(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】燃焼装置及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240610BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20240610BHJP
F23D 14/22 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/0612
F23D14/22 J
(21)【出願番号】P 2021050957
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
(72)【発明者】
【氏名】宅和 雄也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】若林 卓
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓太
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204774(JP,A)
【文献】特開2009-224189(JP,A)
【文献】特開2003-207135(JP,A)
【文献】特開平10-246410(JP,A)
【文献】特開2003-254514(JP,A)
【文献】特開2003-343818(JP,A)
【文献】特開昭60-149813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/20-14/24
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料ガスを水蒸気改質して改質燃料ガスを生成する改質部と、当該改質部で生成された改質燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池部と、を備えた燃料電池システムに設けられ、
燃焼空間に燃料ガスを噴出させる燃料ガス噴出孔と、前記燃料ガス噴出孔から噴出される燃料ガスに対して燃焼用空気を供給する空気供給部と、を備えて、定常運転時に前記燃料電池部から排出された燃料オフガスが前記燃料ガスとして供給されると共に当該燃料ガスを前記燃焼空間で燃焼させて前記改質部を加熱する燃焼装置であって、
前記空気供給部として、前記燃料ガス噴出孔の燃料ガス噴出方向における上流側の第1空気供給領域に対して燃焼用空気を供給する第1空気供給部と、前記燃料ガス噴出孔の燃料ガス噴出方向における前記第1空気供給領域よりも下流側の第2空気供給領域に対して燃焼用空気を供給する第2空気供給部と、を備え、
前記燃料ガス噴出孔が設けられた噴出孔配置部との間に隙間を介在させた状態で配置されており、前記燃料ガス噴出孔から噴出された燃料ガスが通過する燃料ガス通過孔が形成された燃料ガス通過壁部を備え、
前記第1空気供給領域が、前記噴出孔配置部と前記燃料ガス通過壁部との間に介在された隙間であり、
前記第2空気供給領域が、前記燃料ガス通過孔の燃料ガス噴出方向における前記燃料ガス通過壁部よりも下流側に設けられている燃焼装置。
【請求項2】
前記燃料ガス噴出孔の開口面積が、前記燃料ガス通過孔の開口面積よりも小さく設定されている請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記燃料ガス噴出孔の側方に設けられ、燃焼用空気が供給される燃焼用空気空間と前記燃焼空間とを区画する側壁部を備え、
前記第2空気供給部が、前記側壁部に形成された第2空気供給口で構成されており、当該第2空気供給口が、前記第2空気供給領域に向けて側方から燃焼用空気を噴出させる請求項1又は2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記側壁部が、前記燃料ガス噴出孔の燃料ガス噴出方向に対して先広がりの状態で設けられている請求項3記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記燃料ガス噴出孔が長手方向に沿って複数配置されて帯状に形成された帯状噴出孔配置部を挟む両側方の夫々に平板状に形成された一対の前記側壁部を対向配置してなる溝状燃焼部を備えた請求項3又は4に記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記溝状燃焼部の複数が並列配置されている請求項5に記載の燃焼装置。
