(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】電力線搬送通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 3/54 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
H04B3/54
(21)【出願番号】P 2021031752
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391006773
【氏名又は名称】OKIネクステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正臣
(72)【発明者】
【氏名】古澤 博行
(72)【発明者】
【氏名】妙川 俊英
(72)【発明者】
【氏名】宮 健二
(72)【発明者】
【氏名】市川 博則
(72)【発明者】
【氏名】鮫田 芳富
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-096973(JP,A)
【文献】特開2013-207501(JP,A)
【文献】特開2003-338778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の伝送局と第2の伝送局が電力線を通じて通信する電力線搬送通信システムにおいて、
前記第1の伝送局は、
前記電力線を通じて教師信号を送信する送信部を備え、
前記第2の伝送局は、
前記電力線を通じて信号を受信する受信部と、
前記受信部が前記教師信号を受信する際に得た信号強度の波形に基づいて、前記第1の伝送局との通信に関わるパラメータを検出する検出部と
を備えることを特徴とする電力線搬送通信システム。
【請求項2】
前記検出部は、前記信号強度の波形に基づいて前記教師信号による信号強度の波形の立ち上がりのタイミングを検出し、前記立ち上がりタイミングに基づいて、通信のタイミングについての前記パラメータを検出することを特徴とする請求項1に記載の電力線搬送通信システム。
【請求項3】
前記検出部は、前記信号強度の波形に基づいて、前記電力線を通じて供給される電力のゼロクロス点と、前記教師信号による信号強度の波形の立ち上がりのタイミングを検出し、前記ゼロクロス点と前記立ち上がりタイミングに基づいて、通信のタイミングについての前記パラメータを検出することを特徴とする請求項1に記載の電力線搬送通信システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記立ち上がりのタイミングに、前記教師信号の搬送波周波数に応じた信号強度偏差に起因する係数を乗じて、前記パラメータを検出することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電力線搬送通信システム。
【請求項5】
前記検出部は、前記信号強度の波形に基づいて、前記教師信号による信号強度の波形の立ち上がりのタイミングと、前記教師信号による信号強度の波形の立ち下がりのタイミングとを検出し、前記立ち上がりタイミングと前記立ち下がりタイミングとシンボル速度に基づいて、シンボル数についての前記パラメータを検出することを特徴とする請求項1に記載の電力線搬送通信システム。
【請求項6】
前記検出部は、前記立ち上がりのタイミングと前記立ち下がりタイミングに、前記教師信号の搬送波周波数に応じた信号強度偏差に起因する係数を乗じて、前記パラメータを検出することを特徴とする請求項5に記載の電力線搬送通信システム。
【請求項7】
前記送信部は、複数の異なる周波数の搬送波を用いて、前記電力線を通じて前記教師信号を送信し、
前記検出部は、前記複数の異なる周波数の信号を受信して各周波数についてS/N比を求め、この各周波数のS/N比に基づいて、通信に用いる周波数を決定することを特徴とする請求項1に記載の電力線搬送通信システム。
【請求項8】
前記検出部は、前記教師信号が注入されていない部分の信号強度の波形に基づいて、ノイズ成分を検出し、このノイズ成分と、前記信号強度の波形に基づいて、前記第1の伝送局との通信に関わるパラメータを検出することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の電力線搬送通信システム。
【請求項9】
前記第1の伝送局は、さらに、前記第2の伝送局に接続される灯火器に対する指示を受信する指示受信部を備え、
前記送信部は、前記指示受信部が受信した指示に応じて、前記電力線を通じて教師信号を送信することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の電力線搬送通信システム。
【請求項10】
前記第1の伝送局は、さらに、前記電力線に電力を供給する電源装置を監視する監視部を備え、
前記送信部は、前記監視部の監視結果に応じて、前記電力線を通じて教師信号を送信することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の電力線搬送通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、電力線を通信回線として用いる電力線搬送通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、通信ケーブルの敷設や無線システムの利用が困難な環境において、電力線搬送通信システムが適用されることがある。その一例として、空港フィールドがある。空港フィールドにおいては、RWSL(Runway Status Light、滑走路状態表示灯)やSTBL( Stop Bar Light、ストップバー灯)などの各種誘導灯の断芯などの故障状態を、電力線搬送通信にて監視や点灯制御する灯火監視制御システムシステムがある。
【0003】
このような灯火監視制御システムシステムでは、制御装置からの指示を受ける親局と、誘導灯が接続された子局の間で電力線搬送通信を行うが、親局と子局の間での通信に関わるパラメータの柔軟な変更が課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3776639号公報
【文献】特許第4889971号公報
【文献】特開2019-96973号公報
【文献】特開2018-14685号公報
【文献】特開2019-205019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電力線搬送通信を行う親局と子局の間で、通信に関わるパラメータの柔軟な変更が可能な電力線搬送通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電力線搬送通信システムは、第1の伝送局と第2の伝送局が電力線を通じて通信し、第1の伝送局は、送信部を備え、第2の伝送局は、受信部と検出部を備える。送信部は、電力線を通じて教師信号を送信する。受信部は、電力線を通じて信号を受信する。検出部は、受信部が教師信号を受信する際に得た信号強度の波形に基づいて、第1の伝送局との通信に関わるパラメータを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】この発明に係わる電力線搬送通信システムの全体的な概略構成例を示す図。
【
図2】
図1に示した親伝送局の構成の一部を詳細に示した図。
【
図3】
図1に示した子伝送局の構成の一部を詳細に示した図。
【
図4】
図2に示した親伝送局の制御部の機能の一部を示した図。
【
図5】
図3に示した子伝送局の制御部の機能の一部を示した図。
【
図6】
図3に示した子伝送局の送受信タイミングを説明するための図。
【
図7】親伝送局から子伝送局に対するティーチングを説明するための図。
【
図8】ティーチングで用いられる通信フレームの構成例を示す図。
【
図9】教師信号に基づく受信タイミングの算出を説明するための図。
【
図10】親伝送局から子伝送局に対するティーチングを説明するための図。
【
図11】教師信号に基づく受信タイミングの算出を説明するための図。
【
図12】
図3に示した子伝送局の制御部の機能の変形例を示した図。
【
図13】教師信号に基づくシンボル数の算出を説明するための図。
【
図14】
図3に示した子伝送局の制御部の機能の変形例を示した図。
【
図15】教師信号に基づくS/N比の算出を説明するための図。
