(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】傾斜検出装置、傾斜検出方法、分離装置および分離方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/26 20060101AFI20240610BHJP
B23D 33/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G01B11/26 Z
B23D33/00 L
(21)【出願番号】P 2021036174
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】立石 雄一
(72)【発明者】
【氏名】來嶋 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】羽瀬川 賢一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼市 佳之
(72)【発明者】
【氏名】北村 明義
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-066427(JP,A)
【文献】特開2002-141394(JP,A)
【文献】特開平8-17901(JP,A)
【文献】特開平7-113876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/26
B23D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィンガーを有するハンドリングロボットによって把持される、端面同士が互いに接触した状態で立ち姿勢で保管されているワークが、所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位していることを検出する傾斜検出装置であって、
ビームを照射する投光部と、
前記投光部から照射されたビームの反射光を受光する受光部と、
前記受光部の受光結果に基づいて、前記ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断する判断部とを備え、
前記投光部は、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合の前記ワークの存在領域内の第1の位置に第1のビームを照射するとともに、前記ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜する側へ前記第1の位置からずれた第2の位置に第2のビームを照射し、
前記第1のビームおよび前記第2のビームは、前記ハンドリングロボットのフィンガーが移動する方向に平行な第1の方向に照射され、
前記第1の位置および前記第2の位置は、所望の立ち姿勢にある前記ワークの高さ方向における中央部の位置または前記中央部より高い位置であ
り、
前記第1の位置および前記第2の位置は、傾斜の判断対象である前記ワーク毎に一定であり、
前記第1の位置および前記第2の位置の間隔が、前記ワークが傾斜した場合に前記ワークと前記フィンガーとが衝突しない、前記ワークと前記フィンガーとの間の予め設定された隙間の幅に基づいて設定されている、傾斜検出装置。
【請求項2】
前記投光部は、所定の周波数で繰り返されるパルス状の光であるレーザ光を照射する、請求項1に記載の傾斜検出装置。
【請求項3】
前記ワークは円環状に構成され、
前記投光部は、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合における前記ワークの外周面に向けて前記第1のビームを照射するとともに、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合における前記ワークから外れた位置に向けて前記第2のビームを照射する、請求項1または2に記載の傾斜検出装置。
【請求項4】
前記第1の位置は、前記ワークの外周面上にあり、
前記投光部は、前記第1の位置における前記外周面に対する法線上または前記法線に対する角度が所定の範囲にある直線上に配置されている、請求項3に記載の傾斜検出装置。
【請求項5】
前記傾斜検出装置は、立ち姿勢で保管されている1または複数のワークから分離対象であるワークを、フィンガーを有するハンドリングロボットを用いて分離する際に用いられる装置であり、
前記第1の位置および前記第2の位置の間隔は、所望の立ち姿勢にある前記ワークと、前記フィンガーが前記分離対象であるワークを分離するために前記分離対象であるワークに接近するときに前記フィンガーと前記ワークとの間で許容されている間隔に基づいて設定された間隔である、請求項1~4のいずれか1項に記載の傾斜検出装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の傾斜検出装置と、ワークを支持する保管台に立ち姿勢で保管されている1または複数のワークから、分離対象であるワークを分離する分離機構とを備える分離装置であって、
前記分離機構は、
前記ワークを把持するフィンガーを有するハンドリングロボットと、
前記ハンドリングロボットの動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記フィンガーが分離対象であるワークに接近して前記分離対象であるワークを把持するように前記ハンドリングロボットを制御し、
前記分離対象であるワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位していると前記判断部が判断した場合、前記制御部は、前記フィンガーが前記ワークへの接近動作を停止するように前記ハンドリングロボットを制御する、分離装置。
【請求項7】
前記フィンガーは、第1の方向へ移動することにより、分離対象であるワークに近接した近接位置に到達し、さらに第2の方向へ移動することにより、前記ワークにおける被把持面に対向する対向位置に到達し、
前記第1の位置および前記第2の位置の間隔は、所望の立ち姿勢にある前記ワークと、前記フィンガーが前記近接位置に到達した状態における前記フィンガーとの距離に基づいて設定された間隔である、請求項6に記載の分離装置。
【請求項8】
フィンガーを有するハンドリングロボットによって把持される、端面同士が互いに接触した状態で立ち姿勢で保管されているワークが、所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位していることを検出する傾斜検出方法であって、
ビームを照射する投光部と、前記投光部から照射されたビームの反射光を受光する受光部とを準備するステップと、
前記投光部により、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合の前記ワークの存在領域内の第1の位置に第1のビームを照射するステップと、
前記ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜する側へ前記第1の位置からずれた第2の位置に第2のビームを照射するステップと、
前記受光部の受光結果に基づいて、前記ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断するステップとを含み、
前記第1のビームおよび前記第2のビームは、前記ハンドリングロボットのフィンガーが移動する方向に平行な第1の方向に照射され、
前記第1の位置および前記第2の位置は、所望の立ち姿勢にある前記ワークの高さ方向における中央部の位置または前記中央部より高い位置であ
り、
前記第1の位置および前記第2の位置は、傾斜の判断対象である前記ワーク毎に一定であり、
前記第1の位置および前記第2の位置の間隔が、前記ワークが傾斜した場合に前記ワークと前記フィンガーとが衝突しない、前記ワークと前記フィンガーとの間の予め設定された隙間の幅に基づいて設定されている、傾斜検出方法。
【請求項9】
前記投光部は、所定の周波数で繰り返されるパルス状の光であるレーザ光を照射する、請求項8に記載の傾斜検出方法。
【請求項10】
前記ワークは円環状に構成され、
前記投光部は、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合における前記ワークの外周面に向けて前記第1のビームを照射するとともに、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合における前記ワークから外れた位置に向けて前記第2のビームを照射する、請求項8または9に記載の傾斜検出方法。
【請求項11】
前記第1の位置は、前記ワークの外周面上にあり、
前記投光部は、前記第1の位置における前記外周面に対する法線上または前記法線に対する角度が所定の範囲にある直線上に配置されている、請求項10に記載の傾斜検出方法。
【請求項12】
前記傾斜検出方法は、立ち姿勢で保管されている1または複数のワークから分離対象であるワークを、フィンガーを有するロボットアームを用いて分離する際に用いられる方法であり、
前記第1の位置および前記第2の位置の間隔は、所望の立ち姿勢にある前記ワークと、前記フィンガーが前記分離対象であるワークを分離するために前記分離対象であるワークに接近するときに前記フィンガーと前記ワークとの間で許容されている間隔に基づいて設定された間隔である、請求項8~11のいずれか1項に記載の傾斜検出方法。
【請求項13】
立ち姿勢で保管されている1または複数のワークから、分離対象であるワークを分離する分離方法であって、
請求項8~12のいずれか1項に記載の傾斜検出方法により、分離対象であるワークを傾斜検出対象として、前記分離対象であるワークが傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断する判断ステップと、
前記判断ステップにおいて前記分離対象であるワークが傾斜した姿勢に変位していないと判断された場合に、フィンガーを有するハンドリングロボットの前記フィンガーを、前記分離対象であるワークに接近させる接近ステップと、
前記分離対象であるワークに接近した前記フィンガーにより前記分離対象であるワークを把持する把持ステップと、
前記分離対象であるワークを把持した前記フィンガーを移動させることにより、保管されているワークから前記分離対象であるワークを分離する分離ステップとを含み、
前記判断ステップにおいて前記分離対象であるワークが傾斜した姿勢に変位していると判断された場合、前記接近ステップは、前記フィンガーの接近動作を停止する、分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜検出装置、傾斜検出方法、分離装置および分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、丸刃せん断式スリッターのアーバーに装着される丸刃やスペーサーを保管・分離するために、特許文献1に示すような丸刃分離装置100(
図17参照)が用いられている。この丸刃分離装置100は、
図17に示されるように、ハンドリングロボット101により、保管棚102に連続して並べられた複数の丸刃やスペーサー等のワーク103のうち、所望の枚数のワーク103を分離して、丸刃せん断式スリッター用のアーバー(図示せず)に取り付ける。具体的には、