【請求項7】
原燃料ガスを水蒸気改質して改質燃料ガスを生成する改質部と、当該改質部で生成された改質燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池部と、を備えた燃料電池システムであって、
燃焼空間に燃料ガスを噴出させる燃料ガス噴出孔と、前記燃料ガス噴出孔から噴出される燃料ガスに対して燃焼用空気を供給する空気供給部と、を備えて、定常運転時に前記燃料電池部から排出された燃料オフガスが前記燃料ガスとして供給されると共に当該燃料ガスを前記燃焼空間で燃焼させて前記改質部を加熱する燃焼装置として、請求項1~6の何れか1項に記載の燃焼装置を備えた燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム用の燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
改質部で原燃料ガスを水蒸気改質して生成された改質燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池部を備えた燃料電池システムに設けられ、当該燃料電池部から排出された燃料オフガスが燃料ガスとして供給されると共に当該燃料ガスを燃焼空間で燃焼させて改質部を加熱する燃焼装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
この種の燃焼装置では、起動運転時において、改質部が水蒸気改質を行えるほど十分には加熱されていない状態であることから、原燃料ガスを比較的多く含む燃料ガスが供給されると共に、その原燃料ガスを多く含む起動運転時燃料ガスが比較的大きな燃焼量で燃焼されることになる。一方、改質部が十分に加熱された状態となる定常運転時において、原燃料ガスよりも燃焼速度が速い改質燃料ガスを比較的多く含む燃料オフガスが燃料ガスとして供給されると共に、その燃料オフガスが比較的小さな燃焼量で燃焼されることなる。即ち、起動運転時と定常運転時とでは、供給される燃料ガスの燃焼速度や燃焼量が比較的大幅に異なることになる。
そして、特許文献1記載の燃料電池システム用の燃焼装置では、定常運転時において燃料オフガスを燃焼させるための定常運転用燃焼器とは別に、起動運転時において原燃料ガスを燃焼させる起動運転用燃焼器を設けることによって、夫々の運転時において適切な燃焼状態を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1記載の燃料電池システム用の燃焼装置では、定常運転用燃焼器と起動運転用燃焼器とを各別に設ける必要があるため、装置の大型化や高コスト化が問題となる。
よって、定常運転時の燃料オフガスと起動運転時の原燃料ガスとを共通の燃焼部で燃焼させることが望まれるが、燃焼速度や燃焼量が比較的大幅に変化する条件下において共通の燃焼部で安定且つ適切に燃料ガスを燃焼させることは困難であった。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、燃料電池システム用の燃焼装置において、燃焼速度及び燃焼量が比較的大幅に変化するという条件下においても、共通の燃焼部において、改質部を効率良く加熱するのに適した火炎を形成しながら安定して燃料ガスを燃焼させることができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、原燃料ガスを水蒸気改質して改質燃料ガスを生成する改質部と、当該改質部で生成された改質燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池部と、を備えた燃料電池システムに設けられ、