【
図16】教師信号に基づく受信タイミングの算出を説明するための図。
【
図17】この発明に係わる電力線搬送通信システムの概略構成の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態に係る電力線搬送通信システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、電力線搬送通信システムを灯火監視制御システムに適用した一実施形態に係わるものであり、システムの構成を概略的に示している。灯火監視制御システムは、空港フィールドにおいて使用される誘導灯などの灯火や断芯などの故障診断を行うものである。
【0009】
この灯火監視制御システムは、交流電源100と、定電流電源装置101と、灯火監視制御装置102と、フィルタ103と、交流器104と、電源供給路105と、親伝送局200と、子伝送局300-1~300-nと、灯火器400-1~400-nとを備える。
【0010】
交流電源100は、例えば電力会社にて発電及び送電された電力を供給するものである。
定電流電源装置101は、交流電源100からの電力を当該灯火監視制御システム内部の電圧に変換し、出力電流を常に一定に制御することが可能な電源回路である。そして定電流電源装置101は、親伝送局200や子伝送局300-1~300-n、灯火器400-1~400-nに動作電力を供給するものであって、この動作電力には、親伝送局200と子伝送局300-1~300-nとの間の伝送信号が重畳される。
【0011】
灯火監視制御装置102は、パーソナルコンピュータやサーバなどのコンピュータであって、空港のオペレータが使用する上位装置からの指示に応じて、定電流電源装置101の起動や停止、親伝送局200を通じた、後述する灯火器400-1~400-nの灯火の監視や制御、障害の発生の監視などを行う。なお、この実施形態では、説明を簡明にするために1つの回路を示すが、複数の回路を制御することも可能である。ここでいう回路とは、灯火監視制御装置102の制御対象を電源供給路105でつないだものである。
【0012】
フィルタ103は、インダクタ(L)や、キャパシタ(C)を組み合わせて構成されたフィルタであって、親伝送局200と子伝送局300-1~300-nとの間の伝送信号の搬送波周波数に対し高インピダンスとなるようにフィルタの定数が設定されている。このフィルタ103より、親伝送局200と子伝送局300-1~300-nの間の伝送信号が定電流電源装置101側に漏れにくくなるとともに、電源供給路105における伝送信号の減衰を軽減させることができる。
【0013】
交流器104は、フィルタ103と、親伝送局200や子伝送局300-1~300-nとの間に設けられたとナンスなどにより構成された結合器である。また子伝送局300-1~300-nと電源供給路105との間にも交流器が設けられる。
【0014】
電源供給路105は、空港フィールド内に敷設される電力線であって、定電流電源装置101の二次側出力を親伝送局200、子伝送局300-1~300-nおよび灯火器400-1~400-nに対して動作用電力として供給する。また、電源供給路105は、親伝送局200と子伝送局300-1~300-nとの間の電力線搬送通信の通信回線として機能する。
【0015】
親伝送局200は、フィルタ103、交流器104および電源供給路105を介して動作用電力が供給されるとともに、灯火監視制御装置102によって制御され、電源供給路105を介して子伝送局300-1~300-nと電力線搬送通信を行う。そして、親伝送局200は、灯火監視制御装置102からの指示に従って、子伝送局300-1~300-nに対して灯火に関する指示を送信し、子伝送局300-1~300-nから灯火器400-1~400-nについての情報を受信し、この情報を灯火監視制御装置102に通知する。詳細な構成例については、別の図を参照して後述する。
【0016】
子伝送局300-1~300-nは、電源供給路105を介して動作用電力が供給されるとともに、親伝送局200と電力線搬送通信を行う。そして、子伝送局300-1~300-nは、親伝送局200からの指示にしたがって、それぞれ接続された灯火器400-1~400-nの灯火を制御、故障や障害を検出する機能を有する。詳細な構成例については、別の図を参照して後述する。
【0017】
灯火器400-1~400-nは、それぞれ対応する子伝送局300-1~300-nに接続され、子伝送局300-1~300-nによって、灯火が制御される。制御内容としては、点灯と消灯、照度の制御、故障の診断(断線などの検出)などがある。また灯火器としての具体例としては、RWSL(Runway Status Light、滑走路状態表示灯)やSTBL( Stop Bar Light、ストップバー灯)などである。
【0018】
次に、
図2を参照して、親伝送局200の構成例について説明する。
親伝送局200は、灯火監視制御装置通信部201と、制御部202と、データ送信部203と、変調処理部204と、信号送信部205と、信号受信部206と、位相検出部207と、復調処理部208と、データ受信部209と、記憶部210と、外部通信部211とを備える。
【0019】
なお、
図2において、ブロックにて表現されている各部は、各々ICチップのような個別のハードウェアにて実現されていてもよいし、コンピュータプログラムをプロセッサが実行することにより実現されるものであってもよい。
【0020】
灯火監視制御装置通信部201は、有線通信あるいは無線通信に対応した通信インタフェース回路を備え、灯火監視制御装置102と通信する。具体的には、灯火監視制御装置102から灯火器400-1~400-nについての制御(例えば、点灯や消灯、点灯時の照度、断線などの故障の診断や監視など)の指示を受信するとともに、灯火監視制御装置102に対して、診断や監視などの結果を送信する。
【0021】
制御部202は、当該親伝送局200の各部を統括して制御するものであって、プロセッサやメモリなどにより構成され、メモリが記憶する制御プログラムや制御データにしたがってプロセッサが動作し、各種制御機能を実現する。
【0022】
具体的な制御機能の一例としては、制御部202は、灯火監視制御装置通信部201が灯火監視制御装置102から受信した指示に基づいて、灯火器400-1~400-nを制御(例えば、点灯や消灯、点灯時の照度、断線などの故障の診断や監視など)するためのコマンドを生成する。
【0023】
また、制御部202は、予め設定された通信シーケンスにしたがい、子伝送局300-1~300-nから送信された情報などに基づいて、子伝送局300-1~300-nとの通信制御を行い、上記情報を灯火監視制御装置102に送信するように灯火監視制御装置通信部201を制御する。
【0024】
さらに、制御部202は、子伝送局300-1~300-nとの間で高速通信を行うために、後に詳述するようなティーチングフローを実行する。ティーチングフローでは、当該親伝送局200の各部を制御して、教師信号の送信制御やパラメータ設定、変復調方式の切り替え制御などを行う。なお、教師信号とは、受信側にとっても既知の信号であることが望ましい。
【0025】
データ送信部203は、例えば、マイクロコンピュータチップや伝送制御用回路等により構成され、送信制御に関わるパラメータ情報210aに基づいて、制御部202が生成した、1つまたは複数のコマンドに基づくコマンドデータを生成するとともに、このコマンドデータを送信先が正確に受信するための誤り検出や訂正のための各種FEC符号をコマンドデータに付加して、送信データ生成する。そしてデータ送信部203は、上記送信データを含む所定のフォーマットの通信フレームを生成する。
【0026】
なお、パラメータ情報210aには、例えば、送信出力レベル、通信するタイミング情報、通信可能時間、搬送周波数、シンボル数、シンボル速度、交流電圧に割り当てられた通信区間に対応した通信可能時間などが定義されており、この定義に合わせた送信データをデータ送信部203は生成する。
【0027】
また、上記通信フレームには、自局、すなわち当該親伝送局200を識別する情報を含ませるとともに、宛先となる子伝送局300-1~300-nの識別情報を含ませるようにしてもよいし、コマンド毎に宛先となる子伝送局300-1~300-nの識別情報を含ませるようにしてもよい。
【0028】
