(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20240610BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G01N23/04
H05K7/20 G
(21)【出願番号】P 2021063031
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直也
(72)【発明者】
【氏名】野田 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】成田 幹
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-088199(JP,A)
【文献】国際公開第2010/047067(WO,A1)
【文献】特開2016-109488(JP,A)
【文献】実開昭60-009295(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00―G01N 23/2276
F25D 1/00―F25D 31/00
H05K 7/00―H05K 7/20
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部が正面側の第1室(R1)と背面側の第2室(R2)に分離された筐体(4)と、前記第1室に配置されたX線発生器(2)と、前記第2室に配置されたX線検出器(3)と、前記筐体の背面に配置されて前記筐体内に冷気を供給する冷却器(12)とを有するX線検査装置(1,1a )であって、
前記冷却器
の吹出口13から供給される冷気の供給方向を分岐させて前記第1室と前記第2室にそれぞれ冷気を供給する冷気案内路(20,21,22)
と、
前記X線発生器(2)と前記X線検出器(3)で生じた温気が前記冷却器(12)の吸込口(14)に戻る温気案内路(30)と、
を有することを特徴とするX線検査装置(1)。
【請求項2】
前記冷気案内路は、
前記筐体(4)の外側に設けられ、前記冷気を案内して前記第1室(R1)に供給する外部冷気案内路(20)を有することを特徴とする請求項1記載のX線検査装置(1)。
【請求項3】
前記冷気案内路は、
前記筐体(4)の内部に設けられ、前記冷気を案内して前記第1室(R1)に供給する内部冷気案内路(22)を有することを特徴とする請求項1記載のX線検査装置(1a)。
【請求項4】
前記X線発生器(2)と前記X線検出器(3)で冷気が温められて生じた温気が前記冷却器(12)
の前記吸込口(14)に戻る
前記温気案内路(30)が、前記冷気案内路(20,21,22)とは異なる経路で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載のX線検査装置(1,1a)。
【請求項5】
前記冷却器(12)は、温風を外部に吹き出す排気口(15)と、外部から外気を採り入れる吸気口(16)を有しており、
外部に面する前記冷却器の背面側に設けられ、前記排気口と前記吸気口を外部に連通するように覆うとともに前記排気口と前記吸気口を遮断する被覆体(40)を有
し、
前記被覆体(40)には、外部に温気を排出する出口(44)が背面側に設けられ、外部から外気を吸引する入口(46)が正面側に設けられることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のX線検査装置(1,1a)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部にX線発生器を含む複数の熱源を有しており、筐体の外部に設けられた冷却器によって各熱源を冷却するX線検査装置に係り、特にX線発生器を含む各熱源に冷却器からの冷気を効率よく導いて冷却を行うことができるX線検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、X線検査装置の発明が開示されている。このX線検査装置の第1筐体3の内部は、隔壁16によって使用制限温度等に基づき複数の冷却区画C1,C2,C3,C4 に仕切られており、各区画C2,C3,C4には各々固有の使用制限温度を有する熱源17,18,19,20 が収納されている。使用制限温度が低い熱源19,20 が使用制限温度が高い熱源17,18 の上流に配置されるように空気の流路Bが設定されているので冷却効率が良い。熱交換器15の吸熱部15a は第1筐体3内にあり、放熱部は外気に連通した第2筐体内にある。この発明によれば、高価なエアコンを用いずに高い冷却効果を実現できるものとされている。