燃焼空間に燃料ガスを噴出させる燃料ガス噴出孔と、前記燃料ガス噴出孔から噴出される燃料ガスに対して燃焼用空気を供給する空気供給部と、を備えて、定常運転時に前記燃料電池部から排出された燃料オフガスが前記燃料ガスとして供給されると共に当該燃料ガスを前記燃焼空間で燃焼させて前記改質部を加熱する燃焼装置であって、
前記空気供給部として、前記燃料ガス噴出孔の燃料ガス噴出方向における上流側の第1空気供給領域に対して燃焼用空気を供給する第1空気供給部と、前記燃料ガス噴出孔の燃料ガス噴出方向における前記第1空気供給領域よりも下流側の第2空気供給領域に対して燃焼用空気を供給する第2空気供給部と、を備え、
前記燃料ガス噴出孔が設けられた噴出孔配置部との間に隙間を介在させた状態で配置されており、前記燃料ガス噴出孔から噴出された燃料ガスが通過する燃料ガス通過孔が形成された燃料ガス通過壁部を備え、
前記第1空気供給領域が、前記噴出孔配置部と前記燃料ガス通過壁部との間に介在された隙間であり、
前記第2空気供給領域が、前記燃料ガス通過孔の燃料ガス噴出方向における前記燃料ガス通過壁部よりも下流側に設けられている点にある。
【0006】
また、本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、原燃料ガスを水蒸気改質して改質燃料ガスを生成する改質部と、当該改質部で生成された改質燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行う燃料電池部と、を備えた燃料電池システムであって、
燃焼空間に燃料ガスを噴出させる燃料ガス噴出孔と、前記燃料ガス噴出孔から噴出される燃料ガスに対して燃焼用空気を供給する空気供給部と、を備えて、定常運転時に前記燃料電池部から排出された燃料オフガスが前記燃料ガスとして供給されると共に当該燃料ガスを前記燃焼空間で燃焼させて前記改質部を加熱する燃焼装置として、本発明に係る燃焼装置を備えた点にある。
【0007】
本構成によれば、改質部が水蒸気改質を行えるほど十分には加熱されていない状態である起動運転時においては、原燃料ガスを比較的多く含む起動運転時燃料ガスが燃料ガスとして供給され、その起動運転時燃料ガスが燃料ガス噴出孔から燃焼空間に噴出されて比較的小さな燃焼速度且つ比較的大きな燃焼量で燃焼する。よって、起動運転時に燃料ガス噴出孔上に形成される火炎は、第1空気供給領域からその下流側の第2空気供給領域に亘る比較的大きなものとなる。そして、起動運転時に第1空気供給領域から第2空気供給領域に亘る比較的大きな火炎に対しては、第1空気供給部及び第2空気供給部から比較的多くの燃焼用空気が全体的に供給されるので、起動運転時に供給された起動運転時燃料ガスを安定且つ適切に燃焼させることができる。
一方、改質部が十分に加熱された状態である定常運転時においては、改質燃料ガスを比較的多く含む定常運転時燃料ガスが燃料電池部から燃料オフガスとして供給され、その定常運転時燃料ガスが燃料ガス噴出孔から燃焼空間に噴出されて比較的大きな燃焼速度且つ比較的小さな燃焼量で燃焼する。よって、定常運転時に燃料ガス噴出孔上に形成される火炎は、第1空気供給領域には形成されるがその下流側の第2空気供給領域には形成されない比較的小さなものとなる。そして、定常運転時に第1空気供給領域に形成される比較的小さな火炎に対しては、第1空気供給部から比較的少ない燃焼用空気が集中的に供給されると共に、第2空気供給部から第2空気供給領域に供給された空気流による影響が小さくなるので、定常運転時に供給された定常運転時燃料ガスを安定且つ適切に燃焼させることができる。
更に、第1空気供給領域が、燃料ガス噴出孔が設けられた噴出孔配置部と燃料ガス噴出孔から噴出された燃料ガスが通過する燃料ガス通過孔が形成された燃料ガス通過壁部との間に介在する隙間とされているので、燃料ガス噴出孔から噴出される燃料ガスに対して噴出直後に燃焼用空気を供給して、当該燃料ガスを効率良く燃焼させることができる。
また、第2空気供給領域が、燃料ガス通過孔の燃料ガス噴出方向における燃料ガス通過壁部よりも下流側に設けられており、第1空気供給領域との間に燃料ガス通過壁部が介在することになるので、起動運転時においては、第2空気供給領域に形成される火炎に対して適切に第2空気供給部から燃焼用空気を供給しながら、定常運転時においては、第2空気供給部から第2空気供給領域に供給された空気流による第1空気供給領域に対する影響を、間に介在された燃料ガス通過壁部により抑制することができ、第1空気供給領域への燃焼用空気の供給安定性を確保することができる。
