清澄の補助として、硫黄をソーダ石灰シリカ・ガラスのバッチ材料に添加できる。商業的に製造されたフロート板ガラスは、最大約0.3重量%のSOを含有できる。鉄及び硫黄を含有するガラス組成物において、還元条件を提供すると、Pecoraroらの米国特許第4,792,536号明細書で議論されるように、視感透過率を低下させるアンバー色を生じる場合がある。しかしながら、本明細書に記載の種類のフロート板ガラス組成物において、この色が発生するのに必要となる還元条件は、フロート成形作業の間、溶融スズと接触しているガラス表面の下部分から約20ミクロンに限定され、露出したガラス表面の上部分では、還元条件の程度は小さいと考えられている。特定のソーダ石灰シリカ・ガラスの組成によって、ガラスの硫黄含有量が低く、かつ色が発生する可能性があるガラスの領域が限られているため、これらの表面中の硫黄は、ガラスの色又は分光特性に物質的な効果を本質的に有しない。
【0062】
上で議論したように、ガラスを溶融スズ上に成形する結果として、かなりの量の酸化スズが、溶融スズに接触している側のガラス表面部分に移動し得ると理解されるべきである。通常、フロート板ガラスは、スズと接触していたガラス表面の下部分から25ミクロン程度において、約0.05~2重量%の範囲のSnO濃度を有する。SnOの典型的なバックグラウンドレベルは、30ppm程度であることができる。溶融スズで保持されるガラス表面から10オングストローム程度でスズの濃度が高いと、そのガラス表面の反射率をわずかに上昇させる可能性があるが、ガラスの特性への全体的な影響は極めて小さいと考えられている。
【0063】
ガラス製造の当業者によって理解されるように、本発明のガラス製造を含み、ガラスを生成するのに原材料及び/又は装置を用いると、一定の不純物、例えばSrO及びZrOなどが、最終的なガラス組成物に存在する結果となる。このような材料は、ガラス組成物中に少量存在し、本明細書において「混入物質(tramp materials)」と称される。例示として、また本発明に限定されないが、上記のように商業的なフロート法によって作製された本発明のガラス組成物は、着色剤、例えば、Cr、MnO及びTiOを低い濃度で、例えば混入(tramp)物質レベルで含むことができると考えられている。これらのレベルは、本発明のガラス組成物から形成されるガラスシート又はガラス基板の、色特性及び分光特性に物質的に影響を及ぼさないため、「混入(tramp)物質レベル」と称される。例えば、また本発明に限定されず、10ppm以下の量のCr、50ppm以下の量のMnO、0.02重量%以下の量のTiOは、いずれも混入物質(tramp materials)と考えられる。
【0064】
前述したことを考慮し、また以下の例から図示されるように、1~1.4重量%のAl、好ましくは1.1~1.3重量%のAl、より好ましくは1.15~1.25重量%のAl、最も好ましくは1.21~1.23重量%のAl、及び13~13.5重量%のNaO、好ましくは13.1~13.4重量%のNaO、より好ましくは13.15~13.3重量%のNaO、最も好ましくは13.19~13.25重量%のNaO、を有するガラス基板は顕著な耐久性の向上を示すと、当業者によって理解されるであろう。その上ここで、Alに対するNaOの比が、9.5~12.5重量%/重量%の範囲、好ましくは10.0~11.5重量%/重量%の範囲、より好ましくは10.5~11.0重量%/重量%の範囲、最も好ましくは10.55~10.90重量%/重量%の範囲であるガラス基板は、例えば、より高いNaO濃度及びより低いAl濃度を有するその他のガラス組成物と比較して、顕著に向上した耐久性を示すと理解されたい。
【0065】
更に、前述したことを考慮し、以下の例から図示されるように、8.1~8.6重量%のCaO、好ましくは8.2~8.5重量%のCaO、より好ましくは8.3~8.4重量%のCaO、最も好ましくは8.335~8.355重量%のCaO、及び4.5~5重量%のMgO、好ましくは4.6~4.9重量%のMgO、より好ましくは4.7~4.8重量%のMgO、最も好ましくは4.71~4.73重量%のMgO、を有するガラス基板は顕著な耐久性の向上を示す、と理解されたい。その上ここで、MgOに対するCaOの比が、1.5~12.2重量%/重量%の範囲、好ましくは1.6~2.1重量%/重量%の範囲、より好ましくは1.65~1.85重量%/重量%の範囲、最も好ましくは1.70~1.80重量%/重量%の範囲であるガラス基板は、例えば、より高いCaO濃度及びより低いMgO濃度を有するその他のガラス組成物よりも、顕著に向上した化学的耐久性を示すと理解されたい。
【0066】