【0003】
下記特許文献2には、X線異物検出装置の発明が開示されている。このX線異物検出装置1は、温度センサ14で検出した筐体3内の温度が所定温度以上である時、制御手段10が制御弁13を開とし、筐体3の上面に設けられたボルテックスチューブ11を作動させて筐体3内に冷却空気を供給し、X線発生手段7を冷却する。同時にアクチュエータ20が作動されて扉16が駆動され、筐体3の排気口15が開放される。この発明によれば、筐体内の圧力上昇が抑えられ、排気によって冷却効率が向上するものとされている。また、この特許文献2には、
図14において、X線異物検出装置100の筐体101の背面側にエアコン102を設け、筐体の内部を冷却する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-109488号公報
【文献】特開2009-300379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたX線検査装置の発明によれば、使用制限温度が低い熱源が高い熱源の上流に配置されるように空気の流路が筐体内に設けられているので、一定の冷却効果は得られるものの、冷却器を用いた場合のような高い冷却効果が得られないという問題があった。
【0006】
上記特許文献2に開示されたX線異物検出装置の発明によれば、筐体の上面に設けられたボルテックスチューブによって、一つの空間である筐体内に冷却空気を流入させている。また同文献の
図14に開示されたX線異物検出装置では、筐体の背面にあるエアコンから供給される冷気は、筐体の背面側から一つの空間である筐体内に直接供給されていた。何れの構成も、X線発生器のような主たる熱源に冷気を導くことを優先すれば、これら以外の熱源、例えばX線検出器や電源部等には冷気が届きにくくなり、これらX線検出器等のような熱源に対する冷却効率が良くないという問題があった。
【0007】
また、近年進展しているX線検査装置の高性能化に伴い、冷却すべき機器の種類が増加する傾向にある。例えば、制御部は、画像処理用の第1制御部と、検査データおよび画像データの外部機器への出力や周辺機器との連動を制御する第2制御部のように複数化しており、X線検査装置では多くの冷却対象について各々適切な冷却性能が求められるようになっている。特に、前述した制御部については、X線検査装置の高性能化の一例として、透過画像の分解能の向上が求められており、高分解能のために従来よりも素子数の大きいX線検出器が使用されるようになり、画像処理に要する制御部のCPUの負荷が増大している。CPUの性能は温度の上昇によって低下するため、制御部のPC(CPU)近傍は特に冷却の効果に留意しなければならない。さらに、X線検査装置の高性能化の他の例として、深層学習の付加が求められる場合があり、その場合には深層学習に必要な要素としてGPUを使用するため、さらに熱源が増加し、効率的な冷却が一層求められる状況となっている。
【0008】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、X線発生器を含む複数の熱源に冷却器からの冷気を導いて効率よく冷却を行うことができるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載されたX線検査装置1,1aは、
その内部が正面側の第1室R1と背面側の第2室R2に分離された筐体4と、前記第1室R1に配置されたX線発生器2と、前記第2室R2に配置されたX線検出器3と、前記筐体4の背面に配置されて前記筐体4内に冷気を供給する冷却器12とを有するX線検査装置1,1aであって、
前記冷却器12の吹出口13から供給される冷気の供給方向を分岐させて前記第1室R1と前記第2室R2にそれぞれ冷気を供給する冷気案内路20,21,22と、
