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特許7500484無人搬送車、無人搬送システム及び搬送プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】無人搬送車、無人搬送システム及び搬送プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20240610BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B60P3/00 Z
B61B13/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021047512
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146514
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園浦 隆史
(72)【発明者】
【氏名】山本 大介
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀樹
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119343(JP,A)
【文献】特開平05-112237(JP,A)
【文献】特開2020-077295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を積載可能な荷板と、前記荷板の少なくとも四隅を支える複数の支持脚と、を備える搬送対象物を搬送可能であり
床面を自律走行可能であるとともに前記搬送対象物に結合するためのドッキング部を有した移動体と、
前記搬送対象物における前記複数の支持脚のうち、前記移動体がドッキングする側に位置する一対の支持脚を進入側支持脚とし、前記移動体の進行方向においてドッキングする側とは反対側に位置する一対の支持脚を奥行側支持脚としたとき、前記進入側支持脚を検出可能な検出センサと、
前記移動体および第1の前記検出センサに接続され、前記移動体を制御する制御装置と、
を備え、
かつ前記移動体、前記搬送対象物の前記荷板の下面と、前記複数の支持脚と、前記床面とに囲まれた底部空間内へ進入可能な高さを有する無人搬送車によって、前記搬送対象物は搬送され、
前記制御装置によって、前記第1の検出センサによって前記搬送対象物の前記進入側支持脚を探索するステップと、
前記第1の検出センサによる探索結果に基づいて前記搬送対象物における一対の前記進入側支持脚の位置を検出し、前記搬送対象物への進入位置の目標となる進入目標基準点と、前記搬送対象物に対するドッキング位置の目標となるドッキング目標位置と、を算出するステップと、
前記移動体を前記進入目標基準点から前記ドッキング目標位置へと段階的に移動させるステップと、
前記搬送対象物に対して前記無人搬送車をドッキングさせるステップと、
が実行される、
無人搬送システム。
【請求項2】
前記移動体は、前記搬送対象物の前記進入側支持脚及び奥行側支持脚を検出可能な第2の前記検出センサを備え、
前記第2の検出センサは、前記移動体の進行方向に交差する幅方向一方側に設けられている、
請求項1に記載の無人搬送システム
【請求項3】
前記検出センサは、各々の検出面の位置が前記床面より高く、かつ、前記搬送対象物の前記荷板の前記下面より低い位置となる高さに設置されている、
請求項1又は2記載の無人搬送システム
【請求項4】
前記移動体は、前記荷板を検出可能な第3の前記検出センサを備え、
前記第3の検出センサの検出面の位置は、前記荷板の前記下面よりも高く、且つ前記荷板の上面よりも低い位置となる高さに設置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の無人搬送システム
【請求項5】
前記検出センサとして、
空間平面における距離をレーザ走査により測定する側域センサを用いる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の無人搬送システム
【請求項6】
前記移動体は、メカナムホイールを用いた全方向移動体である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の無人搬送システム
【請求項7】
前記ドッキング目標位置を算出する際、
前記第1の検出センサによって検出した複数の物体検出地点群データの中から、前記移動体に最も近い一対の点群クラスタを前記一対の進入側支持脚とみなし、前記一対の進入側支持脚の代表位置どうしを結ぶ第1直線の中点を前記進入目標基準点として算出するとともに、前記進入目標基準点において前記第1直線に直交する第2直線上の前記底部空間内に、前記ドッキング目標位置を定める、
請求項1から6のいずれか1項に記載の無人搬送システム。
【請求項8】
前記第1の検出センサによる一次探索結果に基づいて算出した前記進入目標基準点と、前記無人搬送車の現在地との位置関係から、前記無人搬送車と前記進入目標基準点との間に移動経由点が必要かどうかを判定するステップと、
前記移動経由点から前記進入目標基準点を経て前記ドッキング目標位置へと段階的に移動させるステップを含む、
請求項1又は7に記載の無人搬送システム。
【請求項9】
前記第1の検出センサによる一次探索結果に基づいて第1の進入目標基準点および第1のドッキング目標位置を算出するステップと、
第2の検出センサによって、前記無人搬送車の進行方向に交差する幅方向一方側における前記搬送対象物の前記進入側支持脚及び奥行側支持脚を探索するステップと、
前記第2の検出センサによる探索結果に基づいて前記奥行側支持脚の位置を判定し、第1の進入目標基準点および第2のドッキング目標位置を算出するステップと、
前記第2のドッキング目標位置に基づいて前記移動体の姿勢を補正するステップと、
を含む、
請求項1又は7に記載の無人搬送システム。
【請求項10】
前記第1の検出センサによる一次探索結果に基づいて第1の進入目標基準点および第1のドッキング目標位置を算出するステップと、
前記第1の検出センサによって前記搬送対象物の奥行側支持脚を探索するステップと、
前記第1の検出センサによる二次探索結果に基づいて第2のドッキング目標位置を算出するステップと、
前記第2のドッキング目標位置に基づいて前記移動体の姿勢を補正するステップを含む、
請求項1又は7に記載の無人搬送システム。
【請求項11】
前記第1の検出センサによる一次探索結果に基づいて前記第1の進入目標基準点および前記第1のドッキング目標位置を算出するステップと、
第3の検出センサによって前記搬送対象物の荷板を探索するステップと、
前記第3の検出センサによる二次探索結果に基づい第2のドッキング目標位置を算出するステップと、
前記第2のドッキング目標位置に基づいて前記移動体の姿勢を補正するステップを含む、
請求項1又は7に記載の無人搬送システム。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか1項に記載の無人搬送車による搬送対象物の搬送プログラムであって、
コンピュータシステムに、
第1の検出センサによって前記搬送対象物の進入側支持脚を探索し、
前記第1の検出センサによる探索結果に基づいて前記搬送対象物における一対の進入側支持脚の位置を検出し、前記搬送対象物への進入位置の目標となる進入目標基準点と、前記搬送対象物に対するドッキング位置の目標となるドッキング目標位置と、を算出し、
移動体を前記進入目標基準点から前記ドッキング目標位置へと段階的に移動させ、
前記搬送対象物に対して前記無人搬送車をドッキングさせる、処理を実行させる、
搬送プログラム。
【請求項13】
荷物を積載可能な荷板と、前記荷板の少なくとも四隅を支える複数の支持脚と、を備える搬送対象物を搬送可能であり、
床面を自律走行可能であるとともに前記搬送対象物に結合するためのドッキング部を有した移動体と、
前記搬送対象物における前記複数の支持脚のうち、前記移動体がドッキングする側に位置する一対の支持脚を進入側支持脚とし、前記移動体の進行方向においてドッキングする側とは反対側に位置する一対の支持脚を奥行側支持脚としたとき、前記進入側支持脚を検出可能な検出センサと、
を備え、
前記移動体は、前記搬送対象物の前記荷板の下面と、前記複数の支持脚と、前記床面とに囲まれた底部空間内へ進入可能な高さを有する無人搬送車を制御する制御装置であって、
第1の前記検出センサによって前記搬送対象物の進入側支持脚を探索し、
前記第1の検出センサによる探索結果に基づいて前記搬送対象物における一対の進入側支持脚の位置を検出し、前記搬送対象物への進入位置の目標となる進入目標基準点と、前記搬送対象物に対するドッキング位置の目標となるドッキング目標位置と、を算出し、
前記移動体を前記進入目標基準点から前記ドッキング目標位置へと段階的に移動させ、
前記搬送対象物に対して前記無人搬送車をドッキングさせる、
制御装置。
【請求項14】
荷物を積載可能な荷板と、前記荷板の少なくとも四隅を支える複数の支持脚と、を備える搬送対象物を搬送可能であり、
床面を自律走行可能であるとともに前記搬送対象物に結合するためのドッキング部を有した移動体と、
