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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】車体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B62D25/06 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021037574
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137874
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】市川 武志
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-126345(JP,A)
【文献】特開2017-140904(JP,A)
【文献】特開2009-143407(JP,A)
【文献】特開2009-61854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0265453(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向に延びるアルミニウム合金製のルーフレインフォースと、平板状のアルミニウム合金製のルーフパネルと、前記車体の前後方向に延びる鋼製の一対のルーフサイドレールと、アルミニウム合金よりも熱膨張係数が小さくヤング率が高い材質からなる変形制限部材と、前記車体のキャビンの床面を構成するフロアパネルとを準備し、
前記一対のルーフサイドレールまたは前記ルーフパネルの前記幅方向の両端部を接続するように前記ルーフレインフォースを固定し、
前記ルーフレインフォースの上に熱硬化性のマスチック接着剤を介して前記ルーフパネルを載置し、
前記変形制限部材によって前記ルーフレインフォースの前記幅方向の中央部を前記車体の前記フロアパネルと接続することによって、前記ルーフレインフォースの前記幅方向の前記中央部の上方への変形を制限した状態で前記車体を加熱工程に供する
ことを含む、車体の製造方法。
【請求項2】
車体の幅方向に延びるアルミニウム合金製のルーフレインフォースと、平板状のアルミニウム合金製のルーフパネルと、前記車体の前後方向に延びる鋼製の一対のルーフサイドレールと、前記ルーフレインフォースの前記幅方向の中央部の上方への変形を制限する重量を有する質量体とを準備し、
前記一対のルーフサイドレールまたは前記ルーフパネルの前記幅方向の両端部を接続するように前記ルーフレインフォースを固定し、
前記ルーフレインフォースの上に熱硬化性のマスチック接着剤を介して前記ルーフパネルを載置し、
前記ルーフレインフォースの前記幅方向の前記中央部に前記質量体を吊り下げることによって、前記ルーフレインフォースの前記幅方向の前記中央部の上方への変形を制限した状態で前記車体を加熱工程に供する
ことを含む、車体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体構造では、車両前後方向に延びる一対のルーフサイドレールを、車幅方向に延びるルーフレインフォースで接続している。ルーフレインフォースの上には平板状のルーフパネルが載置され、ルーフレインフォースおよびルーフパネルはマスチック接着剤によって接着されている。また、ルーフレインフォースは、ルーフパネルの車幅方向の両端部に接続される場合もある。
【0003】
ルーフサイドレールが鋼製であるとともにルーフレインフォースおよびルーフパネルがアルミニウム合金製である場合がある。鋼とアルミニウム合金の熱膨張係数は異なるため、車体が塗装乾燥工程などで加熱を受けた際には熱ひずみが生じるおそれがある。即ち、相対的に熱膨張し易いルーフパネルおよびルーフレインフォースが大きく膨張しようとするのに対し、相対的に熱膨張し難いルーフサイドレールがルーフパネルとルーフレインフォースの車幅方向の変形を拘束する。この結果、ルーフパネルおよびルーフレインフォースは車両上方へ膨張するが、ルーフレインフォースはルーフパネルに比べて拘束箇所が少ないために膨張し易い。従って、ルーフパネルとルーフレインフォースとの隙間が小さくなり、ルーフパネルとルーフレインフォースとの間に位置するマスチック接着剤が潰れることとなる。この状態が維持されると、マスチック接着剤が潰れた状態で熱硬化し、冷却後もルーフパネルとルーフレインフォースとの隙間が小さく維持される。従って、ルーフレインフォースが元の形状に戻ると、ルーフパネルはルーフレインフォースに引っ張られ、マスチックとの接合部が凹んだように変形する。このような変形は車体の外観を損なうため、抑制される必要がある。