すなわち、上記コマンドデータには、送信元を示す自局の識別情報に加えて、灯火器400-1~400-nを個々、又はグループにまとめて制御(例えば、点灯や消灯、点灯時の照度、断線などの故障の診断や監視など)するためのコマンドや制御情報と、宛先の識別情報などを含みうる。
【0029】
変調処理部204は、例えば、マイクロコンピュータチップや伝送制御用回路などにより構成され、制御部202からの指示や、パラメータ情報210aおよび通信フレームに基づいて、搬送波を変調するための変調信号を生成するものである。
【0030】
具体的には、例えば制御部202からの指示やパラメータ情報210aにしたがった変調方式(例えば、振幅変調(AM)、位相変調(PM)あるいは周波数変調(FM))により、パラメータ情報210aで定義される送信出力レベル、通信するタイミング情報、通信可能時間、搬送周波数、シンボル数、シンボル速度、交流電圧に割り当てられた通信区間に対応した通信可能時間などの情報に基づき、変調信号を生成する。例えば、位相変調方式の場合、1bit~複数bit単位で規定したシンボルを、シンボル毎に対応した位相、時間間隔、搬送周波数で変調データを生成する。
【0031】
信号送信部205は、例えば、デジタル-アナログ変換用のICチップや回路などにより構成され、搬送波を生成するとともに、制御部202からの指示や、パラメータ情報210a、後述する位相検出部207が検出した電力信号の位相(電源波形の位相)に基づいて、変調処理部204により作成された変調信号を用いて上記搬送波を変調し、増幅した後、電源供給路105の電力信号に重畳して結合器を介して送信を行う。
【0032】
なお、送信される情報量が過大であるために1回の送信タイミングで全ての情報を送信できない場合には、信号送信部205は、複数回に分けて送信を行うように送信タイミングを調整する。例えば、信号送信部205は、全データ量を、1回で送信できるデータ量で除算した回数で送信を行うようにしてもよい。
【0033】
信号受信部206は、例えば、アナログ-デジタル変換用のICチップや回路などにより構成され、制御部202からの指示や、受信制御に関わるパラメータ情報210bに基づいて、電源供給路105の電力信号に重畳されている子伝送局300-1~300-nからの送信信号を、結合器を介して受信(検波)し、上記電力信号の波形の情報(時系列の信号強度など)を検出して位相検出部207に出力するとともに、上記送信信号をアナログ-デジタル変換してデジタル信号に変換する。
【0034】
なお、パラメータ情報210bには、例えば、通信するタイミング情報、通信可能時間、搬送周波数、シンボル数、シンボル速度、交流電圧に割り当てられた通信区間に対応した通信可能時間などが定義されており、この定義に合わせた受信を信号受信部206は行う。
【0035】
位相検出部207は、例えば、デジタルまたはアナログのコンパレータ回路などにより構成され、信号受信部206からの情報に基づき、電源供給路105の電力信号の位相やゼロクロス点の位相、ノイズの位相などの位相情報を検出する。ここで検出された位相情報は、制御部202、信号送信部205、復調処理部208、データ受信部209に通知される。
【0036】
復調処理部208は、例えば、マイクロコンピュータチップや伝送制御用回路などにより構成され、制御部202からの指示や、位相検出部207が検出した位相情報、パラメータ情報210bに基づいて、信号受信部206にて得られたデジタル信号を復調し、子伝送局300-1~300-nから送られた通信フレームのデータを得る。
【0037】
具体的には、例えば制御部202からの指示やパラメータ情報210bにしたがった変調方式(例えば、振幅変調あるいは位相変調)により、パラメータ情報210bで定義される、通信するタイミング情報、通信可能時間、搬送周波数、シンボル数、シンボル速度、交流電圧に割り当てられた通信区間に対応した通信可能時間などの情報と、位相検出部207が検出した位相情報に基づいて、上記デジタル信号に対して復調処理を施して、通信フレームのデータを得る。なお、上記復調処理は、上記デジタル信号から、一定の時間間隔でシンボルを抽出し、フーリエ変換などを施して、信号強度と位相を検出することを含みうる。
【0038】
データ受信部209は、例えば、マイクロコンピュータチップや伝送制御用回路等により構成され、制御部202からの指示や、位相検出部207が検出した位相情報、パラメータ情報210bに基づいて、復調処理部208で得られた通信フレームのデータに対して、各種FEC符号を適用して誤り検出や訂正を行って、通信フレームの異常の有無を検出し、子伝送局300-1~300-nから送られた子伝送局情報を得る。なお、子伝送局情報には、子伝送局300-1~300-nより発せられたコマンド、各種制御情報、診断や監視などの結果を示す応答情報などが含まれうる。
【0039】
記憶部210は、半導体メモリやハードディスクのような記憶媒体を用いたものであって、パラメータ情報210aやパラメータ情報210bを記憶し、制御部202が制御や処理を行うためのワークエリアとして使用される。記憶部210に記憶される情報は、工場出荷時やシステムの運転開始時に初期設定されるものであり、また、システムの運転中に逐次設定により更新されうる。
【0040】
外部通信部211は、保守用端末と通信するための通信インタフェースである。この外部通信部211に接続された保守用端末により記憶部210に記憶される情報を更新し、あるいは、その情報を保守端末に出力する。また外部通信部211に接続された保守用端末により各部の制御の他、診断や監視、ログの出力を行うことができる。
【0041】
次に、
図3を参照して、子伝送局300-1~300-nの構成例について説明する。
子伝送局300-1~300-nは、親伝送局200と比較して、通信機能については同様の構成を備え、親伝送局200が灯火監視制御装置102と通信する機能を備えるのに対して、子伝送局300-1~300-nは、灯火器400-1~400-nに対する直接的な制御、故障や障害を検出する機能を備える。
【0042】
子伝送局300-1~300-nは、灯火制御部301と、制御部302と、データ送信部303と、変調処理部304と、信号送信部305と、信号受信部306と、位相検出部307と、復調処理部308と、データ受信部309と、記憶部310と、外部通信部311とを備える。
【0043】
なお、
図3において、ブロックにて表現されている各部は、各々ICチップのような個別のハードウェアにて実現されていてもよいし、コンピュータプログラムをプロセッサが実行することにより実現されるものであってもよい。
【0044】
灯火制御部301は、接続された灯火器(400-1~400-nのいずれか)を直接的に、制御、灯火器の故障や障害を検出するものである。具体的には、後述するデータ受信部309が得たコマンド、すなわち親伝送局200からの指示にしたがって、灯火器400-1~400-nに対して、例えば、点灯や消灯、点灯時の照度、断線などの故障の診断や監視などを行うとともに、診断や監視の結果を示す応答情報を生成し、制御部302に出力する。
【0045】
制御部302は、当該子伝送局(300-1~300-nのいずれか)の各部を統括して制御するものであって、プロセッサやメモリなどにより構成され、メモリが記憶する制御プログラムや制御データにしたがってプロセッサが動作し、各種制御機能を実現する。
【0046】
具体的な制御機能の一例としては、制御部302は、自局の状態に応じた各種制御情報や、灯火制御部301からの応答情報などに応じたコマンドを生成する。また、制御部302は、予め設定された通信シーケンスにしたがい、親伝送局200から送信された情報などに基づいて、親伝送局200との通信制御を行い、上記応答情報などを送信するように各部を制御する。
【0047】
上記通信制御では、制御部302は、親伝送局200との間で高速通信を行うために、後に詳述するようなティーチングフローを実行する。ティーチングフローでは、当該子伝送局(300-1~300-nのいずれか)の各部を制御して、教師信号の受信制御やパラメータ設定、変復調方式の切り替え制御などを行う。
【0048】
データ送信部303は、例えば、マイクロコンピュータチップや伝送制御用回路等により構成され、送信制御に関わるパラメータ情報310aに基づいて、制御部302が生成した、1つまたは複数のコマンドに基づくコマンドデータを生成するとともに、このコマンドデータを送信先が正確に受信するための誤り検出や訂正のための各種FEC符号をコマンドデータに付加して、送信データ生成する。そしてデータ送信部303は、上記送信データを含む所定のフォーマットの通信フレームを生成する。
