(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】旋回装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/02 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
H02K7/02
(21)【出願番号】P 2021065107
(22)【出願日】2021-04-07
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】植木 哲
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 勇樹
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-104792(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第102169035(CN,A)
【文献】特開2007-074790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/02
H02N 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推力発生装置と、前記推力発生装置に取付けられた旋回体と、を備え、
前記推力発生装置は、
中心軸線回りに沿う周方向に回転可能に支持された回転子と、
前記回転子が収容された筐体と、
前記回転子を周方向に回転させるモータと、
前記モータを保持する保持体と、を備え、
前記筐体および前記保持体は、互いに相対変位可能に連結され、
前記回転子は、
径方向の中央部に位置して前記モータに連結された本体部と、
前記本体部を径方向に挟む位置に各別に設けられた磁性体、および前記磁性体と重量が異なる非磁性体と、
前記本体部と前記磁性体および前記非磁性体とを各別に連結するとともに、弾性変形可能に形成された一対の弾性連結片と、を備え、
前記筐体における周方向の一部に、電気伝導体が設けられ、
前記回転子が、周方向に回転する過程において、
前記磁性体および前記非磁性体が、前記電気伝導体と径方向のうちの一方向に並んだときに、
前記中心軸線に沿う軸方向から見て、前記回転子、前記モータ、および前記保持体が、前記中心軸線から前記非磁性体側に向かう向きに、前記筐体に対して変位するように径方向に振動し、
前記旋回体は、
前記一方向に延びるとともに、一端部が前記保持体に固定された旋回棒と、
前記旋回棒における前記一方向の途中位置を、前記軸方向に延びる回転軸線回りに回転可能に支持する支持部と、
前記旋回棒において、前記支持部に支持された部分より前記一方向の他端部側に位置する部分に取付けられ、前記軸方向に直交する水平方向に対する前記旋回棒の傾き姿勢を決めるバランサーと、を備えている、旋回装置。
【請求項2】
前記非磁性体の重量は、前記磁性体の重量より重い、請求項1に記載の旋回装置。
【請求項3】
前記筐体および前記保持体は、互いに弾性変位可能に連結されている、請求項1または2に記載の旋回装置。
【請求項4】
前記弾性連結片は、
前記本体部から径方向の外側に向かうに従い、互いが周方向に離れる向きに延びる一対の連結部と、
一対の前記連結部における径方向の外端部同士を連結し、周方向に延びる周面部と、を備え、
前記磁性体、および前記非磁性体は、前記周面部に設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の旋回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回装置として、燃焼ガスを噴射して推力を発生させる装置(例えば下記特許文献1)を用いて、旋回棒を旋回させる構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような旋回装置では、燃料はもちろんその貯留タンク等も必要となり、重量および大きさが嵩む等の問題が考えられる。