図17に示される2つのフィンガーフレーム104の先端に設けられたフィンガー105が、ワーク103をワーク103の内径側から把持し、保管棚102からワーク103を上方に持ち上げることにより、取り出されるワーク103を残りのワーク103から分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図17に示されるように、保管棚102上で、隣り合うワーク103は、ワーク103の軸方向に連続して配置され、ワーク103の端面同士は接している。このワーク103には、ハンドリングロボット101や、ワーク103により切断される鋼板(図示せず)などから、防錆油等が付着することが多く、互いに接触する複数のワーク103の間のわずかな隙間に防錆油等の液体が入り込むことがある。防錆油等の液体が、2枚のワーク103の間に入り込むと、2つの端面間での付着力が高まる。
【0005】
このように付着力が高まっている状態において、ハンドリングロボット101により、例えば1枚のワーク(
図17中、一番左側のワーク103a)を分離しようとした場合、1枚目のワーク103aと2枚目のワーク103bとの間で高まった付着力により、2枚目のワーク103bがハンドリングロボット101側にわずかに傾斜した姿勢に変位する場合がある。
【0006】
ハンドリングロボット101は、1枚目のワーク103aを分離して上述のアーバーに取り付けた後、2枚目のワーク103bを分離するために、2枚目のワーク103bに対して側方から接近する(
図18参照。矢印A1の方向に移動)。ハンドリングロボット101が2枚目のワーク103bに接近する際に、2枚目のワーク103bが上述のように傾斜している場合、ハンドリングロボット101のフィンガー105等の部材が2枚目のワーク103bに衝突し(
図18参照)、当該部材が破損する可能性がある。なお、ハンドリングロボット101は、分離しようとするワーク103bが傾斜していなければ(
図19参照)、ワーク103bに対して側方から接近(矢印A1の方向へ移動)しても、ワーク103bに衝突することなくワーク103bの前方へ移動し、次いでワーク103bの軸方向に沿ってワーク103b側へ移動(矢印A2の方向へ移動)し、ワーク103bをフィンガー105によって把持することが可能である。
【0007】
このような衝突の問題を解決するために、ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜している場合に、その傾斜を容易に把握できるようにする技術が望まれている。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みて、ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜している場合に、その傾斜を容易に検出することができる傾斜検出装置、傾斜検出方法、分離装置および分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の傾斜検出装置は、立ち姿勢で保管されているワークが、所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位していることを検出する傾斜検出装置であって、ビームを照射する投光部と、前記投光部から照射されたビームの反射光を受光する受光部と、前記受光部の受光結果に基づいて、前記ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断する判断部とを備え、前記投光部は、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合の前記ワークの存在領域内の第1の位置に第1のビームを照射するとともに、前記ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜する側へ前記第1の位置からずれた第2の位置に第2のビームを照射し、前記第1の位置および前記第2の位置は、所望の立ち姿勢にある前記ワークの高さ方向における中央部の位置または前記中央部より高い位置である。
【0010】
また、前記投光部は、所定の周波数で繰り返されるパルス状の光であるレーザ光を照射することが好ましい。
【0011】
また、前記ワークは円環状に構成され、前記投光部は、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合における前記ワークの外周面に向けて前記第1のビームを照射するとともに、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合における前記ワークから外れた位置に向けて前記第2のビームを照射することが好ましい。
【0012】
また、前記第1の位置は、前記ワークの外周面上にあり、前記投光部は、前記第1の位置における前記外周面に対する法線上または前記法線に対する角度が所定の範囲にある直線上に配置されていることが好ましい。
【0013】
また、前記傾斜検出装置は、立ち姿勢で保管されている1または複数のワークから分離対象であるワークを、フィンガーを有するハンドリングロボットを用いて分離する際に用いられる装置であり、前記第1の位置および前記第2の位置の間隔は、所望の立ち姿勢にある前記ワークと、前記フィンガーが前記分離対象であるワークを分離するために前記分離対象であるワークに接近するときに前記フィンガーと前記ワークとの間で許容されている間隔に基づいて設定された間隔であることが好ましい。
【0014】
本発明の分離装置は、前記傾斜検出装置と、ワークを支持する保管台に立ち姿勢で保管されている1または複数のワークから、分離対象であるワークを分離する分離機構とを備える分離装置であって、前記分離機構は、前記ワークを把持するフィンガーを有するハンドリングロボットと、前記ハンドリングロボットの動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記フィンガーが分離対象であるワークに接近して前記分離対象であるワークを把持するように前記ハンドリングロボットを制御し、前記分離対象であるワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位していると前記判断部が判断した場合、前記制御部は、前記フィンガーが前記ワークへの接近動作を停止するように前記ハンドリングロボットを制御する。
【0015】
また、前記フィンガーは、第1の方向へ移動することにより、分離対象であるワークに近接した近接位置に到達し、さらに第2の方向へ移動することにより、前記ワークにおける被把持面に対向する対向位置に到達し、前記第1の位置および前記第2の位置の間隔は、所望の立ち姿勢にある前記ワークと、前記フィンガーが前記近接位置に到達した状態における前記フィンガーとの距離に基づいて設定された間隔であることが好ましい。
【0016】
本発明の傾斜検出方法は、立ち姿勢で保管されているワークが、所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位していることを検出する傾斜検出方法であって、ビームを照射する投光部と、前記投光部から照射されたビームの反射光を受光する受光部とを準備するステップと、前記投光部により、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合の前記ワークの存在領域内の第1の位置に第1のビームを照射するステップと、前記ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜する側へ前記第1の位置からずれた第2の位置に第2のビームを照射するステップと、前記受光部の受光結果に基づいて、前記ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断するステップとを含み、前記第1の位置および前記第2の位置は、所望の立ち姿勢にある前記ワークの高さ方向における中央部の位置または前記中央部より高い位置である。
【0017】
また、前記投光部は、所定の周波数で繰り返されるパルス状の光であるレーザ光を照射することが好ましい。
【0018】
また、前記ワークは円環状に構成され、前記投光部は、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合における前記ワークの外周面に向けて前記第1のビームを照射するとともに、前記ワークが所望の立ち姿勢にある場合における前記ワークから外れた位置に向けて前記第2のビームを照射することが好ましい。
【0019】
また、前記第1の位置は、前記ワークの外周面上にあり、前記投光部は、前記第1の位置における前記外周面に対する法線上または前記法線に対する角度が所定の範囲にある直線上に配置されていることが好ましい。
【0020】
また、前記傾斜検出方法は、立ち姿勢で保管されている1または複数のワークから分離対象であるワークを、フィンガーを有するロボットアームを用いて分離する際に用いられる方法であり、前記第1の位置および前記第2の位置の間隔は、所望の立ち姿勢にある前記ワークと、前記フィンガーが前記分離対象であるワークを分離するために前記分離対象であるワークに接近するときに前記フィンガーと前記ワークとの間で許容されている間隔に基づいて設定された間隔であることが好ましい。
【0021】
本発明の分離方法は、立ち姿勢で保管されている1または複数のワークから、分離対象であるワークを分離する分離方法であって、前記傾斜検出方法により、分離対象であるワークを傾斜検出対象として、前記分離対象であるワークが傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断する判断ステップと、前記判断ステップにおいて前記分離対象であるワークが傾斜した姿勢に変位していないと判断された場合に、フィンガーを有するハンドリングロボットの前記フィンガーを、前記分離対象であるワークに接近させる接近ステップと、前記分離対象であるワークに接近した前記フィンガーにより前記分離対象であるワークを把持する把持ステップと、前記分離対象であるワークを把持した前記フィンガーを移動させることにより、保管されているワークから前記分離対象であるワークを分離する分離ステップとを含み、前記判断ステップにおいて前記分離対象であるワークが傾斜した姿勢に変位していると判断された場合、前記接近ステップは、前記フィンガーの接近動作を停止する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ワークが所望の立ち姿勢に対して傾斜している場合に、その傾斜を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る分離装置の構成の一例を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る分離装置の構成の一例を示す側面図であり、
図1におけるB1方向から見た矢視図である。
【
図3】ワークの構成の一例を示す図であり、(a)はワークをその中心軸に沿った方向から見た正面図、(b)はワークをその中心軸と直交する水平方向から見た側面図である。