【0004】
特許文献1では、ルーフパネルの変形低減を図る車体の製造方法が開示されている。当該車体の製造方法では、塗装乾燥工程を経る前にルーフパネルとルーフレインフォースとを接着する接着剤(熱硬化性シーラ)を加熱して予め硬化させている。これにより、塗装乾燥工程で車体全体が加熱されても、既に硬化した接着剤によってルーフパネルとルーフレインフォースは強固に接着されているため、ルーフパネルの変形低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-61854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の車体の製造方法では、車体全体が高温環境下に置かれる塗装乾燥工程とは別に接着剤を加熱するための加熱工程を実行するため、部分的な加熱を行うための追加の設備が必要である。さらに、工程数も増加し、タクトタイムも延びる。従って、特許文献1の車体の製造方法は、効率的でなく、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、車体の製造方法において、ルーフパネルの変形を効率的に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
車体の幅方向に延びるアルミニウム合金製のルーフレインフォースと、平板状のアルミニウム合金製のルーフパネルと、前記車体の前後方向に延びる鋼製の一対のルーフサイドレールとを準備し、
前記一対のルーフサイドレールまたは前記ルーフパネルの前記幅方向の両端部を接続するように前記ルーフレインフォースを固定し、
前記ルーフレインフォースの上に熱硬化性のマスチック接着剤を介して前記ルーフパネルを載置し、
前記ルーフレインフォースの前記幅方向の中央部の上方への変形を制限した状態で前記車体を加熱工程に供する
ことを含む、車体の製造方法を提供する。
【0009】
上記方法によれば、ルーフレインフォースの幅方向の中央部の上方への変形を制限した状態で車体を加熱工程に供するため、ルーフレインフォースとルーフパネルとの隙間が著しく小さくなることを抑制できる。従って、マスチック接着剤が潰れて硬化することを抑制でき、即ちルーフパネルの一部が凹んだように変形することを抑制できる。また、上記において、「車体を加熱工程に供する」とは、ルーフレインフォースと、ルーフパネルと、一対のルーフサイドレールとに対して部分的でなく全体的に加熱を行うことを意図する。従って、上記加熱工程は、部分的な加熱でなく車体全体を加熱することができるため、例えば塗装乾燥工程に対応してもよい。この場合、追加的な設備を要することもなく、工程数を増やすこともないため、効率的である。
【0010】
前記車体の製造方法は、
アルミニウム合金よりも熱膨張係数が小さくヤング率が高い材質からなる変形制限部材をさらに準備し、
前記変形制限部材によって前記ルーフレインフォースの前記幅方向の前記中央部を前記車体の他部分と接続する
ことをさらに含んでもよい。
【0011】
この方法によれば、変形制限部材によってルーフレインフォースの幅方向の中央部の上方への変形を具体的に制限できる。変形制限部材は、アルミニウム合金よりも、熱膨張係数が小さくヤング率が高い材質からなるため、塗装乾燥工程などの高温環境下においてもルーフパネルほど変形しない。従って、ルーフパネルとルーフレインフォースとの隙間をより確実に適正な大きさに保つことができる。
【0012】
前記車体の製造方法は、
前記ルーフレインフォースの前記幅方向の前記中央部の上方への変形を制限する重量を有する質量体をさらに準備し、
前記ルーフレインフォースの前記幅方向の前記中央部に前記質量体を吊り下げる
ことをさらに含んでもよい。
【0013】
この方法によれば、質量体によってルーフレインフォースの車幅方向の中央部の上方への変形を具体的に制限できる。従って、ルーフパネルとルーフレインフォースとの隙間をより確実に適正な大きさに保つことができる。特に、質量体の吊り下げは、他部材との接続を要することなく実現できるため、簡便である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車体の製造方法において、ルーフパネルの変形を効率的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車体の模式的な斜視図。
図2】車体からルーフパネルを取り外した状態の模式的な斜視図。