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、燃焼ガス等を噴射しなくても旋回棒を旋回させることができる旋回装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る旋回装置は、推力発生装置と、前記推力発生装置に取付けられた旋回体と、を備え、前記推力発生装置は、中心軸線回りに沿う周方向に回転可能に支持された回転子と、前記回転子が収容された筐体と、前記回転子を周方向に回転させるモータと、前記モータを保持する保持体と、を備え、前記筐体および前記保持体は、互いに相対変位可能に連結され、前記回転子は、径方向の中央部に位置して前記モータに連結された本体部と、前記本体部を径方向に挟む位置に各別に設けられた磁性体、および前記磁性体と重量が異なる非磁性体と、前記本体部と前記磁性体および前記非磁性体とを各別に連結するとともに、弾性変形可能に形成された一対の弾性連結片と、を備え、前記筐体における周方向の一部に、電気伝導体が設けられ、前記回転子が、周方向に回転する過程において、前記磁性体および前記非磁性体が、前記電気伝導体と径方向のうちの一方向に並んだときに、前記中心軸線に沿う軸方向から見て、前記回転子、前記モータ、および前記保持体が、前記中心軸線から前記非磁性体側に向かう向きに、前記筐体に対して変位するように径方向に振動し、前記旋回体は、前記一方向に延びるとともに、一端部が前記保持体に固定された旋回棒と、前記旋回棒における前記一方向の途中位置を、前記軸方向に延びる回転軸線回りに回転可能に支持する支持部と、前記旋回棒において、前記支持部に支持された部分より前記一方向の他端部側に位置する部分に取付けられ、前記軸方向に直交する水平方向に対する前記旋回棒の傾き姿勢を決めるバランサーと、を備えている。
【0007】
この発明によれば、本体部に対して弾性変位可能に設けられた磁性体および非磁性体の各重量が互いに異なり、筐体および保持体が、互いに相対変位可能に連結されているので、回転子が周方向に回転すると、回転子にモータを介して連結されている保持体が、回転子とともに、筐体に対して径方向に振動する。
また、回転子が周方向に回転する過程において、磁性体および非磁性体が、電気伝導体と径方向のうちの一方向に並んだときに、軸方向から見て、回転子、モータ、および保持体が、中心軸線から非磁性体側に向かう向きに、筐体に対して変位するように径方向に振動する構成とされている。なお、このような構成は、例えば、磁性体および非磁性体の各重量、弾性連結片の剛性、回転子の回転速度等を調整することで得ることができる。
したがって、回転子の回転時に、磁性体および非磁性体が、電気伝導体と前記一方向に並び、前述の振動が発生すると、磁性体および非磁性体が有する慣性マスにより、弾性連結片が径方向に弾性変形して、非磁性体の回転半径が短くなることで、角運動量保存の法則に基づいて、非磁性体の角速度が増加し、また、磁性体の回転半径は長くなることで、角運動量保存の法則に基づいて、磁性体の角速度は低下する。
また、筐体の周方向の一部に、電気伝導体が設けられているので、磁性体が、電気伝導体の設けられている周方向の位置に達すると、電気伝導体において磁場が変化し、磁性体および電気伝導体に、互いに逆向きで同じ大きさの力が発生する。この力の大きさは、回転子の回転速度と、回転子および筐体の相対速度と、の和に比例する。
これに対し、非磁性体が、電気伝導体の設けられている周方向の位置に達しても、電気伝導体において磁場が変化することはない。
【0008】
以下、具体的に説明する。
説明に際し、前記一方向を前後方向といい、軸方向から見て、中心軸線Oに対して電気伝導体が位置している側を前側といい、これとは逆向きを後側という。
また、軸方向から見て、前後方向に直交する方向を左右方向といい、回転子が時計回りに回転する場合に、電気伝導体の設けられている前側を通過する向きを左側といい、後側を通過する向きを右側という。
【0009】
回転子が、軸方向から見て、時計回りに回転する場合に、非磁性体が、電気伝導体の設けられている前側に達すると、電気伝導体において磁場が変化せず、前述の振動に起因して、非磁性体の慣性マスにより弾性連結片が弾性変形することで、回転半径が短くなった非磁性体の時計回り(左向き)の角速度が増加する一方、前述の振動に起因して、磁性体の慣性マスにより弾性連結片が弾性変形することで、回転半径が長くなった磁性体の時計回り(右向き)の角速度は減少する。したがって、この状態では、回転子にトータルで左向きの運動量(以下、左運動量という)が生ずる。