【
図4】ワークが保管台に保管されている状態の一例をワークの軸方向から見た状態で示す図である。
【
図5】ワークが保管台に保管されている状態の一例をワークの軸方向に直交する水平方向から見た状態で示す図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドの構成の一例を示す図であり、ロボットハンドを3本のフィンガーの先端側から見た側面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドの構成の一例を示す図であり、ロボットハンドを下側のフィンガーを省略した状態で示す平面図である。
【
図6C】本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドの構成の一例を示す図であり、ロボットハンドを上側のフィンガーを省略した状態で示す平面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドがワークの側方に位置している状態を示す側面図であり、ロボットハンドに設けられた傾斜検出装置からワークに対してビームを照射する様子の一例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドがワークの側方に位置している状態を模式的に示す平面図であり、ロボットハンドに設けられた傾斜検出装置から所望の立ち姿勢にあるワークに対してビームを照射する様子の一例を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドがワークの端面に近接した位置へ移動した状態を模式的に示す平面図である。
【
図10】ワークが傾斜している状態の一例を示す側面図である。
【
図11】
図10の上側部分を拡大して示す側面図であり、本発明の一実施形態に係る傾斜検出装置において、第1のビームが照射される第1の位置および第2のビームが照射される第2の位置の一例を示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る傾斜検出装置において、ワークの外周面に対して第1のビームおよび第2のビームが照射される好ましい方向の範囲の一例を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドがワークの側方に位置している状態を模式的に示す平面図であり、ロボットハンドに設けられた傾斜検出装置から傾斜したワークに対してビームを照射する様子の一例を示す図である。
【
図14】保管台上でワークが傾斜している状態の一例を示す図であり、ワークが鉛直軸周りに回動するようにワークが傾斜している状態を示す図である。
【
図15】保管台上でワークが傾斜している状態の一例を示す図であり、ワークが鉛直軸周りに
図14とは反対側へ回動するようにワークが傾斜している状態を示す図である。
【
図16A】保管台上で保管されているワークが傾斜しているかどうかを検出するためにビームを照射する様子の一例を示す図であり、所望の姿勢にあるワークに対してビームを照射する様子を示す図である。
【
図16B】保管台上で保管されているワークが傾斜しているかどうかを検出するためにビームを照射する様子の一例を示す図であり、
図14に示すように傾斜しているワークに対してビームを照射する様子を示す図である。
【
図16C】保管台上で保管されているワークが傾斜しているかどうかを検出するためにビームを照射する様子の一例を示す図であり、
図15に示すように傾斜しているワークに対してビームを照射する様子を示す図である。
【
図17】従来の丸刃分離装置によって丸刃を分離する様子を示す斜視図である。
【
図18】従来の丸刃分離装置におけるハンドリングロボットのフィンガーが傾斜した丸刃に接近する際に丸刃に衝突する様子を示す模式的平面図である。
【
図19】従来の丸刃分離装置におけるハンドリングロボットのフィンガーが所望の立ち姿勢にある丸刃に接近して丸刃の端面に近接する位置に到達する様子を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る傾斜検出装置、傾斜検出方法、分離装置および分離方法について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部同士を任意に組み合わせてもよい。また、以下に示す実施形態はあくまで例にすぎず、本発明の傾斜検出装置、傾斜検出方法、分離装置および分離方法は、以下の例に限定されることはない。
【0025】
<分離装置>
図1は、本発明の一実施形態に係る分離装置の一例と、保管棚と、スリッターとを示す平面図である。
図2は、
図1に示される保管棚およびスリッターを
図1のB1方向から見た矢視図である。
【0026】
図1に示される分離装置1は、保管台Raに立ち姿勢で保管されている1または複数のワークW(
図2参照)から分離対象であるワークWを分離するために用いられる。本実施形態では、ワークWは、たとえば、丸刃せん断式スリッターSLのアーバーSL3に装着される丸刃やスペーサーである。なお、分離装置1が分離する対象は、丸刃やスペーサーに限定されるものではなく、他の種類のワークWであってもよい。また、分離装置1は、ワークWを保管台Raに立ち姿勢で保管するために用いられてもよい。以下では、丸刃をワークWとして、分離装置1をワークWの分離に用いる場合について説明する。
【0027】
図1および
図2では、スリッターSLが刃替えのためオフラインに引き出され、スリッターSLの一端側(スリッターSLの駆動部SL1とは反対側)の軸受けSL2がアーバーSL3から外された状態が示されている。スリッターSLの周囲にはワークWを保管する保管棚Ra、およびハンドリングロボット31が配置されている。ハンドリングロボット31は、ワークWのハンドリングが可能なロボットである。
図1および
図2において、ワークWは、アーバーSL3に装着されたもの(
図1参照)と、保管棚Raに保管されたもの(
図2参照)の一部とが図示されている。
【0028】
図3は、ワークの構成の一例を示す図であり、(a)はワークをその中心軸に沿った方向から見た正面図、(b)はワークをその中心軸と直交する水平方向から見た側面図である。
図3に示されるように、ワークWは、円環状に構成されている。ワークWは、中心軸CL1に沿って貫通する貫通孔Whを有する。貫通孔Whは、丸刃せん断式スリッターSLのアーバーSL3が挿入される孔である。また、ワークWは、中心軸CL1周りに形成された、内周面Wisおよび外周面Wosを有する。内周面Wisは、貫通孔Whの壁面を画定する。ワークWの材質は、ワークWに対して照射される後述のレーザ光等のビームBmを反射可能な材質であればよく、たとえば、鉄等の金属であってもよいし、非金属であってもよい。また、ワークWの軸方向(中心軸CL1に沿った方向)の両端に位置する端面Weは、平坦であってもよいし、ワークWに防錆油等の液体が付着している場合に、隣り合うワークWの端面We間で液体により付着力が高まるのを抑制し得る凹凸部を有していてもよい。また、ワークWの端面Weは、ビームBmが端面Weに照射された場合にビームBmが散乱されやすくする凹凸部を有していてもよい。
【0029】
次に、
図4および
図5を参照して、ワークWを保管する保管台Raについて説明する。
図4は、ワークが保管台に保管されている状態の一例をワークの軸方向から見た状態で示す図である。
図5は、ワークが保管台に保管されている状態の一例をワークの軸方向に直交する水平方向(
図4のB2方向)から見た状態で示す図である。
【0030】
なお、本明細書および図面において、方向Hは水平方向を表し、方向Vは鉛直方向を表すものとする。また、方向FBは保管台Raの前後方向を表し、矢印Fは前方向を表し、矢印Bは後方向を表すものとする。また、方向LRは、保管台Raの左右方向を表し、矢印Lは保管台Raの左方向を表し、矢印Rは保管台Raの右方向を表すものとする。左右方向LRは、水平面内において前後方向FBと直交する方向である。左方向Lは、保管台Raの後側から前側を見て左側の方向である。右方向Rは、保管台Raの後側から前側を見て右側の方向である。
【0031】
図4は、鉛直方向Vにおける保管台Raの一部の領域(2つの段)を示している。
図5は、水平方向Hおよび鉛直方向Vにおける保管台Raの一部の領域を示している。また、
図5は、最も後側(
図5中の右側)に位置する1つのワークWが後側へ傾斜している状態を示している。
図4では、便宜上、傾斜しているワークWの図示を省略し、
図5では、便宜上、左側のレールRa1の図示を省略している。
【0032】
図4および
図5に示されるように、保管台Raは、1または複数のワークWを立ち姿勢で保管するための台である。複数のワークWは、互いが接触した状態で保管台Raの前後方向FB(保管台Raの長手方向)に沿って並ぶように配置される。すなわち、複数のワークWは、前後方向FBに沿って配列される。以下の説明では、複数のワークWの配列方向を配列方向FBとも称する。本明細書において、「所望の立ち姿勢」とは、ワークWの径方向が鉛直方向Vに対して略平行(ワークWが直立した姿勢)であり、かつワークWの軸方向が水平方向Hおよび保管台Raの前後方向FBに対して略平行となるような姿勢である。保管台Raは、たとえば、各ワークWを少なくとも2点で支持するように構成されている。本実施形態では、保管台Raは、少なくとも左右一対のレールRa1、Ra2と、前後方向FRにおいて互いに間隔をあけて設けられる複数の背板Ra3とを備えている。また、本実施形態では、保管台Raは、座板Ra4、Ra5を備えている。
【0033】
レールRa1、Ra2は、立ち姿勢でワークWの軸方向に沿って並ぶ複数のワークWを支持するための支持部材である。レールRa1、Ra2は直線状に水平方向に延びており、互いに平行に設けられている。レールRa1、Ra2は、複数のワークWが保管台Raの前後方向FBに沿って直線的に並んだ状態で、複数のワークWの下部を支持することができる。
【0034】
レールRa1の上部、Ra2の上部には、それぞれ、座板Ra4、Ra5がボルトなどにより固定されている。座板Ra4、Ra5は、ワークWの外周面Wosを下方から直接支持する部材である。座板Ra4、Ra5は、それぞれ、斜面Ra6、Ra7を有する。斜面Ra6、Ra7は、ワークWの外周面Wosを支持する面である。斜面Ra6、Ra7は、上方へ向かうにつれて互いの間隔が広がるように傾斜している。斜面Ra6、Ra7は、所望の立ち姿勢にあるワークWの外周面Wosに沿うような傾斜角度および形状(平面または曲面)を有していることが好ましい。
【0035】
背板Ra3は、平板状に形成されており、一対のレールRa1、Ra2の間において、レールRa1、Ra2に対して直交する方向に沿って設けられている。
図5に示されるように、複数のワークWは、一対の斜面Ra6、Ra7に支持された状態で、保管台Raに保管されている。また、複数のワークWは、前側から1枚目のワークWの端面We(最も前側のワークW)が背板Ra3に接触した状態で、前側から2枚目以降のワークWを隣接するワークW同士が接触するように、すなわち隣り合うワークWの端面We同士が接触するように、保管台Raに収納されている。保管台Raは、複数のワークWを端面We同士が接触するように並べた状態で支持することができる構成であればよく、