前記搬送対象物における前記複数の支持脚のうち、前記移動体がドッキングする側に位置する一対の支持脚を進入側支持脚とし、前記移動体の進行方向においてドッキングする側とは反対側に位置する一対の支持脚を奥行側支持脚としたとき、前記進入側支持脚を検出可能な検出センサと、
前記移動体および第1の前記検出センサに接続される制御装置と、
を備え、
前記移動体は、前記搬送対象物の前記荷板の下面と、前記複数の支持脚と、前記床面とに囲まれた底部空間内へ進入可能な高さを有する無人搬送車の移動制御方法であって、
前記第1の検出センサによって前記搬送対象物の前記進入側支持脚を探索するステップと、
前記第1の検出センサによる探索結果に基づいて前記搬送対象物における一対の前記進入側支持脚の位置を検出し、前記搬送対象物への進入位置の目標となる進入目標基準点と、前記搬送対象物に対するドッキング位置の目標となるドッキング目標位置と、を算出するステップと、
前記移動体を前記進入目標基準点から前記ドッキング目標位置へと段階的に移動させるステップと、
前記搬送対象物に対して前記無人搬送車をドッキングさせるステップと、
を含む、
無人搬送車の移動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無人搬送車、無人搬送システム及び搬送プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物流分野では人手不足やコスト削減のため、省人化の要望がある。物流倉庫や配送センターなどでのかご搬送作業にも自動化の期待が大きく、これまで工場の生産ライン等で用いられてきたAGVなどの無人搬送車を用いてカゴを持ち上げあるいは引っかけて運搬するなどして省人化が図られつつある。近年では、自己位置推定機能を有したガイドレスの無人搬送車も現れ、移動自由度が大きく向上している。ここでは、搬送機能を有した移動台車全般を対象とし、これを無人搬送車と呼称する。
【0003】
前述のように無人搬送車が普及しつつあるが、その運搬方法は、一般的には無人搬送車の形状に合わせた専用のかごを用意したり、RFタグや2次元バーコードなどのマーカを床に埋め込んだりするなど、無人搬送車以外の環境側に手を加えることが多く、市販の標準かごをそのまま運搬させることは困難であった。
その一つの理由として、ドッキングの際の無人搬送車による汎用かご台車の検知と動作制御の一般化が困難なことが挙げられる。
【0004】
近年においては、ドッキング対象物である車いすのキャスタ部とのドッキングには「無線通信装置から近接データ及びナビゲーションデータ」を利用して無人搬送車を誘導する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
例えば、Amazonroboticskiva(登録商標)の搬送ロボットは、ロボットの車高にあわせた専用の搬送棚を用意し、その搬送棚を予め所定の位置に正確に設置したうえで、床面には埋め込んだ位置認識用のタグをロボットが確認しながら移動することで、搬送棚への正確なドッキングを実現している。
【0006】
一般的に、物流業界では、ロールボックスパレット(RBP)と呼ばれる汎用的なかご台車が広く普及しており、かご台車や環境設備に手を加えることなく、搬送車が自律的にかご台車を検知して搬送可能な自動搬送車へのニーズが高い。
しかしながら、前述したような既存のロボットシステムでは、搬送対象や移動環境に細工を施す必要があり、搬送車を用意するだけで、かご台車の検知やドッキングを実現することは困難である。
【0007】
そこで、カメラ画像とディープラーニングを用いてかご台車の検知やドッキングを行う技術が開示されているが(例えば、特許文献2)、画像処理によるピクセル単位での搬送対象物の計測は計測精度が低く、搬送に有利な位置及び姿勢でのドッキングが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-35077号公報
【文献】特開2019-131392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、かご台車に対して搬送に有利な位置及び姿勢でドッキング可能な無人搬送車、無人搬送システム及び搬送プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の無人搬送車は、床面を自律走行可能であるとともに前記搬送対象物に結合するためのドッキング部を有した移動体と、前記搬送対象物の前記支持脚を検出可能な第1の検出センサと、を持つ。前記移動体は、前記搬送対象物の前記荷板の下面と、前記複数の支持脚と、前記床面とに囲まれた底部空間内へ進入可能な高さを有する。
【0011】
実施形態の無人搬送システムは、本発明に係る上記無人搬送車による搬送対象物の無人搬送システムであって、第1の検出センサによって前記搬送対象物の進入側支持脚を探索するステップと、前記第1の検出センサによる探索結果に基づいて前記搬送対象物における一対の進入側支持脚の位置を検出し、前記搬送対象物への進入位置の目標となる進入目標基準点と、前記搬送対象物に対するドッキング位置の目標となるドッキング目標位置と、を算出するステップと、前記移動体を前記進入目標基準点から前記ドッキング目標位置へと段階的に移動させるステップと、前記搬送対象物に対して前記無人搬送車をドッキングさせるステップと、を含む。
【0012】
実施形態の搬送プログラムは、本発明に係る上記無人搬送車による搬送対象物の搬送プログラムであって、コンピュータシステムに、第1の検出センサによって前記搬送対象物の進入側支持脚を探索し、前記第1の検出センサによる探索結果に基づいて前記搬送対象物における一対の進入側支持脚の位置を検出し、前記搬送対象物への進入位置の目標となる進入目標基準点と、前記搬送対象物に対するドッキング位置の目標となるドッキング目標位置と、を算出し、移動体を前記進入目標基準点から前記ドッキング目標位置へと段階的に移動させ、前記搬送対象物に対して前記無人搬送車をドッキングさせる、処理を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1の実施形態の無人搬送車の使用例を示す斜視図。
図2図2は、第1の実施形態の無人搬送車とかご台車との大きさを示す平面図。
図3図3は、第1の実施形態の無人搬送車とかご台車との大きさを示す側面図
図4図4は、第1の実施形態の無人搬送車における制御装置の制御フローチャートを示す図。
図5図5は、第1の実施形態の無人搬送車による物体検索範囲を示す平面図。
図6図6は、物体の検出位置を可視化した物体検出マップの一例を示す図。
図7図7は、かご台車のキャスタ検出位置に基づいた無人搬送車の動作例を示す平面図。
図8図8は、無人搬送車の他の動作例の制御フローチャートを示す図。
図9図9は、無人搬送車の他の動作例を説明するための図。
図10図10は、進入側キャスタのタイプ(旋回自在式)に応じて設定した第1の進入目標基準点(M’)及び第1のドッキング目標位置(G’)と、理想とする進入目標基準点(M)及びドッキング目標位置(G)との位置関係を示す図。
図11図11は、進入側キャスタのタイプ(旋回軸固定式)に応じて設定した第1の進入目標基準点(M’)及び第1のドッキング目標位置(G’)と、理想とする進入目標基準点(M)及びドッキング目標位置(G)との位置関係を示す図。
図12図12は、第2実施形態の無人搬送車の構成とその動作例を示す図。
図13図13は、第2実施形態の無人搬送車230の動作例の制御フローチャートを示す図。
図14図14は、第3の実施形態の無人搬送車を用いる場合の解決すべき動作例を示す平面図。
図15図15は、第3の実施形態の無人搬送車の好適な動作例を示す平面図。
図16図16は、第3の実施形態の無人搬送車における制御装置の制御フローチャートを示す図。
図17図17は、第4の実施形態の無人搬送車の構成と動作を説明するための斜視図。
図18図18は、第4の実施形態の無人搬送車の構成と動作を説明するための平面図。
図19図19は、第4実施形態の無人搬送車における制御装置の制御フローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態の無人搬送車、無人搬送システム及び搬送プログラムを、図面を参照して説明する。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
なお、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0015】
本願において、直交座標系のX方向、Y方向およびZ方向が以下のように定義される。
Z方向は鉛直方向であって、+Z方向は上方向である。X方向は水平方向であって、無人搬送車の前後方向であり、+X方向は無人搬送車の前方向である。Y方向は水平方向であって、X方向に直交する方向であり、無人搬送車の左右方向(幅方向)である。
【0016】
なお、無人搬送車の移動方向は、少なくともX方向の移動、および旋回動作が可能である。これに限られず、無人搬送車の移動方向は、Y方向への移動やその合成方向など、全方位への移動が可能であってもよい。
【0017】