その後、非磁性体が、電気伝導体の設けられている前側を周方向に通過し、磁性体が、電気伝導体の設けられている前側に達すると、後側に位置して前述と同様に回転半径が短くなった非磁性体の時計回り(右向き)の角速度が増加する一方、前述と同様に回転半径が長くなった磁性体の時計回り(左向き)の角速度は減少する。したがって、この状態では、回転子にトータルで右向きの運動量(以下、右運動量という)が生ずる。
この右運動量によって、回転子が、電気伝導体に対して右側に移動した状態では、磁性体が、電気伝導体における周方向の中央部を通過する過程で、電気伝導体から徐々に径方向の内側に離れるように移動するので、電気伝導体において磁場が変化して、磁性体には電気伝導体に向かう吸引力がかかることで、磁性体の回転半径が長くなり、磁性体の角速度が減少する。したがって、前述の右運動量が増加して前述の左運動量より大きくなる。
以上より、回転子が1回転する間に、回転子、モータ、および保持体は、トータルで右向きの運動量を得る。
次に、筐体について説明する。
磁性体および非磁性体の各重量が互いに異なっているので、回転子が時計回りに回転すると、筐体は反時計回りに揺動円運動し、また、磁性体が、揺動円運動している筐体に設けられた電気伝導体の位置している前側に達すると、磁性体と電気伝導体との間に生ずる吸引力によって、筐体に後ろ向きの力がかかり、筐体の回転半径が短くなり、筐体の角速度が増加する。この際、回転子、モータ、および保持体には、前述のように右向きの運動量が生じ、筐体には右向きの運動量が生じているため、筐体の角速度の増加に伴い、筐体にかかる右向きの運動量が増加する。一方、非磁性体が、電気伝導体の設けられている前側に達すると、筐体の角速度は変化せず、回転子、モータ、および保持体には右向きの運動量が生じ、筐体には左向きの運動量が生ずる。
以上より、回転子が1回転する間に、筐体は、トータルで右向きの運動量を得る。
これにより、回転子が1回転する間に、回転子、保持体、および筐体の全てが、右向きの運動量を得ることとなり、推力発生装置全体に右向きの推力を生じさせることができる。
【0010】
以上とは逆に、回転子が、軸方向から見て、反時計回りに回転する場合、推力発生装置全体に生ずる推力は左向きとなる。
なお、磁性体が、電気伝導体の設けられている前側を周方向に通過した後、再度、この位置に到達するまでの間に、モータからの回転トルクによって、回転子の回転速度は回復する。
【0011】
そして、保持体に固定された旋回棒が前後方向に延びているので、推力発生装置に、前述したような、軸方向から見て前後方向に交差する向きの推力が生ずると、旋回棒が、推力発生装置およびバランサーとともに、回転軸線回りに旋回することとなる。
これにより、例えば燃焼ガス等を噴射しなくても、推力を発生させて旋回棒を旋回させることができる。
【0012】
前記非磁性体の重量は、前記磁性体の重量より重くてもよい。
【0013】
この場合、非磁性体の重量が、磁性体の重量より重くなっているので、回転子が周方向に回転する過程において、磁性体および非磁性体が、電気伝導体と前記一方向に並んだときに、軸方向から見て、回転子、モータ、および保持体が、中心軸線から非磁性体側に向かう向きに、筐体に対して変位するように径方向に振動する構成を容易に得ることができるとともに、大きな推力を容易に生じさせることができる。
【0014】
前記筐体および前記保持体は、互いに弾性変位可能に連結されてもよい。
【0015】
この場合、筐体および保持体が、互いに弾性変位可能に連結されているので、回転子が周方向に回転したときに、筐体および保持体を円滑に相対変位させることができる。
【0016】
前記弾性連結片は、前記本体部から径方向の外側に向かうに従い、互いが周方向に離れる向きに延びる一対の連結部と、一対の前記連結部における径方向の外端部同士を連結し、周方向に延びる周面部と、を備え、前記磁性体、および前記非磁性体は、前記周面部に設けられてもよい。
【0017】