図4および
図5に示されるように、レールRa1、Ra2の複数の組が鉛直方向Vに並んで設けられた構成、すなわち複数段(棚状)の構成であってもよいし、レールRa1、Ra2の複数の組が水平方向Hに並んで設けられた構成であってもよいし、レールRa1、Ra2の1つの組が設けられた構成であってもよい。保管台Raを棚状に構成した場合、鉛直方向Vにおいて多くのワークWを保管することができる。
【0036】
保管台Raは、隣り合う2つの背板Ra3の間の領域において、複数のワークWを保管することができる。すなわち、隣り合う2つの背板Ra3の間の領域に、複数のワークWを保管し得る1つの保管ブロックが形成されている。保管台Raは、保管ブロック毎に、たとえば、異なる大きさのワークWおよび異なる種類のワークWを保管することができる。背板Ra3は、レールRa1、Ra2の長さ方向(前後方向FB)に沿って移動し得るように、レールRa1、Ra2に対して摺動可能に設けられている。したがって、背板Ra3を移動させて、背板Ra3同士の間隔を調節することにより、保管ブロックの大きさを調節し、1つの保管ブロックに保管可能なワークWの数を調節することができる。また、保管ブロック内において、ハンドリングロボット31の後述するフィンガーFn(
図9参照)が進入する空間を確保することができる。
【0037】
次に、分離装置1について説明する。
図1に示されるように、分離装置1は、ワークWを支持する保管台Raに立ち姿勢で保管されている1または複数のワークWから、分離対象であるワークWを分離する分離機構3と、傾斜検出装置2(
図6A参照)とを備える。傾斜検出装置2は、分離対象であるワークWの傾斜を検出する。
【0038】
図1に示されるように、分離機構3は、ワークWを把持するフィンガーFnを有するハンドリングロボット31と、ハンドリングロボット31の動作を制御する制御部32とを備える。ハンドリングロボット31は、保管台RaとアーバーSL3との間でフィンガーFnを移動させ得るように構成されている。ハンドリングロボット31は、たとえば、保管台Raの側方および保管台Raの保管ブロック内において、前後方向FBに沿ってフィンガーFnを移動させ得るとともに、前後方向FBに対して直交する左右方向LRに沿ってフィンガーFnを移動させ得るように構成されている。なお、フィンガーFnは、後述のフィンガーFn1およびフィンガーFn2を総称するものである。
【0039】
図1および
図6A~
図6Cを参照して、分離機構3について説明する。
図6Aは、本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドの構成の一例を示す図であり、ロボットハンドを3本のフィンガーの先端側から見た側面図である。
図6Bは、本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドの構成の一例を示す図であり、ロボットハンドを下側のフィンガーを省略した状態で示す平面図である。
図6Cは、本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドの構成の一例を示す図であり、ロボットハンドを上側のフィンガーを省略した状態で示す平面図である。
【0040】
図1に示されるように、ハンドリングロボット31は、回転可能なベース部33と、ベース部33に対して旋回可能に設けられたロボットアーム34と、ロボットアーム34の先端に取り付けられたロボットハンド35とを備えている。ハンドリングロボット31のそれぞれの構成要素が、制御部32により制御されたハンドリング動作を行なう。ロボットハンド35は、
図6Aに示されるように、2つのフィンガーフレーム35a、35bを有し、上側のフィンガーフレーム35aには、2つのフィンガーFn1、Fn1が形成され(
図6B参照)、下側のフィンガーフレーム35bには、1つのフィンガーFn2が形成されている(
図6C参照)。フィンガーFn1、Fn2の長さは、分離するワークWの枚数に応じて適宜設定される。
【0041】
制御部32は、フィンガーFnが分離対象であるワークWに接近して分離対象であるワークWを把持するようにハンドリングロボット31を制御する。また、本実施形態では、制御部32は、傾斜検出装置2の動作を制御する。本実施形態では、制御部32は、ハンドリングロボット31および傾斜検出装置2の動作を制御することができれば、特に限定されることはなく、たとえば、集中演算処理装置(CPU)、HDDなどの記憶装置、RAMやROMなどのメモリ、液晶ディスプレイなどの表示装置、キーボードやマウスなどの入力装置を含む公知のコンピュータを用いることができる。なお、1つの制御部32が、ハンドリングロボット31および傾斜検出装置2の双方を制御してもよいし、複数の制御部32が、ハンドリングロボット31および傾斜検出装置2のそれぞれを制御してもよい。制御部32による制御については後述する。
【0042】
<傾斜検出装置>
次に、
図7および
図8を参照して、傾斜検出装置2について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドがワークの側方に位置している状態を示す側面図であり、ロボットハンドに設けられた傾斜検出装置からワークに対してビームを照射する様子の一例を示す図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドがワークの側方に位置している状態を模式的に示す平面図であり、ロボットハンドに設けられた傾斜検出装置からワークに対してビームを照射する様子の一例を示す図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドがワークの端面に近接した位置へ移動した状態を模式的に示す平面図である。
【0043】
本実施形態では、
図7および
図8に示されるように、傾斜検出装置2は、立ち姿勢で保管されている1または複数のワークWから分離対象であるワークWを、フィンガーFnを有するハンドリングロボット31を用いて分離する際に用いられる装置である。傾斜検出装置2は、立ち姿勢で保管されているワークWが、所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位していることを検出する。傾斜検出装置2は、ビームBmを照射する投光部と、投光部から照射されたビームBmの反射光を受光する受光部と、受光部の受光結果に基づいて、ワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断する判断部22とを備える。
【0044】
なお、ビームBmは、後述する第1のビームBm1および第2のビームBm2を総称するものである。また、
図7に示される例では、判断部22は、制御部32の一部として構成されているが、これに限定されるものではない。判断部22は、制御部32の外部に設けられる構成であってもよい。判断部22が制御部32の外部に設けられる場合、判断部22は、たとえば、公知のコンピュータにより構成され、判断結果を制御部32へ出力する。
【0045】
投光部は、ワークWが所望の立ち姿勢にある場合のワークWの存在領域内の第1の位置P1に第1のビームBm1を照射するとともに、ワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜する側へ第1の位置P1からずれた第2の位置P2に第2のビームBm2を照射する。投光部は、ビームBmの照射領域にワークWが存在するか否かを判断するためのビームBmを投光するものである。投光部は、ビームBmの照射領域にワークWが存在するか否かを判断するためのビームBmを投光できるものであればよく、たとえば、光電センサ21の構成要素として、レーザ光等のビームBmを投光するものである。本明細書において、「光電センサ」は、たとえば、投光部からから可視光線、赤外線、またはレーザ光等のビームBmを投光し、検出対象であるワークWからの反射光を受光部で受光し、受光結果を示す出力信号を得るものである。本明細書において、「光電センサ」は、レーザセンサの概念を含む。光電センサによってワークWを検出できるのであれば、光電センサの検出方式は、特に限定されるものではなく、たとえば、拡散反射型、透過型、回帰反射型、三角測定型、時間計測型、受光量判別型、および受光位置判別型など、種々の検出方式を採用することができる。
【0046】
受光部は、ビームBmの反射光を受光できるものであればよく、本実施形態では、たとえば、光電センサ21の構成要素として、レーザ光等のビームBmの反射光を受光するものである。本実施形態では、受光部は、たとえば、投光部から投光されたビームBmの反射光(ワークWで反射された光)を受光して、光電センサ21が備える図示しない演算部へ出力する。演算部は、受光部による反射光の受光結果に基づいて、たとえば、光電センサ21と、ビームBmを反射した物体との距離を求める。そして、光電センサ21は、演算部が求めた距離などを示す信号を判断部22へ出力する。
【0047】
なお、光電センサ21は、投光部が所定の周波数で繰り返されるパルス状の光であるレーザ光を照射するものであることが好ましい。すなわち、光電センサ21は、いわゆるパルスレーザ光を投光するものであることが好ましい。所定の周波数で繰り返されるパルス状の光であるレーザ光は、太陽光等の外乱光との干渉が生じにくいため、光電センサ21の計測精度を高めることができる。これにより、外乱光が存在する環境下においても、ワークWの傾斜を高い精度で検出することができる。また、ワークWの表面に防錆油等の液体が付着している場合、レーザ光はその液体を介してワークWに照射されることになる。しかしながら、所定の周波数で繰り返されるパルス状の光であるレーザ光は、連続的なレーザ光と比べて、受光部において検出しやすいため、ワークWの表面に防錆油等の液体が付着している場合であっても、光電センサ21の計測精度を高めて、ワークWの傾斜を高い精度で検出することができる。そのような光電センサ21としては、たとえば、(株)キーエンス製のLTB-2000を用いることができる。
【0048】
また、光電センサ21は、時間計測型のもの、すなわち、TOF(Time of Flight)型のものであることが好ましい。具体的には、投光部がパルス状の光(たとえばレーザ光)を投光してから、パルス状の反射光を受光部が受光するまでの時間を検出し、その時間と光速の積により距離を算出するものである。パルス状の光は、連続的な光と比べて、受光部において検出しやすいため、ワークWの表面に防錆油等の液体が付着している場合であっても、光電センサ21の計測精度を高めて、ワークWの傾斜を高い精度で検出することができる。より具体的には、連続した光を投光する従来の光電センサでは、投光した光の反射光と、蛍光灯や太陽光等の外乱光との間で波長が一致してしまった場合に、光電センサ側では反射光と外乱光との見分けがつかず、ワークWの傾斜を誤認してしまう可能性がある。外乱光に起因するそのような誤認を回避するために、たとえば、連続した光を投光する従来の光電センサを用いながら、光電センサからワークまでの領域を遮光ネットで覆う等の対策を行うことも考えられるが、光電センサの受光部への外乱光の侵入を完全に防ぐことは難しい。これに対し、時間計測型(TOF型)の光電センサ21を使用した場合には、上述のような波長の一致があっても、判断部22は、光電センサ21から投光した光の反射光だけを高い確率で認識して傾斜の有無を判断することができる。したがって、傾斜検出装置2は、ワークWの傾斜検出に外乱光が影響するのをより確実に防止して、ワークWの傾斜を高い精度で検出することができる。そのような光電センサ21としては、たとえば、(株)キーエンス製のLTB-2000を用いることができる。なお、時間計測型(TOF型)の光電センサ21を使用する場合には、光電センサ21は、上記演算部が求めた距離を示す信号の他、受光部が受光したパルス状の光の受光間隔(受光の時間間隔)を示す信号を判断部22へ出力してもよい。