従って、本発明により、燃料電池システム用の燃焼装置において、燃焼速度及び燃焼量が比較的大幅に変化するという条件下においても、共通の燃焼部において、改質部を効率良く加熱するのに適した火炎を形成しながら安定して燃料ガスを燃焼させることができる技術を提供することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記燃料ガス噴出孔の開口面積が、前記燃料ガス通過孔の開口面積よりも小さく設定されている点にある。
【0009】
本構成によれば、燃料ガス噴出孔の開口面積が燃料ガス通過孔の開口面積よりも小さく設定されているので、燃料ガス噴出孔から噴出した燃料ガスを燃料ガス通過壁部に衝突させることなく燃料ガス通過孔に通過させて、安定した火炎を形成することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記燃料ガス噴出孔の側方に設けられ、燃焼用空気が供給される燃焼用空気空間と前記燃焼空間とを区画する側壁部を備え、
前記第2空気供給部が、前記側壁部に形成された第2空気供給口で構成されており、当該第2空気供給口が、前記第2空気供給領域に向けて側方から燃焼用空気を噴出させる点にある。
【0011】
本構成によれば、燃料ガス噴出孔の側方に設けられた側壁部に形成された第2空気供給口から第2空気供給領域に向けて側方から燃焼用空気が噴出される。このことで、定常運転時に第1空気供給領域に形成される比較的小さな火炎に対し、第2空気供給口から第2空気供給領域に向けて側方から噴出された空気流による影響を一層小さくして、定常運転時の燃焼安定性を一層向上することができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記側壁部が、前記燃料ガス噴出孔の燃料ガス噴出方向に対して先広がりの状態で設けられている点にある。
【0013】
本構成によれば、燃料ガス噴出孔の側方において、燃料ガス噴出孔の燃料ガス噴出方向に対して先広がりの状態で側壁部が設けられているので、燃焼後の排ガスを側壁部に沿ってできるだけ広範囲に拡散させて、燃焼空間の下流側に位置する改質部をできるだけ均一に加熱することができる。更に、側壁部に形成された第2空気供給口からの燃焼用空気噴出方向は、燃料ガス噴出孔の燃料ガス噴出方向に沿った成分を有するものとなるので、燃料ガス噴出孔上に形成される火炎の安定性を向上することができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記燃料ガス噴出孔が長手方向に沿って複数配置されて帯状に形成された帯状噴出孔配置部を挟む両側方の夫々に平板状に形成された一対の前記側壁部を対向配置してなる溝状燃焼部を備えた点にある。
【0015】
本構成によれば、帯状燃焼部において、複数の燃料ガス噴出孔を帯状噴出孔配置部に配置することができる上に、その帯状噴出孔配置部を挟む両側方の夫々に一対の側壁部を対向配置して、それら一対の側壁部の夫々に、第1空気供給部を構成する第1空気供給口や第2空気供給部を構成する第2空気供給口を形成することができる。
【0016】
本発明の第6特徴構成は、前記溝状燃焼部の複数が並列配置されている点にある。
【0017】
本構成によれば、複数の燃料ガス噴出孔が長手方向に配置された帯状噴出孔配置部を有する溝状燃焼部の複数が並列配置されているので、複数の燃料ガス噴出孔を広範囲且つ均一に配置することができる。よって、下流側に位置する改質部を一層広範囲且つ均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図6】燃焼装置の起動運転時(a)及び定常運転時(b)の状態を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る燃焼装置及び燃料電池システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の燃料電池システム100,101は、天然ガス系都市ガスなどの原燃料ガスG0を水蒸気改質して水素を富化させた改質燃料ガスG1を生成する改質部2と、当該改質部2で生成された改質燃料ガスG1と空気A1(酸化剤ガスの一例)との電気化学反応により発電を行う燃料電池部3と、を備えると共に、燃料ガスGa,Gbを改質部2が設けられた燃焼空間60に臨む燃焼部12で燃焼させて当該改質部2を加熱する燃焼装置10を備える。尚、この燃焼空間60には、燃焼部12において燃料ガスGa,Gbを点火する点火プラグや点火ヒーターなどの点火器13が設けられている。