図3】ルーフパネルの模式的な平面図。
図4】本発明の第1実施形態に係る車体の製造方法の第1工程を示す車体前後方向に垂直な断面図。
図5】本発明の第1実施形態に係る車体の製造方法の第2工程を示す車体前後方向に垂直な断面図。
図6】本発明の第1実施形態に係る車体の製造方法の第3工程を示す車体前後方向に垂直な断面図。
図7】比較例の車体の製造方法の第1工程を示す車体前後方向に垂直な断面図。
図8】比較例の車体の製造方法の第2工程を示す車体前後方向に垂直な断面図。
図9】比較例の車体の製造方法の第3工程を示す車体前後方向に垂直な断面図。
図10】本発明の第2実施形態に係る車体の製造方法の第1工程を示す車体前後方向に垂直な断面図。
図11】本発明の第2実施形態に係る車体の製造方法の第2工程を示す車体前後方向に垂直な断面図。
図12】本発明の第2実施形態に係る車体の製造方法の第3工程を示す車体前後方向に垂直な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1および図2を参照して、アルミニウム合金製のルーフパネル34が、アルミニウム合金製のルーフレインフォース35を介して鋼製の一対のルーフサイドレール36に接合された構造を有する車体1の製造方法について説明する。
【0018】
図1,2では、車体1に対し、前後方向を符号Xで示し、幅方向を符号Yで示し、上下方向を符号Zで示す。これは以降の図でも同様である。本実施形態では、車体1として一般的な乗用自動車を例に挙げて説明するが、車体1の種類や形状は特に限定されない。
【0019】
車体1は、前部10と、後部20と、中間部30とを含んでいる。
【0020】
前部10は、車体1の前方に構成されている部分であり、フロントフレーム11とフロントバンパ12とを含んでいる。フロントフレーム11は、前部10の骨格を構成している。フロントフレーム11の中央には図示しないエンジン等を搭載するためのエンジン収容部13が形成されている。フロントフレーム11の幅方向の両側には図示しない前輪を収容するための前輪収容部14が形成されている。フロントフレーム11の前方には幅方向に延びるようにフロントバンパ12が配置されている。
【0021】
後部20は、車体1の後方に構成されている部分であり、リアフレーム21を含んでいる。リアフレーム21は、後部20の骨格を構成している。リアフレーム21の後方中央には、トランク部22が形成されている。リアフレーム21の幅方向の両側には図示しない後輪を収容するための後輪収容部23が形成されている。
【0022】
中間部30は、車体1の中央に構成されている部分であり、センターフレーム31と、フロアパネル32とを含んでいる。センターフレーム31は、中間部30の骨格を構成している。センターフレーム31の中央には、ユーザが乗車するためのキャビン33が形成されている。フロアパネル32は、キャビン33の床面を構成している。
【0023】
センターフレーム31は、上下方向に延びる、一対のフロントピラー39、一対のセンターピラー40、および一対のリアピラー41を有している。また、センターフレーム31は、前後方向に延びる一対のルーフサイドレール36と、幅方向に延びるルーフフロントレール37およびルーフリアレール38とを有している。車体1を上方から見ると、一対のルーフサイドレール36、ルーフフロントレール37、およびルーフリアレール38は互いに接続されており、矩形状になっている。また、車体1を側方から見ると、一対のフロントピラー39、一対のセンターピラー40、および一対のリアピラー41は、一対のルーフサイドレール36と、ルーフフロントレール37と、ルーフリアレール38とを下方から支持している。
【0024】
一対のルーフサイドレール36のそれぞれは、一対のフロントピラー39、一対のセンターピラー40、および一対のリアピラー41のそれぞれの上端部間にわたして固定されている。ルーフフロントレール37は、一対のフロントピラー39の上端部間にわたして、車幅方向に沿って配置及び固定されている。ルーフリアレール38は、一対のリアピラー143の上端部間にわたして、幅方向に沿って固定されている。
【0025】
図3を合わせて参照して、一対のルーフサイドレール36のそれぞれを接続するように、幅方向に延びるルーフレインフォース35が固定されている。ルーフレインフォース35の上面の中央部には熱硬化性のマスチック接着剤42が塗布されており、マスチック接着剤42によってルーフパネル34がルーフレインフォース35に接着されている。ルーフレインフォース35は、ルーフパネル34と同じアルミニウム合金製である。
【0026】
