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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】繊維処理用組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/21 20060101AFI20240610BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20240610BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20240610BHJP
   D06M 15/267 20060101ALI20240610BHJP
   D06M 15/356 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
D06M15/21
D06M13/144
D06M13/148
D06M15/267
D06M15/356
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021026136
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022127904
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 修
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/155673(WO,A1)
【文献】特開2018-095975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
A62B7/00-33/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布、不織布、または合成樹脂製布を処理するための組成物であって、
下記成分(A)、下記成分(B)、および下記成分(C)を含有し、
前記成分(A)の含有量が0.010~2.0質量%であり、
前記成分(B)の含有量が1.0~30質量%である組成物。
成分(A):ポリクオタニウム-11
成分(B):グリコール類および/またはグリセリン類
成分(C):水
【請求項2】
さらに下記成分(D)を含有する、請求項1記載の組成物。
成分(D):低級アルコール
【請求項3】
請求項1または2記載の組成物を用いて摩擦抵抗が低減された織布、不織布、または合成樹脂製布
【請求項4】
請求項1または2記載の組成物を用いて、織布、不織布、または合成樹脂製布に少なくとも前記成分(A)および前記成分(B)を付着させる工程を含む、繊維材料の摩擦抵抗低減方法。
【請求項5】
請求項1または2記載の組成物を用いて、織布、不織布、または合成樹脂製布に少なくとも前記成分(A)および前記成分(B)を付着させる工程を含む、繊維材料の製造方法。
【請求項6】
下記成分(A)および下記成分(B)が付着した織布、不織布、または合成樹脂製布
成分(A):ポリクオタニウム-11
成分(B):グリコール類および/またはグリセリン類
【請求項7】
前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比が0.00050~1.0である、請求項6記載の織布、不織布、または合成樹脂製布
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品による摩擦抵抗を低減させる処理組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用マスク等のマスクは、通常の生活や、工場、病院など、清潔や衛生を維持すべき環境において着用され、人前に出る際のエチケットや、感染症の予防、ウイルス飛散および感染防止、異物混入防止等を目的に使用されている。特に、ウイルス飛散および感染防止を目的とするマスクの着用は、ウイルス感染リスクが高まる冬場が主であったが、新型コロナウイルスの流行に伴い、季節に関係なくマスクを着用する必要性が生じている。特許文献1には、夏場の暑さや、活動時の暑さ対策として、衣類に適用することで衣類に冷感を付与可能な組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-84269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マスクを長時間着用すると、肌が擦れ、肌荒れを起こすことで、ニキビ等の肌疾患が発生し易くなるという問題がある。しかしながら、繊維製品による摩擦抵抗を低減させる処理組成物は、これまで具体的に知られていない。
【0005】
本発明は、マスク等の繊維製品を処理することで、使用感(べたつきのなさ、柔軟性)を悪化させることなく、摩擦抵抗を低減することができる繊維処理用組成物、および該繊維処理用組成物を用いた繊維材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のカチオン性ポリマー、多価アルコールおよび水を含有する組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は
〔1〕下記成分(A)、下記成分(B)、および下記成分(C)を含有し、前記成分(A)の含有量が0.010~2.0質量%であり、前記成分(B)の含有量が1.0~30質量%である繊維処理用組成物、
成分(A):ポリクオタニウム-11
成分(B):多価アルコール
成分(C):水
〔2〕さらに下記成分(D)を含有する、上記〔1〕記載の繊維処理用組成物、
成分(D):低級アルコール
〔3〕上記〔1〕または〔2〕記載の繊維処理用組成物を用いて摩擦抵抗が低減された繊維材料、
〔4〕上記〔1〕または〔2〕記載の繊維処理用組成物を用いて、被処理材料に少なくとも前記成分(A)および前記成分(B)を付着させる工程を含む、繊維材料の摩擦抵抗低減方法、
〔5〕上記〔1〕または〔2〕記載の繊維処理用組成物を用いて、被処理材料に少なくとも前記成分(A)および前記成分(B)を付着させる工程を含む、繊維材料の製造方法、
〔6〕下記成分(A)および下記成分(B)が付着した繊維材料、
成分(A):ポリクオタニウム-11
成分(B):多価アルコール