【0049】
また、光電センサ21は、拡散反射型のものであることが好ましい。具体的には、たとえば、投光部がパルス状の光(たとえばレーザ光)を投光し、投光した光がワークWの表面で拡散反射され、その反射光を受光部が検出し、投光から受光までの時間と光速の積により距離を算出するものである。受光部は、拡散反射した光を受光するので、投光した光の光軸に対してワークWの表面が傾斜している場合であっても、受光部において反射光を検出しやすい。したがって、投光した光の光軸に対してワークWの表面が傾斜している場合であっても、光電センサ21の計測精度を高めて、ワークWの傾斜を高い精度で検出することができる。そのような光電センサ21としては、たとえば、(株)キーエンス製のLTB-2000を用いることができる。
【0050】
また、光電センサ21は、たとえば、時間計測型、拡散反射型、およびパルスレーザ光を投光するレーザセンサの組み合わせのセンサであることが好ましい。時間計測型、拡散反射型、およびパルスレーザ光を投光するレーザセンサの組み合わせである光電センサ(たとえば、(株)キーエンス製のLTB-2000)は、パルスレーザ光の照射領域にワークWが存在する場合には、パルスレーザ光の拡散反射光を受光して、レーザセンサとワークWとの距離を計測し、計測結果を判断部22へ出力する。また、この光電センサ21は、パルスレーザ光の照射領域にワークWが存在しない場合には、レーザセンサとワークWとの距離を計測できないため、レーザセンサとワークWとの距離を計測できなかったことを示す情報を判断部22へ出力する。
【0051】
ワークWが所望の立ち姿勢にある場合、フィンガーFnは、保管台Raの側方(
図8参照)から第1の方向B3へ移動することにより、分離対象であるワークWに近接した近接位置P3に到達し(
図9参照)、さらに第2の方向B4へ移動することにより、ワークWにおける被把持面に対向する対向位置P4に到達する(
図6A参照)。ワークWが所望の立ち姿勢にある場合、フィンガーFnは、保管台Raの側方から、分離対象であるワークWと衝突および干渉することなく第1の方向B3へ移動して近接位置P3(
図9参照)に到達することができる。フィンガーFnは、近接位置P3にあるとき、分離対象であるワークWの端面Weとの間に間隔をあけた状態でワークWよりも後側に位置する。
【0052】
次に、
図10および
図11を参照して、投光部がビームBmを照射する位置について説明する。
図10は、ワークが傾斜している状態の一例を示す側面図である。
図11は、
図10の上側部分を拡大して示す側面図であり、本発明の一実施形態に係る傾斜検出装置において、第1のビームが照射される第1の位置および第2のビームが照射される第2の位置の一例を示す図である。なお、
図10および
図11は、ワークWが所望の立ち姿勢にある状態(二点鎖線で示す)から、
図5に示す後方向Bへ傾斜(後方向Bへ回動)している状態を示している。
【0053】
図10に示されるように、第1の位置P1および第2の位置P2は、所望の立ち姿勢(本実施形態では、直立した姿勢)にあるワークWの高さ方向における中央部の位置または中央部より高い位置である。立ち姿勢にあるワークWが下部を支点として傾斜した場合、ワークWにおける位置が高いほど、傾斜方向における変位量が大きくなる。すなわち、傾斜角度がわずかであっても、ワークWにおける高い位置では、傾斜方向における変位量が大きくなる。したがって、第1の位置P1および第2の位置P2をこのような高い位置に設定することにより、ワークWが傾斜したときにワークWの変位量が大きくなる位置において、ワークWの有無を検出することができるので、ワークWの傾斜を高い精度で検出することができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、
図11に示されるように、第1の位置P1および第2の位置P2は、所定の直径(スポット径)dを有する略円形状のビームスポットの中心であり、それぞれ、第1のビームBm1のスポットの中心、第2のビームBm2のスポットの中心を示している。また、
図10および
図11において、「Dm」はワークWの直径、「θ」はワークWにおける所望の立ち姿勢からの傾斜角度、「Hg」はワークWの下端からの第1の位置P1および第2の位置P2の高さ、「Wd」はワークWの厚さ、「C」は所望の立ち姿勢にあるワークWの端面Weと第2のビームBm2のスポットの外周部との距離、「S」は前後方向FBにおける第1の位置P1および第2の位置P2の距離を示している。
【0055】
第1の位置P1は、分離対象であるワークWが所望の立ち姿勢にある場合において、分離対象であるワークWの厚さ方向の中心に位置し、第2の位置P2は、傾斜したワークWの後側の端面We上に位置している。第2のビームBm2のスポットにおける半分程度の領域が傾斜したワークWに照射された場合に、受光部において第2のビームBm2の反射光を受光して、ワークWの存在を検出できるものとして、第2の位置P2は設定されている。また、距離Cは、フィンガーFnと所望の立ち姿勢にあるワークWの後側の端面Weとの間で許容されている傾斜許容距離S1に基づいて設定することができる。傾斜許容距離S1は、ワークWが傾斜しても、傾斜したワークWとフィンガーFnとが衝突したり干渉したりしないように、所望の立ち姿勢にあるワークWの軸方向(ワークWの配列方向、保管台Raの前後方向FB)において、ワークWの後側の端面WeとフィンガーFnの先端との間に予め設定されている隙間の幅である。したがって、距離Cは、たとえば、傾斜許容距離S1より小さい値、具体的には、たとえば、傾斜許容距離S1から直径dを差し引いた値(S1-d)より小さい値に設定することができる。距離Cをこのような値に設定することにより、第2のビームBm2がフィンガーFnと同じ高さで照射される場合であっても、第2のビームBm2がフィンガーFnに照射されるのを防止することができる(
図8参照)。また、第2のビームBm2がフィンガーFnに照射されないので、第2のビームBm2の高さを設定する場合に、高さの設定範囲の自由度を高めることができる。フィンガーFnが保管台Raの側方に位置して、第1のビームBm1および第2のビームBm2を投光する際には、分離対象であるワークWが所望の立ち姿勢にあると仮定して、分離対象であるワークWの端面WeとフィンガーFnの先端との距離が傾斜許容距離S1となるようにフィンガーFnが配置される。
【0056】
第1の位置P1および第2の位置P2の間隔S(
図11参照)は、好ましくは、所望の立ち姿勢にあるワークWと、フィンガーFnが分離対象であるワークWを分離するために分離対象であるワークWに接近するときにフィンガーFnとワークWとの間で許容されている間隔に基づいて設定された間隔である。「許容されている間隔」は、本実施形態では、傾斜許容距離S1である。第1の位置P1および第2の位置P2の間隔Sを、傾斜許容距離S1に基づいて設定することにより、許容されている傾斜の度合いを超えてワークWが傾斜していることを検出できるような値に間隔Sを設定することができる。
【0057】
なお、第1の位置P1および第2の位置P2の間隔S(
図11参照)は、所望の立ち姿勢にあるワークWと、フィンガーFnが近接位置P3(
図9参照)に到達した状態におけるフィンガーFnとの距離に基づいて設定された間隔であってもよい。この場合、所望の立ち姿勢にあるワークWとフィンガーFnとが干渉しないように設定されたワークWおよびフィンガーFnの間隔に基づいて、第1の位置P1および第2の位置P2の間隔Sを容易に設定することができる。
【0058】
また、ワークWの下端からの第1の位置P1および第2の位置P2の高さHgは、傾斜許容距離S1に基づいて設定された間隔である。以下、間隔Sおよび高さHgの求め方の一例について説明する。
【0059】
高さHgは、たとえば、以下の式(1)で表すことができる。
Hg=(C+(d/2))/tanθ ・・・(1)
また、距離Sは、たとえば、以下の式(2)で表すことができる。
S=(Wd/2)+(d/2)+C ・・・(2)
【0060】
高さHgおよび距離Sを、それぞれ、式(1)および式(2)を用いて求めることにより、高さHgおよび距離Sを簡単に求めることができる。なお、高さHgおよび距離Sは、式(1)および式(2)で求められる値に限定されるものではなく、たとえば、ワークWの種類および形状、ならびにワークWの表面の状態(たとえば、液体の付着の程度)等に応じて、他の求め方を採用してもよい。
【0061】
本実施形態では、
図11に示されるように、投光部は、ワークWが所望の立ち姿勢にある場合におけるワークWの外周面Wos(
図11において二点鎖線で示す)に向けて第1のビームBm1を照射するとともに、ワークWが所望の立ち姿勢にある場合におけるワークWから外れた位置(
図11において実線で示す)に向けて第2のビームBm2を照射する。投光部は、第1のビームBm1および第2のビームBm2を同時に投光してもよいし、投光タイミングをずらして第1のビームBm1および第2のビームBm2を投光してもよい。本実施形態では、投光部は、たとえば、第1のビームBm1および第2のビームBm2を同時に投光する。なお、投光タイミングをずらして第1のビームBm1および第2のビームBm2を投光する場合には、第1のビームBm1および第2のビームBm2のどちらを先に投光してもよい。また、時間計測型(TOF型)の光電センサ21を使用する場合には、投光部は、第1のビームBm1と第2のビームBm2とで、互いに異なる時間間隔でパルス状の光を投光することが好ましい。すなわち、隣り合うパルスの時間間隔を第1のビームBm1および第2のビームBm間で異ならせることにより、判断部22は、光電センサ21の受光部が受光したパルス状の反射光の受光間隔(隣り合うパルスの時間間隔)に基づいて、受光部が受光した反射光が第1のビームBm1の反射光および第2のビームBm2の反射光のいずれであるのかを識別することができる。これにより、傾斜検出装置2は、ワークWの傾斜をより高い精度で検出することができる。
【0062】
なお、1つの光電センサ21が、第1のビームBm1および第2のビームBm2の双方を投光してもよいし、本実施形態のように、2つの光電センサ21(