更に、前述したことを考慮し、以下の例から図示されるように、0.1~0.5重量%のKO、好ましくは0.2~0.4重量%のKO、より好ましくは0.30~0.35重量%のKO、最も好ましくは0.32~0.34重量%のKOを有するガラス基板は、例えば、より低いKO濃度を有するその他のガラス組成物よりも、顕著に向上した化学的耐久性を示すと理解されたい。
【0067】
特定の実施形態において、ガラス基板又はガラス組成物は、下記の表1にて確認される構成成分を含有できる。
【表1】
【0068】
所望により、表1の組成物Dは着色剤を含有してもよい。着色剤には、上記の量のCoO、SeO、Cr及び/又はMnOが含まれ得る。所望により、表1の組成物Eは着色剤を含有してもよい。着色剤には、上記の量のCoO、Cr及び/又はMnOが含まれ得る。
【0069】

以下の非限定例によって、本発明の非限定的な実施形態を例示する。表1に示す比較例C1~C5、並びに表2及び表3に示す例1~10を、本明細書に記載の連続的な板ガラス製造方法を用いて調製し、X線蛍光分光法によって各試料の最終的な組成を同定した。
【0070】
各試料について示される化学的耐久性は、ガラスの加水分解抵抗性の測定値を表し、
国際標準化機構、”試験ISO 719”、[online]、インターネット<URL:https://www.iso.org/standard/4948.html>に記載される手順によって算出され、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。ISO 719に従い、粒子寸法300~500μmである各ガラス試料2gを、グレード2の脱イオン水50mL中に、98℃で60分間保持した。次いで、得られた溶液25mLを、0.01mol/LのHCl溶液を用いて、中和点まで滴定した。次いで、中和に必要とされるHClの体積を使用して、ガラスから抽出されたNaOの量を決定した。表1、2及び3の耐久性の行に示される値は、抽出されたNaOの量をμmで表し、その数値が低いと化学的耐久性が向上していることを表す。
【0071】
下記の表1は、比較例C1~C5のデータを示す。
【表2】
【0072】
下記の表2は、例1~5のデータを示す。
【表3】
【0073】
下記の表3は表2の続きであり、例6~10のデータを示す。
【表4】
【0074】
本発明を、番号を付けた次の条項において更に説明する。
【0075】
条項1:ガラス組成物であって、65~75重量%のSiOと、5~15重量%のCaOと、0~5重量%のMgOと、0~5重量%のKOと、10~14重量%のNaOと、1~5重量%のAlと、を含むベースガラス部分を含み、Alに対するNaOの比が、9.5~12.5重量%/重量%の範囲、好ましくは10.0~11.5重量%/重量%の範囲、より好ましくは10.5~11.0重量%/重量%の範囲、最も好ましくは10.55~10.90重量%/重量%の範囲である、ガラス組成物。
【0076】
条項2:ベースガラス部分において、MgOに対するCaOの比が、1.5~2.2重量%/重量%の範囲、好ましくは1.6~2.1重量%/重量%の範囲、より好ましくは1.65~1.85重量%/重量%の範囲、最も好ましくは1.7~1.8重量%/重量%の範囲である、条項1に記載のガラス組成物。
【0077】
条項3:ベースガラス部分が、0.1~0.5重量%のKO、好ましくは0.2~0.4重量%のKO、より好ましくは0.30~0.35重量%のKO、最も好ましくは0.32~0.34重量%のKOを含む、条項1~2のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0078】
条項4:ベースガラス部分が、68~74重量%のSiO、より好ましくは70~73重量%のSiO、より好ましくは71.75~72.25重量%のSiO、最も好ましくは71.7~72重量%のSiO、13~13.5重量%のNaO、好ましくは13.1~13.4重量%のNaO、より好ましくは13.15~13.3重量%のNaO、最も好ましくは13.1~13.7重量%のNaO、1~1.4重量%のAl、より好ましくは1.1~1.3重量%のAl、より好ましくは1.15~1.25重量%のAl、最も好ましくは1.21~1.23重量%のAl、8.0~8.6重量%のCaO、好ましくは8.2~8.5重量%のCaO、より好ましくは8.3~8.4重量%のCaO、最も好ましくは8.335~8.355重量%のCaO、及び/又は4.5~5重量%のMgO、好ましくは4.6~4.9重量%のMgO、より好ましくは4.7~4.8重量%のMgO、最も好ましくは4.71~4.73重量%のMgOを含む、条項1~3のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0079】