〔7〕前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比が0.00050~1.0である、上記〔6〕記載の繊維材料、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マスク等の繊維製品を処理することで、使用感(べたつきのなさ、柔軟性)を悪化させることなく、摩擦抵抗を低減することができる繊維処理用組成物、および該繊維処理用組成物を用いた繊維材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る繊維処理用組成物は、ポリクオタニウム-11、多価アルコールおよび水を含有する。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0010】
<繊維処理用組成物>
本実施形態に係る繊維処理用組成物は、ポリクオタニウム-11、多価アルコール、および水を必須の成分として含有し、さらに低級アルコールを含有することが好ましい。
【0011】
なお、本明細書においては、上記ポリクオタニウム-11を「成分(A)」;上記多価アルコールを「成分(B)」;上記水を「成分(C)」;上記低級アルコールを「成分(D)」と称する場合がある。
【0012】
本実施形態に係る繊維処理用組成物に含有される上記各成分の含有量は、それぞれ、繊維処理用組成物中の合計の含有量が100質量%以下となるように、記載の範囲内から適宜選択することができる。
【0013】
[成分(A):ポリクオタニウム-11]
本実施形態に係る繊維処理用組成物は、ポリクオタニウム-11(ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩)を含有する。ポリクオタニウム-11を配合することで、他のカチオン性ポリマーを配合するよりも繊維製品の摩擦抵抗低減効果に顕著に優れた組成物を得ることができる。
【0014】
繊維処理用組成物中の成分100質量%中の成分(A)の含有量は、繊維製品の摩擦抵抗低減効果の観点から、0.010質量%以上であり、0.015質量%以上が好ましく、0.020質量%以上がより好ましく、0.050質量%以上がさらに好ましく、0.080質量%以上が特に好ましい。一方、成分(A)の含有量は、繊維製品の処理後の柔軟性の観点から、2.0質量%以下であり、1.5質量%以下が好ましく、1.3質量%以下がより好ましく、1.1質量%以下がさらに好ましく、0.90質量%以下が特に好ましい。なお、本明細書において、成分(A)の含有量は、ポリクオタニウム-11(ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩)の固形分を指すものとする。
【0015】
[成分(B):多価アルコール]
本実施形態に係る繊維処理用組成物は、繊維製品の処理後の柔軟性の観点から、多価アルコールを含有する。上記多価アルコールとしては、例えば、グリコール類、グリセリン類、糖アルコール等が挙げられ、グリコール類およびグリセリン類が好ましく、グリコール類がより好ましい。上記グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール等が挙げられる。グリセリン類としては、例えば、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等が挙げられる。糖アルコールとしては、例えば、グルコース、マルトース、マルチトール、スクロース、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
繊維処理用組成物中の成分100質量%中の成分(B)の含有量は、繊維製品の処理後の柔軟性の観点から、1.0質量%以上であり、5.0質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、成分(B)の含有量は、繊維製品の処理後のべたつきを抑制する観点から、30質量%以下であり、25質量%以下が好ましく、22質量%以下がより好ましい。
【0017】
繊維処理用組成物中の成分(B)に対する成分(A)の質量含有比は、摩擦低減効果と使用感とのバランスの観点から、0.00050~1.0が好ましく、0.00070~0.50がより好ましく、0.00090~0.20さらに好ましく、0.0011~0.070が特に好ましい。
【0018】
[成分(C):水]
本実施形態に係る繊維処理用組成物は、揮発性調整の観点から、水を含有する。本実施形態において使用する水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水等が挙げられる。
【0019】
繊維処理用組成物100質量%中の成分(C)の含有量は、20~98質量%が好ましく、25~90質量%がより好ましく、30~85質量%がさらに好ましく、35~80質量%が特に好ましい。
【0020】
[成分(D):低級アルコール]
本実施形態に係る繊維処理用組成物は、揮発性調整の観点から、低級アルコールを含有することが好ましい。低級アルコールとしては、例えば、炭素数1~4の直鎖状は分枝状の脂肪族アルコールが挙げられ、具体的には、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール等が挙げられる。なかでも、エタノールが好ましい。これらの低級アルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
繊維処理用組成物100質量%中の成分(D)の含有量は、1.0~70質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましく、15~55質量%がさらに好ましく、20~50質量%が特に好ましい。
【0022】
[その他の成分]
本実施形態に係る繊維処理用組成物は、上記成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)以外の成分(その他の成分)を含有していてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、成分(A)以外のカチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、水溶性増粘剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、香料、色素、酸化防止剤、ビタミン類、動植物抽出物、金属イオン封鎖剤等の添加剤等が挙げられる。上記その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記その他の成分からは、成分(A)~(D)に含まれるものは除かれるものとする。