図8参照)が、第1のビームBm1および第2のビームBm2のそれぞれを投光してもよい。本実施形態では、2つの光電センサ21が、ロボットハンド35の先端部において、保管台Raの前後方向FB(複数のワークWの配列方向)において互いに間隔をあけて設けられている。具体的には、2つの光電センサ21は、第1のビームBm1および第2のビームBm2の中心部同士の間隔、すなわち、保管台Raの前後方向FB(複数のワークWの配列方向)における第1の位置P1および第2の位置P2の距離Sと同じ間隔をあけて配置されている。なお、光電センサ21の配置位置は、これに限定されるものではなく、ロボットハンド35以外の場所に配置されてもよい。
【0063】
第1のビームBm1および第2のビームBm2を
図11に示すような位置に照射することにより、ワークWが所望の立ち姿勢にある場合には、第1のビームBm1がワークWの外周面Wosで反射されて、その反射光を受光部において受光することができるとともに、第2のビームBm2はワークWで反射されないので、第2のビームBm2の反射光は受光部において受光できない。また、ワークWが傾斜している場合には、第2のビームBm2がワークWの外周面Wosで反射されて、その反射光を受光部において受光することができるとともに、第1のビームBm1はワークWで反射されないので、第1のビームBm1の反射光は受光部において受光できない。
【0064】
判断部22は、第1のビームBm1のワークWでの反射光が受光されて第2のビームBm2のワークWでの反射光が受光されない場合には、ワークWが所望の立ち姿勢にあると判断する。具体的には、判断部22は、たとえば、光電センサ21から距離を示す信号を受けて、その距離が光電センサ21とワークWとの距離に相当する場合には、受光部においてワークWでの反射光が受光されたものとして処理を行う。また、判断部22は、たとえば、光電センサ21から距離を示す信号を受けて、その距離が光電センサ21とワークWとの距離を超える値である場合には、受光部においてワークWでの反射光は受光されなかったものとして処理を行う。一方、判断部22は、第2のビームBm2のワークWでの反射光が受光されて第1のビームBm1のワークWでの反射光が受光されない場合には、ワークWが傾斜した姿勢にあると判断する。すなわち、判断部22は、第1のビームBm1の反射光および第2のビームBm2の反射光の受光結果に基づいて、ワークWが傾斜している状態にあるか否かを判断する。なお、ワークWの傾斜角度θおよび厚さWdによっては、第1のビームBm1のワークWでの反射光が受光部において受光されるとともに、第2のビームBm2のワークWでの反射光が受光部において受光される場合もあり得る。この場合においても、判断部22は、第1のビームBm1の反射光および第2のビームBm2の反射光の受光結果に基づいて、ワークWが傾斜している状態にあると判断する。すなわち、本実施形態では、第2のビームBm2のワークWでの反射光が受光部において受光された場合には、第1のビームBm1のワークWでの反射光が受光部において受光されたか否かに関わらず、判断部22は、ワークWが傾斜した姿勢にあると判断する。また、ワークWの傾斜角度θおよび厚さWdによっては、第1のビームBm1のワークWでの反射光が受光部において受光されず、かつ第2のビームBm2のワークWでの反射光が受光部において受光されない場合もあり得る。この場合には、判断部22は、第1のビームBm1の反射光および第2のビームBm2の反射光の受光結果に基づいて、ワークWが傾斜している状態にあると判断する。この場合には、ワークWが第1のビームBm1の光路および第2のビームBm2の光路の双方から外れる位に大きな傾斜角度で傾斜している(たとえば転倒している)可能性が高いからである。なお、時間計測型(TOF型)の光電センサ21を使用する場合には、上述のように、第1のビームBm1と第2のビームBm2とで互いに異なる時間間隔でパルス状の光を投光することにより、判断部22は、受光部が受光した反射光が第1のビームBm1の反射光および第2のビームBm2の反射光のいずれであるのかを識別して、ワークWの傾斜の有無を判断することができる。したがって、傾斜検出装置2は、ワークWの傾斜をより高い精度で検出することができる。また、第1の位置P1、第2の位置P2、およびビームBmのスポット径dなどの条件は、ワークWの傾斜の程度によってワークWが傾斜しているのか否かが判断できないような不都合が生じないように設定される。
【0065】
なお、投光部は、第1のビームBm1および第2のビームBm2を水平方向Hに沿って投光してもよいし、水平方向Hに対して傾斜した角度で投光してもよい。水平方向Hに対して傾斜した角度で照射する場合としては、たとえば、斜め下向きに投光することができる。第1のビームBm1および第2のビームBm2を水平方向Hに沿って投光する場合において、第1の位置P1および第2の位置P2が、所望の立ち姿勢にあるワークWの高さ方向における中央部の位置または中央部より高い位置である場合、第1の位置P1および第2の位置P2が高いほど、ワークWの変位量が大きくなる反面、ワークWの外周面Wosに対する第1のビームBm1および第2のビームBm2の進入角度が浅くなり、第1のビームBm1および第2のビームBm2のワークWでの反射光を受光部において受光される光量が少なくなる可能性がある。しかしながら、第1のビームBm1および第2のビームBm2を斜め下向きに投光することにより、第1の位置P1および第2の位置P2が高くても、ワークWの外周面Wosに対する第1のビームBm1および第2のビームBm2の進入角度を深くする、すなわち、ワークWの外周面Wosに対する第1のビームBm1および第2のビームBm2の進入角度を直角に近づけることができるので、第1のビームBm1および第2のビームBm2の反射光が受光部において受光される光量を増加させて、ワークWの傾斜の検出精度を高めることができる。
【0066】
なお、水平方向Hに対して傾斜した角度(斜め下向き)でビームBmを投光した場合、投光の傾斜角度が大きくなるほど、投光したビームBmが傾斜したワークWの端面Weに照射されやすくなる。このため、ワークWが傾斜している場合にはワークWにビームBmが照射されないことを想定してビームBmを照射した場合に、傾斜した方向に投光されたビームBmが傾斜したワークWの端面Weに照射されてしまうことがあり得る。したがって、水平方向Hに対して傾斜した角度(斜め下向き)でビームBmを投光する場合には、そのようなことが生じる可能性があることを想定した上で、投光の傾斜角度が大きくなり過ぎないように傾斜角度を設定することが好ましい。
【0067】
図12は、本発明の一実施形態に係る傾斜検出装置において、ワークの外周面に対して第1のビームおよび第2のビームが照射される好ましい方向の範囲の一例を模式的に示す図である。
図12は、ワークWにおいて第1のビームBm1および第2のビームBm2が照射される第1の位置P1および第2の位置P2付近を拡大して示している。このため、
図12では、ワークWの外周面Wosが略平坦に表されている。
図12において、外周面Wos上の第1の位置P1および第2の位置P2において、外周面Wosに対する法線Nと、第1のビームBm1および第2のビームBm2とがなす角度をθ1で表している。また、
図12において、ワークWに対して第1のビームBm1および第2のビームBm2が照射される好ましい方向の範囲を、法線Nに対する角度として、-θa~θaの範囲で表している。すなわち、
図12に示されるように、第1の位置P1は、ワークWの外周面Wos上にあり、投光部は、第1の位置P1における外周面Wosに対する法線N上または法線Nに対する角度θ1が所定の範囲-θa~θaにある直線上に配置されていることが好ましい。第2の位置P2が配置される好ましい範囲についても同様である。-θa~θaの範囲は、光電センサ21が第1のビームBm1のワークWでの反射光および第2のビームBm2のワークWでの反射光を受光して、ワークWと光電センサ21との距離を高い精度で検出可能な角度である。-θa~θaの範囲は、ワークWと光電センサ21との距離を高い精度で検出可能な角度であればよく、たとえば、-40°~40°の範囲であり、より好ましくは、たとえば、安全率2を考慮して、-20°~20°の範囲である。なお、-θa~θaの範囲は、-40°~40°の範囲に限定されるものではなく、たとえば、受光部の受光感度、およびワークWの表面の状態等に応じて変更されてもよい。
【0068】
また、光電センサ21の応答速度と、受光部の感度とは、太陽光等の外乱光およびワークWの表面に付着した防錆油などが光電センサ21の計測結果に与える影響を抑制できるように、ある程度高めに設定されることが好ましい。たとえば、受光センサ21の応答速度は、10~100(ms)とされることが好ましく、受光部の感度は、たとえば、高レベル、中レベル、低レベルの中から選択できる仕様になっている場合には、高レベルまたは中レベルに設定されることが好ましい。
【0069】
次に、
図6A~
図13等を参照して、制御部32によるハンドリングロボット31および傾斜検出装置2の制御について説明する。
図13は、本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドがワークの側方に位置している状態を模式的に示す平面図であり、ロボットハンドに設けられた傾斜検出装置から傾斜したワークに対してビームを照射する様子の一例を示す図である。
【0070】
ここでは、傾斜検出装置2が所望の立ち姿勢にある後側(
図13中の右側)から1枚目のワークWを検出した後、ハンドリングロボット31が1枚目のワークWを分離し、その後、傾斜検出装置2が所望の立ち姿勢に対して傾斜している後側から2枚目のワークWを検出する場合について説明する。本実施形態では、1枚目のワークWおよび2枚目のワークWには、防錆油等の液体が付着しており、1枚目のワークWおよび2枚目のワークWの端面We同士の間に付着力が生じているものとする。また、2枚目のワークWの傾斜は、1枚目のワークWと2枚目のワークWとの間で高まった付着力により生じたものである。なお、傾斜の理由は、付着力以外の理由であってもよい。
【0071】
まず、ハンドリングロボット31によるワークWの分離、および分離対象であるワークWの傾斜の検出を行う前の段階として、保管台Raに複数のワークWを立ち姿勢で保管する(
図8参照)。複数のワークWは、互いの端面We同士が接触した状態で保管台Raの前後方向FB(保管台Raの長手方向)に沿って並ぶように配置される。最も前側(
図8中、最も左側)のワークWは、端面Weが背板Ra3に接触するように配置される。なお、ワークWの分離を行う前の段階では、保管された複数のワークWのいずれも傾斜しておらず、いずれのワークWも所望の立ち姿勢にあるものとする。
【0072】
制御部32は、光電センサ21が分離対象となるワークWの傾斜を検出するための計測位置P5(
図7および
図8参照)に移動するようにハンドリングロボット31を制御する第1の移動制御を行う。具体的には、制御部32は、第1の移動制御において、ハンドリングロボット31のベース部33およびロボットアーム34(
図1参照)を作動させることにより、光電センサ21を計測位置P5へ移動させる。計測位置P5は、ワークWの分離が行われて、分離対象となるワークWが変わる毎に更新される。具体的には、制御部32は、保管台Raに保管されているワークWの数を認識しており、保管台Raに保管されているワークWの数に応じて、分離対象となるワークWが所望の立ち姿勢にある場合の当該ワークWの位置を把握している。したがって、制御部32は、