条項5:ガラス組成物中の全鉄が、0.01~0.30重量%の範囲、好ましくは0.04~0.28重量%の範囲、より好ましくは0.08~0.26重量%の範囲、より好ましくは0.15~0.25重量%の範囲、最も好ましくは0.163~0.165重量%の範囲である、条項1~4のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0080】
条項6:ガラス組成物が、0.6以下、好ましくは0.10~0.35の範囲、最も好ましくは0.2~0.31の範囲のレドックス比を有する、条項1~5のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0081】
条項7:着色剤部分を更に含み、着色剤部分がCoOを、30~120ppmの範囲、好ましくは32~90ppmの範囲、より好ましくは45~60ppmの範囲、最も好ましくは37~50ppmの範囲の量で、及び/又はSeを、7.5ppm以下、好ましくは1~6ppmの範囲、より好ましくは2~5.5ppmの範囲、最も好ましくは3~5ppmの範囲の量で含む、条項1~6のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0082】
条項8:ガラス組成物が、ガラスシートに成形されるとき、以下の色度座標、-4~+4の範囲のa及び0~-20の範囲のb、好ましくは-3~+1の範囲のa及び-2~-12の範囲のb、より好ましくは-2.5~0の範囲のa及び-4~-9の範囲のb、最も好ましくは-1.8~-0.5のa及び-5~-8のbの範囲によって表現される色を有する、条項1~7のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0083】
条項9:ガラス組成物が、ガラスシートに成形されるとき、80%以下、好ましくは40%~80%、より好ましくは50%~76%、より好ましくは55%~72%、最も好ましくは58~70%の範囲の可視光透過率を有する、条項1~8のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0084】
条項10:ガラス組成物中の全鉄が、0.2~0.8重量%の範囲、好ましくは0.3~0.7重量%の範囲、好ましくは0.42~0.62重量%の範囲、好ましくは0.46~0.58重量%の範囲である、条項1~4のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0085】
条項11:ガラス組成物が、0.4~0.6の範囲、好ましくは0.47~0.60の範囲、より好ましくは0.52~0.58の範囲、最も好ましくは0.54~0.56の範囲のレドックス比を有する、条項1~4及び10のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0086】
条項12:CoOを、20ppm以下、好ましくは2~15ppmの範囲、より好ましくは4~12ppmの範囲、最も好ましくは6~10ppmの範囲の量で、及び/又はSeを、3ppm以下、好ましくは0.25~2ppmの範囲、最も好ましくは0.5~1.75ppmの範囲の量で含む着色剤部分を更に含む、条項1~4及び10~11のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0087】
条項13:ガラス組成物が、ガラスシートに成形されるとき、以下の色度座標、-8~-16の範囲のa及び+3~-17の範囲のb、好ましくは-11~-13の範囲のa及び-6~-8の範囲のb、より好ましくは-11.5~-12.5の範囲のa及び-6.5~-7.5の範囲のb、最も好ましくは-11.75~-12.25の範囲のa及び-6.75~-7.25の範囲のbによって表現される色を有する、条項1~4及び10~12のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0088】
条項14:ガラス組成物が、ガラスシートに成形されるとき、80%以下、好ましくは40%~80%、より好ましくは60%~75%、最も好ましくは66%~70%の範囲の可視光透過率を有する、条項1~4及び10~13のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0089】
条項15:着色剤部分が、マンガン、スズ、セリウム、モリブデン、バナジウム、銅、亜鉛、タングステン及びランタンの酸化物、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1種を含む、条項1~14のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0090】