本明細書において無人搬送車は、かご台車を他の場所へ移動させる搬送車であり、無人搬送車のうち、かご台車を搬送(牽引)する方向を「前方」とし、ドッキングするかご台車に対向する方向を「後方」とする。また、無人搬送車をかご台車へ向かって-X方向(「後方」)へ移動させる動作を「かご台車に対する進入動作」とし、+X方向(「前方」)へ移動させる動作を「かご台車を搬送(牽引)する動作」とする。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の無人搬送車200の使用例を示す斜視図である。図2は、第1の実施形態の無人搬送車とかご台車との大きさを示す平面図である。図3は、第1の実施形態の無人搬送車とかご台車との大きさを示す側面図である。
【0019】
本実施形態の無人搬送車200は、例えば、オペレータによる操縦が不要であり、床面に描かれたラインなども不要なラインレスタイプの自律走行可能な搬送車である。無人搬送車200は、例えば、低床型の搬送車であり、かご台車100の下方に潜り込んでかご台車100に結合(ドッキング)され、かご台車100を別の場所へと搬送する。
【0020】
ただし、本発明における無人搬送車200は、上記例に限定されず、別のタイプの搬送車でもよい。例えば、無人搬送車200は、ドッキング動作以外の自律移動部分が、オペレータによって操縦される搬送車であってもよい。
【0021】
まず、無人搬送車200の搬送対象物であるかご台車(搬送対象物)100の構成について記載する。
図1に示すかご台車100の構成は一例である。
かご台車100は、荷物を積載可能な荷板101と、荷板101の四方の辺から垂直に立ち上がる枠部材102と、荷板101の下面101b側の四隅に設けられた4つのキャスタ(支持脚)103と、を備えている。
【0022】
4つのキャスタ103は、いずれも旋回自在式のキャスタであって、かご台車100を全方向へ移動可能とする。図2において、各キャスタ103の旋回範囲を一点鎖線の丸で示す。
【0023】
なお、4つのキャスタ103のうち少なくとも2つは、旋回自在及び旋回軸固定を適宜切り換え可能なタイプであってもよい。また、4つ全てのキャスタ103が旋回軸固定式キャスタであってもよい。
【0024】
図1及び図3に示すように、かご台車100の下部には、床面Fと、4つのキャスタ103と、荷板101の下面101bによって囲まれた底部空間Kが存在する。この底部空間K内に無人搬送車200が進入する。
【0025】
次に、第1の実施形態における無人搬送車200の構成について詳述する。
無人搬送車200は、運搬車体(移動体)201と、複数の車輪202と、各車輪202をそれぞれ駆動する複数の車輪駆動モータ(不図示)と、第1の検出センサ(検出センサ)210Aと、制御装置220と、を備える。
【0026】
本実施形態では、制御装置220は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録された、本発明に係る搬送プログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、制御装置220の機能が実現される。搬送プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0027】
運搬車体201は、平面視矩形状の第1部位201Aと、第1部位201Aの長さ方向一方側から上方へ延びる第2部位201Bと、を有する。第1部位201Aは、かご台車100の下方へ潜り込むことが可能な部位である。第1部位201Aの内部には、車輪駆動モータ、センサ、バッテリ、制御装置(いずれも不図示)などが搭載されている。
なお、本実施形態における運搬車体201は、第1部位201Aのみで構成されていてもよい。
【0028】
運搬車体201は、かご台車100にドッキングするためのドッキング部203を有する。ドッキング部203は、第1部位201A内に設置された昇降リフタ(不図示)と、昇降リフタとともに上下移動可能な天板204と、を備える。無人搬送車200は、運搬車体201のうち少なくとも第1部位201Aをかご台車100の下方へ潜り込ませた状態で昇降リフタを上昇させ、天板204をかご台車100の荷板101の下面101bに接触させることによってかご台車にドッキングされる。
【0029】
車輪202は、平面視において運搬車体201の内部において幅方向(短手方向:Y方向)両側に2つずつ取り付けられている。片側に設けられた2つの車輪202は、第1部位201Aの長さ方向(X方向)に互いに間隔をあけて配置されているとともに、もう片側に設けられた他の2つの車輪202と運搬車体201の長さ方向における取付位置が一致しており、運搬車体201の幅方向で両側の車輪どうしが互いに対向する。これら4つの車輪202は、幅方向に平行な車軸を有する。
【0030】
これら4つの車輪202は、任意の方向へ移動可能なメカナムホイールとされている。メカナムホイールは、車輪202の円周上に複数の樽を有する。樽は、車輪202の車軸に対して45度傾いた回転軸の周りを自由回転する。メカナムホイール構造の各車輪202には車輪駆動モータとエンコーダとがそれぞれ設けられており、4つの車輪202における回転方向の組み合わせや回転速度を変えることにより、運搬車体201をあらゆる方向に移動させることが可能である。
【0031】
各車輪202に設けられた車輪駆動モータおよびエンコーダは、例えば、運搬車体201における第1部位201A内に設置されている。
【0032】
エンコーダによって検出された車輪駆動モータの回転数など(以下、エンコーダ情報と呼ぶ)は、制御装置220に直接、あるいはモータドライバ等を介して間接的に取り込み可能となっている。これにより、制御装置220は、各車輪202の任意の時刻の回転数などを連続的に計測可能である。制御装置220は、各エンコーダ情報から各車輪202の任意の時刻の回転数を制御し、4つの車輪202を相互に独立して回転駆動させる。
【0033】
本実施形態の無人搬送車200は、メカナムホイールを備えた全方向移動型機構である。このため、無人搬送車200は、制御装置220の記憶部に予め組み込まれたプログラムによって、各車輪202が個別の駆動モータにより回転駆動され、無人状態で自律的に動作することが可能である。
【0034】
なお、エンコーダの代わりに、ホールセンサ等の回転数を計測可能なセンサを用いても構わない。また、4つの車輪202は、通常の2輪独立駆動方式(2つの駆動車輪および2つの従動車輪)でもよく、アクティブキャスターと呼ばれる操舵輪方式でもよい。
【0035】
また、本実施形態の無人搬送車200では、メカナムホイールを用いた全方向移動台車としているが、これに限定するものではなく、オムニホイールなど他の全方向移動機構でも構わない。あるいは、独立二輪駆動方式など、ノンホロノミックな移動機構をその移動自由度上の拘束条件に則って制御を行うものとしても良い。
【0036】
また、通信機能を備えることで、センサ情報や運搬車体201の運動情報等を、運搬車体201の外部のシステムに伝送し、外部リソースを用いて制御装置220の一部処理を分担させても構わない。
【0037】
図2および図3に示すように、本実施形態の無人搬送車200は、運搬車体201の一部(第1部位201A)をかご台車100の荷板101の下に潜り込ませた状態でかご台車100とドッキングする構成であることから、搬送対象のかご台車100に対応した大きさを有する。ここで、既存する複数種類のかご台車100に対応した大きさであることが好ましい。
【0038】
図2に示すように、かご台車100の4つのキャスタ103のうち、無人搬送車200が進入してくる側に位置する一対の進入側キャスタ103a(103)どうしのキャスタ間隔をCwとすると、運搬車体201の第1部位201Aは、進入側キャスタ103a同士の間隔Cwよりも十分に狭い胴体幅Wを有する(Cw>W)。
これにより、少なくとも一対の進入側キャスタ103aが旋回自在式の場合に、これら一対の進入側キャスタ103aの旋回の向きがどのような状態であっても、無人搬送車200は、かご台車100と干渉することなく、かご台車100の下に潜り込める。
【0039】
また、図3に示すように、かご台車100が載置された床面Fから、かご台車100における荷板101の下面101bまでの高さをCHとすると、無人搬送車200の運搬車体201は、かご台車100の荷板101の下面101bより低い胴体高さHを有する(CH>H)。これにより無人搬送車200は、運搬車体201の第1部位201Aが、かご台車100の荷板101と干渉することなく、かご台車100の下の底部空間K(図1図3)内へ進入することができる。
これにより、本実施形態の無人搬送車200は、運搬車体201のうち少なくとも第1部位201Aの全体を、かご台車100の下に潜り込ませることができる。
【0040】
第1の検出センサ210Aは、空間平面における距離をレーザ走査により測定する側域センサである。側域センサとしては、例えばレーザレンジファインダ(LRF:Laser Range Finger)、ライダー(LiDAR:Light (Imaging) Detection and Ranging)が挙げられる。図1中に、第1の検出センサ210Aのレーザ走査範囲R1を示す。
なお、図1中に示すレーザ走査範囲R1は、例示であって実際はさらに広範囲である。