前記X線発生器2と前記X線検出器3で生じた温気が前記冷却器12の吸込口14に戻る温気案内路30と、
を有することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載されたX線検査装置1は、請求項1記載のX線検査装置において、
前記冷気案内路は、
前記筐体4の外側に設けられ、前記冷気を案内して前記第1室R1に供給する外部冷気案内路20を有することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載されたX線検査装置1aは、請求項1記載のX線検査装置において、
前記冷気案内路は、
前記筐体4の内部に設けられ、前記冷気を案内して前記第1室R1に供給する内部冷気案内路22を有することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載されたX線検査装置1,1aは、請求項1乃至3の何れか一つに記載のX線検査装置において、
前記X線発生器2と前記X線検出器3で冷気が温められて生じた温気が前記冷却器12の前記吸込口14に戻る前記温気案内路30が、前記冷気案内路20,21,22とは異なる経路で構成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載されたX線検査装置1,1aは、請求項1乃至4の何れか一つに記載のX線検査装置において、
前記冷却器12は、温風を外部に吹き出す排気口15と、外部から外気を採り入れる吸気口16を有しており、
外部に面する前記冷却器12の背面側に設けられ、前記排気口15と前記吸気口16を外部に連通するように覆うとともに前記排気口15と前記吸気口16を遮断する被覆体40を有し、前記被覆体40には、外部に温気を排出する出口44が背面側に設けられ、外部から外気を吸引する入口46が正面側に設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載されたX線検査装置によれば、冷却器の吹出口から供給される冷気の供給方向を冷気案内路によって分岐させ、第1室と第2室にそれぞれ冷気を供給してX線発生器とX線検出器をそれぞれ確実に冷却することができる。また、前記X線発生器と前記X線検出器で生じた温気を前記冷却器の吸込口に戻すことができる。
【0015】
請求項2に記載されたX線検査装置によれば、外部冷気案内路は筐体の外側に設けられているため、外部冷気案内路で導かれる冷気は、筐体内の熱源であるX線発生器とX線検出器から離れた経路を通り、低温のままで第1室に供給されるため、特にX線発生器に関して高い冷却効率が得られる。
【0016】
請求項3に記載されたX線検査装置によれば、筐体内に配置された内部冷気案内路で導かれる冷気は、筐体の背面側にある冷却器から、筐体の正面側にある筐体内の第1室に最短距離で供給されるため、特にX線発生器に関して高い冷却効率が得られる。
【0017】
請求項4に記載されたX線検査装置によれば、X線発生器とX線検出器で生じる温気は、冷気案内路とは異なる経路で構成された前記温気案内路を経て冷却器の前記吸込口に戻るため、冷気と温気の混合による冷却効率の低下を確実に回避できる。
【0018】
請求項5に記載されたX線検査装置によれば、冷却器の背面側に設けられた排気口と吸気口は被覆体に覆われているため、清掃時に排気口や吸気口から水が内部に浸入することを防止できる。また、排気口と吸気口は、遮蔽体で遮断されているため、排気口から外部に排出された暖気が、吸気口から冷却器に吸い込まれて冷却効率を低下させる不都合は未然に防止できる。また、新規に吸引する外気と、排出する温気とが混じり合う可能性は小さく、排気口から外部に排出された暖気が、吸気口から冷却器に吸い込まれて冷却効率を低下させる不都合は未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態のX線検査装置の縦断面図である。
【
図2】第1実施形態のX線検査装置の横断面図である。
【
図3】第1実施形態のX線検査装置の一部を切り欠いて示した斜視図である。
【
図4】第2実施形態のX線検査装置の縦断面図である。