条項16:ガラスシートを作製する方法であって、ガラスシートが以下の色度座標、-4~+4の範囲のa及び0~-20の範囲のb、好ましくは-3~+1の範囲のa及び-2~-12の範囲のb、より好ましくは-2.5~0の範囲のa及び-4~-9の範囲のb、最も好ましくは-1.8~-0.5の範囲のa及び-5~-8の範囲のbによって表現される色、並びに80%以下、好ましくは40%~80%、より好ましくは50%~76%、より好ましくは55%~72%、最も好ましくは58~70%の範囲の可視光透過率を有し、フロート法によって、条項1~7及び15のいずれか一項に記載のガラス組成物を作製すること、を含む、方法。
【0091】
条項17:ガラスシートを作製する方法であって、ガラスシートが以下の色度座標、-8~-16の範囲のa及び+3~-17の範囲のb、好ましくは-11~-13の範囲のa及び-6~-8の範囲のb、より好ましくは-11.5~-12.5の範囲のa及び-6.5~-7.5の範囲のb、最も好ましくは-11.75~-12.25の範囲のa及び-6.75~-7.25の範囲のbによって表現される色、並びに80%以下、好ましくは40%~80%、より好ましくは60%~75%、最も好ましくは66%~70%の範囲の可視光透過率を有し、フロート法によって、条項1~4、11~12及び15のいずれか一項に記載のガラス組成物を調製すること、を含む、方法。
【0092】
条項18:ガラスシートを作製する方法であって、ガラスシートが以下の色度座標、-4~+4の範囲のa及び0~-20の範囲のb、好ましくは-3~+1の範囲のa及び-2~-12の範囲のb、より好ましくは-2.5~0の範囲のa及び-4~-9の範囲のb、最も好ましくは-1.8~-0.5の範囲のa及び-5~-8の範囲のbによって表現される色、並びに80%以下、好ましくは40%~80%、より好ましくは50%~76%、より好ましくは55%~72%、最も好ましくは58~70%の範囲の可視光透過率を有し、容器にバッチ材料としての原材料を供給する工程と、容器中のバッチ材料を溶解して条項1~7及び15のいずれか一項に記載のガラス組成物を形成する工程と、容器から、溶融金属、好ましくはスズのプールに溶融ガラス組成物を通過させ、その結果、溶融ガラス組成物が溶融金属のプールに浮き、溶融金属のプール上で溶融ガラス組成物を板ガラスシートの形状に成形する工程と、溶融ガラス組成物を冷やして板ガラスシートを成形する工程と、を含む、方法。
【0093】
条項19:ガラスシートを作製する方法であって、ガラスシートが以下の色度座標、-8~-16の範囲のa及び+3~-17の範囲のb、好ましくは-11~-13の範囲のa及び-6~-8の範囲のb、より好ましくは-11.5~-12.5の範囲のa及び-6.5~-7.5の範囲のb、最も好ましくは-11.75~-12.25の範囲のa及び-6.75~-7.25の範囲のbによって表現される色、並びに80%以下、好ましくは40%~80%、より好ましくは60%~75%、最も好ましくは66%~70%の範囲の可視光透過率を有し、容器にバッチ材料としての原材料を供給する工程と、容器中のバッチ材料を溶解して条項1~4、11~12及び15のいずれか一項に記載のガラス組成物を形成する工程と、容器から、溶融金属、好ましくはスズのプールに溶融ガラス組成物を通過させ、その結果、溶融ガラス組成物が溶融金属のプールに浮き、溶融金属のプール上で溶融ガラス組成物を板ガラスシートの形状に成形する工程と、溶融ガラス組成物を冷やして板ガラスシートを成形する工程と、を含む、方法。
【0094】
条項20:バッチ材料が、霞石閃長岩、石灰岩、ドロマイト、ソーダ灰、弁柄、グラファイト、芒硝、アルミナ、及びカレット又はこれらの任意の組合せの少なくとも1種を含む、条項19及び20のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
条項21:以下の色度座標、-4~+4の範囲のa及び0~-20の範囲のb、好ましくは-3~+1の範囲のa及び-2~-12の範囲のb、より好ましくは-2.5~0の範囲のa及び-4~-9の範囲のb、最も好ましくは-1.8~-0.5の範囲のa及び-5~-8の範囲のbによって表現される色、並びに80%以下、好ましくは40%~80%、より好ましくは50%~76%、より好ましくは55%~72%、最も好ましくは58~70%の範囲の可視光透過率を有するガラスシートを成形するフロート法における、条項1~7及び15のいずれか一項に記載のガラス組成物の使用。
【0096】
条項22:-8~-16の範囲のa及び+3~-17の範囲のb、好ましくは-11~-13の範囲のa及び-6~-8の範囲のb、より好ましくは-11.5~-12.5の範囲のa及び-6.5~-7.5の範囲のb、最も好ましくは-11.75~-12.25の範囲のa及び-6.75~-7.25の範囲のb、並びに80%以下、好ましくは40%~80%、より好ましくは60%~75%、最も好ましくは66%~70%の範囲の可視光透過率を有するガラスシートを成形する、フロート法における、条項1~4、11~12及び15のいずれか一項に記載のガラス組成物の使用。