本実施形態では、搬送対象物であるかご台車100までの距離を計測可能である。第1の検出センサ210Aは、レーザ光の投光方向が運搬車体201の後方(-X方向)となるように、運搬車体201の後端面201c側に取り付けられている。
【0041】
ここで、運搬車体201の後方とは、無人搬送車200がかご台車100へ向けて移動する方向である。すなわち、本実施形態の無人搬送車200は、図1に示すように、かご台車100へ向かって-X方向(後方)へバック移動で近づく動作仕様となっているため、運搬車体201の後端面201c側に第1の検出センサ210Aが取り付けられている。第1の検出センサ210Aは、運搬車体201の幅方向(Y方向)において、後端面201cの略中央に位置する。
【0042】
第1の検出センサ210Aは、そのレーザ走査面が水平、且つ、かご台車100の荷板101の下面101bよりも低く、かご台車100の各キャスタ103を検出可能な高さに固定されている。第1の検出センサ210Aは、かご台車100のキャスタ103の高さ位置に設置されているため、水平方向でキャスタ103に対向し、かご台車100の荷板101等は検出しない。
【0043】
第1の検出センサ210Aは、図1に示すレーザ走査範囲R1内の平面空間に存在する周囲環境中の物体の表面までの距離の計測が可能である。第1の検出センサ210Aのレーザ走査範囲R1は、例えば、投射角度θが最大で270°となる範囲である。第1の検出センサ210Aは、レーザの反射の有無により、レーザ走査範囲R1内に存在する物体の有無を検知可能である。レーザ走査範囲R1における投射光到達距離は、例えば15m程度である。
【0044】
第1の検出センサ210Aは、照射したレーザの反射の度合いにより、物体までの距離や方角が検出可能である。第1の検出センサ210Aは、物体の有無を示すデータや物体までの距離や方角を出力する。以降の説明において、第1の検出センサ210Aの出力を「計測値」という。
【0045】
第1の検出センサ210Aの設置数は、1つに限定するものではなく、必要な視野範囲を確保するために十分な数だけ設けてもよい。また、第1の検出センサ210Aの設置位置も、運搬車体201の後端面201cに限られず、その他の適切な場所、姿勢で取り付けてもよい。
【0046】
なお、第1の検出センサ210Aは、上記例に限定されず、別のタイプのセンサでもよい。例えば、第1の検出センサ210Aは、3次元LIDERなど、他の高精度距離センサを使用しても構わない。この場合、LIDERの3次元スキャン空間のうちのある平面が、第1の検出センサ210Aの投光面と一致するようになっていればよい。
【0047】
制御装置220は、CPU等のプロセッサやメモリや記憶媒体を有するコンピュータを備えており、ソフトウェアを実行可能である。制御装置220の制御機能は、ソフトウェアによって実現される。
【0048】
本実施形態の制御装置220は、物体検出マップ生成部221を有し、第1の検出センサ210Aの検出データ等に基づいて物体検出マップを生成する。
【0049】
さらに、制御装置220は、無人搬送車200の代表位置(ここでは、無人搬送車200の中心位置(X-Y-Z座標系が置かれている部分))における任意の方向・大きさを有した並進速度・旋回角速度に対応する各車輪軸の回転角速度に変換する逆運動学(Inverse Kinematics(IK))および、各車輪軸の回転速度に対応する無人搬送車200の代表位置の並進速度・旋回角速度に変換する順運動学(DirectKinematics(DK))処理機能を備えた動作制御部を有している。
【0050】
動作制御部は、第1の検出センサ210Aから取得した検出データ等に基づいて、車輪駆動モータなどを制御する。この動作制御部により、無人搬送車200の移動速度を制御でき、任意のタイミングで任意の無人搬送車200の搬送速度の制御が可能となっている。
【0051】
動作制御部は、順運動学処理機構(DK)で得られる運搬車体201の並進速度・旋回角速度の時間積分(デッドレコニング)と、第1の検出センサ210Aによる検出距離情報(LRF情報)を用いた物体検出マップのマッチングによる自己位置推定機能を有する。
【0052】
さらに、動作制御部は、物体検出マップ生成部221において生成された物体検出マップを頼りに、現在地から目標位置までの経路を生成し、生成経路を辿りながら目標位置へ到達可能な位置制御機能(大局移動)を有する。このときの検出距離情報の取得に使用する距離計測部は、上記第1の検出センサ210Aと共通に限られず、別途、動作制御部専用のものを任意の位置・姿勢で取り付けても構わない。
【0053】
次に、無人搬送車200の動作例(搬送システム例)について説明する。
図4は、第1実施形態の無人搬送車における制御装置の制御フローチャートを示す図である。図5は、第1実施形態の無人搬送車による物体検索範囲を示す平面図である。図6は、物体の検出位置を可視化した物体検出マップの一例を示す図である。図7は、かご台車のキャスタ検出位置に基づいた無人搬送車の動作例を示す平面図である。
【0054】
図4図6および図7を参照しつつ、図5に示す制御装置220の制御フローチャートに沿って説明を行う。
起動された無人搬送車200の制御装置220は、まずステップS0を実行する。
ステップS0において、制御装置220は、第1の検出センサ210Aの初期化を実施した後に無人搬送車200の制御を開始する。
【0055】
次に、制御装置220はステップS1を実行する。
ステップS1において、制御装置220は、動作制御部の位置制御機能(大局移動)により、搬送対象のかご台車100の付近まで無人搬送車200を自律移動させる。制御装置220は、4つの車輪202を個別に駆動させることによって無人搬送車200を搬送対象とされたかご台車100の近傍まで近づける。
【0056】
本実施形態では、かご台車100の長辺側からのドッキングを行うことを例に挙げて説明する。このためステップS1では、図5に示すように、無人搬送車200をかご台車100の長辺側の正面に移動させる。かご台車100に対する無人搬送車200のドッキング動作を別の方向から行う場合は、大局移動先を別の位置にしても構わない。例えば、大局移動先をかご台車100の短辺側の正面にしてもよい。
【0057】
次に、制御装置220はステップS2を実行する。
ステップS2において、制御装置220は、第1の検出センサ210Aによる一次探索を実行する。制御装置220は、第1の検出センサ210Aからかご台車100へ向けてレーザ光を投光し、レーザ走査範囲R1内の平面空間に存在する周囲環境中の物体を検出し、検出した物体の表面までの距離を計測する。制御装置220は、レーザ走査範囲R1内に存在する物体の検出点群データを取得する。
【0058】
第1の検出センサ210Aにおいて検出される物体としては、図5に示すように、レーザ走査範囲R1内の平面空間に存在するかご台車100のキャスタ103だけでなく、キャスタ103と同じ高さにある周囲の壁91や柱92等の環境構造も挙げられ、これらもキャスタ103と同時に検出される。一次探索動作では、かご台車100の4つのキャスタ103のうち、少なくとも、無人搬送車200がドッキングを行う長辺側に位置するキャスタ103a(以下、進入側キャスタ103a)の検出点群データを取得することを目的としている。
【0059】
次に、制御装置220は、ステップS3を実行する。
ステップS3において、制御装置220は、かご台車100の向きやキャスタ103のタイプを検出する。
まず、制御装置220は、第1の検出センサ210Aを通じて取得した複数の物体検出点群データの中から、かご台車100のキャスタ103のサイズに近い範囲に密集した検出点群を1つのクラスタ情報としてまとめ、これを1つのキャスタ(進入側キャスタ103a)から検出された点群クラスタ111とみなす(図5)。本実施形態では、無人搬送車200に最も近い点群クラスタ111を進入側キャスタ103aとみなす。
【0060】
制御装置220の記憶部には、キャスタ103のサイズやキャスタ103の姿勢(旋回の向き)により変化する点群クラスタ111の形状パターンが予め記憶されている。そのため、制御装置220は、記憶部に記憶された点群クラスタの形状パターンと、実際に取得した点群クラスタ111の形状パターンとを比較し、これらのマッチングに基づいて、物体検出点群データの中から、搬送対象のかご台車100のキャスタ103の点群クラスタ111であることを判定するとともに、その点群クラスタ111によって検出したキャスタ103が旋回自在式か旋回軸固定式かを判別し、検出したキャスタ103の種類とそのキャスタ姿勢に基づいて搬送対象のかご台車100の向きを判断する。
【0061】
ここで、制御装置220の記憶部に記憶されている点群クラスタ111の形状パターンとのマッチングには、ディープラーニングなどの学習処理を用いてもよい。
【0062】
また、予め、かご台車100が床面F上の定められた場所に置かれているような運用がなされている場合において、第1の検出センサ210Aによるキャスタ103の探索範囲が、当該第1の検出センサ210Aの探索範囲(レーザ走査範囲R1)全域でなくてもよい。つまり、第1の検出センサ210Aによる探索範囲(レーザ走査範囲R1)にて検出された全ての点群クラスタの全てに対してパターンマッチングを実施するのではなく、かご台車100が存在すると推測される位置を含む領域(以下、近傍領域A)内に含まれる検出点のみをキャスタ検索対象としてもよい。これにより、キャスタ103以外を誤検知するリスクを減らすことができるとともに、探索に必要な計算処理負荷を減らすことができる。なお、図6及び図7に示した近傍領域Aは、かご台車100の外形に沿った矩形状で示したが、限定する近傍領域Aを示す範囲は矩形状に限らない。