この場合、弾性連結片が、周面部および一対の連結部を備え、本体部に連結されることで、軸方向から見て閉曲線を呈するので、弾性連結片の剛性を容易に調整することができるとともに、負荷を抑えながら、径方向の弾性変形量を大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、燃焼ガス等を噴射しなくても旋回棒を旋回させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る旋回装置を左右方向から見た側面図である。
【
図3】
図2に示す推力発生装置のIII-III線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る旋回装置1を説明する。
図1に示されるように、旋回装置1は、推力発生装置11と、推力発生装置11に取付けられた旋回体12と、を備えている。
【0021】
推力発生装置11は、回転子13、筐体14、モータ15、および保持体16を備えている。
回転子13は、中心軸線O回りに沿う周方向に回転可能に支持されている。
以下、中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向という。
【0022】
筐体14は、第1収容部35および第1連結部36を備えている。筐体14は、合成樹脂材料等の絶縁材料で形成されている。
【0023】
第1収容部35は、軸方向に間隔をあけて設けられた一対の基板部37と、一対の基板部37における外周縁部同士を軸方向に連結した第1接続部38と、を備えている。基板部37は、円板状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。第1接続部38は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。一対の基板部37と複数の第1接続部38とに囲まれた空間に、回転子13が、基板部37および第1接続部38との非接触状態を維持したまま、周方向に回転可能に収容されている。
【0024】
筐体14における周方向の一部に、電気伝導体17が設けられている。電気伝導体17は、回転子13より径方向の外側に設けられている。電気伝導体17は、表裏面が軸方向を向き、かつ周方向に延びる湾曲した板状に形成されている。軸方向から見て、電気伝導体17の内周面の曲率中心は、中心軸線Oとほぼ一致している。電気伝導体17の外周部は、筐体14から径方向の外側に張り出している。電気伝導体17は、一対の基板部37に軸方向に挟まれて固定されている。電気伝導体17は、例えばアルミニウム合金等により形成されている。電気伝導体17は、中心軸線Oを中心に例えば0°以上180°以下となっている。
【0025】
軸方向から見て、筐体14の重心は、電気伝導体17の周方向の中央部と、中心軸線Oと、を結ぶ直線から離れて位置している。
以下、軸方向から見て、この直線が延びる方向を前後方向(一方向)といい、前後方向に直交する方向を左右方向といい、中心軸線Oに対して電気伝導体17が位置している側を前側といい、これとは反対側を後側という。
第1連結部36は、第1収容部35に対して軸方向の一方側に設けられている。
以下、軸方向の一方側を上方といい、これとは反対側を下方という。
【0026】
第1連結部36に、
図2に示されるように、保持体16の後述する第2連結部43が挿通された連結孔36aが形成されている。連結孔36aは、中心軸線Oと同軸に配設されている。第1連結部36は、軸方向に延びる第2接続部39を介して第1収容部35に連結されている。
第2接続部39は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。第2接続部39は、中心軸線Oを径方向に挟む両側に1つずつ、合計2つ設けられている。第2接続部39は、電気伝導体17の周方向の中央部から、中心軸線Oを中心に約90°離れた位置に設けられている。つまり、第2接続部39は、左右一対設けられている。
【0027】
保持体16は、第2収容部41、取付部42、および第2連結部43を備え、モータ15の駆動時に生ずる回転力を受け止める。保持体16は、合成樹脂材料等の絶縁材料で形成されている。
【0028】