図11に示されるように、分離対象となるワークWの位置に基づいて、第1の位置P1および第2の位置P2を求めることができる。第1の位置P1および第2の位置P2は、所望の立ち姿勢にあるワークWの高さ方向における中央部の位置または中央部より高い位置である。なお、制御部32が保管台Raに保管されているワークWの数を認識する方法は、特に限定されるものではない。たとえば、制御部32にワークWの数の初期値を記憶させておき、ワークWの分離が行われる毎に、分離が行われる直前のワークWの数から今回分離されたワークWの数を減じる演算を行うことにより、保管台Raに保管されているワークWの数を更新するという方法を採用することができる。また、制御部32は、光電センサ21が計測位置P5(
図7および
図8参照)にある状態において、フィンガーFnが保管台Raの前後方向FBに沿って平行であり、フィンガーFnが保管台Raの側方に位置し(
図7および
図8参照)、かつ保管台Raの前後方向FBにおいて、フィンガーFnの先端と分離対象であるワークWの後側(
図8中、右側)の端面Weとの距離が、上述の傾斜許容距離S1となるように、ハンドリングロボット31を制御する。
【0073】
つぎに、制御部32は、分離対象であるワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを傾斜検出装置2に検出させる傾斜検出制御を行う。具体的には、制御部32は、傾斜検出制御において、投光部から、第1の位置P1に第1のビームBm1を照射させるとともに、第2の位置P2に第2のビームBm2を照射させる(
図7および
図8参照)。さらに、制御部32は、傾斜検出制御において、受光部による反射光の受光結果を受光部から判断部22へ出力させる(
図7および
図8参照)。さらに、制御部32は、傾斜検出制御において、反射光の受光結果に基づいて、ワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断部22に判断させる。本実施形態では、1枚目のワークWが分離対象であるとき、1枚目のワークWは所望の立ち姿勢にあるので、第1のビームBm1は1枚目のワークWの外周面Wosに照射されて反射され(第1の位置P1が1枚目のワークWの存在領域内に存在し)、ワークWでの反射光が受光部により受光される(検出される)。一方、1枚目のワークWは第2のビームBm2の光路上に存在しない(第2の位置P2が1枚目のワークWの存在領域内に存在しない)ので、第2のビームBm2は1枚目のワークWの外周面Wosで反射されず、ワークWでの第2のビームBm2のワークWでの反射光が受光部により受光されない(検出されない)。光電センサ21は、受光部が1枚目のワークWでの反射光を受光したか否かを示す信号を判断部22へ出力する。具体的には、たとえば、受光部が反射光を検出した場合、光電センサ21はその検出結果に基づいて求めた距離を示す信号を判断部22へ出力する。第1のビームBm1は1枚目のワークWの外周面Wosで反射されるので、光電センサ21は、第1のビームBm1の反射光の受光結果として、受光部とワークWとの距離を示す信号を判断部22へ出力する。また、第2のビームBm2は1枚目のワークWで反射されず、たとえば、ワークWより遠方の物体(たとえば室内の壁)で反射されるので、光電センサ21は、第2のビームBm2の反射光の受光結果として、受光部と当該物体との距離を示す信号を判断部22へ出力する。さらに、制御部32は、受光部の受光結果に基づいて、ワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断部22に判断させる。具体的には、判断部22は、判断制御において、受光部が第1のビームBm1のワークWでの反射光を受光したことを示す信号を受けるとともに、受光部が第2のビームBm2のワークWでの反射光を受光しなかったことを示す信号を受けたことに基づいて、1枚目のワークWは所望の立ち姿勢にあると判断する。
【0074】
つぎに、制御部32は、判断部22の判断結果に基づいて、ハンドリングロボット31によりフィンガーFnを上述の近接位置P3(
図9参照)へ移動させる第2の移動制御を行う。分離対象である1枚目のワークWは所望の立ち姿勢にあるため、1枚目のワークWとフィンガーFnの先端との間には、保管台Raの前後方向FBにおいて傾斜許容距離S1が確保されている。したがって、フィンガーFnが保管台Raの側方(
図8に示す計測位置P5)から近接位置P3へ移動(方向B3へ移動)する際、フィンガーFnは分離対象であるワークWと衝突(干渉)しない。
【0075】
つぎに、制御部32は、ハンドリングロボット31によりフィンガーFnを近接位置P3から上述の対向位置P4(
図6A参照)へ移動させる第3の移動制御を行う。具体的には、制御部32は、フィンガーFnを第2の方向B4(
図9参照)へ移動させることにより、フィンガーFnを1枚目のワークWにおける被把持面に対向する対向位置P4に到達させる。そして、制御部32は、各フィンガーFnがワークWの内周面Wisに密着するようにフィンガーFnを移動させてワークWを把持する把持制御を行う。そして、制御部32は、フィンガーFnを上方へ移動させて、1枚目のワークWを分離する分離制御を行う。
【0076】
つぎに、制御部32は、ハンドリングロボット31により1枚目のワークWをアーバーSL3(
図1参照)に装着する制御を行った後、2枚目のワークWを分離するために、ハンドリングロボット31によりフィンガーFnを保管台Raの側方の計測位置P5(
図13参照)へ移動させる第1の移動制御を行う。2枚目のワークWは、
図13に示されるように、所望の立ち姿勢に対して後側(
図13中、右側)へ傾斜しているものとする。
図13は、本発明の一実施形態に係る分離装置におけるロボットハンドがワークの側方に位置している状態を模式的に示す平面図であり、ロボットハンドに設けられた傾斜検出装置から傾斜したワークに対してビームを照射する様子の一例を示す図である。
【0077】
2枚目のワークWを分離する際の第1の移動制御は、1枚目のワークWを分離する際の第1の移動制御とは分離対象であるワークWの位置が異なるだけであり、制御の内容は、1枚目のワークWを分離する際の第1の移動制御と同様である。
【0078】
つぎに、制御部32は、分離対象である2枚目のワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを傾斜検出装置2に検出させる傾斜検出制御を行う。具体的には、制御部32は、傾斜検出制御において、
図13に示されるように、投光部から、第1の位置P1に第1のビームBm1を照射させるとともに、第2の位置P2に第2のビームBm2を照射させる。さらに、制御部32は、傾斜検出制御において、受光部による反射光の受光結果を受光部から判断部22へ出力させる(
図13参照)。さらに、制御部32は、傾斜検出制御において、反射光の受光結果に基づいて、ワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断部22に判断させる。本実施形態では、2枚目のワークWが分離対象であるとき、2枚目のワークWは所望の立ち姿勢に対して後側(
図13中、右側)に傾斜しているので、第2のビームBm2は2枚目のワークWの外周面Wosに照射されて反射され(第2の位置P2が2枚目のワークWの存在領域内に存在し)、ワークWでの反射光が受光部により受光される(検出される)。一方、2枚目のワークWは第1のビームBm1の光路上に存在しない(第1の位置P1が1枚目のワークWの存在領域内に存在しない)ので、第1のビームBm1は2枚目のワークWの外周面Wosで反射されず、ワークWでの第1のビームBm1の反射光が受光部により受光されない(検出されない)。光電センサ21は、受光部が2枚目のワークWでの反射光を受光したか否かを示す信号を判断部22へ出力する。具体的には、たとえば、受光部が反射光を受光した場合、光電センサ21はその受光結果に基づいて求めた距離を示す信号を判断部22へ出力する。第2のビームBm2は2枚目のワークWの外周面Wosで反射されるので、光電センサ21は、第2のビームBm2のワークWでの反射光の受光結果として、受光部とワークWとの距離を示す信号を判断部22へ出力する。また、第1のビームBm1は2枚目のワークWで反射されず、たとえば、ワークWより遠方の物体(たとえば室内の壁)で反射されるので、光電センサ21は、第1のビームBm1の反射光の受光結果として、受光部と当該物体との距離を示す信号を判断部22へ出力する。さらに、制御部32は、受光部の受光結果に基づいて、ワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断部22に判断させる。具体的には、判断部22は、判断制御において、受光部が第2のビームBm2のワークWでの反射光を受光したことを示す信号を受けるとともに、受光部が第1のビームBm1のワークWでの反射光を受光しなかったことを示す信号を受けたことに基づいて、2枚目のワークWは所望の立ち姿勢に対して傾斜していると判断する。
【0079】
つぎに、制御部32は、フィンガーFnが分離対象であるワークW側へ移動するのを停止する停止制御を行う。すなわち、分離対象であるワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位していると判断部22が判断した場合、制御部32は、フィンガーFnがワークWへの接近動作を停止するようにハンドリングロボット31を制御する。フィンガーFnがワークW側へ移動するのを停止することにより、フィンガーFnが、傾斜しているワークWと衝突したり干渉したりするのを防止することができる。
【0080】
なお、分離対象であるワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位していると判断部22が判断した場合、制御部32は、フィンガーFnがワークWへの接近動作を停止するようにハンドリングロボット31を制御することに代えて、または加えて、図示しない警報装置により警報を発する制御を行ってもよい。
【0081】
なお、ワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜する方向は、
図10および
図11に示されるような方向には限られない。ワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜する方向の他の例について、
図14および
図15を参照して説明する。
図14は、保管台上でワークが傾斜している状態の一例を示す図であり、ワークが鉛直軸周りに回動するようにワークが傾斜している状態を示す図である。
図15は、保管台上でワークが傾斜している状態の一例を示す図であり、ワークが鉛直軸周りに
図14とは反対側へ回動するようにワークが傾斜している状態を示す図である。
【0082】
図10および
図11に示される例では、後側のワークWは、ワークWの側方から見て傾斜している。すなわち、後側のワークWは、所望の立ち姿勢に対して、ワークWの下端部または下端部付近を中心として後側へ回動した状態にある。これに対して、