ルーフパネル34は、車体1の上部を構成する外装パネルである。ルーフパネル34は、以下の通り、本実施形態の車体1の製造方法によって、変形を効率的に抑制されている。
【0027】
図4を参照して、本実施形態の車体1の製造方法では、まず、一対のルーフサイドレール36を接続するようにルーフレインフォース35を固定する。そして、ルーフレインフォース35の上に熱硬化性のマスチック接着剤42を塗布する。このとき、マスチック接着剤42は、未だ加熱されていない。そして、マスチック接着剤42を介してルーフパネル34をルーフレインフォース35の上に載置する。ルーフパネル34は、ルーフレインフォース35と同様に一対のルーフサイドレール36に固定される。従って、ルーフパネル34およびルーフレインフォース35は、幅方向の変形が拘束される。
【0028】
マスチック接着剤42は、未加熱状態では、接着力を有しておらず柔軟性を有している。マスチック接着剤42は、未加熱状態において、形状を維持する程度の粘性を有し、図示の例では概略断面円形である。
【0029】
本実施形態では、後述する塗装乾燥工程などの加熱工程を経る前に、鋼線(変形制限部材)43によってルーフレインフォース35の幅方向の中央部35aをフロアパネル32と接続する。鋼は、アルミニウム合金よりも熱膨張係数が小さくヤング率が高い材質である。従って、鋼線43は、ルーフレインフォース35やルーフパネル34に比べて熱影響を受け難い。物性値を例示すると、鋼の熱膨張係数は11×10-6/℃程度であり、ヤング率は206GPa程度である。アルミニウム合金の熱膨張係数は24×10-6/℃程度であり、ヤング率は70GPa程度である。従って、鋼線43によって、ルーフレインフォース35の幅方向の中央部35aの上方への変形が制限される。
【0030】
図5を参照して、ルーフパネル34およびルーフレインフォース35は、一対のルーフサイドレール36によって幅方向に拘束されているため、車体1を塗装乾燥工程(加熱工程の一例)に供すると上方へと弓なりに熱膨張する。なお、構造上、下方には熱膨張しない。このとき、鋼線43によって、ルーフパネル34とルーフレインフォース35との隙間Dは概略一定に保たれる。従って、マスチック接着剤42は、概略断面円形を維持した状態で硬化する。
【0031】
図6を参照して、塗装乾燥工程後に車体1が冷却されると、ルーフパネル34およびルーフレインフォース35の熱膨張が収まる。このとき、ルーフパネル34およびルーフレインフォース35の隙間Dは、硬化したマスチック接着剤42によって一定に保たれる。鋼線43の張力を調整することによって、隙間Dの大きさは調整可能である。好ましくは、隙間Dの大きさを1~5mmとするように鋼線43の張力を調整する。
【0032】
また、本実施形態とは異なるが、理解を容易にするための比較例として鋼線43を使用しない場合について図7~9を参照して説明する。
【0033】
図7を参照して、比較例においても図4と同様に、一対のルーフサイドレール36と、ルーフレインフォース35と、ルーフパネル34と、マスチック接着剤42とを配置する。図7の状態では、マスチック接着剤42は、未加熱状態であり、図示の例では概略断面円形である。
【0034】
図8を参照して、図6と同様に、ルーフパネル34およびルーフレインフォース35は、車体1を塗装乾燥工程に供すると上方へと弓なりに熱膨張する。このとき、ルーフパネル34はルーフフロントレール37(図3参照)とルーフリアレール38(図3参照)と一対のルーフサイドレール36とに対して固定されている一方、ルーフレインフォース35は一対のルーフサイドレール36飲みに対して固定されている。従って、ルーフレインフォース35はルーフパネル34に比べて固定箇所が少ないために膨張し易く、ルーフパネル34とルーフレインフォース35との隙間Dは小さくなる。結果として、マスチック接着剤42は、上下方向に潰れた状態で加熱を受けて硬化する。
【0035】
図9を参照して、塗装乾燥工程後に車体1が冷却されると、ルーフパネル34およびルーフレインフォース35の熱膨張が収まる。このとき、ルーフパネル34およびルーフレインフォース35の隙間Dは、上下方向に潰れて硬化したマスチック接着剤42によって当初(図6参照)よりも小さくされている。従って、ルーフパネル34は、マスチック接着剤42を介してルーフレインフォース35によって下方に引っ張られ、幅方向の中央部34aが凹んだように変形する。
【0036】
本実施形態の車体1の製造方法によれば、図9に示すようなルーフパネル34の変形を効率的に抑制することができる。具体的に以下の通りである。
【0037】