第2収容部41は、第1連結部36の下方に設けられている。第2収容部41の上面と第1連結部36の下面との間に、軸方向の隙間が設けられている。第2収容部41に、モータ15が収容され保持されている。第2収容部41の下端部は、上下一対の基板部37のうち、上側の基板部37に形成された貫通孔37aに挿入されている。モータ15の出力軸15aは、第2収容部41から下方に突出し、回転子13に連結されている。これにより、モータ15は、回転子13を周方向に回転可能に支持している。
【0029】
取付部42は、第1連結部36の上方に設けられている。取付部42の下面と、第1連結部36の上面との間に、軸方向の隙間が設けられている。取付部42に、前後方向に開口した取付孔42aが形成されている。取付孔42aに、旋回体12の後述する旋回棒26の一端部が嵌合されて固定されている。取付部42の下面に、下方に向けて突出し、第1連結部36の上面に形成された環状溝36bに、隙間を設けた状態で挿入された突出筒42bが形成されている。
【0030】
第2連結部43は、第2収容部41と取付部42とを連結している。第2連結部43は、軸方向に延びるとともに、第1連結部36の連結孔36aに挿通されている。第2連結部43は、中心軸線Oと同軸に配設されている。第2連結部43の外周面と、連結孔36aの内周面と、の間に隙間が設けられている。
【0031】
第1連結部36の上面における連結孔36aの開口周縁部、および第2収容部41の上面にそれぞれ、窪み部が形成され、各窪み部に環状のゴム体44が各別に嵌合されている。これらのゴム体44内に、第2連結部43が嵌合されている。第1連結部36の上面の窪み部に嵌合されたゴム体44は、取付部42の下面に当接し、第2収容部41の上面の窪み部に嵌合されたゴム体44は、第1連結部36の下面に当接している。
ゴム体44を介して、筐体14および保持体16が、互いに弾性変位可能に連結されている。なお、ゴム体44を設けず、筐体14および保持体16が、互いに相対変位可能に連結されてもよい。
【0032】
回転子13は、
図3に示されるように、本体部21と、磁性体22および非磁性体23と、一対の弾性連結片24と、を備えている。
【0033】
本体部21は、径方向の中央部に位置してモータ15の出力軸15aに連結されている。本体部21は、合成樹脂材料等の絶縁材料で形成されている。
磁性体22および非磁性体23は、重量が互いに異なっているとともに、本体部21を径方向に挟む位置に各別に設けられている。磁性体22は、径方向に並べられた複数の磁石となっている。複数の磁石は、互いに異なる磁極が径方向で隣接するように設けられている。
非磁性体23の重量が、磁性体22の重量より重くなっている。なお、非磁性体23の重量を、磁性体22の重量以下としてもよい。
【0034】
一対の弾性連結片24は、本体部21と、磁性体22および非磁性体23と、を各別に連結するとともに、弾性変形可能に形成されている。弾性連結片24は、合成樹脂材料等の絶縁材料で形成されている。
弾性連結片24は、一対の第3連結部(連結部)31と、周面部32と、を備え、本体部21に連結されることで、軸方向から見て閉曲線を呈する。
【0035】
一対の第3連結部31は、本体部21から径方向の外側に向かうに従い、互いが周方向に離れる向きに延びている。第3連結部31は、表裏面が周方向を向く板状に形成されている。第3連結部31は、軸方向から見て直線状に延びている。
周面部32は、一対の第3連結部31における径方向の外端部同士を連結し、周方向に延びている。周面部32は、表裏面が径方向を向く板状に形成されている。
磁性体22および非磁性体23は、周面部32に設けられている。図示の例では、磁性体22および非磁性体23は、周面部32における周方向の中央部に設けられている。周面部32の径方向の剛性は、第3連結部31の径方向の剛性より低くなっている。
【0036】
回転子13の回転時に、磁性体22が、電気伝導体17の設けられている周方向の位置に達すると、電気伝導体17に径方向で近接することで、電気伝導体17において磁場が変化する。
回転子13が、周方向に回転する過程において、磁性体22および非磁性体23が、電気伝導体17と前後方向に並んだときに、軸方向から見て、回転子13、モータ15、および保持体16が、中心軸線Oから非磁性体23側に向かう向きに、筐体14に対して変位するように径方向に振動する。なお、このような構成は、例えば、磁性体22および非磁性体23の各重量、弾性連結片24の剛性、および回転子13の回転速度等を調整することで得ることができる。