【0020】
例えば、
図1に示す燃料電池システム100では、燃焼装置10の燃焼部12から上向きに燃焼排ガスCを吹き出す燃焼空間60の上方に改質部2が設けられており、その燃焼装置10の下側に燃料電池部3が配置されている。
一方、
図2に示す燃料電池システム101では、燃焼装置10の燃焼部12から上向きに燃焼排ガスCを吹き出す燃焼空間60と改質部2との間に燃料電池部3が配置されており、燃焼装置10から燃焼空間60に吹き出された燃焼排ガスCを改質部2が配置された空間2Aに導くための排ガス路61が設けられている。
そして、これら本実施形態の燃料電池システム100,101では、燃焼装置10の燃焼部12から燃焼空間60に吹き出された高温の燃焼排ガスCにより改質部2を比較的高温に加熱することができる。更に、改質部2を通過した後の燃焼排ガスCは、その上側に配置された空気加熱部1に供給される。この空気加熱部1では、燃料電池部3に供給される空気A0を燃焼排ガスCとの熱交換により予熱することができる。
【0021】
燃料電池システム100,101では、改質部2が水蒸気改質を行えるほど十分には加熱されていない状態である起動運転時と、改質部2が十分に加熱された状態である定常運転時とでは、燃焼速度や燃焼量が異なる燃料ガスGa,Gbが燃焼装置10に供給される。以下、その詳細について説明を加える。
【0022】
改質部2が水蒸気改質を行えるほど十分には加熱されていない状態である起動運転時においては、改質部2及び燃料電池部3の燃料極を通過した原燃料ガスG0が、起動運転時燃料ガスGaとして、燃焼装置10の燃料導入管15に供給される。同時に、空気加熱部1及び燃料電池部3の空気極を通過した空気A0が、起動運転時燃焼用空気Aaとして、燃焼装置10の空気導入管16に供給される。そして、燃焼装置10では、燃料導入管15から供給された起動運転時燃料ガスGaが、空気導入管16から供給された起動運転時燃焼用空気Aaを利用して比較的大きな燃焼量で燃焼されることになる。
【0023】
一方、改質部2が十分に加熱された状態である定常運転時では、改質部2で生成された改質燃料ガスG1が、燃料電池部3の燃料極(図示省略)に供給される。同時に、空気加熱部1で予熱された空気A1が、燃料電池部3の空気極(図示省略)に供給されて、燃料電池部3にて電気化学反応による発電が行われる。その際、燃料電池部3の燃料極からは、改質燃料ガスG1や一酸化炭素を多く含むことで上記起動運転時燃料ガスGa(原燃料ガスG0)よりも燃焼速度が速い燃料オフガスG2が排出される。同時に、燃料電池部3の空気極からは、酸素濃度が低下した空気オフガスA2が排出される。
即ち、定常運転時では、燃料電池部3の燃料極から排出されて上記起動運転時燃料ガスGa(原燃料ガスG0)よりも燃焼速度が速い燃料オフガスG2が、定常運転時燃料ガスGbとして、燃焼装置10の燃料導入管15供給される。同時に、燃料電池部3の空気極から排出されて酸素濃度が低下した空気オフガスA2が、定常運転時燃焼用空気Abとして、燃焼装置10の空気導入管16に供給される。そして、燃焼装置10では、燃料導入管15から供給された比較的燃焼速度が速い定常運転時燃料ガスGbが、空気導入管16から供給された定常運転時燃焼用空気Abを利用して比較的小さな燃焼量で燃焼されることになる。
【0024】
そして、本実施形態の燃料電池システム100,101に設けられた燃焼装置10は、燃焼速度及び燃焼量が比較的大幅に変化するという条件下においても、共通の燃焼部12において、改質部2を効率良く加熱するのに適した火炎を形成しながら安定して燃料ガスGa,Gbを燃焼させることができるものとして構成されている。