【0049】
なお、パラメータ情報310aには、例えば、送信出力レベル、通信するタイミング情報、通信可能時間、搬送周波数、シンボル数、シンボル速度、交流電圧に割り当てられた通信区間に対応した通信可能時間などが定義されており、この定義に合わせた送信データをデータ送信部303は生成する。
【0050】
また、この通信フレームには、自局、すなわち当該子伝送局(300-1~300-nのいずれか)を識別する情報を含ませるとともに、宛先となる親伝送局200の識別情報を含ませるようにしてもよいし、コマンド毎に宛先となる親伝送局200の識別情報を含ませるようにしてもよい。さらには、上記コマンドデータには、送信元を示す自局の識別情報に加えて、診断や監視の対象となる灯火器(400-1~400-nのいずれか)を示す識別情報を含みうる。
【0051】
変調処理部304は、例えば、マイクロコンピュータチップや伝送制御用回路などにより構成され、制御部302からの指示や、パラメータ情報310aおよび通信フレームに基づいて、搬送波を変調するための変調信号を生成するものである。
【0052】
具体的には、例えば制御部302からの指示やパラメータ情報310aにしたがった変調方式(例えば、振幅変調あるいは位相変調)により、パラメータ情報310aで定義される送信出力レベル、通信するタイミング情報、通信可能時間、搬送周波数、シンボル数、シンボル速度、交流電圧に割り当てられた通信区間に対応した通信可能時間などの情報に基づき、変調信号を生成する。例えば、位相変調方式の場合、1bit~複数bit単位で規定したシンボルを、シンボル毎に対応した位相、時間間隔、搬送周波数で変調データを生成する。
【0053】
信号送信部305は、例えば、デジタル-アナログ変換用のICチップや回路などにより構成され、搬送波を生成するとともに、制御部302からの指示や、パラメータ情報310a、後述する位相検出部307が検出した電力信号の位相(電源波形の位相)に基づいて、変調処理部304により作成された変調信号を用いて上記搬送波を変調し、増幅した後、電源供給路105の電力信号に重畳して結合器を介して送信を行う。
【0054】
なお、送信される情報量が過大であるために1回の送信タイミングで全ての情報を送信できない場合には、信号送信部305は、複数回に分けて送信を行うように送信タイミングを調整する。例えば、信号送信部305は、全データ量を、1回で送信できるデータ量で除算した回数で送信を行うようにしてもよい。
【0055】
信号受信部306は、例えば、アナログ-デジタル変換用のICチップや回路などにより構成され、制御部302からの指示や、受信制御に関わるパラメータ情報310bに基づいて、電源供給路105の電力信号に重畳されている親伝送局200からの送信信号を、結合器を介して受信(検波)し、上記電力信号の波形の情報(時系列の信号強度など)を検出して位相検出部307に出力するとともに、上記送信信号をアナログ-デジタル変換してデジタル信号に変換する。
【0056】
なお、パラメータ情報310bには、例えば、通信するタイミング情報、通信可能時間、搬送周波数、シンボル数、シンボル速度、交流電圧に割り当てられた通信区間に対応した通信可能時間などが定義されており、この定義に合わせた受信を信号受信部306は行う。
【0057】
位相検出部307は、例えば、デジタルまたはアナログのコンパレータ回路などにより構成され、信号受信部306からの情報に基づき、電源供給路105の電力信号の位相やゼロクロス点の位相などの位相情報を検出する。ここで検出された位相情報は、制御部302、信号送信部305、復調処理部308、データ受信部309に通知される。
【0058】
復調処理部308は、例えば、マイクロコンピュータチップや伝送制御用回路などにより構成され、制御部302からの指示や、位相検出部307が検出した位相情報、パラメータ情報310bに基づいて、信号受信部306にて得られたデジタル信号を復調し、親伝送局200から送られた通信フレームのデータを得る。
【0059】
具体的には、例えば制御部302からの指示やパラメータ情報310bにしたがった変調方式(例えば、振幅変調あるいは位相変調)により、パラメータ情報310bで定義される、通信するタイミング情報、通信可能時間、搬送周波数、シンボル数、シンボル速度、交流電圧に割り当てられた通信区間に対応した通信可能時間などの情報と、位相検出部307が検出した位相情報に基づいて、上記デジタル信号に対して復調処理を施して、通信フレームのデータを得る。なお、上記復調処理は、上記デジタル信号から、一定の時間間隔でシンボルを抽出し、フーリエ変換などを施して、信号強度と位相を検出することを含みうる。
【0060】
データ受信部309は、例えば、マイクロコンピュータチップや伝送制御用回路等により構成され、制御部302からの指示や、位相検出部307が検出した位相情報、パラメータ情報310bに基づいて、復調処理部308で得られた通信フレームのデータに対して、各種FEC符号を適用して誤り検出や訂正を行って、通信フレームの異常の有無を検出し、親伝送局200から送られたコマンドデータを得る。
【0061】
記憶部310は、半導体メモリやハードディスクのような記憶媒体を用いたものであって、パラメータ情報310aやパラメータ情報310bを記憶し、制御部302が制御や処理を行うためのワークエリアとして使用される。記憶部310に記憶される情報は、工場出荷時やシステムの運転開始時に初期設定されるものであり、また、システムの運転中に逐次設定により更新されうる。
【0062】
外部通信部311は、保守用端末と通信するための通信インタフェースである。この外部通信部311に接続された保守用端末により記憶部310に記憶される情報を更新し、あるいは、その情報を保守端末に出力する。また外部通信部311に接続された保守用端末により各部の制御の他、診断や監視、ログの出力を行うことができる。
【0063】
次に、
図4を参照して、
図2に示した親伝送局200の制御部202の処理機能と処理フローの概略について説明する。
灯火監視制御装置102からの指示に対する制御として制御部202は、コマンド受信処理401として、灯火監視制御装置通信部201を制御して、灯火監視制御装置102からの指示(コマンド)を受信する。次に、制御部202は、コマンド判定・データ処理400として、受信した指示を判定する。ここで、上記指示が灯火器400-1~400-nの制御に関するものであれば、上記指示に応じたコマンドを生成して、このコマンドをデータ送信部203に出力する。つづいて、制御部202は、データ送信処理402として、データ送信部203、変調処理部204、信号送信部205を制御して、上記コマンドを子伝送局300-1~300-nに送信する。
【0064】
一方、子伝送局300-1~300-nからの受信に対する制御として制御部202は、データ受信処理403として、信号受信部206、位相検出部207、復調処理部208、データ受信部209を制御して、子伝送局300-1~300-nから送られる情報を受信する。次に、制御部202は、コマンド判定・データ処理400として、受信した情報を判定する。
【0065】
ここで、上記情報が灯火器400-1~400-nの診断や監視に関する応答情報であれば、上記応答情報に応じたコマンドを生成して、このコマンドを灯火監視制御装置通信部201に出力する。つづいて、制御部202は、応答送信処理404として、灯火監視制御装置通信部201を制御して、上記コマンドを灯火監視制御装置102に送信する。
【0066】
また制御部202は、算出処理405を行う。算出処理405は、灯火監視制御装置102あるいは子伝送局300-1~300-nからのコマンドに応じて、送信タイミング算出処理405bや受信タイミング算出処理405aを実施するものである。
【0067】
受信タイミング算出処理405aでは、子伝送局(300-1~300-nいずれか)から受信した信号の波形を分析して、当該子伝送局からの受信に適した受信タイミングを算出し、この受信タイミングで受信するためのパラメータを生成し、このパラメータをパラメータ情報210bに反映(更新)する。
【0068】