【0037】
旋回体12は、
図1に示されるように、旋回棒26、支持部27、およびバランサー28を備えている。
【0038】
旋回棒26は前後方向に延びている。旋回棒26の一端部は、保持体16の取付部42の取付孔42aに嵌合されて固定されている。
支持部27は、旋回棒26における前後方向の途中位置を、軸方向に延びる回転軸線L回りに回転可能に支持している。支持部27は、旋回棒26における前後方向の途中位置に設けられた被支持部26aを支持している。支持部27および被支持部26aのうちのいずれか一方は、回転軸線Lと同軸に配設されていずれか他方に向けて突出した軸部とされ、いずれか他方に、軸部が回転軸線L回りに回転可能に嵌合された孔部が形成されている。軸部および孔部は、例えば円錐形状に形成される。
バランサー28は、旋回棒26において、被支持部26aより前後方向の他端部側に位置する部分に取付けられ、軸方向に直交する水平方向に対する旋回棒26の傾き姿勢を決める。図示の例では、バランサー28は、旋回棒26の他端部に取付けられ、旋回棒26は、水平方向に沿って延びている。
【0039】
以上説明したように、本実施形態による旋回装置1によれば、本体部21に対して弾性変位可能に設けられた磁性体22および非磁性体23の各重量が互いに異なり、筐体14および保持体16が、互いに相対変位可能に連結されているので、回転子13が周方向に回転すると、回転子13にモータ15を介して連結されている保持体16が、回転子13とともに、筐体14に対して径方向に振動する。
また、回転子13が周方向に回転する過程において、磁性体22および非磁性体23が、電気伝導体17と前後方向に並んだときに、軸方向から見て、回転子13、モータ15、および保持体16が、中心軸線Oから非磁性体23側に向かう向きに、筐体14に対して変位するように径方向に振動する構成とされている。
したがって、回転子13の回転時に、磁性体22および非磁性体23が、電気伝導体17と前後方向に並び、前述の振動が発生すると、磁性体22および非磁性体23が有する慣性マスにより、弾性連結片24が径方向に弾性変形して、非磁性体23の回転半径が短くなることで、角運動量保存の法則に基づいて、非磁性体23の角速度が増加し、また、磁性体22の回転半径は長くなることで、角運動量保存の法則に基づいて、磁性体22の角速度は低下する。
【0040】
また、筐体14の周方向の一部に、電気伝導体17が設けられているので、磁性体22が、電気伝導体17の設けられている周方向の位置に達すると、電気伝導体17において磁場が変化し、磁性体22および電気伝導体17に、互いに逆向きで同じ大きさの力が発生する。この力の大きさは、回転子13の回転速度と、回転子13および筐体14の相対速度と、の和に比例する。
これに対し、非磁性体23が、電気伝導体17の設けられている周方向の位置に達しても、電気伝導体17において磁場が変化することはない。
【0041】
以下、具体的に説明する。
【0042】
図4に示されるように、回転子13が、軸方向から見て、時計回りに回転する場合に、非磁性体23が、電気伝導体17の設けられている前側に達すると、電気伝導体17において磁場が変化せず、前述の振動に起因して、非磁性体23の慣性マスにより弾性連結片24が弾性変形することで、回転半径が短くなった非磁性体23の時計回り(左向き)の角速度が増加する一方、前述の振動に起因して、磁性体22の慣性マスにより弾性連結片24が弾性変形することで、回転半径が長くなった磁性体22の時計回り(右向き)の角速度は減少する。したがって、この状態では、回転子13にトータルで左向きの運動量(以下、左運動量という)が生ずる。
【0043】
その後、非磁性体23が、電気伝導体17の設けられている前側を周方向に通過し、
図5に示されるように、磁性体22が、電気伝導体17の設けられている前側に達すると、後側に位置して前述と同様に回転半径が短くなった非磁性体23の時計回り(右向き)の角速度が増加する一方、前述と同様に回転半径が長くなった磁性体22の時計回り(左向き)の角速度は減少する。したがって、この状態では、回転子13にトータルで右向きの運動量(以下、右運動量という)が生ずる。
【0044】
この右運動量によって、