【0097】
条項23:ガラス組成物であって、
71.7~72.0重量%のSiOと、
8.3~8.4重量%のCaOと、
4.7~4.8重量%のMgOと、
0.24~0.33重量%のKOと、
13.1~13.3重量%のNaOと、
1.2~1.3重量%のAlと、
を含むベースガラス部分を含む、ガラス組成物。
【0098】
条項24:0.16~0.17重量%のFeを更に含む、条項23に記載のガラス組成物。
【0099】
条項25:Alに対するNaOの比が10.7~11.0重量%/重量%である、条項23又は条項24に記載のガラス組成物。
【0100】
条項26:MgOに対するCaOの比が、1.7~2.9重量%/重量%である、条項23~25のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0101】
条項27:MgOに対するCaOの比が、1.7~1.9重量%/重量%である、条項23~26のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0102】
条項28:MgOに対するCaOの比が、1.6~1.9重量%/重量%である、条項23~26のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0103】
条項29:MgOに対するCaOの比が、1.7~1.8重量%/重量%である、条項23~26のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0104】
条項30:ガラス組成物であって、
71.2~71.6重量%のSiOと、
8.3~8.6重量%のCaOと、
5.0~5.2重量%のMgOと、
0.24~0.25重量%のKOと、
13.4~13.5重量%のNaOと、
1.1~1.2重量%のAlと、
を含むベースガラス部分を含む、ガラス組成物。
【0105】
条項31:0.20~0.21重量%のFeを更に含む、条項30に記載のガラス組成物。
【0106】
条項32:Alに対するNaOの比が11.1~11.3重量%/重量%である、条項30又は条項31に記載のガラス組成物。
【0107】
条項33:MgOに対するCaOの比が、1.7~1.9重量%/重量%である、条項30~32のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0108】
条項34:MgOに対するCaOの比が、1.7~1.8重量%/重量%である、条項30~33のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0109】
条項35:8.3~8.4重量%のCaOが存在する、条項30~33のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0110】
条項36:ガラス組成物であって、
71.4~72.0重量%のSiOと、
8.2~8.6重量%のCaOと、
4.6~5.0重量%のMgOと、
0.29~0.31重量%のKOと、
13.1~13.4重量%のNaOと、
1.1~1.3重量%のAlと、
を含むベースガラス部分を含む、ガラス組成物。
【0111】
条項37:0.16~0.17重量%のFeを更に含む、条項36に記載のガラス組成物。
【0112】
条項38:Alに対するNaOの比が10.5~11.4重量%/重量%である、条項36又は条項37に記載のガラス組成物。
【0113】
条項39:MgOに対するCaOの比が、1.6~1.9重量%/重量%である、条項36~38のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0114】
条項40:Alに対するNaOの比が、10.5~11.3重量%/重量%である、条項36~39のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0115】
条項41:Alに対するNaOの比が、10.6~11.2重量%/重量%である、条項36~40のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0116】
条項42:MgOに対するCaOの比が、1.7~1.8重量%/重量%である、条項36~41のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0117】
条項43:ガラス組成物であって、
71.9~72.2重量%のSiOと、
8.0~8.3重量%のCaOと、
4.5~4.7重量%のMgOと、
0.32~0.34重量%のKOと、