送信タイミング算出処理405bでは、子伝送局(300-1~300-nのいずれか)から受信した信号の波形を分析して、当該子伝送局への送信に適した送信タイミングを算出し、この送信タイミングで送信するためのパラメータを生成し、このパラメータをパラメータ情報210aに反映(更新)する。
【0069】
なお、受信タイミング算出処理405aや送信タイミング算出処理405bは、後述する子伝送局(300-1~300-nのいずれか)における波形分析により得た受信タイミングや送信タイミングについての情報を当該子伝送局よりコマンドとして受信し、そのコマンドで示される受信タイミングや送信タイミングのパラメータをパラメータ情報210aや210bに反映させるようにしてもよい。
ただし、親伝送局200が子伝送局300-1~300-nに向けて一括して指示を行う場合には、親伝送局200の一括送信に対して、子伝送局300-1~300-nがそれぞれ受信タイミングを調整する。
【0070】
次に、
図5を参照して、
図3に示した子伝送局300-1~300-nの制御部302の処理機能と処理フローの概略について説明する。
親伝送局200からの受信に対する制御として制御部302は、データ受信処理501として、信号受信部306、位相検出部307、復調処理部308、データ受信部309を制御して、親伝送局200からの指示(コマンド)を受信する。
【0071】
次に、制御部302は、コマンド判定・データ処理500として、受信した指示を判定する。ここで、上記指示が灯火器(400-1~400-nのいずれか)の点灯に関するものであれば、灯火制御部301を通じて指示に応じた点灯制御を行う。
【0072】
一方、上記指示が診断や監視に関するものであれば、上記指示に応じて灯火制御部301から灯火器(400-1~400-nのいずれか)の診断や監視に関する応答情報を取得する。つづいて、制御部302は、データ送信処理502として、上記応答情報に応じたコマンドを生成した後、データ送信部303、変調処理部304、信号送信部305を制御して、上記コマンドを親伝送局200に送信する。
【0073】
また制御部302は、算出処理503を行う。算出処理503は、親伝送局200からのコマンドに応じて、あるいは制御部302が自律的に、送信タイミング算出処理503bや受信タイミング算出処理503aを実施するものである。
【0074】
受信タイミング算出処理503aでは、親伝送局200から受信した信号の波形を分析して、親伝送局200からの受信に適した受信タイミングを算出し、この受信タイミングで受信するためのパラメータを生成し、このパラメータをパラメータ情報310bに反映(更新)する。なお、受信タイミング算出処理503aにおける処理の内容は、実質的に、受信タイミング算出処理405aと同様である。
【0075】
送信タイミング算出処理503bでは、親伝送局200から受信した信号の波形を分析して、親伝送局200への送信に適した送信タイミングを算出し、この送信タイミングで送信するためのパラメータを生成し、このパラメータをパラメータ情報310aに反映(更新)する。なお、送信タイミング算出処理503bにおける処理の内容は、実質的に、送信タイミング算出処理405bと同様である。
【0076】
なお、受信タイミング算出処理503aや送信タイミング算出処理503bは、上記波形分析により得た受信タイミングや送信タイミングについての情報を親伝送局200にコマンドとして送信し、親伝送局200側において、受信タイミングや送信タイミングを調整するようにしてもよい。
ただし、親伝送局200が子伝送局300-1~300-nに向けて、一括して指示を行う場合には、親伝送局200の一括送信に対して、子伝送局300-1~300-nがそれぞれ受信タイミングを調整する。
【0077】
なお、親伝送局200は、第1の伝送局の一例であり、子伝送局300-1~300-nは、第2の伝送局の一例である。また第1の伝送局の送信部は、例えば、制御部202、データ送信部203、変調処理部204、信号送信部205、信号受信部206、位相検出部207によって構成できる。また第2の伝送局の受信部および検出部は、制御部302、信号受信部306、位相検出部307、復調処理部308、データ受信部309によって構成できる。
【0078】
すなわち、第1の伝送局の送信部は、電力線を通じて教師信号を送信し、第2の伝送局の受信部は、電力線を通じて信号を受信し、検出部は、受信部が教師信号を受信する際に得た信号強度の波形に基づいて、第1の伝送局との通信に関わるパラメータを検出する。
【0079】
次に、上記構成の灯火監視制御システムの動作について説明する。
まず、
図6を参照して、子伝送局300-1~300-nの受信タイミングと送信タイミングについて説明する。
図6は、子伝送局300-1~300-nの受信タイミングと送信タイミングのタイミングチャートの一例を示すものである。なお、
図6(c)の受信と、
図6(d1)~(d3)の送信は、同時に行われるわけではなく、
図6(a)の電源波形や
図6(b)のノイズとの関係を示すものである。
【0080】
図6(a)は、電源供給路105の電力信号の波形、すなわち電源波形の例を示しており、交流周期により、例示するようなゼロクロス点が発生する。当該灯火監視制御システムでは、ゼロクロス点の位相は、親伝送局200の位相検出部207や子伝送局300-1~300-nの位相検出部307によってそれぞれ検出される。また親伝送局200および子伝送局300-1~300-nは、ゼロクロス点に同期して、電源供給路105を通じた送受信を行う。
【0081】
子伝送局300-1~300-nが受信する場合、親伝送局200が送信した信号は、すべての子伝送局300-1~300-nにて受信することが可能である。親伝送局200は、位相検出部307が検出したゼロクロス点やノイズの位相に基づき、ノイズを避けたタイミングで送信を行う。
【0082】
例えば、
図6(b)に示すように、電源波形にノイズが発生している場合、このノイズを避けるために
図6(c)に示すタイミングAとBのように、制御部202が複数のタイミングを定義し、子伝送局300-1~300-nに対して定義したタイミングを示すコマンドを送信する。
【0083】
一方、子伝送局300-1~300-nが送信する場合、子伝送局300-1~300-nから親伝送局200に向けた送信のタイミングが衝突することを避けるために、親伝送局200は子伝送局300-1~300-n毎にコマンドを送信して、ユニークなタイミングを割り当てる。
【0084】
図6(d1)は、タイミングAが割り当てられた子伝送局300-1が送信を行う様子を示し、
図6(d2)は、タイミングBが割り当てられた子伝送局300-2が送信を行う様子を示している。また送信のタイミングは変復調方式が低速であるほどリソースが限られるため、半周期後の同じタイミングAは、
図6(d3)に示すように、子伝送局300-nが送信を行うようにタイミングを割り当てる。
【0085】
なお、本実施形態の一例としては、親伝送局200が子伝送局300-1~300-n毎に送信タイミングを割り当てる場合、ノイズに対しクリティカルな影響を受けないように十分なシンボル長が確保された低速な変復調方式(例えば、振幅変調方式)を利用する。
【0086】
ところで、子伝送局300-1~300-nでは、ゼロクロス点に同期して送受信を行うが、灯火器400-1~400-nなどの負荷変動の影響により、子伝送局300-1~300-n間で時には数100μS程度の誤差が生じ得る。この場合、本来の単位時間あたりの情報量と即時応答性で要求される高速な変復調方式で通信した際に差異が発生し、通信品質に影響する可能性がある。
【0087】
そこで、本実施形態に係る灯火監視制御システムでは、親伝送局200と子伝送局300-1~300-nとの間で、送信側から受信側に(例えば、親伝送局200から子伝送局300-1~300-nに)対してティーチングを行うことによって、高速通信に対応する変調方式のためのパラメータ設定を行い、通信品質への影響を軽減する。
【0088】
以下に、上記ティーチングの具体例について説明する。以下の説明では、親伝送局200が、子伝送局300-1~300-nに対してティーチングを行う場合を例に挙げて説明する。なお、子伝送局300-1~300-nが、親伝送局200に対してティーチングを行うことも可能である。
【0089】