【0063】
次に、制御装置220はステップS4を実行する。
ステップS4において、制御装置220は、進入側キャスタ103aを判定する。
第1の検出センサ210Aにおいて検出される点群クラスタ111としては、探索範囲(レーザ走査範囲R1)のサイズによって、1つのかご台車100から最大で4つのキャスタ103が検出される可能性がある。
また、床面F上に、搬送対象となるかご台車100の他にも、搬送対象ではない別のかご台車100が配置されている場合は、第1の検出センサ210Aによる探索範囲(レーザ走査範囲R1)のサイズによっては、探索範囲(レーザ走査範囲R1)内に存在する他のかご台車100のキャスタ103も検出される可能性もある。
【0064】
そのため、ステップS4において制御装置220は、図6に示すように、搬送対象のかご台車100の付近まで大局移動が実現できているものとし、第1の検出センサ210Aから最も近い2つの点群クラスタ111aを、搬送対象であるかご台車100のドッキング側にある一対の進入側キャスタ103aとみなす。
【0065】
次に、制御装置220はステップS5を実行する。
ステップS5において制御装置220は、無人搬送車200の進入目標基準点Mを算出する。制御装置220は、図7に示すように、2つの点群クラスタ111aから、一対の進入側キャスタ103aにおける代表位置O(ここでは、キャスタ103の中心位置)をそれぞれ決定する。ここでは、制御装置220は、第1の検出センサ210Aにおいて検出した2つの点群クラスタ111aのそれぞれの重心位置を、各進入側キャスタ103aの中心位置とみなす。制御装置220は、各進入側キャスタ103aの代表位置Oを結ぶ第1直線LNの中点を無人搬送車200の進入目標基準点Mとして算出する。
ここで、進入目標基準点Mとは、かご台車100に向けて無人搬送車200が進入する際に目標となる地点である。
【0066】
次に、制御装置220はステップS6を実行する。
ステップS6において制御装置220は、ドッキング目標位置Gを算出する。
制御装置220は、図7に示すように、上記第1直線LNの中点である進入目標基準点Mにおいて、第1直線LNに直交する第2直線LMに沿う方向を無人搬送車200の進行方向(後退方向)とし、かご台車100及び無人搬送車200の寸法等の幾何情報(既知)と、予め定められたかご台車100へのドッキング進入量(規定値)とを参考にして、かご台車100に対するドッキング目標位置Gを算出する。このとき、ドッキング目標位置Gは、かご台車100の底部空間K(図1図3)内であって、Z方向(上下方向で)でかご台車100の重心位置に一致、もしくはその近傍であることが好ましい。
ここで、ドッキング目標位置Gとは、かご台車100に対するドッキング位置の目標となる位置である。
【0067】
次に、制御装置220はステップS7を実行する。
ステップS7において制御装置220は、無人搬送車200をかご台車100の下の底部空間K内へ進入させる。制御装置220は、各車輪202を駆動することによって、運搬車体201をかご台車100へ向けて-X方向(後方)へと移動させる。このとき、制御装置220は、運搬車体201を第1直線LNに沿って移動させ、当該運搬車体201の第1部位201Aを搬送対象のかご台車100の下の底部空間K内へ進入させる。制御装置220は、ドッキング目標位置Gにおいて、無人搬送車200を停止させる(図7)。このとき、無人搬送車200の重心位置と、かご台車100のドッキング目標位置Gとが、Z方向(上下方向)で一致していることが好ましい。
【0068】
次に、制御装置220はステップS8を実行する。
ステップS8において制御装置220は、かご台車100へのドッキング動作を実行する。制御装置220は、ドッキング目標位置Gにおいて、無人搬送車200におけるドッキング部203の昇降リフタを上昇させることにより、昇降リフタに接続された天板204をかご台車100の荷板101の下面101bに接触させる。このようにして、かご台車100へのドッキング動作を終了する。
その後、制御装置220は、所定の搬送先へ向けて運搬車体201を移動させて、かご台車100を搬送する動作へと移行する。
【0069】
このように、本実施形態の無人搬送車200によれば、かご台車100の進入側キャスタ103aを検出し、これらの位置やタイプに基づいて算出したドッキング目標位置へ向けて移動させることができるので、かご台車100の搬送に有利な位置(正確な位置)及び姿勢で、かご台車100にドッキングすることが可能である。ここで、搬送に有利な位置及び姿勢とは、ドッキングバランスが良好になる位置及び姿勢である。
【0070】
本実施形態の無人搬送車200は、かご台車100や環境設備に手を加える必要がないため、無人搬送車200を用意するだけで、搬送対象となるかご台車100の検知やドッキングを実現することができるため、汎用性が高く、コストを抑えることが可能である。
【0071】
なお、上記実施形態においては、既存する複数種類のかご台車100に対応する動作例について述べたが、必ずしも上述した動作ステップを全て実行する必要はない。例えば、予め対応するかご台車100(キャスタ103)の種類や状態が分かっている場合には、ステップS3を省略してもよい。
【0072】
以下、無人搬送車200の他の動作例(搬送システム例)について説明する。
ここでは、かご台車100から離れた位置にある無人搬送車200をドッキング目標位置Gまで直進させるのではなく、かご台車100の進入側に、無人搬送車200に対向する位置(移動経由点P)に移動させた後、進入目標基準点Mを経て、ドッキング目標位置Gへと段階的に移動させる。
【0073】
図8は、無人搬送車200の他の動作例の制御フローチャートを示す図である。図9は、無人搬送車200の他の動作例を説明するための図である。
【0074】
図9に示す無人搬送車200の制御装置220は、まず、図8に示すように、ステップS10~ステップS16までを実行する。本実施形態の制御フローにおけるステップS10~ステップS16は、上記第1の実施形態の図4に示すステップS0~ステップS6と同様であるため説明を省略する。
【0075】
次に、制御装置220はステップS17を実行する。
ステップS17において制御装置220は、無人搬送車200を移動経由点Pが必要かどうかを判定する。制御装置220は、ステップS16において算出した最終移動目標位置(ドッキング目標位置G)へ無人搬送車200を移動させる前に、ステップS17を実行し、図9の仮想線で示す初動位置の無人搬送車200とかご台車100との位置関係から、無人搬送車200の現在地とかご台車100との間に、移動経由点Pが必要かどうかを判断する。
【0076】
すなわち、制御装置220が、動作制御部の位置制御機能(大局移動)により搬送対象のかご台車100の付近まで移動させる際、無人搬送車200とかご台車100との位置関係に応じて、無人搬送車200の現在の場所から、かご台車100に対するドッキング目標位置Gへと直接移動可能かどうかを判断する。そして、無人搬送車200の現在位置とかご台車100との間に、移動経由点Pが必要かどうかを判断した場合には、かご台車100の進入目標基準点Mと無人搬送車200との間に、移動経由点Pを定める。
ここで、移動経由点Pは、無人搬送車200がドッキング目標位置Gまで直接移動可能な位置である。
【0077】
次に、制御装置220はステップS18を実行する。
ステップS18において制御装置220は、移動経由点Pを定めて無人搬送車200を移動させる。制御装置220は、先のステップS17において、無人搬送車200の現在の場所からドッキング目標位置Gまで、かご台車100のキャスタ103に干渉することなく無人搬送車200を直進させることが不可能で、移動経由点Pを定める必要があると判断した場合は、図9に示すように、第2直線LMに沿う方向においてかご台車100の手前側の位置に移動経由点Pを定める。そして、定めた移動経由点Pへ向けて無人搬送車200を移動させる。制御装置220は、ステップS17~S18を実行することによって、無人搬送車200をドッキング目標位置Gへと移動させる前に、まず、移動経由点Pへと移動させる。
【0078】
次に、制御装置220はステップS19を実行する。
ステップS19において制御装置220は、移動経由点Pに位置する無人搬送車200をかご台車100の下に進入させて、ドッキング目標位置Gへと移動させる。
【0079】
その後、制御装置220はステップS19Aを実行し、ドッキング目標位置Gにおいてかご台車100に対するドッキング動作を実行する。
【0080】
上述したように、制御装置220は、この移動経由点Pへ無人搬送車200を移動させた上でドッキング目標位置Gへと移動させるように、段階を踏んだ移動手順を実行してもよい。これにより、どの位置から無人搬送車200がドッキング動作を開始しても、かご台車100のキャスタ103と接触することなく、かご台車100とのドッキング動作をスムーズに完了させることができる。