図14および
図15に示される例では、後側のワークWは、ワークWの上方から見て傾斜している。すなわち、後側のワークWは、所望の立ち姿勢にあるワークWに対して、鉛直軸周りに回動した状態にある。
【0083】
図14および
図15に示されるワークWの傾斜の検出について、
図16A~
図16Cを参照して説明する。
図16Aは、保管台上で保管されているワークが傾斜しているかどうかを検出するためにビームを照射する様子の一例を示す図であり、所望の姿勢にあるワークに対してビームを照射する様子を示す図である。
図16Bは、保管台上で保管されているワークが傾斜しているかどうかを検出するためにビームを照射する様子の一例を示す図であり、
図14に示すように傾斜しているワークに対してビームを照射する様子を示す図である。
図16Cは、保管台上で保管されているワークが傾斜しているかどうかを検出するためにビームを照射する様子の一例を示す図であり、
図15に示すように傾斜しているワークに対してビームを照射する様子を示す図である。
【0084】
図16Bに示されるように、ワークWにおいて光電センサ21から遠い部分が光電センサ21に近い部分に対して後方向Bへ移動するようにワークWが鉛直軸周りに回動する例においては、たとえば、第1のビームBm1がワークWの外周面Wosに照射されるとともに、第2のビームBm2がワークWの端面We(後側の端面We)または内周面Wisに照射される。したがって、光電センサ21は、第1のビームBm1のワークWでの反射光および第2のビームBm2のワークWでの反射光を受光することができる。したがって、傾斜検出装置2は、
図14に示されるような傾斜を検出することができる。なお、ワークWの端面Weに、照射されたビームBmが散乱されやすくする凹凸部が設けられている場合には、受光部において受光される反射光の受光量を増加させることができるので、傾斜の検出精度を高めることができる。なお、
図16Bに示されるワークWの端面Weに、上記凹凸部が設けられていない場合において、端面WeにビームBm2が照射された場合には、端面Weから光電センサ21に到達する反射光の量が十分でない場合があり、その場合には光電センサ21は端面Weでの反射光を検出できない可能性がある。端面Weでの反射光が検出されない場合には、光電センサ21において、ワークWの外周面Wosでの第1のビームBm1の反射光のみが検出されるため、判断部22において、ワークWが傾斜していないと判断されてしまう可能性がある。しかしながら、
図16Bに示される傾斜状態のワークWにフィンガーFnが接近してワークWに干渉することがあったとしても、フィンガーFnがワークWの端面Weに対して、ワークWの姿勢を所望の立ち姿勢に戻す方向へ押圧力を作用させながら、端面We上をスライドするので、フィンガーFnが破損する可能性は低い。
【0085】
図16Cに示されるように、ワークWにおいて光電センサ21に近い部分が光電センサ21から遠い部分に対して後方向Bへ移動するようにワークWが鉛直軸周りに回動する例においては、たとえば、第2のビームBm2がワークWの外周面Wosに照射されるとともに、第1のビームBm1がワークWの端面We(前側の端面We)または内周面Wisに照射される。したがって、光電センサ21は、第1のビームBm1のワークWでの反射光および第2のビームBm2のワークWでの反射光を受光することができる。したがって、傾斜検出装置2は、
図15に示されるような傾斜を検出することができる。なお、
図16Cに示されるワークWの端面Weに、上記凹凸部が設けられていない場合において、端面WeにビームBm1が照射された場合には、端面Weから光電センサ21に到達する反射光の量が十分でない場合があり、その場合には光電センサ21は端面Weでの反射光を検出できない可能性がある。しかしながら、端面Weでの反射光が検出されない場合であっても、光電センサ21において、ワークWの外周面Wosでの第2のビームBm2の反射光が検出されるため、判断部22において、ワークWが傾斜していると判断される。すなわち、判断部22は安全側に傾斜の有無を判断するので、傾斜したワークWに対するフィンガーFnの干渉や衝突を防止することができる。
【0086】
以下、再度
図6A~
図13等を参照して、本発明の一実施形態に係る傾斜検出方法および分離方法を説明する。本実施形態の傾斜検出方法および分離方法は、それぞれ、上述した傾斜検出装置2および分離装置1を用いて実施することもできるし、上述した傾斜検出装置2および分離装置1以外の装置を用いて実施することもできる。なお、以下で説明する傾斜検出方法および分離方法は一例にすぎず、本発明の傾斜検出方法および分離方法は以下の例に限定されることはない。
【0087】
<傾斜検出方法>
本実施形態の傾斜検出方法は、立ち姿勢で保管されているワークWが、所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位していることを検出する方法である。本実施形態の傾斜検出方法では、たとえば、保管台Ra(
図7および
図8参照)に立ち姿勢で保管されている1または複数のワークWの傾斜を検出する。本実施形態では、ワークW(
図7参照)は円環状に構成されている。本実施形態の傾斜検出方法は、たとえば、立ち姿勢で保管されている1または複数のワークWから分離対象であるワークWを、フィンガーFnを有するハンドリングロボット31を用いて分離する際に用いられる。以下では、本実施形態の傾斜検出方法が、上述の分離の際に用いられる場合について説明する。なお、本発明の傾斜検出方法は、上述の分離の際に用いられる例に限定されるものではない。
【0088】
本実施形態の傾斜検出方法では、まず、
図7および
図8に示されるように、ビームBmを照射する投光部と、投光部から照射されたビームBmの反射光を受光する受光部とを準備する。本実施形態では、具体的には、光電センサ21を準備する。光電センサ21は、上述のように、たとえば、ビームBmを投光する投光部と、ビームBmの反射光を受光する受光部と、受光部の受光結果に基づいて所定の演算を行う図示しない演算部とを備える。投光部は、所定の周波数で繰り返されるパルス状の光であるレーザ光を照射するものであることが好ましい。また、投光部は、ワークWが所望の立ち姿勢にある場合におけるワークWの外周面Wosに向けて第1のビームBm1を照射するとともに、ワークWが所望の立ち姿勢にある場合におけるワークWから外れた位置に向けて第2のビームBm2を照射することが好ましい。また、投光部は、
図12に示されるように、第1の位置P1における外周面Wosに対する法線N上または法線Nに対する角度θが所定の範囲にある直線上に配置されていることが好ましい。
【0089】
なお、1つの光電センサ21が、第1のビームBm1および第2のビームBm2の双方を投光してもよいし、本実施形態のように、2つの光電センサ21が、第1のビームBm1および第2のビームBm2のそれぞれを投光してもよい。本実施形態では、2つの光電センサ21が、上述のロボットハンド34の先端部において、互いに間隔をあけて設けられている(
図8参照)。
【0090】
本実施形態の傾斜検出方法では、つぎに、投光部により、分離対象であるワークWが所望の立ち姿勢にある場合の分離対象のワークWの存在領域内の第1の位置P1に第1のビームBm1を照射する。第1の位置P1は、ワークWの外周面Wos上にあることが好ましい。
【0091】
本実施形態の傾斜検出方法では、つぎに、分離対象であるワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜する側へ第1の位置P1からずれた第2の位置P2に第2のビームBm2を照射する。第1の位置P1および第2の位置P2は、所望の立ち姿勢にあるワークWの高さ方向における中央部の位置または中央部より高い位置である。第1の位置P1および第2の位置P2の間隔S(
図11参照)は、所望の立ち姿勢にあるワークWと、フィンガーFnが分離対象であるワークWを分離するために分離対象であるワークWに接近するときにフィンガーFnとワークWとの間で許容されている間隔S1(
図11参照)に基づいて設定された間隔であることが好ましい。
【0092】
本実施形態の傾斜検出方法では、つぎに、受光部の受光結果に基づいて、分離対象であるワークWが所望の立ち姿勢に対して傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断する。
【0093】
<分離方法>
本実施形態の分離方法は、立ち姿勢で保管されている1または複数のワークから、分離対象であるワークWを分離する方法である。本実施形態の分離方法では、保管棚Raに保管されている1または複数のワークW(
図6A参照)から、分離対象であるワークWを分離する。
【0094】
本実施形態の分離方法では、まず、上述した本実施形態の傾斜検出方法(
図7および
図8参照)により、分離対象であるワークWを傾斜検出対象として、分離対象であるワークWが傾斜した姿勢に変位しているかどうかを判断する(判断ステップ)。
【0095】
つぎに、判断ステップにおいて分離対象であるワークWが傾斜した姿勢に変位していないと判断された場合に、
図9に示されるように、フィンガーFnを有するハンドリングロボット31のフィンガーFnを、分離対象であるワークWに接近させる(近接ステップ)。
【0096】
つぎに、分離対象であるワークWに接近したフィンガーFn(
図6A参照)により分離対象であるワークWを把持する(把持ステップ)。
【0097】
つぎに、分離対象であるワークWを把持したフィンガーFnを移動させることにより、保管されているワークWから分離対象であるワークWを分離する(分離ステップ)。
【0098】
本実施形態では、上記判断ステップにおいて分離対象であるワークWが傾斜した姿勢に変位していると判断された場合、上記接近ステップは、フィンガーFnの接近動作を停止する。
【0099】
上記実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
1 分離装置
2 傾斜検出装置
21 光電センサ
22 判断部
3 分離機構
31 ハンドリングロボット
32 制御部
33 ベース部
34 ロボットアーム
35 ロボットハンド
35a、35b フィンガーフレーム
B 保管台の後方向
Bm ビーム
Bm1 第1のビーム
Bm2 第2のビーム
C ワークの端面と第2のビームの外周との距離
CL1 ワークの中心軸
d ビームのスポット径
Dm ワークの直径
F 保管台の前方向
FB 保管台の前後方向
Fn、Fn1、Fn2 フィンガー
H 水平方向
Hg ワークの下端からの第1の位置および第2の位置の高さ
L 保管台の左方向
LR 保管台の左右方向
P1 第1の位置
P2 第2の位置
P3 近接位置
P4 対向位置
P5 計測位置
R 保管台の右方向
Ra 保管台
Ra1、Ra2 レール
Ra3 背板
Ra4、Ra5 座板
Ra6、Ra7 斜面
S 第1の位置および第2の位置の距離
S1 傾斜許容距離
SL スリッター
SL1 スリッターの駆動部
SL2 スリッターの軸受け
SL3 スリッターのアーバー
V 鉛直方向
W ワーク
Wd ワークの厚さ
We ワークの端面
Wh ワークの貫通孔
Wis ワークの内周面
Wos ワークの外周面