【0025】
以下、燃焼装置10の実施形態について、
図3~
図6に基づいて説明する。
本実施形態の燃焼装置10は、
図3~
図6に示すように、燃焼空間60に臨む燃焼部12に対して燃料ガスGを噴出させる燃料ガス噴出孔41と、燃料ガス噴出孔41から噴出される燃料ガスGに対して燃焼用空気Aを供給する空気供給部49,54と、を備えている。
【0026】
燃焼装置10は箱状の筐体11の上面開口部を燃焼面部材50で覆う形態を有しており、燃料導入管15及び空気導入管16から筐体11の内部に導入された燃料ガスG及び燃焼用空気Aを、燃焼面部材50に設けられた燃料ガス噴出孔41や空気供給部49,54から燃焼部12に吹き出して燃焼させるものとして構成されている。
【0027】
燃焼部12は、夫々が溝状に形成された2つの溝状燃焼部12Aを並列配置して構成されている。夫々の溝状燃焼部12Aの中央底部には、水平方向に延びる帯状に形成された帯状噴出孔配置部40aが配置されており、その帯状噴出孔配置部40aには、複数の燃料ガス噴出孔41が帯状噴出孔配置部40aの長手方向に沿って列状に配置されている。即ち、複数の燃料ガス噴出孔41が長手方向に配置された帯状噴出孔配置部40aを有する溝状燃焼部12Aの複数が並列配置されているので、複数の燃料ガス噴出孔41が広範囲且つ均一に配置されることになる。よって、燃焼排ガスCの流れに沿って燃焼空間60の下流側に位置する改質部2(
図1及び
図2を参照)を一層広範囲且つ均一に加熱することができる。
【0028】
図5及び
図6に示すように、溝状燃焼部12Aの中央部には管状の燃料ガス噴出管部40が設けられており、その燃焼空間60側の面が帯状噴出孔配置部40aとされている。燃料ガス噴出管部40の内部には、他の空間とは区画された状態で燃料ガス空間45が形成されており、燃料導入管15(
図3及び
図4参照)に供給された燃料ガスGa,Gbが、燃料ガス空間45に導入される。
そして、
図6に示すように、燃料ガス空間45に導入された燃料ガスGa,Gbが、燃料ガス噴出管部40の帯状噴出孔配置部40aに形成された燃料ガス噴出孔41から燃焼空間60に向かう上向きの燃料ガス噴出方向GDに沿って噴出される。
尚、夫々の帯状噴出孔配置部40aには、両側方からの燃焼用空気Aa,Abの供給を良好に受けながらできるだけ均等に燃料ガスGa,Gbを噴出させるために、燃料ガス噴出孔41が一列で配置されているが、燃料ガス噴出孔41の列数については適宜変更可能である。
【0029】
噴出孔配置部40aと平行に延びる帯状に形成された帯状燃料ガス通過壁部47aが、燃料ガス噴出孔41が設けられた噴出孔配置部40aとの間に隙間49を介在させた状態で配置されている。更に、この帯状燃料ガス通過壁部47aには、燃料ガス噴出孔41から噴出された燃料ガスGa,Gbが通過する複数の燃料ガス通過孔48が、燃料ガス噴出孔41と同様に列状に配置されている。
更に、燃料ガス噴出孔41の口径(開口面積)が、燃料ガス通過孔48の口径(開口面積)よりも小さく設定されているので、燃料ガス噴出孔41から噴出した燃料ガスGa,Gbの略全部が、帯状燃料ガス通過壁部47aに衝突することなく燃料ガス通過孔48を通過することになって、安定した火炎が形成される。
【0030】
尚、本実施形態では、帯状噴出孔配置部40a及び帯状燃料ガス通過壁部47aにおいて、複数の燃料ガス噴出孔41及び燃料ガス通過孔48を一列で配置したが、例えば、これら複数の燃料ガス噴出孔41及び燃料ガス通過孔48を、できるだけ多く配置するべく千鳥配列状等に配置しても構わない。
【0031】
帯状噴出孔配置部40a及び帯状燃料ガス通過壁部47aを挟む両側方の夫々には、平板状に形成された一対の側壁部50aが対向配置されており、
図5及び
図6に示すように、これら一対の側壁部50aは、燃料ガス噴出孔41からの燃料ガス噴出方向GDに対して先広がりの状態で設けられている。即ち、燃焼面部材50は、金属板を折り曲げて製作されており、当該金属板をV字状に折り曲げる形態で一対の側壁部50aが形成されており、その谷部を上方に突出するように折り曲げる形態で先端が帯状燃料ガス通過壁部47aとなる燃料ガス通過部47が形成されている。