図7は、親伝送局200による、子伝送局300-1~300-nにおける受信タイミングについてのティーチングのフローを示す図である。なお、以下の説明において、子伝送局300-1~300-nに共通する説明については、「子伝送局300」と表現する。
【0090】
まず、親伝送局200は、ステップ711として、制御部202が送信系の各部を制御し、電源供給路105を介して子伝送局300に向け、受信タイミングについてのティーチングフロー開始を示すコマンド(以下、開始コマンドSRと称する)を送信する。具体的には、制御部202は、上記開始コマンドSRを生成するとともに、変調処理部204に対して振幅変調を指示し、これにより上記開始コマンドSRは、一般に低速とされる振幅変調により送信される。
【0091】
これに対して、子伝送局300は、ティーチングフローを実行する前は、振幅変調による信号の受信を待機した状態にある。すなわち、制御部302は受信系の各部を制御し、例えば、復調処理部308に対して振幅変調に対する受信を指示し、電源供給路105を介して送信される信号に対して振幅変調に対する復調を行って、親伝送局200から送信されるコマンドを待機している。
【0092】
やがて、子伝送局300は、ステップ721を実行する。すなわち、データ受信部309が上記開始コマンドSRを受信して制御部302に出力すると、これに応動して制御部302は、送信系の各部を制御して、上記開始コマンドSRに対するAckコマンドを親伝送局200へ返す送信制御を行った後、ステップ722に移行する。
【0093】
これに対して、親伝送局200は、ステップ712を実行する。すなわち、データ受信部209が子伝送局300からAckコマンドを受信して制御部202に出力し、これに応動して制御部202は、送信系の各部を制御して、子伝送局300における受信タイミングを示すための教師信号TRを生成して送信する。
図8は、教師信号TRを含む通信フレームの一例を示している。
【0094】
制御部202は、
図8に例示するように、複数の異なる周波数f1,f2の搬送波に対して振幅変調による送信を行うために、送信系の各部を制御する。具体的には、開始コマンドSRと、後述する終了コマンドERを注入した通信フレームをそれぞれ振幅変調により送信する。また開始コマンドSRと終了コマンドERとの間に、信号注入のない区間(通信フレーム)を挟んで、教師信号TRを含む通信フレームを送信する。
【0095】
なお、教師信号TRは、一般に高速な通信に対応する変調方式(例えば位相変調)の信号や無変調信号により生成し、連続する2つのゼロクロス点の間(以下、スロットと称する)で送信する。また開始コマンドSR、終了コマンドER、信号注入のない区間、教師信号TRは、それぞれ、連続する複数のスロットにおいてそれぞれ送信する。
【0096】
ステップ722において子伝送局300は、受信タイミングの算出処理を実行する。具体的には、制御部302の制御により、信号受信部306は、教師信号TRに応じた搬送周波数、時間幅またはサンプリング数、時間間隔またはサンプリング間隔で検波し、時系列の信号強度の分布データを生成する。
【0097】
なお、複数のスロットを通じて受信した複数の教師信号TRは、ゼロクロスを基準に信号強度を平均化することにより、突発的な変動に影響しにくいものになる。また、検波には、高速通信時のシンボル速度(時間幅またはサンプリング数)、または、任意のシンボル速度であって構わない。
【0098】
そして、位相検出部307は、信号受信部306によって得られた上記分布データに対して位相検出を行う。制御部302は、信号受信部306によって得られた上記分布データと、これに対応する、位相検出部307が検出した位相情報とに基づく受信タイミング算出処理503aを実行して、受信タイミングを算出する。
【0099】
受信タイミングの具体的な算出例について、
図9を参照して説明する。
図9は、周波数f1についてゼロクロス点を起点とした、教師信号TRの信号強度の時間的な分布データである。制御部302は、信号強度について、ゼロクロスから立ち上がりまでの間の最大レベルをMINとし、信号強度の立ち上がり後の最初の極大レベルをMAXとする。そして、MINとMAXの和の1/2を閾値強度とする。
【0100】
そして、制御部302は、ゼロクロス点を起点とした上記閾値強度のタイミングから、上記シンボル速度の1/2に相当する時間を引いたタイミングを、周波数f1についての受信タイミングとして算出(検出)する。このようにして、受信タイミングが得られると、ステップ723に子伝送局300は移行して、親伝送局200から送信される終了コマンドERを待機する。
【0101】
一方、親伝送局200は、所定数の教師信号を送信すると、ステップ713として、制御部202が送信系の各部を制御し、電源供給路105を介して子伝送局300に向け、受信タイミングについてのティーチングフロー終了を示す終了コマンドERを送信する。具体的には、制御部202は、上記終了コマンドERを生成するとともに、変調処理部204に対して振幅変調を指示し、これにより終了コマンドERは、再び振幅変調により送信される。
【0102】
これに対して、子伝送局300は、ステップ722で受信タイミングを求めた後は、ステップ723として、振幅変調による信号の受信を待機した状態にある。すなわち、制御部302は受信系の各部を制御し、例えば、復調処理部308に対して振幅変調に対する受信を指示し、電源供給路105を介して送信される信号に対して振幅変調に対する復調を行って、親伝送局200から送信される終了コマンドERを待機している。
【0103】
やがて、子伝送局300は、データ受信部309が上記終了コマンドERを受信して制御部302に出力すると、これに応動して制御部302は、送信系の各部を制御して、上記終了コマンドERに対するAckコマンドを親伝送局200へ返す送信制御を行った後、ステップ724に移行する。
【0104】
ステップ724において子伝送局300は、ステップ722で得た受信タイミングに応じて、記憶部310に記憶されるパラメータ情報310aおよび310bを更新する。以後、これらのパラメータにしたがって、位相変調に対する受信を開始する。
【0105】
一方、親伝送局200は、データ受信部209が子伝送局300からAckコマンドを受信して制御部202に出力すると、これに応動して制御部202は、送信系の各部を制御し、以後、位相変調によるコマンド送信を実行する。かくして、親伝送局200から子伝送局300へのコマンド伝送は、位相変調により行われる。
【0106】
次に、
図10を参照して、親伝送局200による、子伝送局300-1~300-nにおける送信タイミングについてのティーチングのフローを示す図である。なお、以下の説明においても、
図7の説明と同様に、子伝送局300-1~300-nに共通する説明については、「子伝送局300」と表現する。
【0107】
まず、親伝送局200は、ステップ1011として、制御部202が送信系の各部を制御し、電源供給路105を介して子伝送局300に向け、送信タイミングについてのティーチングフロー開始を示すコマンド(以下、開始コマンドSTと称する)を送信する。具体的には、制御部202は、上記開始コマンドSTを生成するとともに、変調処理部204に対して振幅変調を指示し、これにより上記開始コマンドSTは、一般に低速とされる振幅変調により送信される。
【0108】
これに対して、子伝送局300は、ティーチングフローを実行する前は、振幅変調による信号の受信を待機した状態にある。すなわち、制御部302は受信系の各部を制御し、例えば、復調処理部308に対して振幅変調に対する受信を指示し、電源供給路105を介して送信される信号に対して振幅変調に対する復調を行って、親伝送局200から送信されるコマンドを待機している。
【0109】
やがて、子伝送局300は、ステップ1021を実行する。すなわち、データ受信部309が上記開始コマンドSTを受信して制御部302に出力すると、これに応動して制御部302は、送信系の各部を制御して、上記開始コマンドSTに対するAckコマンドを親伝送局200へ返す送信制御を行った後、ステップ1022に移行する。
【0110】
これに対して、親伝送局200は、ステップ1012を実行する。すなわち、データ受信部209が子伝送局300からAckコマンドを受信して制御部202に出力し、これに応動して制御部202は、送信系の各部を制御して、子伝送局300における送信タイミングを示すための教師信号TTを生成して送信する。なお、教師信号TTを送信するための通信フレームは、教師信号TRを送信するための通信フレームと同様であることより、