【0081】
(第2の実施形態)
図10は、進入側キャスタのタイプに応じて設定した第1の進入目標基準点(M’)及び第1のドッキング目標位置(G’)と、理想とする進入目標基準点(M)及びドッキング目標位置(G)との位置関係を示す図である。図11は、進入側キャスタのタイプ(旋回軸固定式)に応じて設定した第1の進入目標基準点(M’)及び第1のドッキング目標位置(G’)と、理想とする進入目標基準点(M)及びドッキング目標位置(G)との位置関係を示す図である。図12は、第2実施形態の無人搬送車230の構成とその動作例を示す図である。なお、図12中に示すレーザ走査範囲R1,R2は、例示であって実際はさらに広範囲である。
【0082】
ここでは、まず、かご台車100のキャスタタイプによって、かご台車100に対する無人搬送車の移動完了時の姿勢と、ドッキング時に理想とする姿勢との関係について述べる。
【0083】
ドッキング時における無人搬送車の動作精度に関しては、かご台車100のキャスタ103の種類によって変わる可能性がある。少なくとも、かご台車100における一対の進入側キャスタ103aが、旋回自在式か旋回軸固定式化によって変わる可能性がある。
【0084】
かご台車100における4つのキャスタ103が旋回自在式の場合は、図10に示すように、全てのキャスタ103の姿勢が互いに異なっていることが多い。そのため、一対の進入側キャスタ103aの姿勢においても、互いに異なっている可能性が高く、各進入側キャスタ103aの代表位置Oに基づいて算出した第1の進入目標基準点M’および第1のドッキング目標位置G’は、理想とするドッキング目標位置G(例えば、かご台車100の中央位置)からずれてしまう。この場合、無人搬送車の移動完了時の姿勢、すなわち、ドッキング目標位置Gに到達した際の姿勢が、ドッキング目標位置Gにおいて理想とする無人搬送車の姿勢と異なってしまう可能性が高い。
【0085】
一方で、図11に示すように、かご台車100のうち、少なくとも無人搬送車側の一対の進入側キャスタ103aが旋回軸固定式の場合は、これら一対の進入側キャスタ103aどうしの姿勢が互いに一致しておりいずれも姿勢変化がない。このため、各旋回軸固定式の進入側キャスタ103aの代表位置Oに基づいて算出した第1の進入目標基準点M’と、当該第1の進入目標基準点M’において第1直線LNに垂直な第2直線LMに沿う方向をかご台車100の中心線に一致させて推定することが可能である。そのため、旋回軸固定式の一対の進入側キャスタ103aの代表位置Oに基づいて算出した第1の進入目標基準点M’及び第1のドッキング目標位置G’は、いずれも理想とする進入目標基準点M及びドッキング目標位置Gとして指定することができる。そのため、無人搬送車の移動完了時の姿勢、すなわち、ドッキング目標位置Gに到達した際の無人搬送車の姿勢は、ドッキング目標位置Gにおいて理想とする無人搬送車の姿勢に略一致する。
【0086】
上述したことを踏まえて、第2の実施形態の無人搬送車230について説明する。
本実施形態の無人搬送車230は、図12に示すように、複数の検出センサを備えている点において第1の実施形態と異なっている。
【0087】
本実施形態の無人搬送車230は、2つの検出センサ210A,210Bを備えている。一対の検出センサ210A,210Bは、それぞれのレーザ走査範囲R1,R2内の平面空間に存在する周囲環境中の物体の表面までの距離の計測が可能である。これら検出センサ210A,210Bのレーザ走査範囲R1,R2は、例えば最大で270°の範囲である。
【0088】
第1の検出センサ210Aは、無人搬送車230における運搬車体201の後端面201cに設けられ、第2の検出センサ(検出センサ)210Bは、運搬車体201の幅方向一方側の側端面201dに設けられている。第1の検出センサ210Aは、後端面201cの幅方向略中央に位置し、第2の検出センサ210Bは、側端面201dの幅方向略中央に位置している。
【0089】
第1の検出センサ210A及び第2の検出センサ210Bは、各々のレーザ走査面が水平であるとともに、かご台車100の荷板101の下面101bよりも低く、かご台車100の各キャスタ103を計測可能な高さに固定されている。第1の検出センサ210A及び第2の検出センサ210Bは、Z方向において、かご台車100のうちキャスタ103の高さと同じ位置に設置されているため、かご台車100の荷板101等は検出しない。
【0090】
なお、第2の検出センサ210Bは、図示した位置に限らない。搬送対象のかご台車100の二次探索箇所(奥行側キャスタ103b)を良好に検出することが可能な位置であれば、他の場所でもよい。
【0091】
本実施形態の無人搬送車230は、例えば、旋回自在式及び旋回軸固定式のキャスタ103が混在するかご台車100の搬送に適している。例えば、図12に示す搬送対象のかご台車100は、4つのキャスタ103のうち、かご台車100の一方の短辺側に位置する一対のキャスタ103(103a,103b)どうしが旋回自在式であり、他方の短辺側に位置する一対のキャスタ103(103a,103b)どうしが旋回軸固定式とされている。そのため、かご台車100のうち、無人搬送車230が進入する長辺側に位置する一対の進入側キャスタ103aの一方が旋回自在式であり、他方が旋回軸固定式であるとともに、かご台車100の奥行側に位置する一対の奥行側キャスタ103bの一方が旋回自在式であって、他方が旋回軸固定式である。
【0092】
次に、第2実施形態の無人搬送車230の動作例(搬送システム例)について説明する。
図13は、第2実施形態の無人搬送車230の動作例の制御フローチャートを示す図である。
【0093】
ここでは、図12に示す本実施形態の無人搬送車230を、かご台車100のうち、旋回自在式の進入側キャスタ103aと旋回軸固定式の進入側キャスタ103aとの間から底部空間K(図1図3)内へ進入させる場合の動作例について述べる。
【0094】
無人搬送車230の制御装置220は、まず、図13に示すようにステップS20~ステップS22までを実行する。ステップS20~ステップS22は、第1の実施形態のステップS0~ステップS2と同様であるため説明を省略する。
【0095】
次に、制御装置220はステップS23を実行する。
制御装置220は、ステップS23において、第1の検出センサ210Aによる検出結果に基づいて、かご台車100の向きや進入側キャスタ103aのタイプを検出する。
まず、制御装置220は、第1の検出センサ210Aにおいて検出した全ての物体検出点群データの中から、かご台車100のキャスタ103のサイズに近い範囲に密集した検出点群を1つのクラスタ情報としてまとめ、これを1つのキャスタ103から検出された点群クラスタ111とみなす。
【0096】
制御装置220は、記憶部に記憶された点群クラスタ111の形状パターンとのマッチングに基づいて、物体検出点群データの中から、搬送対象のかご台車100におけるキャスタ103の点群クラスタ111であることを判定するとともに、その点群クラスタ111からキャスタ103のタイプ(旋回自在式または旋回軸固定式)を判別する。
【0097】
次に、制御装置220はステップS24を実行する。
制御装置220は、ステップS24において、無人搬送車230に最も近い位置において検出した2つの点群クラスタ111aを、搬送対象であるかご台車100のドッキング側にある一対の進入側キャスタ103a(一方が旋回自在式、他方が旋回軸固定式)であると判定する。
【0098】
次に、制御装置220はステップS25を実行する。
ステップS25において、制御装置220は、検出した一対の進入側キャスタ103aの各代表位置Oから、無人搬送車230の第1の進入目標基準点M’を算出する。
【0099】
次に、制御装置220はステップS26を実行する。
ステップS26において、制御装置220は、先のステップS25において算出した第1の進入目標基準点M’に基づいて、かご台車100に対する第1のドッキング目標位置G’を算出する。
【0100】
次に、制御装置220はステップS27を実行する。
ステップS27において、制御装置220は、まず、無人搬送車230をかご台車100の下の底部空間K内へと進入させる。制御装置220は、先のステップS25において算出した第1の進入目標基準点M’に向かって無人搬送車230を-X(後方)へと移動させ、かご台車100の下に進入させる。このとき、無人搬送車230に搭載された検出センサ210Bの位置が、少なくとも進入側キャスタ103aの位置を超えるまで当該無人搬送車230を進入させる。
【0101】
次に、制御装置220はステップS28を実行する。
ステップS28において、制御装置220は第2の検出センサ210Bによる二次探索を実行する。制御装置220は、例えば、無人搬送車230をドッキング目標位置Gまで移動させながら、第2の検出センサ210Bからかご台車100のY方向(幅方向)一方側(ここでは、無人搬送車200の進行方向右側)へ向けてレーザ光を投光し、かご台車100の進入側とは異なる側(進行方向右側)の一対のキャスタ103を探索する。このとき、かご台車100のうち、少なくとも進行方向右側に位置する進入側のキャスタ103aが検出され、進行方向右側に位置する奥行側に位置するキャスタ103bを探索する。