【0032】
図3~
図6に示すように、帯状噴出孔配置部40aを挟む両側方の夫々に配置された側壁部50a及び燃料ガス通過部47は、筐体11と燃焼面部材50とで規定された燃焼用空気空間51と燃焼空間60とを区画するものとして配置されている。
そして、燃料ガス噴出管部40と燃料ガス通過部47との間には、燃料ガス噴出孔41から噴出される燃料ガスGa,Gbに対して燃焼用空気Aa,Abを供給する第1空気供給部として、燃焼用空気空間51から燃焼用空気Aa,Abが流入する隙間49が形成されている。
更に、側壁部50aには、燃料ガス噴出孔41から噴出される燃料ガスGa,Gbに対して燃焼用空気Aa,Abを供給する第2空気供給部として、燃焼用空気空間31から燃焼空間60に燃焼用空気Aa,Abを噴出させる複数の空気供給口54が、溝状燃焼部12Aの長手方向に沿って列状に形成されている。
また、
図5に示すように、筐体11内において、燃焼用空気空間51とその下方にある下方空間17とが、整流板18により区画されており、その整流板18には、複数の連通口19が形成されており、空気導入管16に供給された燃焼用空気Aa,Abが、下方空間17及び連通口19を通流して整流された上で、燃焼用空気空間51に導入される。
【0033】
即ち、
図6に示すように、燃焼用空気空間51に導入された燃焼用空気Aa,Abが、燃料ガス噴出管部40と燃料ガス通過部47との間の隙間49に側方から供給されると共に、側壁部50aに形成された夫々の空気供給口54から燃料ガス噴出方向GDに対して側方から噴出される。そして、その燃焼用空気Aa,Abが、燃料ガス噴出孔41からの燃料ガス噴出方向GDにおける上記隙間49に相当する第1空気供給領域R1及び燃料ガス通過孔48よりも下流側の第2空気供給領域R2に対して側方から供給されて、燃料ガスGa,Gbの燃焼に利用されることになる。ここで、側壁部50aが、燃料ガス噴出孔41からの燃料ガス噴出方向GDに対して先広がりの状態で設けられているので、燃焼後の燃焼排ガスが側壁部50aに沿ってできるだけ広範囲に拡散して、燃焼排ガスCの流れに沿って燃焼空間60の下流側に位置する改質部2(
図1及び
図2を参照)ができるだけ均一に加熱される。更に、側壁部50aに形成された夫々の空気供給口54からの燃焼用空気Aa,Abの噴出方向は、燃料ガス噴出孔41からの燃料ガス噴出方向GDに沿った成分を有するものとなるので、燃料ガス噴出孔41上に形成される火炎Fa,Fbの安定性が向上される。
【0034】
第1空気供給部としての隙間49は、
図6に示すように、燃料ガス噴出孔41からの燃料ガス噴出方向GDにおける燃料ガス通過孔48までの第1空気供給領域R1に対して、第2空気供給領域R2を通らずに燃焼用空気Aa,Abを供給するものとして、燃料ガス噴出管部40と燃料ガス通過部47との間に設けられている。尚、この第1空気供給領域R1は、燃料ガス噴出孔41から噴出された燃料ガスGa,Gbが燃焼して形成される火炎Fa,Fbの形成領域の基端側の領域とされている。
即ち、第1空気供給領域R1が、燃料ガス噴出孔41が設けられた噴出孔配置部40aと燃料ガス噴出孔41から噴出された燃料ガスGa,Gbが通過する燃料ガス通過孔48が形成された帯状燃料ガス通過壁部47aとの間に介在する隙間49とされているので、燃料ガス噴出孔41から噴出される燃料ガスGa,Gbに対して噴出直後に燃焼用空気Aa,Abが供給されて、当該燃料ガスGa,Gbが効率良く燃焼される。
【0035】
一方、第2空気供給部としての空気供給口54は、
図6に示すように、燃料ガス通過孔48が形成された帯状燃料ガス通過壁部47aよりも上方(燃料ガス噴出孔41からの燃料ガス噴出方向GDにおける帯状燃料ガス通過壁部47aよりも下流側)の第2空気供給領域R2に対して、第1空気供給領域R1を通らずに燃焼用空気Aa,Abを供給するものとして、側壁部50aに配置されている。尚、この第2空気供給領域R2は、詳細については後述するが、起動運転時に形成される比較的大きな火炎Faの形成領域の先端側の領域であって、定常運転時に形成される比較的小さな火炎Fbの形成領域には略含まれていない領域とされている。