【0023】
上記成分(A)以外のカチオン性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリクオタニウム-10(塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース)、ポリクオタニウム-51(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体)、ポリクオタニウム-6(塩化ジメチルジアリルアンモニウムの重合体)、ポリクオタニウム-7(塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体)、ポリクオタニウム-22(塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体)、ポリクオタニウム-39(アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体)等が挙げられる。
【0024】
上記成分(A)以外のカチオン性ポリマーを含有する場合の繊維処理用組成物100質量%中の含有量は、1.0質量%未満が好ましく、0.50質量%未満がより好ましく、0.10質量%未満がさらに好ましく、上記成分(A)以外のカチオン性ポリマーを含有しないことが特に好ましい。
【0025】
アニオン性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレンステアリルエーテル共重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンベヘネスエーテル共重合体、アクリル酸アルキル・イタコン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル共重合体及びアクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテルクロスポリマー等が挙げられる。
【0026】
アニオン性ポリマーを含有する場合の繊維処理用組成物100質量%中の含有量は、1.0質量%未満が好ましく、0.50質量%未満がより好ましく、0.10質量%未満がさらに好ましく、アニオン性ポリマーを含有しないことが特に好ましい。
【0027】
上記水溶性増粘剤としては特に限定されず、繊維処理用組成物の用途に応じた粘度調整のために適宜選択することができるが、例えば、キサンタンガム、カルボマー、ベントナイト等が挙げられる。これらの水溶性増粘剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
水溶性増粘剤を含有する場合の繊維処理用組成物100質量%中の含有量は、1.0質量%未満が好ましく、0.50質量%未満がより好ましく、0.10質量%未満がさらに好ましく、水溶性増粘剤を含有しないことが特に好ましい。
【0029】
上記ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。
【0030】
上記アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸およびその塩、N-アシルサルコシンおよびその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩等が挙げられる。
【0031】
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩等のアミン塩;モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩;アルキルピリジニウム塩等の環式4級アンモニウム塩;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0032】
上記両性界面活性剤としては、アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係る繊維処理用組成物の粘度は、繊維処理用組成物の用途に応じて適宜選択することができるが、10~4000mPa・sが好ましく、20~2000mPa・sがより好ましく、50~1000mPa・sがさらに好ましい。なお、上記粘度は、B型粘度計を用いて、ローターNo.2を使用して、25℃、回転速度60rpmの条件等で測定される。上記B型粘度計としては、例えば、東機産業(株)製のTV-25型粘度計を使用することができる。
【0034】
本実施形態に係る繊維処理用組成物は、常法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、公知の方法、具体的には、パドルミキサー等で攪拌する方法等で、各成分を均一化する方法が挙げられる。
【0035】
<繊維材料>
本実施形態に係る繊維処理用組成物を付着させる被処理材料としては、織布、不織布、合成樹脂製布などにより構成された、衣類、タオル、包帯、マスク、シート化粧料などが挙げられる。
【0036】
織布および不織布の素材は特に限定されず、合成繊維であっても、天然繊維であっても、これらの混合繊維であってもよい。合成繊維としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等)、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等)等が挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、パルプ、麻、リンター、カポック等の植物繊維を原料とする天然セルロース繊維、レーヨン、アセテート等の植物のセルロースを用いて調製した半天然セルロース繊維、前記天然セルロース繊維以外の天然繊維が挙げられる。合成樹脂製布の素材は特に限定されず、例えばポリウレタン、ポリエチレンなどが挙げられる。
【0037】
不織布としては、特に限定されないが、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布、湿式混紗不織布等が挙げられる。
【0038】