13.2~13.4重量%のNaOと、
1.1~1.3重量%のAlと、
を含むベースガラス部分を含む、ガラス組成物。
【0118】
条項44:0.16~0.18重量%のFeを更に含む、条項43に記載のガラス組成物。
【0119】
条項45:Alに対するNaOの比が10.4~11.2重量%/重量%である、条項43又は条項44に記載のガラス組成物。
【0120】
条項46:MgOに対するCaOの比が、1.7~1.9重量%/重量%である、条項43~45のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0121】
条項47:Alに対するNaOの比が、10.5~10.9重量%/重量%である、条項43~46のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0122】
条項48:Alに対するNaOの比が、10.7~11.0重量%/重量%である、条項43~47のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0123】
条項49:着色剤を更に含み、着色剤がCoOを0.004重量%~0.006重量%の範囲で含む、条項43~50のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0124】
条項50:着色剤を更に含み、着色剤がSeを0.0003重量%~0.0007重量%の範囲で含む、条項43~49のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0125】
条項51:着色剤を更に含み、着色剤がCrを0.0002重量%~0.0005重量%の範囲で含む、条項43~50のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0126】
条項52:着色剤を更に含み、着色剤がMnOを0.005重量%~0.007重量%の範囲で含む、条項43~51のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0127】
条項53:0.22~0.25のレドックスを更に含む、条項43~52のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0128】
条項54:ガラス組成物であって、
71.6~71.8重量%のSiOと、
8.0~8.2重量%のCaOと、
4.6~4.7重量%のMgOと、
0.32~0.33重量%のKOと、
13.1~13.3重量%のNaOと、
1.2~1.3重量%のAlと、
を含むベースガラス部分を含む、ガラス組成物。
【0129】
条項55:0.4~0.6重量%のFe、好ましくは0.49~0.58重量%のFeを更に含む、条項54に記載のガラス組成物。
【0130】
条項56:Alに対するNaOの比が10.5~10.9重量%/重量%である、条項54又は条項55に記載のガラス組成物。
【0131】
条項57:MgOに対するCaOの比が、1.7~1.8重量%/重量%である、条項54~56のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0132】
条項58:着色剤を更に含み、着色剤がCoOを0.0007重量%~0.002重量%の範囲で含む、条項54~57のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0133】
条項59:着色剤を更に含み、着色剤がCrを0.0003重量%~0.0005重量%の範囲で含む、条項54~58のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0134】
条項60:着色剤を更に含み、着色剤がMnOを0.005重量%~0.007重量%の範囲で含む、条項54~59のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0135】
条項61:0.47~0.54のレドックスを更に含む、条項54~60のいずれか一項に記載のガラス組成物。
【0136】
本発明は、現在最も実用的であると考慮されること及び好ましい実施形態に基づいて、例示のために詳細に説明されるが、このような詳細は単に例示を目的とし、本発明は開示される実施形態に限定されず、むしろ添付の請求項の趣旨と範囲内における変更及び同等物の調整を網羅することが意図される、と理解すべきである。例えば、本発明において、可能な範囲内で、任意の実施形態の1つ以上の特徴は、他の任意の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせることができると企図される、と理解すべきである。