【0036】
上記のような構成を採用することにより、起動運転時及び定常運転時の夫々において、改質部2を効率良く加熱するのに適した火炎Fa,Fbを形成しながら安定して燃料ガスGa,Gbを燃焼させることができる。
即ち、
図6(a)に示すように、改質部2が水蒸気改質を行えるほど十分には加熱されていない状態である起動運転時においては、上述のように、原燃料ガスG0を比較的多く含む起動運転時燃料ガスGaが燃料ガス噴出孔41から燃料ガス通過孔48を通過して燃焼空間60に噴出されて、比較的小さな燃焼速度且つ比較的大きな燃焼量で燃焼する。すると、この起動運転時に燃料ガス通過孔48上に形成される火炎Faは、燃料ガス通過孔48からその上方の第2空気供給領域R2に亘る比較的大きなものとなる。そして、この起動運転時の比較的大きな火炎Faに対しては、隙間49及び空気供給口54の両方から、比較的多くの起動運転時燃焼用空気Aaが全体的に供給されるので、起動運転時に供給された起動運転時燃料ガスGaが安定且つ適切に燃焼されることになる。
特に、第2空気供給領域R2が、帯状燃料ガス通過壁部47aよりも上方に設けられており、第1空気供給領域R1との間に帯状燃料ガス通過壁部47aが介在することになるので、起動運転時においては、第2空気供給領域R2に形成される火炎Faに対して適切に空気供給口54から起動運転時燃焼用空気Aaが供給されることになる。
【0037】
一方、
図6(b)に示すように、改質部2が十分に加熱された状態である定常運転時においては、上述のように、改質燃料ガスG1を比較的多く含む定常運転時燃料ガスGbが燃料ガス噴出孔41から燃料ガス通過孔48を通過して燃焼空間60に噴出されて、比較的大きな燃焼速度且つ比較的小さな燃焼量で燃焼する。よって、この定常運転時に燃料ガス通過孔48上に形成される火炎Fbは、上方の第2空気供給領域R2には形成されない比較的小さなものとなる。そして、この定常運転時の比較的小さな火炎Fbに対しては、隙間49から比較的少ない定常運転時燃焼用空気Abが集中的に供給されると共に、空気供給口54から第2空気供給領域R2に供給された定常運転時燃焼用空気Abの流れAF2による影響が小さくなるので、定常運転時に供給された定常運転時燃料ガスGbが安定且つ適切に燃焼されることになる。
特に、定常運転時においては、空気供給口54から第2空気供給領域R2に供給された空気Aの流れAF2による第1空気供給領域R1に対する影響が、間に介在された帯状燃料ガス通過壁部47aにより抑制されているので、第1空気供給領域R1への定常運転時燃焼用空気Abの供給安定性が確保されている。
【0038】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0039】
(1)上記実施形態では、燃料ガス噴出孔41が長手方向に沿って複数配置されて帯状に形成された帯状噴出孔配置部40aを挟む両側方の夫々に平板状に形成された一対の側壁部50aを対向配置し、それら一対の側壁部50aの夫々に空気供給部としての空気供給口54を配置したが、側壁部の構成やその側壁部における空気供給口の配置状態等については適宜変更可能である。
【0040】
(2)上記実施形態では、2つの溝状燃焼部12Aを並列配置して、燃焼装置10の燃焼部12を構成したが、溝状燃焼部12Aの配置数や配置状態等については適宜変更可能である。また、溝状燃焼部12Aとするのではなく、平面状の燃焼部としても構わない。
【符号の説明】
【0041】
2 改質部
3 燃料電池部
10 燃焼装置
12 燃焼部
12A 溝状燃焼部
40 燃料ガス噴出管部
40a 帯状噴出孔配置部(噴出孔配置部)
40a 噴出孔配置部
41 燃料ガス噴出孔
47 燃料ガス通過部
47a 帯状燃料ガス通過壁部(燃料ガス通過壁部)
48 燃料ガス通過孔
49 隙間(第1空気供給部)
50a 側壁部
51 燃焼用空気空間
54 空気供給口(第2空気供給部)
60 燃焼空間
100,101 燃料電池システム
A,Aa,Ab 燃焼用空気
Fa,Fb 火炎
G,Ga,Gb 燃料ガス
G0 原燃料ガス
G1 改質燃料ガス
G2 燃料オフガス
GD 燃料ガス噴出方向
R1 第1空気供給領域
R2 第2空気供給領域