ルーフレインフォース35の幅方向の中央部35aの上方への変形を制限した状態で車体1を塗装乾燥工程に供するため、ルーフレインフォース35とルーフパネル34との隙間Dが著しく小さくなることを抑制できる。従って、マスチック接着剤42が潰れて硬化することを抑制でき、即ちルーフパネル34の一部(例えば中央部34a)が凹んだように変形することを抑制できる。また、塗装乾燥工程は、既存の車体の製造工程であるため、追加的な設備を要することもなく、工程数を増やすこともないため、効率的である。
【0038】
また、鋼線43によってルーフレインフォース35の幅方向の中央部35aの上方への変形を具体的に制限できる。鋼線43は、アルミニウム合金よりも、熱膨張係数が小さくヤング率が高い材質からなるため、塗装乾燥工程などの高温環境下においてもルーフパネル34ほど変形しない。従って、ルーフパネル34とルーフレインフォース35との隙間Dをより確実に適正な大きさに保つことができる。なお、本実施形態では、変形制限部材として鋼線43を例示して説明したが、鋼線43に限らず、同様の機能を発揮する部材を採用し得る。
【0039】
(第2実施形態)
図10~12に示す本実施形態の車体1の製造方法は、鋼線43(図4~6参照)の代わりに質量体44を使用する。これに関する以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0040】
図10~12は、第1実施形態の図4~6に対応している。
【0041】
本実施形態の車体1の製造方法では、図4と同様に、一対のルーフサイドレール36と、ルーフレインフォース35と、ルーフパネル34と、マスチック接着剤42とを配置する。図10の状態では、マスチック接着剤42は、未加熱状態であり、図示の例では概略断面円形である。
【0042】
本実施形態では、後述する塗装乾燥工程などの加熱工程を経る前に、質量体44をルーフレインフォース35の幅方向の中央部35aに吊り下げる。質量体44は、ルーフレインフォース35の幅方向の中央部35aの上方への変形を制限する重量を有している。従って、質量体44によって、ルーフレインフォース35の幅方向の中央部35aの上方への変形が制限される。
【0043】
図11を参照して、車体1を塗装乾燥工程に供すると上方へと弓なりに熱膨張する。このとき、質量体44によって、ルーフパネル34とルーフレインフォース35との隙間Dは概略一定に保たれる。従って、マスチック接着剤42は、概略断面円形を維持した状態で硬化する。
【0044】
図12を参照して、塗装乾燥工程後に車体1が冷却されると、ルーフパネル34およびルーフレインフォース35の熱膨張が収まる。このとき、ルーフパネル34およびルーフレインフォース35の隙間Dは、硬化したマスチック接着剤42によって一定に保たれる。質量体44の重量を調整することによって、隙間Dの大きさは調整可能である。好ましくは、隙間Dの大きさを1~5mmとするように質量体44の重量を調整する。
【0045】
本実施形態の車体1の製造方法によれば、質量体44によってルーフレインフォース35の車幅方向の中央部35aの上方への変形を具体的に制限できる。従って、ルーフパネル34とルーフレインフォース35との隙間をより確実に適正な大きさに保つことができる。特に、質量体44の吊り下げは、他部材との接続を要することなく実現できるため、簡便である。
【0046】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、第2実施形態の質量体44をルーフレインフォース35から吊り下げるとともにフロアパネル32に載置してもよい。また、ルーフレインフォース35は、一対のルーフサイドレール36ではなく、ルーフパネル34の幅方向の両端部34b(図3参照)に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 車体
10 前部
11 フロントフレーム
12 フロントバンパ
13 エンジン収容部
14 前輪収容部
20 後部
21 リアフレーム
22 トランク部
23 後輪収容部
30 中間部
31 センターフレーム
32 フロアパネル
33 キャビン
34 ルーフパネル
34a 中央部
34b 両端部
35 ルーフレインフォース
35a 中央部
36 ルーフサイドレール
37 ルーフフロントレール
38 ルーフリアレール
39 フロントピラー
40 センターピラー
41 リアピラー
42 マスチック接着剤
43 鋼線(変形制限部材)
44 質量体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12