図8を参照して説明する。
【0111】
制御部202は、
図8に例示するように、複数の異なる周波数f1,f2の搬送波に対して振幅変調による送信を行うために、送信系の各部を制御する。具体的には、開始コマンドSTと、後述する終了コマンドETを注入した通信フレームをそれぞれ振幅変調により送信する。また開始コマンドSTと終了コマンドETとの間に、信号注入のない区間(通信フレーム)を挟んで、教師信号を含む通信フレームを送信する。
【0112】
なお、教師信号TTは、一般に高速な通信に対応する変調方式(例えば位相変調)の信号や無変調信号により生成し、連続する2つのゼロクロス点の間(以下、スロットと称する)で送信する。また開始コマンドSR、終了コマンドER、信号注入のない区間、教師信号TRは、それぞれ、連続する複数のスロットにおいてそれぞれ送信する。
【0113】
ステップ1022において子伝送局300は、送信タイミングの算出処理を実行する。具体的には、制御部302の制御により、信号受信部306は、教師信号TTに応じた搬送周波数、時間幅またはサンプリング数、時間間隔またはサンプリング間隔で検波し、時系列の信号強度の分布データを生成する。
【0114】
なお、複数のスロットを通じて受信した複数の教師信号TTは、ゼロクロスを基準に信号強度を平均化することにより、突発的な変動に影響しにくいものになる。また、検波には、高速通信時のシンボル速度(時間幅またはサンプリング数)、または、任意のシンボル速度であって構わない。
【0115】
そして、位相検出部307は、信号受信部306によって得られた上記分布データに対して位相検出を行う。制御部302は、信号受信部306によって得られた上記分布データと、これに対応する、位相検出部307が検出した位相情報とに基づく送信タイミング算出処理503bを実行して、送信タイミングを算出する。
【0116】
送信タイミングの具体的な算出例について説明する。
図9のおける「受信」を「送信」と読み替えて
図9を参照することにする。
図9は、周波数f1についてゼロクロス点を起点とした、教師信号TTの信号強度の時間的な分布データである。制御部302は、信号強度について、ゼロクロスから立ち上がりまでの間の最大レベルをMINとし、信号強度の立ち上がり後の最初の極大レベルをMAXとする。そして、MINとMAXの和の1/2を閾値強度とする。
【0117】
そして、制御部302は、ゼロクロス点を起点とした上記閾値強度のタイミングから、上記シンボル速度の1/2に相当する時間を引いたタイミングを、周波数f1についての送信タイミングとして算出(検出)する。このようにして、送信タイミングが得られると、ステップ1023に子伝送局300は移行して、親伝送局200から送信される終了コマンドETを待機する。
【0118】
一方、親伝送局200は、所定数の教師信号を送信すると、ステップ1013として、制御部202が送信系の各部を制御し、電源供給路105を介して子伝送局300に向け、送信タイミングについてのティーチングフロー終了を示す終了コマンドETを送信する。具体的には、制御部202は、上記終了コマンドETを生成するとともに、変調処理部204に対して振幅変調を指示し、これにより終了コマンドETは、再び振幅変調により送信される。
【0119】
これに対して、子伝送局300は、ステップ1022で送信タイミングを求めた後は、ステップ1023として、振幅変調による信号の受信を待機した状態にある。すなわち、制御部302は受信系の各部を制御し、例えば、復調処理部308に対して振幅変調に対する受信を指示し、電源供給路105を介して送信される信号に対して振幅変調に対する復調を行って、親伝送局200から送信される終了コマンドETを待機している。
【0120】
やがて、子伝送局300は、データ受信部309が上記終了コマンドETを受信して制御部302に出力すると、これに応動して制御部302は、送信系の各部を制御して、上記終了コマンドETに対するAckコマンドを親伝送局200へ返す送信制御を行った後、ステップ1024に移行する。
【0121】
ステップ1024において子伝送局300は、ステップ1022で得た送信タイミングに応じて、記憶部310に記憶されるパラメータ情報310aおよび310bを更新する。以後、これらのパラメータにしたがって、位相変調による送信を開始する。
【0122】
一方、親伝送局200は、データ受信部209が子伝送局300からAckコマンドを受信して制御部202に出力すると、これに応動して制御部202は、受信系の各部を制御し、以後、位相変調によるコマンド受信を実行する。かくして、子伝送局300から親伝送局200へのコマンド伝送は、位相変調により行われる。
【0123】
以上のように、上記構成の灯火監視制御システムでは、親伝送局200が子伝送局300に対して教師信号を送信し、この教師信号に基づいて子伝送局300は受信あるいは送信に関わるパラメータを検出して設定し、以後は、このパラメータに基づいて、より高速な通信方式により通信を行うようにしている。
【0124】
したがって、上記構成の灯火監視制御システムによれば、高速な通信に対応する変調方式を用いる場合でも、状況に応じたパラメータ設定ができるので、各子伝送局300-1~300-nにおける固有の負荷変動等の影響を抑制でき、安定した通信品質を得ることができる。
【0125】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0126】
例えば、上記実施形態では、
図9を参照して説明したように、周波数f1の搬送波を通じて送られた教師信号TRあるいはTTに基づいて、周波数f1についての受信タイミングや送信タイミングを算出(検出)するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、周波数f2の搬送波を通じて送られた教師信号TRあるいはTTに基づいて、周波数f1についての受信タイミングや送信タイミングを算出(検出)するようにしてもよい。
【0127】
以下、
図11を参照して、受信タイミングを例に具体的な算出方法について説明する。
図11は、周波数f2についてゼロクロス点を起点とした、教師信号TRの信号強度の時間的な分布データである。制御部302は、信号強度について、ゼロクロスから立ち上がりまでの間の最大レベルをMINとし、信号強度の立ち上がり後の最初の極大レベルをMAXとする。そして、MINとMAXの和の1/2を閾値強度とする。
【0128】
そして、制御部302は、ゼロクロス点を起点とした上記閾値強度のタイミングから、上記シンボル速度の1/2に相当する時間を引いたタイミングを、周波数f2についての受信タイミングとして算出(検出)するとともに、周波数f1とf2の周波数差や比に基づく係数を乗算して、周波数f1についての受信タイミングを算出(検出)する。
【0129】
このように、周波数f1とf2の周波数差や比に基づく係数、すなわち、教師信号の搬送波周波数に応じた信号強度偏差に起因する係数を用いることで、異なる周波数の教師信号で得たタイミングを用いて送受信のタイミングを求めることができる。
【0130】
また上記実施形態では、教師信号に基づいて送受信のタイミングを検出する場合について説明したが、シンボル数を通知するための教師信号TSに基づいてシンボル数を算出することもできる。シンボル数は伝達する情報量に相当するものであり、教師信号の立ち上がりから立ち下がりまでの時間で、送信側は受信側に対してシンボル数を示すことができる。
【0131】
このために、教師信号の送信側、例えば、親伝送局200は、実際の通信で使用するシンボル数のシンボルを有する送信信号を教師信号TSとして送信する制御機能を制御部202に備え、一方、教師信号を受信する側、例えば子伝送局300は、制御部302に新たな機能として、
図12に示すようなシンボル数算出処理503cを備える。
【0132】
このシンボル数算出処理503cは、受信タイミング算出処理503a(あるいは、送信タイミング算出処理503b)と同様にして、
図13に示すように、教師信号TSについて、ゼロクロス点を起点とした教師信号TSの立ち上がりから、信号注入部分の始まりのタイミングBを検出するとともに、加えて、教師信号TSの立ち下がりから、信号注入部分の終わりのタイミングAを検出する。
【0133】