【
図5】第2実施形態のX線検査装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1実施形態のX線検査装置1について
図1~
図3を参照して説明する。
実施形態のX線検査装置1は、X線発生器2から被検査物にX線を照射し、被検査物を透過したX線をX線検出器3で検出することにより、被検査物に含まれる異物の有無や被検査物の材質等についての検査を行う装置である。
【0021】
図1~
図3に示すように、X線検査装置1は、上述した機能を発揮するために必要な各種の構成を収納する筐体4を備えている。筐体4は、その背面側を構成する縦長の基部5と、基部5の正面上部に設けられた大箱型の上部6と、前記上部6に対して縦方向に間隔をおいて、基部5の正面下部に設けられた薄い小箱型の下部7を有しており、
図1に示すように全体としては正面(図中左側)の下方に被検査物が配置される凹部を備えた略コ字形の全体形状となっている。
【0022】
図1~
図3に示すように、筐体4の内部には、基部5と上部6の境界に、縦方向に平行な仕切板8が設けられている。この仕切板8は、基部5と上部6の間を仕切っているが、基部5と下部7の間には存在せず、従って筐体4の内部は、上部6の内部空間である第1室R1と、連通した基部5と下部7の内部空間である第2室R2とに分離されている。
【0023】
図1~
図3に示すように、第1室R1の内部にはX線発生器2が配置されている。X線発生器2は、絶縁油に浸漬された図示しないX線発生源を収納する容器2aと、容器2aの上面に設けられて絶縁油から伝導する熱を放散する放熱部2bを有している。
【0024】
図1~
図3に示すように、第1室R1の内部の正面側には第1制御部9が配置されている。第1制御部9は、画像処理用のCPUを備えている。なお、第1制御部9に隣接した筐体4の上部6の正面外側には、操作パネル10が設けられている。
【0025】
図1に示すように、第2室R2の下部7の内部にはX線検出器3が配置されている。また、第2室R2の基部5の内部には第2制御部11が配置されている。第2制御部11は、画像情報・検査情報等のデータを通信回線を介して外部機器とやり取りするデータ通信を行い、また周辺機器との連動を制御するための制御部であり、X線センサを駆動させる電源部等を有してもよい。
【0026】
なお、
図1において、筐体4の下部7の上面中央が被検査物の検査位置となる。図示はしないが、筐体4の下部7の上面において、
図1の紙面に直交する搬送方向に沿って被検査物を搬送する搬送手段(ベルトコンベア等)を設ければ、被検査物を搬送手段で搬送しながら上部6のX線発生器2によってX線を下方に照射し、被検査物を透過したX線を下部7のX線検出器3で検出して被検査物の検査を行うことができる。
【0027】
次に、このX線検査装置1における冷却システム、特に冷気と温気が流通する案内路乃至経路の構造を説明する。なお、ここで冷気とは、冷却器から送り出される外気よりも低温の空気である。また温気とは、冷却器から供給された冷気が冷却対象の熱を奪った結果、温度が高くなった空気であり、又は冷却器から外部に排出される温度が高い空気を指している。また、以下の説明で参照する図においては、冷気を実線で示し、温気を点線で示し、外部から冷却器に取り入れられる外気を一点鎖線で示すものとする。図中で冷気等を示す線種は、第2実施形態の説明においても同様である。
【0028】
図1~
図3に示すように、筐体4の背面、すなわち基部5の背面側(
図1において右側)には、筐体4内に冷気を供給する縦長薄型であるパネル状の冷却器12が設けられている。冷却器12の基部5側には、冷気を筐体4内に供給する吹出口13が設けられており、吹出口13の下方には被冷却対象から戻ってきた温気が吸い込まれる吸込口14が設けられている。また、基部5とは反対側である冷却器12の背面側の下方には、装置1の外部に温風を吹き出す排気口15が設けられており、排気口15の下方には装置1の外部から外気を採り入れる吸気口16が設けられている。
【0029】
図1~
図3に示すように、X線検査装置1は、冷却器12から供給される冷気の供給方向を分岐させて第1室R1と第2室R2にそれぞれ供給する冷気案内路を有している。冷気案内路には、