本実施形態に係る繊維材料は、前記の繊維処理用組成物および被処理材料を用い、公知慣用の製造方法により製造することができる。例えば、前記の繊維処理用組成物をスプレー剤型とし、前記の被処理材料に噴霧し、その後乾燥させる方法;前記の繊維処理用組成物を前記の被処理材料に含侵させ、その後乾燥させる方法;前記の被処理材料に、印刷などの方法により前記の繊維処理用組成物を塗工し、その後乾燥させる方法などが挙げられる。
【0039】
本実施形態に係る冷感性材料の製造における、被処理材料に対する繊維処理用組成物の使用量の質量比は、被処理材料の材質、構造、特性等によって適宜選択できるが、本発明の効果を充分に発揮する観点から、被処理材料100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、100質量部以上がさらに好ましい。また、使用時にたれ落ちが発生する等使用感が低下することを防止する観点、また乾燥時間が長くなるという理由からは、1000質量部以下が好ましく、500質量部以下が好ましい。
【0040】
繊維処理用組成物の被処理材料の表面積に対する使用量は、被処理材料の種類、構造、特性等によって適宜選択できるが、本発明の効果を充分に発揮する観点から、0.01mg/cm2以上が好ましく、0.05mg/cm2以上がより好ましく、0.10mg/cm2以上がさらに好ましく、0.50mg/cm2以上が特に好ましい。また、使用時にたれ落ちが発生する等使用感が低下することを防止する観点、また乾燥時間が長くなるという理由からは、10.0mg/cm2以下が好ましく、7.0mg/cm2以下がより好ましく、5.0mg/cm2以下がさらに好ましい。
【0041】
上記の方法により製造された繊維材料は、前記の被処理材料に成分(A)および成分(B)が付着している。繊維材料に付着した成分(B)に対する成分(A)の質量比は、摩擦低減効果と使用感とのバランスの観点から、0.00050~1.0が好ましく、0.00070~0.50がより好ましく、0.00090~0.20さらに好ましく、0.0011~0.070が特に好ましい。
【実施例
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0043】
以下、実施例および比較例において用いた各種材料をまとめて示す。
ポリクオタニウム-11:大阪有機化学工業(株)製の「H.C.ポリマー1N」
ポリクオタニウム-7:Lubrizol社製の「MERQUAT 550PR」
ポリクオタニウム-51:日油(株)製の「LIPIDURE-PMB」
ポリクオタニウム-10:東邦化学工業(株)製の「カチナール HC-100」
【0044】
(実施例および比較例)
表1に記載の組成に従い、実施例および比較例の各繊維処理用組成物を常法により調製した。得られた各繊維処理用組成物をミストスプレーボトルに充填し、不織布製マスクの内側に5回ずつ噴霧(合計約2.5mg/cm2)し、該マスクを23℃湿度60%RHで60分間乾燥させた。得られたマスクの摩擦低減効果、不織布表面のべたつきのなさ、および不織布表面の柔軟性を下記の評価基準により評価した。なお、表1において、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-51、およびポリクオタニウム-10の配合量は、その固形分を表示した。
【0045】
<摩擦低減効果>
未処理マスクまたは各繊維処理用組成物を塗布したマスクの内側が測定面になるようにマスクをプレートにセットした。摩擦感テスター(KES-SE-STP型、カトーテック(株)製)の測定台上にこのプレートを固定し、摩擦子としてシリコンシートを取り付けた。摩擦子を、荷重100g、移動速度1mm/secの条件で移動させ、このときの動摩擦係数μを測定した。未処理マスクの動摩擦係数をμ1、各繊維処理用組成物を塗布したマスクの内側の動摩擦係数をμnとした場合のμn/μ1の値を、摩擦低減効果の評価基準とした。なお、測定は23℃、湿度60%RHの恒温恒湿の条件下で実施した。
(評価基準)
3(優れる):μn/μ1が0.6以下
2(良好):μn/μ1が0.6超0.7未満
1(不良):μn/μ1が0.7以上
【0046】
<べたつきのなさ>
マスク着用時の肌の感触から、不織布表面のべたつきを下記の基準で評価した。なお、評価は、専門評価員3名により、23℃、湿度60%RHの恒温恒湿の条件下で実施した。
(評価基準)
3(優れる):べたつきを感じない
2(良好):べたつきをやや感じる
1(不良):べたつきを感じる
【0047】
<柔軟性>
マスク着用時の肌の感触から、不織布表面の柔軟性を下記の基準で評価した。なお、評価は、専門評価員3名により、23℃、湿度60%RHの恒温恒湿の条件下で実施した。
(評価基準)
3(優れる):柔軟性が充分にある
2(良好):柔軟性がややある
1(不良):柔軟性がない
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果より、特定のカチオン性ポリマー、多価アルコールおよび水を含有する本発明の繊維処理用組成物で処理した繊維材料は、使用感(べたつきのなさ、柔軟性)を悪化させることなく、摩擦抵抗を低減することができることがわかる。一方、比較例の繊維材料は、摩擦抵抗を充分に低減することができなかった。
【0050】
処方例1
ポリクオタニウム-11 0.5質量%
ジプロピレングリコール 15.0質量%
エタノール 30.0質量%
ハッカ油 0.5質量%
メントキシプロパンジオール 3.0質量%
乳酸メンチル 0.5質量%
l-メントール 0.3質量%
香料 0.02質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0051】
処方例2
ポリクオタニウム-11 0.5質量%
ジプロピレングリコール 15.0質量%
エタノール 30.0質量%
スペアミント油 0.05質量%
ユーカリ油 0.01質量%
ローズマリー油 0.01質量%
オレンジ油 0.01質量%
PEG-60水添ヒマシ油 0.5質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0052】
処方例3
ポリクオタニウム-11 0.5質量%
ブチレングリコール 10.0質量%
エタノール 40.0質量%
アロエベラ葉エキス 0.05質量%
ユズ果実エキス 0.02質量%
グレープフルーツ果実エキス 0.01質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の繊維処理用組成物を用いることにより、使用感(べたつきのなさ、柔軟性)を悪化させることなく、摩擦抵抗が低減されたさまざまな繊維材料が製造可能となる。