タイミングBについてシンボル数算出処理503cは、信号強度について、ゼロクロスから立ち上がりまでの間の最大レベルをMIN1とし、信号強度の立ち上がり後の最初の極大レベルをMAX1とする。そして、MIN1とMAX1の和の1/2を閾値強度1とする。
【0134】
そしてシンボル数算出処理503cは、ゼロクロス点を起点とした上記閾値強度1のタイミングから、上記シンボル速度の1/2に相当する時間を引いたタイミングを、この搬送波周波数(例えば、f1)についてのタイミングBとして算出(検出)する。
【0135】
一方、タイミングAについてシンボル数算出処理503cは、信号強度について、立ち下がり直前の極大レベルをMAX2とし、信号強度の立ち下がり後の最大レベルをMIN2とする。そして、MIN2とMAX2の和の1/2を閾値強度2とする。
【0136】
そしてシンボル数算出処理503cは、ゼロクロス点を起点とした上記閾値強度2のタイミングから、上記シンボル速度の1/2に相当する時間を引いたタイミングを、この搬送波周波数(例えば、f1)についてのタイミングAとして算出(検出)する。
【0137】
その後、シンボル数算出処理503cは、タイミングの差(A-B)をシンボル速度で除することで、シンボル数を算出する。これにより、受信側、例えば子伝送局300は、高速通信に対応する変調方式で送られる信号のシンボル数を把握することができる。
【0138】
また、シンボル数算出処理503cによれば、立ち上がりのタイミングBと立ち下がりのタイミングAを検出できるので、例えば、ノイズなどの影響により1つのスロット内で通信に利用できる期間(以下、通信可能期間と称する)が複数に分割される場合でも、各通信可能期間のタイミング(始まりと終わり)を検出できる。このため、通信リソースを有効に活用して、例えば、通信フレームを任意に分割した通信も可能である。
【0139】
なお、ここでの説明では、教師信号TSを教師信号TRやTTと区別して説明したが、教師信号TRやTTによって、送信側が受信側にシンボル数を伝達することは可能であり、その場合、教師信号TRやTTとして、実際の通信で使用するシンボル数のシンボルを有する信号を送信すればよい。
【0140】
また、シンボル数を算出する場合でも、
図11を用いて説明したように、教師信号の搬送波周波数に応じた信号強度偏差に起因する係数を乗算する演算は可能である。このため、例えば、搬送波周波数f1の信号波形を分析して、搬送波周波数f2の信号についてシンボル数を検出することができる。
【0141】
また上記実施形態では、複数の異なる周波数(f1,f2)の搬送波を用いて教師信号を送信するようにしているので、S/N比に応じて、良好な周波数を選択することができる。このため、教師信号を受信する側、例えば子伝送局300は、制御部302に新たな機能として、
図14に示すようなS/N比算出処理503dを備える。
【0142】
搬送波周波数f1と搬送波周波数f2について、それぞれゼロクロス点を起点として、例えば、
図15に示すような教師信号が受信できたとする。S/N比算出処理503dは、各周波数f1、f2についてそれぞれ、教師信号が送信信号に注入されない期間、すなわちノイズの区間と、教師信号の信号強度とを時系列で比較して、S/N比を算出する。
【0143】
そしてS/N比算出処理503dは、S/N比を比較して、良好なS/N比の周波数(
図15の例ではf1)を、送受信タイミングの検出や、シンボル数の検出、あるいは通信に使用する周波数として選択する。これによれば、通信品質の安定化に寄与できる。
【0144】
なお、教師信号が送信信号に注入されない期間、すなわちノイズ成分を表す部分は、前述した信号波形の立ち上がりのタイミングや立ち下がりのタイミングに基づいて特定できる。
【0145】
さらに、教師信号が送信信号に注入されない期間、すなわちノイズ成分を表す部分に着目し、ノイズを除去した教師信号に対して、前述したような送受信タイミングの検出やシンボル数の検出を行うようにしてもよい。すなわち、算出処理405および算出処理503は、タイミングやシンボル数の検出に先立って、ノイズの除去を行う。
【0146】
例えば、
図16に示すような教師信号(
図16(a))が受信できたとする。この信号には、ノイズ(
図16(b))が含まれているため、算出処理405(または算出処理503)は、教師信号が送信信号に注入されない期間、すなわちノイズの区間の平均強度レベル分だけ差し引いた信号波形(
図16(c))を求める。
【0147】
そして、算出処理405(または算出処理503)は、信号強度の立ち上がり後の最初の極大レベルをMAXとし、MAXの1/2を閾値強度とする。そして、算出処理405(または算出処理503)は、ゼロクロス点を起点とした上記閾値強度のタイミングから、上記シンボル速度の1/2に相当する時間を引いたタイミングを、受信タイミング(あるいは送信タイミング)として算出(検出)する。
【0148】
なお、立ち下がりのタイミングについても、同様に求めることができ、またこのようにして求めた、立ち上がりのタイミングと立ち下がりのタイミングに基づいて、シンボル数算出処理503cは同様にして、シンボル数の算出を行うことができる。
【0149】
またティーチングの開始のタイミングや、事前のティーチングによって求めておいたパラメータの使用開始のタイミングは、さまざまな設定により、より有効な効果を発揮できる。例えば、親伝送局200は、灯火監視制御装置102からの指示を受け付けるので、灯火監視制御装置通信部201が灯火監視制御装置102から受けた指示(例えば、灯火器の点消灯制御や輝度制御)を制御部202が監視し、指示に応じて、
図7や
図10に示したティーチングのフローを開始、あるいは、事前のティーチングによって求めておいたパラメータの使用を開始するようにしてもよい。これによれば、灯火監視制御装置102の制御に応じて、通信品質を確保することができる。
【0150】
また親伝送局200に対する灯火監視制御装置102からの直接的な指示ではなく、間接的な情報からティーチングやパラメータの使用を開始することもできる。例えば、
図17に示すように、灯火監視制御装置102は、灯火器の輝度制御のために、定電流電源装置101を制御することがある。
【0151】
このため、制御部202が、灯火監視制御装置102から定電流電源装置101に対する制御を監視したり、定電流電源装置101が供給する電力量(灯火器の消費電力)や電流値などを計測して監視し、この監視結果に応じて、ティーチングを開始したり、事前のティーチングによって得たパラメータに基づく制御を開始するようにしてもよい。
【0152】
また上記実施形態では、教師信号の送受信のために、ノイズに対してクリティカルな影響を受けにくい低速な変調方式として振幅変調を用い、その後の相対的な高速な通信のための変調方式として位相変調を用いるものとして説明したがこれらの変復調方式に限定されるものではなく、その他の変復調方式を適用してもよい。
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0153】
100…交流電源、101…定電流電源装置、102…灯火監視制御装置、103…フィルタ、104…交流器、105…電源供給路、200…親伝送局、201…灯火監視制御装置通信部、202…制御部、203…データ送信部、204…変調処理部、205…信号送信部、206…信号受信部、207…位相検出部、208…復調処理部、209…データ受信部、210…記憶部、210a…パラメータ情報、210b…パラメータ情報、211…外部通信部、300-1~300-n…子伝送局、301…灯火制御部、302…制御部、303…データ送信部、304…変調処理部、305…信号送信部、306…信号受信部、307…位相検出部、308…復調処理部、309…データ受信部、310…記憶部、310a…パラメータ情報、310b…パラメータ情報、311…外部通信部、400…コマンド判定・データ処理、400-1~400-n…灯火器、401…コマンド受信処理、402…データ送信処理、403…データ受信処理、404…応答送信処理、405…算出処理、405a…受信タイミング算出処理、405b…送信タイミング算出処理、500…コマンド判定・データ処理、501…データ受信処理、502…データ送信処理、503…算出処理、503a…受信タイミング算出処理、503b…送信タイミング算出処理、503c…シンボル数算出処理、503d…S/N比算出処理。