図5に二点鎖線で示されるように、回転子13が、電気伝導体17に対して右側に移動した状態では、磁性体22が、電気伝導体17における周方向の中央部を通過する過程で、電気伝導体17から徐々に径方向の内側に離れるように移動するので、電気伝導体17において磁場が変化して、磁性体22には電気伝導体17に向かう吸引力がかかることで、磁性体22の回転半径が長くなり、磁性体22の角速度が減少する。したがって、前述の右運動量が増加して前述の左運動量より大きくなる。
以上より、回転子13が1回転する間に、回転子13、モータ15、および保持体16は、トータルで右向きの運動量を得る。
【0045】
次に、筐体14について説明する。
磁性体22および非磁性体23の各重量が互いに異なっているので、回転子13が時計回りに回転すると、筐体14は反時計回りに揺動円運動し、また、磁性体22が、揺動円運動している筐体14に設けられた電気伝導体17の位置している前側に達すると、磁性体22と電気伝導体17との間に生ずる吸引力によって、筐体14に後ろ向きの力がかかり、筐体14の回転半径が短くなり、筐体14の角速度が増加する。この際、回転子13、モータ15、および保持体16には、前述のように右向きの運動量が生じ、筐体14には右向きの運動量が生じているため、筐体14の角速度の増加に伴い、筐体14にかかる右向きの運動量が増加する。一方、非磁性体23が、電気伝導体17の設けられている前側に達すると、筐体14の角速度は変化せず、回転子13、モータ15、および保持体16には右向きの運動量が生じ、筐体14には左向きの運動量が生ずる。
以上より、回転子13が1回転する間に、筐体14は、トータルで右向きの運動量を得る。
これにより、回転子13が1回転する間に、回転子13、保持体16、および筐体14の全てが、右向きの運動量を得ることとなり、推力発生装置11全体に右向きの推力を生じさせることができる。
【0046】
以上とは逆に、回転子13が、軸方向から見て、反時計回りに回転する場合、推力発生装置11全体に生ずる推力は左向きとなる。
なお、磁性体22が、電気伝導体17の設けられている前側を周方向に通過した後、再度、この位置に到達するまでの間に、モータ15からの回転トルクによって、回転子13の回転速度は回復する。
【0047】
そして、保持体16に固定された旋回棒26が前後方向に延びているので、推力発生装置11に、前述したような、軸方向から見て前後方向に交差する向きの推力が生ずると、旋回棒26が、推力発生装置11およびバランサー28とともに、回転軸線L回りに旋回することとなる。
これにより、例えば燃焼ガス等を噴射しなくても、推力を発生させて旋回棒26を旋回させることができる。
【0048】
非磁性体23の重量が、磁性体22の重量より重くなっているので、回転子13が周方向に回転する過程において、磁性体22および非磁性体23が、電気伝導体17と前後方向に並んだときに、軸方向から見て、回転子13、モータ15、および保持体16が、中心軸線Oから非磁性体23側に向かう向きに、筐体14に対して変位するように径方向に振動する構成を容易に得ることができるとともに、大きな推力を容易に生じさせることができる。
【0049】
筐体14および保持体16が、互いに弾性変位可能に連結されているので、回転子13が周方向に回転したときに、筐体14および保持体16を円滑に相対変位させることができる。
【0050】
弾性連結片24が、周面部32および一対の連結部31を備え、本体部21に連結されることで、軸方向から見て閉曲線を呈するので、弾性連結片24の剛性を容易に調整することができるとともに、負荷を抑えながら、径方向の弾性変形量を大きく確保することができる。
【0051】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
例えば、保持体16の取付部42を、筐体14の下方に設けてもよい。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 旋回装置
11 推力発生装置
12 旋回体
13 回転子
14 筐体
15 モータ
16 保持体
17 電気伝導体
21 本体部
22 磁性体
23 非磁性体
24 弾性連結片
26 旋回棒
27 支持部
28 バランサー
31 第3連結部(連結部)
32 周面部
L 回転軸線
O 中心軸線