図1~
図3に示す外部冷気案内路20と、
図1及び
図2に示す第1内部冷気案内路21がある。
【0030】
図1~
図3に示すように、外部冷気案内路20は、筐体4の基部5及び上部6の一側面に取り付けられたダクト状の部材であり、第2室R2と第1室R1を連通させている。外部冷気案内路20の第2室R2の開口には、冷却器12の吹出口13に取り付けられた吹出ダクト23の一方の出口が接続されている。冷却器12の吹出口13から出た冷気は、吹出ダクト23を経て筐体4外の外部冷気案内路20に入り、筐体4の内部を迂回して第1室R1へ向かう。外部冷気案内路20の第1室R1の開口には、ファン24が設けられ、その下流側には偏向板25が設けられている。ファン24の吹き付け方向の下流近傍には、X線発生器2の放熱部2bがある。また、偏向板25による冷気の偏向方向には、第1制御部9がある。ファン24と偏向板25の配置関係及び偏向板の傾斜角度を適宜に設定することにより、外部冷気案内路20を流れてきた冷気の風量を、放熱部2bと第1制御部9がそれぞれ必要とする冷却の度合いに応じた適宜の比率で2方向に分岐させ、放熱部2bと第1制御部9をそれぞれ適切に冷却する。例えば、n対1の割合で放熱部2bにより多くの冷気が向かうようにする。
【0031】
図1に示すように、第1内部冷気案内路21は、筐体4の基部5内の第2室R2に縦方向に設けられている。第1内部冷気案内路21の上端は、冷却器12の吹出口13に取り付けられた吹出ダクト23の他方の出口に接続されている。第1内部冷気案内路21の下端は、第2室R2の下端で正面側に直角に屈曲し、X線検出器3に冷気を供給できるようになっている。なお、
図1には示していないが、第1内部冷気案内路21の略中央部に前面に向けた分岐部を設け、第2制御部11に冷気の一部が吹き付けられるようにしてもよい。
【0032】
図2及び
図3に示すように、X線検査装置1は、X線発生器2から戻ってくる温気を、冷却器12の吸込口14に接続された吸込ダクト26に戻すための温気案内路30を有している。温気案内路30は、筐体4の基部5及び上部6の他側面(外部冷気案内路20が取り付けられている側面とは反対側の側面)に取り付けられたダクト状の部材であり、第1室R1と第2室R2を連通させている。
図2に示すように、温気案内路30の第1室R1及び第2室R2の開口には、それぞれファン24が設けられている。X線発生器2の放熱部2b及び第1制御部9を通過して生成された第1室R1内の温気は、第1室R1内のファン24によって温気案内路30に入り、さらに第2室R2内のファン24によって第2室R2内に引き込まれる。
図1に示すように、冷却器12の吸込口14に接続された吸込ダクト26は、開口を上に向けているので、第2室R2内に戻った温気はそのまま吸込ダクト26に入る。温気は冷却器12に入って再び冷気となり、吹出口13から筐体4内に供給される循環を繰り返す。
【0033】
図1に示すように、第1内部冷気案内路21からX線検出器3に供給された冷気は、温気となって基部5の第2室R2の内部を上昇し、吸込ダクト26から吸い込まれて冷却器12に入る。筐体4内の空間である第2室R2の縦長の部分も、温気を冷却器12に戻す経路である点において温気案内路であると言える。
【0034】
このように、このX線検査装置1では、冷気案内路(外部冷気案内路20及び第1内部冷気案内路21)と、温気案内路30は、異なる経路で構成されている。特に、外部冷気案内路20と温気案内路30は、筐体4の一側面と他側面にそれぞれ隔離して構成され、第1内部冷気案内路21と温気案内路30は、それぞれ筐体4の第2室R2内と筐体4外側の他側面に隔離して構成されている。
【0035】
以上説明したように、第1実施形態のX線検査装置1によれば、冷却器12から供給される冷気の供給方向を外部冷気案内路20と第1内部冷気案内路21によって分岐させ、第1室R1と第2室R2にそれぞれ冷気を供給し、複数の熱源、すなわち第1室R1のX線発生器2及び第1制御部9と、第2室R2のX線検出器3(及び、必要に応じて第1制御部9)を確実に冷却することができる。なお、外部冷気案内路20と第1内部冷気案内路21は内径(又は断面積)が異なるが、冷却器12が供給できる冷気の量は一定であるため、より高い冷却効果が必要な冷却対象物へ冷気を導く冷却案内路の内径(又は断面積)を必要に応じてより大きく設定すればよい。