【0102】
このように、制御装置220は、無人搬送車200をかご台車100の下へ進入させつつ、第2の検出センサ210BによってY方向(幅方向)一方側の一対のキャスタ103(奥行側キャスタ103b)の探索を実行する。制御装置220は、レーザ操作範囲R2内の平面空間内において、当該無人搬送車200に最も近い位置にキャスタ103とみられる検出点群データが新たにもう1つ(計2つ)検出されたとき、奥行側のキャスタ103bが検出されたと判断する。
【0103】
次に、制御装置220はステップS29を実行する。
ステップS29において、制御装置220は、無人搬送車230の姿勢を補正する。制御装置220は、第2の検出センサ210Bにおいて検出した進入側のキャスタ103aの代表位置Oと、奥行側のキャスタ103bの代表位置Oとを結ぶ第3直線L3の中点において当該第3直線L3に直交する第4直線L4を求め、これを基準として、理想とするドッキング目標位置Gを算出し、ドッキング目標位置G’の無人搬送車230の姿勢を補正する。例えば、図11に示すように、例えば無人搬送車230を図中の反時計回りに旋回させることによって、無人搬送車230の側辺が、かご台車100の側辺に平行する姿勢に補正する。これにより、ドッキング目標位置Gにおける無人搬送車230の姿勢を搬送に好適な姿勢とすることが可能である。
なお、目標位置Gとの並進成分がずれている場合には、これも併せて補正する。
【0104】
その後、制御装置220はステップS29Aを実行し、ドッキング目標位置Gにおいてかご台車100に対するドッキング動作を実行する。
【0105】
第2実施形態の無人搬送車230によれば、2つの検出センサ210A,210Bを備えているため、かご台車100に進入前に検出センサ210Aを用いて進入側のキャスタ位置の探索(一次探索)を実行した後、かご台車100の進入後に検出センサ210Bを用いて奥行側のキャスタの探索(二次探索)を実行することによって、一次探索に基づいて算出したドッキング目標位置G’にある無人搬送車230の姿勢を、二次探索に基づいて算出したドッキング目標位置Gにおいて理想とする最終的な姿勢に補正することが可能なる。このように、かご台車100の進入側キャスタ103aだけでなく、奥行側キャスタ103bのタイプ(姿勢及び位置)に基づいて無人搬送車230の姿勢を適宜補正することで、旋回自在式及び旋回軸固定式のキャスタ103が混合したかご台車100に対して、無人搬送車230を理想の姿勢でドッキングさせることができる。これにより、かご台車100のキャスタ103の種類に関わらず、かご台車100を好適に搬送することが可能である。
【0106】
なお、かご台車100の種類と配置向きは既知であるものとしているが、かご台車100の種類や配置向きを、無人搬送車自体が単体で認識可能な認識機能を有する構成としても構わない。また、無人搬送車230を統合管理するような上位サーバから、かご台車の情報として提供されるような通知機能を使用する構成であっても構わない。
【0107】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の無人搬送車240について述べる。
図14は、第3の実施形態の無人搬送車240を用いる場合の解決すべき動作例を示す平面図である。図15は、第3の実施形態の無人搬送車240の好適な動作例を示す平面図である。なお、図15中に示すレーザ走査範囲(一点鎖線で示す範囲)は、例示であって実際はさらに広範囲である。
【0108】
以下、無人搬送車240の構成について説明する。
図14に示すように、本実施形態の無人搬送車240は、細長いかご台車140の搬送を可能とするものである。ここでは、かご台車140の短辺側からドッキングを行うことを例に挙げて説明する。
【0109】
搬送対象となる細長いかご台車140は、一方向に長さを有する平面視矩形状の荷板101を有し、一方の短辺側に配置された一対の進入側キャスタ103aが旋回自在式であり、他方の短辺側に配置された一対の奥行側キャスタ103bが旋回軸固定式である。
【0110】
本実施形態の無人搬送車240は、一方向に長さを有する平面視矩形状を呈する運搬車体201を有する。運搬車体201の短手方向に沿う幅は、かご台車140の短辺側に配置された一対の旋回自在式の進入側キャスタ103aの旋回範囲同士の間隔Cwよりも狭い幅Wとされている。無人搬送車240(運搬車体201の第1部位201A)の長手方向の長さは、かご台車140の長手方向の長さよりも長いか、略等しいことが好ましい。
【0111】
次に、無人搬送車240の動作例(搬送システム例)について説明する。
図16は、第3の実施形態の無人搬送車における制御装置の制御フローチャートを示す図である。
図15に示す本実施形態の無人搬送車240を、例えば、かご台車140のうち、短辺側に配置された一対の旋回自在式の進入側キャスタ103aどうしの間から進入させる場合の動作例について述べる。
【0112】
図15に示す無人搬送車240の制御装置220は、まず、図16に示すようにステップS30~ステップS34までを実行する。ステップS30~ステップS34は、第1の実施形態のステップS0~ステップS4と同様であるため説明を省略する。
【0113】
次に、制御装置220はステップS35を実行する。
ステップS35において、制御装置220は、検出した一対の旋回自在式の進入側キャスタ103aの各代表位置から、無人搬送車230の第1の進入目標基準点M’を算出する。
【0114】
次に、制御装置220はステップS36を実行する。
ステップS36において、制御装置220は、先のステップS35において算出した第1の進入目標基準点M’に基づいて、かご台車100に対する第1のドッキング目標位置G’を算出する。
【0115】
次に、制御装置220はステップS37を実行する。
ステップS37において、制御装置220は、まず、先のステップS35において算出した第1の進入目標基準点M’に向かって無人搬送車230を移動させ、かご台車100の下の底部空間K(図1図3)内へ進入させる。
【0116】
次に、制御装置220はステップS38を実行する。
ステップS38において、制御装置220は第1の検出センサ210Aによる二次探索を実行する。制御装置220は、例えば、無人搬送車230を第1のドッキング目標位置G’まで移動させながら、第1の検出センサ210Aからかご台車100の側方(+Y方向)へ向かってレーザ光を投光し、かご台車100の進入方向とは異なる方向のキャスタ103を検出する。ここでは、かご台車140の幅方向一方側に位置する進入側キャスタ103aと、奥行側キャスタ103bとの位置を探索する。
【0117】
次に、制御装置220はステップS39を実行する。
ステップS39において、制御装置220は、第1の検出センサ210Aにおいて検出した奥行側のキャスタ103bの代表位置同士を結ぶ第4直線L4の中点である第1の進入目標基準点M”において当該第4直線L4に直交する第5直線L5を求め、第5直線L5と、無人搬送車230及びかご台車100の幾何情報から新たなドッキング目標位置G”(G)を算出し、かご台車100の下に進入した無人搬送車240の姿勢を補正する。
【0118】
つまり、かご台車140の一対の進入側キャスタ103aが旋回自在式である場合、これら旋回自在式の進入側キャスタ103aの位置(一次探索結果)に基づいて算出した第1のドッキング目標位置G’は、理想とするドッキング目標位置Gからズレていることが多い。
一方で、旋回軸固定式の奥行側キャスタ103bの位置(二次探索結果)に基づいて算出した第2のドッキング目標位置G”は、理想とするドッキング目標位置Gに略一致することから、二次探索結果に基づいて算出した第2のドッキング目標位置G”(G)を目標とすべく、かご台車100の下に進入した無人搬送車240の姿勢を補正する。このようにして、無人搬送車200を理想とするドッキング目標位置Gに到達させる。
なお、目標位置Gとの並進成分がずれている場合には、これも併せて補正する。
【0119】
次に、制御装置220は、かご台車100とのドッキングを実行する(ステップS39A)。
【0120】
以上述べたように、図14に示す本実施形態の無人搬送車240を用いて細長形状のかご台車140を搬送する際に、かご台車140の短辺方向側から無人搬送車240を進入させる場合においては、進入側キャスタ103aが旋回軸固定タイプであるときは、各進入側キャスタ103aの姿勢は互いに変化しないため、一次探索結果に基づいて進入目標基準点Mとドッキング目標位置Gとを精度よく算出することができる。そのため、かご台車140の長さ方向に対して、無人搬送車240をその長さ方向を略平行にした状態で進入させることが可能となるため、無人搬送車240がかご台車140のキャスタ103(例えば、奥行側キャスタ103b)に衝突(接触)するリスクは低い。
【0121】
一方で、進入側キャスタ103aが旋回自在式であるとき、これら一対の進入側キャスタ103aどうしの姿勢は互いに異なっている可能性が高い。そのため、これら一対の旋回自在式の進入側キャスタ103aの各代表位置Oに基づいて(各代表位置Oを結ぶ第1直線LNの中点(第1の進入目標基準点M’)において当該第1直線LNに垂直な第2直線LMから)算出した第1のドッキング目標位置G’に向かって、一対の旋回自在式の進入側キャスタ103aの間から無人搬送車240を進入させると、無人搬送車240がかご台車140に衝突(接触)する可能性が高い。
【0122】
つまり、かご台車140は細長形状のため、横幅方向に無人搬送車240との十分な空間が確保できないことから、無人搬送車240の動作途中で、例えば、運搬車体201の先端側と奥行側のキャスタ103bとが接触してしまう可能性がある。
【0123】
これに対して、本実施形態の無人搬送車240によれば、旋回自在式の進入側キャスタ103aを有するかご台車140を搬送する場合に、制御装置220は、一次探索結果に基づいて算出した第1の進入目標基準点M’へ向かって、一対の旋回自在式の進入側キャスタ103a同士の間からかご台車140の下へ無人搬送車240を進入させた後、図15に示すように無人搬送車240をかご台車140のさらに-X方向(後方)へと進入させながら、第1の検出センサ210Aによる二次探索を実施して奥行側キャスタ103bの位置を検出することとした。これにより、旋回軸固定式の奥行側キャスタ103bどうしの位置に応じて(二次探索結果に基づいて)新たな第2のドッキング目標位置G”(G)を算出して、無人搬送車240の進行方向を適宜補正することにより、理想とするドッキング目標位置Gへ無人搬送車240を到達させることが可能である。
【0124】
なお、かご台車100の奥側のキャスタ配置情報については、上述したように既知あるいは外部入手可能である。また、かご台車140の下に進入した後に、奥行側キャスタ103bを再探索する場合は、その探索領域を入手したキャスタ配置情報を元に、探索範囲をある程度絞り込んだ範囲に設定することが可能である。
【0125】
また、第1の検出センサ210Aの計測距離が十分長く、搬送対象のかご台車140における全てのキャスタ103の姿勢及びタイプを判別可能であってその計測精度も十分高い場合には、一次探索において旋回軸固定式の一対の奥行側キャスタ103bを検出し、これら奥行側キャスタ103bの位置からドッキング目標位置Gを算出するようにしてもよい。
【0126】
ただし、奥行側キャスタ103bが進入側キャスタ103aの死角に位置して隠れてしまう場合には、一次探索において奥行側キャスタ103bの探索は行わず、進入側キャスタ103aの探索に切り替えることが好ましい。
【0127】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態の無人搬送車250について述べる。
図17は、第4の実施形態の無人搬送車の構成と動作を説明するための斜視図である。図18は、第4の実施形態の無人搬送車の構成と動作を説明するための平面図である。なお、図17図18に示すレーザ走査範囲(一点鎖線で示す範囲)は、例示であって実際はさらに広範囲である。
【0128】
以下、無人搬送車250の構成について説明する。
本実施形態の無人搬送車250は、4つのキャスタの全てが旋回自在式キャスタであるかご台車100の搬送に適した搬送車である。
【0129】
図17および図18に示すように、本実施形態における無人搬送車250は、設置高さが互いに異なる一対の検出センサ(第1の検出センサ210A,第3の検出センサ210C)を有する。
第3の検出センサ(検出センサ)210Cは、無人搬送車250の運搬車体201のうち、第1部位201Aの上面201a上であって、第1部位201Aの上面201aと第2部位201Bの前面201bとに接するように設置されている。
【0130】
第3の検出センサ210Cにおけるレーザ投射面の位置は、かご台車100の荷板101の下面101bよりも高く、荷板101の上面101aよりも低い位置であって、荷板101の進入側端面101cに対向する位置である。第3の検出センサ210Cは、荷板101の進入側端面101cの位置から荷板101のエッジ(側縁)を検出する。
【0131】
次に、第4実施形態の無人搬送車250の動作例(搬送システム例)について説明する。
図19は、第4実施形態の無人搬送車250における制御装置220の制御フローチャートを示す図である。
図18に示す無人搬送車250の制御装置220は、まず、図19に示すようにステップS40~ステップS42までを実行する。本実施形態の制御フローにおけるステップS40~ステップS42は、上記第1の実施形態の図4に示すステップS0~ステップS2と同様であるため説明を省略する。
【0132】
次に、制御装置220はステップS43~ステップS46を実行し、第1の検出センサ210Aの検出結果(進入側キャスタ103aの姿勢及び向き)に基づいて、第1の進入目標基準点M’及び第1のドッキング目標位置G’を算出する。
【0133】
次に、制御装置220はステップS47を実行する。
ステップS47において、制御装置220は無人搬送車250を前進させる。
制御装置220は、ステップS47において無人搬送車250を第1の進入目標基準点M’へ向けて-X方向へ後退させることにより、当該無人搬送車250をかご台車100に近づける。
【0134】
次に、制御装置220はステップS48を実行する。
ステップS48において、制御装置220は、第3の検出センサ210Cによる二次探索を実行する。制御装置220は、第3の検出センサ210Cを用いて二次探索を実行し、かご台車100の荷板101のエッジ(進入側端面101c)を検出する。
このとき、荷板101のエッジの凡その位置については、かご台車100の既知な形状情報を元にある程度範囲を絞って探索することが可能である。
また、荷板101のエッジの探索には、第3の検出センサ210Cによる検出点群情報に対して直線検出処理を利用してもよい。
【0135】
次に、制御装置220はステップS49を実行する。
ステップS49において、制御装置220は、無人搬送車250の姿勢を補正する。
制御装置220は、先のステップS48で検出した荷板101の進入側端面101cの長さ方向の中点(第2の進入目標基準点M”)において進入側端面101cに垂直な第6直線L6上に新たなドッキング目標位置Gを算出し、先のステップS46においてキャスタ位置に基づいて算出した第1のドッキング目標位置G’を補正する。
【0136】
次に、制御装置220はステップS50を実行する。
ステップS50において、制御装置220は、無人搬送車250をかご台車100の下の底部空間K(図1図3)内へとさらに進入させる。制御装置220は、ステップS50において無人搬送車250をさらに-X方向へ後退させてかご台車100の下に進入させ、ドッキング目標位置Gまで移動させる。
【0137】
次に、制御装置220はステップS51を実行する。
ステップS51において制御装置220は、かご台車100に対する無人搬送車250のドッキング動作を実行する。
【0138】
このように、本実施形態における無人搬送車250によれば、無人搬送車250をかご台車100の下に進入させる前にドッキング目標位置Gを補正することができるので、無人搬送車250の進行方向をより小さい動きで補正することができる。これにより、無人搬送車250を理想とするドッキング目標位置Gへと直進させることが可能となり、ご台車100へのドッキング効率が向上する。
【0139】
なお、床面Fや、進入前の無人搬送車250の姿勢が理想的に整えられている場合には、第1の検出センサ210Aによる一次探索(ステップS42)とこれに基づく動作(ステップS43~S46)を省略し、第3の検出センサ210Cによる二次探索を実行してもよい。
【0140】
また、第3の検出センサ210Cの設置位置は、図示した位置に限らない。搬送対象のかご台車100の荷板101の進入側エッジを良好に検出することが可能な位置であれば、他の場所でもよい。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0142】
例えば、上述した各実施形態においては、搬送対象物としてかご台車を例に挙げて述べたが、無人搬送車による搬送対象物はかご台車に限らない。例えば、柱状の支持脚で構成された荷物棚が搬送対象物であってもよい。この場合、進入側の支持脚どうしは互いに姿勢の変化がないため、これら進入側の支持脚の位置に基づいて算出した進入目標基準点M及びドッキング目標位置Gは、理想とする進入目標基準点M及びドッキング目標位置Gとなる。
【0143】
また、搬送対象物に対する無人搬送車の進入方向(長辺側、短辺側)は、搬送対象物の構造や荷物の積載状態等に応じて、適宜設定してもよい。
【符号の説明】
【0144】
220…制御装置、100…台車(搬送対象物)、101…荷板、101a…上面、101b…下面、103…キャスタ(支持脚)、111,111a…点群クラスタ、200,230,240,250…無人搬送車、201…運搬車体(移動体)、203…ドッキング部、210A…第1の検出センサ、210B…第2の検出センサ、210C…第3の検出センサ、F…床面、G…ドッキング目標位置、G’…第1のドッキング目標位置、G”…第2のドッキング目標位置、K…底部空間、LM…第2直線、LN…第1直線、M…進入目標基準点、M…第1の進入目標基準点、O…代表位置、P…移動経由点、W…幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19