【0036】
また、外部冷気案内路20は、筐体の側面から外に突出するような形態で筐体4の外側に設けられているため、これによって導かれる冷気は、筐体4内の熱源であるX線発生器2から離れた経路を通り、低温のままで第1室R1に供給されて直接X線発生器2及び第1制御部9に吹き付けられるため、高い冷却効率が得られる。
【0037】
また、このX線検査装置1によれば、X線発生器2及び第1制御部9で生じる温気と、X線検出器3で生じる温気は、外部冷気案内路20及び第1内部冷気案内路21とは異なり、かつ隔離された経路である温気案内路30等を経て冷却器12に戻るため、冷気と温気の混合による冷却効率の低下は確実に回避できる。
【0038】
図1に示すように、筐体4の基部5の背面には、冷却器12を覆う被覆体40が設けられている。被覆体40は、冷却器12との間に空気の流路となる隙間が生じるように、冷却器12の全体を覆うだけのサイズを有する箱型の部材である。被覆体40は、冷却器12の全体を覆う吸気箱41と、吸気箱41の背面側に取り付けられた排気箱42を有している。
【0039】
図1に示すように、排気箱42は、比較的厚みのある箱部材であり、相当量の空気を吸引する排気流路を内部に設けられるだけの体積を有している。排気流路43は、冷却器12の排気口15を外部に連通させる出口44を備えている。
【0040】
図1に示すように、吸気箱41は、全体として薄型であるが、その下端部は、筐体4の基部5の下方に突出しているため、相当量の空気を吸引する吸気流路45を設けられるだけの体積を有している。吸気流路45は、冷却器12の吸気口16を外部に連通させて外気を採り入れる入口46を備えている。なお、入口46には網を設けて清掃時に水が浸入しにくい構造としてもよい。入口46は、吸気箱41の正面側(基部5側)の下端部に開口しており、吸気流路45は入口46から水平方向に延設され、真上方向に偏向し、冷却器12の吸気口16に接続されている。
【0041】
図1に示すように、被覆体40の排気箱42の内部には、複数(図示例では3)の偏向板50が種々の異なる角度で設けられており、屈曲した形状の排気流路43を構成している。また、被覆体40の吸気箱41の内部の吸気流路45の角部には、少なくとも1枚の偏向板50が設けられており、排気流路43の一部を空気の流通に影響がない程度に閉鎖している。
【0042】
以上説明したように、
図1に示した被覆体40の構造によれば、冷却器12の排気口15と吸気口16は遮断されている。すなわち、外気を採り入れる入口46から冷却器12の吸気口16に至る吸気流路45と、冷却器12の排気口15から温気を排出する出口44に至る排気流路43は、互いに隔絶されている。しかも、入口46と出口44は互いに反対向きである。従って、新規に吸引する外気と、排出する温気とが混じり合う可能性は小さく、排気口15から外部に排出された暖気が、吸気口16から冷却器12に吸い込まれて冷却効率を低下させる不都合は未然に防止できる。
【0043】
また、吸気流路45と排気流路43には偏向板50が設けられているため、清掃時に出口44から排気口15に水が浸入し、また入口46から吸気口16に水が内部に浸入することを防止できる。
【0044】
本発明の第2実施形態のX線検査装置1aについて、
図4及び
図5を参照して説明する。
第2実施形態のX線検査装置1aは、冷気案内路として、前述した外部冷気案内路20に替えて、筐体4内に第2内部冷気案内路22を有する点と、筐体4の外部ではなく、筐体4内に温気案内路が設けられている点において、第1実施形態のX線検査装置1と異なる。以下の説明では、これらの相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一乃至実質的に同一の部分については、第1実施形態の図に付した符号と同一の符号を
図4及び
図5の各部に付して説明を適宜省略し、第1実施形態での説明を援用する。
【0045】
図4及び
図5に示すように、X線検査装置1aは、冷却器12から供給される冷気の供給方向を分岐させて第1室R1と第2室R2にそれぞれ供給する冷気案内路として、第2内部冷気案内路22と、第1内部冷気案内路21を有している。第1内部冷気案内路21は、第1実施形態のX線検査装置1aのものと同一である。
【0046】
図4に示すように、筐体4の内部を、第1室R1と第2室R2とに分離している仕切板8aは、第1実施形態とは異なり、基部5と上部6を完全には分離しておらず、仕切板8の上端縁は、概ねX線発生器2の容器2aの上面(従って放熱部2bの下端)の高さにあり、これより上の高さでは第1室R1と第2室R2は連通している。
【0047】
図4及び
図5に示すように、第2内部冷気案内路22は、角筒状をなすダクト状の部材であり、仕切板8aの上端縁に接した状態で第2室R2と第1室R1に跨がって配置され、両室R1,R2を連通させている。第2内部冷気案内路22の第2室R2の端部は、冷却器12の吹出口13に取り付けられた吹出ダクト23の一方の出口が接続されている。
図5を参照して説明すると、第2内部冷気案内路22の第1室R1の端部には、詳細は図示しないが、実線の矢印で示す冷気の流れから分かるように、X線発生器2の放熱部2bと第1制御部9に対応する2つの開口がある。また、第2内部冷気案内路22の内部であって、放熱部2bよりも第2室R2側に、第1室R1に向けて送風するファン24が設けられている。さらに、第2内部冷気案内路22の内部であって、放熱部2bに対応する開口の最も下流側には、ファン24による送風の一部を放熱部2bに向かわせる偏向板25が設けられている。従って、冷却器12の吹出口13から出た冷気は、吹出ダクト23を経て第2内部冷気案内路22に入り、その一部がX線発生器2の放熱部2bに当たってこれを冷却し、残りの冷気が第1制御部9に当たってこれを冷却する。
【0048】
図4及び
図5に示すように、X線検査装置1aは、X線発生器2及び第1制御部9から戻ってくる温気を、冷却器12の吸込口14に接続された吸込ダクト26に戻すための温気案内路を有している。温気案内路は、仕切板8の上端縁を越えて第1室R1から第2室R2に至る経路である。特に
図5に示すように、温気案内路の略中央である仕切板8aの上端縁の近傍には、第1室R1から第2室R2に送風するファン24が設けられている。X線発生器2の放熱部2b及び第1制御部9を通過して生成された第1室R1内の温気は、第1室R1内のファン24に引かれ、第2室R2に入り、そのまま吸込ダクト26に入る。この温気の流れが本実施形態の温気案内路である。温気は冷却器12に入って再び冷気となり、
図5に示すように吹出口13から筐体4内に供給される循環を繰り返す。なお、筐体4内の空間である第2室R2の縦長の部分も、X線検出器3からの温気を冷却器12に戻す経路である点において温気案内路であることは、第1実施形態と同一である。
【0049】
第2実施形態のX線検査装置1aによれば、第1実施形態と同様の効果が得られる他、筐体4内に配置された第2内部冷気案内路22で導かれる冷気は、筐体4の背面側にある冷却器12から筐体4内の第1室R1に最短距離で供給されるため、送風のロスが少なく、特にX線発生器2に関して高い冷却効率が得られる。
なお、以上説明した第2実施形態では、
図5において、左側には、実線の矢印で冷気の移動方向を示すように第2内部冷気案内路22を設け、右側には、第1室R1から第2室R2にかけて破線の矢印で温気の移動方向を示すように温気案内路を配置した。すなわち、空気の流通は概ね反時計周り方向となっている。しかしながら、
図5の視点で見た場合において、右側に図中下向きで冷気が流れる第2内部冷気案内路を設け、左側に図中上向きで温気が流れる温気案内路を配置し、概ね時計周り方向に空気が流通するように構成することも可能であり、その場合にも同様の冷却効果が得られる。
【符号の説明】
【0050】
1,1a…X線検査装置
2…X線発生器
3…X線検出器
4…筐体
12…冷却器
15…冷却器の排気口
16…冷却器の吸気口
20…冷気案内路としての外部冷気案内路
21…冷気案内路としての第1内部冷気案内路
22…冷気案内路としての第2内部冷気案内路
30…温気案内路
40…被覆体
R1…第1室
R2…第2室